説明

リクライニング装置

【課題】可動ガイドを付勢するための付勢部材自体の付勢力を低減することなくロック解除時に可動ガイドに作用する付勢力を低減し得るリクライニング装置を提供する。
【解決手段】可動ガイド63が、ベースプレートに形成される一対の案内面のうち他方の第1案内面33bと第1ロックギヤとの双方に接触し、バネ部材によりベースプレートの半径方向内側へ付勢されるように配置されている。そして、他方の第1案内面33bとこの他方の第1案内面33bに対向する可動ガイド63の対向面とには、バネ部材の一側端部81が係合する被係合部65を構成する凹部35,64がそれぞれ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置として、下記特許文献1に開示されるリクライニング装置が知られている。このリクライニング装置では、ロックギアと固定ガイドとの間には、摺動可能な可動ガイドがそれぞれ介在しており、これら可動ガイドは、外方端から内方端に向かって漸次幅が狭く形成され、可動ガイドの摺動面のうち、ロックギア側の摺動面はロックギアの移動方向に平行に設けられている。そして、各可動ガイドにはそれぞれロックスプリングが係合され、当該ロックスプリングによってベースプレートの半径方向内側へと付勢されている。
【0003】
このため、可動ガイドはロックギアと固定ガイドとの間に常に食い込んだ状態となるため、これら固定ガイドとロックギアと可動ガイドとは相互に緊合して、各部材間における隙間が消滅することとなる。これにより、シートバックの前後方向へのガタが確実に解消されることとなり、確実なロック及びその解除を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4305571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、可動ガイドは、ロックスプリングなどの付勢部材により半径方向内側(内方向)へと付勢されていることから、ロック解除時には、付勢部材の付勢力に抗して可動ガイドを半径方向外側(外方向)に変位させる必要がある。このため、付勢部材の付勢力が大きくなると、ロック解除に必要な操作力が増大し、操作性が悪化するという問題がある。この問題を解決するため、付勢力の弱い付勢部材を採用すると、この付勢部材の一側端部で可動ガイドを付勢するとともに他側端部で別部材を付勢している場合には、当該別部材に対して必要な付勢力が確保できなくなるという問題が生じてしまう。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、可動ガイドを付勢するための付勢部材自体の付勢力を低減することなくロック解除時に可動ガイドに作用する付勢力を低減し得るリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のリクライニング装置は、相対的に傾動する第1の部材(11,11a)と第2の部材(12,12a)との傾動角度を調整するリクライニング装置(20)であって、前記第1の部材に取り付けられるベースプレート(30)と、前記第2の部材に取り付けられるとともに前記ベースプレートに対して相対回動可能に組み付けられて内歯(41)を有するギヤプレート(40)と、前記ベースプレートに形成される一対の案内面のうち一方の案内面(33a)に接触した状態で半径方向に摺動可能にガイドされて組み付けられ、前記内歯と噛合可能な外歯(61a)を有するロックギヤ(61)と、前記一対の案内面のうち他方の案内面(33b)と前記ロックギヤとの双方に接触し前記ベースプレートの半径方向内側へ付勢されるように配置されて、外方端から内方端に向けて漸次幅が狭く形成される可動ガイド(63)と、前記ロックギヤおよび前記可動ガイドの半径方向の移動を制御可能であって、前記外歯を前記内歯に噛合させる方向に回転付勢されるカム(70)と、前記可動ガイドを前記半径方向内側へ付勢する付勢部材(80)と、前記カムを前記回転付勢に抗して回転駆動させることで、前記可動ガイドを半径方向外側へ移動させて前記外歯と前記内歯との噛合を解除する操作部材(23)と、を備え、前記他方の案内面とこの他方の案内面に対向する前記可動ガイドの対向面とには、前記付勢部材の係合端部が係合する被係合部(65)を構成する凹部(35,64)がそれぞれ形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のリクライニング装置において、前記付勢部材は、前記可動ガイドを前記半径方向内側へ付勢するとともに、前記外歯が前記内歯に噛合する方向に前記カムを回転付勢することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のリクライニング装置において、前記可動ガイドの前記凹部は、前記係合端部から付勢力を受ける付勢面(64a)が、前記他方の案内面側ほど前記半径方向内側に傾斜して形成されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明では、可動ガイドが、ベースプレートに形成される一対の案内面のうち他方の案内面とロックギヤとの双方に接触し、付勢部材によりベースプレートの半径方向内側へ付勢されるように配置されている。そして、他方の案内面とこの他方の案内面に対向する可動ガイドの対向面とには、付勢部材の係合端部が係合する被係合部を構成する凹部がそれぞれ形成されている。
【0011】
このため、ロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯との噛合を解除してロック解除するために操作部材を操作して、カムが上記回転付勢に抗して回転駆動することで可動ガイドが半径方向外側へ移動する際、係合端部を介した付勢力は、可動ガイドの凹部と他方の案内面の凹部との双方に分散して作用することとなる。これにより、係合端部を介して可動ガイドに作用する付勢力が低減するため、可動ガイドを上記付勢力に抗して半径方向外側へ移動させるために必要な操作部材の操作力を低減することができる。一方、付勢部材自体の付勢力は変わらないことから、この付勢部材の係合端部と異なる端部で別部材を付勢する構成でも、当該別部材に対して必要な付勢力を確保することができる。
したがって、可動ガイドを付勢するための付勢部材自体の付勢力を低減することなくロック解除時に可動ガイドに作用する付勢力を低減することができる。
【0012】
請求項2の発明では、付勢部材は、可動ガイドを半径方向内側へ付勢するとともに、外歯が内歯に噛合する方向にカムを回転付勢するため、カムに対して必要な回転付勢力を確保しつつ、ロック解除時に可動ガイドに作用する付勢力を低減することができる。
【0013】
請求項3の発明では、可動ガイドの凹部は、係合端部から付勢力を受ける付勢面が、他方の案内面側ほど半径方向内側に傾斜して形成されるため、可動ガイドが半径方向外側へ移動すると、付勢面に押し付けられた係合端部が当該付勢面に沿って他方の案内面の凹部側に移動する。これにより、係合端部を介した付勢力が、可動ガイドの凹部よりも他方の案内面の凹部により大きく作用するため、可動ガイドを上記付勢力に抗して半径方向外側へ移動させるために必要な操作部材の操作力をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るリクライニング装置が設置される車両用シートの構成概要を示す側面図である。
【図2】リクライニング装置の断面図である。
【図3】図2に示す3−3線相当の切断面による断面図である。
【図4】図2に示す4−4線相当の切断面による断面図である。
【図5】被係合部とバネ部材の一側端部との係合状態を示す説明図であり、図5(A)はロック状態時を示し、図5(B)は、ロック解除時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のリクライニング装置を具現化した一実施形態について図を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るリクライニング装置20が設置される車両用シート10の構成概要を示す側面図である。
周知のように、車両用シート10は、シートクッション11とシートバック12を主な構成要素とし、シートクッション11にはシートブラケット(下側ブラケット)11aが、シートバック12にはシートバックブラケット(上側ブラケット)12aがそれぞれ固定されている。
【0016】
下側ブラケット11aおよび上側ブラケット12aは、ラウンドリクライニングユニット21の相対回動する部位にそれぞれ固定されることで、互いに相対回動可能に連結されている。これにより、シートクッション11に対するシートバック12の傾動角度の調整が可能となる。なお、シートクッション11および下側ブラケット11aは、特許請求の範囲に記載の「第1の部材」の一例に相当し、シートバック12および上側ブラケット12aは、特許請求の範囲に記載の「第2の部材」の一例に相当し得る。
【0017】
ラウンドリクライニングユニット21の中央のセンターシャフト22にはリクライニング操作レバー23が装着されている。ラウンドリクライニングユニット21、センターシャフト22およびリクライニング操作レバー23によりリクライニング装置20が構成されている。リクライニング操作レバー23を上方に引くとリクライニング装置20がアンロック状態となりシートバック12の傾動角度の調整が可能となる。ここで、シートバック12を後方に倒した図1にて示す角度Aの範囲は、リクライニング操作レバー23から手指を離すとその時の角度位置にシートバック12がロックされる傾度調整範囲であり、シートバック12を前方に倒した図1にて示す角度Bの範囲は、リクライニング操作レバー23から手指を離してもアンロックの状態が持続するロックフリー状態に対応する自由回動範囲である。図1から判るように、シートバック12は、シートクッション11と接する前倒しの位置からシートクッション11とフラットになる後倒しの位置まで回動可能である。このようなリクライニング装置20の構造について以下説明する。
【0018】
図2は、リクライニング装置20の断面図である。図3は、図2に示す3−3線相当の切断面による断面図である。図4は、図2に示す4−4線相当の切断面による断面図である。図5は、被係合部65とバネ部材80の一側端部81との係合状態を示す説明図であり、図5(A)はロック状態時を示し、図5(B)は、ロック解除時を示す。なお、図2において、図面左側を軸方向一側、図面右側を軸方向他側として、以下説明する。また、図2では、便宜上、センターシャフト22およびリクライニング操作レバー23の図示を省略し、図4では、ギヤプレート40は内歯41近傍のみ図示する。
【0019】
図2に示すように、ラウンドリクライニングユニット21は、略円板状のベースプレート30と略お椀形状のギヤプレート40を重ね合わせてカバーブラケット50を組み付けることで、ベースプレート30およびギヤプレート40が相対回動可能に保持されるとともに軸方向への相対移動が抑制されるように構成されている。
【0020】
ベースプレート30とギヤプレート40の間にはキャビティ(空間)Cが形成される。このキャビティC内には、図2〜図4に示すように、一対の第1ロックギヤ61と一対の第2ロックギヤ62の計4枚のロックギヤ、2つの可動ガイド63、中央のカム70、2つの略円弧状のバネ部材80および略円板状のカムレバー90等のロック、アンロックのための部材が配設されている。
【0021】
ベースプレート30は、軸方向一側の側面(以下、取付面30aともいう)に複数の突起30bが形成されており、これら各突起30bを下側ブラケット11aの係合穴(図示略)に係合させることで、当該下側ブラケット11aに取り付けられる。また、図3に示すように、ベースプレート30には、軸方向他側の側面に、各ロックギヤ61,62を半径方向に案内するための4つの案内凸部31、32、31、32が形成されている。
【0022】
ここで、図3に示すように、第1ロックギヤ61を案内するための一対の案内面のうち、案内凸部31の案内面を一方の第1案内面33aとし、案内凸部32の案内面を他方の第1案内面33bとする。また、第2ロックギヤ62を案内するための一対の案内面のうち、案内凸部32の案内面を一方の第2案内面34aとし、案内凸部31の案内面を他方の第2案内面34bとする。各案内面のうち、他方の第1案内面33bには、長手方向中央部に凹部35が形成されている。この凹部35の詳細形状については後述する。なお、一方の第1案内面33aおよび他方の第1案内面33bは、特許請求の範囲に記載の「一方の案内面」および「他方の案内面」の一例に相当し得る。
【0023】
ギヤプレート40の環状外縁部の内周面には、全周にわたって内歯41が形成されている。ギヤプレート40は、その背面(軸方向他側の面)に複数の突起(図示略)が形成されており、これら各突起突起を上側ブラケット12aの係合穴(図示略)に係合させることで、当該上側ブラケット12aに取り付けられる。
【0024】
図3に示すように、両第1ロックギヤ61および両第2ロックギヤ62の外周側には、ギヤプレート40の内歯41と噛合可能な外歯61a、62aがそれぞれ形成されている。また、各ロックギヤ61、62には、軸方向他側の面のほぼ中央から軸方向他側に突出する突起61b、62bがそれぞれ形成されている。両第1ロックギヤ61は、案内凸部31の一方の第1案内面33aと案内凸部32の他方の第1案内面33bに案内される可動ガイド63とに案内されて半径方向にのみ摺動自在にそれぞれ支承されている。また、両第2ロックギヤ62は、案内凸部32の一方の第2案内面34aと案内凸部31の他方の第2案内面34bとに案内されて半径方向にのみ摺動自在にそれぞれ支承されている。
【0025】
両可動ガイド63は、一方端から他方端に向かって漸次幅が狭くなるよう楔状に形成されており、第1ロックギヤ61と案内凸部32の他方の第1案内面33bとの双方に接触可能にそれぞれ配置されている。これら両可動ガイド63には、軸方向他側の面の外縁近傍から軸方向他側に略円柱状に突出する突起63aがそれぞれ形成されている。
【0026】
また、両可動ガイド63には、ロック状態時に他方の第1案内面33bの凹部35に対向する対向面に、凹部64がそれぞれ形成されている。この凹部64と凹部35とにより被係合部65が構成され、当該被係合部65にバネ部材80の一側端部81が係合している。
【0027】
このため、図5(A)に示すように、一側端部81を介した付勢力Fが、可動ガイド63の凹部64に対する付勢力F1と他方の第1案内面33bの凹部35に対する付勢力F2として分散して作用し、これら両付勢力のうち付勢力F1が、可動ガイド63をベースプレート30の半径方向内側(内方向)へ付勢するように作用する。
【0028】
そして、上記付勢力F1に応じて、両可動ガイド63は、第1ロックギヤ61と他方の第1案内面33bとの間にそれぞれ常に食い込んだ状態となり、これら第1ロックギヤ61と他方の第1案内面33bと可動ガイド63とが相互に緊合して(堅く合わさって)、各部材間における隙間が消滅する。そのため、シートバック12の前後方向におけるガタが解消されることとなる。
【0029】
特に、可動ガイド63の凹部64は、付勢力F1を受ける付勢面64aが、他方の第1案内面33b側ほど半径方向内側に傾斜して形成されている(図5(A)の角度θ1参照)。また、他方の第1案内面33bの凹部35は、付勢力F2を受ける付勢面35aが、可動ガイド63側ほど半径方向内側に傾斜して形成されている(図5(A)の角度θ2参照)。なお、凹部64および凹部35は、特許請求の範囲に記載の「凹部」の一例に相当し、被係合部65は、特許請求の範囲に記載の「被係合部」の一例に相当し得る。また、付勢面64aは、特許請求の範囲に記載の「付勢面」の一例に相当し、一側端部81は、特許請求の範囲に記載の「係合端部」の一例に相当し得る。
【0030】
また、ベースプレート30の中央には、中心に貫通孔71が形成される板状のカム70が回動可能に配設されている。カム70には、外周面に各ロックギヤ61、62の後端面に当接するカム面72が形成され、側面にバネ部材80の他側端部82が係合する2つの係合穴73と軸方向他側に突出する2つの円柱状の突起74とが形成されている。
【0031】
図4に示すように、カム70は、2つのバネ部材80の他側端部82とそれぞれ係合することにより、ロック回動方向(図3および図4にて反時計方向)に強く付勢されている。これにより、カム70は、カム面72にて各ロックギヤ61、62の後端面に当接することで、上記両バネ部材80によるロック回動方向の付勢力により各ロックギヤ61、62を半径方向外側(外方向)に強く付勢することとなる。
【0032】
カム70の貫通孔71には、センターシャフト22が挿入され、このセンターシャフト22を回動させることにより両バネ部材80の付勢力に抗してカム70をアンロック回動方向(図3および図4にて時計方向)に回動させることができるようになっている。
【0033】
図4に示すように、カムレバー90には、カム70の両突起74にそれぞれ嵌合する貫通孔91と、それぞれ2つのカム孔92〜94とが設けられるとともに、可動ガイド63の突起63aに対してアンロック回動方向に回動したときに半径方向内側から接触して半径方向外側に付勢(押圧)する2つのカム面95が外周縁に設けられている。カムレバー90は、これら両貫通孔91と両突起74とをそれぞれ嵌合させ、両カム孔92に突起61bをそれぞれ挿通させ、両カム孔93に突起62bをそれぞれ挿通させた状態で、カム70および各ロックギヤ61、62に組み付けられている。これにより、カムレバー90は、カム70の回動に応じて回動するように当該カム70に組み付けられることとなる。そして、両カム孔94からそれぞれ露出する被係合部65には、バネ部材80の一側端部81が係合している。
【0034】
これにより、カムレバー90がカム70とともにアンロック回動方向に回動すると、カム孔92の内周縁が第1ロックギヤ61の突起61bにそれぞれ当接するとともにカム孔93の内周縁が両第2ロックギヤ62の突起62bにそれぞれ当接する。さらにカムレバー90がアンロック回動方向に回動すると、両突起63aがカム面95によりそれぞれ付勢されることで両可動ガイド63がそれぞれ半径方向外側に移動し、当該両可動ガイド63による第1ロックギヤ61の緊合状態がそれぞれ解除されて、両第1ロックギヤ61が半径方向に移動可能な状態になる。そして、突起61b、突起62bが各カム孔92、93の内周縁により半径方向内側に付勢されて、各ロックギヤ61、62が半径方向内側に連動して移動することとなる。
【0035】
このように構成されるリクライニング装置20は、各ロックギヤ61、62および可動ガイド63やカム70などをキャビティC内に配設して一体に組み付けたベースプレート30およびギヤプレート40の側周部をカバーブラケット50によりリングかしめをして一体化される。これにより、ベースプレート30およびギヤプレート40は、相対回動可能に保持されるとともに軸方向への相対移動が抑制されることとなる。
【0036】
そして、カム70の貫通孔71に挿入したセンターシャフト22に対してリクライニング操作レバー23を組み付けることで、図2に示すリクライニング装置20が完成する。このように構成されるリクライニング装置20に対して、ベースプレート30の各突起30bを下側ブラケット11aの係合穴に係合させるとともに、ギヤプレート40の各突起を上側ブラケット12aの係合穴に係合させることで、シートクッション11およびシートバック12がリクライニング装置20により相対傾動可能に連結されることとなる。なお、ベースプレート30を上側ブラケット12aに取り付けるとともにギヤプレート40を下側ブラケット11aに取り付けるようにしてもよい。
【0037】
このように構成される本実施形態に係るリクライニング装置20のアンロック状態およびロック状態について、以下に説明する。
(アンロック状態)
まず、リクライニング装置20におけるアンロック状態について説明する。
乗員がシートバック12の傾斜角度を調整するためロックを外す時は、リクライニング操作レバー23を操作してセンターシャフト22をアンロック回動方向に回動させる。すると、この操作力に応じて、カム70およびカムレバー90は、センターシャフト22とともに両バネ部材80の付勢力に抗してアンロック回動方向に回動する。
【0038】
カム70がアンロック回動方向に回動することにより、カム70のカム面72と各ロックギヤ61、62のそれぞれの後端面との当接が解除されて、各ロックギヤ61、62を半径方向外側へ付勢しているカム70による付勢力が解除される。これにより、各ロックギヤ61、62は半径方向内側に移動することが可能になり、ギヤプレート40の内歯41と各ロックギヤ61、62の外歯61a、62aとの噛合が解除可能状態となる。
【0039】
また、カムレバー90がアンロック回動方向に回動することにより、可動ガイド63の突起63aがカム面95により付勢されて半径方向外側に移動する。このとき、可動ガイド63は、凹部64に係合しているバネ部材80の一側端部81により作用する付勢力F1に抗して、半径方向外側に移動することとなる。すなわち、可動ガイド63をバネ部材80の付勢力F1に抗して半径方向外側に移動させるためには、図5(B)に示す、操作レバー23の操作に応じた操作力F3が必要となる。
【0040】
この操作力F3について、図5を用いて詳細に説明する。
ロック状態では、図5(A)に示すように、バネ部材80の付勢力Fは、可動ガイド63の付勢面64aに対する付勢力F1と、他方の第1案内面33bの付勢面35aに対する付勢力F2とに、分散して作用している。そして、可動ガイド63に対して上記操作力F3が作用すると、可動ガイド63が一側端部81を介して作用する付勢力F1に抗して、半径方向外側に移動する。このとき、操作力F3として必要な力は、分散して作用する付勢力F1に相当する力となるので、バネ部材80の付勢力Fが分散することなく可動ガイド63に全て作用する場合と比較して、可動ガイド63を半径方向外側に移動させるための操作力F3を低減することができる。
【0041】
特に、付勢力F1が作用する付勢面64aは、他方の第1案内面33b側ほど半径方向内側に傾斜して形成されているので(図5(A)の角度θ1参照)、可動ガイド63が半径方向外側へ移動すると、付勢面64aに押し付けられた一側端部81が当該付勢面64aに沿って他方の第1案内面33bの凹部35側に移動する。これにより、一側端部81を介した付勢力F1が、可動ガイド63の凹部64よりも他方の第1案内面33bの凹部35により大きく作用するため、可動ガイド63を上記付勢力F1に抗して半径方向外側へ移動させるために必要な操作力F3をより低減することができる。
【0042】
このように、両可動ガイド63がそれぞれ半径方向外側へ移動することで当該両可動ガイド63による第1ロックギヤ61の緊合状態がそれぞれ解除されると、両ロックギヤ61は半径方向内側に移動することが可能な状態となる。そして、カムレバー90がカム70とともにアンロック回動方向にさらに回動することにより、カムレバー90の各カム孔92、93の内周縁が各ロックギヤ61、62の突起61b、62bに当接して、各ロックギヤ61、62を積極的に半径方向内側に移動させることで、内歯41と外歯61a、62aとの噛合が解除される。
【0043】
上述のように、内歯41と外歯61a、62aとの噛合が解除されると、ギヤプレート40の回動が自由になり、ラウンドリクライニングユニット21がアンロック状態になる。ラウンドリクライニングユニット21がアンロック状態になれば、リクライニング装置20がアンロック状態になり、シートバック12を後方に倒す場合には、当該シートバック12の傾斜角度を自由に調整可能な状態になる(図1の角度A参照)。
【0044】
(ロック状態)
次に、リクライニング装置20におけるロック状態について説明する。
乗員によるシートバック12の傾斜角度の調整が終了すると、リクライニング操作レバー23を緩めることにより、カム70およびカムレバー90が、両バネ部材80の付勢力によりロック回動方向に回動する。
【0045】
この回動するカム70のカム面72が各ロックギヤ61、62のそれぞれの後端面に当接することにより、各ロックギヤ61、62が半径方向外側に付勢される。これにより、各ロックギヤ61、62の外歯61a、62aがギヤプレート40の内歯41に噛合するように半径方向外側へ移動する。また、回動するカムレバー90のカム面95と両可動ガイド63の突起63aとの当接がそれぞれ解除されることで、一側端部81を介して凹部64に作用するバネ部材80の付勢力により、両可動ガイド63が半径方向内側に移動する。
【0046】
そして、各ロックギヤ61、62の外歯61a、62aがギヤプレート40の内歯41に噛合するとともに、第1ロックギヤ61と他方の第1案内面33bとの間に両可動ガイド63がそれぞれ食い込んだ緊合状態となることにより、ギヤプレート40の回動が制限され、リクライニング装置20がロック状態になる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係るリクライニング装置20では、可動ガイド63が、ベースプレート30に形成される一対の案内面のうち他方の第1案内面33bと第1ロックギヤ61との双方に接触し、バネ部材80によりベースプレート30の半径方向内側へ付勢されるように配置されている。そして、他方の第1案内面33bとこの他方の第1案内面33bに対向する可動ガイド63の対向面とには、バネ部材80の一側端部81が係合する被係合部65を構成する凹部35,64がそれぞれ形成されている。
【0048】
このため、ロックギヤ61,62の外歯61a,62aとギヤプレート40の内歯41との噛合を解除してロック解除するためにリクライニング操作レバー23を操作して、カム70が上記回転付勢に抗して回転駆動することで可動ガイド63が半径方向外側へ移動する際、一側端部81を介した付勢力は、可動ガイド63の凹部64と他方の第1案内面33bの凹部35との双方に分散して作用することとなる。これにより、一側端部81を介して可動ガイド63に作用する付勢力が低減するため、可動ガイド63を上記付勢力に抗して半径方向外側へ移動させるために必要なリクライニング操作レバー23の操作力を低減することができる。一方、バネ部材80自体の付勢力は変わらないことから、このバネ部材80の一側端部81と異なる他側端部82でカム70を回転付勢する構成でも、当該カム70に対して必要な付勢力を確保することができる。
したがって、可動ガイド63を付勢するためのバネ部材80自体の付勢力を低減することなくロック解除時に可動ガイド63に作用する付勢力を低減することができる。
【0049】
特に、可動ガイド63の凹部64は、バネ部材80の一側端部81から付勢力を受ける付勢面64aが、他方の第1案内面33b側ほど半径方向内側に傾斜して形成されるため、可動ガイド63が半径方向外側へ移動すると、付勢面64aに押し付けられた一側端部81が当該付勢面64aに沿って他方の第1案内面33bの凹部35側に移動する。これにより、一側端部81を介した付勢力が、可動ガイド63の凹部64よりも他方の第1案内面33bの凹部35により大きく作用するため、可動ガイド63を上記付勢力に抗して半径方向外側へ移動させるために必要なリクライニング操作レバー23の操作力をより低減することができる。
【0050】
なお、両凹部35,64のうち、可動ガイド63の凹部64の付勢面64aのみが上述のように半径方向内側に傾斜して形成されてもよい。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)バネ部材80は、その他側端部82がカム70に係合することで当該カム70を回転付勢することに限らず、所定の方向に付勢力を作用させるべき他の部材、例えば、ロックギヤ等に係合されることで、当該他の部材を上記所定の方向に付勢してもよい。
【0052】
(2)ベースプレート30の各案内凸部31,32に案内されるロックギヤは、両第1ロックギヤ61および両第2ロックギヤ62の4つに限らず、例えば、3つでもよいし、5つ以上であってもよい。この場合、各ロックギヤのうち、一部は凹部64が形成される可動ガイド63と凹部35が形成される一方の第1案内面33aとに案内されるように配置され、凹部64と凹部35とにより構成される被係合部65には、バネ部材80の一側端部81が係合される。このようにしても、可動ガイド63を付勢するためのバネ部材80自体の付勢力を低減することなくロック解除時に可動ガイド63に作用する付勢力を低減することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…車両用シート
11…シートクッション(第1の部材)
11a…下側ブラケット(第1の部材)
12…シートバック(第2の部材)
12a…上側ブラケット(第2の部材)
20…リクライニング装置
23…リクライニング操作レバー(操作部材)
30…ベースプレート
31,32…案内凸部
33a…一方の第1案内面(一方の案内面)
33b…他方の第1案内面(他方の案内面)
34a…一方の第2案内面
34b…他方の第2案内面
35…凹部
40…ギヤプレート
41…内歯
61…第1ロックギヤ
61a…外歯
62…第2ロックギヤ
62a…外歯
63…可動ガイド
64…凹部
64a…付勢面
65…被係合部
70…カム
80…バネ部材(付勢部材)
81…一側端部(係合端部)
82…他側端部
90…カムレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置であって、
前記第1の部材に取り付けられるベースプレートと、
前記第2の部材に取り付けられるとともに前記ベースプレートに対して相対回動可能に組み付けられて内歯を有するギヤプレートと、
前記ベースプレートに形成される一対の案内面のうち一方の案内面に接触した状態で半径方向に摺動可能にガイドされて組み付けられ、前記内歯と噛合可能な外歯を有するロックギヤと、
前記一対の案内面のうち他方の案内面と前記ロックギヤとの双方に接触し前記ベースプレートの半径方向内側へ付勢されるように配置されて、外方端から内方端に向けて漸次幅が狭く形成される可動ガイドと、
前記ロックギヤおよび前記可動ガイドの半径方向の移動を制御可能であって、前記外歯を前記内歯に噛合させる方向に回転付勢されるカムと、
前記可動ガイドを前記半径方向内側へ付勢する付勢部材と、
前記カムを前記回転付勢に抗して回転駆動させることで、前記可動ガイドを半径方向外側へ移動させて前記外歯と前記内歯との噛合を解除する操作部材と、
を備え、
前記他方の案内面とこの他方の案内面に対向する前記可動ガイドの対向面とには、前記付勢部材の係合端部が係合する被係合部を構成する凹部がそれぞれ形成されることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記可動ガイドを前記半径方向内側へ付勢するとともに、前記外歯が前記内歯に噛合する方向に前記カムを回転付勢することを特徴とする請求項1に記載のリクライニング装置。
【請求項3】
前記可動ガイドの前記凹部は、前記係合端部から付勢力を受ける付勢面が、前記他方の案内面側ほど前記半径方向内側に傾斜して形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のリクライニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91415(P2013−91415A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234677(P2011−234677)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000143639)株式会社今仙電機製作所 (258)
【Fターム(参考)】