説明

リソグラフィシステムのビームの同時測定

本発明は、多数のビームからのそれぞれのビームの強度が決定されるリソグラフィシステムであって、複数のビームを同時に感知して、これらの集合信号を与えるように構成されたセンサ領域を有するセンサを備えた測定装置を具備するリソグラフィシステムに関する。複数のビームが、関連する一時ブランキングパターンに従ってそれぞれ変調される。本発明は、さらに、測定された集合信号及びビームの一時ブランキングパターンによってそれぞれのビームの強度を計算する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のビーム(a multitude of beams)からのそれぞれのビームの強度が決定されるリソグラフィシステムであって、複数のビームを同時に感知して、これらの集合信号(aggregated signal)を与えるように構成されたセンサ領域を有するセンサを備えた測定装置を具備するリソグラフィシステムに関する。本発明は、さらに、測定された集合信号によってこのようなそれぞれのビームの強度を計算する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子の露光ビーム、光、又は他のタイプの照射線は、産業において、とりわけ、高集積マイクロパターン化半導体デバイスの製造において使用されている。このような半導体デバイスは、通常、半導体ウェーハに形成され、適切な材料の層がこの半導体ウェーハの上に堆積され、パターン化され、その後、所定のパターンに従ってエッチングされる。露光ビームが、しばしば、パターニング工程で使用される。このようなビームに露光される犠牲材料の部分は、次の工程でエッチングされ、その一方、ビームに露光されていない部分は、残り、例えばウェーハ上にパターンをもたらす。
【0003】
このプロセスでは、露光ビームの線量は、正確にモニタされ、それに応じてできるだけ適応されなければならない。線量が低すぎると、犠牲材料は十分に反応せず、また、犠牲材料は、次の工程でエッチングされない。その一方、線量が高すぎると、ビームのある部分は、露光されるべきでない領域にはみ出す可能性があり、この結果、望まれるよりも大きな表面がエッチングされる。どちらの場合も、意図されたパターンとは異なるパターンをもたらす。
【0004】
好ましくないことに、犠牲材料に達するビームの線量は、例えば、ビーム源の変化、露光システムに対する変更、転写されるパターンの変化などに起因して、時間にわたる変化の影響を受けやすい。それ故、ビーム露光系で使用されるビームの線量を決定することができる必要がある。このような線量は、(1又は複数の)露光ビームがターゲットにぶつかる点で、又はその点の近くで、多くのビームに対して迅速に決定されることができることが好ましい。
【0005】
速くかつ信頼できるようにして荷電粒子(CP)ビーム、すなわちCPビームの線量を決定するために、いくつかの解決策が既に提案されてきている。
【0006】
特開2004−200549号公報には、マルチビーム(multiple-beam)リソグラフィシステムが開示されている。このシステムでは、m×n行列形式の全ての電子ビーム中の電流の合計の絶対値が、平面上に設けられたファラデーカップを使用することによって測定され、また、前記m×nのビームの各々の相対値が、半導体検出器を使用して、すなわち、反射された電子、つまり二次電子の決定のために、シンチレータと光電子増倍管との組合せを使用することによって測定される。全ての電流に対して標準化された相対電流値が図表に示され、これは、続く描画動作での信頼性を改良するように、異常な値の検出を一目で可能にする。ファラデーカップは、その上に衝突する1又は全ての電子ビームの絶対合計電流を正確ではあるが比較的ゆっくり決定するために使用される。相対電流測定は、比較的速いがそれほど正確でなく、少なくとも1つの電子ビームの電流の相対的な表現を与える。全ての電子ビームの組み合わせられた全電流が知られているとき、全てのそれぞれの電子ビームに対する相対電流から、全てのそれぞれの電子ビームに対する絶対電流の評価がなされることができる。
【0007】
米国特許出願2006/0,138,359A1には、CPビーム露光装置が開示されている。この装置は、複数のCPビームを使用して露光を行うために、アパーチャアレイで形成された複数のアパーチャによって、CPビーム源からのCPビームを複数のCPビームに分割する。この装置は、
前記アパーチャアレイの前記アパーチャを通過する前記CPビームの強度を検出する検出ユニットと、
前記検出ユニットによって得られた前記検出の結果に基づいて前記CPビームの強度を調節するグリッドアレイと、
を具備する。米国特許出願2006/0,138,359A1による一実施の形態では、1又は複数のビームの強度が、露光装置で2つのレベルで測定される。まず、アパーチャアレイを通過するそれぞれのビーム又はグループのビームの各々に対して強度が測定される。これは、アパーチャアレイを通過する全ての他のビームをブランキングして、測定されることになっているビーム又はグループのビームを測定するために、それぞれのCPビームの近くにファラデーカップを位置決めすることによって行われる。ファラデーカップは、ウェーハ表面に近いビーム又はグループのビームの測定を得るために、ウェーハ表面上に、又はその近くに置かれる。各ビーム又はグループのビームの測定された強度は、メモリに格納され、後に参照値として使用される。
【0008】
ビームの強度のさらなる測定は、ウェーハのようなターゲットのパターニングフェーズ中に果されることができる。アパーチャアレイ上の表面によってブロックされるビームの部分の強度が測定され、前記表面は、互いに隔離されており、単一のアパーチャ又はグループのアパーチャと関連している。アパーチャを囲む表面によってブロックされたCPビームの一部の強度は、アパーチャを通過するCPビームの一部の強度と同様であると仮定される。従って、アパーチャアレイの関連するブロッキング表面上で測定されたCPビームの強度に基づいたアパーチャアレイから出る複数のCPビームのおおよその強度を決定することが可能となる。これらの測定中に得られる値は、前記参照値と比較され、また、システムは、アパーチャアレイから出るCPビームの均一性を最大にするように構成されている。
【0009】
アパーチャアレイから出るビームの実際のそれぞれのビームの強度を測定するために上述の装置を使用するとき、この場合にはファラデーカップである測定装置は、パターニングフェーズ中にビームがターゲットに達するところに近い位置にもたらさなければならない。測定装置のこの位置決めは、アパーチャアレイから出る複数のビームから出た各ビームに対して繰り返されなければならず、時間がかかり、特に、数千のビームが測定されなければならないシステムにとって非実用的である。さらに、ターゲットのレベルに達する前に所定の点でおおよそのCPビームの強度を測定するアパーチャアレイ上の検出面は、正確にアライメントされなければならず、CPビームと実質的に干渉することを許されない。検出面の正確なアライメントは、複雑な設計を必要とする。さらに、アパーチャが非常に小さいとき、例えば、数千のビームがアパーチャアレイから出る、又は高ビーム解像度に達することを可能にするために、CPビームは、検出面によって放出される電気信号によって影響され、このアプローチは、数千のそれぞれのCPビームが使用されるシステムにとって非実用的である。
【0010】
明らかに、好ましくは単一のセンサのみを使用して、最小時間の間だけ製造プロセスを遅らせる、多数(例えば、数万)のビームの各ビームの線量を迅速に決定するシステム及び方法が、産業上なおも必要である。
【発明の概要】
【0011】
この目的のために、第1の態様によれば、本発明は、マルチビームリソグラフィシステムを提供する。このマルチビームリソグラフィシステムは、多数のビームを与えるためのビーム源と、前記多数のビームから出た各ビームのためのブランカを有し、複数のビームを実質的に通過させるように構成されたブランカアレイと、各ビームがブランキングされるべきとき、及びブランキングされるべきでないときを各ビームに示す一時ブランキングパターン(temporal blanking pattern)を前記ブランカアレイに与えて、只一つの一時ブランキングパターンで各ビームを変調するための制御装置と、前記ブランカアレイの下流側に配置され、それぞれ変調された前記複数のビームを直接かつ同時に感知して、前記複数のビームの集合信号を与えるように配置されたセンサ領域を含むセンサを有する測定装置と、を具備する。この実施の形態は、複数のビームの直接かつ同時の測定を可能にし、集合信号をもたらす。効果的には、前記センサは、測定中、それぞれのビームの測定のためにセンサを再アライメントする際に時間を費やす必要をなくすように、適所にとどまることができる。さらなる効果は、センサが、ビームに露光されることになっているターゲットと同じレベルに置かれることができるということであり、これにより複数のビームがウェーハのようなターゲットにぶつかるので、ビームの測定を可能にする。複数のビームのそれぞれのビームを同時に測定することのさらなる効果は、センサの構成に複雑さを加えることのないよいスケーラビリティ(scalability)である。センサが個々の信号の代わりに各ビームに対して集合信号を与えるので、従来技術で見られるような手の込んだ電気配線の構成が省かれることができ、また、システムは、センサの領域を増加させることによってさらなるビームを測定するのに容易に適することができる。かくして、多数の(例えば、少なくとも数十万)ビームの集合信号を同時に得ることが可能である。単一のセンサのみが、スペース、メンテナンスの必要性を必要とするので、さらに、システムの構成の複雑さが最小限に保たれる。さらに、多数のビームの集合強度が測定されるので、センサのダイナミックレンジはより小さくあることができる。しかし、重要なことに、このような集合信号を正確に測定するために必要とされる時間が、それぞれのビームのはるかに小さな強度を正確に測定するために必要とされる時間よりもかなり短いことができる。この実施の形態は、約10秒で500,000以上のビームのそれぞれのビームの強度の決定を果すことができる。
【0012】
一実施の形態では、前記システムは、前記集合信号をそれぞれのビームの各々に対する強度の値に復調するように構成された復調器をさらに具備する。全てのそれぞれのビームに対する一時ブランキングパターンに関する情報は、時間にわたる集合信号と一緒に、復調器がそれぞれのビームの強度の値を推定するのに十分な情報を与える。2つのビームの2つの一時ブランキングパターンが等しくないので、復調が可能である。もし2つのビームの一時ブランキングパターンが等しければ、このような2つのビームがそれぞれ85%及び95%の強度を有するか、又は、同じ2つのビームが、例えば、それぞれ95%及び85%、又は100%及び80%の強度を有するかどうかを、一連の集合信号の測定から得ることは不可能である。
【0013】
一実施の形態では、前記復調器は、前記制御装置に前記一時ブランキングパターンを与えて、これらの対応する一時ブランキングパターン及び時間の関数としての前記複数のビームの集合信号に基づいてそれぞれのビームの強度の測度(measure)を計算するように構成された電子データプロセッサ(113)を有する。代表的には、それぞれのビームに対する一時ブランキングパターンは、コンピュータのような電子データプロセッサのメモリに格納される。電子データプロセッサは、制御装置にこれらのパターンを与える。代わって、前記制御装置は、所定の時間、ブランカアレイにブランキングパターンを与える。ブランカアレイに異なるパターンが与えられるごとに集合強度信号の測定がなされ、電子データプロセッサのメモリに格納されることができる。従って、全ての測定が全て行われたとき、それぞれのビームの強度を計算するために十分な情報が電子データプロセッサにより利用可能である。これが行われることができる方法が、本明細書の以下の部分に記載される。
【0014】
一実施の形態では、前記センサ領域は、システムの前記多数のビームの全てのビームを同時に感知するように構成されている。ブランカアレイのブランカは、ビームを単に実質的にブランキングすることが可能であり、例えば、ブランカは、ビームの99%のブランキング可能であることができ、ビームの1%を残余ビーム(residual beam)として通過させる。単一の残余ビームの信号を評価する方法は、多数のビームがブランキングされていないときの集合信号、1を除く全ての多数のビームがブランキングされたときの集合信号、及びビームの信号対比値を測定することである。第1のものから第2のもの及び第3のものを減じることによって、それぞれのビームの残差信号を与える。
【0015】
一実施の形態では、前記センサ領域は、連続した領域である。多数のビームの全てのビームを同時に感知するように構成されたセンサ領域が連続しているとき、センサ上へのビームのアライメントが簡単に保たれることができる。
【0016】
システムの一実施の形態では、前記多数のビームは、多数の荷電粒子ビームを含み、また、前記センサは、前記複数のビームによって発生された集合電流を測定するように構成された電流測定装置を有する。効果的には、本発明によれば、特にセンサ領域で、必要な電気配線をかなり少なくすることができ、使用される荷電粒子ビームの望ましくない偏向と分散との少なくとも一方をより低減させる。電場に対する荷電粒子ビームの感度は、ブランカアレイで効果的に使用されることができ、このようなブランカアレイは、光電池セルで囲まれたアパーチャのアレイを有することができる。このようなセルが光で照射されたとき、アパーチャのまわりに局部電流が発生され、単一のビームを偏向させるのに適している。かくして、ブランキングアレイ全体は、電気制御線を使用することなく効果的に構成されることができ、また、CPビームと干渉しない光源を使用して制御されることができる。
【0017】
一実施の形態では、前記電流測定装置は、少なくとも1つのファラデーカップと、電流クランプと発光物質との少なくとも一方と、フォトンカウンタとを有する。ファラデーカップの使用は、簡単なセンサの効果を与える一方、センサ自身は、後方散乱されたCPビームの分散にかなりの程度まで無反応である。さらに、ファラデーカップを使用してなされる測定は、このカップで捕集された荷電粒子の数と、ファラデーカップで発生された測定された電流との間に直接的な関係を与える。電流クランプ又は同様の装置が電流を測定するために使用される場合には、このクランプは、測定中にビームをブロックしないので、パターニングフェーズ中に使用されることができる。荷電粒子の数に加えて、粒子のエネルギが関係しているとき、イットリウムアルミニウムガーネット結晶のような発光物質及びフォトンカウンタが使用されることができる。
【0018】
一実施の形態では、本発明によるシステムは、前記ビームに露光されるターゲットを保持し、かつ移動させるためのステージを有するターゲット位置決めシステムをさらに具備する。このターゲット位置決めシステムでは、前記測定装置は、前記ステージに装着される。測定装置がステージに装着されたとき、測定中のビームと測定装置との間の距離は、パターニングフェーズ中のビームとターゲットとの間の距離とほぼ等しくなることができ、かくして、これらビームがターゲットにぶつかるので、ビームの強度のよい表示を与える。
【0019】
一実施の形態では、前記システムは、前記複数のビームを前記センサ領域に方向付けるための収束手段をさらに具備する。前記複数のビームを方向付けることによって、それぞれのビームが組み合わせることが可能でないとき、例えば、特定のセンサ領域が対応するビームに割り当てられたときに可能であるよりもはるかに小さなセンサ領域が使用されることができる。好ましくは、前記収束手段は、リソグラフィシステムの光学カラムの端部に位置される。一実施の形態では、前記収束手段は、前記測定装置中に含まれる。
【0020】
一実施の形態では、前記収束手段は、光学系、又は電界レンズのような収束要素を有する。
【0021】
一実施の形態では、前記測定装置は、前記センサ領域の前方に置かれたナイフエッジ又はナイフエッジアレイをさらに有する。この実施の形態で得られる測定を使用して、それぞれのビームの強度の計算と同様にしてそれぞれのビームのプロファイルを計算することが可能である。
【0022】
一実施の形態では、前記ナイフエッジ又はナイフエッジアレイは、システムのイメージ面に実質的に置かれる。
【0023】
第2の態様によれば、本発明は、ターゲット上にマルチビームを投影するためのマルチビームカラムを有するマルチビームリソグラフィシステムを提供する。前記カラムは、多数のビームを与えるためのビーム源と、前記ビーム源と前記ターゲットとの間に配置され、前記多数のビームから出た各ビームのためのブランカを有し、複数のビームを実質的に通過させるように構成されたブランカアレイと、各ビームがブランキングされるべきとき、及びブランキングされるべきでないときを各ビームに示すブランキングパターンを前記ブランカアレイに与えるための制御装置と、前記ターゲット上に前記複数のビームを投影するための投影手段と、を具備し、このシステムは、さらに、前記マルチビームカラムのスループットを試験するように、前記マルチビームカラムの下流側に配置されたセンサを具備し、前記センサは、前記多数のビームの全てのビームを同時に感知するように構成されたセンサ領域を有し、前記センサは、前記複数のビームの集合信号を与えるように配置されている。このセットアップは、ターゲットのパターニング中に使用されるのと同じ光学系を使用して、ビームの強度の正確な測定を果す。測定中、測定に影響を及ぼしうるさらなる光学系を使用する必要はなく、また、ターゲットのパターニング中、適切であるようにして複数のビームを異なるように偏向する必要もない。
【0024】
好ましい一実施の形態では、前記センサ領域は、ターゲットとほぼ同じレベルに置かれる。これは、これらがターゲットにぶつかるので、ビームの強度の非常に正確で現実的な測定をもたらす。センサがファラデーカップを有する場合には、カップの入口は、好ましくは、ターゲットとほぼ同じレベルに置かれる。
【0025】
第3の態様によれば、本発明は、ここに記述されるようなシステムでのビームの同時測定の方法を与える。この方法は、
i)各ビームブランカに対して、各々が所定の時間間隔にわたる関連するビームの変調を示す一時ブランキングパターンを有する多数の一時ブランキングパターンを与える工程と、
ii)関連する一時ブランキングパターンをビームに関連する各ブランカに流すことによって、前記時間間隔中に前記多数のビームを同時に変調して、全てのブランキングされていないビームの集合ビームの強度信号を感知して、前記一時パターンの流れ中に時間の関数として前記信号を測定する工程と、
iii)これらの関連する一時ブランキングパターン及び時間の関数としての前記信号に基づいて、それぞれのビームの強度の測度を計算する工程と、を具備する。
この方法を使用することによって、ただ1つのセンサを使用してなされる集合測定からそれぞれのビームの強度を計算することが可能となる。これらのそれぞれの強度が決定されることができる速度(rate)は、ビームの各測定に対するセンサを再アライメントする必要がないので、非常に速いことができる。さらに、いくつかのビームがブランキングされずに残っているときはいつでも、それぞれのビームの強度の決定の精度に対する残差信号の影響は、この方法を使用して低減される。
【0026】
一実施の形態では、前記工程iii)は、これらに関連する一時ブランキングパターン及び時間の関数としての前記信号に基づいて、それぞれのビームの強度の測度を計算することによって前記信号を復調することを含む。
【0027】
一実施の形態では、前記一時ブランキングパターンは、互いにほぼ直交する。一時ブランキングパターン間の高度の独立性は、結果として生じる集合信号が容易にデコードされるのを可能にする。
【0028】
一実施の形態では、前記i)及びii)の工程中、前記多数のビームのほぼ半分のみがスイッチを切り換えられる。この実施の形態では、測定される集合信号の範囲は、実質的に減少されることができ、より小さな範囲でより感知可能なセンサの使用を可能にし、また、測定がより迅速に果されることを可能にする。さらに、集合信号のノイズの影響及びここから得られるそれぞれのビームの強度は、1つのそれぞれのビームの強度のわずかな変化が他のそれぞれのビームの強度のわずかな変化によってほぼ打ち消されることができるので、かなり少ない。
【0029】
一実施の形態では、前記多数の一時ブランキングパターンは、擬似乱数を使用して発生される。歴史を経て、擬似乱数を発生させる多くの方法が考案され、また、多くのコンピュータにインプリメントされた乱数発生器が広くテストされている。線形フィードバックシフトレジスタを使用した有名で周知な1つの方法は、1996年のテキサスインスツルメントによる刊行物「LFSRとは何か」に開示されており、これは、一時ブランキングパターンを発生させるのに適している。このようなブランキングパターンの高度な不規則性は、これらがポテンシャルの干渉と一致しにくいようにし、これは、例えば、測定装置の電源にありうるし、また、結果の正確さに影響しうる。さらに、ランダムな要素は、擬似ランダム発生パターンによってこのようなパターンの1の部分又は複数の部分を置き換えることによって、非ランダム発生一時ブランキングパターンに加えられることができる。
【0030】
一実施の形態では、一時ブランキングパターンは、アダマール行列又はウォルシュ行列のような直交行を有する直交行列の行から得られる。出発点としてこのような行列を使用して、大量の一時ブランキングパターンが発生されることができる。
【0031】
一実施の形態では、前記一時ブランキングパターンは、各一時ブランキングパターンが多くのオン・オフの切り替え(transition)を含むように選択される。効果的には、集合信号のビームの強度中の周期的な変化の影響は、かくして低減されることができる。このような周期的な変化は、例えば、ビーム発生器に動力を供給する電源の周波数に依存する。一時ブランキングパターンのいくつかの設定が利用可能であるとき、それぞれのビームに対して一時ブランキングパターンが多くの切り替えを有する設定が好まれる。
【0032】
一実施の形態では、前記一時ブランキングパターンは、ほぼいつでも、ブランキングされていないビームの合計量がほぼ一定であるように構成されている。言い換えれば、測定中、センサに達する複数のビーム中のビームの数はいつでもほぼ同じであり、センサのダイナミックレンジを減少させる。
【0033】
一実施の形態では、前記センサは、前記複数のビームによって発生される集合電流を測定するように配置された電流測定装置を有する。この電流測定装置は、可変利得増幅器をさらに有し、この可変利得増幅器は、高利得かつ低ノイズの設定を含む第1の設定と、低利得かつ高ノイズの設定を含む第2の設定との間で切り替えられることができ、また、この方法は、前記集合電流が小さいと予期されるときに前記可変利得増幅器を前記第1の設定に設定する工程、もしくは前記集合電流が大きいと予期されるときに前記可変利得増幅器を前記第2の設定に設定する工程を含む。
【0034】
(ブランカアレイを通過するビームの数のいくつかの要因時間でありうる)予期される集合電流に基づいて増幅器の利得を適合調節させることによって、より高精度な測定が得られることができる。
【0035】
第4の態様によれば、本発明は、ここに記載されるシステムでの使用に適した測定装置を提供する。この装置は、複数のビームを同時に感知して前記複数のビームの集合信号を与えるように配置されたセンサ領域を含むセンサを有し、また、前記測定装置は、さらに、前記センサ領域の前方に置かれたナイフエッジ又はナイフエッジアレイを有する。ナイフエッジアレイのナイフエッジに対するビームの位置は、前記ビームを偏向させることによって、又は前記測定装置を所望の位置にもたらすことによって制御されることができる。ナイフエッジの各位置に対して、ここに記載される任意の方法が、多数のビームから出たビームの各々に関するプロファイルを得るために使用されることができる。
【0036】
要約すると、本発明は、多数のビームからのそれぞれの変調されたビームの強度が決定されるリソグラフィシステムであって、複数のビームを同時に感知して、これらの集合信号を与えるように構成されたセンサ領域を有するセンサを備えた測定装置を具備するリソグラフィシステムに関する。これらビームは、関連する一時ブランキングパターンに従ってそれぞれ変調される。本発明は、さらに、測定された集合信号及びビームの一時ブランキングパターンによってそれぞれのビームの強度を計算する方法に関する。
【0037】
明細書中に記載され示されるさまざまな態様並びに特徴は、それぞれ、可能なところならどこにでも適用されることができる。これらのそれぞれの態様、特に、添付の従属請求項に規定される態様並びに特徴は、分割特許出願の対象となることができる。
【0038】
本発明は、添付図面に示される例示的な実施の形態に基づいて詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明に係るマルチビームリソグラフィシステムを示す図である。
【図2】図2は、本発明に係るターゲット位置決めシステムを含むマルチビームリソグラフィシステムを示す断面図である。
【図3】図3は、行が一時ブランキングパターンとして使用されることができる4次のアダマール行列を示している。
【図4】図4は、本発明によって得られるような、所定時間にわたる単一の信号のプロットの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1には、本発明に係るシステムが示される。多数の一時ブランキングパターンが、例えば、コンピュータ、すなわち電子データプロセッサ113によって、制御装置112に与えられる。ビーム源101は、ビーム102を与え、これは、発散するビーム102を大部分は平行なビームに変えるように構成されたコリメータ103を通過する。そして、かくして生じた大部分は平行なビームが、アパーチャアレイ104に投影され、このアパーチャアレイを部分的に通る。アパーチャアレイは、ビームを多数のビーム105に分割し、分割されたビームがアパーチャアレイから出る。コンデンサレンズ106は、これらがビームブランカアレイ107に達する前に、それぞれのビームを集束させるために使用される。ブランカアレイは、制御装置112によってブランカアレイに流される一時パターンに対応する複数のビームのみを通させるように構成されている。ブランカアレイは、偏向器アレイ1071と、この偏向器アレイ1071の下流側で所定の距離離れたさらなるアパーチャアレイ1072とを有する。続いて、測定装置110によって測定された前記複数のビームの集合信号が、本発明の方法によるさらなる処理のために、コンピュータ113に格納される。かくして、コンピュータ113は、一旦測定が完了すれば、集合信号を復調するために使用されることができる、すなわち、コンピュータは、これらの関連する一時ブランキングパターン及び時間の関数としての集合信号に基づいて、それぞれのビームの強度の測度を計算するように構成されることができる。前記複数のビームのところの位置108は、パターニングフェーズ中、ビームがターゲットに衝突するところと実質的に同じレベル、すなわち高さでイメージ化される。
【0041】
図2は、本発明に係るターゲット位置決めシステムを含むマルチビームリソグラフィシステム1を示す断面図である。例えばシリコンウェーハであるターゲット3は、このターゲットを保持するためにターゲットテーブル5上に保持される。ターゲットテーブルは、y移動ステージ6に置かれ、続いて、このy移動ステージ6がx移動ステージ7に置かれる。x移動ステージは、さらに、ほぼターゲットと同じレベルに位置されたセンサ領域を有する測定装置2を含む。真空チャンバ4内に収容された光学カラム111は、複数のビームを与える。新しいターゲットがパターン化されるとき、及び、多数のビームから出たそれぞれのビームの線量の可能な変化がモニタされなければならないときはいつでも、ステージは、測定装置が、強度が測定される全てのビームによって達せられる位置にもたらされる。これらのそれぞれのビームの強度の測定及び計算の後、従って、前記強度が調節されることができ、ステージは、ビームの下にターゲットを位置決めするように移動されて、ターゲットのパターニングが開始されることができる。測定装置のための必要なセンサ領域は、複数のビームがセンサ領域に達する前に、これらビームを集束させるための収束手段を使用することによって縮小されることができる。代わって、測定装置は、多数のビームから出る各ビームに対してビームプロファイルを決定するためのナイフエッジアレイを有することができる。ナイフエッジアレイに関してビームのいくつかの異なる位置のセンサ上に入射するビームのビーム強度を計算することによって、多数のビームから出る各ビームのそれぞれのビームのプロファイルが得られることができる。
【0042】
図3には、行が一時ブランキングパターンとして使用される直交行列Hが示される。問題となる行列は、4次のアダマール行列であるが、測定の所望の精度に依存して、他の正方行列が使用されることができる。計算を容易にするために、これら行列は、好ましくは、2値行列である。一例では、複数の強度を有する4つのビームがあると仮定する。
【数1】

【0043】
一時パターンの一部をブランカアレイに流す各時間間隔nで、測定手段によって測定された集合信号xは、
【数2】

【0044】
すなわち、例えば、ある場合には、
【数3】

【0045】
である。
実際には、集合信号は、ノイズをさらに含む。4つの測定に対するノイズが、
【数4】

【0046】
のようにモデル化されるならば、ノイズを含む測定された集合信号は、
【数5】

【0047】
である。集合信号に対するそれぞれのビームの寄与を取り戻す(retrieve)ためには、
【数6】

【0048】
を計算すれば十分である。この例では、明確化及び簡便化の理由のためにアダマール行列が使用されるが、いくつかのさらなる効果を与える同様の特性を有する他の種類の正方行列も使用されることができる。しかし、いずれの場合も、本方法は、全ての一時ブランキングパターンが他の一時ブランキングパターンに対してほぼゼロの内積を有しているので、1つを除く集合信号への全ての一時ブランキングパターンの寄与は、集合信号に関して1つの一時ブランキングパターンの内積をとることによって取り除かれることができる。例において、集合信号の第1の要素は、行列Hの第1の列の和が次の列の和よりもはるかに大きいことにより、他の要素よりもはるかに高い値を有する。集合信号の第1の要素がちょうど無視されたとき、その後、測定装置のダイナミックレンジは、1つのビームの測定のコストをかなり減少させることができる。代わって、測定装置のダイナミックレンジの必要条件を減少させるために、全ての列がほぼ等しい和を有する行列が使用されることができる。また、擬似ランダム発生行列の行から得られる一時ブランキングパターンは、特に、測定中、干渉の排除(rejection)の改良やランダムノイズのような、望ましい特性を与え、測定装置のダイナミックレンジを減少させ、比較的低ノイズの測定装置が使用されることが可能である。
【0049】
図4では、グラフは、本発明に係る方法に使用されるような所定時間にわたる単一の信号を示している。信号を得るために使用された一時ブランカパターンは、6次のアダマール行列の行からなる。信号中のピークは、行列の第1の列の和が他の列の和よりもはるかに大きいという事実によって引き起こされる。一時ブランキングパターンから得られるこれらのアダマール行列は、測定開始時に、全てのビームがブランカアレイを通過し、その一方、他の時は、半分のビームのみが通過する。グラフは、ダイナミックレンジの改良を示しており、これは、1つのビームを測定することによってか、例えば、一時ブランキングパターンから得られる擬似ランダム発生行列を使用することによっての少なくとも一方によって果されることができる。
【0050】
要約すると、本発明は、多数のビームからのそれぞれの変調されたビームの強度が決定されるリソグラフィシステムであって、複数のビームを同時に感知してその集合信号を与えるように構成されたセンサ領域を有するセンサを備えた測定装置を具備するリソグラフィシステムに関する。これらビームは、関連する一時ブランキングパターンに従ってそれぞれ変調される。本発明は、さらに、測定された集合信号及びビームの一時ブランキングパターンによってそれぞれのビームの強度を計算する方法に関する。
【0051】
上の記載は、好ましい実施の形態の動作を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解される。上の説明から、多くの変形例が、本発明の意図並びに範囲に含まれることが当業者にとって明白である。例えば、説明された実施の形態は、全て、荷電粒子ビームに関するものであるが、極紫外(UV)のような、光リソグラフィシステムに適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のビームを与えるためのビーム源と、
前記多数のビームから出た各ビームのためのブランカを有し、複数のビームを実質的に通過させるように構成されたブランカアレイと、
各ビームがブランキングされるべきとき、及びブランキングされるべきでないときを各ビームに示す一時ブランキングパターンを前記ブランカアレイに与えて、只一つの一時ブランキングパターンで各ビームを変調するための制御装置と、
前記ブランカアレイの下流側に配置され、それぞれ変調された前記複数のビームを直接かつ同時に感知して、前記複数のビームの集合信号を与えるように配置されたセンサ領域を有するセンサを含む測定装置と、を具備するマルチビームリソグラフィシステム。
【請求項2】
前記集合信号をそれぞれのビームの各々に対する強度の値に復調するように構成された復調器をさらに具備する請求項1のマルチビームリソグラフィシステム。
【請求項3】
前記復調器は、前記制御装置に前記一時ブランキングパターンを与えて、これらの対応する一時ブランキングパターン及び時間の関数としての前記複数のビームの前記集合信号に基づいてそれぞれのビームの強度の測度を計算するように構成された電子データプロセッサを有する請求項2のマルチビームリソグラフィシステム。
【請求項4】
前記センサ領域は、システムの前記多数のビームの全てのビームを同時に感知するように構成されている請求項1ないし3のいずれか1のシステム。
【請求項5】
前記センサ領域は、連続した領域である請求項1ないし4のいずれか1のシステム。
【請求項6】
前記多数のビームは、多数の荷電粒子ビームを含み、また、
前記測定装置は、前記複数のビームによって発生された集合電流を測定するように配置された電流測定センサを有する請求項1ないし5のいずれか1のシステム。
【請求項7】
前記電流測定センサは、少なくとも1つのファラデーカップと、電流クランプと発光物質との少なくとも一方と、フォトンカウンタとを有する請求項6のシステム。
【請求項8】
前記ビームに露光されるターゲットを保持し、かつ移動させるためのステージを有するターゲット位置決めシステムをさらに具備し、
前記測定装置は、前記ステージに装着される請求項1ないし7のいずれか1のシステム。
【請求項9】
前記複数のビームを前記センサ領域に方向付けるための収束要素をさらに具備する請求項1ないし8のいずれか1のシステム。
【請求項10】
前記測定装置は、前記センサ領域の前方に置かれたナイフエッジ又はナイフエッジアレイをさらに有する請求項1ないし9のいずれか1のシステム。
【請求項11】
前記ナイフエッジ又はナイフエッジアレイは、システムのイメージ面に実質的に配置されている請求項10のシステム。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1のシステムで複数のビームを同時に測定する方法であって、
i)各ブランカに対して、各々が所定の時間間隔にわたる関連するビームの変調を示す一時ブランキングパターンを有する多数の一時ブランキングパターンを与える工程と、
ii)関連する一時ブランキングパターンをビームに関連する各ブランカに流すことによって、前記時間間隔中に前記多数のビームを変調して、全てのブランキングされていないビームの集合ビームの強度信号を感知して、前記一時パターンの流れ中に時間の関数として前記信号を測定する工程と、
iii)これらに関連する一時ブランキングパターン及び時間の関数としての前記信号に基づいて、それぞれのビームの強度の測度を計算する工程と、を具備する方法。
【請求項13】
前記工程iii)は、これらに関連する一時ブランキングパターン及び時間の関数としての前記信号に基づいて、それぞれのビームの強度の測度を計算することによって前記信号を復調することを含む請求項12の方法。
【請求項14】
前記多数のビームの前記一時ブランキングパターンは、互いにほぼ直交する請求項12又は13の方法。
【請求項15】
前記i)及びii)の工程中、前記多数のビームのほぼ半分のみがスイッチを切り換えられる請求項12ないし14のいずれか1の方法。
【請求項16】
前記多数の一時ブランキングパターンは、擬似乱数を使用して発生される請求項12ないし15のいずれか1の方法。
【請求項17】
前記一時ブランキングパターンは、各一時ブランキングパターンが、多数のオン・オフの切り替えを含むように選択される請求項12ないし16のいずれか1の方法。
【請求項18】
前記一時ブランキングパターンは、ほぼいつでも、ブランキングされていないビームの合計量がほぼ一定であるように構成されている請求項12ないし17のいずれか1の方法。
【請求項19】
前記測定装置は、前記複数のビームによって発生される集合電流を測定するように配置された電流測定センサを有し、
前記測定装置は、可変利得増幅器をさらに有し、この可変利得増幅器は、高利得かつ低ノイズの設定を有する第1の設定と、低利得かつ高ノイズの設定を有する第2の設定とを有し、
前記集合電流が小さいと予期されるときに前記可変利得増幅器を前記第1の設定に設定する工程、もしくは前記集合電流が大きいと予期されるときに前記可変利得増幅器を前記第2の設定に設定する工程を含む請求項12ないし18のいずれか1の方法。
【請求項20】
複数のビームを同時に感知し、かつ、前記複数のビームの集合信号を与えるように配置されたセンサ領域を有するセンサを有し、さらに、前記センサ領域の前方に配置されたナイフエッジ又はナイフエッジアレイを有する請求項1ないし11のいずれか1のシステムでの使用に適した測定装置。
【請求項21】
ターゲット上にマルチビームを投影するためのマルチビームカラムを有するマルチビームリソグラフィシステムであって、前記カラムは、
多数のビームを与えるためのビーム源と、
前記ビーム源と前記ターゲットとの間に配置され、前記多数のビームから出た各ビームのためのブランカを有し、複数のビームを実質的に通過させるように構成されたブランカアレイと、
各ビームがブランキングされるべきとき、及びブランキングされるべきでないときを各ビームに示すブランキングパターンを前記ブランカアレイに与えるための制御装置と、
前記ターゲット上に前記複数のビームを投影するための投影手段と、
前記マルチビームカラムのスループットを試験するように、前記マルチビームカラムの下流側に配置され、前記多数のビームの全てのビームを同時に感知するように構成されたセンサ領域を有し、前記複数のビームの集合信号を与えるように配置されたセンサと、
これらに対応する一時ブランキングパターン及び時間の関数としての前記複数のビームの集合信号に基づいてそれぞれのビームの強度の測度を計算することによって前記集合信号を復調するための復調器と、を具備するマルチビームリソグラフィシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−508462(P2012−508462A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535531(P2011−535531)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050671
【国際公開番号】WO2010/053365
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(505152479)マッパー・リソグラフィー・アイピー・ビー.ブイ. (55)
【Fターム(参考)】