説明

リチウムイオン電池およびその製造方法

【課題】金属異物に起因する内部短絡を抑制して信頼性向上を図ることができるリチウムイオン電池を提供する。
【解決手段】本発明では、例えば、正極PELの第1面に形成された正極活物質と接着するようにセパレータSP1が形成され、かつ、正極PELの第1面とは反対側の第2面に形成された正極活物質と接着するセパレータSP2が形成されている。したがって、本発明によれば、正極PELとセパレータSP1との間、あるいは、正極PELとセパレータSP2の間に隙間が存在しないことから、正極PELに付着する金属異物の侵入を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に関し、特に、正極、負極、および、正極と負極とを電気的に分離するセパレータとを備えるリチウムイオン電池に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−276503号公報(特許文献1)や特開2006−351386号公報(特許文献2)には、正極、あるいは、負極と、セパレータとを別部品で構成する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−276503号公報
【特許文献2】特開2006−351386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯電子機器の発達に伴い、これらの携帯電子機器の電力供給源として、繰り返し充電が可能な小型二次電池が使用されている。中でも、エネルギー密度が高く、サイクルライフが長いとともに、自己放電性が低く、かつ、作動電圧が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池は、上述した利点を有するため、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機などの携帯電子機器に多用されている。さらに、近年では、電気自動車用電池や電力貯蔵用電池として、高容量、高出力、かつ、高エネルギー密度を実現できる大型のリチウムイオン電池の研究開発が進められている。特に、自動車産業においては、環境問題に対応するため、動力源としてモータを使用する電気自動車や、動力源としてエンジン(内燃機関)とモータとの両方を使用するハイブリッド車の開発が進められている。このような電気自動車やハイブリッド車の電源としてもリチウムイオン電池が注目されている。
【0005】
リチウムイオン電池は、例えば、正極活物質を塗着した正極板と、負極活物質を塗着した負極板と、正極板と負極板の接触を防止するセパレータとを捲回した電極捲回体を備えている。そして、リチウムイオン電池では、この電極捲回体が外装缶に挿入されるとともに、外装缶内に電解液が注入されている。つまり、リチウムイオン電池では、金属箔に正極活物質を塗着した正極板と、金属箔に負極活物質を塗着した負極版とが帯状に形成され、帯状に形成された正極板と負極板が直接接触しないように、セパレータを介して断面渦巻状に捲回されて電極捲回体が形成される。
【0006】
このように、正極板と負極板とセパレータとを軸芯の回りに捲回して電極捲回体が形成されるが、通常のリチウムイオン電池では、正極板と負極板とセパレータが別部品(別体)により構成されているため、例えば、正極板とセパレータとの間に隙間が存在する。そして、リチウムイオン電池の製造工程では、上述した捲回体を形成する前に正極板と負極板を所定の大きさに切断し、加えて正極並びに負極の集電タブをやはり正極板と負極板を切断して形成する。さらに、上述した電極捲回体を形成した後、例えば、正極板に形成されている正極集電タブを正極集電リングに超音波溶着したり、負極板に形成されている負極集電タブを負極集電リングに超音波溶着する工程が存在する。さらには、電極捲回体は外装缶(容器)に挿入されて、この外装缶に電解液を注入した後、外装缶の内部を密閉するために、外装缶と蓋とを溶接などで接続する工程が存在する。
【0007】
具体的に、正極集電タブと正極集電リングとは、正極集電タブにアルミニウムリボンを捲きつけ、このアルミニウムリボンに正極集電タブを超音波溶着で接続することが行われている。このとき使用される超音波溶着は、アルミニウムリボンと正極集電タブとを擦りつけることによる原子相互拡散によって、アルミニウムリボンと正極集電タブとを接続するものである。したがって、正極集電タブとアルミニウムリボンとを超音波溶着で接続する場合、アルミニウムリボンと正極集電タブとの擦り合いによって金属異物(アルミニウム)が発生するおそれが高くなる。同様の現象は、負極集電タブと銅リボンの接続でも生じる。つまり、負極集電タブと銅リボンとを超音波溶着で接続する場合、銅リボンと負極集電タブとの擦り合いによって金属異物(銅)が発生するおそれが高くなる。さらに、外装缶と蓋とを接続する工程で使用される溶接(アーク溶接)では、例えば、溶接屑が発生しやすくなる。
【0008】
以上のことから、電極捲回体を形成する前後に実施される工程によって、電極捲回体の内部に金属異物が侵入するポテンシャルが高くなる。特に、通常のリチウムイオン電池では、正極板と負極板とセパレータが別部品で構成されているため、例えば、正極板とセパレータとの間に隙間が存在し、この隙間に上述した製造工程で発生した金属異物が侵入しやすくなる。このようにして、電極捲回体の内部に金属異物が侵入すると、侵入した金属異物がセパレータを突き破って、正極と負極が金属異物で短絡したり、例えば、正極とセパレータの隙間に侵入した金属異物が正極に付着すると、付着した金属異物が電解液中に溶解し、その後、負極に析出する現象が生じる。そして、負極からの析出によって成長した金属が正極まで達すると、正極と負極とが短絡してしまう問題点が生じる。
【0009】
以上、通常のリチウムイオン電池である電極捲回体を形成するタイプのリチウムイオン電池を用いて説明したが、例えば、正極活物質を塗着した正極板と、負極活物質を塗着した負極板と、正極板と負極板の接触を防止するセパレータからなるリチウムイオン電池であれば、電極捲回体を形成しないラミネートタイプのリチウムイオン電池でも、正極板と負極板を所定の大きさに切断するための切断工程によって生じる金属異物が、正極板と負極板とセパレータとの間に侵入すると、金属異物がセパレータを突き破って、正極と負極が金属異物で短絡したり、例えば、正極とセパレータの隙間に侵入した金属異物が正極に付着すると、付着した金属異物が電解液中に溶解し、その後、負極に析出する現象が生じる。そして、負極からの析出によって成長した金属が正極まで達すると、正極と負極とが短絡してしまう問題点が生じる。
【0010】
本発明の目的は、金属異物に起因する内部短絡を抑制して信頼性向上を図ることができるリチウムイオン電池を提供することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
本発明におけるリチウムイオン電池は、(a)正極と、(b)負極と、(c)前記正極と前記負極とを電気的に分離する第1セパレータと、(d)前記正極と前記負極とを電気的に分離する第2セパレータと、を備える。このとき、前記第1セパレータと前記第2セパレータは、前記正極、あるいは、前記負極と接着していることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明におけるリチウムイオン電池は、(a)正極と、(b)負極と、(c)前記正極と前記負極とを電気的に分離する第1セパレータと、(d)前記正極と前記負極とを電気的に分離する第2セパレータと、を備える。このとき、前記第1セパレータと前記第2セパレータは、前記正極、あるいは、前記負極と一体化していることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明におけるリチウムイオン電池の製造方法は、(a)金属板上に電極材を塗布し、前記電極材上にセパレータ材を塗布する工程と、(b)前記(a)工程後、塗布した前記電極材および前記セパレータ材を乾燥させる工程と、(c)前記(b)工程後、乾燥させた前記電極材および前記セパレータ材に対して、加熱下での加圧処理を施す工程と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0017】
金属異物に起因する内部短絡を抑制して、リチウムイオン電池の信頼性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】リチウムイオン電池の模式的な構成を示す図である。
【図2】円筒形のリチウムイオン電池の内部構造を示す断面図である。
【図3】電極捲回体を構成する前段階の構成要素を示す図である。
【図4】正極、第1セパレータ、負極NEL、および、第2セパレータを軸芯の回りに捲回して電極捲回体を形成する様子を示す模式図である。
【図5】実施の形態1における正極および負極の構成を示す断面図である。
【図6】実施の形態1におけるセパレータ付き正極と、負極とを重ね合わせた状態を示す図である。
【図7】軸芯の回りに、セパレータ付き正極と負極とを捲回させる様子を示す図である。
【図8】第1変形例の構成を示す断面図である。
【図9】第2変形例の構成を示す断面図である。
【図10】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図11】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図12】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図13】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図14】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図15】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図16】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図17】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図18】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図19】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図20】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図21】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図22】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図23】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図24】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図25】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図26】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図27】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図28】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図29】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図30】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図31】実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図32】実施の形態2における正極、セパレータおよび負極の構成を示す断面図である。
【図33】実施の形態2において、一体化した正極、セパレータおよび負極を示す平面図である。
【図34】実施の形態2において、一体化した正極、セパレータおよび負極を軸芯の回りに捲回する様子を示す図である。
【図35】セパレータに要求される特性と主な機能を示す表である。
【図36】相分離法によって、現状のセパレータを製造する工程フローを示す図である。
【図37】製造容易型のリチウムイオン電池の製造工程の一部を示すフローチャートである。
【図38】コスト低減型のリチウムイオン電池の製造工程の一部を示すフローチャートである。
【図39】ウェットオンウェット方式で顕在化する問題点を説明する図である。
【図40】ウェットオンウェット方式で顕在化する問題点を説明する図である。
【図41】ウェットオンウェット方式で顕在化する問題点を説明する図である。
【図42】粒径ばらつきと空孔率の関係を示すグラフである。
【図43】複数種類の粉末のそれぞれの粒径ばらつきを示すグラフである。
【図44】実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図45】実施の形態3で使用する塗布装置の一例を示す図である。
【図46】実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図47】実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図48】実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図49】実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【図50】実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0020】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0021】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0022】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0023】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0024】
(実施の形態1)
<リチウムイオン電池の概要>
リチウムは、酸化還元電位が−3.03V(vs.NHE)であり、地球上に存在する最も卑な金属である。電池の電圧は、正極と負極との電位差によって決まるので、リチウムを負極活物質に使用すると、最も高い起電力が得られる。また、リチウムの原子量は6.94であり、密度も0.534g/cmであってともに小さいことから、単位電気量あたりの重量が小さく、エネルギー密度も高くなる。したがって、リチウムを負極活物質に使用すると小型で軽量の電池を製造することができる。
【0025】
このように、リチウムは電池の負極活物質として魅力的な物質であるが、充放電可能な二次電池に適用する場合に問題が生じる。すなわち、リチウムを負極に使用した電池で充放電を繰り返すと、リチウムの溶解による放電反応と、リチウムの析出による充電反応が起こる。この場合、繰り返し充電によって、リチウムの析出反応が生じるため、二次電池の性能劣化や安全性に問題が生じる。例えば、充電過程で生成されるリチウムは活性表面で電解液溶媒と反応し、その一部はSEI(Solid Electrolyte Interface)(固定電解質界面)と呼ばれる皮膜の形成に消費される。このため、電池の内部抵抗が高くなり、放電効率も低下してくる。つまり、充放電のサイクルを繰り返すごとに電池容量が小さくなる。さらに、急速に充電すると、リチウムは針状・樹枝状の結晶形態(リチウムデンドライト)で析出し、二次電池での様々なトラブルを引き起こす元となる。例えば、リチウムデンドライトは、比表面積が大きく、副反応による電流効率の低下を加速するとともに、針状であるためにセパレータを突き破って正極と負極との間の内部短絡を引き起こすこともある。このような状態になると、自己放電が大きく電池として使用できなくなったり、内部短絡による発熱でガス噴出や発火に至る場合もある。以上のことから、リチウムを負極に使用した二次電池では、性能劣化や安全性に問題が生じることがわかる。
【0026】
そこで、溶解と析出という従来の原理と相違する原理の新型二次電池が検討されている。具体的には、正極と負極の両方にリチウムイオンを挿入・放出する活物質を使用する二次電池が検討されている。この二次電池の充放電過程では、リチウムの溶解と析出という現象は起こらず、リチウムイオンが電極活物質の間で挿入・脱離されるだけである。このタイプの二次電池は、「ロッキング・チェア」型、あるいは、「シャトルコック」型と呼ばれており、充放電の繰り返しに対して、リチウムイオンが挿入・脱離されるだけであるので、安定であるという特徴がある。この種類の電池を本明細書ではリチウムイオン電池と呼ぶことにする。上述したように、リチウムイオン電池では、正極と負極の両方とも充放電においてその構造は変化せず、リチウムイオンが挿入・脱離されるだけであるので(ただし、活物質の結晶格子は、リチウムイオンの挿入・脱離に対して膨張収縮する)、格段に長寿命のサイクル特性を有するとともに、電極に金属リチウムを使用しないので、安全性も飛躍的に高まっているという特徴を有する。
【0027】
ここで、リチウムイオンを挿入・脱離できる材料が電極の活物質に使用されるが、この活物質に要求される条件は以下に示すようなものである。すなわち、リチウムイオンという有限の大きさのイオンが挿入・脱離するので、リチウムイオンの納まるべきサイト(位置)と、リチウムイオンが拡散可能なチャンネル(経路)が活物質に必要とされる。さらに、活物質には、リチウムイオンの挿入(吸蔵)に伴い電子が材料中に導入される必要がある。
【0028】
以上のような条件を満たす正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物が挙げられる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが代表的な正極活物質として挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的に、正極活物質としては、リチウムを挿入・脱離可能な材料であり、予め充分な量のリチウムを挿入したリチウム含有遷移金属酸化物であればよく、遷移金属として、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)などの単体、または、2種類以上の遷移金属を主成分とする材料であってもよい。また、スピネル結晶構造や層状結晶構造などの結晶構造についても、上述したサイトとチャンネルが確保されるものであれば特に限定されない。さらに、結晶中の遷移金属やリチウムの一部をFe、Co、Ni、Cr、Al、Mgなどの元素で置換した材料や、結晶中にFe、Co、Ni、Cr、Al、Mgなどの元素をドープした材料を正極活物質として使用してもよい。
【0029】
さらに、上述した条件を満たす負極活物質として、結晶質の炭素材料や非晶質の炭素材料を使用することができる。ただし、負極活物質はこれらの物質に限定されるものではなく、例えば、天然黒鉛や、人造の各種黒鉛剤、コークスなどの炭素材料などを使用してもよい。そして、その粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状など様々な粒子形状のものが適用可能である。
【0030】
<リチウムイオン電池の模式的な構成>
以下に、上述したリチウムイオン電池の模式的な構成について図面を参照しながら説明する。図1は、リチウムイオン電池の模式的な構成を示す図である。図1において、リチウムイオン電池は、外装缶CSを有しており、この外装缶CSの内部に電解液ELが充填されている。この電解液ELが充填されている外装缶CSには、正極板PEPと負極板NEPが対向して設けられており、対向して設けられた正極板PEPと負極板NEPの間にセパレータSPが配置されている。
【0031】
そして、正極板PEPには、正極活物質が塗着されており、負極板NEPには負極活物質が塗着されている。例えば、正極活物質は、リチウムイオンを挿入・脱離可能なリチウム含有遷移金属酸化物から形成されている。図1では、このリチウム含有遷移金属酸化物が正極板PEPに塗着されている様子を模式的に示している。つまり、図1には、正極板PEPに塗着されているリチウム含有遷移金属酸化物として、酸素と金属原子とリチウムが配置されている模式的な結晶構造が示されている。この正極板PEPと正極活物質により正極が構成されている。
【0032】
一方、例えば、負極活物質は、リチウムイオンを挿入・脱離可能な炭素材料から形成されている。図1では、この炭素材料が負極板NEPに塗着されている様子を模式的に示している。つまり、図1には、負極板NEPに塗布されている炭素材料として、炭素が配置されている模式的な結晶構造が示されている。この負極板NEPと負極活物質により負極が構成されている。
【0033】
セパレータSPは、正極と負極との電気的な接触を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるスペーサとしての機能を有している。近年では、このセパレータSPとして、高強度で薄い微多孔質膜が使用されている。この微多孔質膜は、電池短絡による異常電流、急激な内圧や温度の上昇および発火を防ぐという機能も合わせもっている。つまり、現在のセパレータSPは、正極と負極の電気的接触を防止し、かつ、リチウムイオンを通過させる機能の他に、短絡と過充電防止のための熱ヒューズとしての機能を有していることになる。この微多孔質膜の持つシャットダウン機能によって、リチウムイオン電池の安全性を保つことができる。例えば、リチウムイオン電池が何らかの原因で外部短絡を引き起こした場合、瞬時ではあるが大電流が流れ、ジュール熱により異常に温度が上昇する危険性がある。このとき、セパレータSPとして微多孔質膜を使用すれば、微多孔質膜は、膜材料の融点近傍で空孔(微多孔)が閉塞するため、正極と負極との間のリチウムイオンの透過を阻止することができる。言い換えれば、セパレータSPとして微多孔質膜を使用することにより、外部短絡時に電流を遮断し、リチウムイオン電池の内部の温度上昇をストップさせることができる。この微多孔質膜から構成されるセパレータSPとしては、例えば、従来技術として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、あるいは、これらの材料の組み合わせから構成されている。
【0034】
電解液ELは、非水電解液が使用される。リチウムイオン電池は、活物質でのリチウムイオンの挿入・脱離を利用して充放電を行う電池であり、電解液EL中をリチウムイオンが移動する。リチウムは、強い還元剤であり、水と激しく反応して水素ガスを発生する。したがって、リチウムイオンが電解液EL中を移動するリチウムイオン電池では、従来の電池のように水溶液を電解液ELに使用することができない。このことから、リチウムイオン電池では、電解液ELとして非水電解液が使用される。具体的に、非水電解液の電解質としては、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiB(C、CHSOLi、CFSOLiなどやこれらの混合物を使用することができる。また、有機溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリルなどや、これらの混合液を使用することができる。
【0035】
<充放電のメカニズム>
リチウムイオン電池は上記のように構成されており、以下に充放電のメカニズムについて説明する。まず、充電のメカニズムについて説明する。図1に示すように、リチウムイオン電池を充電する際、正極と負極との間に充電器CUを接続する。この場合、リチウムイオン電池では、正極活物質内に挿入されているリチウムイオンが脱離し、電解液EL中に放出される。このとき、正極活物質からリチウムイオンが脱離することにより、正極から充電器へ電子が流れる。そして、電解液EL中に放出されたリチウムイオンは、電解液EL中を移動し、微多孔質膜からなるセパレータSPを通過して、負極に到達する。この負極に到達したリチウムイオンは、負極を構成する負極活物質内に挿入される。このとき、負極活物質にリチウムイオンが挿入することにより、負極に電子が流れ込む。このようにして、充電器を介して正極から負極に電子が移動することにより充電が完了する。
【0036】
続いて、放電のメカニズムについて説明する。図1に示すように、正極と負極の間に外部負荷を接続する。すると、負極活物質内に挿入されていたリチウムイオンが脱離して電解液EL中に放出される。このとき、負極から電子が放出される。そして、電解液EL中に放出されたリチウムイオンは、電解液EL中を移動し、微多孔質膜からなるセパレータSPを通過して、正極に到達する。この正極に到達したリチウムイオンは、正極を構成する正極活物質内に挿入される。このとき、正極活物質にリチウムイオンが挿入することにより、正極に電子が流れ込む。このようにして、負極から正極に電子が移動することにより放電が行われる。言い換えれば、正極から負極に電流が流れて負荷を駆動することができる。以上のようにして、リチウムイオン電池においては、リチウムイオンを正極活物質と負極活物質との間で挿入・脱離することにより、充放電することができる。
【0037】
<リチウムイオン電池の構成>
次に、実際のリチウムイオン電池LIBの構成例について説明する。図2は、円筒形のリチウムイオン電池LIBの内部構造を示す断面図である。図2に示すように、底部を有する円筒形の外装缶CSの内部には、正極PELとセパレータSP1、SP2と負極NELからなる電極捲回体WRFが形成されている。具体的に、電極捲回体WRFは、正極PELと負極NELの間にセパレータSP1(SP2)を挟むように積層され、外装缶CSの中心部にある軸芯CRの回りに捲回されている。そして、負極NELは外装缶CSの底部に設けられている負極リード板NTと電気的に接続されており、正極PELは外装缶CSの上部に設けられている正極リード板PTと電気的に接続されている。外装缶CSの内部に形成されている電極捲回体の内部には電解液が注入されている。そして、外装缶CSは、電池蓋CAPにより密閉されている。
【0038】
正極PELは、正極活物質PASと結着剤(バインダ)を含有する塗液を正極板(正極集電体)PEPに塗布して乾燥させた後、加圧することにより形成されている。この正極PELの上端部には複数の矩形状の正極集電タブPTABが形成されており、この複数の正極集電タブPTABが正極集電リングPRと接続されている。そして、この正極集電リングPRが正極リード板PTと電気的に接続されている。したがって、正極PELは、正極集電タブPTABおよび正極集電リングPRを介して正極リード板PTと電気的に接続されていることになる。複数の正極集電タブPTABは、正極PELの低抵抗化および電流の取り出しを迅速にするために設けられている。
【0039】
正極PELを構成する正極活物質PASは、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムなどに代表される上述した材料を使用することができる。また、結着剤は、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどを使用することができる。さらに、正極板には、例えば、アルミニウムなどの導電性金属からなる金属箔や網状金属などが使用される。
【0040】
負極NELは、負極活物質NASと結着剤(バインダ)を含有する塗液を負極板(負極集電体)NEPに塗布して乾燥させた後、加圧することにより形成されている。この負極NELの下端部には複数の矩形状の負極集電タブNTABが形成されており、この複数の負極集電タブNTABが負極集電リングNRと接続されている。そして、この負極集電リングNRが負極リード板NTと電気的に接続されている。したがって、負極NELは、負極集電タブNTABおよび負極集電リングNRを介して負極リード板NTと電気的に接続されていることになる。
【0041】
負極NELを構成する負極活物質NASは、例えば、炭素材料などに代表される上述した材料を使用することができる。また、結着剤は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどを使用することができる。さらに、負極板には、例えば、銅などの導電性金属からなる金属箔や網状金属などが使用される。
【0042】
<本発明者が新たに見出した課題>
まず、従来の電極捲回体の詳細な構成について説明する。図3は、電極捲回体を構成する前段階の構成要素を示す図である。図3において、電極捲回体を構成する構成要素は、正極PEL、セパレータSP1、負極NEL、および、セパレータSP2である。このとき、正極PELは、正極板PEPの両面に正極活物質PASが塗布された構造をしており、負極NELは、負極板NEPの両面に負極活物質NASが塗布された構造をしている。そして、正極PELの上辺側には矩形状の正極集電タブPTABが複数形成されている。同様に、負極NELの下辺側には矩形状の負極集電タブNTABが複数形成されている。すなわち、従来技術においては、正極PELや負極NELと、セパレータSP1やセパレータSP2は、別部品(別体)として構成されている。
【0043】
具体的に、従来技術における電極捲回体WRFの構成について説明する。図4は、正極PEL、セパレータSP1、負極NEL、および、セパレータSP2を軸芯CRの回りに捲回して電極捲回体WRFを形成する様子を示す模式図である。図4に示すように、正極PELと負極NELの間に別部品であるセパレータSP1を挟み、かつ、別部品であるセパレータSP1とセパレータSP2で負極NELを挟むようにして、正極PEL、セパレータSP1、負極NEL、および、セパレータSP2が捲回される。このとき、正極PELに形成されている正極集電タブPTABは電極捲回体WRFの上部側に配置される一方、負極NELに形成されている負極集電タブ(図示せず)は電極捲回体WRFの下部側に配置される。以上のようにして、従来技術における電極捲回体WRFが構成されている。
【0044】
通常のリチウムイオン電池では、正極板と負極板とセパレータが別部品(別体)により構成されているため、電極捲回体WRFを形成した後でも、例えば、正極板とセパレータとの間に隙間が存在する。そして、リチウムイオン電池の製造工程では、上述した捲回体を形成する前に正極板と負極板を所定の大きさに切断し、加えて正極並びに負極の集電タブをやはり正極板と負極板を切断して形成する。さらに、電極捲回体を形成した後、例えば、正極板に形成されている正極集電タブを正極集電リングに超音波溶着したり、負極板に形成されている負極集電タブを負極集電リングに超音波溶着する工程が存在する。さらには、電極捲回体は外装缶(容器)に挿入されて、この外装缶に電解液を注入した後、外装缶の内部を密閉するために、外装缶と蓋とを溶接などで接続する工程が存在する。
【0045】
具体的に、正極集電タブと正極集電リングとは、正極集電タブにアルミニウムリボンを捲きつけ、このアルミニウムリボンに正極集電タブを超音波溶着で接続することが行われている。このとき使用される超音波溶着は、アルミニウムリボンと正極集電タブとを擦りつけることによる原子相互拡散によって、アルミニウムリボンと正極集電タブとを接続するものである。したがって、正極集電タブとアルミニウムリボンとを超音波溶着で接続する場合、アルミニウムリボンと正極集電タブとの擦り合いによって金属異物(アルミニウム)が発生するおそれが高くなる。同様の現象は、負極集電タブと銅リボンの接続でも生じる。つまり、負極集電タブと銅リボンとを超音波溶着で接続する場合、銅リボンと負極集電タブとの擦り合いによって金属異物(銅)が発生するおそれが高くなる。さらに、外装缶と蓋とを接続する工程で使用される溶接(アーク溶接)では、例えば、溶接屑が発生しやすくなる。
【0046】
以上のことから、電極捲回体を形成する前後に実施される工程によって、電極捲回体の内部に金属異物が侵入するポテンシャルが高くなる。特に、通常のリチウムイオン電池では、正極板と負極板とセパレータが別部品で構成されているため、例えば、正極板とセパレータとの間に隙間が存在し、この隙間に上述した製造工程で発生した金属異物が侵入しやすくなる問題点があることを本発明者は見出した。
【0047】
このようにして発生した金属異物が電極捲回体WRFの内部に侵入すると、正極と負極との間で内部短絡が引き起こされる可能性がある。具体的に、電極捲回体の内部に金属異物が侵入する状態とは、正極板とセパレータとの間に形成されている隙間や負極板とセパレータとの間に形成されている隙間に金属異物が浸入する状態を意味している。例えば、金属異物が銅の場合、隙間に浸入した銅が正極に付着すると、正極の高い電位によって銅が酸化され(電子が奪われ)、金属イオンとなって電解液中に溶解する。そして、この金属イオンが負極に到達すると、金属イオンが還元されて(電子が供給されて)金属(銅)として負極に析出する。このようなメカニズムによって負極に金属が析出し続けると、負極から成長した金属がセパレータの孔を通過して正極に達し、この析出した金属を介して正極と負極が内部短絡するのである。一方、金属異物がアルミニウムの場合、酸化還元反応による溶解・析出の現象は生じないが、侵入する金属異物の大きさが大きくなると、セパレータを突き破って正極と負極が金属異物(アルミニウム)により内部短絡する。正極と負極が内部短絡すると、リチウムイオン電池として機能しなくなる。このように、リチウムイオン電池の製造工程では、金属異物が発生する可能性があり、発生した金属異物が、正極板とセパレータとの間に形成されている隙間や負極板とセパレータとの間に形成されている隙間に侵入すると、正極と負極が内部短絡するおそれがあることがわかる。
【0048】
そこで、本実施の形態1では、金属異物に起因する内部短絡を抑制して、リチウムイオン電池の信頼性向上を図ることができる工夫を施している。以下に、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明する。
【0049】
<本実施の形態1における特徴>
本実施の形態1における技術的思想は、例えば、正極とセパレータが別部品となっていることから、電極捲回体を形成した場合に、正極とセパレータとの間に隙間が生じ、この隙間に金属異物が侵入することで、リチウムイオン電池に内部短絡が発生するポテンシャルが高まることに着目している。そして、この着目点を考慮し、本実施の形態1では、電極捲回体を構成した場合でも、例えば、正極とセパレータとの間に形成される隙間が無くなれば、金属異物がリチウムイオン電池の内部に侵入することを抑制できるため、リチウムイオン電池の信頼性を向上することができることに基づいてなされたものである。そして、本実施の形態1における基本思想に基づき、以下に示す本実施の形態1の特徴が想到されている。この本実施の形態1における特徴について説明する。
【0050】
本実施の形態1における特徴は、例えば、正極とセパレータを一体的に形成すれば、そもそも、正極とセパレータとの間に隙間が生じなくなるので、正極とセパレータとの間に金属異物が侵入することを防止できるのではないかという知見に基づいてなされている。そして、本実施の形態1では、この知見を具現化することによって、本実施の形態1の特徴を実現している。つまり、本実施の形態1では、例えば、正極とセパレータとを一体的に形成し、正極とセパレータとの間に隙間が存在しないように構成することに特徴がある。言い換えれば、正極とセパレータが一体化しているということは、正極とセパレータが接着しているということもできる。具体的に、正極とセパレータが一体的に構成されている構成について、図面を参照しながら説明する。
【0051】
図5は、本実施の形態1における正極PELおよび負極NELの構成を示す断面図である。図5に示すように、まず、正極PELは、例えば、アルミニウムからなる正極板PEPを有しており、この正極板PEPの両面に、例えば、コバルト酸リチウムなどからなる正極活物質PASが形成されている。そして、正極板PEPの両面に形成された正極活物質PASと接着するように、セパレータSP1およびセパレータSP2が形成されている。すなわち、本実施の形態1では、例えば、正極PELの第1面に形成された正極活物質PASと接着するようにセパレータSP1が形成され、かつ、正極PELの第1面とは反対側の第2面に形成された正極活物質PASと接着するセパレータSP2が形成されている。このように、本実施の形態1では、正極板PEPと正極活物質PASからなる正極PELと、セパレータSP1およびセパレータSP2が一体的に形成されている。したがって、本実施の形態1によれば、正極PELとセパレータSP1との間、あるいは、正極PELとセパレータSP2の間に隙間が存在しないことから、正極PELに付着する金属異物の侵入を防止することができる。この結果、金属異物によるリチウムイオン電池内の内部短絡を防止することができ、これによって、リチウムイオン電池の信頼性を向上させることができる。
【0052】
一方、図5に示すように、負極NELは、例えば、銅からなる負極板NEPの両面に、例えば、炭素材料(カーボン材料)からなる負極活物質NASが形成された構造をしている。このようにして、本実施の形態1におけるセパレータSP1(SP2)付き正極PELと、負極NELが構成されている。
【0053】
例えば、図3に示す従来技術では、正極PEL、セパレータSP1、セパレータSP2、および、負極NELが別部品(別体)で構成されているため、図4に示すように、電極捲回体WRFを形成した場合、必ず、正極PELとセパレータSP1(セパレータSP2)の間に隙間が生じてしまう。この結果、従来技術では、その後の組立工程で実施される超音波溶着やアーク溶接で発生した金属異物が上述した隙間に侵入するポテンシャルが高まる。そして、正極PELとセパレータSP1(セパレータSP2)との間に形成された隙間に金属異物が侵入すると、金属異物に起因するリチウムイオン電池の内部短絡が生じることから、リチウムイオン電池の信頼性が低下してしまう。
【0054】
これに対し、本実施の形態1では、図5に示すように、正極PELとセパレータSP1とセパレータSP2が一体的に形成されている。言い換えれば、正極PELとセパレータSP1、あるいは、正極PELとセパレータSP2は接着している。このため、正極PELとセパレータSP1の間、および、正極PELとセパレータSP2の間に隙間が生じる余地はない。したがって、本実施の形態1によれば、正極PELとセパレータSP1との間、あるいは、正極PELとセパレータSP2の間に隙間が存在しないことから、正極PELに付着する金属異物の侵入を防止することができる。この結果、金属異物によるリチウムイオン電池内の内部短絡を防止することができ、これによって、リチウムイオン電池の信頼性を向上させることができる。
【0055】
具体的に、本実施の形態1におけるセパレータSP1(SP2)付き正極PELと負極NELとを捲回して電極捲回体WRFを形成する状態について説明する。図6は、本実施の形態1におけるセパレータSP1(SP2)付き正極PELと、負極NELとを重ね合わせた状態を示している。そして、このようにセパレータSP1(SP2)付き正極PELと負極NELとを重ね合わせた状態で、図7に示すように、軸芯CRの回りに、セパレータSP1(SP2)付き正極PELと負極NELとを捲回させる。このとき、図7に示すように、正極PELの両面には、セパレータSP1およびセパレータSP2が接着しているので、電極捲回体WRFを形成した後も、正極PELとセパレータSP1の間、あるいは、正極PELとセパレータSP2の間に隙間が形成されないことがわかる。
【0056】
ここで、本実施の形態1で重要な点は、正極PELとセパレータSP1およびセパレータSP2を一体的に形成している点である。つまり、本実施の形態1では、正極PELの両面にセパレータSP1とセパレータSP2を接着させるように構成することにより、正極PELとセパレータSP1、あるいは、正極PELとセパレータSP2との間に隙間が生じないようにしている。このように正極PELとセパレータSP1とセパレータSP2とを一体的に形成しているのは、以下に示す理由による。すなわち、本発明者が新たに見出した課題の欄で説明したように、正極PELに、例えば、銅などの金属異物が付着すると、正極PELに付着した金属異物が電解液中に溶解し、電解液に溶解した金属異物が負極NELに析出する。この現象が継続すると、負極NELに析出した金属異物が正極PELに達して、正極PELと負極NELとの内部短絡を引き起こすことになる。したがって、金属異物の溶解・析出というメカニズムによるリチウムイオン電池の内部短絡は、正極PELに金属異物が付着することが原因となる。このことは、金属異物の溶解・析出というメカニズムによるリチウムイオン電池の内部短絡を効果的に抑制するためには、正極PELに金属異物が付着しないようにすることが重要であることがわかる。このことから、本実施の形態1では、正極PELとセパレータSP1およびセパレータSP2を一体的に形成している。この構成によれば、正極PELとセパレータSP1の間、あるいは、正極PELとセパレータSP2の間に隙間が無くなるので、隙間から金属異物が侵入して、正極PELに付着することを防止できる。つまり、本実施の形態1では、リチウムイオン電池の内部短絡を発生させる一因として考えられている金属異物の溶解・析出を防止する観点からなされたものであり、正極PELとセパレータSP1およびセパレータSP2を一体的に形成することによって、金属異物の溶解・析出によるリチウムイオン電池の内部短絡を効果的に防止することができるのである。
【0057】
ただし、本実施の形態1における特徴構成によれば、隙間を無くすことができるので、金属異物の溶解・析出によるリチウムイオン電池の内部短絡を防止できるだけでなく、大きな金属異物自体の侵入も防止することができ、これによって、大きな金属異物自体がセパレータSP1(SP2)を突き破ることによる正極PELと負極NELとの短絡も防止することができる。すなわち、正極PELとセパレータSP1およびセパレータSP2を一体的に形成するという本実施の形態1の特徴構成は、金属異物の溶解・析出というメカニズムによるリチウムイオン電池の内部短絡を防止することができるとともに、大きな金属異物が直接セパレータSP1(SP2)を突き破ることによるリチウムイオン電池の内部短絡も防止することができるのである。言い換えれば、本実施の形態1における特徴構成によれば、主に、サイズの小さな金属異物による溶解・析出現象による内部短絡から、主に、サイズの大きな金属異物でのセパレータSP1(SP2)を直接突き破ることによる内部短絡という異なるメカニズムに起因する内部短絡を効果的に防止することができる。つまり、本実施の形態1における特徴によれば、サイズの小さな金属異物による内部短絡からサイズの大きな金属異物による内部短絡まで、幅広くリチウムイオン電池の内部短絡を防止することができ、この結果、リチウムイオン電池の充分な信頼性向上を図ることができる。
【0058】
なお、本実施の形態1で使用されるセパレータSP1やセパレータSP2の材質は、従来技術における材質と異なる。なぜなら、本実施の形態1では、後述するように、セパレータSP1やセパレータSP2の製造工程が従来技術と異なるとともに、セパレータSP1やセパレータSP2と正極PELとを接着させる必要があるからである。すなわち、従来技術におけるセパレータは、正極PELと別部品(別体)で構成されているとともに、正極PELと接着していない構成をしているのに対し、本実施の形態1におけるセパレータSP1(SP2)は、正極PELと接着して一体的に形成されているからである。具体的に、本実施の形態1におけるセパレータSP1(SP2)は、例えば、バインダ(結着剤)と絶縁物質であるセラミックを含む材料から構成することができる。このときのセラミックとしては、例えば、アルミナ(Al)やシリカ(SiO)を挙げることができる。さらに、本実施の形態1におけるセパレータSP1(SP2)は、例えば、バインダと、120℃以上の耐熱性を有する絶縁樹脂を含む材料から構成することもできる。
【0059】
以上のように、本実施の形態1によれば、正極PELの両面にセパレータSP1とセパレータSP2を接着して一体化するように構成しているので、正極PELとセパレータSP1の間、あるいは、正極PELとセパレータSP2の間に生じる隙間を無くすことができる。この結果、金属異物によるリチウムイオン電池内の内部短絡を防止することができ、これによって、リチウムイオン電池の信頼性を向上させることができる。
【0060】
そして、本実施の形態1におけるリチウムイオン電池によれば、製造工程(組立工程)中に発生する金属異物に起因する内部短絡を抑制することができるので、リチウムイオン電池の製造歩留まりを向上させることができる。この結果、本実施の形態1によれば、リチウムイオン電池のコスト削減も実現できる。特に、本実施の形態1では、製造歩留まりの向上によるコスト削減の効果の他に、セパレータを別部品として用意する必要がなくなる観点からも、リチウムイオン電池のコスト削減を図ることができる。例えば、従来のリチウムイオン電池では、別部品であるセパレータのコストが高いため、リチウムイオン電池のコスト削減を図ることが困難であったが、本実施の形態1では、別部品であるセパレータを用意する必要が無くなるとともに、別部品であるセパレータを製造する設備も不要となることから、リチウムイオン電池の大幅なコスト削減効果が期待できる。つまり、後述するように、本実施の形態1では、正極PELとセパレータSP1(SP2)を一体的に形成するため、正極PELを製造する工程を多少変更するだけでよく、セパレータSP1(SP2)自体を製造する設備を設ける必要がなくなるので、リチウムイオン電池のコスト削減を図ることができる。
【0061】
本実施の形態1では、特に、金属異物の溶解・析出というメカニズムによるリチウムイオン電池の内部短絡を防止する観点と、大きな金属異物が直接セパレータSP1(SP2)を突き破ることによるリチウムイオン電池の内部短絡も防止する観点の両方から、正極PELとセパレータSP1およびセパレータSP2を一体的に形成する構成を取っているが、本実施の形態1における技術的思想は、これに限らない。つまり、本実施の形態1における技術的思想は、隙間を無くすことにあり、この隙間が無くなることで、金属異物がリチウムイオン電池の内部に侵入することを防止することにある。このため、上述した本実施の形態1のように、必ずしも、正極PELとセパレータSP1およびセパレータSP2を一体的に形成する構成にする必要はなく、隙間を無くす別の構成例も考えることができる。以下に、この変形例について説明する。
【0062】
<実施の形態1における変形例>
図8は、第1変形例の構成を示す断面図である。図8において、前記実施の形態1と相違する点は、本第1変形例では、負極NELとセパレータSP1およびセパレータSP2を一体的に形成する構成を取っている点である。具体的に、負極NELは、例えば、銅からなる負極板NEPを有しており、この負極板NEPの両面に、例えば、炭素材料(カーボン材料)などからなる負極活物質NASが形成されている。そして、負極板NEPの両面に形成された負極活物質NASと接着するように、セパレータSP1およびセパレータSP2が形成されている。すなわち、本第1変形例では、例えば、負極NELの第1面に負極活物質NASに接着するようにセパレータSP1が形成され、かつ、負極NELの第1面とは反対側の第2面に負極活物質NASに接着するセパレータSP2が形成されている。このように、本第1変形例では、負極板NEPと負極活物質NASからなる負極NELと、セパレータSP1およびセパレータSP2が一体的に形成されている。したがって、本第1変形例によれば、負極NELとセパレータSP1との間、あるいは、負極NELとセパレータSP2の間に隙間が存在しないことから、負極NELに付着する金属異物の侵入を防止することができる。この結果、金属異物によるリチウムイオン電池内の内部短絡を防止することができ、これによって、リチウムイオン電池の信頼性を向上させることができる。
【0063】
一方、図8に示すように、正極PELは、例えば、アルミニウムからなる正極板PEPの両面に、例えば、コバルト酸リチウムからなる正極活物質PASが形成された構造をしている。このようにして、本第1変形例におけるセパレータSP1(SP2)付き負極NELと、正極PELが構成されている。
【0064】
続いて、図9は、第2変形例の構成を示す断面図である。図9において、前記実施の形態1と相違する点は、本第2変形例では、正極PELの片面にセパレータSP1が接着して一体化されているとともに、負極NELの片面にセパレータSP2が接着して一体化されている点である。具体的に、図9に示すように、正極PELは、正極板PEPの両面に正極活物質PASが形成されており、一方の面に形成されている正極活物質PASと接着するようにセパレータSP1が形成されている。一方、負極NELは、負極板NEPの両面に負極活物質NASが形成されており、一方の面に形成されている負極活物質NASと接着するようにセパレータSP2が形成されている。このように構成されている本第2変形例においても、正極PELとセパレータSP1との間、あるいは、負極NELとセパレータSP2との間で隙間を無くすことができるので、リチウムイオン電池の内部への金属異物の侵入を防止することができる。この結果、金属異物によるリチウムイオン電池内の内部短絡を防止することができ、これによって、リチウムイオン電池の信頼性を向上させることができる。
【0065】
<本実施の形態1におけるリチウムイオン電池の製造方法>
本実施の形態1におけるリチウムイオン電池は上記のように構成されており、以下に、その製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0066】
まず、本実施の形態1の特徴であるセパレータSP1(SP2)付き正極PELを形成する工程について説明する。図10に示すように、例えば、コバルト酸リチウムからなる正極活物質PASと導電助剤としてのカーボンを混合する。そして、図11に示すように、例えば、ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤(バインダ)をNメチルピロリドン(NMP)に溶解させた溶液を形成し、この溶液に正極活物質PASおよび導電助剤を混練してスラリーSL1を作製する。
【0067】
同様に、図12に示すように、例えば、アルミナ(Al)やシリカ(SiO)などのセラミック粉体CRS(粒径は、例えば、4μm)とフィラーを混合する。そして、図13に示すように、例えば、ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤(バインダ)をNメチルピロリドン(NMP)に溶解させた溶液を形成し、この溶液にセラミック粉体CRSおよびフィラーを混練してスラリーSL2を作製する。
【0068】
その後、図14に示すように、正極活物質PASと結着剤(バインダ)を含有するスラリーSL1を正極板(正極集電体)PEPに塗布する。具体的には、図15に示すように、例えば、ダイコータDCを使用して、アルミニウムからなる正極板PEP上に正極活物質PAS(導電助剤も含む)を塗布する。続いて、図16に示すように、正極板PEPに塗布した正極活物質PAS上にセラミック粉体CRSを混練させたスラリーSL2を塗布する。具体的には、図17に示すように、ダイコータDCを使用して。正極板PEPに塗布した正極活物質PAS上にセラミック粉体CRSを混練させたスラリーSL2を塗布することにより、正極活物質PAS上に、セラミック粉体CRSとバインダを含むセパレータSP1を形成する。ここでは、まず、ダイコータDCを使用して、正極板PEP上に正極活物質PASを混練させたスラリーSL1を塗布した後、この正極活物質PAS上にセラミック粉体CRSを混練させたスラリーSL2を塗布する逐次塗布法について説明したが、例えば、図18に示すように、正極板PEP上に正極活物質PASを混練させたスラリーSL1と、セラミック粉体CRSを混練させたスラリーSL2とをダイコータDCを使用して同時に正極板PEP上に塗布する同時塗布法を使用することもできる。
【0069】
次に、正極板PEPに塗布した正極活物質PASおよびセラミック粉体CRSを乾燥させる。具体的には、例えば、150℃以下(120℃程度)で正極板PEPを加熱することにより、正極板PEP上に塗布されている正極活物質PASおよびセラミック粉体CRSを乾燥させる。ここでの加熱処理は、セパレータSP1を耐熱性の高いセラミックから構成する場合には問題ないが、例えば、セパレータSP1を耐熱性の低い樹脂から構成する場合には、上述した加熱処理によっても樹脂が耐えられる必要がある。このため、例えば、セパレータSP1を樹脂から構成する場合には、120℃以上の耐熱性を有する樹脂を使用する必要がある。
【0070】
そして、正極板PEPの片面に塗布された正極活物質PAS、および、セパレータSP1を構成するセラミックを乾燥させた後、図19に示すように、正極板PEPのもう一方の面に正極活物質PASを混練させたスラリーSL1と、セラミック粉体CRSを混練させたスラリーSL2を塗布する。その後、例えば、150℃以下(120℃程度)で正極板PEPを加熱することにより、正極板PEPのもう一方の面に塗布されている正極活物質PASおよびセラミック粉体CRSを乾燥させる。
【0071】
このようにして、正極板PEPの両面に正極活物質PASおよびセパレータSP1(SP2)を形成した後、正極板PEPに対して、加熱・加圧処理を実施する。この加熱・加圧処理は、例えば、150℃以下(100℃程度)で実施される。これにより、正極板PEPに塗着された正極活物質PASの高密度化を図ることができる。以上のようにして、セパレータSP1およびセパレータSP2を接着した正極板PEPを形成することができる。言い換えれば、セパレータSP1およびセパレータSP2と一体化した正極板PEPを形成することができる。本実施の形態1によれば、セパレータSP1(SP2)を別部品として形成するのではなく、正極板PEPと一体的に形成しているので、セパレータSP1(SP2)自体を製造する独自の設備を設ける必要がなく、正極PELを作成する工程を多少変更するだけで、セパレータSP1(SP2)を形成できる。このことから、本実施の形態1によれば、リチウムイオン電池の製造コストを大幅に削減できる利点が得られる。
【0072】
続いて、負極NELを形成する工程について説明する。図20に示すように、例えば、炭素材料(カーボン材料)からなる負極活物質NASを作製する。そして、図21に示すように、例えば、ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤(バインダ)をNメチルピロリドン(NMP)に溶解させた溶液を形成し、この溶液に負極活物質NASを混練してスラリーSL3を作製する。
【0073】
その後、図22に示すように、負極活物質NASと結着剤(バインダ)を含有するスラリーSL3を負極板(負極集電体)NEPに塗布する。具体的には、図23に示すように、例えば、ダイコータDCを使用して、銅からなる負極板NEP上に負極活物質NASを塗布する。そして、負極板NEPに塗布した負極活物質NASを乾燥させる。具体的には、例えば、150℃以下(120℃程度)で負極板NEPを加熱することにより、負極板NEP上に塗布されている負極活物質NASを乾燥させる。
【0074】
そして、負極板NEPの片面に塗布された負極活物質NASを乾燥させた後、負極板NEPのもう一方の面に負極活物質NASを混練させたスラリーSL3を塗布する。その後、例えば、150℃以下(120℃程度)で負極板NEPを加熱することにより、負極板NEPのもう一方の面に塗布されている負極活物質NASを乾燥させる。
【0075】
このようにして、負極板NEPの両面に負極活物質NASを形成した後、負極板NEPに対して、加熱・加圧処理を実施する。この加熱・加圧処理は、例えば、150℃以下(100℃程度)で実施される。これにより、負極板NEPに塗着された負極活物質NASの高密度化を図ることができる。以上のようにして、負極板NEPを形成することができる。
【0076】
続いて、図24に示すように、セパレータSP1(SP2)および正極活物質PASを塗着した正極板PEPを切断して加工する。これにより、正極板PEPの一辺(上辺)に矩形形状をした複数の正極集電タブPTABを形成することができる。このようにして、セパレータSP1(SP2)と一体化して加工された正極PELを形成することができる。
【0077】
同様に、負極活物質NASを塗着した負極板NEPを切断して加工する。これにより、負極板NEPの一辺(下辺)に矩形形状をした複数の負極集電タブNTABを形成することができる。このようにして、図25に示すように、負極板NEPに負極活物質NASを塗着して加工された負極NELを形成することができる。
【0078】
次に、図26に示すように、セパレータSP1(SP2(図示されず))と一体化して形成された正極PELと、負極NELとを重ね合わせる。このとき、正極PELに形成されている正極集電タブPTABと、負極NELに形成されている負極集電タブNTABとが反対方向に配置されるようにする。
【0079】
その後、図27に示すように、セパレータSP1(SP2)付き正極PELと、負極NELとを重ね合わせた状態で軸芯CRに捲回して電極捲回体WRFを形成する。このようにして、電極捲回体WRFを形成することができる。このとき、本実施の形態1では、正極PELとセパレータSP1(SP2)が一体化して形成しているので、正極PELとセパレータSP1の間、および、正極PELとセパレータSP2の間に隙間が存在しないように構成することができる。この結果、電極捲回体WRFを形成した後も、正極PELとセパレータSP1の間、および、正極PELとセパレータSP2の間に隙間が存在しないことになる。つまり、本実施の形態1では、正極PELとセパレータSP1(SP2)が接着して形成したので、電極捲回体WRFを形成した後も、正極PELとセパレータSP1の間、および、正極PELとセパレータSP2の間に隙間が存在しないようにすることができる。
【0080】
続いて、図28に示すように、電極捲回体WRFの上端部から突出している正極集電タブPTABを正極集電リングPRに接続する。同様に、電極捲回体WRFの下端部から突出している負極集電タブNTABを負極集電リングNRに接続する。ここで、正極集電タブPTABの正極集電リングPRへの接続、および、負極集電タブNTABの負極集電リングNRへの接続は、例えば、超音波溶着によって行われる。このため、正極PELと、セパレータSP1(SP2)が別部品で分離して構成されている場合、正極PELとセパレータSP1(SP2)との間に隙間が存在することになるため、上述した超音波溶着時に金属異物が飛散して、金属異物が正極PELとセパレータSP1(SP2)の間に形成されている隙間に侵入する可能性がある。これに対し、本実施の形態1では、正極PELとセパレータSP1(SP2)が一体的に形成されて隙間が存在しないため、超音波溶着時に発生する金属異物が電極捲回体WRFの内部に侵入して正極PELに付着することを防止できる。
【0081】
次に、図29に示すように、電極捲回体WRFを外装缶CSの内部に挿入する。そして、図30に示すように、外装缶CSを加工して溝DTを形成する。この溝DTは、外装缶CSの内部に挿入されている電極捲回体WRFが上下方向に移動しないように固定するために設けられるものである。この工程でも、金属材料からなる外装缶CSを加工しているため、金属異物が発生する可能性がある。しかし、本実施の形態1では、正極PELとセパレータSP1(SP2)が一体的に形成されて隙間が存在しないため、電極捲回体WRFの内部へ金属異物が侵入して正極PELに付着することを抑制できる。
【0082】
そして、図31に示すように、電極捲回体WRFを挿入した外装缶CSの内部に電解液ELを注入する。その後、外装缶CSの上部をキャップで封止することにより、本実施の形態1におけるリチウムイオン電池を製造することができる。ここで、例えば、外装缶CSの上部をキャップで封止するために溶接(アーク溶接)が使用される場合があるが、この場合であっても、正極PELとセパレータSP1(SP2)が一体的に形成されて隙間が存在しないため、溶接時に生成された金属異物(溶接屑)が電極捲回体WRFの内部へ侵入して正極PELに付着することを抑制できる。
【0083】
<本実施の形態1における効果>
以上のようにして製造されるリチウムイオン電池によれば、以下に示す効果が得られる。
【0084】
(1)正極PELの両面にセパレータSP1とセパレータSP2を接着して一体化するように構成しているので、正極PELとセパレータSP1の間、あるいは、正極PELとセパレータSP2の間に生じる隙間を無くすことができる。この結果、金属異物によるリチウムイオン電池内の内部短絡を防止することができ、これによって、リチウムイオン電池の信頼性を向上させることができる。
【0085】
(2)本実施の形態1におけるリチウムイオン電池によれば、製造工程(組立工程)中に発生する金属異物に起因する内部短絡を抑制することができるので、リチウムイオン電池の製造歩留まりを向上させることができる。この結果、本実施の形態1によれば、リチウムイオン電池のコスト削減も実現できる。特に、本実施の形態1では、製造歩留まりの向上によるコスト削減の効果の他に、セパレータを別部品として用意する必要がなくなる観点からも、リチウムイオン電池のコスト削減を図ることができる。
【0086】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、正極PELとセパレータSP1(SP2)だけでなく、さらに、負極NELもすべて一体化して形成される例について説明する。図32は、本実施の形態2における正極PEL、セパレータSP1(SP2)および負極NELの構成を示す断面図である。図32に示すように、正極PELは、例えば、アルミニウムから形成された正極板PEPの両面に正極活物質PASが形成された構造をしており、この正極板PEPの一方の面(上面)に形成されている正極活物質PAS上にセパレータSP1が接着している。一方、正極板PEPの他方の面(下面)に形成されている正極活物質PASに接着するようにセパレータSP2が形成されている。そして、このセパレータSP2は、正極PELに接着されているだけでなく、負極NELとも接着されている。具体的に、セパレータSP2は、例えば、銅から形成され負極板NEPの一方の面(上面)に形成されている負極活物質NASと接着している。そして、負極板NEPのもう一方の面(下面)にも負極活物質NASが形成されている。以上のように構成されている本実施の形態2における正極PEL、セパレータSP1(SP2)および負極NELは一体的に形成されている。このため、正極PELとセパレータSP1(SP2)の間だけでなく、負極NELとセパレータSP2の間にも隙間が存在しない。したがって、本実施の形態2によれば、金属異物によるリチウムイオン電池内の内部短絡を効果的に防止することができ、これによって、リチウムイオン電池の信頼性を向上させることができる。つまり、本実施の形態2では、正極PEL、セパレータSP1(SP2)および負極NELのすべてが一体的に形成されているので、金属異物による内部短絡の可能性を前記実施の形態1よりもさらに低減することができる。
【0087】
具体的に、図33は、一体化した正極PEL、セパレータSP1(SP2(図示されず))および負極NELを示す平面図である。このように、正極PEL、セパレータSP1(SP2(図示されず))および負極NELを一体化した構造を形成するには、例えば、前記実施の形態1の図14〜図19で説明したようにして、まず、正極PELとセパレータSP1(SP2)とを一体化した構造を作製し、その後、セパレータSP2を乾燥させる前に負極NELとセパレータSP2を接着させることにより形成することができる。
【0088】
そして、図34は、一体化した正極PEL、セパレータSP1(SP2(図示されず))および負極NELを軸芯CRの回りに捲回する様子を示す図である。図34に示すように、本実施の形態2では、正極PEL、セパレータSP1(SP2)および負極NELは一体的に形成されており、正極PELとセパレータSP1(SP2)の間だけでなく、負極NELとセパレータSP2の間にも隙間が存在しないことがわかる。このため、電極捲回体WRFを形成した後も隙間が存在せず、電極捲回体WRFを形成した後に実施されるリチウムイオン電池の組立工程において、たとえ、金属異物が発生しても、電極捲回体WRFの内部に金属異物が侵入することを効果的に抑制することができる。この結果、本実施の形態2におけるリチウムイオン電池によっても、金属異物によるリチウムイオン電池内の内部短絡を効果的に防止することができ、これによって、リチウムイオン電池の信頼性を飛躍的に向上させることができる。
【0089】
(実施の形態3)
<セパレータへの要求特性および主な機能>
リチウムイオン電池では、正極と負極の間にセパレータが挿入される。このセパレータに要求される特性と主な機能について説明する。図35は、セパレータに要求される特性と主な機能を示す表である。図35に示すように、まず、セパレータには、正極と負極とを隔離(分離)する特性が要求されるため、セパレータは、活物質の通過阻止機能と電気絶縁機能を有している。一方、セパレータには、リチウムイオンを透過するイオン透過性が要求され、セパレータは、電解液との親和性、含浸性および電解液保持性という機能を有している。さらに、セパレータには、化学的・電気的安定性という特性も要求されており、この要求を満たすため、セパレータには、耐アルカリ性、耐酸性、耐有機溶剤性や耐熱性を有している。また、セパレータには、電池反応阻害物の非溶出という特性も要求されるとともに、電池組立容易性という特性も要求される。このことから、セパレータには、不純物(重金属)を含まない材料を使用することが望ましく、かつ、機械的強度や切断性に優れた機能を有する材料を使用することが望ましい。以上の特性を容易に実現するため、現状のセパレータは、正極や負極とは別部品(別体)で構成され、例えば、高強度で薄い微多孔質膜が使用されている。具体的に、現状のセパレータは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、あるいは、これらの材料の組み合わせから構成されている。
【0090】
<現状のセパレータの製造方法>
以下に、正極や負極とは別部品(別体)で構成される現状のセパレータの製造方法の一例について、図36を参照しながら説明する。図36は、相分離法によって、現状のセパレータを製造する工程フローを示す図である。図36に示すように、まず、樹脂を溶剤に混練させた溶液を生成した後、この溶液を加熱する。これにより、均一組成の溶液が生成される。その後、均一組成の溶液を冷却させると樹脂が相分離するように析出する。この後、相分離した樹脂から溶剤を抽出すると、多孔構造を有する樹脂が形成され、これを延伸することによって、大孔径の多孔構造を有するセパレータを形成することができる。一方、相分離した樹脂を、まず、延伸すると、多孔構造を有する樹脂が形成され、この多孔構造を有する樹脂から溶剤を抽出する場合には、小孔径の多孔構造を有するセパレータを形成することができる。つまり、現状のセパレータの製造方法では、相分離した樹脂に対する延伸工程と溶剤の抽出工程との順番を入れ替えることにより、大孔径や小孔径の多孔構造を有するセパレータが形成される。
【0091】
<現状のセパレータの問題点>
以上のように製造される現状のセパレータは、正極や負極と別部品(別体)で構成されるため、リチウムイオン電池の組立工程において、前記実施の形態1で説明した問題点が発生する。例えば、リチウムイオン電池では、正極板と負極板との間に別部品で構成されるセパレータを挟んだ状態で電極捲回体を形成するが、電極捲回体を形成する前後に実施される工程によって、電極捲回体の内部に金属異物が侵入するポテンシャルが高くなる。特に、通常のリチウムイオン電池では、正極板と負極板とセパレータが別部品で構成されているため、例えば、正極板とセパレータとの間に隙間が存在し、この隙間に上述した製造工程で発生した金属異物が侵入しやすくなるのである。このようにして、金属異物が電極捲回体の内部に侵入すると、正極と負極との間で内部短絡が引き起こされる可能性が高まり、リチウムイオン電池の信頼性低下を招くことになる。
【0092】
さらに、前記実施の形態1では、強調していないが、セパレータを別部品で構成する場合、リチウムイオン電池のコスト削減を図ることが困難になるのである。つまり、セパレータ自体のコストを削減できれば、リチウムイオン電池全体のコスト削減に効果的に実現することができる。
【0093】
そこで、本実施の形態3では、前記実施の形態1と同様に、リチウムイオン電池の信頼性向上を図ることを前提として、さらに、リチウムイオン電池のコスト削減に着目した工夫を施している。具体的に、本実施の形態3の特徴は、リチウムイオン電池の製造工程に存在する。以下に、この工夫を施した本実施の形態3における技術的思想について説明する。
【0094】
<実施の形態3における基本思想>
本実施の形態3における基本思想は、前記実施の形態1における技術的思想と同様である。すなわち、本実施の形態3における技術的思想でも、例えば、正極とセパレータが別部品となっていることから、電極捲回体を形成した場合に、正極とセパレータとの間に隙間が生じ、この隙間に金属異物が侵入することで、リチウムイオン電池に内部短絡が発生するポテンシャルが高まることに着目している。そして、この着目点を考慮し、本実施の形態3では、電極捲回体を構成した場合でも、例えば、正極とセパレータとの間に形成される隙間が無くなれば、金属異物がリチウムイオン電池の内部に侵入することを抑制できるため、リチウムイオン電池の信頼性を向上することができるという知見に基づいてなされたものである。具体的に、本実施の形態3における特徴は、例えば、正極とセパレータを一体的に形成すれば、そもそも、正極とセパレータとの間に隙間が生じなくなるので、正極とセパレータとの間に金属異物が侵入することを防止できるのではないかという知見に基づいてなされている。そして、本実施の形態3では、この知見を具現化することによって、本実施の形態3の特徴を実現している。つまり、本実施の形態3でも、前記実施の形態1と同様に、正極とセパレータとを一体的に形成し、正極とセパレータとの間に隙間が存在しないように構成することに特徴がある。そして、この特徴的構成を具現化するリチウムイオン電池の製造方法に、本実施の形態3の特徴点が存在する。
【0095】
<実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造方法(製造容易型)>
まず、正極とセパレータとを一体的に形成することが容易なリチウムイオン電池の製造方法について説明する。図37は、製造容易型のリチウムイオン電池の製造工程の一部を示すフローチャートである。図37に示すように、まず、正極板の一方の面に電極材を塗布する(S101)。この電極材(スラリー)は、例えば、正極活物質を溶剤に混練することにより形成される。その後、電極材を塗布した正極板を加熱することにより、電極材を乾燥させる(S102)。すなわち、正極板を加熱することにより、電極材から溶剤を除去して、正極板上に正極活物質を残存させる。そして、正極活物質の密度を上昇させるため、例えば、ローラを使用することにより、正極板上に付着している正極活物質に対して、加熱下で加圧処理を実施する(S103)。この加熱下での加圧処理は、カレンダとも呼ばれる。続いて、高密度に圧縮された正極活物質上に、セパレータ材を塗布する(S104)。このセパレータ材(スラリー)は、例えば、アルミナ(Al)やシリカ(SiO)などのセラミック粉体(セラミック粒子)を溶剤に混練することにより形成される。その後、正極活物質上にセパレータ材を塗布した正極板を加熱することにより、セパレータ材を乾燥させる(S105)。これにより、セパレータ材に含まれる溶剤が除去されて、セラミック粉体が残存することになる。このようにして、正極板上に正極活物質を形成し、この正極活物質上にセラミック粉体からなるセパレータを一体的に形成することができる。これにより、本実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造方法(製造容易型)によれば、正極とセパレータとを一体的に形成するように構成しているので、正極とセパレータの間に生じる隙間を無くすことができる。この結果、金属異物によるリチウムイオン電池内の内部短絡を防止することができ、これによって、リチウムイオン電池の信頼性を向上させることができる。さらに、本実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造方法(製造容易型)によれば、セパレータを別部品として構成していないため、セパレータを別部品として構成する場合に比べて、コストの低減を図ることができる。特に、本実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造方法(製造容易型)では、正極活物質を乾燥させた後、この乾燥させた正極活物質上にセパレータ材(スラリー)を塗布するように構成しているため、正極とセパレータとの一体化を比較的容易に実現することができる利点がある。このようなリチウムイオン電池の製造方法(製造容易型)は、乾燥させた正極活物質上に、スラリー状のセパレータ材を塗布することから、ウェットオンドライ方式と呼ばれることもある。
【0096】
<ウェットオンドライ方式の問題点>
上述したウェットオンドライ方式では、例えば、図37のフローチャートに示すように、電極材を塗布する工程と、セパレータ材を塗布する工程が別々となっているため、塗布工程が複数存在することになる。このため、電極材を塗布して正極板上に正極活物質を付着させて正極を製造する従来の製造設備の他に、セパレータ材を塗布する工程を実現する新たな製造設備が必要となる。このことから、リチウムイオン電池の製造工程が長くなるともに、充分なコスト低減を図ることができない問題点が存在する。つまり、ウェットオンドライ方式は、製造容易性に重点を置いた技術であり、コスト低減をさらに推進する観点からは、改良する余地がある技術ということができる。
【0097】
<実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造方法(コスト低減型)>
そこで、以下では、正極とセパレータとを一体的に形成することを前提として、コスト低減を重要視したリチウムイオン電池の製造方法について説明する。図38は、コスト低減型のリチウムイオン電池の製造工程の一部を示すフローチャートである。図38に示すように、正極板上に電極材とセパレータ材とを一括して塗布する。具体的には、正極板上に電極材を塗布しながら、この電極材上にセパレータ材を塗布する(S201)。電極材は、例えば、正極活物質を溶剤に混練することにより形成されたスラリーであり、セパレータ材は、例えば、セラミック粉体を溶剤に混練することにより形成されたスラリーである。続いて、正極板上に電極材を塗布し、この電極材上にセパレータ材を塗布した状態で、正極板を一括加熱する。これにより、正極板上に塗布された電極材と、電極材上に塗布されたセパレータ材を一括乾燥する(S202)。この結果、電極材およびセパレータ材から溶剤が除去されて、正極板上に正極活物質が形成されるとともに、正極活物質上にセラミック粉体からなるセパレータが形成される。その後、正極板上に積層形成された正極活物質とセラミック粉体とに対し、加熱下において、例えば、ローラを使用して加圧する。これにより、正極活物質の密度を高密度にすることができる。このようにして、正極板上に正極活物質を形成し、この正極活物質上にセラミック粉体からなるセパレータを一体的に形成することができる。これにより、本実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造方法(コスト低減型)によれば、正極とセパレータとを一体的に形成するように構成しているので、正極とセパレータの間に生じる隙間を無くすことができる。この結果、金属異物によるリチウムイオン電池内の内部短絡を防止することができ、これによって、リチウムイオン電池の信頼性を向上させることができる。
【0098】
さらに、本実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造方法(コスト低減型)によれば、電極材とセパレータ材とを正極板上に一括塗布している。このことから、別々に電極材とセパレータ材を塗布するウェットオンドライ方式に比べて、さらなるコスト低減を図ることができる。つまり、本実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造方法(コスト低減型)では、従来から存在する正極の製造設備をそのまま応用して、セパレータ材も電極材上に塗布することができる。このことから、セパレータ材を塗布するためだけの別の製造設備を新たに設ける必要がないため、コスト低減を充分に図ることができるのである。すなわち、本実施の形態3におけるリチウムイオン電池の製造方法(コスト低減型)では、電極の製造ラインをそのまま使用することにより、電極材およびセパレータ材の一括塗布、一括乾燥、一括カレンダを実現できるため、充分なコスト低減を図ることができるのである。このコスト低減に着目した方式は、電極材上にセパレータ材を塗布するため、ウェットオンウェット方式と呼ばれることもある。
【0099】
<ウェットオンウェット方式の問題点>
ところが、ウェットオンウェット方式では、ウェットオンドライ方式では問題とならなかったことが問題点として顕在化する。以下に、この顕在化する問題点について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0100】
まず、ウェットオンウェット方式では、図39に示すように、ダイコータDCを使用することにより、正極板PEP上に電極材ELMを塗布し、この電極材ELM上にセパレータ材SPMを塗布する。このとき、電極材ELMは、溶剤SVに正極活物質PASを分散させたスラリーSL1から構成され、セパレータ材SPMは、溶剤SVにセラミック粉体CRSを分散させたスラリーSL2から構成される。なお、図示はしないが、電極材ELMやセパレータ材SPMに含まれる溶剤には結着剤(バインダ)も溶解している。
【0101】
その後、図40に示すように、電極材ELMおよびセパレータ材SPMを塗布した正極板PEPに加熱処理を施すことにより、電極材ELMおよびセパレータ材SPMを乾燥させる。具体的には、電極材ELMおよびセパレータ材SPMから溶剤が除去されて、正極板PEP上に正極活物質PASが析出し、この正極活物質PAS上にセラミック粉体CRSが析出する。
【0102】
続いて、図41に示すように、正極板PEP上に析出した正極活物質PASの密度を上げるために、正極活物質PAS上に形成されているセラミック粉体CRSの表面をローラRLで加圧する。このとき、正極板PEPを加熱した状態で、上述した加圧処理が行なわれる。この加熱下での加圧処理はカレンダとも呼ばれ、このカレンダによって、正極活物質PASが圧縮されて、正極活物質PASの高密度化を図ることができる。この正極活物質PASの高密度化は、リチウムイオン電池の電流密度の向上を図るために行われるものである。
【0103】
ところが、ウェットオンウェット方式では、正極活物質PAS上にセラミック粉体CRSが形成されており、このセラミック粉体CRSの表面にローラRLを回転させながら圧力を加えることにより、間接的に正極活物質PASの加圧処理を施すことになる。このことから、必然的に、ローラRLと直接接触しているセラミック粉体CRSにも加圧処理が加わることになり、セラミック粉体CRSの密度が高密度化することになる。このことは、セラミック粉体CRSから構成されるセパレータの空孔率が低下してしまうことを意味する。ここで、セパレータの重要な機能として、リチウムイオンを通過させる機能があり、この機能を実現するために、セパレータには、リチウムイオンを通過させる程度に空孔率が高いことが要求される。しかし、セラミック粉体CRSが加圧処理によって高密度化すると、セラミック粉体CRSから構成されるセパレータの空孔率が低下することになる。この結果、セパレータに要求されるイオン透過性が低下してしまうことになる。つまり、ウェットオンウェット方式では、正極活物質PAS上にセラミック粉体CRSが形成された状態で加圧処理を施すため、必然的に、正極活物質PASだけでなく、セラミック粉体CRSにも加圧処理が施されてしまう。この結果、セラミック粉体CRSから構成されるセパレータの空孔率の低下を招き、これによって、セパレータのイオン透過性が低下してしまう問題点が顕在化するのである。
【0104】
この問題点は、ウェットオンウェット方式特有の問題であり、ウェットオンドライ方式では発生しない問題である。なぜなら、ウェットオンドライ方式では、正極板に電極材を塗布した後、この電極材を乾燥させることにより、正極板に正極活物質を析出させる。そして、正極板に形成されている正極活物質に加圧処理を実施した後、正極活物質上にセパレータ材を塗布するからである。その後は、セパレータ材を乾燥させて、正極活物質上にセラミック粉体を析出させる。このことから、ウェットオンドライ方式では、セラミック粉体に加圧処理が施されないため、加圧処理によるセパレータの空孔率の低下は生じないのである。したがって、ウェットオンウェット方式は、ウェットオンドライ方式に比べて、コスト低減の観点から優れた技術ということができるが、その副作用として、加圧処理に起因したセパレータの空孔率の低下というウェットオンウェット方式に特有の課題が顕在化するのである。このことから、本願発明では、ウェットオンウェット方式を採用して、リチウムイオン電池の製造コストを大幅に削減しながらも、セパレータのイオン透過性を確保する工夫を施している、以下に、この工夫点について説明する。
【0105】
<実施の形態3における特徴>
本実施の形態3の特徴点は、セパレータを構成するセラミック粉体の粒径ばらつきを、正極活物質の粒径ばらつきよりも小さくする点にある。これにより、加圧処理に起因したセパレータの空孔率の低下を抑制することができる。具体的に、加圧処理を施した際、粒径ばらつきの大きい物質のほうが粒径ばらつきの小さな物質よりも充填率が高くなることについて説明する。言い換えれば、加圧処理を施した際、粒径ばらつきの大きい物質のほうが粒径ばらつきの小さな物質よりも空孔率が小さくなることを説明する。
【0106】
例えば、粒径ばらつきが小さい物質では、粒径以下の隙間を埋め込むことができないため、ある一定の隙間が形成され、この結果、粒径ばらつきの小さい物質では、充填率がある一定値以下には小さくならず、空孔率がある一定値以上となる。これに対し、粒径ばらつきの大きな物質では、粒径の大きな物質間にできた隙間に、粒径の小さな物質が埋め込まれるため、隙間のサイズが小さくなる。この結果、粒径ばらつきの大きな物質では、充填率が高くなる。言い換えれば、粒径ばらつきの大きな物質では、空孔率が小さくなるのである。したがって、高密度化が要求される正極活物質においては、正極活物質の粒径ばらつきを大きくすることが望ましく、高空孔率化が要求されるセラミック粉体においては、セラミック粉体の粒径ばらつきを小さくすることが望ましいことがわかる。つまり、本実施の形態3では、物質の粒径ばらつきを制御することにより、加圧処理に起因した空孔率を制御できるという知見に基づき、セパレータを構成するセラミック粉体の粒径ばらつきを、正極活物質の粒径ばらつきよりも小さくなるように構成している。これにより、本実施の形態3によれば、コスト低減の観点から優れた技術であるウェットオンウェット方式を採用しながら、加圧処理に起因したセパレータの空孔率の低下というウェットオンウェット方式に特有の課題も解決することができるのである。
【0107】
以下に、粒径ばらつきと空孔率の関係を示す実験データについて説明する。図42は、粒径ばらつきと空孔率の関係を示すグラフである。図42において、縦軸は、物質の空孔率(体積%)を示しており、横軸は、例えば、粉末Bへの微細粉末の添加量(体積%)を示している。具体的に、図42では、異なる粒径の粉末A〜粉末Dを使用し、粉末Bに粉末Cや粉末Dを添加する割合を変化させることにより、空孔率がどのように変化するかについての実験データが示されている。また、図43は、粉末A〜粉末Dの粒径ばらつきを示すグラフである。図43において、横軸は、粒径(μm)を示しており、縦軸は、それぞれの粒径における粒子数を示している。図43に示すように、粉末Bの平均粒径(ピーク値)は粉末A〜粉末Dの中で最も大きく、かつ、粒径ばらつき(例えば、半値幅)も最も小さくなっている。そして、粉末Bの次に平均粒径が大きい物質が粉末Aであり、粉末Aよりも平均粒径が小さい物質が粉末Cとなっている。さらに、粉末Cよりも平均粒径が小さい物質が粉末Dとなっている。特に、粉末Cと粉末Dは、粒径ばらつきが大きくなっていることがわかる。なお、粉末A〜粉末Dの粒径は、例えば、光(レーザ光)の散乱を使用した測定技術によって測定することが可能となっており、粉末A〜粉末Dの平均粒径は、粒径分布のうちピーク値を示す粒径として定義することができる。また、粒径ばらつきは、粒径分布のうちの半値幅の大きさとして定義することができる。
【0108】
以上の前提条件のもと、図42を見ると、加圧・加熱工程後、粉末Bの空孔率は、粉末Aの空孔率よりも大きくなっていることがわかる。これは、例えば、図43に示すように、粉末Bの粒径ばらつきが、粉末Aの粒径ばらつきよりも小さくなっていることから理解することができる。そして、粉末Bに粒径ばらつきの大きな粉末Cや粉末Dを添加する割合を大きくすると、空孔率が低下する傾向のあることがわかる。これは、粉末Bに、平均粒径と粒径ばらつきの相違する粉末Cや粉末Dを添加することにより、粉末Bの粒径ばらつきが大きくなった結果、空孔率が低下したものと考えることができる。特に、図43に示すように、粉末Cの粒径ばらつきに比べて、粉末Dの粒径ばらつきの方が大きいため、粉末Bへの粉末Cの添加量を増加させる場合よりも、粉末Bへの粉末Dの添加量を増加させる場合のほうが空孔率をより低くすることができることがわかる。このように、加圧処理を施した際、粒径ばらつきの大きな物質のほうが、粒径ばらつきの小さな物質よりも、空孔率が小さくなるという知見が妥当であるということが、図42と図43に示す実験データからも裏付けられていることがわかる。したがって、本実施の形態3にように、セパレータを構成するセラミック粉体の粒径ばらつきを、正極活物質の粒径ばらつきよりも小さくなるように構成することにより、正極活物質とセラミック粉体に対して一括加圧処理を施す場合であっても、正極活物質の高密度化を図りながら、セパレータの空孔率を充分に確保することができることわかる。つまり、本実施の形態3によれば、ウェットオンウェット方式を採用することにより、充分なコスト削減を図ることができるとともに、加圧処理に起因したセパレータの空孔率の低下というウェットオンウェット方式に特有の課題も解決して、リチウムイオン電池の性能向上も図ることができる。
【0109】
以上のように、本実施の形態3は、セパレータを構成するセラミック粉体の粒径ばらつきを制御することにより、セパレータの空孔率を制御できる点に着目した技術的思想であり、これによって、セパレータの空孔率を10%(体積%)〜70%(体積%)にすることができる。この場合、セパレータの空孔率の上限は、セパレータの機械的強度を確保する観点から規定されるものである一方、セパレータの空孔率の下限は、リチウムイオンの透過性(イオン透過性)の観点から規定される。したがって、セパレータの機械的強度の確保と、セパレータのイオン透過性とを両立する観点からは、例えば、セパレータの空孔率を30%(体積%)〜50%(体積%)の範囲に設定することが望ましい。
【0110】
<ウェットオンウェット方式の詳細工程>
続いて、上述した本実施の形態3の特徴を取り入れたウェットオンウェット方式によるリチウムイオン電池の製造方法の詳細工程について、図面を参照しながら説明する。
【0111】
まず、例えば、コバルト酸リチウムからなる正極活物質PASと導電助剤としてのカーボンを混合する。そして、例えば、ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤(バインダ)をNメチルピロリドン(NMP)に溶解させた溶液を形成し、この溶液に正極活物質PASおよび導電助剤を混練して電極材ELM(スラリーSL1)を作製する。
【0112】
同様に、例えば、アルミナ(Al)やシリカ(SiO)などのセラミック粉体CRSとフィラーを混合する。そして、例えば、ポリフッ化ビニリデンからなる結着剤(バインダ)をNメチルピロリドン(NMP)に溶解させた溶液を形成し、この溶液にセラミック粉体CRSおよびフィラーを混練してセパレータ材SPM(スラリーSL2)を作製する。ここで、本実施の形態3では、正極活物質PASの粒径ばらつきが、セラミック粉体CRSの粒径ばらつきよりも大きくなるように調整される。言い換えれば、セラミック粉体CRSの粒径ばらつきが、正極活物質PASの粒径ばらつきよりも小さくなるように調整される。
【0113】
次に、図44に示すように、例えば、ダイコータDCを使用することにより、正極板PEPの第1面上に電極材ELM1を塗布し、この電極材ELM1上にセパレータ材SPMを塗布する。具体的に、電極材ELMおよびセパレータ材SPMの一括塗布工程は、例えば、図45に示す塗布装置で行われる。図45は、本実施の形態3で使用する塗布装置の一例を示す模式図である。図45において、塗布装置は、例えば、回転自在なローラRL1を有しており、このローラRL1の表面に正極板PEPが配置される。そして、ローラRL1の表面に配置された正極板PEPに対して、ダイコータDC1とダイコータDC2が配置される。このダイコータDC1は、例えば、供給ポンプPMP1を介して電極材ELMが蓄えられたタンクと接続されており、タンクに蓄積されている電極材ELMは、供給ポンプPMP1によってダイコータDC1に流入し、このダイコータDC1から正極板PEP上に電極材ELMが塗布されるように構成されている。同様に、ダイコータDC2は、例えば、供給ポンプPMP2を介してセパレータ材SPMが蓄えられたタンクと接続されており、タンクに蓄積されているセパレータ材SPMは、供給ポンプPMP2によってダイコータDC2に流入し、このダイコータDC2から正極板PEP上にセパレータ材SPMが塗布されるように構成されている。以上のように構成されている塗布装置を使用することにより、まず、正極板PEP上に電極材ELMを塗布し、この電極材ELM上にセパレータ材SPMを塗布することができる。
【0114】
続いて、図46に示すように、正極板PEPに対して加熱処理を実施することにより、第1面に塗布されている電極材ELMおよびセパレータ材SPMを乾燥させる。具体的には、例えば、150℃以下(120℃程度)の加熱処理を施すことにより、電極材ELMおよびセパレータ材SPMに含まれる溶剤を除去する。この結果、正極板PEP上には、正極活物質PASが形成され、この正極活物質PAS上にセラミック粉体CRSが形成される。
【0115】
次に、図47に示すように、正極板PEPの第1面とは反対側の第2面に、例えば、図45に示す塗布装置を使用することにより、電極材ELMを塗布し、この電極材ELM上にセパレータ材SPMを塗布する。そして、図48に示すように、正極板PEPに対して加熱処理を実施することにより、第2面に塗布されている電極材ELMおよびセパレータ材SPMを乾燥させる。具体的には、例えば、150℃以下(120℃程度)の加熱処理を施すことにより、電極材ELMおよびセパレータ材SPMに含まれる溶剤を除去する。この結果、正極板PEP上には、正極活物質PASが形成され、この正極活物質PAS上にセラミック粉体CRSが形成される。以上のようにして、正極板PEPの両面に、正極活物質PASを形成し、正極活物質PAS上にセラミック粉体CRSを形成することができる。
【0116】
その後、図49に示すように、正極板PEPの両面に形成されている正極活物質PASおよびセラミック粉体CRSに対して、例えば、ローラRLを使用して、加熱下での加圧処理(カレンダ)を実施する。これにより、図50に示すように、正極板PEPの両面に形成されている正極活物質PASおよびセラミック粉体CRSが圧縮される。ただし、本実施の形態3では、セパレータを構成するセラミック粉体CRSの粒径ばらつきを、正極活物質PASの粒径ばらつきよりも小さくなるように構成しているので、正極活物質PASとセラミック粉体CRSに対して一括加圧処理を施す場合であっても、正極活物質PASの高密度化を図りながら、セラミック粉体CRSの空孔率を充分に確保することができる。このように本実施の形態3では、加圧処理後の段階において、セパレータを構成するセラミック粉体CRSの空孔率は、正極活物質PASの空孔率よりも大きくなっている。言い換えれば、加圧処理後の段階において、セパレータを構成するセラミック粉体CRSの充填率は、正極活物質PASの充填率よりも小さくなっている。したがって、本実施の形態3によれば、加圧処理に起因したセラミック粉体CRSの空孔率の低下というウェットオンウェット方式に特有の課題を解決することができ、これによって、リチウムイオン電池の性能向上を図ることができる。
【0117】
その後の工程は、前記実施の形態1と同様であるため、これ以降の工程の説明は省略する。以上のようにして、本実施の形態3におけるリチウムイオン電池を製造することができる。
【0118】
<実施の形態3における効果>
以上のようにして製造されるリチウムイオン電池によれば、以下に示す効果が得られる。
【0119】
(1)本実施の形態3によれば、正極の両面にセパレータを一体化するように構成しているので、正極とセパレータの間に生じる隙間を無くすことができる。この結果、金属異物によるリチウムイオン電池内の内部短絡を防止することができ、これによって、リチウムイオン電池の信頼性を向上させることができる。
【0120】
(2)また、本実施の形態3によれば、製造工程(組立工程)中に発生する金属異物に起因する内部短絡を抑制することができるので、リチウムイオン電池の製造歩留まりを向上させることができる。この結果、本実施の形態3によれば、リチウムイオン電池のコスト削減も実現できる。特に、本実施の形態3では、製造歩留まりの向上によるコスト削減の効果の他に、セパレータを別部品として用意する必要がなくなる観点からも、リチウムイオン電池のコスト削減を図ることができる。さらには、本実施の形態3によれば、ウェットオンウェット方式を採用しているので、セパレータ自体を製造する独自の設備を設ける必要がなく、電極を作成する工程を利用して、セパレータを形成できる。このことから、本実施の形態3によれば、リチウムイオン電池の製造コストを大幅に削減できる利点を得ることができる。
【0121】
(3)また、本実施の形態3に特有の効果としては、セパレータを構成するセラミック粉体CRSの粒径ばらつきを、正極活物質PASの粒径ばらつきよりも小さくなるように構成しているので、正極活物質PASとセラミック粉体CRSに対して一括加圧処理を施す場合であっても、正極活物質PASの高密度化を図りながら、セラミック粉体CRSの空孔率を充分に確保することができる。したがって、本実施の形態3によれば、加圧処理に起因したセラミック粉体CRSの空孔率の低下というウェットオンウェット方式に特有の課題を解決することができ、これによって、リチウムイオン電池の性能向上を図ることができる。
【0122】
<実施の形態3の変形例>
前記実施の形態3では、正極の両面にセパレータを一体的に形成する例について説明したが、本願発明の技術的思想は、これに限られるものではない。例えば、正極の片面にセパレータを一体的に形成し、かつ、負極の片面にもう1つのセパレータを一体的に形成することもできるし、さらには、負極の両面にセパレータを一体的に形成する場合にも、本願発明の技術的思想を適用することができる。
【0123】
なお、前記実施の形態1でも説明したように、金属異物の溶解・析出というメカニズムによるリチウムイオン電池の内部短絡は、正極に金属異物が付着することが原因となる。したがって、金属異物の溶解・析出というメカニズムによるリチウムイオン電池の内部短絡を効果的に抑制するためには、正極に金属異物が付着しないようにすることが重要である。このことから、本願発明の技術的思想において、セパレータと一体的に形成される電極は、正極と負極のいずれでも構わないが、特に、金属異物の溶解・析出というメカニズムによるリチウムイオン電池の内部短絡を効果的に抑制する観点からは、前記実施の形態3で説明したように、正極の両面にセパレータを一体的に形成する構成が望ましい。
【0124】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0125】
前記実施の形態では、リチウムイオン電池を例に挙げて、本発明の技術的思想について説明したが、本発明の技術的思想は、リチウムイオン電池に限定されるものではなく、正極、負極、および、正極と負極とを電気的に分離するセパレータとを備える蓄電デバイス(例えば、電池やキャパシタなど)に幅広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、例えば、リチウムイオン電池に代表される電池を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0127】
CAP 電池蓋
CR 軸芯
CRS セラミック粉体
CS 外装缶
CU 充電器
DC ダイコータ
DC1 ダイコータ
DC2 ダイコータ
DT 溝
EL 電解液
ELM 電極材
LIB リチウムイオン電池
NAS 負極活物質
NEL 負極
NEP 負極板
NR 負極集電リング
NT 負極リード板
NTAB 負極集電タブ
PAS 正極活物質
PEL 正極
PEP 正極板
PMP1 供給ポンプ
PMP2 供給ポンプ
PR 正極集電リング
PT 正極リード板
PTAB 正極集電タブ
RL ローラ
RL1 ローラ
SP セパレータ
SPM セパレータ材
SP1 セパレータ
SP2 セパレータ
SL1 スラリー
SL2 スラリー
SL3 スラリー
SV 溶剤
WRF 電極捲回体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)正極と、
(b)負極と、
(c)前記正極と前記負極とを電気的に分離する第1セパレータと、
(d)前記正極と前記負極とを電気的に分離する第2セパレータと、を備えるリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータと前記第2セパレータは、前記正極、あるいは、前記負極と接着していることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項2】
請求項1記載のリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータは、前記正極の第1面に接着しており、
前記第2セパレータは、前記正極の前記第1面とは反対側の第2面に接着していることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項3】
請求項1記載のリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータは、前記負極の第3面に接着しており、
前記第2セパレータは、前記負極の前記第3面とは反対側の第4面に接着していることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項4】
請求項1記載のリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータは、前記正極と接着しており、
前記第2セパレータは、前記負極と接着していることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項5】
請求項1記載のリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータは、前記正極の第1面に接着しており、
前記第2セパレータは、前記正極の前記第1面と反対側の第2面に接着しているとともに、前記負極の第3面とも接着していることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項6】
請求項1記載のリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータと前記第2セパレータは、バインダと、セラミックとを含むように構成されていることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項7】
請求項6記載のリチウムイオン電池であって、
前記セラミックは、アルミナ、あるいは、シリカから構成されていることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項8】
請求項1記載のリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータと前記第2セパレータは、バインダと、120℃以上の耐熱性を有する樹脂とを含むように構成されていることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項9】
(a)正極と、
(b)負極と、
(c)前記正極と前記負極とを電気的に分離する第1セパレータと、
(d)前記正極と前記負極とを電気的に分離する第2セパレータと、を備えるリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータと前記第2セパレータは、前記正極、あるいは、前記負極と一体化していることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項10】
請求項9記載のリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータは、前記正極の第1面と一体化しており、
前記第2セパレータは、前記正極の前記第1面とは反対側の第2面と一体化していることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項11】
請求項9記載のリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータは、前記負極の第3面と一体化しており、
前記第2セパレータは、前記負極の前記第3面とは反対側の第4面と一体化していることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項12】
請求項9記載のリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータは、前記正極と一体化しており、
前記第2セパレータは、前記負極と一体化していることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項13】
請求項9記載のリチウムイオン電池であって、
前記第1セパレータ、前記正極、前記第2セパレータ、および、前記負極は、すべて一体化していることを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項14】
(a)金属板上に電極材を塗布し、前記電極材上にセパレータ材を塗布する工程と、
(b)前記(a)工程後、塗布した前記電極材および前記セパレータ材を乾燥させる工程と、
(c)前記(b)工程後、乾燥させた前記電極材および前記セパレータ材に対して、加熱下での加圧処理を施す工程と、を備えることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載のリチウムイオン電池の製造方法であって、
前記(a)工程の段階で、
前記電極材は、電極活物質と、前記電極活物質を分散させた溶剤と、を含み、
前記セパレータ材は、セラミック粒子と、前記セラミック粒子を分散させた溶剤と、を含むことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載のリチウムイオン電池の製造方法であって、
前記セパレータ材に含まれる前記セラミック粒子の粒径ばらつきは、前記電極材に含まれる前記電極活物質の粒径ばらつきよりも小さいことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載のリチウムイオン電池の製造方法であって、
前記(c)工程後の段階で、
前記セパレータ材の空孔率は、前記電極材の空孔率よりも大きいことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項18】
請求項16記載のリチウムイオン電池の製造方法であって、
前記(c)工程後の段階で、
前記セパレータ材の充填率は、前記電極材の充填率よりも小さいことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項19】
(a)金属板の第1面上に電極材を塗布し、前記電極材上にセパレータ材を塗布する工程と、
(b)前記(a)工程後、前記第1面上に塗布した前記電極材および前記セパレータ材を乾燥させる工程と、
(c)前記(b)工程後、前記金属板の前記第1面とは反対側の第2面上に前記電極材を塗布し、前記電極材上に前記セパレータ材を塗布する工程と、
(d)前記(c)工程後、前記第2面上に塗布した前記電極材および前記セパレータ材を乾燥させる工程と、
(e)前記(d)工程後、前記第1面に形成されている前記電極材および前記セパレータ材と、前記第2面に形成されている前記電極材および前記セパレータ材と、に対して、加熱下での加圧処理を施す工程と、を備えることを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載のリチウムイオン電池の製造方法であって、
前記(a)工程の段階で、
前記電極材は、電極活物質と、前記電極活物質を分散させた溶剤と、を含み、
前記セパレータ材は、セラミック粒子と、前記セラミック粒子を分散させた溶剤と、を含むことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項21】
請求項20記載のリチウムイオン電池の製造方法であって、
前記セパレータ材に含まれる前記セラミック粒子の粒径ばらつきは、前記電極材に含まれる前記電極活物質の粒径ばらつきよりも小さいことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項22】
請求項21記載のリチウムイオン電池の製造方法であって、
前記(c)工程後の段階で、
前記セパレータ材の空孔率は、前記電極材の空孔率よりも大きいことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。
【請求項23】
請求項21記載のリチウムイオン電池の製造方法であって、
前記(c)工程後の段階で、
前記セパレータ材の充填率は、前記電極材の充填率よりも小さいことを特徴とするリチウムイオン電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【公開番号】特開2012−190784(P2012−190784A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15358(P2012−15358)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】