説明

リチウム蓄電池及びその製造方法

セパレータにより分離され、リチウム塩の有機極性溶媒内の非水系溶液からなる電解物質とともに容器に納められた、少なくとも2つの3次元電極を有するリチウム蓄電池であって、少なくとも2つの電極はそれぞれ最小厚み0.5mmを有し、少なくとも1つの電極は、導電性要素とアクティブマテリアルとの均一な圧縮された混合物を有し、電解物質の存在する中でリチウムを吸収し抽出することができ、ここにおいて圧縮された電極の気孔率は25−90%であり、アクティブマテリアルは壁の厚さ10ミクロンの中空の球面の形状、又は最大寸法20ミクロンの集合体又は団粒の形状を有し、
セパレータは、開いた気孔を有し気孔率30−95%の高度に多孔性の電気的に絶縁性のセラミック材料からなる、ことを特徴とするリチウム蓄電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータにより分離された少なくとも2つの3次元電極を有し、有機極性溶媒内のリチウム塩の非水系の溶液からなる電界物質と共に蓄電池容器に収容されたリチウム蓄電池に関するものである。本発明はさらに、特定のタイプの3次元電極を使用したリチウム蓄電池の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池はこの20年間集中的に開発され、それにより多くの携帯機器の実現をもたらした。それにも拘わらず高容量のそして安全なリチウム電池に対する増大する要望は充足されていない。これが原因となり多くの用途の進歩が遅れている、例えば、高電圧を処理する鉛-酸蓄電池のリチウム蓄電池との代替、電気自動車用や電力貯蔵用の大容量バッテリーの開発である。
【0003】
黒鉛を負電極のアクティブマテリアルとして使用する既存技術は、重量0.5−1Kgの電池の安全性を保証できない。この蓄電池の寸法を増大させる努力は多くの問題に直面している。例えば、オーバーヒート、黒鉛の中間層、膨張、黒鉛表面でのリチウム金属の発現、爆発の危険性、火事である。これらの安全上の問題により大型のリチウム蓄電池はその受容限度を超えて押し出された。
【0004】
黒鉛を他の材料で代替する技術、例えば、チタン酸リチウムLiTi12八面体結晶構造はリチウム電池の安全係数を大幅に改善したが、一方で、有意に電池電圧を低下させた。
この原理で生産されるリチウム電池は、電気自動車用の安全基準を満たすが、この電池の重量係数では小型車両での使用は不可能である。
【0005】
現在生産される全ての充電式リチウム蓄電池は、平面電極に基づいており、アクティブマテリアルと導電性炭素と有機結合剤の混合物が薄い層で導電性箔、通常はアルミ又は銅(電流収集要素)、にラミネートされる。これら平面電極の厚みは通常200ミクロンを超えない。
【0006】
正と負の電極は薄い電気絶縁材料、通常有機ポリマーから作られる穿孔処理箔―セパレータで分離されて、共に重ねられる。セパレータで絶縁され重ねられた薄膜電極は、次に共に加圧され、蓄電池容器内に配置され、容器内の空間は電界物質で満たされる。電界物質としては非水系のリチウム塩溶液が使用される。
【0007】
平面電極を使用するこれら装置に関連して、充電及び放電中に充電又は放電速度が速すぎる場合に、リチウム金属の成長を防止することが最重要である。リチウム金属は電極内に樹枝状結晶の形状で発現し、それはセパレータを通って過度に成長し、そして両方の電極間に電気的短絡を引き起こす。平面の薄膜構造の蓄電池で金属リチウムを負電極として使用することは、同様の理由で全て不可能である。
【0008】
薄膜平面電極の1つのタイプが特許文献1に開示されている。その増大した容積的容量にも拘わらず、このタイプは上記の本質的な特性の影響を受ける。
薄膜平面電極構造を有するリチウム電池の1つの可能な構成が特許文献2に示される。アクティブなナノ材料が電極の構成要素として使用されている。平面構造に配置された電池は比較的小さな容積的容量を示し、その容量は更に陽極材料の種類により制限される。
特許文献3は特定のアクティブマテリアルの固体粒子の上に蓄積された炭素電子導電体を教授している。アクティブマテリアルの導電性を向上させる炭素は、熱分解のやや複雑な工程を使用してアクティブマテリアルの表面上に直接形成される。
【0009】
特許文献4は、アクティブマテリアル、有機結合剤、導電性炭素からなるペーストを適合する基板に塗膜し、焼結工程を経ない、電気化学電池の薄い層の形成について開示している。50−90%気孔率のセパレータが使用されるモデル実施例8の計算では、電極電圧の電位に対する傾きが電極の厚みの増大と共に急激に落ち込んでいることを示している。この事実に基づいて、開示されたネットワークは電極の厚みが大きい、例えば0.5mmを超える電極構成では使用不可能であることが判る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許6,127,450
【特許文献2】米国特許出願2007/0092798
【特許文献3】米国特許出願2007/0134554
【特許文献4】欧州特許1244168A
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の目的は、拡張されたエネルギー保存容量と広範囲の電位範囲で動作可能な個々の蓄電池構成要素の厚みを提供することである。
他の目的は、蓄電池の最高電圧とエネルギー密度の有意な増加を達成することである。
更に1つの目的は、高容量ボタン電池及び微小電気機械システム用だけでなく、自動車やエネルギー貯蔵などの用途に設計された高エネルギー密度蓄電池を提供することである。
また更なる目的は、単純でコストの安い蓄電池製造工程を提供することである。
【0012】
本発明の目的は以下の蓄電池により達成され、課題は解決される。即ち、
セパレータにより分離され、リチウム塩の有機極性溶媒内の非水系溶液からなる電解物質とともに容器に納められた、少なくとも2つの3次元電極を有するリチウム蓄電池であって、
少なくとも2つの電極はそれぞれ最小厚み0.5mmを有し、
少なくとも1つの電極は、導電性要素とアクティブマテリアルとの均一な圧縮された混合物を有し、
電解物質の存在する中でリチウムを吸収し抽出することができ、
ここにおいて圧縮された電極の気孔率は25−90%であり、
アクティブマテリアルは壁の厚さ10ミクロンの中空の球面の形状、又は最大寸法20ミクロンの集合体又は団粒の形状を有し、
セパレータは、開いた気孔を有し気孔率30−95%の高度に多孔性の電気的に絶縁性のセラミック材料からなる、
ことを特徴とするリチウム蓄電池。
【0013】
以下でリチウム蓄電池の変更、特定の詳細、製造方法を含む、本発明の有利な実施形態が記述される。
電子導電性要素、アクティブマテリアルおよびセパレータは、有機結合剤を含まない完全な非有機材料である。本発明のこの特徴は、本発明の創造過程において発見された知識に基づいている。即ち、上記の構成要素における有機結合剤が、数ミクロンを超える厚さの層内のリチウムイオンの拡散にとってマイナスの影響を及ぼすという事実である。圧縮による製造方法は有利にもいかなる種類の有機結合剤を必要とせず、また振動に強い蓄電池を生成する。
【0014】
電子導電性要素は、導電性炭素及びその変形、導電性金属及び導電性酸化物からなるグループから選択される。
通常、しかしこれに制限されないが、アクティブマテリアルは、リチウム、マンガン、クロム、バナジウム、チタン、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、ランタン、ニオブ、ホウ素、セリウム、タンタル、スズ、ガクネシウム、イットリウムおよびジルコニウムの酸化物又はリン酸塩の混合物からなるグループから選択される。
薄膜電極内では、アクティブマテリアルの粒子は、使用限度の容量の範囲内において、最大20分の時間期間内でリチウムイオンを完全に吸収し抽出する能力を有する。
【0015】
アクティブマテリアルはマンガン酸リチウム又はチタン酸リチウムのドープされた、及びドープされないナノ粒子からなる。
電極は、40−85重量%の前記アクティブマテリアルからなり、あるいは、電極が拡張された箔、網、格子、線、織物又は粉の形状の電流収集要素を有する。
電流収集要素は、アルミニウム、銅、銀、チタン、シリコン、プラチナ、炭素又は特定のセルの電位ウィンドウ内で安定な物質からなるグループから選択される。
電極は、前記アクティブマテリアル、電子電導要素、および電流収集要素の圧縮された、均一な混合物からなる。
【0016】
セパレータは、セラミック材料の、好適にはAl又はZrOに基づく、圧縮された、高度に多孔質の粉からなるバルク層又はシートである。
好適には、セパレータは、開放型の気孔性の、熱分解した物質、不織ガラス、又はセラミック繊維の非方向性の形状を有し、そして熱分解した物質又は不織繊維の粉を圧縮することによりバルク層に生成される。
セパレータの厚さは0.1mm−10mmであり、電極上に上記粉を圧縮するか、又は別途シート状、しばしばタブレットに圧縮され、場合によって熱処理され、その後電極上に配置される。
完全に非有機のセパレータのこれら形状は、従来技術の数倍厚い厚みと共に、リチウム金属を負の電極としての使用を可能にする。このことはリチウム蓄電池の電圧及びエネルギー貯蔵容量を理論的限界まで高める。
【0017】
第2の電極は金属リチウムからなり、リチウムシート又はリチウム箔の形状である、或いは、圧縮されたリチウムシート又はリチウム箔と樹枝状結晶の形状である。
リチウムの樹枝状結晶の形状は、リチウム蓄電池をサイクルさせることにより、リチウムシート又はリチウム箔から現場で生成される。更に、樹枝状結晶の寸法及び表面は、他の要素、例えば、電導炭素の添加により、又は電解質の組成により、或いは電解質にある物質、例えば安定リン酸塩を混入させることにより、変化する。
【0018】
金属リチウムの使用は、有利にもその樹枝状結晶の形状において、リチウム蓄電池の重量と寸法を大幅に減少させ、そして以下の実施形態では、同時に黒鉛を使用する蓄電池に比べて安全性を増大させる。
この意味で、金属リチウム樹枝状結晶と上記の非有機セパレータの組合せが使用される。セパレータはリチウム樹枝状結晶がセパレータを通過して浸透するのを防止し、それにより樹枝状結晶は負電極として使用可能となる。さらに上記組合せは短絡のばあいに蓄電池の高い安全性を提供する。
【0019】
電解物質リチウム塩は、LiPF6,LiPF4(CF,LiPF(CFSO,LiPF(C,LiPF(CSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiCFSO,LiC(CFSO,LiBF, LiBF(CF,LiBF(C,LiBF(CFSO,LiBF(CSO及びLiClOからなるグループから選択される。
電解物質は更に、蓄電池機能を高温において改善し、及び/又は分解物質を除去し、及び/又は過充電から蓄電池を保護する変更剤、及び/又は金属リチウム樹枝状結晶の寸法に影響を与える物質を含む、ことを特徴とする請求項20に記載のリチウム蓄電池。
【0020】
本発明の1実施形態によれば、リチウム蓄電池は、蓄電池の第1の極を形成する開放された上部部位と下部部位を有する中空の本体(6)と、本体の下部部位に配置され、本体の内部表面と電気的に接触する第1の電極と、本体の内部表面から絶縁挿入物(8)により分離された上部部位内の第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置されたセパレータと、開放された上部部位を閉鎖し、第2の電極と電気的に接触し、蓄電池の第2の極を形成するキャップ(7)と、キャップを本体(6)から絶縁する密閉カバー(9)と、を有する。
【0021】
本発明の他の1つの実施形態によれば、リチウム蓄電池は、共に内部蓄電池空間を画定し、蓄電池の第1の極(11)に接続される一体となった上部本体(6a)と下部本体(6b)と、本体(6a,6b)の内部蓄電池空間に圧入されて内部に中央空洞を形成し、本体(6a,6b)と電気的に接触する第1の電極(1a,1b)と、中央空洞内に位置する第2の電極(2)と、第2の電極と電気的に接触し、蓄電池の外部に伸長する蓄電池の第2の極と、第1の電極(1a,1b)と第2の電極(2)を分離するセパレータ(5a,5b)と、を有する。
【0022】
本発明の更に1つの実施形態によれば、リチウム蓄電池は、蓄電池の前記第1の極(11)を含む上部本体(6a)と、蓄電池の前記第2の極(22)を含む下部本体(6b)と、からなり、両方の本体(6a,6b)は一体化され、内部蓄電池空間体積を画定し、上部本体(6a)の内部空間内の第1の電極(1)と、下部本体(6b)の内部空間内に位置する第2の電極(2)と、第1の電極(1)と第2の電極(2)を分離するセパレータ(5)と、蓄電池の第1の極(11)と蓄電池の第2の極(22)の電気的絶縁のため、上部本体(6a)と上部本体(6b)の間に配置されるシール(8)と、を有する。
【0023】
本発明の別の1つの実施形態によれば、リチウム蓄電池は、2つの辺縁の組と少なくとも1つの内部の組を有し、それぞれの組は、第1の電極と、第2の電極と、セパレータと、電流収集要素と、蓄電池の極とを有し、さらに、第1の電極を受容するための辺縁フレームを画定する閉鎖された外部表面と開放された内部表面を有する、中空の辺縁の上部本体(6a)と、第1の電極を受容するための辺縁フレームを画定する閉鎖された外部表面と開放された内部表面を有する、中空の辺縁の下部本体(6b)と、第2の電極(2a,2b)を受容するための内部フレーム(20a,20b)と、隣接する第1の電極と第2の電極の間に配置されるセパレータ(5a,5b)と、第1の電極との電気的接触を提供し、第1の蓄電池の極(11)に接続する電流収集要素(111)と、第2の電極との電気的接触を提供し、第2の蓄電池の極(22)に接続する電流収集要素(221)と、辺縁の組と同一の構成の少なくとも1つの内部の組と、を有し、ここにおいて辺縁の本体は内部フレームと交換される。
【0024】
1つのリチウム蓄電池の製造方法によれば、少なくとも1つのシートの第1電極と、セパレータと、少なくとも1つのシートの第2電極とが互いに押圧して重ねられ、
蓄電池本体は電解物質で満たされて閉鎖され、同一タイプの電極の電流収集要素が接続されている。
あるいは、それぞれのシートは衝撃により1つずつ徐々に押圧される。
さらに或いは、少なくとも1つの電極と、セパレータと、少なくとも1つの他の第2の電極の圧縮されたシートは、順番に互いの上に重ねられ、蓄電池本体は電解物質で満たされて閉鎖され、同じタイプの電極の電流収集要素は接続されている。
【0025】
化学的組成に関しては、高速リチウムイオン電子拡散を有するアクティブマテリアルのみをこのタイプの蓄電池(リチウムを非常に光速に吸収し抽出する)に使用することが可能である。最適なのは、八面体結晶構造であり、それは全ての結晶方向でリチウムを高速に吸収し、抽出する。利便性からドープされた或いは非ドープのマンガン酸リチウム、LiMn(LMS)、LiMn1.5Ni0.5(LNMS)又は、チタン酸リチウムLiTi12(LTS)を使用可能である。
【0026】
リチウムを高速に吸収し抽出できる粉形体のアクティブマテリアルの形態は、重要な役割を果たし、そして幾つかの基本的パラメータを満たす必要がある。アクティブマテリアルの最適な粒子寸法は変化するが、粒子の充電と放電(リチウムイオンの吸収と抽出)を20分以内に完了させる能力を満たさなければならない。最適には、1分以内で、さらに好適には数秒以内で完全に充電放電できる、性物質の粒子である。八面体結晶構造のナノ寸法の結晶が使用されればさらに有利である。粒子寸法200−250nmの八面体結晶構造のタンタル酸リチウムは30分で充電放電可能であるが、粒子寸法30−50nmの同様の粒子は30秒以内に充電放電可能である。粒子寸法150nmの八面体結晶構造のマンガン酸リチウムは1分で充電放電可能である。
【0027】
最適には、活性ナノ結晶材料は、壁の厚さ10ミクロンの、好適には1−3ミクロンの中空の球面の形状を有する。この形状は便利にもアクティブマテリアル懸諾液をスプレー乾燥させることにより準備可能である。これら中空球面の直径は好適には1−50ミクロンである。
例えば乾燥した材料をグライダにかけて得られる、アクティブマテリアルの小さな塊又は団粒を使用する場合、これらの構造の寸法は30ミクロンより小さく、好適には5ミクロン未満である。
【0028】
本発明に基づくリチウム蓄電池の個々の電極の厚みと容量は、薄膜平面構造のリチウム電池に使用される電極の厚さの少なくとも5倍、通常2桁大きい。結果として、本発明に基づくリチウム蓄電池は、鉛蓄電池に比べ、容量と寸法が同じ場合、5倍までの高電圧の達成が可能である。
【0029】
閉鎖構造の蓄電池金属本体は蓄電池の冷却、暖房を容易にする。通常使用される黒鉛電極の代わりに負のリチウム電極が使用される場合、より高い電位差で蓄電池をより早く充電放電可能である。本発明の蓄電池は時間間隔1−24時間で充電放電可能であり、一方電池容量の50%は典型的に2時間未満で放電可能である。そのリチウム蓄電池は容量の80%を保持しながら100回以上充電放電可能である。樹枝状結晶の金属リチウムを使用することにより、小さなリチウム箔に比べて電流密度を有意に向上する。
【0030】
製造工程において、アクティブマテリアルは高度に電子導電性要素、例えば、導電性炭素と均一に混合される。アクティブマテリアルと導電性炭素の比率は個々の化学組成によって異なる。混合物は通常、40−85重量%のアクティブマテリアルを含む。多くの場合導電性炭素の含有量は25−40重量%である。この混合物にはポリビニルクロライド(PVDF)他のような有機結合剤を含まない。このようにして得られた混合物は厚さ0.5−50mmのシートに圧縮される。セパレータ及び第2の電極のシートは、徐々に第1の電極のシート上に押しつけられる。蓄電池は電解質で満たされ閉鎖される。蓄電池内に組入れられるセパレータは、最初は粉の形状で直接電極上に押圧されてもよく、或いは別途押圧された粉の小さなブロックであってもよく、電極の個々の形状に適合するタブレットとなる。セパレータの厚みは数10ミクロンから数ミリの範囲である。
【0031】
より高い容量の大きなブロックの電極が製造される場合、高い電流を運ぶため、電子導電性要素とアクティブマテリアルの混合物に電流収集要素、例えば線、金属切り子、繊維、格子又は網を添加し、一緒に圧縮して、電流収集要素が電極の極に接続するように電極の小さなブロックにすることが可能である。周辺の配線に電気的に接続する電極の極は、通常アルミ又は他の導電性材料から出来た電極容器である。適用電圧領域で安定な、アルミ、銅、銀、チタン、金、プラチナ、シリコン又は他の導電性金属が電流収集要素の材料として使用される。炭素繊維やナノチューブも使用できる。混合物は衝撃により一緒に適切に圧縮され、数センチの厚さのシート又はブロックになる。このように調製された電極の気孔率は25−80%まで変化し、典型的には30−50%の間である。
【0032】
高エネルギー保存容量の多重電極リチウム蓄電池は有利にも、個々の電極とセパレータのシートをそれぞれの上に繰り返し押圧し、同じタイプの電極の極を接続することにより生成される。即ち、セパレータによりリチウムから分離された正電極3次元ブロック、又は負電極の3次元ブロックの構成を繰り返し、そしてそれぞれの電極を電気的に接続する。
【0033】
それぞれの要素を粉から圧縮することによる蓄電池セルの生成は簡単でコストが安い。これらの方法はまた、蓄電池が動作中に受ける揺れや振動に対する抵抗を高める。
本発明に基づくリチウム蓄電池は、高容量ボタン電池の用途又は自動車用の高電圧蓄電池、又はエネルギー貯蔵メディア用に設計される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に基づく1実施形態のリチウム蓄電池の概略断面図である。
【図2a】粉状混合物の概観図である。
【図2b】3次元電極用のアクティブマテリアルと導電性炭素の粉状混合物の最適形状を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】アクティブマテリアルLiTi12(LTS)、LiMn(LMS)、LiMn1.5Ni0.5(LNMS)のリチウムに対する特性電位を示すボルタモグラムである。
【図4】3Vの一定バイアスでのLi/LTS蓄電池(1.5V)の放電サイクルの特性を示すグラフである。
【図5】実施例2で記載される、充電及び放電測定中のLi/LTS蓄電池(1.5V)の電流特性を示す図である。
【図6】実施例2で記載される、充電及び放電測定中のLi/LTS蓄電池(1.5V)の電圧特性を示す図である。
【図7】実施例3で記載される、充電及び放電測定中のLTS/LMNS蓄電池(3V)の電流特性を示す図である。
【図8】実施例4で使用されるアクティブマテリアルLiMn(LMS)のナノ粒子の電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例4で記載される、充電及び放電測定中のLi/LMS蓄電池(4.3V)の電流特性を示す図である。
【図10】本発明に基づく他の実施形態のリチウム蓄電池の概略断面図である。
【図11a】実施例5で記載される蓄電池の、パルス放電と低速充電特性を示す図である。
【図11b】最初の30秒間におけるパルス放電特性と低速充電への切り替えを示す図である。
【図12】実施例5で記載される蓄電池の、異なるバイアスにおける充電及び放電特性を示す図である。
【図13】本発明に基づく更に別の実施形態のリチウム蓄電池の概略断面図である。
【図14】実施例6で記載される蓄電池の、時間に関する充電及び放電特性を示す図である。
【図15】実施例6で記載される蓄電池の、一定電流サイクルを示す図である。
【図16】実施例6で記載される蓄電池の、短絡放電を示す図である。
【図17】多重電極を有するリチウム蓄電池組立体の展開鳥瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下で本発明の実施形態の詳細を、図を参照しながら記述する。類似の参照番号は類似の機能を示す。以下の実施例は本発明を表わすが、本発明はそれに制限されない。「3次元」という用語が電極に関して使用される場合、電極の厚みは0.5mmより大きいことを留意されたい。
【0036】
(実施例1)
図1は、3次元電極に基づく、リチウム蓄電池の1つの可能な実施形態を示し、開放された上部と、下部からなる中空の本体6を有する。下部は第1の材料(正電極)1で満たされ、一方上部には負電極としての第2の電極2が配置される。セパレータ5は、第2の電極2と分離するため第1の電極1の上に配置される。第1の電極1は蓄電池の正の極である本体6と電気的に接触する。第2の電極2はコランダムで出来た絶縁フィルタ8により本体6から電気的に分離される。
【0037】
上部では本体6の空間が銅製の導電性キャップ7とプラスチック製の密封カバー9により密封される。キャップ7は第2の電極と電気的に接続し、蓄電池の負の極となる。蓄電池本体6の空間全ては電界物質で満たされ、そして密封される。
【0038】
以下で蓄電池の個々の構成要素の構造及びその調製方法が詳述される。概略図2aは、アクティブマテリアル4、即ちチタン酸リチウムLiTi12のナノ結晶(ナノLTS)の粉と導電性要素3の混合物を示す。混合物の形状はSEM写真により図2bに示される。アクティブマテリアルはナノLTS結晶の懸濁液をスプレー乾燥器により乾燥させて調製される。粉は、ナノLTS結晶65重量%に対し導電性炭素35重量%の比率で均一に導電性要素3、即ち、高導電性炭素と混合される。高導電性炭素は、Timcal社で製造され、Super P Liという商品名で販売されている。この有機結合剤を含まない完全に非有機の混合物は、本体6の中に加圧されて押し込まれ、タブレット状の第1の電極を形成する。
【0039】
第1の電極(LTS電極)の厚さは4mmであり、全体の気孔率は40%であった。アクティブマテリアル粒子の平均寸法は50nmであり、その粒子の、完全充電又は放電期間中における薄い層の中のリチウムイオンの吸収及び抽出能力は1分未満であった。セパレータ5は、有機結合剤を持たない高多孔質のコランダム粉を、LTS電極上に直接圧を掛けて押し込んで形成される。圧縮されたセパレータは2mmの厚さで、気孔率は85%であった。他の方法では、同じ構成のセパレータが別途ブロック形状に圧縮されて、電極上に置かれる。
【0040】
純粋なリチウム金属板が、第2の電極2として使用され、銅のキャップ7と共にセパレータ5の上に押圧され、コランダム絶縁フィルタ8とプラスチックの密封カバー9によって電気的に分離されている空間に押し込まれる。蓄電池を電解物質1M LiPFでEC−DMC(エチレン・カーボネート−ジメチル・カーボネート)中に1晩浸した後、蓄電池は密閉され、そしてリチウムの樹枝状結晶が負の電極2のアクティブ表面に亘って形成されるように、充電放電サイクルが数回繰り返される。ゆっくりとした充電サイクルの期間(活性LTSのリチウム化)により蓄電池の全容量に到達後、蓄電池は適用バイアス1.5Vだけ蓄電池の正規電圧より高い電圧(Li/Liに対し3V)で放電された。上記組合せのボルタモグラムが以下の実施例で使用される他の2つのアクティブマテリアルの正規電位と共に図3に示される。
【0041】
特徴的な放電サイクルが図4に示される。この蓄電池の逆行可能な容量は、ほぼ100mAh/cmであった。フル容量に達するのに7時間を要した。充電電流は、圧縮された正のLTS電極1の内部の電解物質の中のリチウム集積の増大により、また負のリチウム電極2の上のリチウム樹枝状結晶の生成により、サイクルの期間に改善された。放電サイクルは、蓄電池の理論的容量の約80%に達すると、規則的に減速した。
【0042】
蓄電池は数時間の間に完全に充電されまた放電可能である。典型的には、3−24時間の間は蓄電池の全容量を繰り返し充電放電可能である。より典型的には、容量の50%は2時間以内に再生可能にかつ繰り返し充放電可能であり、このリチウム蓄電池タイプの充放電サイクル数は100回を超える。リチウム電極は黒鉛電極に比べ、充電中に高いバイアスの使用が可能である。
【0043】
(実施例2)
図1の蓄電池が、実施例1で記載されたように、圧縮されたリチウム樹枝状結晶からなる負の電極と、LTSアクティブマテリアルと導電性要素−導電性炭素―からなる混合物を圧縮することにより調製された、2.5mmの厚さの正の電極から構成された。セパレータは気孔度70%のZrO非有機繊維から生成され、厚さ1mm未満であった。その後蓄電池は充電サイクルの最大容量を得るため5回充放電サイクルを繰り返した。蓄電池の理論的容量は12mAhであった。その後蓄電池の電流電圧特性が後続のサイクルの間計測された。図5は、Li/LTS蓄電池の正規電位である1.5Vからプラスマイナス1Vのバイアスを印加したときの、制御された充電と放電の間の電流特性を示す。両方向への可逆工程は実際上2万秒(5.5時間)後には終了した。図6は、2mAの一定電流を維持した充電と放電の期間における、理論電位のほぼ80%までの両サイクルの安定した電圧コースを示す。
【0044】
(実施例3)
図1のリチウム蓄電池の負の電極が、30重量%の導電性炭素と、70重量%の中空の球面が生来の形状であるLiTi12アクティブマテリアル(LTS)との混合物を圧縮することにより生成された。LTS粒子の平均寸法は50nmであった。正の電極は、5ミクロンより小さく主要粒子の平均寸法約100nmの団粒からなる、LiMn1.5Ni0.5アクティブマテリアル(LNMS)と、30重量%の導電性炭素との混合物を圧縮して生成した。混合物は電流収集要素としてのアルミ線と一緒に圧縮された。LNMSアクティブマテリアルは30重量%を超えて使用され、4mmの厚さの正の電極を生成した。両電極は、気孔度80%の圧縮されたコランダムから作られた、厚さ0.5mmセパレータにより分離された。蓄電池は電解物質1MLiPF6+EC−DMCで満たされた。蓄電池の正規電位は3.1Vであり、それは電圧範囲2.0−3.5Vの範囲で試験された。図7の線は、充電電圧3.5V、放電電圧2Vの1つの定電位サイクルの電流特性を示す。
【0045】
(実施例4)
図1の蓄電池の調製において、図8のSEM写真に示される、70重量%の粒塊粒径分布が30ミクロン未満のLiMnアクティブマテリアル(LMS)と、30重量%の高導電性炭素の混合物を圧縮し、第1の電極のタブレットとした。得られた第1の電極は厚さ1mm超で全体の気孔率は35%、容量は7mAhであった。多孔のコランダムからなるセパレータは厚さ1.5mm、気孔率75%であった。セパレータは直接正の第1のLiMn(LMS)電極1に押しつけられた。リチウム金属板上に押圧されたリチウム金属樹枝状結晶のスポンジは第2の(負の)電極として使用された。図9は、Li/LMS蓄電池の容量の40%の可逆充電及び放電の電流特性を示す。電位4.45Vでの充電と電位3.9Vでの放電の可逆サイクルに3時間掛からなかった。
【0046】
図3のバルタモグラフは上記の材料で得られる電池の電圧を示す。そのグラフを見れば、リチウムとLiTi12(LTS)から作られる電極の組合せから平均電圧1.55Vの電池を作ることが可能なことは明白である。リチウムを(LMS)と比べれば、約4.2Vの電圧の電池を作ることは可能であり、ニッケルをドープしたマンガン酸リチウムLiMn1.5Ni0.5(LNMS)が使用された場合、生成された蓄電池の正規電圧は4.7Vである。2つの化合物LTSとLNMSが組合わされた場合、電圧3.02V(4.62−1.60=3.02)の電池を作ることが可能である。
【0047】
(実施例5)
図10はリチウム蓄電池の他の実施例である。アルミからなる蓄電池本体は、上部本体6a、下部本体6bの類似の2つの中空部位を有する。本体6aと6bは共同して内部密閉中空空間を形成する。第1の正の電極は、2つの類似の電極1a,1bを有し、それらは本体6a、6bの内部表面に沿って配置され、「サンドイッチ」立体配座に配置された第1の電極が中央空洞を画定し、その中に2つのプレート5a、5bからなるセパレータが位置する。プレート5a、5bは、その間の内室を形成するように形作られ、第2の(負の)電極2の材料で満たされる。第2の電極2はセパレータ5により本体6a、6bから電気的に絶縁される。
絶縁フィルタ8a、8bとして2つのDuPont社製のVITONシールが蓄電池本体6a、6bの間に置かれ、電池を密封する。正の極としての第1の極11が本体6a、6bの外側表面に接続される。一方テフロン(登録商標)で絶縁された銅線からなる第2(負)の極22は、第2の電極室2に突き出て、リチウムと接触し、また他の端は本体6a、6bの外に伸長する。
【0048】
以下では、図10に示す蓄電池の調製、構成、及び特性と構成要素が詳述される。10m/gの特定の表面と中空球面形状のLiCo0.1Mn1.9アクティブマテリアル(LCMS)が高導電性炭素(Timcal社製Super P Li)と60重量%と40重量%の比率で混合される。混合物は本体(6a、6b)に押圧され2つの正の電極が形成された。押圧力は25kNであった。1つの正電極は上記混合物0.4gを有し、他の正電極は0.35gであった。これらの電極は共に合計容量40mAhの「サンドイッチ」組立体内で使用される。アルミ本体内の正電極は厚さ3mmで、それぞれ表面積0.64cmで、サンドイッチ立体配座のなかで合計1.28cmとなる。2つの高度に多孔性のアルミナセパレータ5a、5bは高さ1mmのリチウム金属陰極−第2電極2用の部屋を生成するように輪郭を作られる。それらセパレータはアルミナ粉末を25kNで圧縮し、その後1050℃で2日間熱処理して調製される。各セパレータプレートの厚みは約0.8mmで気孔率は60%以上である。輪郭を作られたセパレータプレートは正電極の上に置かれる。それらの間の空間は、リチウム樹枝状結晶と0.3mmのリチウム金属箔の上に拡がった5重量%のSuper P Li導電性炭素との混合物で満たされる。
【0049】
個々の裸の線の束がリチウム箔に押しつけられリチウム金属負電極の内部で電流集積要素として機能する。線の他の端は蓄電池の負の極22として機能する。蓄電池の正の極11は、正電極の両方の本体6a、6bを接続するアルミニウムのクランプであった。乾電池は0.5/0.5/1の比率のEC/PC/DMC(エチレン・カーボネート/プロピレン・カーボネート/ジメチル・カーボネート)溶媒中の電解物質0.5 M LiPFリチウム塩で満たされる。
【0050】
LCMSはリチウムに対して約4.2Vのウィンドウで動作する。導電性のガラス基板上の5ミクロンの層で測定した場合、材料の完全な充電と放電は3分以内で起こった。特定の材料の特定の容量は90mAh/gと判定された。蓄電池は4.45Vで7000秒間連続して充電され、理論的容量の60%に達した。蓄電池はその後、2V,3V及び3.6Vの制御された電位において10秒の放電パルスに露出される。10秒の放電パルスの後、蓄電池は4.3Vで3000秒間ゆっくりと充電される。このサイクルが10回繰り返される。(図11a)階段状パルス制御の放電の詳細は図11bに示される。30秒間で蓄電池容量の0.85−0.95%が放電された。
【0051】
蓄電池の動作、特に短絡のサインは更に2V,3V,3.6Vの放電電位および4.15V,4.3V,4.45Vの充電電位で観察された。(図12)70回のサイクルの後、蓄電池は取り外され分析された。セパレータはリチウム樹枝状結晶が表面の下に侵入した形跡を示さなかった。リチウム箔は部分的にリチウム樹枝状結晶からなる高密度の黒色の集合したスポンジに変化していた。樹枝状結晶は機械的に良く結び付いていた。
【0052】
(実施例6)
図13は他の実行可能な単一セルリチウム蓄電池の実施形態である。図10の蓄電池と類似して、アルミ製の蓄電池本体は2つの相似の中空部分:上部本体6aと下部本体6bからなる。従前の実施形態と異なり、上部本体6aの中空空間は正電極としての第1の電極1の材料で満たされ、下部本体6bの中空空間は負電極としての第2の電極2の材料で満たされている。本体6a、6bは対応する極を備える、即ち、上部本体6aは正の極としての第1の極11、下部本体6bは負の極としての第2の極22を備える。第1の電極1と第2の電極2はセパレータ5により分離され、上部本体6aと下部本体6bは絶縁フィルタ8により分離されている。
【0053】
図13に示される蓄電池およびその構成要素の調製、構成、および特性を以下で述べる。
10m/gの特定の表面の、中空球面の形状の、リチウムに対する正規電位4.2VのLiCo0.1Mn1.9アクティブマテリアル(LCMS)が、高導電性炭素(Timcal社製Super P Li)と60重量%と40重量%の比率で混合された。混合物はアルミの上部本体6aに押圧され、正の電極が形成された。押圧力は15kNであった。正電極は上記混合物0.736gを有し、合計容量は39mAhであった。正電極は厚さ3mmで、その表面積は1.33cmであった。負の電極は同様に60重量%のミクロ化されたチタン酸リチウムLiTi12アクティブマテリアル(LTS)と40重量%の高導電性炭素(Timcal社製Super P Li)の混合物0.4gをアルミ下部本体6bに押圧することにより生成された。
【0054】
電極は厚さ2mmで表面積は1.33cmであった。タンタル酸リチウムの理論的特定容量は175mAhでありそのリチウムに対する正規電位は1.6Vであった。負の電極におけるチタン酸リチウムの容量は、正の電極におけるLCMSの容量に適合している。95%の気孔率のアルミナ粉のバルク層で直接電極に押しつけられたセパレータ5により分離された電極は、ドライな蓄電池を生成した。セパレータのシートは2−3百ミクロンの厚みであった。アルミ本体はまた蓄電池の正及び負の極として機能した。それらは互いに絶縁フィルタ8、テフロン(登録商標)シールにより絶縁された。蓄電池は、γ−ブチロラクトン(GBL)+プロピレンカーボネート(容積比0.9/0.1)の中に溶解した0.9M (CFSONLi+0.1M LiBFリチウム塩からなる電解物質で満たされた。その後蓄電池は密封された。
【0055】
蓄電池の容量は39mAhであり、正規電圧は2.5Vであった。蓄電池は2.9Vでの充電と1.9Vでの放電を10回繰り返した。充電/放電時間は7000秒と15000秒であり、短いインターバルの間に交換された容量は約40%であった。3つ目のサイクルシリーズが図14に示され、対応する値が表1に示される。
【0056】
【表1】

【0057】
図15は電位範囲1.5V−3.0Vにおける定電流サイクルを示す。定電流+/−4mAによる充電放電は3時間で蓄電池容量の30%の交換を示した。最後に、蓄電池の両極は接続され、短絡電流が計測された。放電は図16に示すように1分間のパルスと緩和期間1,2及び5分で行われた。図16の放電サイクルの初めと終わりを表わす電圧パラメータは、蓄電池の小さな電圧降下での安定した放電と速い緩和を示す。蓄電池の理論的容量の30%が6分間で放電された。
【0058】
(実施例7)
本発明に基づく多重電極の実施例が図17に示される。蓄電池は分解図で示され、即ち個々の構成要素が圧縮されて蓄電池の最終形を形成する前の状態を示す。蓄電池は、上部本体6aと下部本体6bの間に重層構造に配置された3つの組から組み立てられる。それぞれの組は、2つの第1の電極1a,1b、2つの第2の電極2a,2b、及び2つのセパレータ5a,5bを有する。第1の電極1bの材料は下部本体6bの内部室に押し込められ、他の1つの第1の電極1aの材料はフレーム10aに押し込められる。第2の電極2bの材料はフレーム20bに押し込められ、他の1つの第2の電極2aの材料はフレーム20aに押し込められる。電極1b,2bはセパレータ5bにより分割され、電極1a,2aはセパレータ5aにより分割される。電流収集要素の箔221は第2の電極2a,2bの間に配置され、負の極22の配線に対する接触を形成する。電流収集要素の箔111は他の第1の電極1aと重ねられた組の次の第1の電極の間に配置され、正の極11の配線に対する接触を形成する。
【0059】
第2の組は第1の組と類似の構成を有し、相違点は、本体6bがフレーム10aと同形のフレームと代替され、また上部本体6aを有する第3の組は上記第1の組の鏡面対称である。本体6a,6b上に配置された3つの組は全て電解物質で満たされ、圧縮されて固く一体となり、そして蓄電池を密封する。圧縮状態での個々の電極の厚さは、全て3mmのフレームの厚さと本体内の室の寸法により決定された。箔とセパレータはそれぞれ30ミクロンの厚みであった。電極の表面積が5cmであることから考えて、蓄電池の内部容積は約18cmであった。互いに重ねられる組の数に制限はなく、所望の蓄電池容量によって設計されることは自明である。上記の実施例または本発明の詳細で記載された材料は、この実施例に基づく蓄電池に使用可能である。
【0060】
(工業的応用性)
本発明に基づく負電極としてのリチウム金属と組合わされた反復充電可能なリチウム蓄電池の3次元構成は、リチウム蓄電池の製造の簡略化、容量の増大、寸法、重量及びコストの縮小、及び安全性の向上に使用できる。このタイプの電池は、高電圧システム、例えば自動車、手持ち電子機器、携帯電気電子機器での今日の鉛―酸蓄電池の代替に適し、またボタン型リチウム電池の容量を増大させる。
【符号の説明】
【0061】
1:第1の電極 2:第2の電極 3:導電性要素
4:アクティブマテリアル 5:セパレータ 6:本体
7:キャップ 8:絶縁フィルタ 9:カバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータにより分離され、リチウム塩の有機極性溶媒内の非水系溶液からなる電解物質とともに容器に納められた、少なくとも2つの3次元電極を有するリチウム蓄電池であって、
前記少なくとも2つの電極はそれぞれ最小厚み0.5mmを有し、
少なくとも1つの前記電極は、導電性要素とアクティブマテリアルとの均一な圧縮された混合物を有し、
前記電解物質の存在する中でリチウムを吸収し抽出することができ、
ここにおいて前記圧縮された電極の気孔率は25−90%であり、
前記アクティブマテリアルは壁の厚さ10ミクロンの中空の球面の形状、又は最大寸法20ミクロンの集合体又は団粒の形状を有し、
前記セパレータは、開いた気孔を有し気孔率30−95%の高度に多孔性の電気的に絶縁性のセラミック材料からなる、
ことを特徴とするリチウム蓄電池。
【請求項2】
前記導電性要素、前記アクティブマテリアルおよび前記セパレータは、有機結合剤を含まない完全な非有機材料である、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム蓄電池。
【請求項3】
前記導電性要素は、導電性炭素及びその変形、導電性金属及び導電性酸化物からなるグループから選択される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム蓄電池。
【請求項4】
前記アクティブマテリアルは、リチウム、マンガン、クロム、バナジウム、チタン、コバルト、アルミニウム、ニッケル、鉄、ランタン、ニオブ、ホウ素、セリウム、タンタル、スズ、ガクネシウム、イットリウムおよびジルコニウムの酸化物又はリン酸塩の混合物からなるグループから選択される、ことを特徴とする請求項1―3のいずれかに記載のリチウム蓄電池。
【請求項5】
前記アクティブマテリアルの粒子は、使用可能容量の範囲内において、最大20分の時間内でリチウムイオンを完全に吸収し抽出する能力を有する、ことを特徴とする請求項1―4のいずれかに記載のリチウム蓄電池。
【請求項6】
前記アクティブマテリアルはマンガン酸リチウム又はチタン酸リチウムがドープされた、及びドープされないナノ粒子からなる、ことを特徴とする請求項1―5のいずれかに記載のリチウム蓄電池。
【請求項7】
前記電極が40−85重量%の前記アクティブマテリアルからなる、ことを特徴とする請求項1―6のいずれかに記載のリチウム蓄電池。
【請求項8】
前記電極が広げられた箔、網、格子、線、織物又は粉の形状の電流収集要素を有する、ことを特徴とする請求項1―7のいずれかに記載のリチウム蓄電池。
【請求項9】
前記電流収集要素がアルミニウム、銅、銀、チタン、シリコン、プラチナ、炭素又は特定のセルの電位ウィンドウ内で安定な物質からなるグループから選択される、ことを特徴とする請求項1―8のいずれかに記載のリチウム蓄電池。
【請求項10】
前記電極が前記アクティブマテリアル、電導要素、および電流収集要素の圧縮された、均一な混合物からなる、ことを特徴とする請求項1―9のいずれかに記載のリチウム蓄電池。
【請求項11】
前記セパレータは、セラミック材料の、好適にはAl又はZrOに基づく、
圧縮された、高度に多孔質の粉からなる、ことを特徴とする請求項1―10のいずれかに記載のリチウム蓄電池。
【請求項12】
前記セパレータは、熱分解した物質、不織ガラス、又はセラミック繊維の非方向性の形状を有する、ことを特徴とする請求項1―11のいずれかに記載のリチウム蓄電池。
【請求項13】
前記セパレータは、熱分解した物質又は不織繊維の粉を圧縮することにより生成される、ことを特徴とする請求項11又は12に記載のリチウム蓄電池。
【請求項14】
前記セパレータの厚さは0.1mm−10mmである、ことを特徴とする請求項11―13のいずれかに記載のリチウム蓄電池。
【請求項15】
前記第2の電極は金属リチウムからなる、ことを特徴とする請求項1―14のいずれかに記載のリチウム蓄電池。
【請求項16】
前記金属リチウムはリチウムシート又はリチウム箔の形状である、ことを特徴とする請求項15に記載のリチウム蓄電池。
【請求項17】
前記金属リチウムは圧縮されたリチウムシート又はリチウム箔と樹枝状結晶の形状である、ことを特徴とする請求項15に記載のリチウム蓄電池。
【請求項18】
前記金属リチウムはリチウム樹枝状結晶の形状である、ことを特徴とする請求項15に記載のリチウム蓄電池。
【請求項19】
前記リチウムの樹枝状結晶の形状は、リチウム蓄電池をサイクルさせることにより、リチウムシート又はリチウム箔から現場で生成される、ことを特徴とする請求項17または18に記載のリチウム蓄電池。
【請求項20】
前記電解物質リチウム塩は、LiPF6,LiPF4(CF,LiPF(CFSO,LiPF(C,LiPF(CSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiCFSO,LiC(CFSO,LiBF, LiBF(CF,LiBF(C,LiBF(CFSO,LiBF(CSO及びLiClOからなるグループから選択される、ことを特徴とする請求項18または19に記載のリチウム蓄電池。
【請求項21】
前記電解物質は更に、蓄電池機能を高温において改善し、及び/又は分解物質を除去し、及び/又は過充電から蓄電池を保護する変更剤、及び/又は金属リチウム樹枝状結晶の寸法に影響を与える物質を含む、ことを特徴とする請求項20に記載のリチウム蓄電池。
【請求項22】
蓄電池の第1の極を形成する開放された上部部位と下部部位を有する中空の本体(6)と、
前記本体の前記下部部位に配置され、前記本体の内部表面と電気的に接触する第1の電極と、
前記本体の前記内部表面から絶縁挿入物(8)により分離された前記上部部位内の第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されたセパレータと、
前記開放された上部部位を閉鎖し、前記第2の電極と電気的に接触し、前記蓄電池の第2の極を形成するキャップ(7)と、
前記キャップを前記本体(6)から絶縁する密閉カバー(9)と、
を有することを特徴とする、請求項1−21に記載のリチウム蓄電池。
【請求項23】
共に内部蓄電池空間を画定し、蓄電池の前記第1の極(11)に接続される一体となった上部本体(6a)と下部本体(6b)と、
前記本体(6a,6b)の前記内部蓄電池空間に圧入されて内部に中央空洞を形成し、前記本体(6a,6b)と電気的に接触する第1の電極(1a,1b)と、
前記中央空洞内に位置する第2の電極(2)と、
前記第2の電極と電気的に接触し、前記蓄電池の外部に伸長する前記蓄電池の第2の極と、
前記第1の電極(1a,1b)と前記第2の電極(2)を分離するセパレータ(5a,5b)と、
を有することを特徴とする、請求項1−21に記載のリチウム蓄電池。
【請求項24】
蓄電池の前記第1の極(11)を含む上部本体(6a)と、
蓄電池の前記第2の極(22)を含む下部本体(6b)と、
からなり、
前記両方の本体(6a,6b)は一体化され、内部蓄電池空間体積を画定し、
前記上部本体(6a)の前記内部空間内の第1の電極(1)と、
前記下部本体(6b)の前記内部空間内に位置する第2の電極(2)と、
前記第1の電極(1)と前記第2の電極(2)を分離するセパレータ(5)と、
前記蓄電池の前記第1の極(11)と前記蓄電池の前記第2の極(22)の電気的絶縁のため、前記上部本体(6a)と前記上部本体(6b)の間に配置されるシール(8)と、
を有することを特徴とする、請求項1−21に記載のリチウム蓄電池。
【請求項25】
2つの辺縁の組と少なくとも1つの内部の組を有し、
それぞれの前記組は、
第1の電極と、第2の電極と、セパレータと、電流収集要素と、蓄電池の極とを有し、さらに、
第1の電極を受容するための辺縁フレームを画定する閉鎖された外部表面と開放された内部表面を有する、中空の辺縁の上部本体(6a)と、
第1の電極を受容するための辺縁フレームを画定する閉鎖された外部表面と開放された内部表面を有する、中空の辺縁の下部本体(6b)と、
第2の電極(2a,2b)を受容するための内部フレーム(20a,20b)と、
隣接する第1の電極と第2の電極の間に配置されるセパレータ(5a,5b)と、
前記第1の電極との電気的接触を提供し、前記第1の蓄電池の極(11)に接続する電流収集要素(111)と、
前記第2の電極との電気的接触を提供し、前記第2の蓄電池の極(22)に接続する電流収集要素(221)と、
前記辺縁の組と同一の構成の少なくとも1つの内部の組と、
を有し、
ここにおいて前記辺縁の本体は前記内部フレームと交換される、
ことを特徴とする請求項1−21に記載のリチウム蓄電池。
【請求項26】
請求項1−21のいずれかに記載のリチウム蓄電池の製造方法であって、
少なくとも1つのシートの第1電極と、セパレータと、少なくとも1つのシートの第2電極とが互いに押圧されて重ねられ、
前記蓄電池本体は電解物質で満たされて閉鎖され、
同一タイプの電極の電流収集要素が接続される、
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
それぞれの前記シートは衝撃により1つずつ徐々に押圧される、ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1−21のいずれかに記載のリチウム蓄電池の製造方法であって、
少なくとも1つの電極と、セパレータと、少なくとも1つの他の第2の電極の圧縮されたシートは、順番に互いの上に重ねられ、
前記蓄電池本体は電解物質で満たされて閉鎖され、
前記同じタイプの電極の前記電流収集要素は接続される、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2012−503278(P2012−503278A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527199(P2011−527199)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国際出願番号】PCT/CZ2009/000112
【国際公開番号】WO2010/031363
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(511058615)ハーエー3デーアー エス.エル.オー. (1)
【Fターム(参考)】