説明

リニアアクチュエータ及びこの組み立て方法

【課題】 組み立てるべきパーツの点数を減らし、簡単に組み立てることができるリニアアクチュエータ及びこの組み立て方法を提供する。
【解決手段】 アウタコア30’、板バネ41’,42’、フランジ部材31’,32’を分割式にし、且つ、分割された一方及び他方のそれぞれを一体化して構造体A,Bに集約することで、組み立てるべきパーツの点数が低減され、また、両構造体A,Bを組み合わせるだけでよいので、簡単に組み立てることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子及び可動子を同一の軸心となるよう支持し且つ固定子に対して可動子をスラスト方向に往復動可能に弾性支持する板バネを備えたリニアアクチュエータ及びこの組み立て方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示すリニアアクチュエータが提案されている。このリニアアクチュエータでは、固定子の構成部品であるインナコアの各端部に永久磁石が配設される。また、可動子の構成部品であるアウタコアは、その一部を内側に膨出させた部分(磁極部)を有する。そして、この磁極部と永久磁石とは、ラジアル方向にて所定の隙間を有して対向配置される。
【0003】
さらに、このリニアアクチュエータは、固定子の構成部品であるシャフトをアウタコアと同軸同心に支持し且つシャフトに対してアウタコアをスラスト方向に往復動させるよう弾性支持する一対の板バネを備えている。
【0004】
板バネは、シャフトの軸方向から見ると、「8」の字形状に形成される。そして、「8」の字状に交差する箇所には、シャフトの挿通孔が形成される。また、「8」の字状の上下の挿通開口部(環状部)は、コイルを内側に通すことができる大きさを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−135350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のリニアアクチュエータは、組み立て作業において、インナコアに設けられた永久磁石にアウタコアが磁着されることで、固定子及び可動子が同一の軸心ではない状態が生じるため、組み立ての際に干渉する部分が出てきて、組み立て作業の作業性が落ちるとして、アウタコアを半径方向に二分割可能としている。
【0007】
しかしながら、上記従来のリニアアクチュエータは、二分割されたアウタコア、該アウタコアを合わせ込んだ状態を維持するための一対のカバー(アウタコア及びカバーが可動子を構成する)、インナコアを含む固定子、そして、一対の板バネといった各パーツを組み立てなければならない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、組み立てるべきパーツの点数を減らし、簡単に組み立てることができるリニアアクチュエータ及びこの組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るリニアアクチュエータは、上記課題を解決すべく構成されたもので、インナコア、その端部に配置された永久磁石、並びにインナコアの周囲に巻回されるコイルを有する固定子と、該固定子の周囲に配置され、アウタコアを有する可動子と、アウタコアの軸心方向前側及び後側に配置され、固定子及び可動子を同一の軸心となるよう支持し且つ固定子に対して可動子をスラスト方向に往復動可能に弾性支持する板バネとを備えるリニアアクチュエータにおいて、アウタコアは、軸心を含む又は軸心と平行な面で分割され、且つ、これに併せて、板バネも、軸心を含む又は軸心と平行な面で分割され、分割された一方のアウタコア及び分割された一方の板バネが一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア及び分割された他方の板バネが一体化されて他方の構造体が構成され、両構造体は、互いに位置合わせ可能な状態で組み合わされることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る別のリニアアクチュエータは、インナコア、その端部に配置された永久磁石、並びにインナコアの周囲に巻回されるコイルを有する固定子と、該固定子の周囲に配置され、アウタコアを有する可動子と、アウタコアの軸心方向前側及び後側に配置され、固定子及び可動子を同一の軸心となるよう支持し且つ固定子に対して可動子をスラスト方向に往復動可能に弾性支持する板バネとを備えるリニアアクチュエータにおいて、アウタコアは、軸心と直交する面で分割され、分割された一方のアウタコア及び一方の板バネが一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア及び他方の板バネが一体化されて他方の構造体が構成され、両構造体は、互いに位置合わせ可能な状態で組み合わされることを特徴とする。
【0011】
これらの構成によれば、前者であれば、固定子を挟み込むようにして両構造体を組み合わせることにより、リニアアクチュエータを組み立てることができ、また、後者であれば、各構造体に固定子を挿通して両構造体を組み合わせることにより、リニアアクチュエータを組み立てることができる。
【0012】
また、前者のリニアアクチュエータでは、可動子は、アウタコアとで板バネを挟み込むフランジ部材をアウタコアの軸心方向前側及び後側に有し、該フランジ部材も、軸心を含む又は軸心と平行な面で分割され、分割された一方のアウタコア、分割された一方の板バネ及び分割された一方のフランジ部材が一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア、分割された他方の板バネ及び分割された他方のフランジ部材が一体化されて他方の構造体が構成されるようにしてもよい。
【0013】
また、後者のリニアアクチュエータでは、可動子は、アウタコアとで板バネを挟み込むフランジ部材をアウタコアの軸心方向前側及び後側に有し、分割された一方のアウタコア、一方の板バネ及び一方のフランジ部材が一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア、他方の板バネ及び他方のフランジ部材が一体化されて他方の構造体が構成されるようにしてもよい。
【0014】
次に、本発明に係るリニアアクチュエータの組み立て方法は、上記前者のリニアアクチュエータの一形態である、インナコア、その端部に配置された永久磁石、インナコアを内部に収容するボビン、その端部に巻回されるコイル、並びにボビンの中央部に形成された貫通孔に挿通される段差付きのシャフトを有する固定子と、該固定子の周囲に配置され、アウタコアを有する可動子と、アウタコアの軸心方向前側及び後側に配置され、シャフトを挿通するための挿通孔が中心部に形成され、固定子及び可動子を同一の軸心となるよう支持し且つ固定子に対して可動子をスラスト方向に往復動可能に弾性支持する板バネとを備え、アウタコアは、軸心を含む又は軸心と平行な面で分割され、且つ、これに併せて、板バネも、中心部の挿通孔が分割されるように、軸心を含む又は軸心と平行な面で分割され、分割された一方のアウタコア及び分割された一方の板バネが一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア及び分割された他方の板バネが一体化されて他方の構造体が構成されてなるリニアアクチュエータの組み立て方法であって、固定子を挟み込むようにして、一方の構造体及び他方の構造体を合わせ込み、また、この際、分割された前側の板バネのそれぞれ分割された中心部がシャフトの段差部とボビンの軸心方向前側との間に配置され、且つ、分割された後側の板バネのそれぞれ分割された中心部がボビンの軸心方向後側に配置されるようにし、次いで、シャフトの先端部に形成された雄ねじ部にナットを螺着させて締結し、また、この際、分割された前側の板バネのそれぞれ分割された中心部が互いにシャフトを囲うように合致した状態でシャフトの段差部とボビンの軸心方向前側との間で挟持され、且つ、分割された後側の板バネのそれぞれ分割された中心部が互いにシャフトを囲うように合致した状態でボビンの軸心方向後側とナットとの間で挟持されるようにし、これにより、固定子、一方の構造体及び他方の構造体を一体化することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る別のリニアアクチュエータの組み立て方法は、上記後者のリニアアクチュエータの一形態である、インナコア、その端部に配置された永久磁石、インナコアを内部に収容するボビン、その端部に巻回されるコイル、並びにボビンの中央部に形成された貫通孔に挿通される段差付きのシャフトを有する固定子と、該固定子の周囲に配置され、アウタコアを有する可動子と、アウタコアの軸心方向前側及び後側に配置され、シャフトを挿通するための挿通孔が中心部に形成され、固定子及び可動子を同一の軸心となるよう支持し且つ固定子に対して可動子をスラスト方向に往復動可能に弾性支持する板バネとを備え、アウタコアは、軸心と直交する面で分割され、分割された一方のアウタコア及び一方の板バネが一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア及び他方の板バネが一体化されて他方の構造体が構成されてなるリニアアクチュエータの組み立て方法であって、一方の構造体、ボビン、他方の構造体の順となるよう、一方の構造体における板バネの挿通孔、ボビンの貫通孔、他方の構造体における板バネの挿通孔に対し、シャフトを前方から後方に向かって挿通し、次いで、一方の構造体及び他方の構造体を合わせ込みつつ、シャフトの先端部に形成された雄ねじ部にナットを螺着させて締結し、これにより、固定子、一方の構造体及び他方の構造体を一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上の如く、本発明は、アウタコア、一対の板バネが一対の構造体に集約されることで、組み立てるべきパーツの点数が低減され、また、両構造体を組み合わせるだけでよいので、簡単に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の基本形となるリニアアクチュエータの分解斜視図を示す。
【図2】同リニアアクチュエータに用いられる板バネの正面図を示す。
【図3】同リニアアクチュエータを一方向から見た斜視図を示す。
【図4】同リニアアクチュエータを反対側の他方向から見た斜視図を示す。
【図5】同リニアアクチュエータの正面図を示す。
【図6】第一実施形態に係るリニアアクチュエータの分解斜視図を示す。
【図7】第二実施形態に係るリニアアクチュエータの分解斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るリニアアクチュエータの実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。但し、本実施形態に係るリニアアクチュエータは、とある基本形からの発展形であるため、本実施形態に係るリニアアクチュエータを理解するには、その基本形を先に理解しておくことが好ましい。そこで、以下においては、まず始めに、基本形のリニアアクチュエータについて説明し、その上で、本実施形態に係るリニアアクチュエータについて説明することにする。
【0019】
<基本形のリニアアクチュエータ>
図1は、リニアアクチュエータ1の分解斜視図、図2は、板バネの正面図、図3は、組み立てた状態のリニアアクチュエータ1を前方から見た斜視図、図4は、組み立てた状態のリニアアクチュエータ1を後方から見た斜視図、図5は、リニアアクチュエータ1の正面図である。尚、便宜上、図1の左側を前側とし、右側を後側とする。
【0020】
これらの図に示すように、リニアアクチュエータ1は、固定子2と、可動子3と、板バネ41,42とを備える。固定子2は、可動子3の内側に配置される。また、可動子3は、固定子2に対して前後方向(スラスト方向)に往復動可能に支持される。
【0021】
固定子2は、インナコア(図示せず)が内挿されたボビン20と、永久磁石21,22と、シャフト23とを備える。ボビン20は、インナコアを覆うように、左右に分割されたボビンユニット200,200が組み合わされる。また、ボビン20は、その一端部及び他端部にコイル201A,201Bが巻回されたコイル巻回部を有する。さらに、ボビン20の両端面は、径外方向に凸となる円弧状に形成される。永久磁石21,22は、第一の永久磁石21と第二の永久磁石22とからなり、インナコアの両端面に固着される。また、永久磁石21,22の外面及び内面は、径外方向に凸となる円弧状に形成される。
【0022】
シャフト23は、その軸心方向途中部分に比べて前部が拡大されて、前部に拡大部231が形成されると共に、後部に拡大部231よりも小径の雄ねじ部232が形成される。そして、シャフト23は、雄ねじ部232からボビン20の中央部に形成された貫通孔(図示せず)から挿通される。拡大部231とボビン20の前面との間には、拡大部231と同径の前部スリーブ233が挿通される。一方、雄ねじ部232とボビン20の後面との間には、拡大部231と同径の後部スリーブ234,235が挿通される。そして、シャフト23の雄ねじ部232に後部スリーブ234,235及びワッシャWを介してナットNが螺着される。
【0023】
可動子3は、角筒状のアウタコア30とフランジ部材31,32とを備える。アウタコア30は、磁性材料の一例であるケイ素鋼板を前後方向(シャフト23の軸心方向)で密着するよう積層した積層体とされる。アウタコア30の内面のうち、その一端側には、他端側に向けて膨出する第一の磁極部301が一体的に設けられる。また、アウタコア30の内面のうち、その他端側には、一端側に向けて膨出する第二の磁極部302が一体的に設けられる。
【0024】
そして、第一の磁極部301の対向面は、第一の永久磁石21の外面と、ラジアル方向において所定の幅δ1の隙間C1を介して対向配置される(図5を参照)。この場合のラジアル方向は、ボビン20の中心P1を始点とする径方向である。一方、第二の磁極部302の対向面は、第二の永久磁石22の外面と、ラジアル方向において所定の幅δ2の隙間C2を介して対向配置される(図5を参照)。この場合のラジアル方向は、ボビン20の中心P1を始点とする径方向である。隙間C1のラジアル方向での幅δ1及び隙間C2のラジアル方向での幅δ2は等しく設定される。
【0025】
アウタコア30の一端部の前面及び後面と他端部の前面及び後面とには、それぞれ幅方向中心部に、保持軸体303,304が前後方向に突設される。より詳しくは、アウタコア30の一端部及び他端部であって、それぞれ幅方向中心部には、前後方向に沿って貫通孔が形成され、一端部の貫通孔に第一の保持軸体303が挿通されると共に、他端部の貫通孔に第二の保持軸体304が挿通される。そして、保持軸体303,304は、アウタコア30の前後方向における厚さ寸法よりも長く形成されているため、アウタコア30の一端部の前面及び後面と、他端部の前面及び後面とであって、それぞれ幅方向中心部から、保持軸体303,304の端部が前後方向に突出する。
【0026】
また、前側のフランジ部材31は、アウタコア30に前方側から板バネ41を介して重ねられる。一方、後側のフランジ部材32は、アウタコア30に後方側から板バネ42を介して重ねられる。そして、フランジ部材31,32に、左右の両側から幅方向中心に向かって突出するようにストッパ311,321が形成される。このストッパ311,321は、アウタコア30が往復動する際に、固定子2(又はインナコア)がアウタコア30から抜け出ることを防止するためのものである。また、フランジ部材31,32は、それぞれ正面視して矩形枠形状に形成され、一端部及び他端部に突出部312,322が形成される。尚、該突出部312,322の内面には、保持軸体303,304の端部を受け入れるための凹部が形成される。
【0027】
前側の板バネ41は、アウタコア30と前側のフランジ部材31との間に介装される。一方、後側の板バネ42は、アウタコア30と後側のフランジ部材32との間に介装される。また、板バネ41,42は、均一な厚さの金属板を打ち抜き加工することで形成される。そして、板バネ41,42は、図2に示すように、アウタコア30に重ねられる枠部411,421と、枠部411,421の内側の可撓部412,422とから一体的に形成される。
【0028】
板バネ41,42の構成部のうち、枠部411,421がフランジ部材31,32とアウタコア30とで前後方向に挟持される。そして、枠部411,421の四隅には、ボルト挿通孔411a,421aが形成される。また、枠部411,421の上下部の幅方向中心部には、保持軸体303,304の端部を挿通する切欠411b,421bがU字状に形成される。
【0029】
可撓部412,422は、正面視して、「8」の字状に形成される。そして、「8」の字の中央の線が交差する部分に相当する中心部4121,4221には、シャフト23の途中部分を挿通する挿通孔4121a,4221aが形成される。また、「8」の字の環状部の内側に相当する箇所には、ボビン20のコイル巻回部を内側に通すことが充分に可能な大きさの挿通開口部4122,4222がそれぞれ形成される。
【0030】
前側の板バネ41の中心部4121は、拡大部231と前部スリーブ233との間に挟持される。一方、後側の板バネ42の中心部4221は、一対の後部スリーブ234,235間に挟持される。
【0031】
そして、可動子3の四隅(に形成された挿通孔)には、ボルトBが前後方向に挿通され、これらボルトBの先端にナットNが締結されて、アウタコア30、板バネ41,42、フランジ部材31,32が一体化される。
【0032】
ここで、可撓部412,422について図2を参照して詳細に説明する。この可撓部412,422は、可撓性を確保しつつも、切欠411b,421b、ボルト挿通孔411a,421a、挿通孔4121a,4221aの部位は強度を確保する必要がある。即ち、板バネ41,42は、上述したように、「8」の字状を呈しており、上下にそれぞれ挿通開口部(環状部)4122,4222を有する。この挿通開口部(環状部)4122,4222は、板バネ41,42全体が撓みやすいように、例えば、上下方向の距離が小さく、左右方向の距離が大きくなっている。正面視すると、丸みを帯びた樽形状に等しい形状を呈している。
【0033】
また、可撓部412,422は、その終端部が切欠411b,421bの近傍に位置しており、しかも、この切欠411b,421bの近傍部位は、切欠411b,421bに向かって延びるように幅広に形成される。この理由としては、可撓部412,422が切欠411b,421bの近傍部位を支点にして前後方向に撓むようになっているので、この部位を補強するためである。
【0034】
また、シャフト23が挿通される板バネ41,42の挿通孔4121a,4221aの部位は、可動子3の往復動に伴う変位量が一番大きい部位であるため、左右の両側に、中心に向かって円弧状のくびれ4121b,4221bが形成されるが、例えば、挿通孔4121a,4221aの周縁部をできる限り表面積を大きくすることにより、往復動に対する強度も確保される。
【0035】
以上の構成からなるリニアアクチュエータ1は、コイル201A,201Bに通電していない状態では、永久磁石21,22から生じる磁力により、シャフト23が可動子3(アウタコア30)に対して所定位置に保持される。そして、コイル201A,201Bに通電すると、コイル201A,201Bに流れる電流により生じる磁界と永久磁石21,22から生じている磁界の向きとに基づき、可動子3がシャフト23に沿って前後方向に往復動する。
【0036】
<第一実施形態>
基本形のリニアアクチュエータ1の説明は以上の通りであり、次に、これの発展形の一つである第一実施形態について図6を参酌しつつ説明する。尚、第一実施形態のうち、基本形のリニアアクチュエータ1と同じ構成については同一符号を付し、また、関連する構成については同一符号に「’」を付するものとする。
【0037】
第一実施形態に係るリニアアクチュエータ1’は、図6から明らかなように、基本形のリニアアクチュエータ1のうち、角筒状のアウタコア30とフランジ部材31,32とを備える可動子3と、板バネ41,42とが左右方向に二分割された形態である。そして、分割された一方(右側)のアウタコア30’、フランジ部材31’,32’、板バネ41’,42’が、前側のフランジ部材31’、前側の板バネ41’、アウタコア30’、後側の板バネ42’及び後側のフランジ部材32’の順で積層され、(例えば、かしめにより)一体化される(以下、これを「一方の可動子・板バネ積層構造体A」と呼ぶ)。一方、分割された他方(左側)のアウタコア30’、フランジ部材31’,32’、板バネ41’,42’が、同じく、前側のフランジ部材31’、前側の板バネ41’、アウタコア30’、後側の板バネ42’及び後側のフランジ部材32’の順で積層され、(例えば、かしめにより)一体化される(以下、これを「他方の可動子・板バネ積層構造体B」と呼ぶ)。尚、上記した一体化は、かしめのほかに、接着剤を用いてもよく、あるいは、基本形のリニアアクチュエータ1と同様、可動子3’の角部に形成された挿通孔にボルトBを挿通し、ナットNを螺合させ、ボルトBとナットNとで締結するようにしてもよい。
【0038】
分割は、幅方向中心、即ち、固定子2及び可動子3’の軸心を含む面であって、垂直方向(磁極部301’,302’に対して永久磁石21,22の磁力が作用する中心方向)の面で行われるため、可動子・板バネ積層構造体A,Bは線対称形である。尚、可動子・板バネ積層構造体A,Bは、基本形のリニアアクチュエータ1のアウタコア30と同様にして作製することができる。その上で、可動子・板バネ積層構造体A,Bのアウタコア30’、フランジ部材31’,32’、板バネ41’,42’は、全て同種の材料(例えば、ケイ素鋼板)で構成してもよいし、基本形のリニアアクチュエータ1と同様、異種の材料で構成してもよい。
【0039】
つぎに、以上の構成からなるリニアアクチュエータ1’の組み立て作業について説明する。まず、永久磁石21,22が固着したインナコアにボビン20を取り付け、該ボビン20にコイル巻線201A,201Bが巻回されたコア完成アッシーKを準備しておく。
【0040】
そして、コア完成アッシーKの前方に前部スリーブ233(図6では図示されず)を配置すると共に、コア完成アッシーKの後方に後部スリーブ234を配置した状態で、シャフト23の雄ねじ部232を前部スリーブ233、ボビン20、後部スリーブ234の順となるよう前方から後方に向かって挿通する。尚、この際、シャフト23の拡大部231の雄ねじ部232との段差部と前部スリーブ233とが当接せず、最低限、前側の板バネ41’の厚み分だけは空けておくようにする。
【0041】
そして、シャフト23が挿通されたコア完成アッシーKを挟み込むようにして、一対の可動子・板バネ積層構造体A,Bを合わせ込む。この際、前側の板バネ41’,41’のそれぞれ半分に分割された中心部4121’,4121’は、シャフト23の拡大部231の雄ねじ部232との段差部と前部スリーブ233との隙間に入り込むようにする。また、この状態では、後側の板バネ42’,42’のそれぞれ半分に分割された中心部4221’,4221’は、後側スリーブ234の外側に配置されるようになる。
【0042】
最後に、シャフト23の雄ねじ部232にナットNを螺着させる。すると、板バネ41’,41’のそれぞれ半分に分割された中心部4121’,4121’がシャフト23の拡大部231の雄ねじ部232との段差部と前部スリーブ233とに強固に挟持されると共に、板バネ42’,42’のそれぞれ半分に分割された中心部4221’,4221’が後部スリーブ234とナットNとに強固に挟持される。これにより、全パーツが一体化される。
【0043】
そして、この状態で、前後の板バネ41’,42’によって、シャフト23が水平支持されるようになり、アウタコア30’の磁極部301’,302’と、ボビン20の永久磁石21,22との間に所定の間隔C1,C2が確実に維持されるようになる。
【0044】
尚、可動子・板バネ積層構造体A,Bの合わせ込みを強固なものとするために、各接合面に接着剤等の公知の接合手段を施し、両者を接合させるようにしてもよい。
【0045】
以上、第一実施形態に係るリニアアクチュエータ1’によれば、組み立て作業において、永久磁石21,22に磁極部301’,302’が磁着する事態が発生するものの、これが組み立て作業の作業性に影響を与えることはない。即ち、第一実施形態に係るリニアアクチュエータ1’によれば、固定子2と可動子3’との磁着によって組み立て作業の作業性が低下するといった問題は一切なく、簡単に組み立てることができる。
【0046】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態について図7を参酌しつつ説明する。尚、第二実施形態のうち、基本形のリニアアクチュエータ1と同じ構成については同一符号を付し、また、関連する構成については同一符号に「''」を付するものとする。
【0047】
第二実施形態に係るリニアアクチュエータ1''は、図7から明らかなように、基本形のリニアアクチュエータ1のうち、角筒状のアウタコア30が前後方向に二分割された形態である。そして、分割された一方(前側)のアウタコア30''、フランジ部材31、板バネ41が、前側のフランジ部材31、前側の板バネ41及び前側のアウタコア30''の順で積層され、(例えば、かしめ、接着、溶着等により)一体化される(以下、これを「一方の可動子・板バネ積層構造体C」と呼ぶ)。一方、分割された他方(後側)のアウタコア30''、フランジ部材32、板バネ42が、後側のアウタコア30''、後側の板バネ42及び後側のフランジ部材32の順で積層され、(例えば、かしめ、接着、溶着等により)一体化される(以下、これを「他方の可動子・板バネ積層構造体D」と呼ぶ)。
【0048】
分割は、前後方向中心、即ち、固定子2及び可動子3''の軸心を直交する面であって、アウタコア30'',30''が同じ幅となるように行われるため、可動子・板バネ積層構造体C,Dは線対称形である。尚、可動子・板バネ積層構造体C,Dは、基本形のリニアアクチュエータ1のアウタコア30と同様にして作製することができる。その上で、可動子・板バネ積層構造体C,Dのアウタコア30''、フランジ部材31,32、板バネ41,42は、全て同種の材料(例えば、ケイ素鋼板)で構成してもよいし、基本形のリニアアクチュエータ1と同様、異種の材料で構成してもよい。
【0049】
つぎに、以上の構成からなるリニアアクチュエータ1''の組み立て作業について説明する。まず、永久磁石21,22が固着したインナコアにボビン20を取り付け、該ボビン20にコイル巻線201A,201Bが巻回されたコア完成アッシーKを準備しておく。
【0050】
そして、コア完成アッシーKの前方に前部スリーブ233を配置すると共に、コア完成アッシーKの後方に後部スリーブ234を配置した状態で、シャフト23の雄ねじ部232を可動子・板バネ積層構造体C、前部スリーブ233、ボビン20、後部スリーブ234、可動子・板バネ積層構造体Dの順となるよう前方から後方に向かって挿通する。
【0051】
最後に、シャフト23の雄ねじ部232にナットNを螺着させ、また、アウタコア30'',30''、フランジ部材31,32、板バネ41,42に共通して四隅に形成された貫通孔にボルトBを通し、ナットNを螺着させる。これにより、全パーツが一体化される。尚、可動子・板バネ積層構造体C,Dを一体化する手段としては、ボルトBとナットNとによる締結に限らず、例えば接着剤による接着や、例えば溶接による溶着でもよい。
【0052】
そして、この状態で、前後の板バネ41,42によって、シャフト23が水平支持されるようになり、アウタコア30''の分割された磁極部301'',302''と、ボビン20の永久磁石21,22との間に所定の間隔C1,C2が確実に維持されるようになる。
【0053】
以上、第二実施形態に係るリニアアクチュエータ1''によれば、組み立て作業において、永久磁石21,22に磁極部301'',302''が磁着する事態が発生するものの、これが組み立て作業の作業性に影響を与えることはない。即ち、第二実施形態に係るリニアアクチュエータ1''によれば、固定子2と可動子3''との磁着によって組み立て作業の作業性が低下するといった問題はなく、簡単に組み立てることができる。
【0054】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0055】
例えば、上記第一及び第二実施形態においては、可動子・板バネ積層構造体A,B,C,Dが線対称形状となるよう、二等分に分割しているが、二等分である必要はなく、第一実施形態であれば、可動子・板バネ積層構造体A,Bの一方が他方よりも大きくなっていてもよいし、第二実施形態であれば、可動子・板バネ積層構造体C,Dの一方が他方よりも大きくなっていてもよい。
【0056】
また、上記第一及び第二実施形態においては、枠部411,421と、可撓部412,422とを有する板バネとしたが、枠部がなく、可撓部のみの板バネであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…リニアアクチュエータ、2…固定子、3…可動子、21,22…永久磁石、301,302…磁極部、303,304…保持軸体、41,42…板バネ、50…凹部、A,C…一方の可動子・板バネ積層構造体、B,D…他方の可動子・板バネ積層構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナコア、その端部に配置された永久磁石、並びにインナコアの周囲に巻回されるコイルを有する固定子と、該固定子の周囲に配置され、アウタコアを有する可動子と、アウタコアの軸心方向前側及び後側に配置され、固定子及び可動子を同一の軸心となるよう支持し且つ固定子に対して可動子をスラスト方向に往復動可能に弾性支持する板バネとを備えるリニアアクチュエータにおいて、
アウタコアは、軸心を含む又は軸心と平行な面で分割され、且つ、これに併せて、板バネも、軸心を含む又は軸心と平行な面で分割され、
分割された一方のアウタコア及び分割された一方の板バネが一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア及び分割された他方の板バネが一体化されて他方の構造体が構成され、
両構造体は、互いに位置合わせ可能な状態で組み合わされることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
可動子は、アウタコアとで板バネを挟み込むフランジ部材をアウタコアの軸心方向前側及び後側に有し、該フランジ部材も、軸心を含む又は軸心と平行な面で分割され、分割された一方のアウタコア、分割された一方の板バネ及び分割された一方のフランジ部材が一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア、分割された他方の板バネ及び分割された他方のフランジ部材が一体化されて他方の構造体が構成される請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
インナコア、その端部に配置された永久磁石、並びにインナコアの周囲に巻回されるコイルを有する固定子と、該固定子の周囲に配置され、アウタコアを有する可動子と、アウタコアの軸心方向前側及び後側に配置され、固定子及び可動子を同一の軸心となるよう支持し且つ固定子に対して可動子をスラスト方向に往復動可能に弾性支持する板バネとを備えるリニアアクチュエータにおいて、
アウタコアは、軸心と直交する面で分割され、
分割された一方のアウタコア及び一方の板バネが一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア及び他方の板バネが一体化されて他方の構造体が構成され、
両構造体は、互いに位置合わせ可能な状態で組み合わされることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項4】
可動子は、アウタコアとで板バネを挟み込むフランジ部材をアウタコアの軸心方向前側及び後側に有し、分割された一方のアウタコア、一方の板バネ及び一方のフランジ部材が一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア、他方の板バネ及び他方のフランジ部材が一体化されて他方の構造体が構成される請求項3に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
インナコア、その端部に配置された永久磁石、インナコアを内部に収容するボビン、その端部に巻回されるコイル、並びにボビンの中央部に形成された貫通孔に挿通される段差付きのシャフトを有する固定子と、該固定子の周囲に配置され、アウタコアを有する可動子と、アウタコアの軸心方向前側及び後側に配置され、シャフトを挿通するための挿通孔が中心部に形成され、固定子及び可動子を同一の軸心となるよう支持し且つ固定子に対して可動子をスラスト方向に往復動可能に弾性支持する板バネとを備え、アウタコアは、軸心を含む又は軸心と平行な面で分割され、且つ、これに併せて、板バネも、中心部の挿通孔が分割されるように、軸心を含む又は軸心と平行な面で分割され、分割された一方のアウタコア及び分割された一方の板バネが一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア及び分割された他方の板バネが一体化されて他方の構造体が構成されてなるリニアアクチュエータの組み立て方法であって、
固定子を挟み込むようにして、一方の構造体及び他方の構造体を合わせ込み、また、この際、分割された前側の板バネのそれぞれ分割された中心部がシャフトの段差部とボビンの軸心方向前側との間に配置され、且つ、分割された後側の板バネのそれぞれ分割された中心部がボビンの軸心方向後側に配置されるようにし、
次いで、シャフトの先端部に形成された雄ねじ部にナットを螺着させて締結し、また、この際、分割された前側の板バネのそれぞれ分割された中心部が互いにシャフトを囲うように合致した状態でシャフトの段差部とボビンの軸心方向前側との間で挟持され、且つ、分割された後側の板バネのそれぞれ分割された中心部が互いにシャフトを囲うように合致した状態でボビンの軸心方向後側とナットとの間で挟持されるようにし、
これにより、固定子、一方の構造体及び他方の構造体を一体化することを特徴とするリニアアクチュエータの組み立て方法。
【請求項6】
インナコア、その端部に配置された永久磁石、インナコアを内部に収容するボビン、その端部に巻回されるコイル、並びにボビンの中央部に形成された貫通孔に挿通される段差付きのシャフトを有する固定子と、該固定子の周囲に配置され、アウタコアを有する可動子と、アウタコアの軸心方向前側及び後側に配置され、シャフトを挿通するための挿通孔が中心部に形成され、固定子及び可動子を同一の軸心となるよう支持し且つ固定子に対して可動子をスラスト方向に往復動可能に弾性支持する板バネとを備え、アウタコアは、軸心と直交する面で分割され、分割された一方のアウタコア及び一方の板バネが一体化されて一方の構造体が構成されると共に、分割された他方のアウタコア及び他方の板バネが一体化されて他方の構造体が構成されてなるリニアアクチュエータの組み立て方法であって、
一方の構造体、ボビン、他方の構造体の順となるよう、一方の構造体における板バネの挿通孔、ボビンの貫通孔、他方の構造体における板バネの挿通孔に対し、シャフトを前方から後方に向かって挿通し、
次いで、一方の構造体及び他方の構造体を合わせ込みつつ、シャフトの先端部に形成された雄ねじ部にナットを螺着させて締結し、
これにより、固定子、一方の構造体及び他方の構造体を一体化することを特徴とするリニアアクチュエータの組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−233298(P2010−233298A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76220(P2009−76220)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】