説明

リニアアクチュエータ

【課題】出力軸のストローク全体に亘って高い推力を安定して与えるリニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】互いの平面を平行にして突き合わされた第1ヨーク11及び第2ヨーク12の間隙内にこれら平面に平行に軟磁性体からなる平板状可動片51を配置し、これを該平面に平行な移動軸に沿って往復動せしめるリニアアクチュエータ100である。第1ヨーク11から第2ヨーク12へ向けた磁束を前記間隙内に形成するための永久磁石21、22、23、24と、移動軸に沿った磁力線を形成するように第1ヨーク11の周囲に巻回した第1コイル31と、第1コイル31と間隙を挟んで配置され、移動軸に沿った磁力線を形成するように第2ヨーク12の周囲に巻回した第2コイル32と、を含む。第1コイル31及び第2コイル32の磁力線を移動軸に沿って互いに逆方向となるように第1コイル31及び第2コイル32に電流を与えて往復動せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速で直線往復運動を与える数センチ以下のストローク幅の小型リニアアクチュエータに関し、特に出力軸のストローク幅全体に亘って高い推力を安定して与え得るリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
数センチ以下のストローク幅で比較的高い推力を出力できる小型リニアアクチュエータがガス弁の開閉装置、配電板の回路遮断装置、家庭用電気機器の駆動装置など多くの分野で使用されている。例えば、特許文献1は、電気かみそりや電動歯ブラシの駆動部に使用される小型リニアアクチュエータを開示している。永久磁石を含むとともにコイルを巻回されたシリンダ状の固定子の管状内部に円柱状の軟磁性体からなる可動子を挿入し、該コイルに流れる電流を制御することで永久磁石によって管状内部に形成される磁場を変化させて可動子を直線往復運動させている。
【0003】
また、上記したような小型アクチュエータは、自動車の付属装置だけを見ても、吸排気系、燃料系、駆動系などの多くの装置で使用されている。例えば、特許文献2及び3では、自動車用エンジンの吸排気バルブを制御するための小型リニアアクチュエータが開示されている。これらは、コイルを巻回されたシリンダ状の固定子の管状内部に永久磁石を取り付けた可動子を挿入し、該コイルに流れる電流を制御することで管状内部に形成される電磁場を変化させて可動子を断続的に直線往復運動させている。
【0004】
ところで、リニアアクチュエータの出力軸のストローク幅全体に亘って推力を安定させ、すなわち一定の推力を出力し得るなら、出力軸に接続される装置を出力軸のストローク位置に合わせて設計しその配置を考慮する必要がなくなる。つまり、このようなリニアアクチュエータによれば、既存の装置であってもその制御性を高めつつ安定性をも高め得るのである。
【0005】
ここで、上記したように電磁場を制御して可動子を直線往復運動させるリニアアクチュエータと類似の構造を有するリニアモータ、すなわち、電磁場を制御して可動子を連続的に直線運動させるリニアモータがある。かかるリニアモータであれば、運動方向に並ぶ電磁界の幅を小さく複数設けて電磁界を細かく制御することで出力部の推力を運動方向に沿って安定させ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−78310号公報
【特許文献2】特開2007−56777号公報
【特許文献3】特開2007−56780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高速での運動を要求される産業分野で使用される小型リニアアクチュエータでは、運動方向に並ぶ電磁界の幅を小さくして電磁界を細かく制御し可動子(出力軸)の推力を運動方向に沿って安定させ得るが、その制御のための小型化が難しい。特に、数センチ以下のストローク幅の小型リニアアクチュエータであれば、このように電磁界の幅を小さくして複数設けること自体も困難である。
【0008】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、高速で直線往復運動を与える数センチ以下のストローク幅の小型リニアアクチュエータにおいて、出力軸のストローク幅全体に亘って高い推力を安定して与え得るリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるリニアアクチュエータは、互いの平面を平行にして突き合わされた第1ヨーク及び第2ヨークの間隙内にこれら平面に平行に軟磁性体からなる平板状可動片を配置し、これを該平面に平行な1つの移動軸に沿って往復動せしめて出力を得るリニアアクチュエータであって、前記第1ヨークから前記第2ヨークへ向けた磁束を前記間隙内に形成するための永久磁石と、前記移動軸に沿った磁力線を形成するように前記第1ヨークの周囲に巻回した第1コイルと、前記第1コイルと前記間隙を挟んで配置され、前記移動軸に沿った磁力線を形成するように前記第2ヨークの周囲に巻回した第2コイルと、を含み、前記平板状可動片を前記第1コイル及び前記第2コイルの間に配置して、前記第1コイル及び前記第2コイルの前記磁力線を前記移動軸に沿って互いに逆方向となるように前記第1コイル及び前記第2コイルに電流を与えて前記平板状可動片を前記移動軸に沿って往復動せしめることを特徴とする。
【0010】
かかる発明によれば、互いの平面を平行にして突き合わされた第1ヨーク及び第2ヨークの間隙内にこれら平面に平行に透磁率の高い軟磁性体からなる平板状可動片を配置することで、該間隙内に磁束を効率的に導いて高い推力を出力し得る。その上で、平板状可動片を該平面に平行な1つの移動軸に沿って互いの距離を一定にして往復動せしめることで、出力軸のストローク幅全体に亘って推力を安定して得られる。すなわち、高速運動を要求されるリニアアクチュエータにおいて、出力軸のストローク幅全体に亘って高い推力を安定して与えることができるのである。
【0011】
また、上記発明において、前記永久磁石は前記移動軸に沿った前記第1ヨークの両端部にN極を突き合わして配置された平板状の第1及び第2の永久磁石と、前記移動軸に沿った前記第2ヨークの両端部にS極を突き合わして配置された平板状の第3及び第4の永久磁石とからなり、前記移動軸に沿った同位置にある前記第1の永久磁石のS極と前記第3の永久磁石のN極と、前記移動軸に沿った同位置にある前記第2の永久磁石のS極と前記第4の永久磁石のN極と、を連絡するように第3ヨーク及び第4ヨークがそれぞれ設けられることを特徴としてもよい。
【0012】
かかる発明によれば、軟磁性体からなる平板状可動片を配置した間隙内に磁束を形成するよう第1及び第2の永久磁石が配置されて、永久磁石の着磁方向とコイルの励磁方向が同じ方向となるようにこれらを配置したにもかかわらず、第1コイルの起磁力を小さくしても出力軸の推力を得られるから、各永久磁石での消磁を抑制できる。同様に、全ての永久磁石においても消磁を抑制できる。つまり、第1乃至第4の永久磁石からの磁束を効率的に第1ヨーク及び第2ヨークの間隙に導き、安定して出力軸のストローク幅全体に亘って高い推力を与えることができるのである。
【0013】
さらに、上記発明において、前記移動軸に沿った同位置にある前記第1の永久磁石と前記第3の永久磁石の距離、及び、前記移動軸に沿った同位置にある前記第2の永久磁石と第4の永久磁石の距離が少なくとも前記間隙よりも大なる距離であることを特徴としてもよい。
【0014】
かかる発明によれば、第1ヨークを挟んで第1及び第3、また第2及び第4の永久磁石の同極を突き合わせたにもかかわらず、磁束は第1ヨーク及び第2ヨークの間隙を通るから、これら永久磁石の間での消磁を抑制できる。つまり、第1乃至第4の永久磁石からの磁束を効率的に第1ヨーク及び第2ヨークの間隙に導き、安定して出力軸のストローク幅全体に亘って高い推力を与えることができるのである。
【0015】
また、上記発明において、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークは、前記移動軸に沿った同位置で前記間隙を挟んで対向する前記平面の一対からなるティース対を2組有し、前記ティース対の間の前記第1ヨーク及び前記第2ヨークにそれぞれ第1コイル及び第2コイルが巻回されることを特徴としてもよい。
【0016】
かかる発明によれば、ティースと第1ヨーク及び第2ヨークの間隙内の磁束を安定させて出力軸のストローク幅全体に亘って高い推力を与えることができるのである。
【0017】
さらに、上記発明において、前記間隙内に前記平板状可動片を配置し且つ前記第1コイル及び前記第2コイルに電流が流れていない状態で、前記第1コイル及び前記第2コイルを挟んで、前記第1永久磁石、前記第1ヨーク、前記間隙、前記第2ヨーク、前記第3永久磁石及び前記第3ヨークからなる第1の周回磁路と、前記第2永久磁石、前記第1ヨーク、前記間隙、前記平板状可動片、前記第2ヨーク、前記第4永久磁石及び前記第4ヨークからなる第2の周回磁路と、を形成することを特徴としてもよい。
【0018】
かかる発明によれば、第1乃至第4の永久磁石からの磁束を効率的に第1ヨーク及び第2ヨークの間隙に導き、出力軸のストローク幅全体に亘って高い推力を与えることができるのである。
【0019】
前記間隙内から前記平板状可動片を取り除き且つ前記第1コイル及び前記第2コイルに電流が流れていない状態で、前記第1コイル及び前記第2コイルを挟んで、前記第1永久磁石、前記第1ヨーク、前記間隙、前記第2ヨーク、前記第3永久磁石及び前記第3ヨークからなる第1の周回磁路と、前記第2永久磁石、前記第1ヨーク、前記間隙、前記第2ヨーク、前記第4永久磁石及び前記第4ヨークからなる第2の周回磁路と、を形成することを特徴としてもよい。
【0020】
かかる発明によれば、平板状可動片を間隙に配置しない時においても永久磁石同士による減磁をより抑制でき、組み立て工程が容易となる。そして、第1乃至第4の永久磁石からの磁束を効率的に第1ヨーク及び第2ヨークの間隙に導き、安定して出力軸のストローク幅全体に亘って高い推力を与えることができるのである。
【0021】
さらに、上記発明において、前記平板状可動片は、前記移動軸に沿って伸びるエンジンバルブシャフトと連結されていることを特徴としてもよい。
【0022】
かかる発明によれば、高速運動を要求される小型リニアアクチュエータにおいて、出力軸のストローク幅全体に亘って高い推力を安定して与えることができるから、エンジンバルブをより容易に安定して制御できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例であるリニアアクチュエータ全体の斜視図である。
【図2】本発明の実施例であるリニアアクチュエータの要部の斜視図である。
【図3】本発明の実施例であるリニアアクチュエータの要部の正面図である。
【図4】本発明の実施例であるリニアアクチュエータの要部の斜視図である。
【図5】本発明の実施例であるリニアアクチュエータの要部の斜視図である。
【図6】本発明の実施例であるリニアアクチュエータの断面図である。
【図7】本発明の実施例であるリニアアクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の1つの実施例である小型リニアアクチュエータについて、ここでは自動車エンジン用電磁駆動バルブに適用した例を詳説する。自動車エンジン用電磁駆動バルブでは、エンジン回転数やアクセル操作に応じてリフト量や開閉タイミングを変更できることが要求され、これに適用される小型リニアアクチュエータにおいては出力軸のストローク幅全体に亘って高い推力を安定して出力できることなどを求められる。
【0025】
図1及び図2に示すように、リニアアクチュエータ100は、同一形状の第1ヨーク11及び第2ヨーク12と、同一形状の第3ヨーク13及び第4ヨーク14と、矩形状の第1永久磁石21、第2永久磁石22、第3永久磁石23及び第4永久磁石24と、第1コイル31及び第2コイル32とを含み、更に平板状可動片51と、シャフト52とを含む。出力軸であるシャフト52の先端には、被制御対象である自動車エンジンのエンジンバルブ53が連結される。ここで、シャフト52の往復動する方向をX軸方向とし、第1ヨーク11及び第2ヨーク12の主面をよぎる方向をY軸方向とし、X軸及びY軸と直行する方向をZ軸方向とし、各軸の正方向を図1の矢印に示す通りとする。なお、図1では、第4ヨークからシャフト52が突出する以前の状態、すなわちエンジンバルブの閉まった状態を図示している。
【0026】
図3に併せて示すように、第1ヨーク11は、X軸方向中央部において角材の上面からこれと平行な底面11a−1を露出させるように削除して、正面視(Y軸・正方向)してこの底面11a−1の左右両端部へ向けて連続して上方に傾斜する傾斜面11a−2を露出させるように削除した上部削除部を有する。更に、第1ヨーク11は、正面視(Y軸・正方向)して角材の下両角部を削除した左右角削除面11bを与えられて、その上方に略矩形の側面11b−1を有する。また、第1ヨーク11は、角材の底面からY軸方向に伸びる矩形溝である中央削除部(凹部)116を有する。この凹部116の両側には磁束密度を高めるためのティース111及び112が実質的に形成される。なお、第2ヨーク12は、第1ヨーク11と同一形状を有し、図示しないが、第1ヨーク11と対応する凹部126、左右角削除面12b、側面12b−1などを有する。この第2ヨーク12は、平板状可動片51をその間に配して第1ヨーク11と鏡像関係になるように対向して配置される。
【0027】
再び、図1及び図2に示すように、第1ヨーク11の凹部116には、磁束をX軸方向に形成するように長手方向(X軸方向)に沿って第1コイル31が巻回される。また、第2ヨーク12の凹部126には、磁束をX軸方向に形成するように長手方向に沿って第2コイル32が巻回される。なお、後述するように、第1コイル31により形成される磁束と第2コイル32により形成される磁束とがX軸方向において互いに逆向きとなるように、図示しない電流供給装置によってこれらに電流が供給される。
【0028】
第1ヨーク11のX軸方向両端部の略矩形の側面11b−1(図3参照)には、この形状に合わせて平板状で略矩形の第1永久磁石21及び第2永久磁石22が互いにN極同士を突き合わして、すなわち、第1ヨーク11を挟んで対向している。また、第2ヨーク12のX軸方向両端部の略矩形の側面12b−1(図示せず)には、端部形状に合わせて平板状で略矩形の第3永久磁石23及び第4永久磁石24が互いにS極同士を突き合わして、すなわち、第2ヨーク12を挟んで対向している。
【0029】
図4に併せて示すように、第3ヨーク13は、三角柱13aを1つの側面13a−1と並行な面13a−2で切ったような形状、すなわち、XZ平面で台形の側面13a−3を有する台体形状である。側面13a−1は、第1ヨーク11及び第2ヨーク12とそれぞれ第1永久磁石21及び第3永久磁石23を間に挟んで対向する。また、第3ヨーク13と同一形状を有する第4ヨーク14は、やはりその側面を第1ヨーク11及び第2ヨーク12とそれぞれ第2永久磁石22及び第4永久磁石24を間に挟んで対向させている。
【0030】
ここで、第1ヨーク11、第2ヨーク12、第3ヨーク13及び第4ヨーク14は、いずれも飽和磁束密度の高い軟磁性体からなり、例えば、パーメンジュールからなる。また、1つの例として、永久磁石21、22、23及び24を含むヨーク11、12、13及び14の概寸は、幅(X方向)約80[mm]、奥行き(Y方向)約40[mm]、高さ(Z方向)約66[mm]である。
【0031】
図5に示すように、可動子の一部を構成する平板状可動片51は、飽和磁束密度の高い軟磁性体からなり、例えば、パーメンジュールの平板からなり、Z軸方向から見て矩形形状である。平板状可動片51は、第1ヨーク11のティース111及び112並びに第2ヨーク12のティース121及び122の間に配置され、故に、少なくとも第1ヨーク11及び第2ヨーク12のこれら間隙よりも薄い板状体である。1つの例としてこの厚さは、6[mm]である。平板状可動片51の一端には角材からなるシャフト52が連結され、シャフト52の先端には適宜、リニアアクチュエータにより制御若しくは駆動を行う被制御装置の一部が係合するが、ここではバルブ53が取り付けられる。
【0032】
ところで、図1及び図6に示すようにアクチュエータ100のストロークの一端であるバルブ53が閉まった状態において、平板状可動片51はティース111及びティース121側に位置し、正面視(Y軸・正方向)してその左端部は、第1ヨーク11と第2ヨーク12の間隙幅が拡がる部分(左右角削除面11b及び12bに該当。図3参照。)に配置され、可動片51の右端部は、第1コイル31とティース112の境界部118からティース112及び122に向けて多少突出するよう配置される。なお、間隙幅が拡がる部分の上下方向の最大距離は第1永久磁石21及び第3永久磁石23との上下方向の距離となるが、この距離は上記した第1ヨーク11及び第2ヨーク12の間隙よりも少なくとも大である。
【0033】
一方で、図示はしないが、同様に、アクチュエータ100のストロークの他端であるバルブが完全に開いた状態において、平板状可動片51は、ティース112及びティース122の間に位置する。可動片51の左端部は、第1コイル31とティース111の境界部117からティース111及び121に向けて多少突出するよう配置され、可動片51の右端部は、第1ヨーク11と第2ヨーク12の間隙幅が変化する部分(左右角削除面11b及び12bに該当。図3参照。)に配置される。なお、ここでも間隙幅が拡がる部分の最大距離は第2永久磁石22及び第4永久磁石24との上下方向の距離となるが、この距離は上記した第1ヨーク11及び第2ヨーク12の間隙よりも少なくとも大である。
【0034】
角材からなるシャフト52は、第4ヨーク14の中央部に設けられた矩形断面の貫通孔141を通り(図1及び図2参照)、その端部にはバルブ53が連結されて、バルブ53はX軸方向に往復運動し得るのである。
【0035】
ここで、本実施例の作動原理について説明する。図6の断面図に示すように、無励磁状態、すなわち第1コイル31と第2コイル32に電流を流さない場合、リニアアクチュエータ100の一側には、第1永久磁石21及び第3永久磁石23により、第1永久磁石21のN極、第1ヨーク11の一側部113、第1ヨーク11のティース111、平板状可動片51、第2ヨーク12のティース121、第2ヨーク12の一側部123、第3永久磁石23のS極、第3永久磁石23のN極、第3ヨーク13及び第1永久磁石21のS極を、この順に結ぶループL1で磁路が形成される。
【0036】
また、リニアアクチュエータ100の他側には、第2永久磁石22及び第4永久磁石24により、第2永久磁石22のN極、第1ヨーク11の他側部114、第1ヨーク11のティース112、間隙部154、第2ヨーク12のティース122、第2ヨーク12の他側部124、第4永久磁石24のS極、第4永久磁石24のN極、第4ヨーク14及び第2永久磁石21のS極を、この順に結ぶループL2で磁路が形成される。
【0037】
ところで、上記した2つの磁路は平板状可動片51を第1ヨーク11と第2ヨーク12の間隙内に配置して形成されるが、平板状可動片51が配置されないときにあっても形成されることが好ましい。つまり、ヨーク11乃至14、及び、永久磁石21乃至24からなるアセンブリを形成した時点でも永久磁石21乃至24同士の減磁をほとんど生じず、これらの消磁を抑制できる。つまり、永久磁石21乃至24の組み付け等においてリニアアクチュエータ100の製造が容易となるのである。
【0038】
次に、図7の断面図に示すように、第1ヨーク11の中央部115にX軸正方向に磁束が流れるように第1コイル31に電流を流すとともに、第2ヨーク12の中央部125にX軸負方向に磁束が流れるように第2コイル32に電流を流す場合、第1ヨーク11の一側部113、第1ヨーク11のティース111、平板状可動片51、第2ヨーク12のティース121、第2ヨーク12の一側部123の順に形成される磁路と、第1コイル31及び第2コイル32により形成される磁路とは、その流れる方向が逆となり磁束成分が打ち消される。
【0039】
従って、リニアアクチュエータ100の一側には、第1永久磁石21及び第3永久磁石23による磁束並びに第1コイル31及び第2コイル32による磁束により、第1永久磁石21のN極、第1ヨーク11の一側部113、第1ヨーク11の中央部115、第1ヨーク11のティース112、間隙部154、第2ヨーク12のティース122、第2ヨーク12の中央部125、第2ヨーク12の一側部123、第3永久磁石23のS極、第3永久磁石23のN極、第3ヨーク13、第1永久磁石21のS極を、この順に結ぶループL1’で磁路が形成される。
【0040】
また、リニアアクチュエータ100の他側には、第2永久磁石22のN極、第1ヨーク11の他側部114、第1ヨーク11のティース112、間隙部154、第2ヨーク12のティース122、第2ヨーク12の他側部124の順に磁路が形成され、第1コイル31及び第2コイル32により形成される磁路とは、その流れる方向が一致する。
【0041】
従って、リニアアクチュエータ100の他側には、無励磁状態のときと同様に、第2永久磁石22のN極、第1ヨーク11の他側部114、第1ヨーク11のティース112、間隙部154、第2ヨーク12のティース122、第2ヨーク12の他側部124、第4永久磁石24のS極、第4永久磁石24のN極、第4ヨーク14及び第2永久磁石21のS極を、この順に結ぶループL2’で磁路が形成される。
【0042】
第1ヨーク11のティース111、平板状可動片51、第2ヨーク12のティース121に至る磁路の磁束成分が打ち消され、また、第1ヨーク11のティース112、間隙部154、第2ヨーク12のティース122に至る磁路の磁束成分が加勢される結果、平板状可動片51に対して、X軸正方向への推力を発生せしめるのである。
【0043】
第1コイル31及び第2コイル32の起磁力は、ティース112に向けて直接流れるよう形成されるから、これを小さくしても平板状可動片51の推力を得られる。つまり、第1コイル31及び第2コイル32の起磁力による永久磁石からの磁力の減磁、すなわち、永久磁石の消磁、特に、第2永久磁石22の消磁を抑制できるのである。
【0044】
逆に、第1ヨーク11の中央部115にX軸負方向に磁束が流れるように第1コイル31に電流を流すと共に、第2ヨーク12の中央部125にX軸正方向に磁束が流れるように第2コイル32に電流を流せば、平板状可動片51に対して、X軸負方向への推力を発生せしめるのである(図示せず)。
【0045】
ここで、永久磁石の起磁力を1000[kA/m]、第1コイル及び第2コイルの巻き数を200として、平板状可動片51に対する推力についての磁場解析を行った。すると、出力軸に与えられるストローク平均推力は338[N]、最大推力は368[N]、最小推力は247[N]との結果を得た。つまり、最大推力と最小推力との差は121[N]であり、ストローク平均推力の約36%に相当する。
【0046】
これに対して、背景技術で参照した特許文献(特開2007−56777号公報)に開示のリニアアクチュエータにおいて、本実施例によるリニアアクチュエータ100とアンペアターン(コイルに流れる電流とコイルの巻数との積)を同一にして同様の磁場解析を行った。すると、ストローク平均推力は204[N]、最大推力は304[N]、最小推力は131[N]との解析結果を得た。つまり、最大推力と最小推力との差は173[N]であり、ストローク平均推力の約85%に相当する。
【0047】
このように本実施例によるリニアアクチュエータでは、上記した特許文献(特開2007−56777号公報)に開示のリニアアクチュエータよりも高い推力を与えることができ、さらに出力軸のストローク幅全体に亘って均一な推力を与えることができる。つまり、より大なる平均推力及びより均一な推力を与え得る。
【0048】
なお、本実施例にかかるリニアアクチュエータ100では、第1ヨーク11及び第2ヨーク12に配設される永久磁石21、22、23及び24の着磁方向と同方向に、コイル31及び32により励磁された磁束が流れる。にもかかわらず、コイルによる磁束と永久磁石による磁束とを有効に第1ヨーク11及び第2ヨーク12の間の間隙に与えることができ、高推力化が図れ得ることから、励磁された磁束は小さくて済み、結果として、永久磁石の消磁を抑制できるのである。
【0049】
また、本実施例にかかるリニアアクチュエータ100では、永久磁石が第1ヨーク11及び第2ヨーク12などからなる固定子側に配設されているため、永久磁石を大型化し易く起磁力を増大させ得る。故に、平板状可動片51及びシャフト52の重量増を招くことなく、推力の増大を図ることができる。また、平板状可動片51をより薄くすることが出来て、これを含む可動子の軽量化を図り、高速応答性の向上をも図り得る。
【0050】
さらに、本実施例にかかるリニアアクチュエータ100では、可動片51を含む可動子の往復運動は、第4ヨーク14の中央部に設けられた貫通孔141のみで規制できる。すなわち、平板状可動片51は永久磁石を有さず小なる質量であるため、可動片51の両端にシャフトを延出させてこれを支持する必要がなく、このような軽量の可動子によりアクチュエータの高速応答性の向上が図れるのである。また、従来のアクチュエータのように、長い出力軸の両端部を支持するスラスト軸受を固定部側に少なくとも2つ設ける必要もなく、シャフト52の軽量化できる。なお、可動子の往復運動をより安定させるため、平板状可動片51のY軸に直交する両側面にこれを支持するリニアスライダー等を設けても良い。
【0051】
以上、本発明によれば、上記した実施例の如く、数センチ以下のストローク幅で比較的高い推力を出力できる小型リニアアクチュエータが提供される。かかる小型リニアアクチュエータは、自動車エンジン用電磁駆動バルブに限定されず、例えば、各種ガス弁の開閉装置、配電板の回路遮断装置、及び、家庭用電気機器の駆動装置など多くの分野で使用され得る。
【0052】
ここまで本発明による代表的な実施例を述べたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、適宜、当業者によって変更され得る。すなわち、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0053】
11 第1ヨーク
12 第2ヨーク
13 第3ヨーク
14 第4ヨーク
21 第1永久磁石
22 第2永久磁石
23 第3永久磁石
24 第4永久磁石
31 第1コイル
32 第2コイル
51 平板状可動片
100 リニアアクチュエータ
111、112 第1ヨークのティース
121、122 第2ヨークのティース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの平面を平行にして突き合わされた第1ヨーク及び第2ヨークの間隙内にこれら平面に平行に軟磁性体からなる平板状可動片を配置し、これを該平面に平行な1つの移動軸に沿って往復動せしめて出力を得るリニアアクチュエータであって、
前記第1ヨークから前記第2ヨークへ向けた磁束を前記間隙内に形成するための永久磁石と、
前記移動軸に沿った磁力線を形成するように前記第1ヨークの周囲に巻回した第1コイルと、
前記第1コイルと前記間隙を挟んで配置され、前記移動軸に沿った磁力線を形成するように前記第2ヨークの周囲に巻回した第2コイルと、を含み、
前記平板状可動片を前記第1コイル及び前記第2コイルの間に配置して、前記第1コイル及び前記第2コイルの前記磁力線を前記移動軸に沿って互いに逆方向となるように前記第1コイル及び前記第2コイルに電流を与えて前記平板状可動片を前記移動軸に沿って往復動せしめることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記永久磁石は前記移動軸に沿った前記第1ヨークの両端部にN極を突き合わして配置された平板状の第1及び第2の永久磁石と、前記移動軸に沿った前記第2ヨークの両端部にS極を突き合わして配置された平板状の第3及び第4の永久磁石とからなり、前記移動軸に沿った同位置にある前記第1の永久磁石のS極と前記第3の永久磁石のN極と、前記移動軸に沿った同位置にある前記第2の永久磁石のS極と前記第4の永久磁石のN極と、を連絡するように第3ヨーク及び第4ヨークがそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記移動軸に沿った同位置にある前記第1の永久磁石と前記第3の永久磁石の距離、及び、前記移動軸に沿った同位置にある前記第2の永久磁石と第4の永久磁石の距離が少なくとも前記間隙よりも大なる距離であることを特徴とする請求項2記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1ヨーク及び前記第2ヨークは、前記移動軸に沿った同位置で前記間隙を挟んで対向する前記平面の一対からなるティース対を2組有し、前記ティース対の間の前記第1ヨーク及び前記第2ヨークにそれぞれ第1コイル及び第2コイルが巻回されることを特徴とする請求項2又は3のうちの1つに記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記間隙内に前記平板状可動片を配置し且つ前記第1コイル及び前記第2コイルに電流が流れていない状態で、前記第1コイル及び前記第2コイルを挟んで、前記第1永久磁石、前記第1ヨーク、前記間隙、前記第2ヨーク、前記第3永久磁石及び前記第3ヨークからなる第1の周回磁路と、前記第2永久磁石、前記第1ヨーク、前記間隙、前記平板状可動片、前記第2ヨーク、前記第4永久磁石及び前記第4ヨークからなる第2の周回磁路と、を形成することを特徴とする請求項4記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記間隙内から前記平板状可動片を取り除き且つ前記第1コイル及び前記第2コイルに電流が流れていない状態で、前記第1コイル及び前記第2コイルを挟んで、前記第1永久磁石、前記第1ヨーク、前記間隙、前記第2ヨーク、前記第3永久磁石及び前記第3ヨークからなる第1の周回磁路と、前記第2永久磁石、前記第1ヨーク、前記間隙、前記第2ヨーク、前記第4永久磁石及び前記第4ヨークからなる第2の周回磁路と、を形成することを特徴とする請求項4記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記平板状可動片は、前記移動軸に沿って伸びるエンジンバルブシャフトと連結されていることを特徴とする請求項1乃至6のうちの1つに記載のリニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−4451(P2011−4451A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142952(P2009−142952)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(390013815)学校法人金井学園 (20)
【Fターム(参考)】