説明

リニアソレノイド制御装置

【課題】定常状態以外でも良好にコイルの抵抗値が推定でき、高いロバスト性を有してリニアソレノイドのフィードバック制御を実施する。
【解決手段】リニアソレノイドに印加する駆動電流の目標値である目標電流Irを調整する目標値フィルタ11を通過後の目標電流と実際の駆動電流の検出値である検出電流Ifbとの偏差を積分演算部13において積分補償し、比例微分演算部14において検出電流Ifbを比例補償すると共に微分補償し、抵抗値推定部15において駆動電流の推定値と検出電流Ifbとの偏差に抵抗値推定パラメータRを乗じて積分補償してコイルの抵抗値を推定し、積分演算部13及び比例微分演算部14の演算結果の偏差に基づいて基本電圧指令を演算すると共に、推定されたコイルの抵抗値に基づいて基本電圧指令を補正して電圧指令Vrを演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアソレノイドをフィードバック制御するリニアソレノイド制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般なリニアソレノイドは、コイルに流れる駆動電流が適正に制御されることによってプランジャを所望の位置へ変位させることができる。しかし、コイルの抵抗値は環境温度によって変動するため、安定した制御を実現するためには、コイルの抵抗値を精度良く知る必要がある。特開平9−280411号公報(特許文献1)には、リニアソレノイドのコイル電流を検出し、この電流値を用いてPI制御を行うことによって応答性よくリニアソレノイドを制御する制御装置が開示されている。この制御装置は、特許文献1の図6のステップS34,S35等に示されるように、指令電流値と検出電流値との差が所定範囲内であるときに、ソレノイドの抵抗値を指令電流値と指令電圧値とから推定する。そして、この推定された抵抗値からコイルの抵抗値を補正して、PI制御を実施している(第20〜37段落、図1、図2、図6等。)。
【0003】
特許文献1の制御装置は、フィードバック制御にPI制御を用いているために、ステップ応答など、目標値が急激に変化すると電流応答にオーバーシュートやアンダーシュートを生じやすく、安定性に向上の余地がある。また、抵抗値の推定は、指令電流値と検出電流値との差が所定範囲内、換言すれば定常状態でなければ実施できない。従って、フィードバック制御の特性は、PI制御単独の特性が支配的となり、外乱や設計誤差などの不確定な変動に対する安定性、即ちロバスト性にも向上の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−280411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景に鑑み、定常状態以外でも良好にコイルの抵抗値が推定でき、高いロバスト性を有してリニアソレノイドのフィードバック制御を実施する技術の提供が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑みた本発明に係るリニアソレノイド制御装置の特徴構成は、
リニアソレノイドに印加する駆動電流の目標値である目標電流を調整する目標値フィルタと、
前記目標値フィルタを通過後の前記目標電流と実際の前記駆動電流の検出値である検出電流との偏差を積分補償する積分演算部と、
前記検出電流を比例補償すると共に微分補償する比例微分演算部と、
前記駆動電流の推定値と前記検出電流との偏差に抵抗値推定パラメータを乗じて積分補償し、前記リニアソレノイドのコイルの抵抗値を推定する抵抗値推定部と、
前記積分演算部の演算結果と前記比例微分演算部の演算結果との偏差に基づいて基本電圧指令を演算すると共に、推定された前記コイルの抵抗値に基づいて前記基本電圧指令を補正して電圧指令を演算する電圧指令演算部と、を備える点にある。
【0007】
本特徴構成によれば、積分演算部が積分制御(I制御)を実施し、比例微分演算部が比例微分制御(PD制御)を実施することにより、PI制御ではなく、I−PD制御が実施される。また、積分演算部による積分制御においては、目標値フィルタを通過した目標電流と検出電流との偏差に基づく制御が実施される。従って、目標電流が急激に変化しても、安定した制御が実現される。さらに、抵抗値推定部によりコイルの抵抗値が推定され、温度変化により変動するコイルの抵抗値に対応して電圧指令が補償されるので、温度変化に対しても高い安定性が得られる。抵抗値推定部は、電圧値と電流値との関係によってコイルの抵抗値を推定するのではなく、駆動電流の推定値と実際にコイルを流れる駆動電流である検出電流との偏差に基づいて抵抗値を推定する。従って、目標電流が大きく変動し、駆動電流が過渡状態においても抵抗値の推定が可能である。コイルの温度変化は、目標電流や、目標値フィルタを通過後の目標電流、実際の駆動電流に比べて緩慢であるから、電流値の偏差によって充分な応答性をもって抵抗値を推定することが可能である。従って、本特徴構成によって、定常状態以外でも良好にコイルの抵抗値が推定でき、高いロバスト性を有してリニアソレノイドのフィードバック制御が実現される。
【0008】
また、本発明に係るリニアソレノイド制御装置は、前記駆動電流の前記推定値が、前記目標電流であると好適である。目標電流を駆動電流の推定値として用いることによって、駆動電流を推定するための別の演算を実施する負荷が軽減される。従って、簡単な構成によって、定常状態以外でも良好にコイルの抵抗値が推定可能なリニアソレノイド制御装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】リニアソレノイド制御装置の構成を模式的に示すブロック図
【図2】リニアソレノイド制御装置の機能ブロックを模式的に示すブロック図
【図3】リニアソレノイド制御手順の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。リニアソレノイドは、例えば、車両に搭載されるソレノイドバルブなどに利用される。ソレノイドバルブは、バルブ部材を収容するスリーブと、このバルブ部材をスリーブ内で摺動させるリニアソレノイドとを備えて構成される。バルブ部材とソレノイドのプランジャとは、略同軸に接続されている。プランジャは、略円筒形の磁性体により構成されるヨークに収容されている。ヨークには、樹脂製のボビンに巻き回されたコイルが備えられている。コイルへの給電により発生する磁界により、プランジャは軸方向に沿って変位する。プランジャとバルブ部材とはバルブ部材の一端側で固定されており、バルブ部材はプランジャが軸方向へ変位するのに従って変位し、所定の接続関係が構築される。
【0011】
車両に搭載されるソレノイドバルブは、冷却油、潤滑油などが流通する油圧回路などに用いられる。エンジンが長時間停止していた場合には、冷却油や潤滑油の温度が低いが、エンジンが起動されると、エンジンの温度が上昇し、それに伴って冷却油や潤滑油の温度も上昇する。油圧回路内に設置されるソレノイドバルブも、冷却油や潤滑油の温度変化の影響を受け、リニアソレノイドのコイルの温度も変化する。コイルの温度が変化するとコイルの抵抗値も変動するため、コイルに流れる電流も変動する。リニアソレノイドは、コイルに流れる電流によってプランジャの駆動力(変位量)が異なる。リニアソレノイド制御装置は、コイルに流れる電流を制御することによって、プランジャの駆動力(変位量)を適切に制御する。以下に説明するように、本発明のリニアソレノイド制御装置は、コイルの抵抗値を精度良く予測して、精度よくコイルに流れる電流を制御する。
【0012】
リニアソレノイド1は、図1に示すように、ソレノイド制御ECU(electronic control unit)10(リニアソレノイド制御装置)によって駆動される。ソレノイド制御ECU10は、マイクロコンピュータ4を中核として、駆動回路5や電流検出部6を有して構成される。マイクロコンピュータ4は、CPUコア、プログラムメモリ、パラメータメモリ、ワークメモリ、通信制御部、A/Dコンバータ、タイマ、ポートなどを有して構成される。このような構成は一般的な事項であり、説明を容易にするため図示及び詳細な説明は省略する。
【0013】
プログラムメモリは、制御プログラムなどが格納された不揮発性のメモリである。パラメータメモリは、プログラムの実行の際に参照される種々のパラメータが格納された不揮発性のメモリである。尚、パラメータメモリは、プログラムメモリと区別することなく、プログラムメモリに含められていてもよい。プログラムメモリやパラメータメモリは、例えばフラッシュメモリなどによって構成されると好適である。ワークメモリは、プログラム実行中の一時データを一時記憶するメモリである。ワークメモリは、揮発性で問題なく、高速にデータの読み書きが可能なDRAM(dynamic RAM)やSRAM(static RAM)により構成される。
【0014】
駆動回路5は、パワーMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)やIGBT(insulated gate bipolar transistor)などのパワー半導体を用いたスイッチング回路や、マイクロコンピュータ4の出力信号をパワー半導体へドライブするドライバ回路などを有して構成される。リニアソレノイド1を駆動するスイッチング回路や、ドライバ回路の構成については一般的であり、公知であるので詳細な説明は省略する。尚、図1における符号7は保護ダイオードである。また、駆動回路5には、自己診断機能が備えられており、過電流、短絡、断線、温度上昇などの診断結果がマイクロコンピュータ4に伝達されるように構成されている。
【0015】
マイクロコンピュータ4は、例えば自動車においては不図示の走行制御ECUなど、上位の制御装置からソレノイドバルブの制御指令を受け、その制御指令に基づいてリニアソレノイド1を制御する。具体的には、リニアソレノイド1を駆動する駆動電流を制御して、プランジャを任意の位置へ変位させてバルブ部材をスリーブ内で摺動させる。リニアソレノイド1のコイル2に実際に流れる電流は、電流検出部6により検出され、マイクロコンピュータ4に伝達される。電流検出部6は、ホールIC等を用いた電流センサで構成されてもよいし、シャント抵抗を用いた電流検出回路により構成されてもよい。マイクロコンピュータ4は、リニアソレノイド1の制御指令に基づく目標電流とコイル2に実際に流れる電流(検出電流)との偏差に基づいて電流フィードバック制御を行う。そして、例えばPWM(pulse width modulation)制御などによって、駆動回路5に印加される電圧をスイッチングすることによって駆動電流を制御する。
【0016】
尚、図1に例示したように、本実施形態では、プログラムメモリやワークメモリなどが1つのチップ(マイクロコンピュータ4)に集積された形態を例示しているが、当然ながら複数のチップによってマイクロコンピューティングシステムが構成されてもよい。また、本実施形態においては、リニアソレノイド制御装置は、マイクロコンピュータ4を中核として構成され、半導体チップとしてのハードウェアと、プログラムやパラメータなどのソフトウェアとの協働によりその機能が実現される。但し、リニアソレノイド制御装置の実施態様は、このようなハードウェアとソフトウェアとの協働に限定されるものではなく、ASIC(application specific integrated circuit)などを利用してハードウェアのみで構成されることを妨げるものではない。
【0017】
以下、リニアソレノイド制御装置の詳細について説明する。図2に示すように、ソレノイド制御ECU10(リニアソレノイド制御装置)は、目標値フィルタ11と、積分演算部13と、比例微分演算部14と、抵抗値推定部15と、電圧指令演算部16と、PWM出力部17とを有している。各機能部は、上述したように、マイクロコンピュータ4を中核として、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。図2は、機能ブロックとしての構成を示したものであり、各機能部は必ずしも独立して存在する必要はない。
【0018】
まず、各機能部の概要について説明する。目標値フィルタ11は、リニアソレノイド1に印加する駆動電流の目標値である目標電流Irを調整する機能部である。例えば、目標値フィルタ11は、目標電流Irの変化を緩やかにさせる、つまり、鈍(なま)らせるなどの調整を行う。積分演算部13は、目標値フィルタ11を通過後の目標電流Irと実際の駆動電流の検出値である検出電流Ifbとの偏差を積分補償する機能部である。偏差は、加算器(減算器)12によって演算される。比例微分演算部14は、検出電流Ifbを比例補償すると共に微分補償する機能部である。抵抗値推定部15は、駆動電流の推定値と検出電流Ifbとの偏差に抵抗推定パラメータRを乗じて積分補償し、リニアソレノイド1のコイル2の抵抗値Krを推定する機能部である。電圧指令演算部16は、積分演算部13の演算結果と比例微分演算部14の演算結果との偏差に基づいて基本電圧指令VIPDを演算すると共に、推定されたコイル2の抵抗値Krに基づいて基本電圧指令VPIDを補正して電圧指令Vrを演算する機能部である。PWM出力部17は、電圧指令Vr及びリニアソレノイド1(コイル2)の電流特性に基づいて駆動回路5の制御指令(例えば、PWM指令)を演算する機能部である。
【0019】
積分演算部13がI制御を実行し、比例微分演算部14がPD制御を実行することにより、ソレノイド制御ECU10(リニアソレノイド制御装置)は、I−PD制御によりリニアソレノイド1を制御する。目標電流Irに目標値フィルタ11を掛けていること、I−PD制御により電流フィードバック制御を行うことにより、目標電流Irが急激に変化しても安定した制御が実現可能である。さらに、抵抗値推定部15により推定されたコイル2の抵抗値に基づき、I−PD制御に加えて、電圧指令Vrが補償される。コイル2の抵抗値の温度変化に対して電圧指令Vrが補償されるので、高い安定性が得られる。また、電圧値と電流値との関係から抵抗値を推定するものではなく、電流値の偏差によって抵抗値を推定するので、電流値が過渡状態においても抵抗値の推定が可能である。コイル2の温度変化は、目標電流Irや、目標値フィルタ11を通過後の目標電流Irfilに比べて緩慢であるから、電流値の偏差によって充分な応答性をもって抵抗値を推定することが可能である。
【0020】
以下、図3のフローチャートも利用して説明する。マイクロコンピュータ4は、図3に示すフローチャートの一連の処理を繰り返し実行する。フローチャート中の変数に付記された(n)は、繰り返し実行されるルーチンの第n回目のルーチンにおける処理の値であることを示している。図3に示すように、電流フィードバック制御の最初にマイクロコンピュータ4は、目標電流Irの値を取得し(#1)、検出電流Ifbの値を取得する(#2)。1回のルーチンにおいて、目標電流Ir及び検出電流Ifbが1回ずつ取得される。フローチャート中のθは、これらの取得の周期(1回のルーチンの周期)にも相当する、目標電流Ir及び検出電流Ifbのサンプリングタイムを示している。
【0021】
目標電流Ir(n)が取得されると、目標電流Irを調整するために目標値フィルタ11を通過させる(#3)。つまり、図3の#3に示すような関数Irfil(n)に基づくフィルタ演算が実施される。具体的には、前回のルーチンにおいて演算されたフィルタ通過後の目標電流Irfil(n−1)と今回のルーチンで取得された目標電流Ir(n)との差分を求め、時定数Tとサンプリングタイムθとの関係から差分を特徴づけるフィルタ演算が実施される。
【0022】
次に、目標値フィルタ11を通過後の目標電流Irfil(n)及び検出電流Ifb(n)に基づき、積分演算部13及び比例微分演算部14によってI−PD制御演算が実施され、基本電圧指令VIPD(n)が算出される(#4)。図3のステップ#4に示す式は、I−PD制御を示す。当該式の右辺の第1項は積分演算部13によるI制御を示し、右辺の第2項はPD制御を示す。右辺第2項の括弧内の第1項は、微分制御(D制御)を示し、第2項は比例制御(P制御)を示す。
【0023】
具体的には、目標値フィルタ11を通過後の目標電流Irfil(n)と検出電流Ifb(n)との偏差が加算器12により求められ、積分演算部13において積分ゲインKiを乗じて当該偏差が所定の範囲(i〜n)に亘って積分される。また、比例微分演算部14において、所定の微分ゲインKdを乗じて検出電流Ifb(n)が微分され、検出電流Ifb(n)に所定の比例ゲインKpを乗じた乗算結果と当該微分結果とが加算される。積分演算部13による演算結果から比例微分演算部14による演算結果を減じた値が基本電圧指令VPID(n)となる。
【0024】
図3のステップ#4に示す式、及び上記説明から明らかなように、この基本電圧指令VPID(n)には、コイル2の抵抗値の変動分が加味されていない。従って、基本電圧指令VPID(n)は、図2に示すように、コイル2の抵抗値の推定値(推定抵抗値Kr)を用いて補正され、最終的な電圧指令Vr(n)となる。この補正に先立ち、抵抗値推定部15においてコイル2の抵抗値の推定演算が実施される(#5)。具体的には、検出電流Ifb(n)と目標電流Ir(n)との偏差が、積分ゲインに相当する所定の抵抗値推定パラメータRを乗じて所定の範囲(i〜n)に亘って積分され、推定抵抗値Kr(n)が算出される。ここでは、コイル2の抵抗値との差分が、推定抵抗値Kr(n)として算出される例を示している。
【0025】
尚、抵抗値推定部15は、駆動電流の推定値と検出電流Ifbとの偏差に抵抗値推定パラメータを乗じて積分補償し、コイル2の抵抗値を推定する機能部である。本実施形態においては、駆動電流の推定値として目標電流Irを用いる場合を例示した。しかし、駆動電流の推定値として、目標電流Irの変化分にフィードバック制御の応答性を加味して別途演算された値を用いてもよい。
【0026】
推定抵抗値Kr(n)が算出されると、図3のステップ#6に示すように、推定抵抗値Kr(n)と目標電流Ir(n)とに基づいて、電圧指令の補正値が演算される。ステップ#4で算出された基本電圧指令VPID(n)にこの補正値を加えることによって、電圧指令Vr(n)が算出される。尚、コイル2の抵抗値との差分である推定抵抗値Kr(n)が正の値の場合には、基本電圧指令VPID(n)が大きくなる方向に補正され、推定抵抗値Kr(n)が負の値の場合には、基本電圧指令VPID(n)が小さくなる方向に補正される。補正された電圧指令Vr(n)は、PWM出力部17に出力される(#7)。
【0027】
PWM出力部17は、電圧指令Vr(n)及びリニアソレノイド1(コイル2)の電流特性に基づいて駆動回路5の制御指令を演算する。本実施形態では、駆動回路5のスイッチング回路をPWM制御によりスイッチングさせるためのPWM信号がPWM出力部17によって生成される。生成されたPWM信号は、マイクロコンピュータ4のポートから出力され、駆動回路5のドライバ回路を介してスイッチング回路のスイッチング素子の制御端子(ゲートやベース)に入力される。PWM制御により、断続的にリニアソレノイド1に通電され、駆動電流が供給される。
【0028】
このように、ソレノイド制御ECU10(リニアソレノイド制御装置)は、目標電流Irに目標値フィルタ11を通過させた目標電流Irと検出電流Ifbとを用いてI−PD制御によりフィードバック制御を行い、目標電流Irと検出電流Ifbとに基づいてコイル2の抵抗値を推定して抵抗値補償を実施する。従って、ソレノイド制御ECU10は、目標電流Irが急激に変化しても安定した制御が実現可能であり、温度変化に対しても高い安定性が得られる。
【0029】
以上、説明したように、本発明によって、定常状態以外でも良好にコイルの抵抗値が推定でき、高いロバスト性を有してリニアソレノイドのフィードバック制御を実施することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1:リニアソレノイド
2:コイル
10:ソレノイド制御ECU(リニアソレノイド制御装置)
11:目標値フィルタ
13:積分演算部
14:比例微分演算部
15:抵抗値推定部
16:電圧指令演算部
Ir:目標電流
Irfil:目標値フィルタを通過後の目標電流
Ifb:検出電流
Kr:推定されたコイルの抵抗値
R:抵抗値推定パラメータ
VPID:基本電圧指令
Vr:電圧指令

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアソレノイドに印加する駆動電流の目標値である目標電流を調整する目標値フィルタと、
前記目標値フィルタを通過後の前記目標電流と実際の前記駆動電流の検出値である検出電流との偏差を積分補償する積分演算部と、
前記検出電流を比例補償すると共に微分補償する比例微分演算部と、
前記駆動電流の推定値と前記検出電流との偏差に抵抗値推定パラメータを乗じて積分補償し、前記リニアソレノイドのコイルの抵抗値を推定する抵抗値推定部と、
前記積分演算部の演算結果と前記比例微分演算部の演算結果との偏差に基づいて基本電圧指令を演算すると共に、推定された前記コイルの抵抗値に基づいて前記基本電圧指令を補正して電圧指令を演算する電圧指令演算部と、を備えるリニアソレノイド制御装置。
【請求項2】
前記駆動電流の前記推定値は、前記目標電流である請求項1に記載のリニアソレノイド制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−13098(P2012−13098A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147316(P2010−147316)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】