説明

リニアモータ用ブレーキ回路

【課題】 スイッチング動作時の消費電力を少なくしかつリニアモータの制動力を外部から制御することが可能なリニアモータ用ブレーキ回路を提供する。
【解決手段】 リニアモータの負荷に並列に接続された3相全波整流回路20と、この整流回路から出力されるブレーキ電流を制限する電流制限抵抗3(R11〜R14)と、電流制限抵抗R11、R13に接続された第1のトランジスタM0、M2とこれらのトランジスタに制御信号を出力する制御信号発生回路6a、6bを有する定電流回路4a、4bと、各定電流回路に流れる電流を2段階に調整する第2のトランジスタM11、M14を有するスイッチ回路5a、5bと、これらのトランジスタをオンオフさせるベース駆動回路7を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージなどを駆動するリニアモータの制動力を外部から制御することが可能なリニアモータ用ブレーキ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置(例えば投影露光装置や検査装置)においては、非露光部材(例えばガラス基板)などを搭載したステージを所定の位置まで高速で移動させるために、ステージを非接触で(例えば静圧軸受で)ステージの両側に設けられたリニアガイドに沿ってリニア同期モータ(以下単にリニアモータという)により駆動することが行われている
【0003】
上記のリニアモータの駆動回路の概略を図6に示す。同図に示すように、リニアモータの負荷(U相コイル、V相コイル、W相コイル)に駆動電流を供給するための駆動回路は、直流電源10から供給された直流を交流に変換するためにブリッジ接続した3組のスイッチング素子Q1〜Q6を有するインバータ回路11と、各スイッチング素子をその制御位相を120°ずつずらして(UV−UW−VW−VU−WU−WV)オンオフさせるPWM制御回路12を有する。また、リニアモータは、コイルに供給する電流の向きを変えるために可動子(例えば3相コイル)の位置を検出する位置センサ14を備えている。この駆動回路からリニアモータの負荷(U相コイル、V相コイル、W相コイル)に正弦波電流が供給されることにより、電流の値に応じた推力で可動コイル部材を移動することができ、またコイルに供給する電流の向きを変えることにより、可動子(コイル部材)の移動方向を切り替えることができる。なお、図示を省略するが、直流電源10は、例えば商用交流電源(通常は3相交流電源)を全波整流して直流電圧に変換する整流回路とこの直流電圧を所定の直流電圧に変換するDC−DCコンバータ(例えば昇圧チョッパ回路)で構成することができる。
【0004】
上記のステージを非常時に速やかに停止させるために、3組のスイッチング素子Q1〜Q6の下アームQ2、Q4、Q6を全てオンとし、各相のコイルを短絡することにより、制動(ダイナミックブレーキ)を掛けることが一般的である。しかるにエア浮上タイプのXYステージでは、左右の静圧軸受の浮上力が一致せず、ステージの重心位置が中央からずれることがある。この状態で、左右のリニアモータに同じ制動力を掛けると、慣性力の強い側に回転力が働き、ステージのねじれ現象が発生する。
【0005】
上述したように、ステージの重心が一対のリニアモータの中心位置からずれている状態でダイナミックブレーキを働かせると、モーメントが発生してステージは重心周りに回転(ヨーイング)しようとする。これを解消するために、特許文献1には、緊急時にはリニアモータが備える少なくとも1つのコイルを含む閉回路を構成してダイナミックブレーキを働かせることによって前記移動体を減速させるステージ装置において、ダイナミックブレーキ時にコイルに流れる電流を制限する制限手段を設けることが提案されている。
【0006】
また特許文献2には、半導体投影露光装置のウエハステージやレチクルステージ等において移動ストロークの長いステージに使用されているリニアモータにおいて、駆動中に停電が生じた場合、ステージを確実に停止させるために、停電時にダイナミックブレーキを働かせる半導体リレースイッチ202と、スイッチSW2、SW3、コイルL2、L3とが閉回路を構成し、停電が生じると、コイルL2、L3の位置に対応して位置する可動子の永久磁石が慣性で移動しようとするのを、コイルL2、L3に逆起電力を生じさせ、可動子の移動を妨げる向きに閉回路内で電流を流すことにより、可動子にはダイナミックブレーキが働くことによりリニアモータを停止させることが記載されている。
【0007】
この他にも、特許文献3には、モータ(直流モータや交流モータ等)の駆動電源装置の障害発生時に、モータを回生制動するために、障害検出時にオンとするトランジスタ等から構成されたスイッチ回路と、このスイッチ回路をオンとした時に、モータと並列に接続し、モータの回生電圧を印加して、予め設定した定電流が流れる特性とした定電流回路とを設けることが記載されている。
【0008】
さらに、特許文献4には、インバータ制御装置の減速時の電力制御を行う回生制御回路において、インバータに直流電力を供給する直流電源部を前記インバータから切り離すと共に、前記モータから回生される交流電力を直流に変換するモータ回生電力変換部と、前記モータ回生電力変換部の直流出力に接続され、予め設定された直流定電流によって通電制御する定電流制御部とを設けることが記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2006−237069号公報(第4−5頁、図1、2、4)
【特許文献2】特開2002−142491号公報(第4―6頁、図4、5,6)
【特許文献3】特開2007−252126号公報(第4―5頁、図1、3)
【特許文献4】特開平11−206184号公報(第3頁、図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されたブレーキ回路では、全ての負荷(コイル)が短絡状態となるので、速度に比例して急激な制動力が発生し、リニアモータには機械的なストレスが加わり、位置決め精度が低下するという問題がある。
【0011】
特許文献2に記載されたブレーキ回路は、逆起電力を利用して制動を掛けるので、ステージのバランスが崩れた場合には、安定した制動を掛けることができないという問題がある。
【0012】
また特許文献3及び特許文献4に記載されているように、モータと並列に定電流回路を設けて回生制動を掛ける場合、定電流回路を構成するトランジスタのゲートに直流電圧が印加される(ターンオンする)と大きな電流が流れる。このため、ブレーキ電流の調整範囲を広げるために、モータに複数の電流制限抵抗を接続し、各抵抗毎に定電流回路を設けると、トランジスタのスイッチング動作時の消費電力が大きくなるという問題がある。
【0013】
従って本発明の目的は、少ない消費電力でスイッチング動作が可能でかつステージバランスに応じて制動力を外部から制御することができるリニアモータ用ブレーキ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のリニアモータ用ブレーキ回路は、リニアモータの負荷に並列に接続された3相全波整流回路と、前記3相全波整流回路から出力されるブレーキ電流を制限する電流制限抵抗と、前記電流制限抵抗に接続された第1のトランジスタと前記第1のトランジスタに制御信号を出力する制御信号発生回路を有する定電流回路と、前記定電流回路に流れる電流を2段階に調整する第2のトランジスタを有するスイッチ回路と、前記第2のトランジスタをオンオフさせるベース駆動回路とを有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明において、前記定電流回路は、前記第1のトランジスタのゲート電圧を制御するオペアンプを含む反転増幅回路と、前記オペアンプの基準電圧を与える基準抵抗を有するとともに、前記制御信号発生回路は、指令電圧を増幅して制御信号を生成する演算回路を有し、前記ベース駆動回路は前記第2のトランジスタのゲートを駆動するインバータを有する構成とすることができる。第1のトランジスタ及び第2のトランジスタは各々、1つでもよいしあるいは複数個でもよい。
【0016】
本発明において、前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタとしてnチャンネル型パワーMOSFETを使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電流制限抵抗に第1のトランジスタを有する定電流回路を接続するとともに、この定電流回路に流れる電流を第2のトランジスタをオンオフさせることにより2段階に調整するので、少ない消費電力で制動力を外部(モータの制御回路とは別の回路)から制御することができる。したがって複数の駆動軸(例えば2軸)を有するステージにおいて、ステージバランスに応じて各リニアモータの制動力を外部から制御することにより、非常停止時にステージに作用する機械的なストレスを軽減することができる。
【0018】
本発明によれば、単軸のステージにおいても、リニアモータの制動力を外部から制御できるので、非常停止時にステージに作用する機械的なストレスを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の詳細を添付図面を参照して説明する。図1は本発明の対象とするXYステージの平面図、図2は図1をA方向からみた矢視図、図3はリニアモータの駆動回路を示すブロック図、図4は本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ回路を示す回路図、図5は本発明の第2の実施の形態に係るブレーキ回路を示す回路図である。
【0020】
[XYステージ]
XYステージの構成を図1及び図2により説明する。XYステージ100は、ベース110と、その上にY方向に伸長するリニアガイド120a、120bと、空気軸受を形成するためにこのリニアガイドの外周面に設けられたエアーパッド130a、130bと、Xステージ160(図中破線で示す)を搭載したキャリッジ140と、キャリッジ140を駆動するリニアモータ150a、150bを備えている。エアーパッド130a、130bから圧縮エアを噴出すことにより、静圧軸受が形成されて、キャリッジは非接触でガイドに支持される。なお図示を省略するが、エアーパッド130a、130bは各々、Y軸方向に沿って所定間隔をおいて複数個配置されている。
【0021】
リニアモータ150aは、強磁性体からなり断面コ字状のヨーク152aの内側にその伸長方向に沿って異なる極性の磁極が現出しかつ異なる極性の磁極が対向するように複数の永久磁石153aを固着し、正弦波状の磁束密度分布が現出する磁気空隙を有する固定子151aと、磁気空隙内に位置する有効導体部を有する3相コイル(例えば空心コイル)154aを有する可動コイル部材155aを備えている。
【0022】
リニアモータ150bは、リニアモータ150aと同様に、強磁性体からなり断面コ字状のヨーク152bの内側にその伸長方向に沿って異なる極性の磁極が現出しかつ異なる極性の磁極が対向するように複数の永久磁石153bを固着し、正弦波状の磁束密度分布が現出する磁気空隙を有する固定子151bと、磁気空隙内に位置する有効導体部を有する3相コイル(例えば空心コイル)154bを有する可動コイル部材155bを備えている。
【0023】
図3に示すように、負荷1(図2に示す3相コイル154a、154b)に駆動電流を供給する駆動回路は、直流電源10から供給された直流を交流に変換するためにブリッジ接続した3組のスイッチング素子Q1〜Q6を有するインバータ回路11と、スイッチング素子をその制御位相を120°ずつずらして(UV−UW−VW−VU−WU−WV)オンオフさせるPWM制御回路12とを有する。負荷1に接続されたブレーキ回路2は、整流後の電流を制限する複数の電流制限抵抗3と、一方の電流制限抵抗3を流れる電流を一定にする、第1のトランジスタ(不図示)を有する定電流回路4と、第1のトランジスタの駆動を制御する制御信号発生回路6を有する。また他方の電流制限抵抗3には、第2のトランジスタ(不図示)を有するスイッチ回路5と、第2のトランジスタをオンオフするベース駆動回路6が接続されて定電流回路4に流れる制限電流を2段階に調整するように構成されている。スイッチング素子Q1〜Q6としては、図示したNPN形トランジスタに限定されず、例えばパワーMOSFETを使用することができる。インバータ回路11は、主回路を電圧源にする電圧形インバータ又は主回路を電流源にする電流形インバータのいずれでもよい。
【0024】
[ブレーキ回路例1]
上記のブレーキ回路2は、図4に示すように構成することができる。すなわちブレーキ回路2は、負荷1(例えば3相コイル)に並列に接続された、ブリッジ接続されたダイオードD1〜D6を有する3相全波整流回路20と、整流後の電流を制限する複数の電流制限抵抗3(R11、R12、R13、R14)を有する。また電流制限抵抗R11(R13)には、これらの抵抗を流れる電流を一定にする定電流回路4a(4b)が接続されるとともに、定電流回路4a(4b)の駆動を制御する制御信号発生回路6a(6b)が設けられる。また電流制限抵抗R12(R14)と定電流回路4a(4b)の間には、定電流回路4a(4b)に流れる電流を2段階に切り替えるために第2のトランジスタ5a(5b)を有するスイッチ回路5a(5b)が接続されている。
【0025】
(定電流回路の構成)
定電流回路4aは、負荷から供給される電流i1が変化しても常に一定のブレーキ電流iaが流れるようにするために、第1のトランジスタM11と、基準抵抗Raを有するとともに、基準抵抗Raにかかる電圧を入力電圧に比例した電圧となるように第1のトランジスタM11のゲート電圧を制御するためにオペアンプOP11を含む差動増幅回路40aを有する。またオペアンプOP11の反転入力端子に例えばコンデンサC1を接続して位相補償(発振防止)を行うようにしている。
【0026】
定電流回路4bは、定電流回路4aと同様に、第1のトランジスタM13と、基準抵抗Rbを有するとともに、基準抵抗Rbにかかる電圧を入力電圧に比例した電圧となるようにトランジスタM13のゲート電圧を制御するためにオペアンプOP12を含む差動増幅回路40bを有する。またオペアンプOP12の反転入力端子に例えばコンデンサC2を接続して位相補償(発振防止)を行うようにしている。基準抵抗Ra(Rb)は、一端が接地されかつ他端が制御信号との比較照合のためにオペアンプOP11(OP12)に負帰還されている。
【0027】
本発明においては、第1及び第2のトランジスタM11〜14としてnチャンネル型パワーMOSFETを使用することが好ましい。このMOSFETを使用することにより、ドレイン電流とソース電流が高い精度で一致するので、高い定電流精度が得られるとともに、スイッチング時のピーク電力に対する安全動作領域を広く取ることができる。但しパワーMOSFETは1000pF程度の寄生容量をもつので、負荷インダクタンスとの共振を防止することが必要となる。そこで図4に示すようにオペアンプOP11(OP12)の反転入力端子に例えばコンデンサC1(C2)を接続して位相補償を行うことが好ましい。
【0028】
(スイッチ回路)
ブレーキ電流を広い範囲で調整するために、電流制限抵抗R12(R14)にも上記の定電流回路を接続することは可能であるが、定電流回路に含まれる第1のトランジスタの消費電力が増大する。特にパワーMOSFETはドレイン・ソース間に大きな電流が流れる。
【0029】
そこで、電流制限抵抗R12(R14)には、第2のトランジスタM12(M14)を有するスイッチ回路5a(5b)を接続し、各トランジスタに論理ゲート(インバータA1、A2)を含むベース駆動回路7を接続し、制御電源Vccから供給された直流電圧(例えば6〜10V)をADC(ADコンバータ)70によりディジタル信号[「1」(Hレベル)又は「0」(Lレベル)]に変換することにより、各トランジスタをオンオフできるように構成する。この回路構成により、第2のトランジスタ5a(5b)をオンさせると、定電流回路4a(4b)には回生電流i1(i3)に加えて回生電流i2(i4)が流入するので、少ない消費電力でもブレーキ電流ia(ib)を2段階に調整することができる。
【0030】
(ブレーキ回路の動作)
本実施の形態のブレーキ回路2の動作は、次の通りである。まず、第2のトランジスタM12(M14)のゲートにLレベル(例えば3V以下)の電圧を印加し、トランジスタッチM12(M14)をオフとした場合、上記の定電流回路5a(5b)においては、ソースに対してドレインが正電圧になるようにゲート電圧をスレショールド電圧よりも高い正電圧を加えることで、ドレイン−ソース間が導通し(オン状態)、ゲート−ソース間にかかる電圧によりドレイン−ソース間電圧が変化して、電圧制御電流源として作用する。ここで負荷からのブレーキ電流が変動しても入力信号に比例した電流を出力するために、基準抵抗Ra(Rb)にかかる電圧を入力電圧に比例した値となるように第1のトランジスタを制御する。また反転増幅形式の負帰還を行うので、入力信号が負の領域において、基準抵抗Ra(Rb)に比例した電流が電流制限抵抗R11(R13)を流れる。したがって定電流回路4a(4b)を流れる電流がブレーキ電流ia(ib)となる。
【0031】
次いで第2のトランジスタM12(M14)のゲートにHレベル(例えば5V以上)の電圧を印加することにより、第2のトランジスタM12(M14)はターンオンするので、電流制限抵抗R12(R14)を流れる電流i2(i4)が定電流回路4a(4b)の基準抵抗Ra(Rb)に流入する。したがってブレーキ電流ia(ib)が増加する。したがって第2のトランジスタM12(M14)を選択的にオン又はオフすることにより、ブレーキ電流を調整することができる。
【0032】
(ステージバランスの調整)
ステージバランスは、レーザ干渉計などによりキャリッジの浮上量を監視し、その出力信号に基づいて、例えば、図1及び2においてリニアモータ150a側にキャリッジ140が傾いた場合には、リニアモータ150aのブレーキ電流が小さくなるように、電流制限抵抗を流れる電流を調整すればよい。これにより、ステージを正常な姿勢を保持した状態でリニアモータを所定位置に位置決めすることができる。このようにステージを駆動する例えば一対のリニアモータに加えられる制動力を、個別に(リニアモータのドライバとは無関係に)調整することにより、ステージに機械的なアンバランスが生じた場合でも、ステージにかかる機械的なストレスを軽減することができる。
【0033】
[ブレーキ回路例2]
本発明のブレーキ回路を2軸のステージに適用する場合は、図5に示す構成とすることもできる。
【0034】
このブレーキ回路2は、回生電圧源VHV(負荷から供給される電流を3相全波整流して得られる直流電圧に相当)から供給されるブレーキ電流を可変調整できるようにするために、電流制限抵抗R、R8と直列に接続された定電流回路4a、4bと、制御信号(推力分配指令)を生成する制御信号発生回路6a、6bを有する。
【0035】
定電流回路4aは、電流制限抵抗Rと、一端が接地されかつ他端が制御信号との比較照合のために負帰還された基準抵抗R10との中間に駆動用トランジスタM0を設けたものである。この定電流回路4aは、反転増幅形式の負帰還を行い、入力信号が負の領域において、基準抵抗に比例した電流が電流制限抵抗Rを矢印方向に流れるように構成される。またトランジスタM0としてnチャンネル型パワーMOSFETを使用するとともに、オペアンプOP0の反転入力端子にコンデンサCを接続して位相補償(発振防止)を行うようにしている。
【0036】
定電流回路4bは、電流制限抵抗R2と、一端が接地されかつ他端が制御信号との比較照合のために負帰還された基準抵抗R1との中間に駆動用トランジスタMを設けたものである。この定電流回路4bも、反転増幅形式の負帰還を行い、入力信号が負の領域において、基準抵抗に比例した電流が電流制限抵抗R2を矢印方向に流れるように構成される。また駆動用トランジスタMとしてnチャンネル型パワーMOSFETを使用するとともに、オペアンプOP1の反転入力端子に例えばコンデンサC0を接続して発振防止のための位相補償を行うようにしている。
【0037】
差動増幅回路6aは、ゲインを下げて出力のオーバーフローを防止するために抵抗R10が負帰還接続されたオペアンプOPと、反転入力端子に接続された抵抗R11と、非反転入力端子に接続された抵抗R4を含み、正のバイアス電圧V0と負のバイアス電圧V2の差を増幅して定電流回路4aに制御信号を出力するように構成される。反転増幅回路6bは、ゲインを下げて出力のオーバーフローを防止するために抵抗R3が負帰還接続されたオペアンプOP3と、反転入力端子に接続された抵抗R5を含み、入力電圧を反転増幅して、定電流回路4bに制御信号を出力するように構成される。またV0、V1、V2、V3、V4は、オペアンプOP、OP2のバイアス電源を示し、VAm、VAm0は電流計を示す。
【0038】
上記の構成を有するブレーキ回路2は、図4と同様の動作で、ブレーキ電流を外部から制御することができるので、その説明を省略する。
【0039】
(ブレーキ電流の波形)
図5に示すブレーキ回路において、推力分配指令を±10Vの振幅を有する正弦波電流とした場合、図示を省略するが、ブレーキ電流VAm、VAm0はいずれも推力分配指令に対して位相が同じ正弦波電流であり、ブレーキ電流を制御信号に対応した電流値に調整できることが確認された。ここで、抵抗値及びコンデンサ容量を例えば、R0=R1=1Ω、R=R2=R6=R8=66Ω、R3=250Ω、R4=R5=R11=10KΩ、R10=2.5Ω、C=C0=100pFに設定すればよい。
【0040】
上述したように本発明のブレーキ回路は、アナログ信号で作動するトランジスタを有する定電流回路と、ディジタル信号で作動するトランジスタを有するスイッチ回路を組合わせることにより、スイッチング動作時の消費電力を低減することができしかもリニアモータの制動力を外部(リニアモータの制御回路から電気的に独立した回路)から制御することが可能となる。したがってエア浮上型ステージにおいて、ステージの重心が一方のリニアモータ側にずれた場合でも、ステージのねじれに起因する機械的なストレスを軽減することができる。
【0041】
本発明のブレーキ回路は、図1に示すような複数軸のステージに限らず、単軸のステージに使用することが可能であり、その場合にも、リニアモータの制動力を外部から制御できるので、非常停止時にステージに作用する機械的なストレスを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】XYステージを示す平面図である。
【図2】図1をA方向からみた矢視図である。
【図3】本発明のブレーキ回路を備えたリニアモータの駆動回路を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るブレーキ回路を示す回路図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るブレーキ回路を示す回路図である。
【図6】従来の駆動回路を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1:負荷、2:ブレーキ回路、20:全波整流回路、3、R11、R12、R13、R14:電流制限抵抗、4、4a、4b:定電流回路、5、5a、5b:スイッチ回路、6、6a、6b:制御信号発生回路、7:ベース駆動回路、70:ADコンバータ、M11、M12、M13、M14:第1のトランジスタ、M12、M14:第2のトランジスタ、OP11、OP12:オペアンプ、Ra、Rb:基準抵抗、A1、A2:インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアモータの負荷に並列に接続された3相全波整流回路と、前記3相全波整流回路から出力されるブレーキ電流を制限する電流制限抵抗と、前記電流制限抵抗に接続された第1のトランジスタと前記第1のトランジスタに制御信号を出力する制御信号発生回路を有する定電流回路と、前記定電流回路に流れる電流を2段階に調整する第2のトランジスタを有するスイッチ回路と、前記第2のトランジスタをオンオフさせるベース駆動回路とを有することを特徴とするリニアモータ用ブレーキ回路。
【請求項2】
前記定電流回路は、前記第1のトランジスタのゲート電圧を制御するオペアンプを含む反転増幅回路と、前記オペアンプの基準電圧を与える基準抵抗を有するとともに、前記制御信号発生回路は、指令電圧を増幅して制御信号を生成する演算回路を有し、前記ベース駆動回路は前記第2のトランジスタのゲートを駆動するインバータを有することを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ用ブレーキ回路。
【請求項3】
前記第1のトランジスタ及び前記第2のトランジスタとしてnチャンネル型パワーMOSFETを使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のリニアモータ用ブレーキ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−303395(P2009−303395A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155477(P2008−155477)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(393027383)NEOMAXエンジニアリング株式会社 (46)
【Fターム(参考)】