説明

リング塗布装置

【課題】被塗布体の周面に、ムラなく安定して塗布できるリング塗布装置を実現する。
【解決手段】塗布ヘッドHのリング吐出口Nを開閉自在に構成するために、伸縮部材2によって連結された上下のリング1a、1bの間にリング吐出口Nを形成し、上方のリング1bを内蔵シリンダ5のピストン4に接続する。塗布ヘッドHを上下動させる移動手段及び塗液供給手段に連動して、内蔵シリンダ5を駆動しリング吐出口Nを開閉することで、被塗布体Wの周面の所望の位置に塗膜を安定して形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の電子写真装置に使用される現象ローラ等、柱形状又は筒形状の被塗布体や、塗布時に柱状に位置決めされるベルト形状の被塗布体の周面に塗液を塗布するためのリング塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の電子写真装置においては、芯金の周囲にゴム状弾性体を形成しさらにゴム状弾性体の表面(周面)に目的に応じた被膜を形成したローラとして、現像ローラ、帯電ローラ、加圧ローラが用いられる。また、金属の円筒体表面に有機感光体等の被膜を形成した感光ドラムや、ベルト基材にトナー離型性を付与する塗膜を形成した転写ベルト等がある。これら電子写真装置用部材は、電子写真装置のカラー化、画像の高精細化等の進展により高品質化と併せて低コスト化の要求が強くなっている。
【0003】
従来から、柱形状等の部材の塗布装置として、塗布ヘッドのリング吐出口から塗液を吐出しながら被塗布体を軸方向に相対移動させることにより、被塗布体の表面に塗液を塗布する、いわゆるリング塗布方法が知られている。この方法は、被塗布体を塗液に浸漬しその後所定の速度で引上げる浸漬塗布法に比較して、簡便で小型な装置で塗布可能なため数多く提案されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1では、被塗布物であるドラムの塗布において、ドラムの外周面に可撓性を有する円環板状のブレードの内周縁を密着させてドラムの軸方向に摺動させ、ブレードを底面として収納した感光液をドラムの外周面に塗布する。この場合は、ドラムと同外径のスペーサでドラムの上下を挟持し、ブレード部をドラムが通過した後もブレード部がスペーサ部で停止するため塗液が漏れることはない。
【0005】
特許文献2では、リング状の吐出口(リング吐出口)から吐出された塗液が液スライド面に沿って流下し、被塗布体に至り塗布する塗布装置が開示されている。また、逆にリング状の吐出口を1〜30°上向き傾斜させて塗布する構成も知られている。塗布液は、塗布液供給パイプから環状の塗布液分配室に法線方向から供給される。
【特許文献1】特開昭61−025662号公報
【特許文献2】特開昭58−189061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、スペーサを塗布ヘッドから取外すと塗液が漏れるため、本来塗布装置には必要のないスペーサを使用している。スペーサは塗布作業の度に塗液が付着するため通常は使い捨てにされ大きなコストアップ要因となる。また、塗布中のブレードはドラム表面を摺動するためブレードが振動し、塗液液面が波打ち、その結果、ドラム表面に細かな凹凸が発生する場合がある。
【0007】
特許文献2の場合も同様に、被塗布体を取外すと液スライド面上の塗液を止められず、特許文献1と同様の対策を要する。また、リング状の吐出口を1〜30°上向きに傾斜させる構成では、特許文献2の構成に比較して塗液の落下を低減することはできるが、塗液の粘度によっては落下を避けることができない。落下が避けられたとしても、塗布開始端及び塗布終端での塗液供給の制御は塗布ヘッドへの塗液の供給を停止するだけであり、被塗布体と塗液間に生じる被塗布体への塗液の濡れ性や、塗液の表面張力等の微妙な変化により、膜厚のバラツキが生じる。この現象は、特に塗布終端で顕著に現れていた。また、特に塗布終端での液切れが悪く、同外径の被塗布体の全長に渡り塗布できても、所望の位置に部分的に安定して塗布することが困難であった。さらに、塗液は塗布ヘッドに法線方向から供給されるため、塗液の流れムラや塗液の充填剤等の配向ムラによる塗布ムラが発生する場合があった。
【0008】
また、通常塗布は希釈剤で希釈した塗料を被塗布体に塗布し、希釈剤を揮発させ塗料を乾燥させて塗布が行われるが、塗布ヘッドのリング吐出口近傍の塗液との接液部も乾燥し、塗液の粘度上昇または硬化が進行し塗布の弊害となる。このため、塗布ヘッドの清掃が定期的に必要となるが、従来例ではリング吐出口が開いたままであるため、塗布ヘッドの清掃時に塗布ヘッド内に洗浄剤が進入する。このため、一定時間使用後に清掃済の塗布ヘッドに交換する等の煩雑な作業に長時間を要していた。
【0009】
本発明は、上記従来の技術が有していた未解決の課題を解決するものであり、スペーサを使用せず、しかも被塗布体の所望の位置に、厚みムラを生じることなく安定して塗布することのできるリング塗布装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のリング塗布装置は、リング吐出口から塗液を吐出しながら前記リング吐出口に対して被塗布体を相対移動させることにより、前記被塗布体の周面に塗液を塗布するリング塗布装置において、前記リング吐出口を形成する一対のリング部材と、前記一対のリング部材を互に連結する伸縮部材と、前記一対のリング部材の少くとも一方を軸方向に移動させ、前記一対のリング部材を互に離間・接近させることで前記リング吐出口を開閉する吐出口開閉手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
塗液の供給停止と連動してリング吐出口を閉じることで、塗液の吐出を停止できるため、スペーサ等を用いなくても、塗液の洩れなく被塗布体の入れ替えが可能となる。また、被塗布体の塗布開始位置から塗布終端に至るまで凹凸の無い平滑な塗布が可能になる。
【0012】
一対のリング部材の間に伸縮部材を介在させることで、摺動部を接液させないでリング吐出口を開閉可能であるため、塗液が摺動部で固化せず摺動カスで塗液を汚染することもなく、異物のない長時間の塗布を安定して行うことができる。その結果、塗液の流れムラや、塗液の充填剤等の配向ムラによる塗布ムラもない均一な塗布が可能となる。
【0013】
また、被塗布体の任意の位置に液切れよく塗布することが可能となる。
【0014】
このようなリング塗布装置を用いることで、均質な塗膜を有する電子写真装置用部材の製造が可能となる。
【0015】
また、リング吐出口を閉じることで、洗浄剤を使用して簡便かつ短時間で清掃することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、リング塗布装置の塗布ヘッドHは、一対のリング部材であるリング1a、1bの間に、被塗布体Wの周面に対向するリング吐出口Nを形成する。リング1a、1bは、伸縮部材2及び塗液収納部材3を介して、軸方向に相対移動自在に連結される。上側のリング1bは吐出口開閉手段であるピストン4と一体であり、内蔵シリンダ5に供給される圧縮空気によって、リング1bを軸方向へ移動させる。塗液収納部材3は塗液供給口7と、塗布ヘッドHの中心軸に対して同心位置に配設された2条の環状の配液溝8a、8bと、を有し、両配液溝8a、8bの間には塗液の流路面積を絞った絞り部9が形成されている。内側の配液溝8bの内側に、リング吐出口Nを構成する一方のリング1aがあり、これに対向して他方のリング1bが配置され、リング1bと塗液収納部材3との間に伸縮部材2が配置される。リング1bは内蔵シリンダ5のピストン4に連結され、給排気口5a、5bに圧縮空気を給排気することで軸方向に駆動される。これによって、図2に示すようにリング1a、1bを互いに離間・接近させ、リング吐出口Nを開閉する。塗液供給口7は外側の配液溝8aの底部に配設され、配液溝8aの接線方向に開口する。
【0017】
ここで、配液溝8a、8bは2条としたが、2条以上でもよい。また、塗液の流れムラや塗液の充填材の配向等の弊害が生じない場合は一条でもよい。
【0018】
吐出口開閉手段として内蔵シリンダ5を用いたが、外付空圧シリンダ、ピエゾアクチュエータ、リニアモータ、超音波モータ、サーボモータとボールネジの組合せ等を用いて、リング1a、1bの少くとも一方を軸方向に駆動できる構成であればよい。
【0019】
伸縮部材2は図3に示すダイアフラム2aを用いたが、ベローズ2bや、ゴム状弾性体2cでもよい。また、塗液との接液部において摺動機構を有さずにヘッドの軸方向に変形できれば、他の部材を用いてもよい。なお、塗液供給口7の配液溝に対する接線方向とは、図4に示すように、塗液供給口7が配液溝8aとの合流点Pにおいて接線方向であればよい。また、塗液供給口7は直線状に限らず、破線で示すように円弧状に接続してもよい。
【0020】
位置検出センサ10は、塗布ヘッドHの被塗布体Wの入口側に一体的に設置され、被塗布体Wの軸方向の塗布開始位置と塗布終了位置の基準を検出するもので、フォトインターラプタ、CCDラインセンサ等が使用される。
【0021】
図5は、リング塗布装置の全体図である。被塗布体Wは軸受11により被塗布体Wの軸心がスライドユニット(移動手段)12の移動体12aの移動方向と平行になるように装着される。塗布ヘッドHは、スライドユニット12の移動体12aに、被塗布体Wの軸心と合致するように配置される。ここで、軸受11が被塗布体Wの両端を把持する構成を示したが、何れか一端を把持してもよい。また、スライドユニット12は、直線移動可能で位置及び速度制御機構を具備する一軸NC装置であり、駆動機構としてサーボモータとボールネジ、リニアモータ等が使用される。また、被塗布体Wの塗布開始及び塗布終端位置の基準を検出するのに位置検出センサ10を使用したが、塗布開始及び塗布終端位置が安定するならば、他の方法を用いることもできる。例えば、スライドユニット12の移動体12aの位置を示すリニアエンコーダや、サーボモータ軸に配置されるロータリーエンコーダ等の位置情報を使用してもよい。
【0022】
本実施形態によれば、塗布ヘッドHのリング吐出口Nを開閉自在にしたため、被塗布体Wの直近での塗液の吐出又は停止が可能になった。また、被塗布体Wの軸方向の位置を検出する位置検出センサ10に接続された制御手段により、リング吐出口Hと被塗布体Wの軸方向の相対位置に応じて、リング吐出口Nに塗液を供給する塗液供給手段、吐出口開閉手段及び移動手段を互に連動させて制御する。これによって、被塗布体Wの軸方向の位置、特に塗布開始及び塗布終端近傍の不安定な塗布場所での精密な塗布を可能にする。
【0023】
また、伸縮部材2が、ダイアフラム、ベローズ又はゴム状弾性体のいずれかであれば、伸縮部材2と塗液との接液部において摺動部を有しておらず、したがって塗液が摺動部に進入することもない。また、塗液供給口7を外側の配液溝8aの接線方向に配置すれば、塗液は環状の配液溝8aの接線方向から供給されて配液溝8a全体に広がるため、塗液が配液溝8aの法線方向から供給される場合に比較して塗液の流れムラが発生しない。
【0024】
また、塗布ヘッドHのリング吐出口Nの近傍を清掃する際にリング吐出口Nを閉じることで、清掃時の洗浄剤がリング吐出口Nから塗布ヘッドH内に侵入するのを防ぐことができる。
【0025】
次に、塗液の流路を説明する。塗液は、塗液供給手段により配管を介して塗布ヘッドHの塗液供給口7に供給され、外側の配液溝8aに圧送される。塗液供給口7は配液溝8aに対して接線方向に配置され、外側の配液溝8aと内側の配液溝8bの間には絞り部9が形成されている。塗布ヘッドHの軸心方向への流動抵抗が大きいため、先ず外側の配液溝8aに沿って流れ、次に配液溝8a内を上昇し、絞り部9を経由して内側の配液溝8bに至る。配液溝8b内でさらに周方向に塗液を流すことで、リング吐出口Nに到達した時点で塗液の流れは塗布ヘッドHの軸心方向の均一な流れになる。
【0026】
これに対して、塗液供給口7を外側の配液溝8aに法線方向に設置した場合は、塗液は配液溝8aの内側の壁に衝突し、環状に広がる前に軸心方向に流れて、リング吐出口Nの近傍で塗液の流れムラが発生する。
【0027】
リング吐出口Nは、被塗布体Wに相似形で被塗布体Wとの間に全周に亘り均一な隙間を形成する。ここで、塗液供給口7は1個に限らず、同一周上に等間隔に複数配置してもよい。
【0028】
次に、塗布動作を説明する。塗布開始前、塗布ヘッドHは被塗布体Wの上部に位置し、塗液供給手段は停止し、図2の(b)に示すように、リング吐出口Nは閉じており、塗液の吐出を停止させた状態にある。次に、スライドユニット12のモータを起動し塗布ヘッドHを下方に移動させると、位置検出センサ10が被塗布体Wの塗布部位の上端を検出した際、被塗布体Wの塗布開始位置としてスライドユニット12の制御装置(制御手段)に記憶する。
【0029】
次に、塗布ヘッドHが予め計測しておいた位置検出センサ10とリング吐出口N間の距離分だけ移動した時点で、塗布ヘッドHの移動速度を減速し、塗液供給手段を低速駆動する。同時に、図2の(a)に示すように、リング吐出口Nを開き塗液を低速で吐出し、被塗布体Wに接液させる。次に、塗液の吐出速度と塗布ヘッドHの移動速度を連動して増速し、所定の速度で被塗布体Wの中間部を塗布する。次に、位置検出センサ10が被塗布体Wの塗布終端位置を検知し、塗布終端位置までの所定の減速位置に達した際に塗液の吐出速度と塗布ヘッドHの移動速度を同じ比率で減速する。
【0030】
次に、塗布終端直前でリング吐出口Nを閉じて、余分な塗液の吐出を防止しつつ被塗布体Wとリング吐出口N間に残留する塗液を減量させる。このように、リング吐出口Nを閉じることで塗液の表面張力等で塗液が滲み出るのを防ぎ、また、被塗布体Wとリング吐出口N間の塗液残量も低減できるため、被塗布体Wを塗布ヘッドHから外しても塗液が洩れることがない。
【0031】
被塗布体Wの端部の塗布状態は凹凸のない良好な塗膜形状となる。ここで、塗布開始位置での塗布動作は、塗布ヘッドHの移動速度を減速する方法を記載したが、塗布ヘッドHを一時停止し塗液を少量塗布し被塗布体Wに塗液がなじむのを待って中間部を塗布することも、均質な塗膜形成に有効な方法である。
【0032】
また、使用により塗布ヘッドHのリング吐出口Nが塗液等で汚染した場合、塗液供給手段を停止しリング吐出口Nを閉じて、汚染部位にスプレーガンで溶剤(洗浄剤)を吹きつけ、その後圧縮空気で溶剤を飛ばし清掃を終了する。他の洗浄方法として、溶剤を吹き付けながらブラシで汚染部を擦ることも可能である。
【0033】
被塗布体Wは、塗布部が軸方向に略同一断面周形状を有する。特に断面形状が円形、長円形及び楕円形等、断面形状が局部的に小さい曲率半径を有しないものが好適である。
【0034】
被塗布体Wが電子写真装置用ローラの場合、図1に示すように、芯金Waの外周にシリコンゴム成形体Wb等の円筒状のゴム状弾性体を有する。ゴム状弾性体としては、シリコンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレン共重合体、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム等が用いられる。導電性付与剤としては電子導電剤としてカーボンブラック、導電性酸化チタン、イオン導電剤として四級アンモニューム塩、リチウム塩等が、その他充填材として炭酸カルシューム等が選択されローラ基層として物性、電気抵抗が調整される。
【0035】
感光ドラムの場合は、円筒状のアルミニウム管、ステンレス管等が、また中間転写ベルトの場合、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリフッ化ビリニデン製等のベルトが使用される。
【0036】
塗液としては、電子写真装置用ローラの場合、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリアミド、PTFE、PFA等のフッ素樹脂等の樹脂にカーボンブラック、導電性酸化チタン他の電子導電系又は四級アンモニュウム塩導電性付与剤、塗膜の表面粗さ調整のためのPMMA、ウレタン等の樹脂粒子その他を溶剤で溶解又は分散したもの等が適宜選択使用される。感光ドラムの場合、下地層としてポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等から選択される樹脂を溶媒に溶解分散したものがある。また、電荷発生層としてアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料等から選択されるものとバインダー樹脂のポリカーボネート、ポリエステル等から選択される樹脂を溶媒に溶解分散したものがある。また、電荷輸送層としてヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物等の電荷輸送材料をバインダーのポリカーボネート樹脂に分散したもの等が適宜選択される。また、転写ベルトの塗液として、フッ素ゴムラテックスに導電剤を分散し電気抵抗を調整したもの、ウレタン変性ポリエステル樹脂と導電剤等を溶媒に分散し電気抵抗を調整したもの等が使用される。
【実施例】
【0037】
図1ないし図5に示したリング塗布装置を用いて電子写真装置用部材である現像ローラを製造した。
【0038】
現像ローラは、表面にトナーを担持し、電子写真装置の感光ドラムに形成された静電潜像にトナーを供給しトナー像として現像するものである。
【0039】
図1に示す被塗布体Wとして、芯金Waの外周に液状シリコンゴム(商品名:DY35−118A・B、東レ・ダウコーニング社製)を混合して成形型に注型し、加熱硬化、脱型、二次加熱した。その後、シリコンゴム成形体Wbの周面にエキシマUV照射装置(ハリソン東芝ライテック社製)にて172(nm)の波長のUV光を照射し塗液塗布の下地処理を施した。塗液は、ウレタン塗料(商品名:ニッポランN5033、日本ポリウレタン社製)を固形分濃度10%となるように、メチルエチルケトン(MEK)で希釈し、導電剤としてカーボンブラック(商品名:トーカブラック#7360SB、東海カーボン社製)を固形分に対し50重量部、十分に分散させた。これに、硬化剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製)をウレタン塗料(商品名:ニッポランN5033)に対し10重量部添加し攪拌し塗液を調製した。
【0040】
次に、被塗布体Wを図5の装置の軸受11にセットし、塗液を塗液供給手段の塗液タンクに投入し、スライドユニット12のサーボモータを起動した。被塗布体Wの塗布開始位置(シリコンゴム成形体Wbの上端部)を光学透過型のLED照明、CCDライセンサ(LS-7000:キーエンス社製)からなる位置検出センサ10で検出し、リング吐出口Nと塗布開始位置との差分を補正移動した。塗布開始位置で塗布ヘッドHの移動速度を微速の0.5(mm/sec)とし、同時に塗液供給手段を起動し、リング吐出口Nを開き微量吐出した。1.0秒経過後塗液が被塗布体Wの塗布開始位置の全周に馴染んだ後、1秒間で移動速度を20(mm/sec)に、塗液吐出量を移動速度の増速に応じて増量し、乾燥後の膜厚が端部を除き15(μm)になるようした。塗布終端20.5(mm)手前で塗布ヘッドHの移動速度を1秒間で0.5(mm/sec)に減速し、塗液吐出量を移動速度の減速に応じて減量し塗布終端位置0.5(mm)にて塗液供給手段を停止した。同時にリング吐出口Nを閉じて塗液の吐出を停止し被塗布体Wを通過させた。そして、風乾後100(℃)4時間加熱処理し現像ローラとした。ここで、塗布開始位置での塗布ヘッドHの移動速度を微速としたが、塗布ヘッドHの移動を停止し塗液を被塗布体Wに馴染ませてもよい。塗布終端の位置検出も塗布開始位置と同様に位置検出センサ10を使用する。
【0041】
これにより、図6の(a)に示すように被塗布体Wの端部Weにおいて局部的変化の少ない塗布が可能となった。塗布終了後、リング吐出口Nを閉じた状態で溶剤をリング吐出口Nに噴霧し洗浄したが、リング吐出口Nの貯液部に溶剤が浸入することもなく、さらに圧縮空気で溶剤を飛ばすことでリング吐出口N近傍の洗浄がなされ、塗布作業を支障なく再開できた。
【0042】
製造された現像ローラをトナーカートリッジ(商品名:EP−85、キヤノン社製)に組込み電子写真装置のレーザビームプリンタ(商品名:LBP−2510、キヤノン社製)に装填し、プリントしたところ、現像ローラ起因の画像欠陥はなかった。
【0043】
(比較例)
実施例と同一の材料、装置及び工程で、リング吐出口の閉操作のみを行わないで塗布を行った結果、図6の(b)に示すように局部的に塗膜に凹凸Wfが発生した。この現像ローラをトナーカートリッジ(商品名:EP−85、キヤノン社製)に組込み電子写真装置のレーザビームプリンタ(商品名:LBP−2510、キヤノン社製)に装填し、プリントしたところ、現像ローラの起因の画像欠陥が発生した。
【0044】
以上、現像ローラを例にリング塗布装置及び電子写真装置用部材の製造方法について説明したが、帯電ローラ、加圧ローラ、等のローラでも同様である。また、感光ドラムは、基材のアルミニウム管を図5の装置にセットし、下地層、電荷発生層、電荷輸送層を各層毎に順次塗布、乾燥工程を繰返すことで製造される。転写ベルトの場合は、2個の半円筒体の平面を対向させた治具の外側に被塗布体を挿入し、各半円筒体の平面を離反する方向に移動させることで転写ベルトの内面を一対の半円筒の外周に倣わせて長円形に皺や弛みが生じないように固定する。これを、図5の装置にセットし、塗布ヘッドのリング吐出口を、長円形の転写ベルトと相似形に作成することで、前述のローラと同様に塗布し、乾燥させることで転写ベルトを作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】一実施例によるリング塗布装置の主要部を示す部分断面図である。
【図2】リング吐出口の開閉動作を説明する図である。
【図3】伸縮部材を示す斜視図である。
【図4】塗液供給口と配液溝の相関を説明する図である。
【図5】リング塗布装置の全体を示す立面図である。
【図6】塗布端部の状態を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
1a、1b リング
2 伸縮部材
3 塗液収納部材
4 ピストン
5 内蔵シリンダ
5a、5b 給排気口
7 塗液供給口
8a、8b 配液溝
9 絞り部
10 位置検出センサ
11 軸受
12 スライドユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング吐出口から塗液を吐出しながら前記リング吐出口に対して被塗布体を相対移動させることにより、前記被塗布体の周面に塗液を塗布するリング塗布装置において、
前記リング吐出口を形成する一対のリング部材と、前記一対のリング部材を互に連結する伸縮部材と、前記一対のリング部材の少くとも一方を軸方向に移動させ、前記一対のリング部材を互に離間・接近させることで前記リング吐出口を開閉する吐出口開閉手段と、を備えたことを特徴とするリング塗布装置。
【請求項2】
塗液を前記リング吐出口へ供給する塗液供給手段と、前記リング吐出口に対して前記被塗布体を相対移動させる移動手段と、前記リング吐出口と前記被塗布体の相対位置に応じて、前記塗液供給手段と前記吐出口開閉手段とを互に連動させて制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項1記載のリング塗布装置。
【請求項3】
前記伸縮部材が、ダイアフラム、ベローズ又はゴム状弾性体を有することを特徴とする請求項1又は2記載のリング塗布装置。
【請求項4】
前記リング吐出口に対して同心位置に配設された配液溝と、前記配液溝の接線方向に開口する塗液供給口と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載のリング塗布装置。
【請求項5】
前記リング吐出口の近傍を清掃する際に、前記吐出口開閉手段によって前記リング吐出口を閉じることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のリング塗布装置。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項記載のリング塗布装置を用いて、電子写真装置用部材の周面に塗液を塗布する工程を有することを特徴とする電子写真装置用部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−221055(P2008−221055A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59394(P2007−59394)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】