説明

リン酸アルミニウムコーティング

アルミノホスフェート化合物及び組成物は、基体又は複合体膜として使用することができ、その被膜は、限定されることなく、平坦化、抗生物付着及び/又は抗菌特性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、仮出願番号60/436063及び60/436066(それぞれ2002年12月23日出願、ここにその全内容を参照として取り込む);先の仮出願60/398265(2002年7月24日出願)からの米国特許出願10/627194(2003年7月23日出願);先の仮出願60/403470(2002年8月14日出願)からの米国特許出願10/642069(2003年8月14日出願);先のPCT出願PCT/US01/41790(2001年8月20日出願)からの米国特許出願10/362869(2003年2月21日出願);及び出願09/644495(20008月23日出願)の継続出願として米国特許出願10/266832(2002年10月8日出願)及び米国特許6461415(2002年10月8日)として登録された出願の優先権を主張し、これらの全内容をここに参照として組み込む。
【0002】
米国政府は、AFOSR(空軍科学研究局)からの許可番号F49620-00-C-0022及びF49620-01-C-0014ならびにエネルギー省からのDE-FG02-OlER83149(それぞれアプライド・シン・フィルム・インクに対して)に準じてこの発明に対する特定の権利を有する。
【0003】
本発明は、被覆された表面の平坦化、酸化及び防腐を提供するための無機被膜を有する金属及び合金、セラミックならびにガラス表面の改良に関する。また、本発明は、限定されないが、脂肪族酸、オルガノシラン及びオリゴヌクレオチドのような生体分子を含む有機又は無機分子の付着のための1以上の反応性部位を与える固体支持体(例えば、ガラス)上の被膜に関する。安定した分子の付着は、いくつかの所望の機械的、光学的(第二高調波発生、蛍光等)、疎水性、親水性、摩擦学的、生物学的(抗菌)及び他の特性を、発明材料で被覆された固体支持体に与えることができる。また、本発明は、抗菌特性のような有用な特性を与えるために発明材料組成物を化学的に改良することに関する。
【背景技術】
【0004】
ニッケル系超合金、チタン−アルミニウム、ニオブ−アルミニウム、チタン−シリコン、モリブデン−シリコン−ボロン及び他の金属間合金を含む高性能合金は、それらの望ましい機械特性に起因して、高温での適用のために広範囲で使用されている。しかし、酸化又は過酷な環境におけるそれらの環境耐久性には制約があり、保護被膜を含む種々の表面改良技術が、それらの寿命及び/又は使用温度を広げるために用いられている。表面ピット、引っかき傷、孔隙又は他の異常な表面特徴(孔食又は隙間腐食としてより一般に知られている)の存在のために、これらの領域において、酸化又は腐食が助長され、ついには全表面を劣化させる。表面が適切に処理されている場合、例えば、アルミニウムを含む高性能合金は、さらなる酸化を制限する均一な保護アルミナスケールを形成するであろう。しかし、熱成長したスケールが不均一であったり、アルミニウム酸化物に加えて他の酸化物を含有する場合、保護は損なわれ、その合金は、高温で急速に劣化する。また、表面粒子境界接合部は、バルク組成物と比較して組成的に異なり、それら領域における酸化物スケールを、異なるように生じさせるかもしれないし、おそらく保護するに足りないかもしれない。従って、アルミニウム含有合金に対して、大部分がアルミナに富むスケール(より好ましくは純粋なアルミナスケール)の緩慢で安定な形成を可能にするであろう適切な表面改良法が求められている。
【0005】
同様の議論が、ボイラー、熱交換器、回収熱交換器、固体電解質型燃料電池用インターコネクト、自動車の触媒コンバータ及び当業者に明らかな他のものの用途に用いられるクロム系スチール及び他のクロム系合金にもあてはまる。これらの用途において、合金に、最小レベルのクロム含量を必要とする保護用クロミアスケールを形成することが好ましい。クロム含量が高くなると合金の価格がより高くなり、また、合金の他の重要な機械的、熱的及び電気的特性を損なわせることとなる。よって、クロム酸化物の緻密で均質な保護用スケールの形成を可能にするであろう、特に、低クロム含量の合金を実現し得る、クロム系合金及びスチールに対する保護用被膜が求められている。
【0006】
金属又は合金のハニカム構造が、触媒コンバータ、ラジエータ及び熱交換器ならびに熱防御用の宇宙船外部本体のような多くの用途で用いられている。米国特許第5411711号及び第5146743号では、とりわけ、自動車システムに対する金属箔触媒コンバータが議論されている。現在、合衆国で自動車の排気システムに用いられている大部分の触媒コンバータは、貴金属触媒が装填されたセラミックハニカム基体が用いられている。セラミックハニカムは、劣化することなく、熱い排気環境に耐えることができるために使用される。合金箔ハニカムは、重量及び導電性においてセラミックハニカムをしのぐ利点を与える。大部分の自動車公害は、一般にエンジンがスタートした後エンジンが冷たいときに発生する。低温では、触媒は、窒素の減少及び残留炭化水素の酸化に有効でない。この問題を軽減し、全体的に排気を減少させるために、合金箔触媒コンバータを抵抗的に加熱して、触媒を最適に機能させる温度に維持された触媒を確保することができる。しかし、これらの薄箔は、排気流で酸化及び腐食されやすい。箔は、特に酸化に感受性が高い。というのは本来の合金は非常に薄く、厚膜の酸化物スケールを積層することは、寸法変化及び機械的特性の変化を招くからである。この理由のために、高価な耐酸化性合金が必要とされる。箔の膜厚を実質的に増加させない薄膜の耐酸化性被膜は、酸化及び腐食を低減させるために有用であり、排気を減少させる抵抗加熱の使用を可能にしながら、あまり高価でない合金を使用することができる。合金箔の潜在的な用途となる他の用途は、次世代の再利用可能な、宇宙旅行の打ち上げロケット用の熱防御システムのためのものである。
【0007】
現在、アルミニウム及び鉄合金の腐食に対抗する多くの方法がある。それらは、塗装、電気メッキ、多層被膜、より耐食性の合金の使用、金属表面の陽極酸化処理及びクロメート処理を含む。これらのプロセスの多くは、環境に配慮したものでなく、現場を維持又は復旧することができず、高価であり、基体の相当な準備が必要であり、所要の長期の低保守保護を与えない。これまでの被膜に対する試みは、主として、塩腐食に対抗するために、比較的厚膜のコーティング(1から20ミル厚)を用いていた。アルミニウムの陽極酸化処理、ならびにアルミニウム及び鉄合金のクロメート化成被覆は、最も有効な技術であるが、双方は環境に配慮したものではなく、毒性化学物質の使用が必要である。腐食は、多くの場合、合金基体の表面欠陥領域に生じる。合金組成物におけるピット及び不均等性は、腐食を助長する。高強度アルミニウム合金は、Cu−含有金属間粒子の影響のため、特に、孔食されやすい傾向がある。合金微細構造におけるCuの不均等な分布は、孔食及び応力腐食割れに対する低い抵抗の主な原因となり得ることが示されている。機械特性を最適化するために、市販のアルミニウム合金で、不均一な微細構造が意図的に開発されているが、残念なことに、そのような微細構造は、供給する間に、アルミニウム合金に局所的な腐食を受けやすくし、水性表面仕上げプロセスを複雑にする。標準的な被覆システムでは、有機塗料によって被覆されたクロメート化成層を用いる。水分又は他の環境因子による腐食に対する、金属及び合金の短期間の防食は、現在有機層を用いることにより達成されている。時間がかかり、骨が折れる、これらの有機被膜は、金属及び合金等の加熱又は溶融のプロセスの前に、あるいは塗装及び他の表面改変のために、除去することが必要である。
【0008】
種々の用途で使用される多くの金属、合金及びセラミックは、多くの場合、機械的又は化学機械的研磨手段によって行われる滑らかな表面仕上げを必要とする。被覆された表面の安定化処理に加えて、加工又は表面改変中あるいは供給する間に、いかなる環境攻撃からもそれらを保護することが望まれる。一般に、アルミニウム又はクロミア膜の形成を伴う表面の陽極酸化が、表面の不動態化処理を行うためになされる。しかし、上述した方法は、費用がかかり、手間がかかり、有害物質を放出し、有害廃棄物を発生させるために、環境に対しても安全ではない。
【0009】
金属基体上にアモルファス窒化シリコンを成長させる物理的気相成長法(PVD)は、イオンビーム支援蒸着(IBAD)を用いて単結晶酸化マグネシウム膜の成長のために用いられる。それによって、成長は、電子ビーム蒸発、スパッタリング又は他のイオンビームを用いる他のPVD法によって誘導され、結晶学的整合をもたらす。同質の二軸組織を実現するために相当な厚膜(1000オングストローム以上)を成長させることが必要な、高度に研磨された多結晶金属又は合金基体(以下、金属基体と称する)上にイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を直接IBAD成長させることとは対照的に、この技術を用いることにより、酸化マグネシウムの二軸組織が、100オングストロームの膜厚にわたって実現される。IBADによる酸化マグネシウム膜は、強誘電体、超伝導体、圧電性膜又は他の類似の電子膜等の機能性酸化膜のさらなるヘテロエピタキシャル成長のための良好なテンプレートとしての役割を果たした。よって、IBADによるMgOアプローチは、アモルファスの中間層を介して(核形成又は接着層としても知られている)多結晶金属基体上に二軸に組織された又は単結晶膜を形成する、より迅速かつ経済的な方法としての役割を果たした。
【0010】
最近、イットリアが、高度に研磨された金属/合金基体上の窒化シリコンよりも一層良好なアモルファステンプレート層(PVDによって成長)としての役割を果たすことが示されている。特に、イットリア/IBADによるMgO
アプローチは、高温超伝導体(HTS)被覆伝導体として適する高品質なHTSの成長のための構造を証明するために用いられた。このアプローチの特別な不利点は、以下のようである。高価な(真空蒸着法)低堆積速度法がイットリアアモルファス層形成に必要であり、薄いイットリア層の使用は、超伝導体層へ拡散する酸素及び他の金属の拡散に対する適当な拡散障壁にならない。よって、別個の拡散障壁層をさらに必要とし(現在、ルテニウム酸ストロンチウムが拡散障壁として用いられている)、イットリアの堆積前に、機械的又は電気的研磨法によって、基体粗さを40オングストローム未満(好ましくは10オングストローム未満)に調整することを必要とする。よって、イットリア及び窒化シリコン、あるいは多機能であり、良好に機能し、簡便な堆積方法を用いて低コストで堆積することができる他の層を置き換えるために、代替材料及び関連薄膜プロセス(好ましくは、非真空、低コスト及び高堆積速度)の要求がある。
【0011】
低摩擦表面は、ベアリング、ベアリングレース及びギアを含む、多くの用途で要求されている。低摩擦表面は、被膜として低摩擦材料を堆積することによって、または基体の表面粗さを全体的に低減させることによって与えることができる。金属及びセラミック部品の表面仕上げは機械的研磨によって改善することができるが、表面に含まれるピット及び欠陥は、いずれの標準的な研磨技術によっても効果的に除去することはできない。低表面エネルギーを示し、適当な熱及び微細構造安定性を有する気密なカバレッジを与える非常に薄膜のアモルファス膜の堆積は、低摩擦表面を維持することにおいて有益であるかもしれない。それによって、金属表面上の欠陥は有効に密閉される。
【0012】
船の船体の生物付着物は、スライム、藻及びバクテリアのような微生物、ならびに船の船体に付着するフジツボ、ムラサキイガイ、ハマグリおよびカキのような微生物によってもたらされる。付着物は船体における抗力を増大させ、船速を低減させ、場合によっては、燃料経済性を著しく減少させる。見込みのある新生の技術の一つは、無毒な「腐敗放出」被膜である。これらの被膜は、微生物にとって最も弱い誘引力を備えた表面においては、汚れることが遅く、表面から遊離させる労力を最小量しかおそらく必要としないという仮説に基づく。生物付着物は、タンパク質の接着物を分泌することによって表面に付着する。低表面エネルギーを有する材料は、低い接着強度を与え、乏しい付着をもたらし、汚染物の除去を容易にする。このアプローチの可能性は、フッ素化ポリマー、エポキシ系及びシリコーン系被膜を使用する研究者によって確立されている。これらの被膜は腐敗するが、腐敗するバイオマスを、流れの速い水によって容易に除去することができる。しかし、これらポリマー系被膜は熱及び紫外線に対する抵抗に制限がある。従って、滑らかで、低摩擦表面特性を有する無機被膜が強く望まれている。
【0013】
マイクロアレイは、立体的に配列され、固体支持体の表面に安定に付着したオリゴヌクレオチドのような生体分子のアレイである。マイクロアレイ技術は、大規模な遺伝子の並行分析のために用いられ、生物医学的用途の広範囲において用いられる一般的な遺伝子分析ツールとして浮上している。DNAチップの市販の製品が多くの企業によって提供されており、一方、同時に、医学の研究者は、医学の分野における多くの研究分野の全域で、刺激的な進展を報告している。マイクロアレイ技術におけるこれらの進展は、世界中の公衆衛生における長年の問題を解決するために非常にすばらしい展望を与え、バイオテロリズムの近年の脅威を抑制するために新たな道を提供する。
【0014】
生体分子のマイクロアレイを製造するための原点又は基本的な構築ブロックは、生物学的分子を固定又は移動不能にすることができる適当な固体テンプレート表面(固体支持体材料)である。いくつかの特許が、機能化シリケートガラス及び他の表面に対して、発行されている。また、非常に多くの他の表面被膜が開示されている。さらに、新規な固体支持体、例えば、核酸を移動不能にしたアルミノシリケートに対して、特許が与えられている。DNAマイクロアレイの特徴は、化学的な均質性、表面と生物分子との間の相互作用、表面粗さ、表面機能性の密度、表面官能部間の間隔、DNAハイブリッド化に対する影響の受けやすさ等のような表面特性によって決定される。現在の方法は、ソーダ石灰ガラスを使用しているが、それらは、長期的にみると劣化する傾向があり、表面化学が適当な有機付着物を許容するために調整されていない。有機リンカーが、DNA又は他の生体分子を基体表面に付着させるために使用されている。ポリリシンは、現在推奨されている被膜材料であり、当該分野で公知なように、スライドガラスのプレパラートのために使用されているいくつかのうちの一つである。しかし、ポリリシン被覆スライドガラスは、安定性が乏しく、硬化サイクルが長時間にわたり、信頼性に乏しく、そのため、新たな表面手順において、マイクロアレイ技術の分野の急速な成長を支えることが、非常に必要である。例えば、ポリリシン被覆スライドは、硬化目的のために、塗布後、14日間保存することが必要とされ、酸化による劣化のために4ヶ月以内に使用しなければならない。一般に、ポリリシン被覆スライドの1バッチにおいて、いくつかが、不均一性又は不透明性のために不合格とされる。さらに、ハイブリッド化したマイクロアレイは、長期間保存することができない。ポリリシン被膜の紫外線下での安定性も懸念される。
【0015】
ポリリシンに代わる多くの代替被膜が、アミノシラン、エポキシ誘導体、アルデヒド及びその他を含み、研究されている。アミノシラン又はそれらの誘導体は、優れた安定性を示すが、それらの低い結合能が問題となっている。これらの制限の多くは、有機物への結合にとって、所望の無機表面化学が欠如していることが由来する。ソーダ石灰ガラス表面上の官能化された有機基は、わずかにざらざらした条件下でさえ、又は化学的に処理しても安定でなく、長期にわたると劣化するであろう。有機分子は、ソーダ石灰表面とごく弱く相互作用する。湿気又は他の条件下で、ナトリウムイオンは、ガラス表面に拡散し、有機分子と相互作用して劣化する。また、ホウ珪酸またはアルミニウムシリケートガラスも提案されているが、それらは有機物の吸着の理想的な表面化学を示さない。
【0016】
殺菌剤及び抗菌性化学物質は、通常、微生物の成長を根絶し、衛生状態を改善するために使用される。表面への微生物の付着は、付着した有機体の生物付着特性ならびにその化学組成及び表面粗さ等の表面の物理的特性のような表面特性によって影響される。カビのような菌類、酵母及び藻類は集団で目に見えるが、汚染及び結果として起こる基体の劣化がまだ明らかになっていないとき、それらを早期に除去することが有利であるかもしれない。高活性の洗浄化学物質は毒性があり、刺激があるかもしれず、繰り返しの塗布によって表面を劣化させ、生物活性システムを不活性化する。他の主な問題は、現在使用されている殺菌剤及び抗菌剤に抵抗がある微生物株の進化である。衛生状態の問題は、一連の食品加工、供給及びケータリング、健康及び医学体制、動物の畜産、水及び下水処理において、ならびに加熱、換気及び空調システムにおいて存在する表面への接触に対して、特に重大である。
【0017】
抗菌被膜の性能の要因は、耐久性、能力の保持力及び表面特性の最小限の劣化ならびに外観を含む。また、被膜は、熱、化学物質、溶媒、汚れ、引っかき傷及び水分を含む環境に対して抵抗を示さなければならない。それらは、好ましくは、無毒、無臭、平滑、非多孔質、洗浄が容易又は自浄式、無亀裂でなければならず、変色を防止し、良好に色彩を保持し、UV耐性であるべきである。いくつかの可能な新規技術がこれらの問題を解決するために開発されている。これらは、アルブミン親和性表面、ブルーデキストランでの表面改質、多孔質マトリクス中への銀イオンの取り込み、酸化チタン光触媒、シリコーン四級アンモニウム化合物及びアルカリ溶解性又は剥ぎ取り可能及びリサイクル可能膜である犠牲被膜を含む。また、多層膜、フッ素/シリコン含有樹脂、付加的な被膜又は添加物が取り込まれた乾燥塗膜、洗浄剤活性剤の取り込み、タンデム型、同調紫外線、超音波及びオゾンの表面ならびに洗浄システムの設計も価値があるかもしれない。
【0018】
これら抗菌技術のうち、研究者及び企業によって、銀イオンを取り込んだ被膜及び基体に新たな興味がもたれている。いくつかの特許及び刊行物には、近年、ゼオライト、ポリマー、セラミックシート及び多価電解質膜のような銀イオンが組み込まれた基体の使用が記載されている。銀化合物は、何世紀にもわたって、それらの薬効特性を十分に引き出しており、毒性が低い有効な剤である。銀塩は有効な抗菌剤であるが、それらの使用は、表皮細胞及び汗腺に好ましからざる銀イオンの吸収をもたらす。銀イオンの組織への吸収の可能性を低減するために、銀イオンは安定に基体に組み込まれることが必要である。
【0019】
疎水作用は、病原体に対する防御にとって重要な役割を果たす。疎水性表面の望ましくない表面エネルギーに加えて、微生物はまた、発芽及び成長に必要な水分を奪う。ほんの2、3の微生物は、水なしで生存することが知られている。よって、発明材料被覆表面に与えられた疎水特性は、微生物に対するさらなる防御とみなすことができる。発明材料被覆の殺菌及び疎水特性の双方の組み合わせ作用は、有害な微生物に対する防御の2通りの道として機能するであろう。疎水性層は、微生物の付着を防止し又は低減させ、容易な洗浄を助長するであろう。供給している間にこの疎水性層にダメージがもたらされた場合、第2の層に装填された抗菌剤が、微生物に対する防御の第2の道として機能するであろう。
【0020】
グラスファイバー絶縁体は、建築構造物において広範囲に使用されている。グラスファイバーは、有効な絶縁体であるが、水分に対して影響を受けやすく、微生物及びカビの成長拠点となるかもしれない。建築材料におけるカビ及び微生物の成長は、屋内の空気汚染の原因となり、建築物の住人に病気をもたらすかもしれない。グラスファイバー絶縁体の乾燥状態を維持するために、防水被膜が望まれる。グラスファイバーが乾燥している場合、生物学的成長を防止することができる。したがって、一実施形態における疎水性及び抗菌特性の双方の組み合わせは、このような状況及び他の状況において大きな助けとなるであろう。
【発明の開示】
【0021】
上記観点において、本発明の目的は、アルミノホスフェート化合物、組成物及び/又は関連複合体もしくは物品、それを用いる方法ならびに製造方法をともに提供することであり、よって、上記に概説されたものを含む従来技術の種々の欠陥及び欠点を解決する。本発明の一以上の観点はある目的に合致することができ、一方、一以上の他の観点は、他のある目的に合致することができることは当業者に理解されるであろう。それぞれの目的は、全てのその観点において、本発明の全ての観点に対して同等に適用されなくてもよい。そのようなものとして、以下の目的は本発明のいずれか1つの観点に関連する代替の見解とすることができる。
【0022】
本発明の目的について、ここで言及され、参照として引用される語句「発明材料」は、本発明の方法、複合体もしくは物品、及び/又はこれに関連する膜、層もしくは被膜と合わせて用いられるかもしれないように、あるいは別に以下に規定されるように、現存するアルミノホスフェート化合物又は組成物(Al:Pの化学量論の全有効範囲にわたる)のいずれかを意味すると理解されるであろう。そのような化合物又は組成物は、ここに記載されたように製造され、あるいは特徴づけられ、そのような化合物又は組成物は、それぞれ、リン酸アルミニウム化合物及び組成物としてその代わりに表現されるかもしれず、米国特許第6,036,762号及び第6,461,415号ならびに係属中の出願第10/627,194号及びPCT/US03/36976号(それぞれ2003年7月24日、2003年11月19日出願)、ならびに第10/642,069号及びPCT/US03/25542(2003年8月14日出願)(それぞれについて個々にその全内容を参照として取り込む。)に記載されたように、製造され、特徴付けられ及び/又は適用される。限定されることなく、ここ及び/又は上述した1以上の組み込まれた特許又は出願によって示されたように、発明材料は、アルミノホスフェート化合物、ならびに、炭素、珪素、金属、金属酸化物及び/又は他の金属イオン/塩(非酸化物を含む)のドーパント、粒子及び/又は含有物を含む組成物(モルベースで、アルミニウム含量がリンに対して化学量論、化学量論未満又は化学量論より大きいか否かにかかわらない)を包含することができる。本発明の材料の実施形態は、アプライド・シン・フィルム・インクから、Cerablakの商標で入手可能である。
【0023】
発明材料は、アルミノホスフェートを含み、アモルファスリン酸アルミニウムの固有の形態を生成する、特別に設計された前駆体溶液を用いて、基体上に薄膜として堆積することができる。Sambasivanらに付与された米国特許第6,036,762号及び第6,461,415号ならびに上に引用した特許出願は、前駆体の合成および化学、特性に関する詳細を提供し、他のプロセスの詳細を提供する。発明材料で被覆された表面の種々の追加又は改変は、本発明の意図した実施形態であり、その実施例を以下に示す。
【0024】
本発明の目的の一つは、簡便なディップ、スピン、噴霧、ブラシ又は流し被覆プロセスを用いて、薄く、気密な、微細構造的に緻密で、均質及び透明な被膜として発明材料被膜を堆積する方法を提供することである。
【0025】
本発明の目的は、室温及び高温で加工及び供給する間に、酸化及び腐食から金属及び合金を不動態化し、かつ保護するために発明材料被膜を用いることである。
本発明の他の目的は、他の被覆材料と併せて本発明材料を用いることである。例えば、銅−クロム合金被膜とともに、発明材料被膜を、クロム含量を少なくした高度銅−ニオブ合金の酸化に対する保護のために用いることができる。
【0026】
本発明のさらなる目的は、得られた表面の平滑性が、例えば、良好な磨耗特性を与えなければならない表面に低摩擦性を与えるために有益となるように、金属及び合金表面を平坦化することである。また、平坦な表面は、発明材料被膜の上、上方、上面に他の機能層をさらに堆積するために適しているかもしれず、よって、その基体は、その後の層の形成中に保護され、平坦な表面により高品質な上層を与える。また、被膜の平坦化効果によって、得られた平滑な表面は、海洋での利用のための付着物放出被膜としても有効である。
【0027】
本発明の他の目的は、金属、合金、セラミック又はガラス表面に塗布される発明材料被膜に、限定されないが、有機分子の追加層によって、疎水性、親水性、抗菌性、光学的、低摩擦、抗付着、容易な付着物のはがれ、機械的及び自己洗浄特性を含む追加的な機能を与えることができることである。実質的に多孔質でなく、非常に安定な平滑な無機膜及び追加の有機膜を有している金属及び合金、セラミックならびにガラスの表面の表面改質は、表面を多機能化し、保護の包括的な方法及び他の広範囲な適用を与えることができる。
【0028】
本発明の他の目的は、限定されないが、発明材料表面上のポリペプチド、ポリヌクレオチド又は核酸を含む分子のように、発明材料の膜又は構成部分に、生物分子及び他の有機分子を特異的に付着又は結合させることであり、それは好ましくは固体支持体上の被膜として得られる。
【0029】
本発明の他の目的は、有機又は無機、あるいは、限定されないが、アルキルアミン、カルボン酸及びオルガノシランを含む分子を組み合わせた付加物で、発明材料被覆表面を調整することである。
【0030】
本発明の他の目的は、生物分子アレイ製造のために、発明材料表面に付着した有機リンカー分子を用いることである。本発明の他の目的は、発明材料層の上にマスク層を提供することであり、それは、化学的又は光化学的に、選択的に除去することができる。
【0031】
本発明の他の目的は、DNAハイブリダイゼーション分析を妨害する、固体基体中に存在する蛍光不純物を低減又はなくすことである。
本発明の他の目的は、ソーダ石灰ガラスのような基体中に存在するナトリウムイオンのような有害な種と付着した生物分子との相互作用のための障壁として、発明材料被膜を用いることである。
【0032】
本発明の他の目的は、例えば、適当な有機分子の選択的な付着によって、固体基体上に被覆された発明材料表面の疎水性を調整することである。これは、展布法でのDNAスポッティングのようなプロセスに有用であろう。
【0033】
本発明の他の目的は、シリコーン表面を発明材料で被覆することであり、これにより、DNAチップ技術を集積化することを可能にする。
本発明の他の目的は、生物分子アレイ用の汚れのない、安定した、耐久性のある固体支持体に対して適当な固体支持体を大量生産することである。
【0034】
本発明の他の目的は、固体基体上に被覆された発明材料表面に機能的に誘導されたDNA分子を付着させることである。
本発明の他の目的は、限定されないが、マイクロアレイに適する安定した、汚れのない、均質な、耐久性のある、堅い表面を製造するために適用されるスライドガラスを含む従来の固体基体を改変することである。
【0035】
本発明の他の目的は、基体または有機及び無機抗菌剤、特に限定されないが銀イオンの担体として発明材料を用いることである。抗菌剤は、また、発明材料マトリクス中に取り込むことができ、抗菌粉末として使用することができる。
【0036】
本発明の他の目的は、一実施形態において、低価格、耐久性、抗菌及び腐食低抗被覆材料の形成である。
他の目的は、適当な有機層の付着によってさらなる疎水特性を有する銀混合発明材料被覆表面の形成である。
【0037】
さらに本発明の他の目的は、高品質抗菌剤の取り込みのため、表面に大表面積を与える基体上の発明材料被膜に、多孔質上層を用いることである。多孔質層は、限定されないが、銀イオンのような抗菌剤を装填されるであろう。また、多孔質層は、例えば、持続的な抗菌活性のためにゆっくり放出することができる吸着ヒノキチオール、タンニン、ライソザイム、プロタミン又はソルビン酸のような選択的な有機化合物の取り込みによって機能化することができる。
【0038】
本発明の他の目的、特徴、利益及び利点は、この要旨及び種々の実施形態の記載から明らかであり、種々の腐食/酸化特性、抗菌、抗生物付着及び生物マイクロアレイ被膜、膜及び/又は適用の知識を有する当業者に容易に明らかになるであろう。そのような目的、特徴、利益及び利点は、添付の記載、実施例、データ、図面及びそれらから引き出される全ての合理的な推論の単独で又はここに取り込まれた文献を考慮して、ともに考慮することによって上記から明らかになるであろう。本発明のこれら及び他の目的、利点及び特徴は、以下のより十分に記載された発明の詳細を読むことによって当業者に明らかになるであろう。
【0039】
先行し、上述した及びここの他の部分で述べられた本発明の材料によれば、本発明は、一つには、表面粗さを低減するためにアルミノホスフェート化合物を用いる方法である。そのような方法は、(1)アルミノホスフェート化合物の前駆体を準備し、その前駆体は、液体媒体中に、アルミニウムイオン及びリン酸エステルを含み、(2)前駆体媒体を第1の表面粗さ値を有する基体に塗布し、及び(3)基体上に実質的にアモルファスなアルミノホスフェート化合物を提供するために十分な時間及び温度で、塗布された媒体を処理及び/又は加熱することを含む。前駆体媒体の塗布及びその後の処理は、ここならびに上述の組み込まれた文献においてに述べられたように、平坦化された基体表面を与え、そのような平坦化は、上述した第1の表面粗さ値と比較して、減少した第2の粗さ値によって決定することができる。参照として、いくつかの図面及びサポートする実施例を示す。好ましい実施形態では、表面粗さ値は、少なくとも約3倍(at least by about a factor of 3)減少させることができる。あるいは、そのような方法は、約0.2未満の摩擦係数の処理基板を与えることができる。
【0040】
アルミノホスフェート化合物に対する前駆体は、当業者によって理解されているように、1以上の技術を用いて基体に塗布することができる。ディップコートは、基体材料及び形状の広い範囲にわたる良好な作用で用いることができる。噴霧、流れコート及びスピンコートは、基体の選択によって、同等の作用で用いることができる。限定されることなく、本発明の方法又は複合体で併せて用いられる基体は、スチール、ニッケル系合金、超合金、チタン、チタン系合金、ニオブ、ニオブ系合金、モリブデン、モリブデン系合金、シリコン、酸化アルミニウム、エナメル、ムライト、ガラス、石英ガラス、シリカ系耐火物及びセラミック材料を含むことができる。同様に、説明の目的のために、限定されることなく、そのような基体、特に金属、合金又はセラミック材料を含むこれらは、ベアリング、ギア又は医療用インプラント構成部品を与えるために構成することができる。
【0041】
本発明の有用性をさらに証明するために、適切な基体を準備し、本発明のアルミノホスフェート化合物は、限定されないが、マグネシウム酸化物、イットリア及びイットリア安定化ジルコニアのような二軸で組織された構成部分をそれらの上に堆積することができる。本発明の手順及び/又は複合体のそのような実施形態では、格子整合及び/又は電磁構成部分をそのように組織された構成部分上に堆積することができる。この発明を認識する当業者によって理解されるように、そのような電磁構成部分は、超伝導のYBCOセラミック材料を含むことができる。
【0042】
また、一つには、本発明は、基体、実質的にアモルファスなアルミノホスフェート化合物及びアルミノホスフェート化合物に付着した有機成分を含む複合体である。一般に、アルミノホスフェート化合物は基体上に存在するが、任意に、基体上に堆積された他の構成部分上の上層又は被膜として提供してもよい。とにかく、ここの他の部分で述べたように、有機成分は、合成、臨床及び/又は診断の用途を有する化合物を含む。そのような生体分子は、限定されないが、蛋白、それらのアミノ酸残基、ポリペプチド、ポリヌクレオチド又はそれらの画分、成分又は残基から選択することができる。ここの他の部分で述べたように、そのような複合体及び関連手法は、DNA画分又は成分と結合、付着又は結合相互作用のために用いることができる。そのようなアルミノホスフェート化合物の特定の生体分子との連結又は付着は、直接であってもよいし、分子リンカー成分を介してもよい。ポリリシンを、この発明を認識する当業者に公知の他のリンカー成分を用いてもよい。そのような成分は、オルガノシラン化合物の範囲を含む。後者の例は、直接または合成改変によって、アルミノホスフェート化合物又はこの発明の組成物への生体分子の範囲の結合又は付着のために用いることができる二官能アミノシラン化合物を含む。
【0043】
また、一つには、本発明は、アルミノホスフェート化合物及び抗菌成分を含む、実質的にアモルファスな組成物を包含することができる。限定されることなく、抗菌成分は、銀、銅、亜鉛、鉄イオンから選択することができる。とにかく、そのような抗菌成分は、有効な濃度範囲でそのような組成物に組み込むことができる。しかし、所望の作用に応じて、抗菌剤対アルミノホスフェート化合物は、約0.1:1から約1:1の範囲とすることができる。ここの他の部分で述べたように、そのような組成物は、基体上に塗布又は堆積することができ、そのような複合体は、さらに、さらなる機能的な作用を与えるために、1以上の有機成分を含んでもよい。限定されることなく、そのような有機成分は、疎水性を高めるために、脂肪酸又はシラン化合物から選択することができる。あるいは、高められた作用は、抗菌作用を与えるために金属カチオンを及び疎水性を高めるために有機アニオンを取り込んで、洗浄剤又は界面活性剤成分の選択によって達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】金属又は合金標本上の表面欠陥及び粒界を密封するための微細構造上緻密で、気密な発明材料被膜の能力を示す概略図である。(a)は粒界を示し、(b)はピットを示し、(c)は表面の引っかき傷を示す。発明材料被膜はそのような欠陥を有効に封止する。
【図2】金属基体上のHTS膜の製造のための典型的な構成を示す。それぞれの層は、限定されないが、(a)インコネル、ステンレス鋼、I−624及びニッケルクロム合金を含む多結晶金属又は合金基体、(b)基体を不動態化および平坦化するための発明材料被膜、(c)IBADのMgO又はYSZ、(d)ホモエピタキシャルMgO又はYSZ、(e)CeO2及び(f)HTS層である。図2Aは、どのように発明材料が現行の構成に用いることができるかを示す。図2Bは、どのように発明材料が拡散層(d)の必要を低減又は消失するために用いることができるかを示す。
【図3】固体基体上に被覆された発明材料上の生体分子の固定化を示す概略図である。
【図4】304ステンレス鋼上に堆積された発明材料の良好な接着の、薄い、均質の、緻密な及び気密膜を示す透過電子顕微鏡の横断面図である。
【図5】発明材料の酸化防御能を示す、800℃の大気に100時間さらした後の被覆及び非被覆Ti−46合金の写真である。
【図6】550℃の大気に115時間さらした被覆及び非被覆ニッケル棒の写真である。非被覆サンプルに比較して被覆ニッケルの反射率がより高いことが容易に見られる。発明材料の被膜は、所望の酸化防御を与えるのみならず、被膜の気密特性が、硫黄、塩素、酸、塩及び水分のような雰囲気において種々の汚染から、供給中に環境攻撃から基体を保護する。
【図7】比較的粗い表面の発明材料の被膜の平坦化効果を示す概略図である。
【図8】比較写真は、大腸菌での抗菌感受性試験、つまり、(A)銀イオンを含んで被覆されたスライド、(B)対照サンプルであり、発明材料で被覆された及び抗菌銀イオンを保持していないスライドガラスでの成長阻害を示す。
【図9】ステンレス鋼サンプル上に被覆され、500℃で5分間硬化した発明材料の実施形態のかすめ角のフーリエ変換赤外線反射スペクトルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
上述したように、本発明は、高温で安定な、種々のアルミニウム対リン比を有するアルミノホスフェート化合物及び/又は組成物に関する。限定されることなく、アルミニウム対リンのモル比は、約0.5:1から約10:1の範囲とすることができ、より好ましくは約1:1から約4:1の範囲、最も好ましくは約1:1から約2:1の範囲である。発明材料の膜、層及び/又は構成部分は、簡便なディップ、塗装、噴霧又は流れコーティングプロセスによって、均質で、気密で、透明な薄膜を堆積する、高価でない化学的前駆体溶液を用いることが有効であり、そのような前駆体及び堆積の方法は、上述した特許及び出願の参考文献により詳しく記載されている。
【0046】
本発明材料は、a)酸化に対する優れた防御、b)安定な保護用の酸化物スケールの形成、c)暴露の早い段階での促進酸化を防止するような、合金表面における欠陥(ピットのような)に対する適当な気密性を与える(金属及び合金基体を被覆する発明材料の効果を概略的に示す図1参照)。これらのうち、最も重要で、革新的な特性は、理論に束縛されることを望まなければ、酸化の早い段階で、表面下での緻密で、連続的な、保護用の酸化物スケールの形成を促進する発明材料の能力である。緻密なクロミアに富むスケールが選択的に被覆された材料において形成される(非被覆標本での高い多孔質の鉄に富むスケールに比較して)というステンレス鋼における研究から明らかである。後者の場合、広範囲の酸化がその後のスケールの破砕で観察される。酸化物スケールの厚みにおける差異の大きさのオーダーを、被覆及び非被覆AUS304基体の試験片間で観察した。
【0047】
ニッケル系超合金及びチタン合金上の発明材料被膜は、タービン寿命を延ばし、故障を抑え、最小限のさらなるコストでより高い操作温度を可能にするかもしれない。合金箔上の発明材料被膜は酸化及び腐食を低減し、金属箔触媒コンバータでの適用を見出すかもしれない。さらに、発明材料の構成部分(例えば、膜)を、他の合金及び金属標本を酸化及び腐食から保護するために使用してもよい。コーティングプロセスは簡便で、拡張性があり、領域修復に適用できる。高温での酸化からの保護は、チタン合金、ニッケル系合金、スチール、鋳鉄及びインコネルを含む多くの合金基体で証明されている。
【0048】
供給条件中での酸化からの合金の保護に加えて、本発明材料は、加熱成形中の酸化から合金を保護するために使用することができる。金属及び合金は、時には、将来の使用用に特定の形状に加工するために加熱形成(強化又は表面焼入れ)される。保護のメカニズムは使用条件での保護と同様であるが、加熱処理は、比較的短く(数分から数時間)、被覆合金は、高温での使用を意図されるかもしれないし、意図されないかもしれない。
【0049】
透明な前駆体溶液を用いる被膜を堆積することに加えて、スラリー被膜を形成するために、粉末を作り、溶液に分散させてもよい。被膜は、次いで、透明溶液と同様に塗布される。また、粉末を基体上に溶射してもよい。発明材料の黒、灰色の種々の形状又は白粉末を顔料として用いてもよく、塗装メディウム中に分散し、被膜表面に用いてもよい。
【0050】
発明材料被膜は、多層被覆システムの一部として用いることができる。他の組成物の被膜を発明材料被膜の上又は下のいずれかに堆積してもよい。本発明の一実施形態の一例では、発明材料被膜を、合金基体と熱障壁被膜との間の酸化障壁として用いる。熱障壁被膜は、合金基体の温度を低減させるために使用されるが、顕著な酸化防御は示さない。発明材料の構成部分被膜は、基体の酸化を低減するために熱障壁被膜の下に適用することができる。
【0051】
発明材料は、機能的勾配構造を形成するために、あるいは腐食及び抗変色に対する保護能力を増加させるための厚い層を形成するために、各層における化学又は微細構造の変形を伴う所望の特性を調整するための多層として使用することができる。発明材料被膜は、実質的に低温ならびに高温で被覆基体の熱及び光反射率を保持又は改善するために使用することができる。
【0052】
発明材料によってもたらされた平坦化は、摩擦抵抗を要求するもの又は低摩擦表面を含む多くの適用のために有用であろう。加えて、滑らかなアモルファスの表面は、機能性を付加するために付加層の成長に対する(有機又はポリマーのあるいはセラミック材料の堆積された上層への良好な接着特性のために)テンプレートとしても機能することができる。例えば、アモルファステンプレート層は、電子工学への適用のために組織された膜の成長にとって望ましい。特に、二軸に組織された超伝導体膜は、長さが長い高温超伝導(HTS)テープにとって望ましい。いくつかの特許が、米国特許第6,383,989号及び第6,312,819号(参照としてここにそれぞれを取り込む)を含んで、金属/合金又はアモルファス(シリカ/Si)基体上の二軸に組織された酸化物テンプレートを製造するためにイオンビーム支援成長(IBAD)の使用に関連して付与されている。
【0053】
現在、IBAD又は傾斜基体成長(ISD)アプローチにおいて、窒化珪素及びイットリアの双方がアモルファス「核形成」又は「接着」として使用されている。よって、イットリア及び窒化シリコン、もしくは多機能で、良好に機能し、低価格で堆積することができる他の層を置き換えるための代替材料及び関連薄膜プロセス(好ましくは、非真空、低価格及び高堆積速度)の必要がある。ディップコート又は他の溶液ベースのプロセスを用いて形成される発明材料は、現存するIBAD膜成長用のアモルファステンプレート技術を置き換える良好な機会を与える。簡便なディップコートプロセスによって、発明材料は、微細構造的に緻密で、気密で、薄く(50nmから1μm)、ピンホールがなく、均質で、平滑な膜として、ワンパスにおいて比較的高速で堆積することができる。発明材料被膜は、被膜の低価格の被覆プロセス、高スループット、熱安定及び耐久性のために、良好な代替となり、基体に対する良好な保護を与え、ソーラーアレイ用途に対して半導体層をパターニングするためのエッチング用に適するかもしれない。
【0054】
IBADテンプレート層として適切な発明材料の被膜は、現在の技術に対していくつかの利点がある。気密被膜として、発明材料はピット、引っかき傷、及び良好に研磨された基体においてさえ一般に認められる他の欠陥(腐食活性となり得、それら領域におけるIBAD膜の組織の質に影響を与えるも知れない)を封止する。また、金属又は合金あるいはセラミック表面への発明材料の堆積は、平坦化又は平滑作用をもたらし、それにより表面粗さを著しく低減することができ、研磨労力を低減することを可能にするかもしれない。発明材料は、高度に不活性であり、低酸素拡散率の安定な高温材料である。酸化物の高温成長の間、金属種の機能的酸化物層への拡散が制限されるので、拡散障壁特性は非常に重要である。一般に、多層の積層は、機能層に金属種が拡散するのを防止するためにIBAD層の上面にバッファ層を含むであろう(金属基体上にHTS膜を形成するための一般構造を示す概略図である図2参照)。
【0055】
このように、発明材料は、限定されないがHTS被覆伝導体、強誘電体、圧電体、光電子工学材料又は電気光学材料を含む多くの適用のためのIBAD成長用の良好なテンプレートとして機能することができる。また、低誘電率であり、シリコン系技術に容易に統合することができ、シリコン系半導体用ゲート電極層として用いることができる。圧電セラミックの二軸組織又は単結晶膜は、大気圏及び宇宙空間用ならびに他の用途のための適用可能な可撓性構造を目標としている。可撓性金属/合金箔基体上に堆積された発明材料は、圧電膜のIBAD成長用として、安定で、不活性なテンプレートとして機能する間、腐食及び酸化に対する抵抗を与え、よって、現行の方法に比較して非常に低価格で生成される、安定な適用可能な翼又は高い電気機械の連結(高品質構造のため)を有する他の構造を作り出す。また、IBADプロセスは、太陽電池の適用に適する可撓性金属箔基体上に単結晶又は二軸組織膜を形成するためにも用いることができる。単結晶ゲルマニウム及びGaAs層は、ソーラーアレイに適する金属箔上に望まれる。現行のアプローチは、金属又はポリマー基板上への多結晶半導体層を用いることであり、ソーラー変換効率を制限している。IBADアプローチは、組織層を形成するために理想的に適しているかもしれない。
【0056】
エピタキシャル伝導性酸化物電極層の成長は、アクチュエータ及び他のデバイスにおける使用のために、アモルファス基体(ルテニウム酸化物のような)上に望まれ、発明材料は、シリコン上で良好なテンプレートとして機能することができる。あるいは、珪素上の熱成長シリカ膜は、同様の目的のために適しているかも知れず、珪素上の100nmスケールでの熱酸化による成長は、ストレスを引き起こす、相当の高温プロセス及び長期スケール形成時間を必要とし、そのため、酸化物スケールの微細構造及び手順が、酸化物のその後の成長にとって最良とはならない。発明材料によって、低堆積温度で、名目100nm厚の均質で、気密で、緻密な膜を、350℃以上から500℃で硬化することによって、数分以内に成長させることができる。
【0057】
平坦化は発明材料の多層被膜を堆積することによって比較的粗い表面に形成することができ、各被膜は直下の被膜よりも低い表面粗さを有する。発明材料の被膜は、4340スチール切り取り試片上に堆積され、摩擦係数が0.1から0.14と認められる。低い摩擦特性に加えて、発明材料は、32dyne/cmの低い表面エネルギーを有する。発明材料表面に付着した有機分子によって、表面エネルギーをさらにもっと低下させることができる。
【0058】
発明材料被膜の表面は、さらに、有機上層の目的のある堆積によって調整することができる。金属又は合金基体上への機能性有機上層の使用は、限定されないが、金属反応層ベッセルにおける有機触媒の使用を含む多くの適用範囲を有している。いずれかの理論に縛られることを望まないならば、有機物の吸着は、発明材料表面における活性吸着部位の存在が原因かもしれない。これらの活性有機付着部位は、不飽和アルミニウムイオン(3以下の酸素原子に結合した)又はP二重結合O部位(P=O)、あるいは発明材料表面のAl−OH及び/又はP−OH基の存在に寄与するかもしれない。さらに、Al−O−Al及びAl−O−P架橋基は、表面に存在し、前駆体溶液の熱分解に由来するが、発明材料に高い反応性を与えるかもしれない。水、アルコール、アセトン又はエーテル分子は、大気にさらされることによって、これらの部位に解離吸着するかもしれず、反応性Al−OH及びP−OH基をもたらす。これらの反応性ヒドロキシ基は、希釈酸で処理するか、当業者によく知られた他の化学的方法によって、発明材料表面に意図的に形成される。有機付着物は、非常に安定で、その後の化学的、熱的及び機械的処理に対して耐久性がある。
【0059】
このように、発明材料は、生体分子の固定において非凡な展望を有する、新規で特有のガラス表面化学を与える。発明材料の魅力的な特性は、ガラス状材料の性質、ならびに薄く、均質で、緻密で、気密で透明な膜を形成するために使用される簡便なディップコーティングプロセスを含む(発明材料が被覆された基体を用いたマイクロアレイの概略図の表示として図3参照)。また、被膜は、いずれかの表面の傷又は欠陥を気密する利点を与え、よって、マイクロアレイ及び他の生物学的用途に必須の、非常に均質で連続的な表面化学を与える。
【0060】
本発明の他の観点は、生体分子の堆積前の無機表面の保護である。ソーダ石灰ガラスを用いるための通常の手順は、ポリリシン堆積前に、引っかき傷及び汚染のない表面を確保するために、徹底的な洗浄及び表面の点検を含む。これらの手順は、単調で時間がかかり、手動による誤りを生じやすく、高価なDNAサンプルに未知の破損を引き起こすことがあり、よって、現行のアプローチに懸念をもたらす。相対的に、発明材料被膜を形成した直後に、限定されないが、それらを、オレイン酸層を含むことができる界面活性剤の層でマスクすることができ、それは、良好な被覆率、ならびに水及び汚れをはねつける(非粘着被膜)、疎水性の表面を与える。これらのマスク層は、しっかりした、高品質の有機又は生物分子の上層を形成するために、発明材料の元のままの表面が露出されるように、有機物の堆積の直前に、容易に除去することができる。そのようなアプローチはソーダ石灰ガラスを保護するために用いることができない。というのは、有機物との結合はきわめて弱く、表面は、有機吸着とは対照的に、水酸化される傾向にあり、シラノール基を形成するからである。また、ガラス上の有機層を有する発明材料の高品質被膜は、建築物の窓及び自動車用途に適する自己洗浄ガラス製品を提供することができる。
【0061】
2つの他の代替のアプローチは、発明材料表面上への生体分子の付着を可能とすることである。一つの方法は、その後のDNA又は他の生体分子と結合するための官能基を有する、適切な有機アンカー層を形成することを含む。有機層と発明材料被膜との連結、付着及び/又は結合は、カルボキシル又はアミノ末端基で調整することができ、きわめて強固である。二つめの方法は、現在使用されているポリリシン系被覆システムを含むリンカー分子、化合物又は部分を併せて用いるために安定なバッファ層として、発明材料を用いることである。この化合物/組成物は、化学的に不活性な表面、強力なポリリシンとの結合、及び、限定されないが、平滑で、緻密で、ほとんど欠陥のない表面を有する、優れた表面形態を提供することによって、現在のシステムに比較して本発明の重要な利益を与える。
【0062】
発明材料及び/又は、限定されないが、銀、銅及び亜鉛を含む金属カチオンを含む前駆体溶液は、抗菌被膜に用いることができる。抗菌剤と混合された発明材料被覆表面は、接触することで抗菌性として機能することができる。また、有機抗菌剤は、強力で、有機分子に対する発明材料の独特の親和性のために、発明材料表面に付着することができる。抗菌性界面活性剤には限定されないが、抗菌剤は、発明材料で被覆された表面に吸着することができる。これらは、抗菌性及び疎水性表面として双方に機能するであろう。界面活性剤の末端基は、アルカリ又はトリフルオロアルキル基とすることができる。トリフルオロ末端基は、高い疎水性のために好ましい。疎水性表面のために乾燥した状態は、微生物の成長を防止するのに助けとなるであろう。また、界面活性剤の金属カチオン塩は、限定されないが酸性界面活性剤の銀塩(例えば、オレイン酸の銀塩)であり、抗菌活性を高めるために、発明材料被膜上の吸着層として用いることができる。いずれもの理論に拘束されることを望まなければ、カルボキシル基はアルミニウムカチオン及び銀イオンがホスフェート基に付着すると確信される。発明材料は、限定されないがディップコーティングのような簡便なプロセスによって、種々の基体上に被覆することができ、いくつかの適用分野に有効に適用される。抗菌性の被膜の適用を、表1に挙げる。これらは、単に典型的な実施例であり、本発明の潜在的な適用の包括的なリストではない。
【0063】
【表1】

いくつかの用途について、その機械的(ナノ複合体膜)、熱的(含有物による伝導性の改善)、電気的(電気伝導性を改善するために前駆体にカチオン溶液を加える)、光学的、化学的特性及び生物学的特性(抗菌性)を変化させるために発明材料組成を調整することができ、よって、製品能力及び性能を高めることができる。金属表面の場合、生物活性の発明材料表面は、腐食抵抗及び抗菌被膜の二重の目的を果たすことができる。そのような多機能被膜が、強く望まれている。他のアプローチは、発明材料の気密被膜上にリン酸アルミニウム層の多孔質層を形成することを含む。多孔質層は、限定されないが、ヒノキチオール、タンニン、ライソザイム、プロタミン及びソルビン酸のような有機抗菌剤、銀、銅又は亜鉛のような無機イオンを含む抗菌剤の所望量を装填することができる。これらの剤は、抗菌活性に対してゆっくり放出させることができる。ガラス基体上の発明材料被膜に埋め込まれた銀イオンは、大腸菌に対する抗菌活性を示し、被覆ガラス表面付近の細菌の成長を防止する。この特性は、微生物の破壊及びそれらの成長防止に有効に用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下の限定されない実施例及びデータは、本発明の化合物、組成物、複合体、物品及び/又は方法に関する種々の観点、特徴を示す。従来技術と比較して、本発明の化合物、組成物及び/又は方法は、優れた、予想外の、それらと正反対の結果及びデータを与える。本発明の有用性はいくつかのアルミノホスフェート化合物/組成物ならびにそれらの膜/被膜の使用によって示しているが、当業者には、本発明の範囲内に整合するような種々の他の化合物、組成物および化学量論で同等の結果が得られることが理解されるであろう。
【0065】
実施例1
発明材料被膜の構成部分膜/被膜を堆積するための好ましい方法は、透明な化学的前駆体溶液を用いることであり、その溶液は、有機溶媒中にアルミニウム塩及びリン酸エステルを含むことが好ましい。発明材料被膜を堆積するために使用される溶液は2:1モル比のアルミニウム:リンを有し、300mlエタノール中に、Al(NO33・9H2Oを264g溶解することによって調製される。別の容器で、100mlのエタノール中にP25を25g溶解する。これらの溶液を一緒に混合する。得られた溶液を、約0.2モルAl/l溶液の濃度になるようにエタノールで希釈する。
【0066】
実施例2
1”×2”の304ステンレススチール箔を、実施例1の前駆体溶液で被覆する。サンプルを500℃にて15分間、予備加熱炉で加熱する。この熱処理サンプルの小片を、基体上の発明材料被膜の透過型電子顕微鏡を断面観察するために作製する。図4は約100nmの被膜の厚みを示す。発明材料被膜は、ステンレススチール表面に良好に付着し、顕微鏡写真は、連続し、緻密で、気密な性質の被膜を示す。
【0067】
実施例3
チタン系合金は容易に酸化される傾向があり、合金の所望の特性に変化をもたらす。チタンは、他の元素(例えば、アルミニウム)と、酸化耐性を増加させるために合金化することができるが、機械的特性を損なうかもしれない。酸化からチタン合金を保護することができる超薄被膜が強く望まれている。発明材料は、酸化からチタンアルミニウム合金を保護することを示している。実施例1の溶液をTi−46Al試験片に堆積し、600℃で2分間加熱することによって硬化した。この方法によって被覆されたサンプルを、非被覆サンプルとともに、800℃の大気に100時間さらした。酸化による重量変化は、被覆標本できわめて低かった。図5は、試験後の被覆及び非被覆サンプルの写真を示す。
【0068】
800℃、100時間、大気にさらした重量変化(mg/cm2)は、被覆サンプル1で、0.000034、被覆サンプル2で0.000033、非被覆サンプルで0.017であった。
【0069】
実施例4
Ti−6Al−4V試験片を実施例1の化学前駆体溶液に浸漬した。被膜を冷却空気で乾燥し、600℃にて2分間、予備加熱炉で加熱した。試験片を、次いで、800℃の大気に100時間さらした。酸化による重量変化は、被覆標本で低いオーダーの大きさであった。
800℃、100時間、大気にさらした重量変化(mg/cm2)は、被覆サンプルで、0.000077、非被覆サンプルで0.027であった。
【0070】
実施例5
ニッケルの酸化保護を、発明材料の膜/被膜部材で証明している。被膜は、高温酸化に対する保護、あるいは、塩を含んだ又は硫黄又は塩素含有雰囲気のような腐食環境に対する保護を与えるように、ニッケル又はニッケル合金基体を不動態化することを助けるであろう。ニッケル棒を実施例1の化学前駆体溶液に浸漬し、気流中で乾燥した。被覆棒を、非被覆のコントロール標本とともに、550℃の大気中で115時間アニールした。非被覆サンプルは黒い酸化膜を示したが、被覆サンプルは、元の棒の金属光沢を維持した(図4)。
【0071】
実施例6
金属及び合金表面は、所望の用途、製造コスト及び他の要因によって、表面仕上げ及び粗さを変更する。
【0072】
多くの金属及び合金表面を、事前の表面生成品又は存在する腐食残渣を洗浄するために、被覆の前にグリットブラストする。304型ステンレススチールの試験片を、粗い表面仕上げを得るためにグリッドブラストする。実施例1の溶液をディップコーティングにより表面に堆積する。被膜を、気流中で乾燥し、IRランプで5分間硬化する。光学顕微鏡写真は、被膜が実質的にサンプルを覆い、本質的にクラックがないことを示す。試験片を、非被覆試験片とともに、1100℃にて4時間炉中でアニールする。被覆試験片は、非被覆試験片よりも酸化による重量増加が極めて少ないことを示す。
1100℃、4時間、大気にさらした重量変化(mg/cm2)は、被覆サンプルで、6.52、非被覆サンプルで26.34であった。
【0073】
実施例7
被覆材料を、種々の基体の平坦化又は平滑化に使用することができる。実施例1の溶液を合金基体上に堆積する。原子間力顕微鏡観察を、二乗平均(rms)粗さを測定するために、被覆及び非被覆サンプルについて行った。非被覆合金は、21nmのrms粗さである。被膜の塗布により、rms粗さは7nmに減少する。
【0074】
実施例8
金属及びシリコン基体上の発明材料被膜は、電子工学の適用のため、その後のエピタキシャル層の成長のために用いることができる。特に、この実施例は、高電流送電高温超電導体(HTS)テープを製造するためのテンプレート層として発明材料被膜を使用することに関する。最初の「受け入れ(as-received)」rms粗さが570オングストロームのC−276ニッケル系合金又はハステロイ泊の小片を実施例1の溶液に浸漬する。被覆箔を気流中で乾燥し、570℃にて1分間予備加熱炉で加熱処理する。rms粗さは、名目上100nm厚の発明材料被膜によって140オングストローム以下に低減する。
【0075】
実施例9
イオンビーム支援電子ビーム堆積プロセスを用いて、実質的に二軸の組織を有するイットリア安定化ジルコニア(YSZ)(50から100nmの範囲の膜厚)の薄い酸化物を、実施例7の発明材料被膜の表面に成長させる。実質的に二軸の組織を有する薄いセリウム酸化物層(10から20nm)を、電子ビーム堆積による高温超伝導体のYBCO膜の1から2μmのその後の成長用の格子整合テンプレートを提供するために、YSZの上面に成長させる。全多層積層体は、長い長さで形成することができるHTS被覆伝導体構造を示す。
【0076】
実施例10
実施例7の発明材料被覆基体を、イオンビーム支援電子ビーム堆積プロセスを用いて、実質的に二軸組織の、100オングストロームのMgO層を堆積するために用いる。セリウム酸化物及びYBCO膜のその後の層を実施例8に記載したように堆積する。発明材料被膜は付着/平坦化層ならびに有効な拡散障壁の双方として機能することを特に言及する。よって、YSZ又は他の酸化物の別個の拡散障壁層は、超導電体特性を劣化させるであろうYBCOへの基体からの種の拡散を防止するために、必要ではないであろう。この構造物で、YBCO層は、実質的に改善された組織及び大面積にわたる均質組織を有し、HTS適用に関して望まれるような高臨界電流密度を備えるであろう。
【0077】
この実施例の他の実施形態では、発明材料の多層被膜を、付着がさらに改善され、平坦化がさらに改善されるように、アルミニウム対リン比を変化させて堆積することができる。これらの改善は、長い長さにわたって整合した特性を備える、より機械的に強固なHTS被覆伝導体をもたらすであろう。
【0078】
この実施例のさらに他の実施形態では、ここで説明した同じ方法を、基体としてシリコンを用いる積層体を製造するために手本とすることができる。発明材料被覆シリコン基体は、実質的に二軸組織のIBADのYSZ又はMgOの成長用テンプレートとして用いることができる。これらのエピタキシャル層は、よって、HTS、強誘電体、圧電体又は、立方体対称の酸化物を含むほかの機能層のさらなる成長のためのテンプレートとして機能させることができる。発明材料層は、また、シリコン系デバイスのための誘電体層として機能させることができる。
【0079】
この実施例のさらに他の実施形態では、約570オングストロームのrms粗さ値の受け入れ基体を、機械的に研磨し、ラッピング技術を用いて、約400オングストローム以下、好ましくは300オングストローム以下、最も好ましくは200オングストローム以下の粗さ値に低減させ、次いで、発明材料被膜(約100nm厚)を(単層又は多層のいずれかとして)堆積し、さらに約70オングストローム以下、好ましくは40オングストローム以下、より好ましくは20オングストローム以下、最も好ましくは10オングストローム以下の粗さ値に低減させる。よって、高平滑のアモルファス表面は、物理蒸着技術を用いた酸化物のIBAD成長のためのテンプレートとしての役割を果たすことができる。
【0080】
実施例11
高温での酸化及び腐食に対する耐性に加えて、発明材料被膜は、低温での大気中での腐食に対して保護することができる。塩腐食耐性に関する実験室試験を、塩霧チャンバ中で、ASTMスタンダードB117に準じて行う。アルミニウム合金6061試験片を実施例1の組成物中に浸漬し、回収した。試験片を気流中で乾燥し、500℃にて2分間加熱処理した。この試験片を、非被覆試験片とともに、塩霧チャンバ内に170時間載置した。被覆試験片は、被覆試験片よりもきわめて腐食が少ないことを示す(図7)。
【0081】
実施例12
チタニアのナノ粒子は、バルク材料として又は膜に組み込んだ際に、所望の光学的又は機械的特性を示すことが知られている。チタニアのナノ粒子用の透明なホストマトリクスが、チタニア粒子に対する光透過性が望まれる場合に必要とされる。チタニアナノ粒子は、チタニウムイソプロポキシド溶液の添加によって発明材料前駆体溶液中で製造することができる。4mlのチタニウムイソプロポキシドを、9.8mlの水及び0.2mlの硝酸に添加して、濁った外観(部分的に加水分解した)の溶液を調製する。この溶液を実施例1の溶液に加え、発明材料の前駆体を含むチタニアを製造する。
【0082】
実施例13
チタニアナノ粒子を含む発明材料被膜を、限定されないが、スチール又はガラスもしくは石英ガラスを含む基体上に堆積することができる。304ステンレススチールの小片を実施例11の溶液に浸漬し、回収する。被膜を冷却空気で乾燥し、800℃にて30分間加熱処理する。得られた被膜は、気密で光学的に透明である。
【0083】
実施例14
ジルコニアを含有する膜は、ある所望の光学的又は機械的特性を誘導するために望ましい。また、発明材料及びジルコニアのナノ複合体を形成することもできる。1.49gのZrO(NO33・xH2Oを10mlのエタノールに溶解した。別のビーカーにて、6.46gのP25を70mlのエタノールに溶解した。他のビーカーにて、59.9gのAl(NO33・9H2Oを140mlのエタノールに溶解した。3つの溶液の全てを一緒に混合し、攪拌した。透明な溶液が得られた。その溶液を、対流式オーブン中で150℃にて乾燥し、ゲル粉末を形成し、1000℃にて1時間アニールした。発明材料が優勢である正方晶系のZrO2の結晶をX線回折で確認した。
【0084】
実施例15
ジルコニアナノ粒子を含む発明材料の被膜を、304ステンレススチール上に、実施例13の溶液のディッピングによって堆積した。試験片を気流中で乾燥し、800℃にて20分間加熱処理して、ナノ複合体被膜を形成した。
【0085】
実施例16
実施例1の前駆体溶液に準拠して、エタノール性P25溶液を、エタノール性硝酸塩溶液に加えた。0.1gのAgNO3固体をその混合溶液の10mlに溶解した。
【0086】
実施例17
実施例16のアルミノホスフェート化合物を処理して得られた被覆ガラスを、大腸菌株を含むペトリ皿に載置する。また、スライドなしでコントロールのペトリ皿を用意した。両スライドを35℃にて2日間保持した。2日後、銀/発明材料被膜ガラスは、株の縞に沿った成長を示すコントロール実験に比較して、スライドの周りに細菌の成長を示さなかった。
【0087】
実施例18
1’×2”のステンレススチール箔を実施例1の組成物に浸漬した。試験片を500℃にて5分間、予備加熱炉中で硬化させた。得られた被膜は、高反射性であった。
【0088】
図9は、パーキン−エルマースオエクトラム1FTIRスペクトロメータを用いて記録した、硬化ステンレススチール箔の80かすめ角のFTIRスペクトルである。1207cm-1付近を中心に、強い吸収ピークが、735cm-1付近を中心にブロードなピークを伴って観察された。これらのピークは、ホスフェート及びAl−O−P基振動のためである。また、830cm-1付近に、Al−O−Al結合基のためであるかもしれないピークが観察された。当業者は、これらのピーク位置が、1280cm-1から1180cm-1及び860cm-1から700cm-1の範囲において、硬化温度、組成物の前駆体溶液、被覆基体及び他の条件によって、変化し得ることを理解するであろう。
また、ピーク強度は、被覆、硬化及び他の条件に基づいて変化し得る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面粗さを低減させるためにアルミノホスフェート化合物を使用する方法であって、
アルミノホスフェート化合物への前駆体を準備し、その前駆体は、液体媒体中にアルミニウムイオン及びリン酸エステルを含有し、
その前駆体媒体を基体に塗布し、その基体は第1の表面粗さ値を有しており、
実質的にアモルファスなアルミノホスフェート化合物を基体上に提供するために十分な時間及び温度で、塗布された媒体を処理することにより、その基体の表面を平坦化し、第1の表面粗さ値と比較して低減した第2の表面粗さを有することを含む方法。
【請求項2】
表面粗さ値が少なくとも約3倍低減する請求項1の方法。
【請求項3】
媒体を、ディップコーティング、噴霧、流れコーティング及びスピンコーティングから選択される方法によって塗布する請求項1の方法。
【請求項4】
処理された基体は、約0.2未満の摩擦係数を有する請求項1の方法。
【請求項5】
基体は、ベアリング及びギアから選択される請求項4の方法。
【請求項6】
二軸組織の構成部分がアルミノホスフェート上に堆積される請求項1の方法。
【請求項7】
部分が、酸化マグネシウム、イットリア及びイットリア安定化ジルコニアから選択される請求項6の方法。
【請求項8】
電磁構成部分が、組織構成部分の上に堆積される請求項7の方法。
【請求項9】
電磁構成部分が超導電のYBCO層である請求項8の方法。
【請求項10】
処理された基体を酸化及び腐食から選択される条件を含む環境にさらす請求項1の方法。
【請求項11】
基体が、スチール、ニッケル系合金、超合金、チタン、チタン系合金、ニオブ、ニオブ系合金、モリブデン、モリブデン系合金から選択される請求項1の方法。
【請求項12】
基体が、珪素、酸化アルミニウム、エナメル、ムライト、ガラス、石英ガラス、シリカ系耐火物及びセラミックから選択される請求項1の方法。
【請求項13】
基体、実質的にアモルファスのアルミノホスフェート化合物、このアルミノホスフェート化合物に付着した有機成分を含む複合体。
【請求項14】
有機成分が生体分子を含む請求項13の複合体。
【請求項15】
生体分子がポリペプチド、ポリヌクレオチド及び蛋白から選択される請求項14の複合体。
【請求項16】
基体がソーダ石灰ガラスである請求項13の複合体。
【請求項17】
基体がシリコンである請求項13の複合体。
【請求項18】
基体が金属インプラント構成部分である請求項13の複合体。
【請求項19】
基体がセラミックインプラント構成部分である請求項13の複合体。
【請求項20】
アルミノホスフェート化合物がDNA成分に付着している請求項13の複合体。
【請求項21】
有機成分が、分子リンカー成分とともにアルミノホスフェート化合物に付着している請求項13の複合体。
【請求項22】
リンカー成分がポリリシンである請求項21の複合体。
【請求項23】
アルミノホスフェート化合物が、少なくとも1つの有機成分及びリンカー成分の一つに結合し得る官能基を含む請求項13の複合体。
【請求項24】
アルミノホスフェート化合物及び抗菌成分を含む実質的にアモルファスな組成物。
【請求項25】
抗菌成分対アルミノホスフェート化合物の比が約0.1:1から約1:1である請求項24の組成物。
【請求項26】
抗菌成分が銀、銅、亜鉛及び鉄イオンから選択される請求項24の方法。
【請求項27】
組成物が複合体の構成部分である請求項24の組成物。
【請求項28】
複合体がさらにガラス、金属、合金及びセラミックから選択される基体を含む請求項27の組成物。
【請求項29】
有機部分を含む請求項24の組成物。
【請求項30】
有機成分が、脂肪酸およびシラン化合物から選択される請求項29の組成物。


【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−515535(P2006−515535A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503452(P2005−503452)
【出願日】平成15年12月23日(2003.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/041130
【国際公開番号】WO2005/003033
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(503072942)アプライド シン フィルムズ,インコーポレイティッド (4)
【Fターム(参考)】