説明

リーチスタッカの荷役作業装置

【課題】スプレッダの垂直方向の昇降が容易に行える。
【解決手段】昇降シリンダ23によりブーム21を起伏させるとともに、伸縮シリンダ24によりブーム21を伸縮させて先端部のスプレッダ22を昇降および移動させるスタッカクレーンの荷役作業装置において、手動/垂直昇降スイッチ26の垂直昇降操作により、作業操作レバー25の昇降操作に基づいて昇降シリンダ23を駆動してブーム21を起伏させるとともに、所定時間ごとにブーム傾斜角とブーム長さとによりスプレッダ22の作業半径を演算し、昇降動作の前後で求められた作業半径のずれ量が所定範囲を越えた時に、伸縮シリンダ24を操作してブーム21を伸縮し作業半径のずれ量を所定範囲内に保持する作業操作制御部29を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行自在な車体に起伏自在に支持された伸縮自在な作業ブームと、この作業ブームの先端部に設けられてコンテナなどの荷を保持可能な荷役具であるスプレッダとを有するリーチスタッカの荷役作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたリーチスタッカには、走行自在な車体に、伸縮自在な作業ブームと、この作業ブームの先端部に設けられてコンテナなどの荷を保持可能なスプレッダとを具備し、主な荷役駆動装置として、テレスコピック式の作業ブームを伸縮させる伸縮シリンダと、作業ブームを起伏させる昇降シリンダとを具備している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−98455
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成において、スプレッダに保持したコンテナを段積みする場合、所定位置または既設コンテナの上方に移動したスプレッダを垂直方向に降下させてコンテナを積み付けている。この時、運転者は、作業半径を表示するモニタを監視しつつ、作業操作レバー(ジョイスティックレバー)を操作して昇降シリンダを収縮させ作業ブームを倒伏させる同時に、伸縮シリンダを収縮させて作業ブームを収縮させている。
【0005】
このため、段積み作業や段ばらし作業、中抜き、落とし込み作業では、コンテナを位置合わせするために運転者に細心の注意が必要で、疲労度が大きいという問題があった。
本発明は上記問題点を解決して、荷保持具の垂直方向の昇降を容易に行えるリーチスタッカの荷役作業装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、車両本体に、水平軸心周りに起伏自在に支持されて伸縮自在なブームと、当該ブームの先端部に設けられた荷保持具と、当該ブームを起伏する昇降シリンダと、当該ブームを伸縮して荷保持具の作業半径を拡縮する伸縮シリンダとを具備したリーチスタッカの荷役作業装置であって、
ブームの傾斜角を検出するブーム角検出器と、
ブームの長さを検出するブーム長さ検出器と、
前記昇降シリンダと前記伸縮シリンダを操作する作業操作制御部と、
作業操作レバーを操作することにより前記作業操作制御部を介して前記昇降シリンダと前記伸縮シリンダをそれぞれ駆動する作業用油圧装置と、
前記昇降シリンダと前記伸縮シリンダをそれぞれ手動により操作する手動操作と、前記昇降シリンダと前記伸縮シリンダとを操作して荷保持具を垂直方向に昇降させる垂直昇降操作とを切り換え可能な手動/垂直昇降スイッチとを具備し、
前記作業操作制御部は、前記手動/垂直昇降スイッチの垂直昇降操作時に、前記作業操作レバーを昇降操作して前記作業用油圧装置により昇降シリンダを駆動しブームを起伏して荷保持具を昇降すると同時に、当該昇降動作の最初に、前記ブーム角検出器および前記ブーム長さ検出器により検出されたブーム傾斜角とブーム長さから荷保持具の作業半径を演算して目標値として保存し、一定時間ごとに荷保持具の作業半径を演算した現在の荷保持具の作業半径と前記目標値から荷保持具の作業半径のずれ量を求め、その作業半径のずれ量が所定範囲を越えた時に、伸縮シリンダを駆動してブームを伸縮させ、前記荷保持具の作業半径のずれ量を所定範囲内に保持するように構成したものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、作業用油圧装置は、油圧ポンプから供給される作動油を昇降シリンダに給排出する油圧パイロット式の昇降側操作弁と、油圧ポンプから供給される作動油を伸縮シリンダに供給、排出する油圧パイロット式の伸縮側操作弁と、作業操作レバーにより操作される昇降用パイロット弁および伸縮用パイロット弁と、当該昇降用パイロット弁と前記昇降側操作弁の操作部とを接続する第1パイロット圧給排ラインと、当該伸縮用パイロット弁と前記伸縮側操作弁の操作部とを接続する第2パイロット圧給排ラインとを具備し、
当該作業用油圧装置に、手動/垂直昇降スイッチの垂直昇降操作時に、前記第1パイロット圧給排ラインおよび第2パイロット圧給排ラインを遮断し、前記昇降用パイロット弁による操作パイロット圧に対応して、前記昇降側操作弁の操作部に昇降用パイロット圧を供給する昇降側パイロット圧制御弁と、前記荷保持具の作業半径のずれ量に対応して、前記伸縮側操作弁の操作部に伸縮用パイロット圧を供給する伸縮側パイロット圧制御弁とを設けたものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の構成において、手動/垂直昇降スイッチの手動操作時に、作業操作レバーにより操作された昇降用パイロット弁から第1パイロット圧給排ラインを介して前記昇降側操作弁の操作部に操作パイロット圧を供給し、作業操作レバーにより操作された伸縮用パイロット弁から第2パイロット圧給排ラインを介して伸縮側操作弁の操作部に操作パイロット圧を供給するように構成されたものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の構成において、
作業用油圧装置に、手動/垂直昇降スイッチの垂直昇降操作時に、第1パイロット圧給排ラインおよび第2パイロット圧給排ラインをそれぞれ遮断する昇降側垂直昇降切換弁および伸縮側垂直昇降切換弁と、第1パイロット圧給排ラインおよび第2パイロット圧給排ラインに操作パイロット圧を検出するパイロット圧検出器を設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、手動/垂直昇降スイッチによる垂直昇降操作時に、作業操作レバーの操作に基づいて昇降シリンダを駆動すると同時に、一定時間ごとにブームの傾斜角と長さを検出して荷保持具の作業半径を求め、目標値と現在の荷保持具の作業半径とのずれ量が所定範囲を越えた時に、伸縮シリンダを自動的に伸縮して荷保持具の作業半径のずれ量が所定範囲内となるように操作することにより、荷保持具を垂直方向に昇降させることができる。したがって、作業員の目視による操作に比べて、荷を精度良く昇降させることができて段積み作業や段ばらし作業、中抜き、落とし込み作業をスムーズに行うことができ、作業員の疲労を軽減することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、垂直昇降時に、昇降用パイロット弁の操作パイロット圧に基づいて昇降側パイロット圧制御弁を操作して昇降シリンダの操作部に昇降用パイロット圧を供給しブームを昇降するとともに、荷保持部の作業半径のずれ量に基づいて、伸縮側パイロット圧制御弁を操作して伸縮用パイロット圧を伸縮シリンダの操作部に供給してブームを伸縮させ、これにより荷保持部を垂直方向に昇降させて荷保持部の作業半径のずれ量を所定範囲に保持することができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、手動操作時には、作業操作レバーにより操作される昇降用パイロット弁から昇降側操作弁の操作部に昇降用パイロット圧を供給して昇降シリンダを伸縮させ、伸縮用パイロット弁から第2パイロット圧給排ラインを介して伸縮側操作弁の操作部に伸縮パイロット圧を供給して伸縮シリンダを伸縮させて、手動操作を精度良く行うことができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、昇降側垂直昇降切換弁および伸縮側垂直昇降切換弁により第1パイロット圧給排ラインおよび第2パイロット圧給排ラインをそれぞれ遮断し、パイロット圧検出器により検出された操作パイロット圧により、昇降側パイロット圧制御弁を操作することにより、精度良くブームを起伏および伸縮させて荷保持部を垂直昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る荷役作業装置を具備したリーチスタッカの実施例を示し、(a)は全体構成図、(b)は荷役作業装置の斜視図である。
【図2】作業用油圧装置を示し、手動操作時のオイルの流れを説明する配管図である。
【図3】作業用油圧装置を示し、垂直昇降操作時のオイルの流れを説明する配管図である。
【図4】作業操作制御部の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、走行用の左右の前輪12および後輪13を有する自走式の車体11には、エンジン14と、エンジン14により駆動される走行装置および作業用の油圧ユニットと、荷役作業装置15とが搭載されている。
【0016】
(荷役作業装置)
荷役作業装置15は、車体11の後部に設置されたブーム支持部16に、車幅方向(水平方向)の支軸17を介して上下方向に起伏、傾動自在に支持されかつ伸縮自在な作業用のブーム21と、このブーム21の先端部に水平軸心周りに揺動自在に支持されてコンテナ(荷)20を保持するスプレッダ(荷保持具)22とを具備している。そして、車体11の左右両側部にブーム21を上下方向に傾動起伏させる左右一対の昇降シリンダ23が設置され、またブーム21内にブーム21を伸縮させる伸縮シリンダ24が内装されている。
【0017】
前記ブーム21は、基端側のリアブーム31と、リアブーム31から先端側に出退自在に内嵌めされたトップブーム32とで伸縮自在に構成されている。またスプレッダ22は、トップブーム32の先端部に設けられた吊下部材33に水平ピン34を介して基台部35が揺動自在に支持され、吊下部材33と基台部35との間に連結された姿勢調整シリンダ36により、基台部35の傾斜姿勢が調整される。また基台部35には、垂直軸心周りに旋回可能な旋回台38と左右方向に出退してシフト可能なシフト機構39を介してコンテナ保持具37が設けられており、コンテナ保持具37に保持されたコンテナ20の姿勢を調整することができる。
【0018】
この荷役作業装置15は、さらに昇降シリンダ23および伸縮シリンダ24に作動油を供給排出して操作する作業用油圧装置(図2,図3)41と、運転室18に設けられて両シリンダ23,24を操作する作業操作レバー(ジョイスティックレバー)25、および手動操作と垂直昇降を切り換える手動/垂直昇降切換スイッチ26と、ブーム21の傾斜角を検出するブーム角度検出器27と、ブーム21の長さを検出するブーム長さ検出器28と、荷役作業装置15を制御する作業操作制御部29とを具備しており、作業操作制御部29では、作業操作レバー25からの操作信号(操作パイロット圧)により、ブーム角度検出器27により検出されたブーム21の傾斜角と、ブーム長さ検出器28により検出されたブーム21の長さとに基づいてスプレッダの作業半径を求め、作業用油圧装置41を制御してブーム21の起伏動作と伸縮動作とを行うように構成されている。
【0019】
(作業用油圧装置)
作業用油圧装置41は、図2,図3に示すように、作業操作レバー25により操作されるパイロット入力操作部42と、手動/垂直昇降切換スイッチ26による手動操作時に操作されるパイロット切換操作部43と、手動/垂直昇降切換スイッチ26による垂直昇降時に操作されるパイロット垂直昇降操作部44と、昇降シリンダ23と伸縮シリンダ24とをそれぞれ駆動する駆動操作部45を具備している。
【0020】
前記パイロット入力操作部42は、作業操作レバー25により操作される上昇用パイロット弁46A、下降用パイロット弁46B、進展用パイロット弁46Cおよび収縮用パイロット弁46Dと、第2油圧ポンプP2と各パイロット弁46A〜46Dとの間に分岐管を介してそれぞれ接続された第1パイロット圧供給管(第1パイロット圧給排管)47A、およびオイルタンクTと各パイロット弁46A〜46Dとの間に分岐管を介してそれぞれに接続された第1パイロット圧排出管(第1パイロット圧給排管)47Bと、昇降用パイロット弁46A,46Bから操作パイロット圧を上昇用および下降用方向制御弁52A,52Bにそれぞれ供給、排出する第1パイロット圧給排分岐管(第1パイロット圧給排管)49A,49Bと、伸縮用パイロット弁46C,46Dから操作パイロット圧を親展用および収縮用方向制御弁52C,52Dにそれぞれ供給、排出する第2パイロット圧給排分岐管(第2パイロット圧給排管)49C,49Dとで構成されている。
【0021】
前記パイロット切換操作部43は、第1パイロット圧給排分岐管49A,49Bと49C,49Dにそれぞれ介在されて手動/垂直昇降切換スイッチ26により操作される電磁式の昇降側垂直昇降用切換弁51Aおよび伸縮側垂直昇降用切換弁51Bと、第1パイロット圧給排分岐管49A〜49Dがそれぞれ接続されたシャトル弁からなる上昇用方向制御弁52A,下降用方向制御弁52B、進展用方向制御弁52Cおよび収縮用方向制御弁52Dとで構成されている。
【0022】
垂直昇降操作部44は、第1パイロット圧給排分岐管49A〜49Dの操作パイロット圧をそれぞれ検出する上昇パイロット圧検出器53A,下降パイロット圧検出器53B、進展パイロット圧検出器53Cおよび収縮パイロット圧検出器53Dと、油圧ポンプP2、オイルタンクTと前記各方向制御弁52A〜52Dとの間にそれぞれ接続された第2パイロット圧供給管(第2パイロット給排管)48Aおよび第2パイロット圧排出管(第2パイロット給排管)48Bと、第2パイロット圧供給、排出管48A,48Bの上流側に介在されパイロット圧検出器53A〜53Dの検出値に基づいて作業操作制御部29により操作される昇降側パイロット圧制御弁54Aおよび伸縮側パイロット圧制御弁54Bと、第2パイロット圧供給、排出管48A,48Bの下流側にそれぞれ介在されパイロット圧検出器53A〜53Dの検出値に基づいて作業操作制御部29により操作される電磁式の上昇/下降切換弁55Aおよび進展/収縮切換弁55Bとを具備している。
【0023】
駆動操作部45は、昇降用メインバルブである油圧パイロット式の昇降側操作弁(6ポート3位置切換弁)56と、伸縮用メインバルブである油圧パイロット式の伸縮側操作弁(6ポート3位置切換弁)57とを具備し、第1油圧ポンプP1およびオイルタンクTに接続された第1作動油供給管61Aおよび第1作動油排出管61Bが昇降側操作弁56に接続され、また昇降側操作弁56に接続された昇降側作動油給排管62A,62Bが左右一対の昇降シリンダ23にそれぞれ接続されている。また昇降側操作弁56の2つの操作部と上昇用、下降用方向制御弁52A,52Bとの間に昇降側制御圧給排管(第1パイロット圧給排管)58A,58Bがそれぞれ接続されている。
【0024】
第1作動油供給管61Aおよび第1作動油排出管61Bと伸縮側操作弁57とが、第2作動油供給管63Aおよび第2作動油排出管63Bにより接続され、伸縮側操作弁57に接続された伸縮側作動油給排管64A,64Bが伸縮シリンダ24にそれぞれ接続されている。また進展用、収縮用方向制御弁52C,52Dと伸縮側操作弁57の2つの作動部との間に、伸縮側制御圧給排管(第2パイロット圧給排管)59A,59Bがそれぞれ接続されている。
【0025】
(手動動作)
手動/垂直昇降切換スイッチ26が手動側に操作された場合の作業用油圧装置41の動作を図3および図4を参照して説明する。
【0026】
1)手動/垂直昇降切換スイッチ26が手動側に操作される(S.11)と、昇降側垂直昇降切換弁51Aおよび伸縮側垂直昇降切換弁51BがそれぞれI位置に保持されて第1パイロット圧給排給排管49A〜49Dが連通され、また第1パイロット圧給排分岐管49A〜49Dが、各パイロット圧により各方向制御弁52A〜52Dを介して昇降側制御圧給排管58A,58Bおよび伸縮側制御圧給排管59A,59Bにそれぞれ連通される。
【0027】
2)この状態で、作業操作レバー25をたとえば上昇および進展側に操作して(S.3)、上昇用パイロット弁46Aおよび進展用パイロット弁46Cを開放側に操作することにより、第1パイロット圧供給管47Aから供給された操作パイロット用の圧油が、上昇用パイロット弁46Aおよび進展用パイロット弁46Cから上昇パイロット圧および進展パイロット圧として第1パイロット圧給排分岐管49A,49Cに送られ、昇降側および伸縮側垂直昇降切換弁51A,51Bから上昇用および進展用方向制御弁52A,52Cを介して昇降側および伸縮側制御圧給排管58A,59Aに送られ、さらに昇降側および伸縮側制御圧給排管58A,59Aから昇降側操作弁56および伸縮側主切換弁57の一方の操作部にそれぞれ供給される。昇降側操作弁56および伸縮側主切換弁57の他方の操作部から排出されたパイロット圧は、昇降側および伸縮側制御圧給排管58B,59Bから下降用および収縮用方向制御弁52B,52Dを介して昇降側および伸縮側垂直昇降切換弁51A,51Bに送られ、さらに下降用パイロッド弁46Bおよび収縮用パイロッド弁46Dを介して第1パイロット圧排出管47Bに排出される。
【0028】
3)これにより、昇降側操作弁56がI位置(中立)からII位置[上昇]に切り換えられるとともに、伸縮側操作弁57がI位置(中立)からII位置[進展]に切り換えられる。これにより、第1油圧ポンプP1から第1作動油供給管61Aを介して供給された作動油が、昇降側操作弁56から昇降側作動油給排管62Aを介して昇降シリンダ23の進展室に供給される。そして、昇降シリンダ23が昇降パイロット圧に対応する速度で進展され、ブーム21が起立方向に回動される。昇降シリンダ23の収縮室から排出された作動油は、昇降側作動油給排管62B、昇降側操作弁56および第1作動油排出管61Bを介してオイルタンクTに排出される。
【0029】
また第2作動油供給管63Aを介して供給された作動油が、伸縮側操作弁57から進展側作動油給排管64Aを介して伸縮シリンダ24の進展室に供給される。これにより、伸縮シリンダ24が進展パイロット圧に対応する速度で進展されてブーム21を伸長させる。伸縮シリンダ24の収縮室から排出された作動油は、伸縮側作動油給排管64B、伸縮側操作弁57、第2作動油排出管63Bおよび第1作動油排出管61Bを介して第1オイルタンクTに排出される。
【0030】
そして、作業操作レバー25がオフ操作されることによりブーム21の起立動作および進展動作が停止される。
なお、作業操作レバー25による単独の昇降動作(S.1)および単独の伸縮操作(S.2)は、上記複合動作の一方の動作(S.3)および(S.4)の手順で行われる。
【0031】
(垂直昇降動作)
垂直昇降動作を図4および図5を参照して説明する。
1)手動/垂直昇降切換スイッチ26が垂直昇降側に操作される(S.11)と、昇降側垂直昇降切換弁51Aおよび伸縮側垂直昇降切換弁51BをそれぞれI位置(連通)からII位置(遮断)に切り換える。また作業操作制御部29では、伸縮前と伸縮中の一定時間(たとえば数分の1秒)経過後ごとにブーム長さ検出器28の検出信号とブーム角度検出器27の検出信号により、スプレッダ22の作業半径を求める(S.12)。
【0032】
2)作業操作レバー25が上昇側[または下降側]に操作される(S.13)と、上昇用パイロット弁46A[下降用パイロット弁46B]が作動されて上昇パイロット圧検出器53A[下降パイロット圧検出器53B]により操作パイロット圧が検出され(S.14)、作業操作制御部29に出力される。作業操作制御部29では、垂直昇降操作の最初の操作パイロット圧かどうかを判断し(S.15)、最初の操作パイロット圧である場合には、この時のスプレッダ22の作業半径を、目標値として保存する。そして作業操作制御部29により、上昇/下降切換弁55Aおよび進展/収縮切換弁55BをそれぞれI位置(中立位置)からII位置(上昇、進展)[III位置(下降、収縮)]に切り換える。
【0033】
3)さらに作業操作制御部29では、前記操作パイロット圧からブーム21の上昇ゲイン[下降ゲイン]を演算し(S.17)、この上昇ゲインに基づいて昇降側パイロット圧制御弁54Aを操作する。これにより、第2パイロット圧供給管48Aから供給されたパイロット用の圧油が、昇降側パイロット圧制御弁54Aで制御され上昇[下降]パイロット圧として上昇/下降切換弁55Aから上昇用方向制御弁52A[下降用方向制御弁52B]を介して昇降用制御圧給排管58Aに送られ、前記上昇パイロット圧が昇降側操作弁56の一方の操作部に作用される。そして昇降側操作弁56の他方の操作部から排出されたパイロット圧は、昇降用制御圧給排管58Bから下降用方向制御弁52B[上昇用方向制御弁52A]、昇降側垂直昇降切換弁51Aを介して第2パイロット圧排出管48Bに送り出される。
【0034】
4)上昇パイロット圧により昇降側操作弁56がI位置(中立位置)からII位置(上昇)[III位置(下降)]に切り換えられ、第1作動油供給管63Aから送られた作動油が、上昇ゲインに対応して、昇降側操作弁56から昇降側作動油給排管62A[62B]を介して昇降シリンダ23の伸展室[収縮室]に供給される。これにより昇降シリンダ23が所定速度で進展されてブーム21を起立方向[倒伏方向]に回動する(S.18)。昇降シリンダ23の収縮室[進展室]から排出された作動油は、昇降側作動油給排管62B[62A]を介して昇降側操作弁56に送られ、第1作動油排出管63BからオイルタンクTに排出される。
【0035】
5)ブーム21が起立方向に駆動されると、作業操作制御部29において一定時間毎に検出され演算されたスプレッダ22の作業半径と、目標値とを比較し(S.19)、さらに目標値と現在のスプレッダ22の作業半径の誤差が、許容範囲(たとえば数cm)を越えているかどうかを判断する(S.20)。許容範囲を越えている場合には、ブーム21の進展[収縮]ゲインを求め(S.21)、伸縮側パイロット圧制御弁54Bに操作指令を出力する。これにより伸縮側パイロット圧制御弁54Bが開けられて、第2パイロット圧供給管48Aから供給されたパイロット用の圧油が、進展ゲインに対応する進展パイロット圧が、伸縮側パイロット圧制御弁54Bから進展/収縮切換弁55B、進展用方向制御弁52C[収縮用方向制御弁52D]、伸縮用制御圧給排管59A[59B]を介して伸縮側操作弁57の一方の操作部に供給され、伸縮シリンダ24が伸縮される(S.22)。伸縮側操作弁57の他方の操作部から排出されたパイロット圧は、伸縮用制御圧給排管59Bから収縮用方向制御弁52D[進展用方向制御弁52C]、伸縮側垂直昇降切換弁51Bを介して第2パイロット圧排出管48Bに排出される。
【0036】
6)スプレッダ22の作業半径の誤差が、許容範囲(たとえば数cm)内の場合には、ブーム21の伸縮をさせず、停止したままとなる(S.23)。
上記手順(S.11)から(S.21)が一定時間ごとに繰り返されて垂直昇降が行われる。
【0037】
上記実施例によれば、手動/垂直昇降スイッチ26の垂直昇降操作時に、作業操作レバー25の昇降操作に基づいて昇降シリンダ23を操作し、ブーム21の昇降操作の開始前や昇降中で一定時間ごとにブーム21の傾斜角と長さからスプレッダ22の作業半径を求め、昇降前と後のスプレッダ22の作業半径のずれ量が所定範囲を越えた時に、自動的にずれ量が所定範囲となるように伸縮シリンダ24を伸縮して操作することにより、スプレッダ22を垂直方向に昇降させることができる。したがって、作業員の目視による操作に比べて、精度良く荷を昇降させることができて段積み作業や段ばらし作業、中抜き、落とし込み作業をスムーズに行うことができ、作業員の疲労を軽減することができる。
【0038】
また、手動操作時に使用する第1パイロット圧供給、排出管47A,47B,第1パイロット圧給排分岐管49A〜49Dと、垂直昇降時に使用する第2パイロット圧供給、排出管48A,48Bとを設けた作業用油圧装置41に、さらに垂直昇降時に使用するために、第1パイロット圧給排分岐菅49A,49Bを遮断する垂直昇降切換弁51A,51Bと、昇降用パイロット弁46A,46Bの操作パイロット圧を検出するパイロット圧検出器53A〜53Dとを設けることにより、操作制御部29ではパイロット圧検出器53A〜53Dの検出値に基づいて昇降ゲインを求め昇降側パイロット圧制御弁54Aを操作して昇降シリンダ23を駆動してブーム21を昇降する。そして、一定時間ごとに検出された昇降前後のスプレッダ22の作業半径のずれ量に基づいて、伸縮側パイロット圧制御弁54Aを操作し伸縮シリンダ23を駆動してブーム21を伸縮させる。これによりスプレッダ22の作業半径のずれ量を所定範囲に保持して、スプレッダ22を垂直方向に昇降させることができる。したがって、手動/垂直昇降切換スイッチ26を垂直昇降側に操作して作業操作レバー25を昇降操作するだけで、容易にスプレッダ22を垂直方向に昇降させることができる。
【符号の説明】
【0039】
11 本体
15 荷役作業装置
16 ブーム支持部
17 支軸
20 コンテナ
21 ブーム
22 スプレッダ
23 昇降シリンダ
24 伸縮シリンダ
25 作業操作レバー
26 手動/垂直昇降切換スイッチ
27 ブーム角度検出器
28 ブーム長さ検出器
29 作業操作制御部
41 作業用油圧装置
42 入力操作部
43 パイロット切換操作部
44 パイロット垂直昇降部
45 駆動操作部
46A 上昇用パイロット弁
46B 下降用パイロット弁
46C 進展用パイロット弁
46D 収縮用パイロット弁
47A 第1パイロット圧供給管(第1パイロット圧給排ライン)
47B 第1パイロット圧排出管(第1パイロット圧給排ライン)
48A 第2パイロット圧供給管(第2パイロット圧給排ライン)
48B 第2パイロット圧排出管(第2パイロット圧給排ライン)
49A,49B 第1パイロット圧給排分岐管(第1パイロット圧給排ライン)
49C,49D 第2パイロット圧給排分岐管(第2パイロット圧給排ライン)
51A 昇降側垂直昇降切換弁
51B 伸縮側垂直昇降切換弁
52A 上昇用方向制御弁
52B 下降用方向制御弁
52C 進展用方向制御弁
52D 収縮用方向制御弁
53A 上昇パイロット圧検出器
53B 下降パイロット圧検出器
53C 進展パイロット圧検出器
53D 収縮パイロット圧検出器
54A 昇降側パイロット圧制御弁
54B 伸縮側パイロット圧制御弁
55A 上昇/下降切換弁
55B 進展/収縮切換弁
56 昇降側操作弁
57 伸縮側操作弁
58A,58B 昇降側制御圧給排管(第1パイロット圧給排ライン)
59A,59B 伸縮側制御圧給排管(第2パイロット圧給排ライン)
64A,64B 伸縮側作動油給排管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に、水平軸心周りに起伏自在に支持されて伸縮自在なブームと、当該ブームの先端部に設けられた荷保持具と、当該ブームを起伏する昇降シリンダと、当該ブームを伸縮して荷保持具の作業半径を拡縮する伸縮シリンダとを具備したリーチスタッカの荷役作業装置であって、
ブームの傾斜角を検出するブーム角検出器と、
ブームの長さを検出するブーム長さ検出器と、
前記昇降シリンダと前記伸縮シリンダを操作する作業操作制御部と、
作業操作レバーを操作することにより前記作業操作制御部を介して前記昇降シリンダと前記伸縮シリンダをそれぞれ駆動する作業用油圧装置と、
前記昇降シリンダと前記伸縮シリンダをそれぞれ手動により操作する手動操作と、前記昇降シリンダと前記伸縮シリンダとを操作して荷保持具を垂直方向に昇降させる垂直昇降操作とを切り換え可能な手動/垂直昇降スイッチとを具備し、
前記作業操作制御部は、前記手動/垂直昇降スイッチの垂直昇降操作時に、前記作業操作レバーを昇降操作して前記作業用油圧装置により昇降シリンダを駆動しブームを起伏して荷保持具を昇降すると同時に、当該昇降動作の最初に、前記ブーム角検出器および前記ブーム長さ検出器により検出されたブーム傾斜角とブーム長さから荷保持具の作業半径を演算して目標値として保存し、一定時間ごとに荷保持具の作業半径を演算した現在の荷保持具の作業半径と前記目標値から荷保持具の作業半径のずれ量を求め、その作業半径のずれ量が所定範囲を越えた時に、伸縮シリンダを駆動してブームを伸縮させ、前記荷保持具の作業半径のずれ量を所定範囲内に保持するように構成した
ことを特徴とするリーチスタッカの荷役作業装置。
【請求項2】
作業用油圧装置は、油圧ポンプから供給される作動油を昇降シリンダに給排出する油圧パイロット式の昇降側操作弁と、油圧ポンプから供給される作動油を伸縮シリンダに供給、排出する油圧パイロット式の伸縮側操作弁と、作業操作レバーにより操作される昇降用パイロット弁および伸縮用パイロット弁と、当該昇降用パイロット弁と前記昇降側操作弁の操作部とを接続する第1パイロット圧給排ラインと、当該伸縮用パイロット弁と前記伸縮側操作弁の操作部とを接続する第2パイロット圧給排ラインとを具備し、
当該作業用油圧装置に、手動/垂直昇降スイッチの垂直昇降操作時に、前記第1パイロット圧給排ラインおよび第2パイロット圧給排ラインを遮断し、前記昇降用パイロット弁による操作パイロット圧に対応して、前記昇降側操作弁の操作部に操作パイロット圧を供給する昇降側パイロット圧制御弁と、前記荷保持具の作業半径のずれ量に対応して、前記伸縮側操作弁の操作部に操作パイロット圧を供給する伸縮側パイロット圧制御弁とを設けた
ことを特徴とする請求項1記載のリーチスタッカの荷役作業装置。
【請求項3】
手動/垂直昇降スイッチの手動操作時に、作業操作レバーにより操作された昇降用パイロット弁から第1パイロット圧給排ラインを介して前記昇降側操作弁の操作部に操作パイロット圧を供給し、作業操作レバーにより操作された伸縮用パイロット弁から第2パイロット圧給排ラインを介して伸縮側操作弁の操作部に操作パイロット圧を供給するように構成された
ことを特徴とする請求項2記載のリーチスタッカの荷役作業装置。
【請求項4】
作業用油圧装置に、手動/垂直昇降スイッチの垂直昇降操作時に、第1パイロット圧給排ラインおよび第2パイロット圧給排ラインをそれぞれ遮断する昇降側垂直昇降切換弁および伸縮側垂直昇降切換弁と、第1パイロット圧給排ラインおよび第2パイロット圧給排ラインに操作パイロット圧を検出するパイロット圧検出器を設けた
ことを特徴とする請求項2または3記載のリーチスタッカの荷役作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−46479(P2011−46479A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196158(P2009−196158)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】