説明

リード線の接続構造及び接続方法並びに気化器

【課題】リード線と金の剥離を抑えるようにすること、更に、金の電熱材を気化器の内部空間の壁面に設けられるようにする。
【解決手段】中基板40の下面に低温用電熱材18がパターニングされ、下基板50の上面に凹部51a,53c,53dが形成され、中基板40と下基板50が接合されることによって凹部51aに低温用電熱材18が収まり、低温用電熱材18のパッド18a、18bが凹部53c、53dに収まる。パッド18a,18bにはリード線76,77が接合され、パッド18a,18b及びリード線76,77の上から高抵抗保護膜18gが被覆されている。高抵抗保護膜18gは、(Ta1−xSi1−y(但し、x=0.30〜0.45、y=0.68〜0.70)からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード線の接続構造及び接続方法並びに気化器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー変換効率の高いクリーンな電源として燃料電池が注目されるようになり、燃料電池自動車や電化住宅などへの実用化が進められてきている。また、小型化、高機能化が進められている携帯電話機やノート型パソコンなどにおいても、電源として燃料電池を用いるための研究、開発が進められている。
【0003】
燃料電池としては、水素と酸素の電気化学反応により発電するものや、メタノールといった蒸気状燃料と水蒸気と酸素の電気化学反応により発電するものがある。水素と酸素の電気化学反応により発電する燃料電池を用いる場合、液体状の燃料と水を気化させてから水素に改質するために、気化器や改質器を必要とする。また、蒸気状燃料と水蒸気と酸素の電気化学反応により発電する燃料電池を用いる場合、液体状の燃料と水を気化させるために、気化器を必要とする。気化器としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されたものがある。何れの気化器においても、電熱材を電気ヒータとして用い、電気ヒータに電圧を印加することによって電気ヒータを発熱させ、電気ヒータの熱により燃料を気化させるものである。
【特許文献1】特開2006−23054号公報
【特許文献2】特開2005−147551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電熱材を発熱させるためには、電熱材にリード線を接続して、そのリード線を介して電熱材に電圧を印加することになる。ところで、電熱材の材料として金を用いることがある。リード線を金の電熱材に接合しても、リード線に用いられる良導体である金属は金に対して密着性が低いので、リード線が電熱材から剥離し易い。
また、電熱材を気化器の内部空間の壁面に設ければ、その内部空間に送られた燃料や水が効率よく気化するが、燃料や水が電熱材やリード線に触れて電気分解してしまう。そこで、電熱材やリード線をSiO等の絶縁保護膜で被覆しなければならないが、絶縁保護膜は金の電熱材に対して密着性が低くて剥離し易い。そのため、電熱材を気化器の内部空間の壁面に設けることができない。
【0005】
本発明は、リード線と金の剥離を抑えるようにすること、更に、金の電熱材を気化器の内部空間の壁面に設けられるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、リード線の接続構造において、金を含むパッドと、前記パッドに接合されたリード線と、前記パッド及び前記リード線の上から被覆した保護膜と、を備え、前記保護膜が、構成元素としてTa、Si及びOを含む酸素欠損酸化物からなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のリード線の接続構造において、前記保護膜が、(Ta1−xSi1−y(但し、x=0.30〜0.45、y=0.69〜0.70)からなることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係わる発明は、請求項1に記載のリード線の接続構造において、前記リード線は、コバルト線又はジメット線の何れかからなることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、気化器において、内部空間を形成した気化器本体と、前記内部空間の壁面に設けられ、金からなる電熱材と、前記電熱材に接合されたリード線と、前記電熱材及び前記リード線の上から被覆した保護膜と、を備え、前記保護膜が、構成元素としてTa、Si及びOを含む酸素欠損酸化物からなることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の気化器において、前記保護膜が、(Ta1−xSi1−y(但し、x=0.30〜0.45、y=0.69〜0.70)からなることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係わる発明は、請求項4に記載の気化器において、前記リード線は、コバルト線又はジメット線の何れかからなることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、リード線の接続方法において、金からなるパッドにリード線を接合し、TaとSiOの複合ターゲットを不活性ガスの雰囲気の下においてスパッタリングすることによって、構成元素としてTa、Si及びOを含む酸素欠損酸化物からなる保護膜を前記パッド及び前記リード線の上から被覆することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、構成元素としてTa、Si及びOを含む酸素欠損酸化物からなる保護膜はその酸素欠損のために金に対して密着性が高い。そのため、金のパッドとリード線が保護膜によって被覆されているため、また、金の電熱材とリード線が保護膜によって被覆されているため、リード線がパッドや電熱材から剥離しにくい。
また、電熱材やパッドが保護膜によって被覆されているため、電熱材やパッドを気化器本体の内部空間の壁面に設けて、その内部空間に液体が流れても液体が電熱材やパッドに接しない。それため、液体の電気分解を抑えることができる。ゆえに、電熱材やパッドを気化器本体の内部空間の壁面に設けることができ、液体を効率よく気化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0015】
〔発電装置〕
図1は、発電装置1のブロック図である。この発電装置1は、例えばノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、電子手帳、腕時計、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、ゲーム機器、遊技機、その他の電子機器に備え付けられるものであり、これらの電子機器本体を動作させるための電源として用いられる。
【0016】
発電装置1は、燃料容器2と、反応装置10と、燃料電池型発電セル5と、を備える。燃料容器2には、燃料(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、ブタン、ガソリン)と水が別々に又は混合した状態で貯留されている。図示しないポンプによって燃料と水が混合した状態で反応装置10に供給される。なお、図1では、燃料容器2内の燃料がメタノールであるものとしている。
【0017】
反応装置10は、例えば250〜400℃の比較的高い温度で動作する高温反応部11と、高温反応部11よりも低い温度(例えば90〜140℃)で動作する低温反応部12とを有する。この反応装置10は、例えば、熱損失低減のために後述する断熱容器13に収納される。高温反応部11は改質器15、燃焼器17及び高温用電熱材19を有し、低温反応部12は気化器14、一酸化炭素除去器16及び低温用電熱材18を有する。
【0018】
燃料容器2から反応装置10に供給される燃料と水は、まず、気化器14に送られる。燃料と水が気化器14により気化され、燃料と水の混合気が改質器15に送られる。改質器15は、気化した水と燃料から水素ガス等を触媒反応により生成し、更に微量ながら一酸化炭素ガスを生成する。燃料がメタノールの場合には、次式(1)、(2)のような化学反応が改質器15で起こる。なお、水素が生成される反応は吸熱反応であって、燃焼器17の燃焼熱や高温用電熱材19の熱が用いられる。
【0019】
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(1)
2+CO2→H2O+CO …(2)
【0020】
改質器15で生成された水素ガス等は一酸化炭素除去器16に送られ、更に外部の空気が一酸化炭素除去器16に送られる。一酸化炭素除去器16は、副生された一酸化炭素を触媒により優先的に酸化させることで、一酸化炭素を選択的に除去する。一酸化炭素除去器16において一酸化炭素が酸化する反応は、発熱反応である。以下、一酸化炭素を除去した混合気体を改質ガスという。
【0021】
燃料電池型発電セル5は、燃料極20と、酸素極21と、燃料極20と酸素極21との間に挟まされた電解質膜22とを有する。一酸化炭素除去器16から送られた改質ガスは燃料電池型発電セル5の燃料極20に供給され、更に外部の空気が酸素極21に送られる。そして、燃料極20に供給された改質ガス中の水素が、電解質膜22を介して、酸素極21に供給された空気中の酸素と電気化学反応することによって、燃料極20と酸素極21との間で電力が生じる。燃料極20と酸素極21は負荷(例えば、モータ、DC−DCコンバータ、二次電池等)に接続され、燃料電池型発電セル5で取り出された電力により負荷が動作する。
【0022】
電解質膜22が水素イオン透過性の電解質膜(例えば、固体高分子電解質膜)の場合には、燃料極20では次式(3)のような反応が起き、燃料極20で生成された水素イオンが電解質膜22を透過し、酸素極21では次式(4)のような反応が起こる。
【0023】
2→2H++2e- …(3)
2H++1/2O2+2e-→H2O …(4)
【0024】
一方、電解質膜22が酸素イオン透過性の電解質膜(例えば、固体酸化物電解質膜)の場合には、酸素極21では次式(5)のような反応が起き、酸素極21で生成された酸素イオンが電解質膜22を透過し、燃料極20では次式(6)のような反応が起こる。なお、電解質膜22が固体酸化物電解質膜である場合、一酸化炭素除去器16が設けられずに、改質器15で生成された改質ガスが直接燃料極20に供給されても良い。
1/2O+2e→2O2−・・・(5)
+2O2−→HO+2e・・・(6)
【0025】
燃料極20で電気化学反応せずに残った水素ガス等が燃焼器17に送られる。更に、外部の空気が燃焼器17に送られる。燃焼器17は、水素ガスと酸素を混合させて触媒反応により燃焼させる。
【0026】
〔反応装置〕
次に、反応装置10の具体的構成について説明する。図2は反応装置10を示す斜視図であり、図3は反応装置10の接合体を分解した状態を示す分解斜視図であり、図4は図2の切断線IV−IVに沿った面の矢視断面図である。反応装置10は、図2、図3、図4に示すように、基板30、基板40及び基板50を積層してこれらを接合して形成される。各基板30,40,50の接合は、陽極接合により行うことができる。なお、以下の説明では、便宜上、基板30側を上側、基板50側を下側として説明し、基板30を上基板30といい、基板40を中基板40といい、基板50を下基板50という。
【0027】
基板30,40,50は、ガラス製の基板であり、より詳細には、可動イオンとなるNaやLiを含有したガラス基板である。このようなガラス基板としては、耐熱性ガラス、例えばパイレックス(登録商標)基板を使用することができる。なお、基板30,40,50がシリコン基板であっても良い。
【0028】
これらの基板30,40,50の接合体の略中央部には断熱室61が接合体の上面から下面に貫通している。基板30,40,50の接合体のうち、断熱室61よりも左側の部分が高温反応部11であり、断熱室61よりも右側の部分が低温反応部12であり、高温反応部11と低温反応部12との間に連結部62及び連結部63が設けられている。すなわち、断熱室61は高温反応部11、低温反応部12、連結部62及び連結部63によって囲まれている。
【0029】
基板30,40,50の接合体の長手方向の側面には、酸素導入口64が形成されている。基板30,40,50の接合体の右側面には、水素ガス導入口65、液体燃料導入口66、酸素導入口67、生成物排出口68及び排ガス口69が形成されている。
【0030】
上基板30の両面のうち中基板40との接合面(下面)には、溝が凹部として形成され、中基板40の両面のうち上基板30との接合面(上面)には、上基板30の下面に形成される溝に対応する溝が凹部として形成され、上基板30と中基板40を接合することによって溝が改質器15や一酸化炭素除去器16の流路となる。下基板50の両面のうち中基板40との接合面(上面)には溝が凹部として形成され、中基板40と下基板50を接合することによって下基板50の上面に形成される溝が中基板40の下面により蓋をされて、気化器14や燃焼器17の流路になる。以下、図5〜図7を用いて基板30,40,50について説明する。ここで、図5は図4の切断線V−Vに沿った面の矢視断面図であり、図6は図4の切断線VI−VIに沿った面の矢視断面図であり、図7は図4の切断線VII−VIIに沿った面の矢視断面図である。なお、図5〜図7に示された切断線IV−IVに沿った面の矢視断面図が図4に対応する。
【0031】
〔上基板〕
図5に示すように、上基板30は全体として略矩形状に形成され、上基板30の左前の角部が切り落とされている。上基板30の略中央部には矩形状の貫通孔30aが形成されている。貫通孔30aは断熱室61の一部を形成する。
【0032】
上基板30の中基板40との接合面(上基板30の下面)には溝30b〜溝30fが凹部として形成されている。L字状の溝30bが上基板30の低温反応部12から連結部62を経由して高温反応部11にかけて形成され、葛折り状の溝30cが上基板30の高温反応部11に形成され、溝30bと溝30cが通じている。溝30dが上基板30の連結部63に形成され、溝30dと溝30cが通じている。葛折り状の溝30eが上基板30の低温反応部12に形成され、溝30eの一端が溝30dに通じ、溝30eの他端が上基板30の右縁まで至ってその他端が生成物排出口68を形成する。溝30fが低温反応部12に形成され、溝30fの一端が溝30dと溝30eの合流部に通じ、溝30fの他端が上基板30の右縁まで至ってその他端が酸素導入口67を形成する。
【0033】
上基板30が中基板40に接合された状態では、溝30cが改質器15の流路となり、溝30eが一酸化炭素除去器16の流路となる。
【0034】
〔中基板〕
図6に示すように、中基板40は全体として略矩形状に形成されている。中基板40の略中央部には矩形状の貫通孔40aが形成されている。この貫通孔40aは上基板30と中基板40の接合面に関して上基板30の貫通孔30aの面対称となっており、貫通孔40aは断熱室61の一部を形成する。
【0035】
中基板40の上基板30との接合面(中基板40の上面)には、溝40b〜溝40fが凹部として形成されている。上基板30と中基板40の接合面に関して、溝40bが溝30bに、溝40cが溝30cに、溝40dが溝30dに、溝40eが溝30eに、溝40fが溝30fにそれぞれ面対称になっており、溝40c及び溝40eは葛折り状の形状を有している。但し、溝40fの端部は中基板40の右側の端面まで至らず、溝40eの端部は中基板40の右側の端面まで至らない。また、溝40bの端部の底には貫通孔40rが形成され、その貫通孔40rが中基板40の反対面(下面)まで貫通している。
【0036】
中基板40が上基板30に接合された状態では、溝40cが改質器15の流路となり、溝40eが一酸化炭素除去器16の流路となる。
【0037】
〔下基板〕
図7に示すように、下基板50は全体として略矩形状に形成され、下基板50の左後ろの角部が切り落とされている。下基板50の略中央部には矩形状の貫通孔50aが形成されている。この貫通孔50aは中基板40と下基板50の接合面に関して中基板40の貫通孔40aの面対称となっており、貫通孔50aは断熱室61の一部を形成する。
【0038】
下基板50の中基板40との接合面(下基板50の上面)には、溝50b〜50eが凹部として形成されている。中基板40と下基板50の接合面に関して、溝50cが溝40cに面対称になっている。溝50bは下基板50の右側の端面から連結部62を経由して高温反応部11にかけて形成され、溝50bと溝50cが通じている。溝50bの右端が下基板50の右縁まで至ってその右端が排ガス口69を形成する。溝50dは下基板50の右側の端面から連結部63を経由して高温反応部11にかけて形成され、溝50dと溝50cが通じている。溝50dの右端が下基板50の右縁まで至ってその右端が水素ガス導入口65を形成する。溝50eは溝50dに通じ、更に溝50eは下基板50の前側の端面に至って溝50eの端部が酸素導入口64を形成する。
【0039】
また、下基板50の中基板40との接合面には、略矩形状の凹部51aが形成されている。この凹部51aは下基板50の低温反応部12に対応する位置にあり、凹部51aの左後ろの角部は中基板40の貫通孔40rに対応した位置にある。また、凹部51aは、中基板40の溝40eに重なる位置にある。
【0040】
凹部51aの底にはリブ(凸部)51b〜51iが立設され、リブ51b〜51iの高さは凹部51aの深さに等しいか又はその深さよりも小さい。リブ51b〜51iは互いに平行となっているとともに、凹部51aの左右の壁面に対して平行になっている。最も右にあるリブ51bは、凹部51aの右の壁面から離れており、最も左にあるリブ51iは、凹部51aの左の壁面から離れている。
【0041】
また、リブ51b〜51iの前端は凹部51aの前側の壁面から離れており、リブ51b〜51iの前端は互いに揃った位置にあり、リブ51b〜51iの前端から凹部51aの前側の壁面までの距離が何れも等しい。リブ51b〜51iは右から左へ配列され、リブ51b〜51iの前後方向の長さが、リブ51b〜51iの順に短くなっている。
【0042】
このようなリブ51b〜51iが配列されることによって、これらの間に溝52b〜52hが形成され、リブ51bと凹部51aの右壁面の間に溝52aが形成され、リブ51iと凹部51aの左側面の間に溝52iが形成されている。溝52a〜52iはこれらの順に右から左へ配列されている。そして、リブ51b〜51iの前後方向の長さが上述のように順に短くなるように設定されているので、溝52a〜52iの前後方向の長さも順に短くなっており、溝52aの前後方向の長さが最も長く、溝52iの前後方向の長さが最も短くなっている。
【0043】
ここで、溝52a〜52iの幅は、例えば25〜30μmであり、凹部51a及び溝52a〜52iの深さは、例えば25〜30μm又は120〜150μmである。
【0044】
また、下基板50の中基板40との接合面(下基板50の上面)には、溝50fが凹部として形成されている。この溝50fの一端部が凹部51aの右前の角部に通じ、溝50fの他端部が下基板50の右側の端面に至ってその他端部が液体燃料導入口66を形成する。
【0045】
また、下基板50の上面には、凹部53a,53b,53c,53dが形成されている。凹部53a,53bは溝50cよりも左側にあり、凹部50c,50dは凹部51aよりも右側にある。凹部53a,53bは溝50cに通じているとともにスリット54a,54bを介して下基板50の左縁まで至り、スリット54a,54bが封止材55a,55bによって閉塞されている。凹部53c,53dは凹部51aに通じているとともにスリット54c,54dを介して下基板50の左縁まで至り、スリット54c,54dが封止材55c,55dによって閉塞されている。なお、凹部53a,53bは、溝50cよりも浅く凹設され、凹部53c,53dは、凹部51aよりも浅く凹設されている。
【0046】
下基板50が中基板40に接合された状態では、溝50cが燃焼器17の流路となり、凹部51a,53d,53dが気化器14の内部空間となる。
【0047】
〔電熱材及びリード線並びにそれらの接続構造〕
図8は、中基板40の下基板50との接合面(中基板40の下面)の平面図である。図4及び図8に示すように、中基板40の下面には、葛折り状の高温用電熱材19が形成されている。高温用電熱材19の一端部19aが凹部53aに対応する位置にあり、高温用電熱材19の他端部19bが凹部53bに対応する位置にあり、高温用電熱材19の一端部19aから他端部19bにかけては交差せずに溝50cに対応する位置にある。そのため、中基板40と下基板50が接合されると、高温用電熱材19の一端部19aが凹部53a内に位置し、高温用電熱材19の他端部19bが凹部53b内に位置し、高温用電熱材19の一端部19aから他端部19bにかけては溝50c内に位置する。
【0048】
高温用電熱材19の一端部19a及び他端部19bはパッド状とされ、一端部19aにリード線74が接合され、他端部19bにリード線75が接合されている。リード線74はスリット54aを通って基板30,40,50の外部に延出し、リード線75がスリット54bを通って基板30,40,50の外部に延出している。以下、高温用電熱材19の端部19a,19bをパッド19a,19bという。
【0049】
中基板40の下面には、葛折り状の低温用電熱材18が形成されている。低温用電熱材18の一端部18aが凹部53cに対応する位置にあり、低温用電熱材18の他端部18bが凹部53dに対応する位置にあり、低温用電熱材18の一端部18aから他端部18bにかけては交差せずに凹部51aに対応する位置にある。そのため、中基板40と下基板50が接合されると、低温用電熱材18の一端部18aが凹部53c内に位置し、低温用電熱材18の他端部18bが凹部53d内に位置し、低温用電熱材18の一端部18aから他端部18bにかけては凹部51a内に位置する。
【0050】
低温用電熱材18の一端部18a及び他端部18bはパッド状とされ、一端部18aにリード線76が接合され、他端部18bにリード線77が接合されている。リード線76はスリット54cを通って基板30,40,50の外部に延出し、リード線77がスリット54dを通って基板30,40,50の外部に延出している。以下、低温用電熱材18の端部18a,18bをパッド18a,18bという。なお、リード線74〜77の一例としてはコバルト線又はジメット線であるが、他の材料からなる導線もリード線74〜77に用いても良い。
【0051】
高温用電熱材19及び低温用電熱材18は金からなり、高温用電熱材19及び低温用電熱材18の電気抵抗によって高温用電熱材19及び低温用電熱材18に電流の流れが妨げられ、高温用電熱材19及び低温用電熱材18が発熱する。また、高温用電熱材19及び低温用電熱材18はその温度に依存してその電気抵抗が変化する特性を持ち、高温用電熱材19及び低温用電熱材18が電気抵抗値から温度を読み取る温度センサとしても機能する。
【0052】
図9は、低温用電熱材18の中間部における断面図である。低温用電熱材18と中基板40との間には密着層18c及び拡散防止層18dが介在している。Auからなる低温用電熱材18はガラスからなる中基板40に対して密着性が低いので、中基板40に対する密着性が低温用電熱材18よりも高い密着層18cが中基板40に直接形成されている。密着層18cは例えばTaからなり、密着層18cの抵抗率が低温用電熱材18の抵抗率よりも高い。また、低温用電熱材18が加熱されて昇温すると、AuがTaに又はTaがAuに拡散しやすいので、低温用電熱材18と密着層18cとの間に拡散防止層18dが介在し、拡散防止層18dによってAuとTaの拡散が防止されている。拡散防止層18dは例えばWからなり密着層18cに対しても低温用電熱材18に対しても密着性が高く、更に拡散防止層18dの抵抗率が低温用電熱材18の抵抗率よりも高い。
【0053】
拡散防止層18d上に低温用電熱材18が形成され、更に低温用電熱材18上に拡散防止層18eが形成されている。密着層18c、拡散防止層18d及び拡散防止層18eは低温用電熱材18と同様に葛折り状にパターニングされ、これら密着層18c、拡散防止層18d及び拡散防止層18eの全体が絶縁保護膜18fによって被覆されている。絶縁保護膜18fはSiO2からなる。SiO2からなる絶縁保護膜18fは低温用電熱材18に対して密着性が低いので、絶縁保護膜18fに対する密着性が低温用電熱材18よりも高い拡散防止層18eが低温用電熱材18の上に形成されている。拡散防止層18eは例えばWからなり、拡散防止層18eの抵抗率は低温用電熱材18の抵抗率よりも高い。
【0054】
図10は、低温用電熱材18のパッド18aにおける断面図である。図10に示すように、低温用電熱材18のパッド18aにおいては、拡散防止層18eが形成されておらず、リード線76が低温用電熱材18のパッド18aに接合されている。更に、絶縁保護膜18fは形成されておらず、低温用電熱材18とリード線76の接合部が高抵抗保護膜18gによって被覆されている。
【0055】
高抵抗保護膜18gは、構成元素としてTa、Si及びOを含む酸素欠損酸化物からなり、具体的には高抵抗保護膜18gは(Ta1−xSi1−yからなる。更に具体的にラザフォード後方散乱法(RBS)によって高抵抗保護膜18gの(Ta1−xSi1−yのx、yについて分析した場合、x=0.30〜0.45、y=0.69〜0.70である。なお、分析条件は、Heイオンビームエネルギーを2.275MeVとし、検出角度を160°とした。
高抵抗保護膜18gの(Ta1−xSi1−yは、絶縁体(当該絶縁体をラザフォード後方散乱法(RBS)によって同様に分析した場合、当該絶縁体は(Ta1−xSi0.280.72であって、x=0.30〜0.45である。)に対して酸素欠損を持つものであり、酸素欠損した(Ta1−xSi1−yは低温用電熱材18のAuに対して高い密着性を持ち、酸素欠損した(Ta1−xSi1−yとAuの密着性は、絶縁体(当該絶縁体は(Ta1−xSi0.280.72であって、x=0.30〜0.45である。)とAuの密着性よりも高い。
【0056】
高抵抗保護膜18gは、TaとSiOの複合ターゲットを不活性ガス(例えば、Arガス、Neガス、N2ガス)の雰囲気の下においてスパッタリングすることにより形成されたものである。複合ターゲットの組成比(mol比)は、Ta:SiO=60:40である。スパッタリングによって高抵抗保護膜18gを成膜する際には、不活性ガス雰囲気に少量の酸素ガスを導入する。図11は、不活性ガス雰囲気における酸素ガスの割合(mol%)と、膜厚100nmに成膜された(Ta1−xSi1−yの膜のyとの関係を表したものである。図11に示すように、不活性ガス雰囲気に酸素ガスが導入されていない場合、y=0.3であるが、酸素ガスの割合が2.0mol%である場合、y=0.70である。また、図11に示すように、酸素ガスの割合が1.5〜2.0mol%であると、y=0.69〜0.70であるので、高抵抗保護膜18gを成膜する際の不活性ガス雰囲気に導入する酸素ガスの割合は1.5〜2.0mol%とする。一方、酸素ガスの割合が1.5〜2.0mol%であると、絶縁体の膜が成膜される。なお、図11を作成するにあたって、ラザフォード後方散乱法(RBS)によって組成比の分析を行い、分析条件は何れもHeイオンビームエネルギーを2.275MeVとし、検出角度を160°とした。
【0057】
高抵抗保護膜18gが(Ta1−xSi1−yからなり、y=0.69〜0.70であるので、高抵抗保護膜18gの電気抵抗率が高い。図12は、膜厚100nmに成膜された(Ta1−xSi1−yの膜のyとシート抵抗との関係を表したものである。図12に示すように、y=0.70の場合、シート抵抗が1.0×10Ω/□になり、y=0.69の場合、シート抵抗が7.5×10Ω/□になる。y<0.69の場合、シート抵抗が急に低くなるので、y=0.69〜0.70とする。なお、図12を作成するにあたって、ラザフォード後方散乱法(RBS)によって組成比の分析を行い、分析条件は何れもHeイオンビームエネルギーを2.275MeVとし、検出角度を160°とした。
【0058】
低温用電熱材18のパッド18aがリード線76とともに高抵抗保護膜18gによって被覆されているが、低温用電熱材18のパッド18bもリード線77とともに高抵抗保護膜によって被覆されている。つまり、低温用電熱材18のパッド18bにおいては、拡散防止層18eが形成されておらず、リード線77がパッド18bに接合され、リード線77及びパッド18bの上に(Ta1−xSi1−y(但し、x=0.30〜0.45、y=0.69〜0.70)の膜が成膜されている。
【0059】
また、高温用電熱材19についても低温用電熱材18と同様に、高温用電熱材19と中基板40との間には密着層及び拡散防止層が介在し、更に高温用電熱材19が密着層に被覆され、その密着層が絶縁保護膜によって被覆されている。また、高温用電熱材19のパッド19a,19b上には、密着層及び絶縁保護膜が形成されておらず、リード線74,75がパッド19a,19bに接合され、その上に(Ta1−xSi1−y(但し、x=0.30〜0.45、y=0.69〜0.70)の膜が成膜されている。
【0060】
〔陽極接合のための金属膜〕
中基板40の上面(溝等が形成された部分を除く。)及び下面(低温用電熱材18及び高温用電熱材19が形成されている部分を除く。)には、タンタル等の陽極接合用金属膜がそれぞれ成膜されている。上基板30と中基板40は陽極接合用金属膜を介して陽極接合され、中基板40と下基板50は陽極接合用金属膜を介して陽極接合される。
【0061】
〔改質器の触媒〕
図4に示すように、溝30cの壁面には改質用触媒82が形成され、溝40cの壁面にも改質用触媒83が形成されている。改質用触媒82,83は、例えばアルミナ等を担体として触媒成分(例えば、燃料がメタノールの場合、Cu/ZnO系触媒)を担持したものである。
【0062】
〔改質器等の流路〕
上基板30の溝30cと中基板40の溝40cが重なるようにして、上基板30と中基板40が接合されることで、溝30c及び溝40cが改質器15の流路を形成する。高温反応部11における上基板30と中基板40の接合体が、改質器本体である。
【0063】
また、溝30bと溝40bが重なることで、溝30b及び溝40bが流路を形成し、この流路は気化器14から改質器15に通じる流路である。溝30dと溝40dが重なるようにして、上基板30と中基板40が接合されることで、溝30d及び溝40dが流路を形成し、この流路は改質器15から一酸化炭素除去器16に通じる流路である。
【0064】
〔一酸化炭素除去器の触媒〕
図4に示すように、溝30eの壁面には選択酸化用触媒84が形成され、溝40eの壁面にも選択酸化用触媒85が形成されている。選択酸化用触媒84,85は、例えばアルミナ等を担体として触媒成分(例えば、白金)を担持したものである。
【0065】
〔一酸化炭素除去器等の流路〕
溝30eと溝40eが重なるようにして、上基板30と中基板40が接合されることで、溝30e及び溝40eが一酸化炭素除去器16の流路を形成し、その流路が生成物排出口68まで通じている。なお、低温反応部12における上基板30と中基板40の接合体が、一酸化炭素除去器本体である。
【0066】
生成物排出口68には図示しない配管が嵌め込まれ、その配管が断熱容器の外部に延出される。また、溝30fと溝40fが重なることで、溝30f及び溝40fが酸素導入口67から一酸化炭素除去器16に通じる流路を形成する。酸素導入口67には図示しない配管が嵌め込まれ、その配管が断熱容器の外部に延出される。
【0067】
〔燃焼器の触媒〕
図4に示すように、溝50cの壁面には燃焼用触媒86が形成されている。燃焼用触媒86は、アルミナ等を担体として触媒成分(例えば、白金)を担持したものである。
【0068】
〔燃焼器の流路〕
中基板40と下基板50が接合されることで、溝50cが中基板40の下面によって塞がれ、溝50cが燃焼器17の流路を形成する。中基板40と下基板50の接合により、溝50dが水素ガス導入口65から燃焼器17に通じる流路を形成し、溝50eが酸素導入口64からその流路に合流する流路を形成し、溝50bが排ガス口69から燃焼器17に通じる流路を形成する。酸素導入口64、水素ガス導入口65、排ガス口69にはそれぞれ図示しない配管が嵌め込まれ、それら配管が断熱容器の外部に延出される。なお、高温反応部11における中基板40と下基板50の接合体が、燃焼器本体である。
【0069】
〔気化器等の流路〕
中基板40と下基板50が接合されることで、凹部51aが中基板40の下面によって塞がれ、その凹部51aが内部空間となる。そして、凹部51aにおける溝52a〜52iが気化器14の流路を形成する。なお、低温反応部12における中基板40と下基板50の接合体が、気化器本体である。
【0070】
また、凹部51aの左後ろ角部が中基板40の貫通孔40rに重なり、凹部51aが溝30b及び溝40bによる流路に通じる。また、中基板40と下基板50の接合により、溝50fが液体燃料導入口66から気化器14に通じる流路を形成する。液体燃料導入口66には図示しない配管が嵌め込まれ、その配管が断熱容器の外部に延出される。
【0071】
〔反応装置の製造方法〕
反応装置10の製造方法について説明する。
まず、矩形状をなし表裏面が平坦かつ互いに平行な基板(シリコンウェーハー又はガラス基板)を3枚準備する。次いで、各基板から上基板30、中基板40、下基板50を製造する。具体的には、上基板30用の基板を洗浄し、その基板の一方の面にドライフィルムを貼り付け、そのドライフィルムをフォトリソグラフィー法によりパターニングし、残留したドライフィルムをマスクとして、微細紛を含んだ圧縮エアーを吹き付けてサンドブラストを行う。このようなサンドブラスト法により、貫通孔30a、溝30b〜30eを基板上に加工して形成する。その後、BF剥離液によりドライフィルムを剥離し、その基板を洗浄し、ダイサーにより所望の形状に切り出すことにより上基板30を得る。
【0072】
次に、中基板40用の基板を洗浄し、基板の一方の面にタンタル等の陽極接合用金属膜をスパッタにより成膜する。次いで、陽極接合用金属膜の上にドライフィルムを貼り付け、ドライフィルムをフォトリソグラフィー法によりパターニングする。残留したドライフィルムをマスクとしてサンドブラスト法を行うことによって、貫通孔40a、溝40b〜40f及び貫通孔40rを基板に加工して形成し、その後ドライフィルムをBF剥離液により除去する。次に、気相成長法(例えば、スパッタリング法、蒸着法)によってその基板の他方の面にタンタルの膜、タングステンの膜、金の膜、タングステンの膜を順に積層し、それらの膜をフォトリソグラフィー法、エッチング法によりパターニングする。このようなパターニングによって、上のタングステン膜から拡散防止層18eを形成し、金の膜から低温用電熱材18及び高温用電熱材19を形成し、下のタングステン層から拡散防止層18dを形成し、タンタルの層から密着層18c及び陽極接合用金属膜パターンを形成する。続いて、SiOの膜を成膜し、その膜をパターニングすることによって、その膜のうち陽極接合用金属膜パターンの上の部分と、低温用電熱材18のパッド18a,18bの上の部分と、高温用電熱材19のパッド19a,19bの上の部分を除去する。その後、その基板を洗浄し、ダイサーにより所望の形状に切り出すことにより中基板40を得る。
【0073】
次に、下基板50用の基板を洗浄し、その基板の一方の面にドライフィルムを貼り付け、そのドライフィルムをフォトリソグラフィー法によりパターニングする。残留したドライフィルムをマスクとしてサンドブラスト法を行うことによって、貫通孔50a、溝50b〜50fをその基板に加工して形成し、ドライフィルムをBF剥離液により除去する。次に、凹部51aに対応する部分以外をドライフィルムでマスクし、例えばイオンエッチング法(例えば、高速加工レートで微細加工を行えるDEEP RIE法、磁気中性線放電プラズマを用いたNLD方式DEEP RIE法)、機械切削法(例えば、先端部が直径約2μm程の超硬合金製マイクロツールを備えたマイクロツール加工機を用いて深掘加工できるマイクロツール加工法)又はレーザ法(例えば、加工の際に溝の幅は不変であって、走査回数を増やすのみで深さ方向の加工が可能なフェムトム秒レーザ法)により加工し、凹部51a、溝52a〜52iを形成する。その後剥離液によりドライフィルムを剥離し、その基板を洗浄し、ダイサーにより所望の形状に切り出すことにより下基板50を得る。
【0074】
次いで、上基板30の溝30c,30e,中基板40の溝40c,40e,下基板50の溝50cにアルミナゾルを塗布した後、溝30c及び40cには改質用触媒82,83の触媒成分を例えばウォッシュコート法により担持させ、溝30e及び溝40eには選択酸化用触媒84,85の触媒成分を担持させ、溝50cには燃焼用触媒86の触媒成分を担持させる。
【0075】
次に、上基板30側を陰極とし、中基板40の上面の陽極接合用金属膜を陽極として、上基板30及び中基板40の全体を250〜500℃に加熱し、上基板30を中基板40に陽極接合する。ここで、上基板30の左前角部が切り落とされているので、電極を陽極接合用金属膜に接して、その陽極接合用金属膜に電圧を印加することができる。
【0076】
リード線74〜76の接続方法については、まず、中基板40の高温用電熱材19のパッド19a,19bにリード線74,75をそれぞれボンディングし、低温用電熱材18のパッド18a,18bにリード線76,77をそれぞれボンディングする。次に、高温用電熱材19のパッド19a,19b及び低温用電熱材18のパッド18a,18bを除いて中基板40の下面にハードマスクを施す。次に、TaとSiOの複合ターゲットを不活性ガス(例えば、Arガス、Neガス、N2ガス)の雰囲気の下においてスパッタリングし、(Ta1−xSi1−yの膜を高温用電熱材19のパッド19a,19b及び低温用電熱材18のパッド18a,18bの上に成膜する。ここで、複合ターゲットの組成比(mol比)をTa:SiO=60:40とし、1.5〜2.0mol%の酸素ガスを不活性ガス雰囲気に導入する。なお、(Ta1−xSi1−yの膜については、x=0.30〜0.45、y=0.69〜0.70である。
【0077】
(Ta1−xSi1−yの膜についてy=0.69となるようにする成膜方法及びその条件は、以下のようにする。
成膜方法:スパッタ法
成膜条件
ターゲット: Ta:SiO=60:40(但し、モル比)である焼結ターゲット
到達圧力: 5×10―4Pa
ガス流量: 全体ガス流量50sccm(98.5%Arガス+1.5%O2ガス)
スパッタ圧力: 0.3Pa
プレスパッタ: 100W、5min
本スパッタ: 100W、17min
膜厚: 100nm
【0078】
一方、(Ta1−xSi1−yの膜についてy=0.70となるようにする成膜方法及びその条件は、以下のようにする。
成膜方法:スパッタ法
成膜条件
ターゲット: Ta:SiO=60:40(但し、モル比)である焼結ターゲット
到達圧力: 5×10−4Pa
ガス流量:全体ガス流量50sccm(98.0%Arガス+2.0%O2ガス)
スパッタ圧力:0.3Pa
プレスパッタ:100W、5min
本スパッタ:100W、17min
膜厚:100nm
【0079】
(Ta1−xSi1−yの膜についてxの値は、上記yの値で任意に決まる。
【0080】
リード線74〜76を接続した後、下基板50側を陰極とし、中基板40の下面の陽極接合用金属膜パターンを陽極として、下基板50及び中基板40の全体を250〜500℃に加熱し、下基板50を中基板40に陽極接合する。ここで、下基板50の左後ろ角部が切り落とされているので、電極を陽極接合用金属膜パターンに接して、その陽極接合用金属膜パターンに電圧を印加することができる。
【0081】
次に、リード線74〜77が通されたスリット54a〜54dを低融点ガラスで封止する。そして、酸素導入口64、水素ガス導入口65、液体燃料導入口66、酸素導入口67、生成物排出口68及び排ガス口69にそれぞれ配管を嵌め込む。次に、基板30,40,50の接合体を断熱容器に収容して、配管を断熱容器から外に延出させ、リード線74〜76を断熱容器から外に延出させ、断熱容器の内部を排気して真空状態又は亜真空状態にする。
【0082】
以上により、反応装置10が製造される。以上の製造方法においては、基板30,40,50を接合すれば改質器15、一酸化炭素除去器16、燃焼器17及び気化器14を構成することができるので、反応装置10を簡単に製造することができ、その製造コストを抑えることができる。
【0083】
〔反応装置の動作〕
次に、反応装置10の動作について説明する。低温用電熱材18及び高温用電熱材19によって反応装置10が加熱されている状態で、燃料容器2の水と燃料が液体燃料導入口66から溝50fに供給されると、液体燃料と水の混合液が凹部51aに流れ込み、溝52a〜52iの前端側から後端側に向けて流れる。そして、溝52a〜52iの後端部寄りで混合液が気化される。各溝52a〜52iの後端部においては、凹状メニスカスが形成されるために、単位体積当たりの混合液の表面積が増大するので、混合液の気相との界面面積が増大し混合液は気化されやすくなる。したがって、溝52a〜52iに流入した混合液が気化する際に、特に凹状メニスカスのうち周縁部のインターライン領域において速い気化速度で安定した気化が生じる。そのため、気化器14内での突沸を抑えることができ、気化された燃料と水の混合気の圧力変動を抑えることができる。
【0084】
また、液体燃料と水の混合液が凹部51aから凹部53c,53dに流れ込んでも、低温用電熱材18のパッド18a,18bやリード線76,77が高抵抗保護膜18gによって覆われているから、その混合液がパッド18a,18bやリード線76,77に接しない。そのため、混合液が電気分解することはなく、電流のリークも生じない。従って、凹部53c,53dにおいて気泡が発生せず、脈動や突沸を抑えることができる。
【0085】
気化器14の凹部51aにおいて気化された混合気が貫通孔40r、溝30b,40bを通って改質器15の溝30c、40cに送られる。混合気が溝30c,40cを流動している時に、触媒反応により改質され、水素、二酸化炭素、一酸化炭素等が生成される(メタノールの場合、化学反応式(1)、(2)参照。)。
【0086】
溝30c,40cで生成された水素等は溝30d,40dを通って一酸化炭素除去器16の溝30e,40eに送られる。また、外部の空気が酸素導入口67へ供給されて、溝30f,40fを通って溝30e,40eに送られる。そして、水素等と空気が混合されて溝30e,40eを流動し、一酸化炭素が優先的に酸化されて除去される。一酸化炭素が除去された改質ガスが生成物排出口68から排出されて、燃料電池型発電セル5の燃料極20に供給される。
【0087】
燃料極20で電気化学反応せずに残った水素ガス等が水素ガス導入口65に導入され、溝50dを通って溝50cに送られる。また、外部の空気が酸素導入口64へ供給されて、溝50dを通って溝50cに送られる。そして、水素等と空気の混合気が溝50cを流動し、水素が燃焼する。生成された排ガスが溝50bを通って排ガス口69から排出される。
【0088】
以上のように燃料と水が反応装置10に供給され続けると、燃焼器17の燃焼熱によって高温反応部11と低温反応部12が加熱される。燃焼器17の燃焼熱は連結部62及び連結部63を通じて低温反応部12に伝熱し、高温反応部11と低温反応部12の間で温度差が生じる。ここで、低温反応部12と高温反応部11の間に断熱室61が形成され、熱伝導の経路が連結部62と連結部63に限られているので、低温反応部12と高温反応部11の温度差を大きくすることができ、低温反応部12及び高温反応部11を所望の温度で動作させることができる。低温反応部12が所望の温度(90〜140℃)を超えたら、低温用電熱材18を止め、高温反応部11が所望の温度(250〜400℃)を越えたら、高温用電熱材19を止める。
【0089】
〔効果〕
高抵抗保護膜18gの(Ta1−xSi1−yについてy=0.69〜0.70であるので、高抵抗保護膜18gの電気抵抗率が高い。そのため、凹部53c,53dに流れ込んだ混合液が電気分解することはなく、電流のリークも生じない。電流リークが生じないので、低温用電熱材18の電気抵抗値を正確に測定することができ、その電気抵抗値から正確な温度を測定することができる。混合液の電気分解が抑えられると、脈動も抑えることができ、気化器14から改質器15へ安定した供給が行われる。
【0090】
また、高抵抗保護膜18gの(Ta1−xSi1−yについてy=0.69〜0.70であるので、(Ta1−xSi1−yが酸素欠損しており、高抵抗保護膜18gが低温用電熱材18のパッド18a,18bのAuに対して密着しやすい。そのため、高抵抗保護膜18gによってパッド18a,18bを被覆することができ、パッド18a,18bへの混合液の接触を確実に防止できる。そのため、低温用電熱材18を気化器14の内側空間の壁面に形成することができ、混合液を効率よく加熱することができる。また、低温反応部12が発熱しだしてから所望の温度に達するまでの起動時間を短くすることができる。
【0091】
また、この反応装置10においては、改質器15、一酸化炭素除去器16及び燃焼器17の流路に加えて気化器14の流路も基板30,40,50の接合体に設けられている。そのため、反応装置10を用いた発電装置1全体を小型化することができる。
【0092】
また、低温用電熱材18、高温用電熱材19及び燃焼器17の熱源を改質器15、一酸化炭素除去器16の反応だけでなく、気化器14における気化に用いられるので、エネルギー利用効率が向上する。そのうえ、一酸化炭素除去器16における水素の選択酸化反応が発熱反応であり、一酸化炭素除去器16の溝30e,40eに気化器14の凹部51aが重なっているので、水素の選択酸化反応の熱が気化器14における気化に有効に用いられる。
【0093】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
上記実施形態では、燃料電池型発電セル5が水素と酸素の電気化学反応によって発電するものであったが、燃料電池型発電セル5がメタノール等の気体燃料と水蒸気と酸素の電気化学反応によって発電するものでも良い。この場合、図1において、改質器15及び一酸化炭素除去器16を設けずに、気化器14で気化した燃料と水の混合気を燃料電池型発電セル5の燃料極20に送れば良く、図4においては改質用触媒82,83や選択酸化用触媒84,85を設けなければ良い。
また、上記実施形態では、パッド18a,18bが電熱材18の両端部に形成されているが、電熱材18の両端部でなくとも良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施形態における気化器を用いた発電装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における気化器を用いた反応装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における気化器を用いた反応装置の斜視図である。
【図4】図2の切断線I−Iに沿った面の矢視断面図である。
【図5】図4の切断線V−Vに沿った面の矢視断面図である。
【図6】図4の切断線VI−VIに沿った面の矢視断面図である。
【図7】図4の切断線VII−VIIに沿った面の矢視断面図である。
【図8】中基板の下面を示した平面図である。
【図9】電熱材の中間部における断面図である。
【図10】本発明の実施形態におけるリード線の接続構造を示した断面図である。
【図11】酸素欠損酸化物(Ta1−xSi1−yを成膜する際における導入酸素の割合とyとの関係を示したグラフである。
【図12】酸素欠損酸化物(Ta1−xSi1−yにおけるyとシート抵抗との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0095】
14 気化器
18 低温用電熱材
18a、18b パッド
18g 高抵抗保護膜
19 高温用電熱材
19a、19b パッド
40 中基板
50 下基板
51a、53c、53d 凹部
74〜77 リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金を含むパッドと、
前記パッドに接合されたリード線と、
前記パッド及び前記リード線の上から被覆した保護膜と、を備え、
前記保護膜が、構成元素としてTa、Si及びOを含む酸素欠損酸化物からなることを特徴とするリード線の接続構造。
【請求項2】
前記保護膜が、(Ta1−xSi1−y(但し、x=0.30〜0.45、y=0.69〜0.70)からなることを特徴とする請求項1に記載のリード線の接続構造。
【請求項3】
前記リード線は、コバルト線又はジメット線の何れかからなることを特徴とする請求項1に記載のリード線の接続構造。
【請求項4】
内部空間を形成した気化器本体と、
前記内部空間の壁面に設けられ、金を含む電熱材と、
前記電熱材に接合されたリード線と、
前記電熱材及び前記リード線の上から被覆した保護膜と、を備え、
前記保護膜が、構成元素としてTa、Si及びOを含む酸素欠損酸化物からなることを特徴とする気化器。
【請求項5】
前記保護膜が、(Ta1−xSi1−y(但し、x=0.30〜0.45、y=0.69〜0.70)からなることを特徴とする請求項4に記載の気化器。
【請求項6】
前記リード線は、コバルト線又はジメット線の何れかからなることを特徴とする請求項4に記載の気化器。
【請求項7】
金を含むパッドにリード線を接合し、
TaとSiOの複合ターゲットを不活性ガスの雰囲気の下においてスパッタリングすることによって、構成元素としてTa、Si及びOを含む酸素欠損酸化物からなる保護膜を前記パッド及び前記リード線の上から被覆することを特徴とするリード線の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−251393(P2008−251393A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92663(P2007−92663)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】