説明

ルピナス属の植物から抽出され又は形質転換型で製造されるタンパク質、及びその使用方法

本発明は、種子、子葉又はルピナス属の植物由来のタンパク質の抽出と同様に、組み換え型において該タンパク質を製造するため、及び遺伝子組み換え植物中に該タンパク質を発現するための方法に関する。このタンパク質による優れた特徴により、抗真菌剤としての前記タンパク質に大きな可能性を与える強力な抗真菌特性及び抗卵菌活性、(2)特に、不健康又は自然衰弱した植物に対する強い植物成長促進活性、(3)実地条件下での使用に耐えるための変性に対する優れた耐性、(4)タンパク質分解作用に対する大きな感受性により生じる環境への無害性及び人に対する無毒性、及び(5)よくバランスの取れたアミノ酸組成が生じる。ここでは、ヒト又は動物の栄養の補助剤として、抗真菌剤、殺虫剤、成長促進剤、肥料として、又は遺伝子組み換え生物の製造において、前記タンパク質の使用、又はその生物活性を維持するタンパク質の修飾について特許を請求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学の分野において、抗真菌剤、殺虫剤、農業に有用な科学及び農業の分野に属する成長促進剤又は肥料としての実用的な使用、並びにヒト及び動物栄養の分野に属する動物の食料中の補助剤としての使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ルピナス属の種子、子葉又は胚から抽出された、抗真菌性、抗卵菌性及び植物成長促進特性、並びに植物体を侵す病原体の制御及び植物バイオ刺激薬としての適用性を有するタンパク質に関する。前記タンパク質は、植物に直接使用されてよく、また、該植物は、その組織中に該タンパク質が発現するように遺伝子操作されていてもよい。加えて、前記タンパク質の通常ではない固有特性により、該タンパク質は、ヒト及び他の動物の食料中の補助剤としての濃縮タンパク質製造に有益に用いることができる。
【0003】
また、本発明は、抗真菌剤、殺虫剤、植物成長促進剤、肥料、又は、ヒト又は動物の栄養の補助剤として、前記ルピナスタンパク質と同様に、該ルピナスタンパク質のアミノ酸残基の配列をコードする遺伝子フラグメントに対応するヌクレオチドDNA配列、該ルピナスタンパク質をコードする遺伝子で形質転換された微生物、及び、その利用方法を提示するものである。
【0004】
本発明の目的は、一又はそれ以上のアミノ酸残基の欠損、置換又は付加、又は、例えば糖鎖形成などの化学修飾を受けた後にその生物活性が維持されている上述したアミノ酸残基の配列によって特徴付けられたタンパク質を提供することである。
【0005】
病原体の制御は、世界的に最も重要である作物に関して重大な問題となる。病原性の菌類は、特に農産品の貯蔵に関して重要である。現在、菌類の生育の制御は、通常、化学的な抗真菌剤の大量使用によって行われる。しかしながら、現在市販で利用可能な植物性薬剤は、いくつかの深刻な不都合がある。一つは、前記植物性薬剤は、経済的及び環境的に高いコストを示す。また、一方では、多くの真菌類は、主要な抗真菌剤に対して耐性機構を発展させる。そのため、往々にして、前記抗真菌剤は市販開始から2年で役に立たなくなる。
【0006】
植物は、動物における免疫学的システムを有してはいないが、病原菌の攻撃に対する固有の抵抗を発達させてきた。しかしながら、近代農業において植物成長、収穫及び貯蔵に用いられる技術は、病原菌の成長を多くの場合は良好又は最適な条件で進めることになる。
【0007】
また、作物に害を与える微生物病原菌の数は極めて多い。例えば、Alternaria属, Ascochyta属, Botrytis属, Cercospora属, Colletotrichum属, Diplodia属, Erysiphe属, Fusarium属, Gaeumanomyces属, Macrophomina属, Nectria属, Phoma属, Phomopsis属, Phymatotrichum属, Phytophthora属, Plasmopara属, Puccinia属, Pythium属, Rhizoctonia属, Uncinula属, 及び Verticillium属を挙げることができる。市販の抗真菌剤で現在利用可能なものの使用は、前記属の数種類に対してだけに制限され、植物感染の制御には効果的な解決策ではない。
【0008】
微生物病原菌に対するもう一つの戦略は、強力な抗真菌性活性を有する生体起源の物質の同定及び精製である。このような物質の化学式の同定は、植物及び微生物のような様々な有機体を調査し、次にその抗真菌性を検査し、最後に単離して特徴付けることにより行われる。
【0009】
このような方法により、抗真菌性タンパク質の多くの種類は既に単離されている。前記単離された抗真菌性タンパク質は、例えば、キチナーゼ(chitinase)、キチンと強く結合するシステインに富むタンパク質(cysteine-rich protein)、β‐1,3‐グルカナーゼ、permeatin、チオニン、脂質伝達タンパク質(lipid transfer protein)を挙げることができる。このようなタンパク質は、病原菌の攻撃に対する植物の生体防御の基本的な役割を担うと考えられている。
【0010】
いくつかの方法は、公知文献において、抗真菌性タンパク質の利用について記載されている。前記抗真菌性タンパク質は、病原体又は該抗真菌性タンパク質を発現する遺伝子導入植物から直接抽出されたものである。前記抗真菌性タンパク質は、ほとんどの場合、キチナーゼ、グルカナーゼ、オスモチン型タンパク質(osmotin-type protein)及びリゾチーム(lysozyme)を含む方法論で利用される。種々の研究の結果、上述した抗真菌性タンパク質が過剰発現するよう遺伝子操作された植物は、多くの病原菌に対して強い耐性を示すことが証明された(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
分子生物学の最新技術は、組み換えDNA技術を発展させ、その結果、抗真菌性タンパク質をコードする遺伝子を用いた植物の形質転換を可能にした。この方法は、通常、対象のタンパク質をコードする遺伝子を、植物組織に挿入する。その後、遺伝子組み換え植物組織から植物の全体が再生される。
【0012】
しかしながら、前記抗真菌性タンパク質のいくつかは、その活性が、特にカリウムイオン、ナトリウムイオン、又はカルシウムイオンの存在下では減少する。そのため、前記タンパク質が生体外における活性で強力な抗真菌性活性を示したとしても、形質転換植物の組織内では当然高い生理的濃度のイオンが存在しているため、十分な効果が得られないことがある。
【0013】
結論として、植物に影響を及ぼす病原菌との戦いにおいて、抗病原菌特性を有する生体起源の新規な化合物の同定及び精製することが急務である。前記化合物は、多様な病原菌に対して効果的であり、生体内条件下で生物活性を維持することができることが特に重要である。
【0014】
慣行農法は、長い期間を経て最適化されている。その結果、前記慣行農法は、植物成長及び成熟を促進し、作物生産を増加させてきた。その一方で、中長期的には、地球上の多くの地域で食糧不足が起こることは予測可能である。環境的に制御された条件下で植物成長を制御する現在の技術は、高価であり、複雑な装置を必要とする。これらの理由により、多くの研究者は、作物の生長及び成熟に促進効果(boosting effect)を示す自然物又は合成物である生物活性物質の研究及び報告がなされている。しかしながら、これらの物質のほとんどは、実際の農業条件下での実用化は確立されていない。従って、環境にやさしく、ヒト、動物、及び環境に無毒な植物成長促進剤を発見又は開発することがますます重要となっている。
【0015】
マメ科の植物、特に、その種子は、世界的に、ヒト及び動物栄養の主要なタンパク源であると思われる。この点、大豆は、高タンパク含有量及び種子の品質だけでなく、豊富な油分においても、優れた役割を果たす。しかしながら、農業の観点から、大豆は、肥沃な土壌と豊富な水を必要とする。過去数十年間にわたって、ルピナス属の植物は、大豆と比較して、強靭であり、大きな可能性を有するという地位を獲得している。また、前記ルピナス属の植物の種子は、大豆と比較して同程度のタンパク質及び油分を有しており、その一方で、該ルピナス属の植物は、貧弱な土壌及び水の利用性が低い条件下でも十分に適応することができる。これらの理由から、前記ルピナス属の植物は、しばしば、大豆の「貧しいいとこ」と思われてきた。
【0016】
従来の野生型ルピナスの種子中には、動物にとって有毒であるアルカノイドが自然に高水準で存在するので、該ルピナス属の種子を全体培養や、動物及びヒトの消費の為に利用することが長く妨げられてきた。これが、ルピナス培養が大豆の培養よりはるかに遅れた主な原因である。ポルトガルでは、例えば、従来のルピナス種子の消費は、長くビールの摂取に関連している。前記ポルトガルで消費されるルピナス種子は、先ず、水で煮沸されて(100℃に加熱することで、発芽能は破壊されるが、吸水処理は妨げられない)、次に、流水下に数日間浸漬されて、毒性アルカロイドが取り除かれる。しかしながら、最近の繁殖方法を利用することで、従来の苦い栽培品種(アルカロイド含有量>0.004% w/w)とは対照的に、低いアルカロイド含有量(<0.004% w/w)を示す種子であるいわゆる甘いルピナス品種とすることができる。このため、前記甘いルピナス品種の種子は、ヒト及び動物の食料として安全に用いることができる。
【0017】
従って、かつて何十年か前に大豆で起こったように、ヒト及び動物栄養両方のためにルピナス派生食品の発展が増大することが予測可能である。これは、アルブミン又はグロブリンのどちらかのルピナス種子タンパク質の場合に特に重要である。
【特許文献1】欧州特許第0392225号明細書
【非特許文献1】Fraley, R.T., Rogers, S.G., Horsch, R.B., Sanders, P.R., Flick, J.S., Adams, S.P., Bittner, M.L., Brand, L.A., Fink, C.L., Fry, J.S., Galluppi, G.R., Goldberg, S.B., Hoffman, N.L. & Woo, S.C. (1983). Expression of bacterial genes in plant cells. Proceedings of the National Academy of Sciences USA, 80, 4801-4807.
【非特許文献2】Ferreira, R.B., Franco, E. & Teixeira, A.R. (1999). Calcium- and magnesium-dependent aggregation of legume seed storage proteins. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 47, 3009-3015.
【非特許文献3】Ferreira, R.B., Freitas, R.L. & Teixeira, A.R. (2003). Self- aggregation of legume seed storage proteins inside the protein storage vacuoles is electrostatic in nature, rather than lectin-mediated. FEBS Letters, 534, 106-110.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、収穫量に影響を与える幅広い病原体を制御することができ、生体内条件下でも、ルピナス属の植物の生物活性を維持しながら、植物成長促進剤として働く生体起源の化合物を同定し、精製することに関する技術的課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、ルピナス属の植物に含まれるタンパク質が、以下の顕著な特徴を有することを見出し、かつ同定して本発明を成すに至った。(i)抗真菌剤として大きな可能性を与えてくれる強力な抗真菌性及び抗卵菌活性、(ii)不健康又は自然衰弱した植物に用いられる強い植物成長促進活性、(iii)実地条件下での使用に耐えることができる変性に対する優れた抵抗力,(iv)環境に対して無害であり、ヒト及び動物に対して無毒であるタンパク質加水分解酵素に対する非常に高い感受性、及び(v)よくバランスの取れたアミノ酸構成。
【0020】
従って、本発明の第1の態様は、ルピナス属の植物から抽出されたタンパク質において、(a)下記(B)で表わされるアミノ酸残基の配列を備え、
(B)

【0021】
(b)(B)で表わされるアミノ酸残基の配列中、一つ以上のアミノ酸残基が欠損、置換、付加、又は修飾されており、該タンパク質が抗真菌性及び抗卵菌活性、植物成長促進活性、又は生物活性維持特性を示すことを特徴とする。
【0022】
本発明の第2の態様は、前記タンパク質をコードするDNAフラグメントにおいて、(a)下記(A)で表されるヌクレオチド配列を備え、
(A)

【0023】
(b)(A)で表わされるヌクレオチド配列中、一つ以上のヌクレオチドが欠損、置換、付加、又は修飾されており、抗真菌活性及び抗卵菌活性、植物成長促進活性、又は生物活性維持特性を有するタンパク質をコードすることを特徴とする。
【0024】
本発明は、組み換え型の中で直接用いるか、遺伝子組み換え生物によって発現させたもののどちらかを、抗真菌剤、殺虫剤、成長促進剤又は肥料としての前記タンパク質の使用又はその製造に関する。最後に、本発明は、ヒト又は動物の栄養中の補助剤として含まれるタンパク質の使用、又はその製造方法を考慮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、菌類及び卵菌類の植物への病原菌の発芽及び胞子の成熟に強力な抗真菌特性を有し、かつ、特に不健康又は自然衰弱した植物に用いられる植物成長促進活性を有する新規なタンパク質に関する。本発明はまた、ヒト又は動物の栄養中の補助剤として含まれるタンパク質の使用、又はその製造方法を考慮する。ルピナス由来のタンパク質をコードする遺伝子フラグメントのDNAヌクレオチド配列は、植物から単離されたいかなる抗真菌性タンパク質とも、主要な相同性を共有しない。ルピナス由来の前記タンパク質は、植物中に記載される抗真菌性タンパク質内に、新型のタンパク質を構成する。
【0026】
本発明における前記タンパク質は、ルピナス属の発芽種子から摘出した子葉から精製したものである。本発明は、植物組織からタンパク質を分離するために採用された方法、該タンパク質をコードする遺伝子フラグメント(A)のDNAヌクレオチド配列、及び該配列に対応するアミノ酸残基(B)の配列の説明を含む。
(A)

【0027】
(B)

【0028】
前記タンパク質は、ルピナス属の胚の存続期間のほんのわずかな時期にのみ、自然に発生すると考えられる。本発明の発明者らは、ルピナス属由来の主な種子貯蔵タンパク質であるβコングルチンがルピナスタンパク質の生合成前駆体であることを証明した。実際、前記ルピナスタンパク質は、数レベルの化学修飾を受けた修飾ポリマーである。これは、アミノ酸残基及びそれに対応するヌクレオチドの配列決定を含む研究の困難性を大いに増加させる。種子形成の間、前記βコングルチンをコードする遺伝子は、転写されて、対応するmRNAを作り、該mRNAの翻訳により、βコングルチンの生合成前駆体が合成される。前記前駆体は、その後、広範囲に糖鎖形成を含むプロセシングを受け、βコングルチンを構成する数十種類のサブユニットを製造する。以下の栄養成長のサイクルにおいて、発芽の開始後数日、βコングルチンの異化の初期段階は、該βコングルチンのサブユニットの全て又は大部分のタンパク質分解的切断に関連し、その結果、本発明において説明されたタンパク質に対応する主なサブユニットである天然タンパク質が蓄積される。宿主植物に本来備わっている固有の抗菌性により、該抗菌性を有する前記タンパク質は、菌類及び昆虫類の攻撃に最も敏感な植物の生命段階の間、発達する植物の子葉中に、非常に高濃度で維持される。数日後、前記タンパク質は分解され、該タンパク質のアミノ酸は、苗の成長に用いられる。
【0029】
本発明におけるルピナスタンパク質は、公知文献に記載されている他の抗真菌性タンパク質と区別するいくつかの特性を示す。これは、動物又は植物に影響を及ぼす菌類を制御するための効果的な方法を開発する大きな可能性を備えた有望な目標を生み出す。前記特性は、(1)抗真菌剤としての前記タンパク質に大きな可能性を与える強力な抗真菌特性及び抗卵菌活性、(2)特に、不健康又は自然衰弱した植物に対する強い植物成長促進活性、(3)実地条件下での使用に耐えるための変性に対する優れた耐性、(4)タンパク質分解作用に対する大きな感受性により生じる環境への無害性及び人に対する無毒性、及び(5)よくバランスの取れたアミノ酸組成を有することである。
【0030】
前記タンパク質は、殺虫剤、成長促進物質又は肥料として用いてもよく、ヒト又は動物の栄養中の食品補助剤として用いてもよい。
【0031】
現代の農業における2つの実際的な問題は、不健康又は自然衰弱した植物に見られる成長減退又は成長阻害、及び通常有効なバイオ刺激薬に関連する毒性である。ルピナス属の植物の組織から抽出した前記タンパク質は、植物の成長及び成熟に強い成長促進活性を示す。実際、前記タンパク質を含むルピナス調製物又は抽出物は、例えば、ブドウ、バラ、スイカ及びトマトなどを含む検査植物の全てに強いバイオ刺激活性を有する。この効果が、200μg/ml以上の濃度の前記タンパク質を含む前記天然タンパク質によるものであることは周知である。前記ルピナスタンパク質の非純粋抽出物に含まれる他の要素の存在は、葉の肥料として働くため、前記調製物に価値が追加される。ヒト、動物及び環境に対する前記ルピナスタンパク質の毒性の欠如は、農業における該ルピナスタンパク質の使用では環境に全く害を及ぼさないことを示す。
【0032】
本発明のもう一つの態様は、遺伝子組み換え植物中に構造的に前記ルピナスタンパク質を発現するために、細菌中で前記ルピナスタンパク質の組み換え産物を利用する方法に関する。最終的に、これらの植物は、病原菌、即ち、従来の外用抗真菌剤が、全く効果的ではなく、制御困難な菌類に関するもの(樹病の原因である真菌の場合)に対して高水準の耐性をしめす。
【0033】
前記タンパク質は、8日齢のLupinus albus cv. LeBlanc pantletsから抽出された。前記Lupinus albus cv. LeBlanc pantletsの種子は、一定の室温(昼25℃、夜20℃)で、16時間明状態/8時間暗状態の光周期下に配置された。
【0034】
収穫後、前記子葉は、液体窒素で冷凍された。タンパク質抽出は、100mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5、10%(w/v)NaCl、10mM EDTA(ethylenediamine-tetraacetic acid)及び10mM EGTA(ethylene glycol bis(β-aminoethyl ether)-N,N,N',N'-tetraacetic acid))により行われた。4℃の温度に30分間保温した後、前記タンパク質の抽出物は、30,000Gで遠心分離された。前記遠心分離によって得られる上澄は、脱塩されて、その後、ルピナスから抽出された前記タンパク質を含む前記天然タンパク質は、FPLC(Fast Protein and Peptide Liquid Chromatography)−陰イオン交換クロマトグラフィによって精製された。
【0035】
ルピナスから抽出された前記タンパク質のN末端配列の決定は、エドマン分解によって行われた。このようにして得られたアミノ酸残基の配列は、縮重プライマーの設計に用いられた。全mRNAは、βコングルチン前駆体の合成が最大となる段階に成熟しているLupinus albusの種子から抽出された。前記mRNA抽出は、植物原料からmRNAを精製するための手順及びキットを用いて行われた。ルピナスから抽出された前記タンパク質をコードする遺伝子フラグメントに対応するcDNAは、前述の設計された縮重プライマーを用いたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によって増幅された。鋳型として得た前記ヌクレオチド配列を用いて、新たなプライマーが設計され、そして、ルピナスから抽出された前記タンパク質をコードする前記遺伝子フラグメントの完全ヌクレオチド配列は、3’及び5’RACE(rapid amplification of cDNA ends)法によって得た。
【0036】
ルピナス由来の前記タンパク質は、バクテリア大腸菌(bacterium Escherichia coli)の組み換え型中で製造される。ルピナス由来の前記タンパク質をコードする遺伝子フラグメントは、プロモータT7lacの関連遺伝子と会合できる適切なベクター中で複製された。前記プロモータは、誘導的であり、そのため、該プロモータの前記関連遺伝子の発現は、糖イソプロピルチオ‐β‐ガラクトシドの存在下でのみ生じる。最終的に、大腸菌のコンピテント細胞は形質転換させられる。
【0037】
上述したように、ルピナス由来の前記タンパク質は、組み換え型の細菌から得られる。しかしながら、前記タンパク質の抗真菌性活性を検査するために、ルピナスの組み換えタンパク質は他の全ての細菌のタンパク質から単離させなければならない。このために、ルピナス由来の前記タンパク質は、ヒスチジン残基のタグ(His−Tag)を有する組み換え型として予め製造された。前記His−Tagを有する前記タンパク質を精製するための方法は、前記His−Tagのニッケルイオンへの高親和性に基づくものである。この方式で、アガロースマトリックスに結合されたニッケルイオンを用いた前記組み換えタンパク質の精製は、細菌全抽出物中に存在する全てのタンパク質のうち、ルピナス由来のタンパク質のみがアガロースマトリックスに結合することを知ることで達成された。次に、ルピナス由来の前記タンパク質は、適切な洗浄及び溶出の後、適切なたんぱく質分解酵素で処理することで前記His−Tagを取り除いた。
【0038】
適切なプロモータの慎重な選択は、植物遺伝子組み換えの必要条件である。いくつかの種類のプロモータは、前記関連遺伝子の発現について、文献に記載されている。本発明におけるタンパク質をコードする遺伝子フラグメントの発現のために、選択された前記プロモータは、必要な発現の種類に従い、誘導的又は構成的であってよい。前記プロモータの選択はまた、組織又は細胞内コンパートメントに合成されたタンパク質を導くために重要である(転写後修飾)。
【0039】
植物形質転換は、異なる方法、例えば、アグロバクテリウムによる植物形質転換、プロトプラスト形質転換、花粉粒への遺伝子導入、繁殖器官又は未熟胚への直接導入、及び粒子衝突等によって行うことができる。これらの植物形質転換の方法は、夫々特徴的な利点及び不利点を備える。それにもかかわらず、前記植物形質転換の方法は全て、異なる草型に対して既に利用されている。
【0040】
ルピナス由来の前記タンパク質をコードする前記遺伝子フラグメントによる植物の形質転換のために選択された方法は、適切なマーカー遺伝子に関連する前記関連遺伝子の体系的な領域を含む適切な発現ベクターを用いるアグロバクテリウムによる形質転換法である(非特許文献1参照)。植物再生、植物発育及びシングルプロトプラストから培地への植物の移動は、以下の公知であるいくつかの方法により行うことができる。この方法は、形質転換細胞の選択と、次に、エンブリオジェニック培養物(embryogenic culture)の成熟に用いられる通常の方法によって該選択された形質転換細胞を培養する工程とを含む。こうして得られた再生胚は、適切な培地(通常は土壌)において、最終的に大きくなる。
【0041】
本発明の目的はまた、配列Bを有し、糖鎖の形成、リン酸化、アルキル化若しくはプレニル化されたタンパク質、又は、病原菌若しくは卵菌又は昆虫によって引き起こされる疫病の予防、制御、及び戦いに利用されることを特徴とする形質転換細胞によって得られる組み換え型タンパク質として、又は、成長促進剤若しくは肥料としての、農学的製剤を提供することである。
【0042】
本発明の他の態様は、ヒト及び動物の食物の植物タンパク質が頻繁に減少すること、場合によっては、タンパク消化率が低下し、アミノ酸構成を不均衡とすることへの対策に向けられている。事実、ルピナスタンパク質を含む粗調製物は、主なグロブリン(本発明の目的である前記タンパク質を含む前記ルピナス天然タンパク質)だけでなく、タンパク質抽出に用いられる植物材料内に自然に存在する様々なアルブミンもまた有している。従って、前記ルピナスタンパク質を含む前記粗調製物は特にタンパク質が豊富であり、そして、豆腐(カルシウム及びマグネシウムによるグロブリンの沈殿物)又はリコッタ(アルブミンの熱沈殿物)としてヒト又は動物の栄養にタンパク質補助食品として利用されてもよい。
【0043】
前記ルピナスタンパク質のアミノ酸構成の分析、及び、検査した全てのプロテアーゼ(トリプシン、キモトリプシン、スブチリシン、プロテイナーゼK及びプロナーゼを含む)に対する大きな感受性は、該タンパク質が高い栄養価を有することを示す。しかしながら、本発明において考慮される前記タンパク質は、グロブリンである。このために、前記ルピナスタンパク質又は天然タンパク質は、水及び希釈塩溶液には不溶であるが、高イオン強度の溶液には易溶である。それにもかかわらず、マメ科グロブリンは、カルシウム、マグネシウム及び他のアルカリ土類の陽イオンが存在する場合のみ不溶性である(非特許文献2参照)。これらの2価の陽イオンは、中性でのpH値が正に帯電しており、負に荷電しているグロブリン分子間を静電気的に架橋する役割を果たし、該グロブリン分子の自己会合を促進又は誘導して大きな複合体を形成させ、不溶とする(非特許文献2及び非特許文献3参照)。例えば、大豆は、チーズやカテージチーズのように、大豆の被加熱抽出物にカルシウムイオン及びマグネシウムイオンを添加することによって製造された凝乳である。前記カルシウムイオン及びマグネシウムイオンは、豆腐の製造に通常利用されており、にがり(商標)として市販されている。このようにして、グロブリン及びアルブミンの両方を含む前記ルピナスタンパク質の粗調製物は、カルシウム又はマグネシウムで沈殿させられた後、ルピナスグロブリン濃縮物の製造に用いられる。例えば、図7は、カルシウム及びマグネシウム濃縮物の添加による前記ルピナスタンパク質を含む前記ルピナス天然タンパク質の析出パターン(■)を示す。比較のため、前記ルピナスタンパク質の前駆体であるβ‐コングルチン(ルピナスの種子に存在する主な貯蓄タンパク質)の析出パターン(○)もまた示す。この結果、生じた血清には、前記アルブミンが残存しており、例えば、リコッタ(チーズ作成中に、カゼインを取り除いた後、血清中に残存している牛乳アルブミンの熱沈殿物)に利用する手順と同様の手順における熱沈殿によって回収することができる。このようにして、前記ルピナスタンパク質を含む調製物は、ヒト又は動物の食事のタンパク質補助食料として利用することができる。
【0044】
本発明をより理解するために、以下、実施例について説明する。しかしながら、これらの実施例は、抗真菌剤、卵菌制御剤、殺虫剤、成長促進剤、肥料、又はヒト又は動物の食事におけるタンパク質補助剤としてルピナス由来のタンパク質の利用に用いる一つの方法という意味で、限定的なものではない。
【実施例】
【0045】
[実施例1及び2] 真菌Uncinula necator(ブドウにおけるうどんこ病の病原菌)に感染したブドウの葉の表面にルピナス由来の前記タンパク質を含む天然タンパク質噴霧の効果
ルピナス由来の前記タンパク質の抗真菌活性を、1ml中に前記タンパク質を含む純粋な天然タンパク質を200mg含む溶液を前記ブドウの葉の表面に噴霧した後に評価した。対照群として、前記同様の条件の葉に水を噴霧した。その結果、図1に示すように、前記タンパク質を含む天然タンパク質が噴霧された葉は、うどんこ病に重度に感染した葉と、常時かつ長期間近接していたとしても、前記真菌の痕跡なしで該噴霧2ヵ月後まで健康が維持されたことが明らかである。
【0046】
もう一つの試行として、葉の表面を、金属顕微鏡を用いて観察した以外は、実施例1と全く同一の方法で行った。
【0047】
[実施例3] Uncinula necatorの胞子の発芽及び成長に対するルピナス由来の前記タンパク質を含む天然タンパク質の効果
真菌Uncinula necatorの胞子を、前記感染した葉の表面から回収し、1ml中にルピナス由来の前記タンパク質を含む純粋な天然タンパク質を200mg、又は、1ml中に成熟したブドウの総タンパク質分画(PRタンパク質を含む)200mgを含む0.6%(w/v)素寒天に植え付けた。胞子の発芽及び発芽管の成長は、前記植え付けから24時間及び48時間後に、位相差レンズ系を用いた光学顕微鏡で観察した。結果を図2に示す。図2によると、ルピナス由来の前記タンパク質を含む培地の存在下では、発芽胞子の数だけでなく、前記発芽管の長さも顕著な低下が見られた。この効果は、前記PRタンパク質の存在下で観察された結果と比較しても明らかな差が見られた。
【0048】
[実施例4] 真菌Phomopsis viticola(ブドウのエクソコリオシス(exocoriosis)の病原菌)の胞子の発芽及び成長に対するルピナス由来の前記タンパク質を含む天然タンパク質の効果
前記真菌Phomopsis viticolaの胞子は、PDA培地(バイレイショ‐ブドウ糖寒天培地)に植え付けられ、15分後に、該胞子は回収された。前記回収された胞子は、ルピナス由来のタンパク質を含む天然タンパク質と混合され、最終体積25mlとされた。前記混合された溶液は、シャーレ上に滴下され、スライドガラスで覆われた後、密閉されて、湿式チャンバが作られた。胞子の成長は、光学顕微鏡によって観察された。この結果、胞子の成長が抑制されたことは明らかであった。24時間後、成長していた菌糸は崩壊した。
【0049】
[実施例5] 真菌Uncinula necatorの胞子の発芽に対するルピナス由来の前記組み換えタンパク質の効果
細菌中で発現されたルピナス由来の前記組み換えタンパク質は、精製され、その抗真菌活性が検証された。これは、ルピナス由来の前記組み換えタンパク質を用いた以外は、実施例2及び実施例3と全く同一にして行われた。結果を図4に示す。図4によると、前記組み換えタンパク質は、ルピナス植物体から抽出された前記タンパク質で観察されたものと同一の抗真菌活性を示す。ルピナス由来の前記組み換えタンパク質の存在下での48時間培養の後、前記胞子の細胞壁の破壊が観察された。
【0050】
[実施例6] 卵菌Plasmopara viticola(べと病の病原菌)由来の胞子の発芽に対するルピナス由来の前記組み換えタンパク質の効果
真菌Plasmopara viticolaの胞子は、前記感染した葉の表面から回収され、1ml中にルピナス由来の前記組み換え純粋タンパク質200mgを含む0.6%(w/v)素寒天に入れた。次に、48時間後、胞子発芽を、光学顕微鏡を用いて観察した。素寒天中における胞子発芽を、対照群として用いた。24時間後、前記胞子の細胞壁は破壊され、これに伴い、細胞内含有物が放出された。
【0051】
[実施例7] バラに対するルピナス由来の前記タンパク質を含む天然タンパク質噴霧の効果
前記タンパク質を含むルピナス天然タンパク質のバイオ刺激活性を、1ml中に前記タンパク質を含む天然タンパク質200μgを含む粗ルピナス抽出物をバラの葉の表面に噴霧した後に評価した。対照群として、同様の発育段階であり、同一環境条件で培養したバラに水を噴霧したものを用いた。前記噴霧の3週間後に撮影した写真を図5に示す。図5によると、最初の花芽が早く見られたことから、前記ルピナスタンパク質を噴霧された植物体がより優れた成長を示すことが明らかである。
【0052】
[実施例8] スイカの苗に対してルピナス由来の前記タンパク質を含む天然タンパク質の噴霧の効果
前記ルピナスタンパク質のバイオ刺激活性を、1ml中に前記タンパク質を含む天然タンパク質200μgを含む粗ルピナス抽出物を6週齢のスイカの苗の葉の表面に噴霧した後に評価した。前記評価のための分析は、温室条件の下で行われ、前記スイカの苗は、水が噴霧されたもの(対照群;A群)、1ml中に前記タンパク質を含む天然タンパク質100μgを含む粗ルピナス抽出物が噴霧されたもの(B群)、市販されている植物成長促進剤が噴霧されたもの(C群)、及び1ml中に前記タンパク質を含む天然タンパク質200μgを含む粗ルピナス抽出物が噴霧されたもの(D群)を用いた。前記分析には、各群24本ずつのスイカの苗が用いられた。前記分析は、前記噴霧後2週間後に行われ、結果を図6に示す。最も高濃度の前記ルピナスタンパク質が噴霧されたスイカの苗(D群)は、水又は前記市販の植物成長促進剤で処理されたスイカの苗に比較して、最もよい成熟度及び優れた葉の成長を示した。最も低濃度の前記ルピナスタンパク質が噴霧されたスイカの苗(B群)は、低い水準の成長度を示すが、水のみが噴霧されたものよりは高い成長度が観察された。従って、推奨使用水準は、前記スイカの苗に対して、1ml中に前記タンパク質を含む天然タンパク質200μgを含む前記ルピナスタンパク質の粗製造物の噴霧である。
【0053】
[実施例9] Uncinula necator(世界的に、経済的に最も重要なブドウの病気であるうどんこ病の病原菌)に感染したブドウに対するルピナス由来の前記タンパク質抽出物を含む前記天然タンパク質の噴霧の効果
粗ルピナス抽出物は、1ml中に前記タンパク質を含む前記ルピナス天然タンパク質200μgを含むように製造された。Uncinula necatorに感染し、温室条件下で維持されたブドウは、前記粗ルピナス抽出物又は水(対照群)が噴霧された。前記噴霧の24時間後、前記ブドウは、対照群と比較して観察された結果、前記ルピナスタンパク質が噴霧されたブドウは、高い活力を示し、新芽の出現が明らかとなった。この状況は少なくても一週間維持され、その後、前記ブドウ(以前は前記真菌の存在により衰弱されていたが)は、生き生きとし、病気の症状を全く示さずに多くの葉を有していた。
【0054】
[実施例10] 前記タンパク質濃縮物を含む豆腐型ルピナス天然タンパク質の製造に必要なカルシウム及びマグネシウムの最適濃度の決定
前記ルピナスタンパク質濃縮物の優れた栄養の潜在力を強調する優れた消化率と同様に、前記タンパク質を含む前記ルピナス天然タンパク質の構成要素であるよくバランスの取れたアミノ酸は、前記タンパク質を含む前記ルピナス天然タンパク質の粗調製物に存在するグロブリンの、5mMのカルシウム及びマグネシウムによる沈殿により製造される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】うどんこ病に重度に感染したブドウの葉に、水を噴霧したもの(右の葉)と、ルピナスから抽出されたタンパク質を含む天然タンパク質を噴霧したもの(左の葉)の写真。(A群)噴霧24時間後、(B群)噴霧2ヵ月後。
【図2】ブドウのうどんこ病の原因である真菌の胞子の発芽を観察する光学顕微鏡写真。真菌の胞子は、感染した若い葉の表面から回収され、0.6%(w/v)素寒天培地で培養された。(A群),(B群)及び(C群):コントロール群、(D群)及び(E群):病原性関連(PR)タンパク質を含む成熟ブドウ由来の総タンパク分画200μgを添加したもの、(F群)及び(G群):ルピナスから抽出したタンパク質を含む天然タンパク質200μgを添加したもの。各写真は、24時間後及び48時間後に撮影され、観察された。位相差顕微鏡を用い、倍率は125倍とした。
【図3】ブドウの葉の金属顕微鏡写真。(A群)健康な葉、(B群)うどんこ病に感染している葉、(C群)ルピナスから抽出したタンパク質を含む天然タンパク質の噴霧12時間後。用いた倍率は、各写真に示す。
【図4】うどんこ病の病因であるuncinula necator胞子の発芽及び成熟に対する大腸菌で組み換え型にされたルピナス由来の前記タンパク質の効果。
【図5】同じ発育段階のバラに、水を噴霧したもの(右のバラ)と、ルピナスから抽出されたタンパク質を含む溶液(1ml中にタンパク質を含む天然タンパク質200μgを含む)を噴霧したもの(左のバラ)の、噴霧3週間後の発育段階を示す写真。
【図6】苗床で栽培されるスイカの苗に、発芽開始から6週間後に、水(対照群;A群)、1ml中にタンパク質を含む天然タンパク質100μgを含む粗ルピナス抽出物(B群)、市販の植物成長促進剤(製造業者によって推奨される濃度)(C群)、及び1ml中にタンパク質を含む天然タンパク質200μgを含む粗ルピナス抽出物(D群)を噴霧し、その2週間後に、各群のスイカの苗を撮影した写真。
【図7】カルシウム及びマグネシウムの濃度に関するルピナス属の植物由来のグロブリンの難溶化の典型的な概要を示すグラフ。前記概要は、ルピナスから抽出されたタンパク質(■)及びルピナス由来のβコングルチン(○)を含む天然タンパク質の自己会合に対する陽イオンの効果を例示するものである。βコングルチン(0.5mg/ml;○)、及びルピナスから抽出されたタンパク質を含む天然タンパク質(0.5mg/ml;■)は、乾燥種子、又は夫々発芽・成長から8日の植物から分離されたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルピナス属の植物から抽出されたタンパク質において
(a)下記(B)で表わされるアミノ酸残基の配列を備え、
(B)


(b)(B)で表わされるアミノ酸残基の配列中、一つ以上のアミノ酸残基が欠損、置換、付加、又は修飾されており、該タンパク質が抗真菌性及び抗卵菌活性、植物成長促進活性、又は生物活性維持特性を示すことを特徴とするタンパク質。
【請求項2】
前記ルピナス属の植物から抽出されたタンパク質は、糖鎖形成、リン酸化、アルキル化又はプレニル化されていることを特徴とする請求項1記載のタンパク質。
【請求項3】
前記タンパク質をコードするDNAフラグメントにおいて、
(a)下記(A)で表されるヌクレオチド配列を備え、
(A)


(b)(A)で表わされるヌクレオチド配列中、一つ以上のヌクレオチドが欠損、置換、付加、又は修飾されており、抗真菌活性及び抗卵菌活性、植物成長促進活性、又は生物活性維持特性を有するタンパク質をコードすることを特徴とするDNAフラグメント。
【請求項4】
請求項3記載のDNAフラグメントを含むことを特徴とする組み替えベクター。
【請求項5】
請求項4記載の組み替えベクターを用いて形質転換されたことを特徴とする形質転換細胞。
【請求項6】
大腸菌(Escherichia coli)から派生したことを特徴とする請求項5記載の形質転換細胞。
【請求項7】
植物、動物、又は微生物から派生したことを特徴とする請求項5記載の形質転換細胞。
【請求項8】
請求項5記載の形質転換細胞を含み、
該形質転換細胞の再生により獲得される、病原菌、卵菌又は昆虫によって引き起こされる疫病に対する耐性を示すことを特徴とする遺伝子組み換え植物。
【請求項9】
請求項5乃至請求項7記載の形質転換細胞を培養する工程と、
細胞培養又は細胞抽出物から、抗真菌活性を有する前記タンパク質を回収する工程とを含むことを特徴とする請求項1記載のタンパク質の製造方法。
【請求項10】
活性材料として、請求項1若しくは請求項2記載のタンパク質、又は請求項9の方法により得られるタンパク質の組み替え型を含むことを特徴とするタンパク質の製剤又は粗調製物。
【請求項11】
植物成長促進剤及び肥料として、病原体又はそれ以外の真菌類及び卵菌類、昆虫によって引き起こされる疾病に対する予防、制御又は戦いに用いられることを特徴とする請求項10記載のタンパク質の製剤又は粗調製物。
【請求項12】
植物成長促進剤及び肥料として、病原体又はそれ以外の真菌類及び卵菌類、昆虫に対する予防、制御又は戦いを目的とすることを特徴とする、製剤の調製時に、請求項1又は請求項2記載のタンパク質又は請求項9で得られたタンパク質の組み替え型の使用方法。
【請求項13】
植物成長促進剤及び肥料として、病原体又はそれ以外の真菌類及び卵菌類、昆虫によって引き起こされる疾病に対する予防、制御又は戦い時における、請求項1又は請求項2記載のタンパク質又は請求項9で得られたタンパク質の組み替え型の使用方法において、
請求項1又は請求項2記載のタンパク質又は請求項9記載で得られたタンパク質の組み替え型を少なくとも一部に含むルピナス抽出物を植物に用いることを特徴とする使用方法。
【請求項14】
自然衰弱又は病原体に感染した植物の葉に噴霧した後に特に観察可能なバイオ刺激活性のような、バイオ刺激薬又は植物の成長及び成熟の促進物質として使用されることを特徴とする請求項1若しくは請求項2記載のタンパク質、請求項9の方法により得られたタンパク質の組み替え型、又は該タンパク質を含む粗調製物の使用方法。
【請求項15】
カルシウム塩及びマグネシウム塩を用いて、又は、アルブミン沈殿のための熱処理のような物理的処理を用いて若しくはこれを用いずにグロブリンを沈殿させた後、高い栄養価を有するヒト又は動物の栄養のためのタンパク質濃縮物の調製物を使用することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタンパク質、請求項9の方法により得られたタンパク質の組み換え型、又は該タンパク質を含む粗調製物の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−505637(P2009−505637A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522129(P2008−522129)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052403
【国際公開番号】WO2007/010459
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(508018727)
【氏名又は名称原語表記】DE SEIXAS BOAVIDA FERREIRA, Ricardo Manuel
【出願人】(508018738)
【氏名又は名称原語表記】VALADAS DA SILVA MONTEIRO, Sara Alexandra
【出願人】(508018749)
【氏名又は名称原語表記】NASCIMENTO TEIXEIRA, Artur Ricardo
【出願人】(508018750)
【氏名又は名称原語表記】BORGES LOUREIRO, Virgilio
【Fターム(参考)】