説明

ループ型ヒートパイプ及び電子機器

【課題】薄く製造することが容易な構成を有する蒸発部を備えたループ型ヒートパイプを提供する。
【解決手段】発熱体からの熱で作動液を蒸発させる蒸発部20と放熱により作動液の蒸気を凝縮させる凝縮部とを液管36及び蒸気管34によりループ状に接続したループ型ヒートパイプに、中空糸膜(無機形/有機形中空繊維)22a製の中空糸膜ウィック22を内蔵した蒸発部20を採用しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ型ヒートパイプと電子機器とに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の中には、発熱量の大きな電子部品(CPU(Central Processing Unit)等
)の冷却のために、当該電子部品とヒートシンクとを、ヒートパイプで接続したものが存在している。しかしながら、ヒートパイプの熱輸送能力は、通常、30〜50W程度であり、さほど高くない。そのため、より熱輸送能力が高いループ型ヒートパイプ(Loop Heat Pipe:LHP)を電子機器に搭載するための開発・研究が進められている。
【0003】
先ず、図1を用いて、一般的なLHPの構成を説明する。図1に示してあるように、一般的なLHPは、その前段に補償チャンバ52が取り付けられた蒸発器50と凝縮器53とを蒸気管54及び液管55によってループ状に接続し、その内部に、水、アルコール等の作動流体を封入したデバイスとなっている。
【0004】
凝縮器53は、放熱により、作動液蒸気(気体状態にある作動流体)を液化するためのユニットである。補償チャンバ52は、作動液(液体状態にある作動流体)を貯留しておく(蒸発器50に供給する作動液を蒸発器50近傍に用意しておく)ためのユニットである。蒸気管54は、蒸発器50からの作動液蒸気を凝縮器53に供給(導入)するための管であり、液管55は、凝縮器53からの作動液を補償チャンバ52を介して蒸発器50に供給するための管である。
【0005】
蒸発器50は、発熱体(図示略)からの熱で作動液を気化させるためのユニットである。この蒸発器50内には、有底中空円筒状の多孔質体であるウィック51が、その開口面側を補償チャンバ52側(作動液の流入口側)を向けた形で嵌合収容されている。
【0006】
要するに、このLHPは、ウィック51の空洞部分内の作動液がウィック51の毛細管力でウィック51の外周面側に移動して発熱体からの熱で気化し、気化した作動液が凝縮器53にて凝縮することにより、蒸発器50側から凝縮器53側へ熱が輸送されるものとなっている。
【0007】
一般的なLHPには、上記構成が採用されているのであるが、他の構成が採用されたLHPも知られている。例えば、補償チャンバ52を備えないLHPや、補償チャンバ52相当のものが蒸発器内に設けられているLHPが、知られている。また、外周面にグルーブ(溝)を形成したウィックと外周面にグルーブを形成していないウィックとを内部に収容した蒸発器を採用したLHPも、知られている。
【0008】
さらに、図2A及び図2Bに示したような蒸発器60を採用したLHPも知られている。すなわち、有底中空円筒状の多孔質体部分(ウィック51に相当するもの)を3つ備えたウィック61の各多孔質体部分に、凝縮器(図示略)側からの作動液が補償チャンバ62を介して分配供給されるようにした蒸発器60を採用したLHPも知られている。
【0009】
このように、具体的な構成の異なる様々なLHPが開発されているのであるが、既存のLHPの蒸発器は、20mm程度の厚みを有するものとなっている。すなわち、既存のLHPは、冷却すべき電子部品上に高さ20mm程度の空き空間が存在しない電子機器には利用できないものであると共に、それを電子部品の冷却に使用すると電子機器の小型化が困難になってしまうものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−168273号公報
【特許文献2】特開2009−115396号公報
【特許文献3】特開2002−340489号公報
【特許文献4】特開2007−315740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、開示の技術の課題は、薄く製造することが容易な構成を有する蒸発部を備えたループ型ヒートパイプと、電子部品の冷却のためにループ型ヒートパイプが用いられた電子機器であって、小型化が容易な構成を有する電子機器とを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、開示の技術の一態様の、発熱体からの熱で作動液を蒸発させる蒸発部と放熱により前記作動液の蒸気を凝縮させる凝縮部とを液管及び蒸気管によりループ状に接続したループ型ヒートパイプは、蒸発部として、中空糸膜(無機形/有機形中空繊維)製のウィックである中空糸膜ウィックを収容したユニットを備える。
【0013】
また、開示の技術の一態様の電子機器は、上記のような構成を有するループ型ヒートパイプの蒸発部によってCPU等の電子部品が冷却される構成を有する。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を採用しておけば、蒸発器の厚さが薄いループ型ヒートパイプ、電子部品の冷却のためにループ型ヒートパイプが用いられた電子機器であって、小型化が容易な構成を有する電子機器を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、一般的なLHPの構成図である。
【図2A】図2Aは、LHP用の既存の蒸発器の分解図である。
【図2B】図2Bは、図2Aに示した蒸発器の横断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係るLHPの構成図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係るLHPを電子部品(CPU)の冷却のために組み込んだ電子機器の構成図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係るLHPが備える蒸発器の構成図である。
【図6】図6は、第1実施形態に係るLHPが備える蒸発器内に設けられているマニホールドの説明図である。
【図7】図7は、円筒状ウィックの外径と膜面積の関係の説明図である。
【図8】図8は、第1実施形態に係る蒸発器が厚さが薄くなるものとなる理由の説明図である。
【図9】図9は、第2実施形態に係るLHPが備える蒸発器の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明者らが開発した2タイプのループ型ヒートパイプ(以下、第1、第2実施形態に係るループ型ヒートパイプ(又はLHP)と表記する)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
《第1実施形態》
先ず、図3及び図4を用いて、第1実施形態に係るLHP10の全体的な構成、及び、
LHP10を組み込んだ電子機器11の構成を説明する。なお、以下で説明に用いる各図は、LHP10の各部を認識しやすい大きさとするために、LHP10の各部の縮尺、数を適宜変更したものである。また、以下の説明では、液体状態にある作動流体(水、アルコール、代替フロン等)のことを作動液と表記し、気体状態にある作動流体のことを作動液蒸気と表記する。
【0018】
図3に示してあるように、第1実施形態に係るLHP10は、蒸発器20、凝縮器30、補償チャンバ32、蒸気管34及び液管36を、備えている。
【0019】
補償チャンバ32は、蒸発器20及び液管36と連通した、所定量の作動液をその内部に貯留可能なユニットである。凝縮器30は、放熱により、作動液蒸気を液化するためのユニットである。液管36は、凝縮器30からの作動液(凝縮器30により液化された作動流体)を、補償チャンバ32を介して蒸発器20に供給するための管(流路)である。蒸気管34は、蒸発器20からの作動液蒸気(蒸発器20により気化された作動流体)を凝縮器30に供給するための管である。
【0020】
蒸発器20は、発熱体(被冷却体)からの熱で作動液を気化させるためのユニットである。
【0021】
詳細(内部構造等)については後述するが、本実施形態に係るLHP10の蒸発器20は、直方体形状を有している。そして、電子機器11は、CPU42等が搭載されたプリント回路板41、HDD(Hard Disk Drive)43、電源ユニット44等からなる電子機
器に、図4に示してあるようにLHP10を組み込んだものとなっている。すなわち、電子機器11は、プリント回路板41上のCPU42上に、LHP10の蒸発器20をサーマルグリス等(図示略)で取り付けたものとなっている。また、電子機器11は、LHP10の凝縮器30が冷却ファン45により冷却されるように構成したものともなっている。
【0022】
以下、第1実施形態に係るLHP10の構成を、さらに具体的に説明する。
【0023】
図5に、LHP10が備える蒸発器20の構成を示す。この図5に模式的に示してあるように、蒸発器20は、蒸発器容器21内に、中空糸膜ウィック22とマニホールド23とを収容した構成を有している。
【0024】
蒸発器容器21は、蒸気管34及び補償チャンバ32と連通した内部空間25を有する中空角柱状部材である。この蒸発器容器21は、箱状部材と、当該箱状部材の開口面(以下、上面と表記する)を覆う形状の平板状部材とを組み合わせたものである。
【0025】
蒸発器容器21の箱状部材側には、マニホールド23を嵌め込むことにより、内部空間25を、補償チャンバ32側の内部空間25aと蒸気管34側の内部空間25bとに区分けできる溝が形成されている。また、蒸発器容器21の内部空間25は、中空糸膜ウィック22及びマニホールド23を収容すると、中空糸膜ウィック22の上側/下側の各所で中空糸膜ウィック22と接触するサイズのものとなっている。
【0026】
中空糸膜ウィック22は、複数本の中空糸膜22aと複数本の金属ワイヤー22bとを、一方をタテ糸、他方をヨコ糸として織った部材(図5では、平織りした部材)である。なお、図5には、7本の中空糸膜22aと5本の金属ワイヤー22bとを構成要素とした中空糸膜ウィック22を示してあるが、中空糸膜ウィック22の各構成要素の本数及びサイズは、被冷却体のサイズや発熱量等に応じて決定すべきものである。
【0027】
この中空糸膜ウィック22の中空糸膜22aとしては、無機形(無機材料製)の中空糸膜、有機形(有機材料製)の中空糸膜のいずれをも採用することが出来る。ただし、中空糸膜22aは、中空糸膜22a中心部分の中空部に入り込んだ作動液の温度が上昇しにくいものであった方が良い。そして、無機材料よりも有機材料の方が一般に熱伝導率が小さいので、中空糸膜22aとしては、有機形の中空糸膜を採用しておくことが好ましい。
【0028】
そのような中空糸膜22a(有機形の中空糸膜)としては、気相(作動液蒸気)を透過させるポリマー製の分離層(外層)と、液相(作動液)を透過させる多孔質状のポリマー製の多孔質層(内層)とからなるものを採用することが出来る。
【0029】
中空糸膜22aの分離層に好適なポリマーとしては、機械的強度が高く熱特性が良好な、パーフルオロスルホン酸系の樹脂、カルボキシル基を有するパーフルオロカーボン系の樹脂、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、シリコーンおよびこれらの混合物が挙げられる。中空糸膜22aの多孔質層は、多孔質状のポリマー層であれば良い。また、多孔質層の空孔率が高い方が、多孔質層(中空糸膜22a)の液透過速度が大きくなるが、空孔率が過度に高いと、多孔質層の支持機能が低下する(中空糸膜22aがつぶれやすくなる)。そのため、中空糸膜22aの多孔質層は、適度な空孔率を有するものとしておくことが好ましい。
【0030】
中空糸膜22aの分離層の厚さが10nmを切ると製造し難くなると共に分離層内に欠陥が形成されやすくなる。また、分離層の厚さが200nmを超えると液透過速度が低下してしまう。そのため、中空糸膜22aの分離層の厚さは、10nm〜200nmとしておくことが好ましく、20nm〜100nmとしておくことが特に好ましい。
【0031】
中空糸膜22aの多孔質層の厚さが20μmを切ると中空糸膜22aの機械的強度が低下する。また、多孔質層の厚さが200μm以上になると、多孔質層の透過抵抗が増加する(多孔質層/中空糸膜22aの液透過速度が低下する)。そのため、中空糸膜22aの多孔質層の厚さは、20μm〜200μmとしておくことが好ましく、30μm〜100μmとしておくことが特に好ましい。
【0032】
中空糸膜22aの外径が小さいほど、高性能な蒸発器20を得ることが出来る(詳細は後述)が、現状では、外径が200μm未満の中空糸膜22aを製造することは困難である。そして、外径が200μm程度又はそれ以上(例えば、1000μm)の中空糸膜22aを用いても、厚さの薄い蒸発器20を得ることが出来る。そのため、中空糸膜22aの外径は、中空糸膜22aが製造しやすい、200μm〜1000μmにしておくことが好ましい。また、中空糸膜22aの内径(中空糸膜22a中心部分の中空部の直径)が変わっても、蒸発器20の性能は、殆ど変わらないので、中空糸膜22aの内径も、中空糸膜22aが製造しやすい、例えば、30μm〜500μmにしておくことが好ましい。
【0033】
上記のような形状/構成の中空糸膜22aは、例えば、以下の手順(方法)にて形成することが出来る。まず、上記したポリマーを少なくとも1種類含む2種類以上のポリマーの混合物を溶媒に溶解したポリマー混合物溶液を調整する。次いで、そのポリマー混合物溶液をノズルから押し出して中空糸状形成物を形成し、空気または窒素雰囲気を通過させてから凝固浴に浸漬し、凝固浴中で上記2種類以上のポリマーを相分離させる。そして、乾燥により溶媒を除去することにより、中空糸膜22aを形成する。
【0034】
また、中空糸膜22aとして、市販されている中空糸膜、例えば、東レTMN20-380(東
レ株式会社製NF(Nanofiltration)膜)を用いることもできる。
【0035】
金属ワイヤー22bは、複数本の中空糸膜22aを一体化すること,各中空糸膜22a
の周囲に作動液蒸気が拡散し得る空隙を形成すること,及び,蒸発器容器21から各中空糸膜22aに熱が伝わりやすくすることを目的として中空糸膜ウィック22に組み込まれている部材である。この金属ワイヤー22bとしては、中空糸膜22aと同程度の太さの、又は、中空糸膜22aよりも細い、軟らかな金属線(例えば、銅線)を使用できる。
【0036】
マニホールド23は、図6に模式的に示してあるように、中空糸膜22aと嵌合するサイズの複数の貫通孔が設けられている角柱状部材である。
【0037】
そして、本実施形態に係るLHP10の蒸発器20は、以下の手順で製造された(組み立てられた)ものとなっている。
(1)中空糸膜ウィック22の各中空糸膜22aの一端をマニホールド23の各貫通孔に挿入固定する。
(2)中空糸膜ウィック22を取り付けたマニホールド23を、蒸発器容器21の箱状部材の溝に嵌め込む。
(3)蒸発器容器21の箱状部材内に配置した中空糸膜ウィック22の各中空糸膜22aの他端を樹脂にて封止すると共に箱状部材の底面に固定する。
(4)中空糸膜ウィック22及びマニホールド23を収納した箱状部材の上面に平板上部材を取り付ける。
【0038】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係るLHP10の蒸発器20は、各中空糸膜22aがウィックとして機能するように(各中空糸膜22aの中空部に導入された作動液が、各中空糸膜22aの外周側へ透過して蒸発するように)、構成されたものとなっている。
【0039】
そして、蒸発器の性能は、基本的には蒸発器内のウィックの外表面積に比例するものであり、図7に示したように、円筒状ウィック(中空糸膜、多孔質ウィック)の単位体積当たりの外表面積(図7における膜面積[m2/m3])は、円筒状ウィックの外径が小さいほど、大きくなる。なお、円筒状ウィックの単位体積当たりの外表面積とは、πRL/(πR2L/4)(=4/R;R、Lは、それぞれ、円筒状ウィックの外径、長さ)のことで
ある。
【0040】
従って、上記した蒸発器20に採用されている構成は、従来と同性能の(又は、従来よりも高性能の),従来よりも薄い蒸発器を製造できるものとなっていることになる。
【0041】
具体的には、例えば、外径が1cm、長さが5cmの円筒状ウィックを3本並べた構成のウィック61が用いられた、幅が5cmの蒸発器60(図2A、図2B)と同性能の蒸発器20を製造する場合を考える。
【0042】
外径が1cm、長さが5cmの円筒状ウィックの外表面積は、図8に示したように、15.7cm2(=π×1×5)である。
【0043】
一方、外径が100μm、長さが5cmの中空糸膜22aの外表面積は、0.157cm2である。また、外径が300μm、長さが5cmの中空糸膜22aの外表面積、外径
が500μm、長さが5cmの中空糸膜22aの外表面積、外径が1000μm、長さが5cmの中空糸膜22aの外表面積は、それぞれ、0.417cm2、0.785cm2、1.57cm2である。
【0044】
従って、上記円筒状ウィックを3つ備えたウィック61の外表面積(3×15.7cm2)と同じ外表面積を得るためには、外径が100μmの中空糸膜22aが、300(=
3×15.7cm2÷0.157cm2)本、あれば良いことになる。また、中空糸膜22
aの外径が、300μm、500μm、1000μmである場合には、それぞれ、100本、60本、30本の中空糸膜22aで、ウィック61の外表面積と同じ外表面積が得られることになる。
【0045】
そして、外径Rμmの中空糸膜22aは、幅5cmの平面上(蒸発器60の同幅の平面上)に、重ねることなく、“50000/R”本(図8における“幅5cmの平面上への細密充填本数”参照。)、配置できる。従って、蒸発器20の構成を採用しておけば、蒸発器60と同性能の,蒸発器60よりも厚さが薄い(図8における“内部空間最低厚み”参照。)蒸発器20を製造できることになる。また、必要本数以上の中空糸膜22aを蒸発器20に内蔵させておけば、蒸発器60よりも高性能な(内蔵しているウィックの外表面積が蒸発器60よりも大きな)、蒸発器60よりも厚さが薄い蒸発器20を製造できることにもなる。
【0046】
《第2実施形態》
以下、第1実施形態のLHP(ループ型ヒートパイプ)10の説明時に用いたものと同じ符号を用いて、第2実施形態に係るLHP10の構成を、第1実施形態のLHP10と異なっている部分を中心に説明する。
【0047】
第2実施形態に係るLHP10は、第1実施形態に係るLHP10(図3)と同様に、蒸発器20、凝縮器30、補償チャンバ32、蒸気管34及び液管36を備えたLHPである。ただし、第2実施形態に係るLHP10は、蒸発器20として、図9に示した構成のものを採用したLHPとなっている。
【0048】
すなわち、本実施形態に係るLHP10の蒸発器20(以下、第2蒸発器20とも表記する)は、図5に示した蒸発器20(以下、第1蒸発器20とも表記する)と同様に、蒸発器容器21内に、中空糸膜ウィック22とマニホールド23とを収容したユニットとなっている。
【0049】
第2蒸発器20の蒸発器容器21、マニホールド23は、それぞれ、第1蒸発器20の蒸発器容器21、マニホールド23と同様の構成を有する部材である。
【0050】
第2蒸発器20の中空糸膜ウィック22も、第1蒸発器20の中空糸膜ウィック22と同様に、複数本の中空糸膜22aと複数本の金属ワイヤー22bとを、一方をタテ糸、他方をヨコ糸として織った部材である。ただし、図9に示してあるように、第2蒸発器20の中空糸膜ウィック22は、各中空糸膜22aを中央部分で折り曲げることにより、各中空糸膜22aが中空糸膜ウィック22の2本のタテ糸(又はヨコ糸)となるように形成したものとなっている。
【0051】
要するに、第2蒸発器20の構成要素として使用されている中空糸膜ウィック22は、各中空糸膜22aの両開口端が、一方の端(マニホールド23に固定される側の端)だけを向いたものとなっている。
【0052】
そのため、第2蒸発器20は、その製造に、『蒸発器容器21の箱状部材内に配置した中空糸膜ウィック22の各中空糸膜22aの他端を樹脂にて封止すると共に箱状部材の底面に固定する』という,第1蒸発器20の製造時に必要な作業が不必要なものとなっている。
【0053】
そして、上記作業は、各中空糸膜22aの他端が完全に封止されるように、且つ、封止のために使用した樹脂にて作動液蒸気の拡散が阻害されないように行わなければならないものである。従って、そのような煩雑な作業を行うことなく、蒸発器20を製造できる本
実施形態に係るLHP10は、第1実施形態に係るLHP10よりも製造が容易なものとなっていると言うことが出来る。
【0054】
《変形形態》
上記した各実施形態に係るLHP10は、各種の変形が可能なものである。例えば、より高性能なLHP10を得るために、蒸発器20を、2枚以上の中空糸膜ウィック22を重ねて内蔵させたものに変形することが出来る。
【0055】
また、蒸発器20を、マニホールド23相当のものが樹脂にて形成されるものに変形することも出来る。さらに、蒸発器20を、金属ワイヤー22bが組み込まれていない中空糸膜ウィック22を備えたものや、その内面に溝が形成されている蒸発器容器21を備えたものに変形することも出来る。
【0056】
また、中空糸膜ウィック22の織り方が、平織り以外の織り方(綾織り等)であっても良いことや、LHP10を、補償チャンバ32を備えないものに変形しても良いことなどは、当然のことである。
【0057】
以上、開示した技術に関し、更に以下の付記を開示する。
【0058】
(付記1) 発熱体からの熱で作動液を蒸発させる蒸発部と、放熱により前記作動液の蒸気を凝縮させる凝縮部とを、液管及び蒸気管によりループ状に接続したループ型ヒートパイプにおいて、
前記蒸発部として、
蒸発部容器内に、中空糸膜製のウィックである中空糸膜ウィックを収容したユニットを備える
ことを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【0059】
(付記2) 前記中空糸膜ウィックが、有機形中空糸膜製のウィックである
ことを特徴とする付記1に記載のループ型ヒートパイプ。
【0060】
(付記3) 前記中空糸膜ウィックが、パーフルオロスルホン酸系の樹脂、カルボキシル基を有するパーフルオロカーボン系の樹脂、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、シリコーンからなる群より選択される材料を構成材料とした中空糸膜製のウィックである
ことを特徴とする付記1に記載のループ型ヒートパイプ。
【0061】
(付記4) 前記中空糸膜ウィックが、複数本の中空糸膜と複数本の金属ワイヤーとを、一方のタテ糸、他方をヨコ糸として織った部材である
ことを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【0062】
(付記5) 前記蒸発部の前記蒸発部容器内に、M個の作動液出口を有する、前記液管側からの作動液を各作動液出口から排出させるためのマニホールドが設けられており、
前記中空糸膜ウィックが、それぞれ、前記マニホールドの特定の作動液出口に一方の端が接続され、他方の端が封止されたM本の中空糸膜を含む部材である
ことを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【0063】
(付記6) 前記中空糸膜ウィックの各中空糸膜の前記他方の端が、固定されている
ことを特徴とする付記5に記載のループ型ヒートパイプ。
【0064】
(付記7) 前記蒸発部の前記蒸発部容器内に、2N個の作動液出口を有する、前記液
管側からの作動液を各作動液出口から排出させるためのマニホールドが設けられており、
前記中空糸膜ウィックが、それぞれ、前記マニホールドの特定の2個の作動液出口に各端が接続されたN本の中空糸膜を含む部材である
ことを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【0065】
(付記8) 付記1乃至付記7のいずれか一項に記載のループ型ヒートパイプと、
前記ループ型ヒートパイプの前記蒸発部により冷却される電子部品と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【符号の説明】
【0066】
10 ループ型ヒートパイプ(LHP)
11 電子機器
20,60 蒸発器
21 蒸発器容器
22 中空糸膜ウィック
22a 中空糸膜
22b 金属ワイヤー
23 マニホールド
25,25a,25b 内部空間
30 凝縮器
32 補償チャンバ
34 蒸気管
36 液管
41 プリント回路板
42 CPU
43 HDD
44 電源ユニット
45 冷却ファン
61 ウィック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体からの熱で作動液を蒸発させる蒸発部と、放熱により前記作動液の蒸気を凝縮させる凝縮部とを、液管及び蒸気管によりループ状に接続したループ型ヒートパイプにおいて、
前記蒸発部として、
蒸発部容器内に、中空糸膜製のウィックである中空糸膜ウィックを収容したユニットを備える
ことを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記中空糸膜ウィックが、有機形中空糸膜製のウィックである
ことを特徴とする請求項1に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記中空糸膜ウィックが、複数本の中空糸膜と複数本の金属ワイヤーとを、一方のタテ糸、他方をヨコ糸として、平織りあるいは綾織りした部材である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記蒸発部の前記蒸発部容器内に、M個の作動液出口を有する、前記液管側からの作動液を各作動液出口から排出させるためのマニホールドが設けられており、
前記中空糸膜ウィックが、それぞれ、前記マニホールドの特定の作動液出口に一方の端が接続され、他方の端が封止されたM本の中空糸膜を含む部材である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
前記蒸発部の前記蒸発部容器内に、2N個の作動液出口を有する、前記液管側からの作動液を各作動液出口から排出させるためのマニホールドが設けられており、
前記中空糸膜ウィックが、それぞれ、前記マニホールドの特定の2個の作動液出口に各端が接続されたN本の中空糸膜を含む部材である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のループ型ヒートパイプと、
前記ループ型ヒートパイプの前記蒸発器により冷却される電子部品と、
を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2012−149819(P2012−149819A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8907(P2011−8907)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】