説明

レギュレータ

【課題】流量に対する調圧圧力の変動幅を小さくすることのできるレギュレータを提供する。
【解決手段】レギュレータ10は、CNGを調圧する調圧室24と背圧室22とを区画するピストン20と、ピストン20とともに可動し、調圧室24へ流入するCNGの通路を開閉する調圧バルブ42と、調圧室24に流入したCNGの圧力に抗してピストン20を付勢する調圧スプリング28とを備え、ピストン20に作用する調圧室24のCNGの圧力と調圧スプリング28のスプリング力とのバランスにより調圧バルブ42の開閉ストロークが調整されることで、調圧室24から流出するCNGの調圧圧力を調圧する。ピストン20に磁性体を設け、磁性体に対向する電磁石60を設け、電磁石60の通電、非通電を切替えることにより流量に対する調圧圧力を2段階に可変する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力を調圧するレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレギュレータとしては、例えば圧縮天然ガス(以下、「CNG」という)を自動車のエンジンの燃料として使用するために、自動車に搭載されたボンベ内の高圧のCNGの圧力を所定圧に減圧いわゆる調圧するCNG用減圧レギュレータ(以下、「レギュレータ」という)がある(例えば、特許文献1参照)。なお、図5はレギュレータを示す断面図である。
【0003】
図5に示すように、レギュレータ100は、レギュレータ本体102とダイアフラム104と調圧バルブ106と調圧スプリング108とを備えている。ダイアフラム104は、レギュレータ本体102内でCNGを調圧する調圧室110と背圧室112とを区画している。また、調圧バルブ106は、ダイアフラム104の中央部とともに可動し、調圧室110へ流入するCNGの通路を開閉する。また、調圧スプリング108は、調圧室110に流入したCNGの圧力に抗してダイアフラム104を付勢している。そして、ダイアフラム104に作用する調圧室110のCNGの圧力と調圧スプリング108のスプリング力とのバランスにより調圧バルブ106の開閉ストロークが調整されることで、調圧室110から流出するCNGの調圧圧力が調圧される。なお、背圧室112は大気に開放されている。また、図6はレギュレータの調圧特性を示す特性線図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−304029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例にかかるレギュレータ100(図5参照)において、エンジンの要求からすると、CNGの流量が増加するにつれて調圧圧力が変化しない又は上昇するのが望ましいが、流量が増加するにつれて調圧スプリング108のスプリング力が増大するために調圧圧力が徐々に低下する(図6の特性線L参照)。したがって、流量に対する調圧圧力の変化量すなわち変動幅Wが大きく、エンジンの要求特性に対する調圧圧力のずれが大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、流量に対する調圧圧力の変動幅を小さくすることのできるレギュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とするレギュレータにより解決することができる。
請求項1に記載されたレギュレータによると、流体を調圧する調圧室と背圧室とを区画する受圧部材と、受圧部材とともに可動し、調圧室へ流入する流体の通路を開閉する調圧バルブと、調圧室に流入した流体の圧力に抗して受圧部材を付勢する調圧スプリングとを備え、受圧部材に作用する調圧室の流体の圧力と調圧スプリングのスプリング力とのバランスにより調圧バルブの開閉ストロークが調整されることで、調圧室から流出する流体の調圧圧力を調圧するレギュレータであって、受圧部材に磁性体を設けるとともに磁性体に対向する電磁石を設け、電磁石の通電、非通電を切替えることにより、流量に対する調圧圧力を2段階に可変する構成としたことを特徴とする。このように構成すると、受圧部材に設けた磁性体に対向する電磁石への通電、非通電を切替えることにより、流量に対する調圧圧力を2段階に可変することで、流量に対する調圧圧力の変動幅を小さくすることができる。ひいては、エンジンの要求特性に対する調圧圧力のずれを小さくし、調圧特性をフラット化することができる。
【0008】
また、請求項2に記載されたレギュレータによると、流体の流量域を小流量域と大流量域とに分け、小流量域の場合には電磁石を非通電状態とし、また、大流量域の場合には電磁石を通電状態として磁性体に吸引力を作用させる構成としたことを特徴とする。このように構成すると、大流量域の場合には電磁石を通電状態として磁性体に吸引力を作用させるため、ピストンに作用する調圧スプリングのスプリング力を軽減し、調圧圧力の低下を防止することができる。
【0009】
また、請求項3に記載されたレギュレータによると、流体を調圧する調圧室と背圧室とを区画する受圧部材と、受圧部材とともに可動し、調圧室へ流入する流体の通路を開閉する調圧バルブと、調圧室に流入した流体の圧力に抗して受圧部材を付勢する調圧スプリングとを備え、受圧部材に作用する調圧室の流体の圧力と調圧スプリングのスプリング力とのバランスにより調圧バルブの開閉ストロークが調整されることで、調圧室から流出する流体の調圧圧力を調圧するレギュレータであって、受圧部材に永久磁石を設けるとともに永久磁石に対向する電磁石を設け、電磁石の通電、非通電及び通電方向を切替えることにより、流量に対する調圧圧力を3段階に可変する構成としたことを特徴とする。このように構成すると、受圧部材に設けた永久磁石に対向する電磁石への通電、非通電及び通電方向を切替えることにより、流量に対する調圧圧力を3段階に可変することで、流量に対する調圧圧力の変動幅を小さくすることができる。ひいては、エンジンの要求特性に対する調圧圧力のずれを小さくし、調圧特性をフラット化することができる。
【0010】
また、請求項4に記載されたレギュレータによると、流体の流量域を小流量域と中流量域と大流量域とに分け、中流量域の場合には電磁石を非通電状態とし、また、小流量域の場合には永久磁石に対して反発力を作用する通電方向をもって電磁石を通電状態とし、また、大流量域の場合には永久磁石に対して吸引力を作用する通電方向をもって電磁石を通電状態とする構成としたことを特徴とする。このように構成すると、小流量域の場合には永久磁石に対して反発力を作用する通電方向をもって電磁石を通電状態とするため、ピストンに作用する調圧スプリングのスプリング力を助勢し、調圧圧力の上昇を防止することができる。また、大流量域の場合には永久磁石に対して吸引力を作用する通電方向をもって電磁石を通電状態とするため、ピストンに作用する調圧スプリングのスプリング力を軽減し、調圧圧力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1にかかるレギュレータを示す断面図である。
【図2】レギュレータの調圧特性を示す特性線図である。
【図3】実施形態2にかかるレギュレータを示す断面図である。
【図4】レギュレータの調圧特性を示す特性線図である。
【図5】従来例にかかるレギュレータを示す断面図である。
【図6】レギュレータの調圧特性を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0013】
[実施形態1]
実施形態1について説明する。本実施形態では、レギュレータの一例として、CNGを自動車のエンジンの燃料として使用するために、自動車に搭載されたボンベ内の高圧のCNGの圧力を所定圧に減圧いわゆる調圧するレギュレータを例示する。図1はレギュレータを示す断面図である。
レギュレータの基本的構成から説明する。図1に示すように、レギュレータ10は、ハウジングとしてのレギュレータ本体12を備えている。レギュレータ本体12は、基体13と、基体13の上端部に外嵌状に嵌着された中空状の筒状体14と、筒状体14の上部に固定されたカバー体15とを備えている。筒状体14の下面開口が基体13により閉鎖され、また、筒状体14の上面開口がカバー体15で閉鎖されている。基体13の上端部の外周面には、該基体13と筒状体14との間をシールするシール部材16が装着されている。シール部材16としては、Oリング、パッキン等を用いることができる。また、カバー体15は、中空状に形成されている。カバー体15には、中空状の調整スリーブ17がねじ付けられている。
【0014】
前記レギュレータ本体12の基体13と筒状体14とカバー体15とにより形成された内部空間には、ピストン20が軸方向(上下方向)に移動可能すなわち昇降可能に配置されている。ピストン20によりレギュレータ本体12内が上下2室すなわち背圧室22と調圧室24とに区画されている。また、ピストン20は、有底筒状に形成されており、底壁部20aと周壁部20bとを有している。また、周壁部20bの外周面には、該ピストン20と筒状体14との間をシールするシール部材26が装着されている。シール部材26としては、Oリング、パッキン等を用いることができる。なお、ピストン20は、本明細書でいう「受圧部材」に相当する。
【0015】
前記背圧室22は大気に開放されている。前記ピストン20と前記調整スリーブ17との対向面の間には、コイルスプリングからなる調圧スプリング28が介装されている。すなわち、調圧スプリング28の下端面は、ピストン20の底壁部20aの上面に当接されている。また、調圧スプリング28の上端面は、調整スリーブ17の下端面に当接されている。調圧スプリング28は、前記調圧室24に流入したCNGの圧力に抗してピストン20を付勢する。また、カバー体15に対して調整スリーブ17を螺進又は螺退させることにより、ピストン20に対する調圧スプリング28のスプリング力を調整することができる。
【0016】
前記基体13には、前記ピストン20と同心状をなすバルブ収容孔30が形成されている。バルブ収容孔30は、基体13を上下方向に貫通しており、上方を大径とし、下方に向かって次第に小径とする計4段の段付孔状に形成されている。また、基体13の一側部(図1において右側部)には、バルブ収容孔30の上から2段目の孔部内と外部とを連通する径方向(横方向)に延びる流入口32が形成されている。また、基体13の他側部(図1において左側部)には、上下方向に貫通する流出口34が形成されている。流出口34の上端部内は、前記調圧室24内と連通されている。また、基体13の下端部には、流出口34の下端部とバルブ収容孔30(詳しくは最下段の孔部)の下端部とを連通する連絡溝36が形成されている。また、基体13には、連絡溝36を介して流出口34及びバルブ収容孔30(詳しくは最下段の孔部)と連通される流路を有する下流側部材(図示省略)が接続されるようになっている。下流側部材としては、例えば配管部材、継手、CNG機器等が相当する。
【0017】
前記バルブ収容孔30の最上段の孔部内には、中空状の弁座38がねじ付け等により設置されている。また、弁座38に開口された連通孔39を介して、バルブ収容孔30内と前記調圧室24内とが連通されている。また、弁座38の下面には、弁座38と前記基体13(詳しくは弁座38に対向するバルブ収容孔30の最上段の孔部の下面)との間をシールするOリング40が装着されている。
【0018】
前記バルブ収容孔30内には、調圧バルブ42が軸方向(上下方向)に移動可能すなわち昇降可能に収容されている。調圧バルブ42は、フランジ状の弁体部42aと、弁体部42aの下面に突出された案内軸部42bと、弁体部42aの上面に突出する連結軸部42cとを同心状に有している。弁体部42aは、バルブ収容孔30の上から2段目の孔部内に摺動可能に嵌合されている。弁体部42aの外周面には、軸方向すなわち上下方向に延びる連通溝44が形成されている。また、弁体部42aの上面には、該弁体部42aと前記弁座38との間をシールするOリング46が装着されている。また、案内軸部42bは、バルブ収容孔30の最下段の孔部内に摺動可能に嵌合されている。なお、案内軸部42bの下端面は、最下段の孔部の下端開口面よりも上方に位置している。
【0019】
前記連結軸部42cは、前記弁座38の連通孔39内に同心状にかつ遊嵌状に挿入されている。連結軸部42cの上端部は、弁座38の上面より上方へ突出されている。また、前記バルブ収容孔30の下から2段目の孔部内には、該孔部の内周面と案内軸部42bの外周面との間をシールするOリング48が装着されている。また、バルブ収容孔30の上から2段目の孔部の下端部内には、リング状のストッパ50が設けられている。ストッパ50と弁体部42aとの間には、案内軸部42bに嵌装されたコイルスプリングからなるバルブスプリング52が介装されている。バルブスプリング52は、弁体部42aを弁座38に着座する方向すなわち閉弁方向(上方)へ付勢している。また、バルブスプリング52の弾性をもって、連結軸部42cが前記ピストン20の底壁部20aに当接されている。すなわち、ピストン20の昇降動作に連動して調圧バルブ42がバルブスプリング52の弾性を利用して昇降されるようになっている。なお、バルブスプリング52のスプリング力は、前記調圧スプリング28のスプリング力よりも小さく、ピストン20の調圧動作にほとんど影響しないスプリング力とする。
【0020】
前記バルブ収容孔30の上から2段目の孔部内の空間部と、弁座38の連通孔39内の空間部とにより、前記流入口32と前記調圧室24とを連通する入口通路54が形成されている。バルブ収容孔30の上から2段目の孔部内の空間部とは、その孔部の内周面と前記調圧バルブ42の弁体部42a及び案内軸部42bの外周面との間で、前記バルブスプリング52を除いた空間部(弁体部42aの連通溝44を含む)である。また、弁座38の連通孔39内の空間部とは、連通孔39の内周面と調圧バルブ42の連結軸部42cとの間の空間部である。
【0021】
前記入口通路54は、前記弁座38に対する前記調圧バルブ42の弁体部42aの着座によって遮断され、また、その弁体部42aの離座によって連通される。なお、入口通路54は本明細書でいう「調圧室へ流入する流体の通路」に相当する。また、図1中、符号56はバックアップリングが示されている。また、ストッパ50及びバックアップリング56は、案内軸部42bの昇降に支障とならないように設けられている。
【0022】
前記レギュレータ10において、調圧バルブ42が下降位置にある開弁状態において、CNGボンベ(図示省略)から供給される高圧のCNGは、流入口32から入口通路54を介して調圧室24内に流入する。そして、調圧室24内におけるCNGの圧力が所定圧以上になると、その圧力によってピストン20が調圧スプリング28の弾性に抗して上昇されるにともない、調圧バルブ42がバルブスプリング52の弾性により上昇されるすなわち閉弁される。また、調圧室24内におけるCNGの圧力が所定圧(すなわち調圧圧力)以下になると、調圧スプリング28のスプリング力によって、ピストン20が下降されるにともない、調圧バルブ42がバルブスプリング52の弾性に抗して下降されるすなわち開弁される。したがって、ピストン20に対する調圧室24内のCNGの圧力と調圧スプリング28のスプリング力とのバランスにより調圧バルブ42の開閉ストローク(昇降ストローク)が調整(減圧)されることで、調圧室24から流出口34へ流出するCNGの調圧圧力が調圧される。
【0023】
また、調圧されたCNGは、調圧室24から流出口34を介して下流側部材(図示省略)へ流出され、最終的にはエンジンへ供給される。また、調圧室24で調圧された調圧圧力は、流出口34から連絡溝36及びバルブ収容孔30の最下段の孔部内を介して調圧バルブ42に対する背圧として作用する。これにより、CNGの入口圧力の変動にかかわらず調圧圧力が一定化される。
【0024】
次に、前記レギュレータ10(図1参照)の要部の構成について説明する。
前記ピストン20を磁性材により形成することによって、ピストン20全体が磁性体となっている。
【0025】
前記調整スリーブ17内には、前記ピストン20の底壁部20aの中央部に対向する電磁石60が設けられている。電磁石60は、軸状の固定鉄心61と、固定鉄心61の基部(図1において上部)の外周部に固定された電磁コイル62とを備えている。固定鉄心61の先端面(下端面)は、ピストン20の底壁部20aに対して所定の隙間を隔てて対向されている。また、電磁コイル62はボビン63に巻線されている。電磁石60は、調整スリーブ17に対してボビン63を介してねじ付けられている。これにより、調整スリーブ17に対して電磁石60を螺進又は螺退させることにより、ピストン20の底壁部20aと固定鉄心61との間の隙間(間隔)を調整することができる。
【0026】
前記電磁石60(詳しくは電磁コイル62)の通電、非通電を切替えることにより、CNGの流量に対する調圧圧力が2段階に可変される。すなわち、電磁石60は、前記ピストン20に作用する電磁力すなわち吸引力が発生する通電状態と、ピストン20に作用する吸引力が発生しない非通電状態とに切替えられる。
【0027】
前記レギュレータ10には、前記電磁石60の通電、非通電を切替え制御するコントローラ65が設けられている。コントローラ65は、例えば前記流出口34を流れるCNGの流量を検出する流量センサ67からの検出信号に基づいて電磁石60の通電、非通電を切替え制御する。
【0028】
図2はレギュレータの調圧特性を示す特性線図である。なお、図2において横軸は流量を示し、縦軸は調圧圧力を示している。
図2に示すように、CNGの流量域(0(ゼロ)から最大流量までの流量域)Rをほぼ二等分する位置に切替点流量Qpが設定されている。流量域Rは、切替点流量Qp未満の小流量域R1と、切替点流量Qp以上の大流量域R2とに分けられている。そして、前記コントローラ65(図1参照)は、小流量域R1の場合には電磁石60を非通電状態とし、また、大流量域R2の場合には電磁石60を通電状態とする。なお、コントローラ65は本明細書でいう「制御手段」に相当する。また、流量センサ67は、本明細書でいう「流量検出手段」に相当する。
【0029】
前記レギュレータ10(図1参照)において、小流量域R1(図2参照)の場合には、電磁石60が非通電状態とされる。したがって、ピストン20に作用する調圧室24のCNGの圧力と調圧スプリング28のスプリング力とのバランスにより調圧バルブ42の開閉ストロークが調整されることで、調圧室24から流出するCNGの調圧圧力が調圧される。この場合の流量と調圧圧力との関係が図2に特性線L1で示されている。
【0030】
また、大流量域R2(図2参照)の場合には、電磁石60が通電状態とされる。したがって、ピストン20に作用する吸引力が発生し、ピストン20が調圧スプリング28の弾性に抗して引上げられる方向に付勢される。これにより、ピストン20に対する調圧スプリング28のスプリング力が軽減される。このため、ピストン20に作用する調圧室24のCNGの圧力と、調圧スプリング28のスプリング力から電磁石60の吸引力を減じた力とのバランスにより、調圧バルブ42の開閉ストロークが調整されることで、調圧室24から流出するCNGの調圧圧力が調圧される。この場合の流量と調圧圧力との関係が図2に特性線L2で示されている。なお、この場合、固定鉄心61の先端面(下端面)にピストン20の底壁部20aが当接しないで近接状態を保つものとする。
【0031】
前記したレギュレータ10(図1参照)によると、磁性体であるピストン20に対向する電磁石60への通電、非通電を切替えることにより、流量に対する調圧圧力を2段階に可変することで、流量に対する調圧圧力の変動幅W1(図2参照)を小さくすることができる。ひいては、エンジンの要求特性に対する調圧圧力のずれを小さくし、調圧特性をフラット化することができる。なお、図2において、従来例にかかる調圧性能が特性線Lで示されている。図2からわかるように、本実施形態にかかる変動幅W1は、従来例にかかる変動幅Wと比べて約1/2に減少される。
【0032】
また、大流量域R2の場合には電磁石60を通電状態としてピストン20に吸引力を作用させるため、ピストン20に作用する調圧スプリング28のスプリング力のスプリング力を軽減し、調圧圧力の低下を防止することができる(図2の特性線L2参照)。
【0033】
また、本実施形態では、ピストン20全体を磁性体としたが、ピストン20を非磁性材により形成するとともに底壁部20aの中央部に磁性体を設ける構成としてもよい。この場合、磁性体としては、磁性材により形成された磁性体、又は、永久磁石を用いることができる。
【0034】
[実施形態2]
実施形態2について説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図3はレギュレータを示す断面図である。
図3に示すように、本実施形態では、ピストン(符号、20Aを付す)が非磁性材により形成されている。ピストン20Aの底壁部20aの中央部上には、ブロック状の永久磁石70が取付けられている。永久磁石70は、電磁石60の固定鉄心61の下端面に対して一磁極の上面が所定の隙間を隔てて対向するように配置されている。
【0035】
前記電磁石60(詳しくは電磁コイル62)の通電、非通電及び通電方向を切替えることにより、CNGの流量に対する調圧圧力が3段階に可変される。すなわち、電磁石60は、ピストン20Aの永久磁石70に作用する吸引力が発生する通電方向の通電状態と、ピストン20Aの永久磁石70に作用する反発力が発生する通電方向の通電状態と、ピストン20Aに作用する吸引力又は反発力は発生しない非通電状態とに切替えられる。また、前記コントローラ65は、前記流量センサ67からの検出信号に基づいて電磁石60の通電、非通電及び通電方向を切替え制御する。
【0036】
図4はレギュレータの調圧特性を示す特性線図である。なお、図4において横軸は流量を示し、縦軸は調圧圧力を示している。
図4に示すように、CNGの流量域Rをほぼ三等分する位置に切替点流量Qp1、Qp2が設定されている。流量域Rは、第1切替点流量Qp1未満の小流量域Raと、第1切替点流量Qp1以上で第2切替点流量Qp2未満の中流量域Rbと、第2切替点流量Qp2以上の大流量域Rcとに分けられている。そして、コントローラ65(図3参照)は、小流量域Raの場合には永久磁石70に対して反発力を作用する通電方向をもって電磁石60を通電状態とし、また、中流量域Rbの場合には電磁石60を非通電状態とし、また、大流量域Rcの場合には永久磁石70に対して吸引力を作用する通電方向をもって電磁石60を通電状態とする。
【0037】
前記レギュレータ10(図3参照)において、小流量域Ra(図4参照)の場合には、永久磁石70に対して反発力を作用する通電方向をもって電磁石60が通電状態とされる。したがって、永久磁石70に作用する反発力が発生し、ピストン20Aが押下げられる方向に付勢される。これにより、ピストン20Aに対する調圧スプリング28のスプリング力が助勢される。このため、ピストン20Aに作用する調圧室24のCNGの圧力と、調圧スプリング28のスプリング力に電磁石60の反発力を加えた力とのバランスにより、調圧バルブ42の開閉ストロークが調整される。この場合の流量と調圧圧力との関係が図4に特性線Laで示されている。
【0038】
また、中流量域Rb(図4参照)の場合には、電磁石60が非通電状態とされる。したがって、ピストン20Aに作用する調圧室24のCNGの圧力と調圧スプリング28のスプリング力とのバランスにより調圧バルブ42の開閉ストロークが調整されることで、調圧室24から流出するCNGの調圧圧力が調圧される。この場合の流量と調圧圧力との関係が図4に特性線Lbで示されている。
【0039】
また、大流量域Rc(図4参照)の場合には、永久磁石70に対して吸引力を作用する通電方向をもって電磁石60が通電状態とされる。したがって、永久磁石70に作用する吸引力が発生し、ピストン20Aが調圧スプリング28の弾性に抗して引上げられる方向に付勢される。これにより、ピストン20Aに対する調圧スプリング28のスプリング力が軽減される。このため、ピストン20Aに作用する調圧室24のCNGの圧力と、調圧スプリング28のスプリング力から電磁石60の吸引力を減じた力とのバランスにより、調圧バルブ42の開閉ストロークが調整されることで、調圧室24から流出するCNGの調圧圧力が調圧される。この場合の流量と調圧圧力との関係が図4に特性線Lcで示されている。なお、この場合、固定鉄心61の先端面(下端面)にピストン20Aの底壁部20aが当接しないで近接状態を保つものとする。
【0040】
前記したレギュレータ10(図3参照)によると、ピストン20Aに設けた永久磁石70に対向する電磁石60への通電、非通電及び通電方向を切替えることにより、流量に対する調圧圧力を3段階に可変することで、流量に対する調圧圧力の変動幅W2(図4参照)を小さくすることができる。ひいては、エンジンの要求特性に対する調圧圧力のずれを小さくし、調圧特性をフラット化することができる。なお、図4において、従来例にかかる調圧性能が特性線Lで示されている。図4からわかるように、本実施形態にかかる変動幅W2は、従来例にかかる変動幅Wと比べて約1/3に減少される。
【0041】
また、小流量域Ra(図4参照)の場合には、永久磁石70に対して反発力を作用する通電方向をもって電磁石60を通電状態とするため、ピストン20Aに作用する調圧スプリング28のスプリング力を助勢し、調圧圧力の上昇を防止することができる(図4の特性線La参照)。
また、大流量域Rc(図4参照)の場合には、永久磁石70に対して吸引力を作用する通電方向をもって電磁石60を通電状態とするため、ピストン20Aに作用する調圧スプリング28のスプリング力を軽減し、調圧圧力の低下を防止することができる(図4の特性線Lc参照)。
【0042】
また、本実施形態では、調圧圧力を3段階に可変する構成としたが、永久磁石70に対する電磁力の反発力又は吸引力の一方の作用を省略することによって、調圧圧力を2段階で可変する構成としてもよい。
【0043】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明は、CNGに限らず、窒素、水素、酸素等のレギュレータ10としても適用することができる。また、受圧部材としては、ピストンに限らず、ダイアフラム、ベローズ等を使用することができる。ダイアフラム、ベローズ等の場合、それらの可動部分に磁性体を設ければよい。また、流量域Rにおける切替点流量Qp、Qp1、Qp2の位置は適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0044】
10…レギュレータ
20…ピストン(受圧部材、磁性体)
20A…ピストン
22…背圧室
24…調圧室
28…調圧スプリング
42…調圧バルブ
60…電磁石
70…永久磁石


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を調圧する調圧室と背圧室とを区画する受圧部材と、
前記受圧部材とともに可動し、前記調圧室へ流入する流体の通路を開閉する調圧バルブと、
前記調圧室に流入した流体の圧力に抗して前記受圧部材を付勢する調圧スプリングと
を備え、
前記受圧部材に作用する前記調圧室の流体の圧力と前記調圧スプリングのスプリング力とのバランスにより前記調圧バルブの開閉ストロークが調整されることで、前記調圧室から流出する流体の調圧圧力を調圧するレギュレータであって、
前記受圧部材に磁性体を設けるとともに前記磁性体に対向する電磁石を設け、
前記電磁石の通電、非通電を切替えることにより、流量に対する調圧圧力を2段階に可変する構成とした
ことを特徴とするレギュレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のレギュレータであって、
流体の流量域を小流量域と大流量域とに分け、小流量域の場合には前記電磁石を非通電状態とし、また、大流量域の場合には前記電磁石を通電状態として前記磁性体に吸引力を作用させる構成としたことを特徴とするレギュレータ。
【請求項3】
流体を調圧する調圧室と背圧室とを区画する受圧部材と、
前記受圧部材とともに可動し、前記調圧室へ流入する流体の通路を開閉する調圧バルブと、
前記調圧室に流入した流体の圧力に抗して前記受圧部材を付勢する調圧スプリングと
を備え、
前記受圧部材に作用する前記調圧室の流体の圧力と前記調圧スプリングのスプリング力とのバランスにより前記調圧バルブの開閉ストロークが調整されることで、前記調圧室から流出する流体の調圧圧力を調圧するレギュレータであって、
前記受圧部材に永久磁石を設けるとともに前記永久磁石に対向する電磁石を設け、
前記電磁石の通電、非通電及び通電方向を切替えることにより、流量に対する調圧圧力を3段階に可変する構成とした
ことを特徴とするレギュレータ。
【請求項4】
請求項3に記載のレギュレータであって、
流体の流量域を小流量域と中流量域と大流量域とに分け、中流量域の場合には前記電磁石を非通電状態とし、また、小流量域の場合には前記永久磁石に対して反発力を作用する通電方向をもって前記電磁石を通電状態とし、また、大流量域の場合には前記永久磁石に対して吸引力を作用する通電方向をもって前記電磁石を通電状態とする構成としたことを特徴とするレギュレータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−73886(P2012−73886A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219137(P2010−219137)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】