説明

レジスト塗布装置

【課題】 レジストを滴下させるためのノズルの待機中において、ノズルの先端部のレジスト硬化を確実に防止し、レジストの塗布不良の発生をなくすこと。
【解決手段】 基板にレジストを滴下させ、基板を高速回転させて基板上に塗布膜を形成するレジスト塗布装置において、
レジストを滴下させるためのノズルと、このノズルにレジストを供給するレジスト供給ユニットと、ノズルの先端部を着脱可能に保持し、基板にレジストを滴下するまで待機させるノズル待機ユニットとを備え、このノズル待機ユニットが、ノズルの先端部に被さり、ノズルの先端開口を密閉保持するキャップ状体を備えたレジスト塗布装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト塗布装置に関し、さらに詳しくは、基板にレジストを滴下させ、基板を高速回転させて基板上に塗布膜を形成するレジスト塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置としては、従来、ノズルの先端部を溶剤蒸気雰囲気中にて湿潤させる機構を装備したレジスト塗布装置が提案されている(特許文献1参照)。
図5はこのレジスト塗布装置の要部を示す説明図である。
図5において、ノズルの先端部を溶剤蒸気雰囲気中にて湿潤させる機構は、有機溶剤槽4と、この有機溶剤槽に有機溶剤5を供給する溶剤供給タンク8と、有機溶剤槽4の開口部に被せられるキャップ3と、このキャップを介して有機溶剤槽4内に気密に突刺されるレジスト供給ノズル2とを備えている。そして、有機溶剤槽4は、レジスト供給ノズル2の先端部を、基板にレジストを滴下するまでの待機中、溶剤蒸気6雰囲気中にて湿潤されるようコントロールされている。
【0003】
なお、4a はオーバーフロー孔、4bは溶剤蒸気発生空間、7はオーバーフロータンク、9はレジスト供給パイプ、15a、15b、15cはバルブである。
ノズルの先端部を溶剤蒸気雰囲気中にて湿潤させる機構は、以上の構成を備えているので、レジスト供給ノズル2の先端部近傍のレジストの乾燥を防止し、それによって塗布むらの発生を防止できるとされている。
【0004】
しかしながら、有機溶剤槽4内の溶剤蒸気6は大気より重く、また、溶剤蒸気6がオーバーフロー孔4aより流出し、レジスト供給パイプ9の先端部に溶剤蒸気6が届かず、レジスト供給パイプ9の先端部のレジストが硬化するおそれが依然としてある。また、従来のレジスト塗布装置では、定期的なレジストの空出しができないため、レジスト供給パイプ9内のレジストの増粘が懸念される。
【特許文献1】特開昭64−48417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の主要な目的の一つは、レジストを滴下させるためのノズルの待機中において、ノズルの先端部のレジスト硬化を確実に防止し、レジストの塗布不良の発生をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板にレジストを滴下させ、基板を高速回転させて基板上に塗布膜を形成するレジスト塗布装置において、
レジストを滴下させるためのノズルと、このノズルにレジストを供給するレジスト供給ユニットと、ノズルの先端部を着脱可能に保持し、基板にレジストを滴下するまで待機させるノズル待機ユニットとを備え、
このノズル待機ユニットが、ノズルの先端部に被さり、ノズルの先端開口を密閉保持するキャップ状体を備えたことを特徴とするレジスト塗布装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
すなわち、本発明に係るレジスト塗布装置によれば、ノズル待機ユニットが、ノズルの先端部に被さり、ノズルの先端開口を密閉保持するキャップ状体を備えているので、ノズルの待機中において、ノズルの先端部のレジスト硬化を確実に防止し、レジストの塗布不良の発生をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、基板にレジストを滴下させ、基板を高速回転させて基板上に塗布膜を形成するレジスト塗布装置を対象としている。
本発明に係るレジスト塗布装置は、レジストを滴下させるためのノズルと、このノズルにレジストを供給するレジスト供給ユニットと、ノズルの先端部を着脱可能に保持し、基板にレジストを滴下するまで待機させるノズル待機ユニットとを備え、このノズル待機ユニットが、ノズルの先端部に被さり、ノズルの先端開口を密閉保持するキャップ状体を備えたことを特徴とする。
【0009】
ここで、キャップ状体が、ノズルの先端部に被さり、ノズルの先端開口を密閉保持するとは、キャップ状体がノズルの先端部に被さることによって、ノズルの先端部を外部から構造的に遮断し、外気やレジスト(蒸気を含む)の外部からの侵入を遮断した状態に保持することを意味する。
【0010】
上記キャップ状体は、具体的には、例えば、そのツバ部をノズルの胴部または胴部に形成されるフランジ部に密着し、ノズルの先端開口近傍には触れないように、ノズルの先端部を気密に覆うのが好ましい。要するに、キャップ状体は、ノズルの先端部に閉じた気密空間を形成し、その閉じた気密空間に満たされたレジスト蒸気にノズルの先端部が晒されることになるわけである。なお、ノズルの先端部とキャップ状体との間には、リング状のシール部材を介在させるのが、気密を保持する上で好ましい。
【0011】
本発明においては、ノズルをノズル待機ユニットから取り出し、ノズルの先端開口からレジストを空出しさせるための空出しユニットを、ノズル待機ユニットに隣接して設けると、さらに、ノズルの先端部のレジスト硬化を確実に防止し、レジストの塗布不良の発生をなくすことができる。なお、レジストの空出しは、3〜5cc程度を3〜5時間間隔で実行するのが好ましい。
【0012】
ここで、上記空出しユニットは、具体的には、ドレイン配管を有する空出し槽を備え、さらに、この空出し槽にレジストの溶剤を供給し空出しされたレジストを、ドレイン配管を通じて洗い流す溶剤供給部を備えると、空出し槽内にレジストが溜まるのを防止できる。
【0013】
本発明において、レジスト供給ユニットは、具体的には、例えば、レジストタンクと、このレジストタンクとノズルとを結ぶレジスト流路と、このレジスト流路に介設され、レジストをレジストタンクからノズルへ供給するポンプとからなる。そして、上記レジスト流路に、ノズル内のレジストを吸い上げるサックバック機構(例えば、空気作動式サックバックバルブ)を介設すると、ノズルの先端部のレジスト硬化をさらに防止でき、レジストの塗布不良の発生をなくすことができる。
【0014】
また、上記レジスト流路には、レジストタンクとポンプとの間に、レジストトラップタンクを介設すると、レジストの逆流を防止できる。
本発明において、キャップ状体は、透明または半透明の材料で構成されると、外部からノズルの先端開口近傍のレジストを観察できるので好ましい。さらに、キャップ状体は、その材質として、テフロン(登録商標)樹脂を代表例とする合成樹脂、または、石英ガラスを含むガラスなどを用いることができる。
【0015】
<実施の形態1>
以下、図に示す実施の形態1に基づいて本発明を説明する。
図1は本発明に係るレジスト塗布装置の実施の形態1としてレジストノズル待機ユニットを示す斜視図である。
図2は図1のレジストノズル待機ユニットを示す断面図、図3は図1のレジストノズル待機ユニットのレジストノズル周りの構成を説明する説明図、図4は実施の形態1として本発明に係るレジスト塗布装置のレジストノズル待機ユニットを示す斜視図である。
【0016】
まず、図4において、レジスト塗布装置Sは、レジストを滴下させるためのノズル1と、このノズルにレジストを供給するレジスト供給ユニットKと、基板としてのシリコンウエハHにレジストを滴下させ、シリコンウエハHを高速回転させてシリコンウエハH上に塗布膜を形成するレジスト塗布ユニットIと、ノズル1の先端部を着脱可能に保持し、シリコンウエハHにレジストを滴下するまで待機させるノズル待機ユニットFとを備えている。なお、Gはレジスト塗布ユニットIのスピンカップである。
【0017】
レジスト供給ユニットKは、レジストタンクAと、このレジストタンクからノズル1に延びるレジスト流路に、レジストトラップタンクBと、吸引ポンプCと、空気作動式サックバックバルブDとを介設している。
【0018】
次いで、図1〜3において、ノズル待機ユニットFは、ノズルキャップユニット6と、このノズルキャップユニットに隣接して設けられたレジスト空出しユニット4とからなる。そして、ノズルキャップユニット6は、ユニット受け11と、このユニット受けに保持されたキャップ状体としてのノズルキャップ7、・・とからなり、このノズルキャップ7は、耐有機溶剤素材であるテフトン樹脂で構成され、ノズル1の先端部に下方から、耐有機溶剤素材であるシリコン製のOリング5を介して被さり、ノズル1の先端開口10を密閉保持する。このOリング5は、接触面積が小さいので、摩擦によるダスト発塵を抑えることができる。
なお、図4に示す。空気作動式サックバックバルブDは、ノズル1の待機中において、ノズル1(内径2〜4mm程度で長さ3〜4cm)の先端開口から1〜1.5cmの距離を、レジストを引上げることで、ノズル1の先端部のレジストの硬化及び増粘を防止できる。
【0019】
かくして、ノズルキャップ7によれば、ノズル1の待機中において、ノズル1の先端部自体を密閉でき、それによって、ノズル1の先端部のレジスト硬化を確実に防止し、レジストの塗布不良の発生をなくすことができる。なお、ノズルキャップ7は、ユニット受け11から容易に取り外しができ、定期的な洗浄を行うことで、繰り返し使用できる。
レジスト空出しユニット4は、ドレイン配管3を有する空出し槽12と、この空出し槽にレジストの溶剤を供給し空出しされたレジストを、ドレイン配管3を通じて廃液タンク(図示省略)へ洗い流す溶剤供給部としての溶剤供給配管2とを備えている。なお、図2において、8はレジスト、9は溶剤をそれぞれ示す。なお、溶剤の供給は、この溶剤供給配管2からだけで済むので、従来に比べて、溶剤供給量を削減できる。
【0020】
レジスト空出しユニット4は、ノズルをノズル待機ユニットから取り出し、ノズルの先端開口からレジストを空出しさせることができ、それによって、ノズルの先端部のレジスト硬化を確実に防止し、レジストの塗布不良の発生をなくすことができる。なお、レジストの空出しは、3.0ccを3時間間隔で実行した。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るレジスト塗布装置の実施の形態1としてレジストノズル待機ユニットを示す斜視図である。
【図2】図1のレジストノズル待機ユニットを示す断面図である。
【図3】図1のレジストノズル待機ユニットのレジストノズル周りの構成を説明する説明図である。
【図4】実施の形態1として本発明に係るレジスト塗布装置のレジストノズル待機ユニットを示す斜視図である。
【図5】従来のレジストノズル待機ポットを説明する説明断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ノズル
2 溶剤供給配管
3 ドレイン配管
4 レジスト空出しユニット
5 Oリング
6 ノズルキャップユニット
7 ノズルキャップ
8 レジスト
9 溶剤
10 先端開口
11 ユニット受け
12 空出し槽
【0023】
A レジストタンク
B レジストトラップタンク
C 吸引ポンプ
D 空気作動式サックバックバルブ
F ノズル待機ユニット
G スピンカップ
H シリコンウエハ
I レジスト塗布ユニット
J ノズルキャップユニット
K レジスト供給ユニット
S レジスト塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にレジストを滴下させ、基板を高速回転させて基板上に塗布膜を形成するレジスト塗布装置において、
レジストを滴下させるためのノズルと、このノズルにレジストを供給するレジスト供給ユニットと、ノズルの先端部を着脱可能に保持し、基板にレジストを滴下するまで待機させるノズル待機ユニットとを備え、
このノズル待機ユニットが、ノズルの先端部に被さり、ノズルの先端開口を密閉保持するキャップ状体を備えたことを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項2】
ノズルをノズル待機ユニットから取り出し、ノズルの先端開口からレジストを空出しさせるための空出しユニットを、ノズル待機ユニットに隣接してさらに備えた請求項1に記載のレジスト塗布装置。
【請求項3】
空出しユニットが、ドレイン配管を有する空出し槽と、この空出し槽にレジストの溶剤を供給し空出しされたレジストを、ドレイン配管を通じて洗い流す溶剤供給部とを備えた請求項2に記載のレジスト塗布装置。
【請求項4】
ノズルの先端部とキャップ状体との間に介在させるリング状のシール部材をさらに備えた請求項1〜3のいずれか1つに記載のレジスト塗布装置。
【請求項5】
レジスト供給ユニットが、レジストタンクと、このレジストタンクとノズルとを結ぶレジスト流路と、このレジスト流路に介設され、レジストをレジストタンクからノズルへ供給するポンプとを備え、さらにレジスト流路が、ノズル内のレジストを吸い上げるサックバック機構を介設してなる請求項1〜4のいずれか1つに記載のレジスト塗布装置。
【請求項6】
レジスト流路が、レジストタンクとポンプとの間に、レジストトラップタンクを介設してなる請求項5に記載のレジスト塗布装置。
【請求項7】
キャップ状体が、外部からノズルの先端開口近傍のレジストを観察可能に透明または半透明の材料で構成された請求項1〜6のいずれか1つに記載のレジスト塗布装置。
【請求項8】
キャップ状体が、その材質をテフロン(登録商標)樹脂またはガラスとしてなる請求項1〜7のいずれか1つに記載のレジスト塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−117529(P2009−117529A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287472(P2007−287472)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】