説明

レジスト組成物

【課題】特定のエポキシ樹脂及び、特定の光酸発生剤を含有するレジスト組成物は、高アスペクト比が達成でき、かつ耐熱、耐メッキ性等、非常に優れた特性を有しているが、ドライフィルム化した際、切断又はスリッティングした時にチッピングが発生することが問題であった。
【解決手段】特定構造のアルカリ可溶性エポキシ化合物(A)、光酸発生剤(B)及び25℃における粘度が10〜20000mPa・sである環状エーテル化合物(C)を含有してなるレジスト組成物であって、環状エーテル化合物(C)の含有量が、アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)、光酸発生剤(B)及び環状エーテル化合物(C)の合計に対して16〜47質量%であるレジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅型のネガ型厚膜レジストに関する。さらに詳しくは、MEMS部品、マイクロマシン部品、μ−TAS(マイクロトータルアナリシスシステム)部品、マイクロリアクター部品、電子部品等の製造の際に行われるバンプ形成、メタルポスト形成、配線形成等精密加工、MEMS中空パッケージ材、半導体中空パッケージ材、接着剤等に適したアルカリ現像可能なレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
微小な機械要素、電子回路、光学素子を集積したデバイスはMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)またはマイクロマシンと呼ばれ、数多くの応用が検討され、実用化されている。これらのデバイスは半導体製造技術をベースにした小型の部品でありながら、複雑で高度な働きをするデバイスの総称であり、各種センサー、プリンタヘッド、ディスクヘッド、通信用光スイッチ、バイオチップ等のマイクロシステムの鍵を握る重要な部品となっている。この分野では通常の半導体製造とは異なり、高アスペクト比(アスペクト比は「構造体の高さ/幅」を意味する)のパターニングが可能なレジストが必要とされている。
【0003】
高アスペクト比の構造体を製造する方法としては「LIGAプロセス」と呼ばれる感光性樹脂組成物のX線リソグラフィによるパターン形成法が知られている。しかしながら、LIGAプロセスには高価なX線装置が必要であるのに加え、X線照射に長時間を要する等の欠点も有しており、省資源、省エネルギー、作業性向上及び生産性向上等の要求のため、安価で生産性の高いUV(紫外線)リソグラフィシステムの応用が注目されている。
【0004】
しかしながら、UVリソグラフィシステムにおけるジナフトキノン−ノボラック反応をベースとする従来のポジ型レジストは、50μm以上の厚膜が要求されるアプリケーションには適していない。従来のポジ型レジストによる厚膜化に限界があるのは、ジナフトキノン型(DNQ)の光反応物が、一般的にレジストの露光に用いられる近紫外領域波長(350〜450nm)に比較的高い光吸収能を有することによる。また、現像液に対する露光領域と非露光領域との溶解特性の違いにより、DNQ型フォトレジストを用いた場合の側壁形状はストレートではなくむしろスロープ形状となる。通常、光反応物の光吸収によってレジスト層のトップからボトムにかけて照射強度は徐々に減少するが、光吸収があまりにも高すぎる場合には、レジストのボトムはトップと比較して露光不足になるため、スロープ形状又は歪んだ形状になる。
【0005】
一方で、多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂と光酸発生剤としての芳香族スルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートからなるネガタイプの化学増幅型の厚膜レジスト組成物は、350〜450nmの波長域における光吸収能が非常に低いことが知られている。このレジスト組成物を種々の基板上にスピンコート又はカーテンコートの手法で塗布した後、ベーキングにより溶剤を揮発させて基板上に100μm又はそれ以上の厚みの固体フォトレジスト層を形成する。次いでコンタクト露光、プロキシミティ露光またはプロジェクション露光などの各種露光方法を用い、フォトマスクを通して固形レジスト層に近紫外光を照射することによりフォトリソグラフィー加工が施される。続いて、固体レジスト層を有する基板を現像液中に浸漬して非露光領域を溶解させることにより、基板上に高解像なフォトマスクのネガイメージを形成することができる。また、該レジスト組成物をポリエステルフィルム等の基材上へコートしたドライフィルムレジストのようなアプリケーションも開示されている(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載されているレジスト組成物の現像には有機溶剤が用いられており、環境に対する影響などから高アスペクト比の構造体を形成可能なアルカリ現像性のレジスト組成物の開発が望まれている。
【0006】
特許文献2及び3には、化学増幅型の厚膜レジストとしてアルカリ水溶液で現像可能なレジスト組成物が開示されており、これらのレジスト組成物は高アスペクト比の構造体を形成可能で、かつ耐熱性や耐メッキ性等に優れた硬化物を与えることができる。しかしながら、これらのレジスト組成物はオリゴマーが主成分であるために、ドライフィルム化したものを切断又はスリッティングする際にチッピングが発生することが問題となっている。ここでいう切断とはロール形状等長尺のドライフィルムの長さを調整するためにフィルムの幅方向に切ることを、スリッティングとはドライフィルムの幅を調整するために長さ方向に切ることを、またチッピングとは切断またはスリティング時に目視で確認できる微小な破断片が発生することを意味する。チッピングが発生すると装置やワークが汚染されるため、デバイスの製造工程では非常に大きな問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4882245号公報
【特許文献2】日本特許第3698499号公報
【特許文献3】日本公表特許2007−518121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特定のエポキシ樹脂及び、特定の光酸発生剤を含有する従来のレジスト組成物は、高アスペクト比の構造体を形成可能であり、かつ耐熱性や耐メッキ性等に優れた硬化物を与えることができるが、ドライフィルム化したものを切断又はスリッティングする際にチッピングが発生することが問題であった。
特許文献2及び3には、アルカリ可溶性エポキシ化合物、光カチオン重合開始剤及び室温で液状の環状エーテル化合物を含有する樹脂組成物が記載されているが、これら文献の実施例における環状エーテル化合物の添加量は本発明の特定の範囲よりも少量であり、また、これら環状エーテル化合物を含有することによりチッピングの発生防止に効果があることは何も示唆されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、特定のエポキシ化合物、光酸発生剤及び特定量の25℃における粘度が10〜20000mPa・sである環状エーテル化合物を含有してなるレジスト組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)、光酸発生剤(B)及び環状エーテル化合物(C)を含有してなるレジスト組成物であって、環状エーテル化合物(C)の25℃における粘度が10〜20000mPa・sであり、かつ、環状エーテル化合物(C)の含有量が、アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)、光酸発生剤(B)及び環状エーテル化合物(C)の合計に対して、16〜47質量%であるレジスト組成物、
(2)アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)が、1個以上のカルボキシル基を有するエポキシ化合物である前項(1)に記載のレジスト組成物、
(3)アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)が、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と一分子中に1個以上のカルボキシル基及び1個以上の水酸基を有する化合物(b)との反応物(I)に、多塩基酸無水物(c)を反応させたものである前項(2)に記載のレジスト組成物、
(4)アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)が、下記式(2)で表されるエポキシ化合物である前項(3)に記載のレジスト組成物、
【0011】
【化1】

【0012】
(式(2)中、m及びnは平均値であり、0を超える実数を示し、m+nは0を超え30以下の実数である。又、D1及びD2はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよく、次に示される基からなる群から選ばれるいずれかの基を示す。)
【0013】
【化2】

【0014】
(5)アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)が、下記式(3)で表されるエポキシ化合物である前項(4)に記載のレジスト組成物、
【0015】
【化3】

【0016】
(式(3)中、m及びnは前項(4)に記載の式(2)におけるのと同じ意味を示す。)
(6)環状エーテル化合物(C)が、2官能又は多官能エポキシモノマーである前項(1)乃至(5)のいずれか一項に記載のレジスト組成物、
(7)環状エーテル化合物(C)が、グリシジルエーテル系エポキシ化合物である前項(1)乃至(6)のいずれか一項に記載のレジスト組成物、
(8)環状エーテル化合物(C)の全塩素量が、3000ppm以下である前項(1)乃至(7)のいずれか一項に記載のレジスト組成物、
(9)環状エーテル化合物(C)が、ジシクロペンタジエン骨格を有することを特徴とする前項(1)乃至(8)のいずれか一項に記載のレジスト組成物、
(10)前項(1)乃至(9)のいずれか一項に記載のレジスト組成物を基材で挟み込んだドライフィルムレジスト、
に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレジスト組成物は、アルカリ性水溶液での現像により高アスペクト比の構造体を形成可能であり、現像後の基材との密着性に優れ、更に、ドライフィルム化したものを切断又はスリッティングした際のチッピングが発生しないという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のレジスト組成物は、アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)、光酸発生剤(B)及び特定量の25℃における粘度が10〜20000mPa.sである環状エーテル化合物(C)(以下、単に「環状エーテル化合物(C)」と記載する場合もある)を含有することを特徴とする。アルカリ可溶性エポキシ化合物と光酸発生剤を含有する組成物に、室温で液状の環状エーテル化合物を特定量添加することにより、高アスペクト比の構造体を形成可能という特性を損なうことなく、ドライフィルム化したものを切断又はスリッティングした際のチッピングが発生しないことを達成した。
【0019】
本発明で使用するアルカリ可溶性エポキシ化合物(A)としては、アルカリ性水溶液に可溶なエポキシ化合物であればいずれも使用可能である。ここでいう「アルカリ性水溶液に可溶」とは、アルカリ性水溶液の濃度や温度等にも依存するので一概には言えないが、後述する露光後の現像工程において、アルカリ性水溶液で現像可能な程度の溶解性を有することを意味する。具体的には、構造中にカルボキシル基や水酸基等、好ましくはカルボキシル基等の親水性の強い置換基や構造部位を有するエポキシ樹脂であり、より具体的には一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)(以下、単に「エポキシ化合物(a)」と記載する場合もある)と1分子中に1個以上のカルボキシル基及び1個以上の水酸基を有する化合物(b)(以下、単に「化合物(b)」と記載する場合もある)との反応物(I)に、多塩基酸の酸無水物(c)を反応させて得られるエポキシ樹脂等が好ましく使用出来る。
【0020】
前記エポキシ化合物(a)としては、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物であれば特に限定されず、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、ビフェニルジグリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂等があげられるが、レジスト組成物の硬化物の耐熱性が高いことから、一分子中に3個以上のエポキシ基を有するノボラック型エポキシ樹脂等が特に好ましく用いられる。
【0021】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばフェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール及びアルキルフェノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドとを酸性触媒下で反応して得られるノボラック類と、エピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等が挙げられる。そのようなエポキシ樹脂としては、例えば日本化薬(株)製のEOCN−103、EOCN−104S、EOCN−102、EOCN−1027、EOCN−4400H、EPPN−201及びBREN−S;ダウケミカル社製のDEN−431及びDEN−439;DIC製のN−730、N−770、N−865、N−665、N−673及びVH−4150等として市販品が入手できる。ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びテトラブロムビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンを反応させて得られるものや、ビスフェノールAまたはビスフェノールFのジグリシジルエーテルと前記ビスフェノール類の縮合物若しくは該縮合物にエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させ得られるもの等が挙げられ、そのようなエポキシ樹脂としては、例えばジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート1004、エピコート1002、エピコート4002及びエピコート4004等として市販品が入手できる。トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、例えば、トリスフェノールメタン、トリスクレゾールメタン等とエピクロルヒドリン及び/又はメチルエピクロルヒドリンとを反応させて得られるもの等が挙げられ、そのようなエポキシ樹脂は、日本化薬(株)製、EPPN−501及びEPPN−502等として入手できる。脂環式エポキシ樹脂としては、例えばダイセル化学工業(株)製のセロキサイド2021、三井化学(株)製、エポミックVG−3101、ジャパンエポキシレジン(株)製、E−1031S、日本曹達(株)製、EPB−13及びEPB−27、ダイセル化学工業(株)製、EHPE3150等の市販品が入手できる。共重合型エポキシ樹脂としては例えば、グリシジルメタクリレートとスチレンとメチルスチレンの共重合体である日本油脂(株)製、CP−50M及びCP−50S、あるいは、グリシジルメタクリレートとシクロヘキシルマレイミドなどとの共重合体等が挙げられる。その他、特殊な構造を有するエポキシ化合物を使用することも可能である。
【0022】
前記化合物(b)の具体例としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸及びジメチロールカプロン酸等のポリヒドロキシモノカルボン酸類、ヒドロキシピバリン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸等のモノヒドロキシモノカルボン酸類等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0023】
前記エポキシ化合物(a)と化合物(b)との反応の際の化合物(b)の使用量は、エポキシ化合物(a)のエポキシ基1当量に対して化合物(b)のカルボン酸が0.01〜0.5当量となる量が好ましく、特に好ましくは、0.1〜0.3当量である。反応温度は通常60〜150℃、反応時間は通常5〜30時間である。このようにして反応物(I)を得ることができる。
【0024】
反応物(I)と多塩基酸無水物(c)との反応の際の多塩基酸無水物の使用量は、反応物(I)中の水酸基1当量に対して多塩基酸無水物(c)が0.1〜1.0当量となる量が好ましい。反応温度は通常60〜150℃、反応時間は通常3〜24時間である。ここで多塩基酸無水物(c)の具体例としては、下記式で示される化合物等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0025】
【化4】

【0026】
上記エポキシ化合物(a)と化合物(b)との反応時、及び反応物(I)と多塩基酸無水物(c)との反応時には、希釈剤として、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノンなどのケトン類、トルエン、キシレン及びテトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート及びカルビトールアセテートなどのエステル類、オクタン及びデカンなどの脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサなどの石油系溶剤等の有機溶剤類を使用するのが好ましい。また、エポキシ化合物(a)と化合物(b)との反応を促進させるために、トリフェニルフォスフィン、ベンジルジメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、トリフェニルスチビン及びオクタン酸クロム等の触媒を使用することが好ましい。該触媒の使用量は、エポキシ化合物(a)と化合物(b)との合計に対して通常0.1〜10質量%である。反応中の重合を防止するために、重合防止剤(例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p−メトキシフェノール、カテコール、ピロガロール等)を併用するのが好ましく、その使用量は、反応原料混合物に対して、好ましくは0.01〜1質量%である。触媒を用いた場合には、反応終了後、有機過酸化物等により使用した触媒を酸化処理することにより、触媒活性を実質的に不活性にすることが好ましい。
【0027】
このように得られるアルカリ可溶性エポキシ化合物(A)としては、下記式(1)で表されるエポキシ化合物が好ましく、これらは、例えば、エポキシ化合物(a)としてフェノールノボラック型エポキシ樹脂(市販品としては、日本化薬(株)製のEPPN−201等が挙げられる。)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(市販品としては、日本化薬(株)製のEOCN−103、EOCN−104S及びEOCN−4400H等が挙げられる。)、ビスフェノール型エポキシ樹脂(市販品としては、油化シェルエポキシ(株)製のエピコート1004、エピコート1002、エピコート4002及びエピコート4004等が挙げられる。)等を用い、これらと1分子中に1個以上のカルボキシル基及び1個以上の水酸基を有する化合物(b)を反応させて得られた反応物(I)に、更に多塩基酸無水物(c)を反応させることによって得られる。
【0028】
【化5】

【0029】
(式(1)中、R1はエポキシ化合物(a)に由来する構造を、R2は1分子中に1個以上のカルボキシル基及び1個以上の水酸基を有する化合物(b)に由来する構造を、R3は多塩基酸無水物(c)に由来する構造をそれぞれ示す。又、Zは水素原子又は−COR3COOH基を示す。)
【0030】
さらに、前記アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)は下記式(2)
【0031】
【化6】

【0032】
(式(2)中、m及びnは平均値であり、0を超える実数を示し、m+nは0を超え30以下の実数である。又、D1及びD2はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよく、次に示される基からなる群から選ばれるいずれかの基を示す。)
【0033】
【化7】

【0034】
で表されるエポキシ化合物であることが好ましく、このようなアルカリ可溶性エポキシ化合物(A)は、エポキシ化合物(a)として、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(市販品としては、日本化薬(株)製のEOCN−103、EOCN−104S及びEOCN−4400H等が挙げられる。)を、1分子中に1個以上のカルボキシル基及び1個以上の水酸基を有する化合物(b)としてジメチロールプロピオン酸を、多塩基酸無水物(c)として次に示される化合物
【0035】
【化8】

【0036】
のいずれかを、それぞれ前記に準じて反応させることにより得られる。
更に、前記アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)が下記式(3)で表されるエポキシ化合物であることが特に好ましい。
【0037】
【化9】

【0038】
(式(3)中、m及びnは式(2)におけるのと同じ意味を示す。)
【0039】
本発明のレジスト組成物におけるアルカリ可溶性エポキシ化合物(A)の含有量は、アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)、光酸発生剤(B)及び環状エーテル化合物(C)の合計に対して通常40〜90質量%、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜85質量%である。
【0040】
本発明で使用する光酸発生剤(B)とは、光により直接又は間接的に酸を発生しカチオン重合を起こし得る化合物(カチオン重合開始剤)であり、例えば芳香族ヨードニウム錯塩や芳香族スルホニウム錯塩等を挙げることができる。
芳香族ヨードニウム錯塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。これらの光酸発生剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してよい。
【0041】
芳香族ホニウム錯塩の具体例としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’−ビス[ジフェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド−ビスヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ビス[ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド−ビスヘキサフルオロアンチモネート、7−[ジ(p−トルイル)スルホニオ]−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロホスフェート、7−[ジ(p−トルイル)スルホニオ]−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7−[ジ(p−トルイル)スルホニオ]−2−イソプロピルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド−ヘキサフルオロホスフェート、フェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド−ヘキサフルオロアンチモネート、4−tert−ブチルフェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド−ヘキサフルオロホスフェート、4−tert−ブチルフェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド−ヘキサフルオロアンチモネート、4−tert−ブチルフェニルカルボニル−4’−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィド−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−{4−(2−クロロベンゾイル)フェニルチオ}フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートのハロゲン化物、4,4’,4’’−トリ(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4’−ビス[ジフェニルスルホニオ]ジフェニルスルフィド−ビスヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート、トリス[4−(4−アセチルフェニルスルファニル)フェニル]スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニド等を挙げることができる。
【0042】
芳香族スルホニウム塩の中でも、高感度でありかつ市場から入手しやすいチオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−{4−(2−クロロベンゾイル)フェニルチオ}フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート、トリス[4−(4−アセチルフェニルスルファニル)フェニル]スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニド等が好ましい。
さらに、環境及び人体への有害性、ならびに各国の規制を鑑みると、アンチモン元素を含有しないジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート、トリス[4−(4−アセチルフェニルスルファニル)フェニル]スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニドを使用することが最も好ましい。
これらの光酸発生剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
光酸発生剤(B)は、特定波長の光を吸収して酸を発生するため、多量に使用した場合、レジスト組成物の上層部で照射光が多量に吸収されてしまい、カチオン重合を起こすために必要な量の光がレジスト組成物の深部まで届かない恐れがある。また、光酸発生剤(B)は一般的に高価であるため、レジスト組成物に必要以上に多量に添加することは経済的ではない。他方、添加量が少なすぎる場合には、硬化速度が著しく低下し、硬化物が充分な物性を発揮できない恐れがある。これらの点から、本発明のレジスト組成物における光酸発生剤(B)の含有量は、アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)、光酸発生剤(B)及び環状エーテル化合物(C)の合計に対して通常0.2〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0044】
本発明で使用する環状エーテル化合物(C)としては、室温で液状(25℃における粘度が10〜20000mPa.s)であり、かつアルカリ可溶性エポキシ樹脂(A)の有するエポキシ基又はカルボキシル基とカチオン重合可能な化合物であれば特に制限無く用いることが出来るが、レジスト組成物の硬化物の耐熱性が高いことから、2官能又は多官能であることが好ましい。また、環状エーテル化合物(C)の粘度が20000mPa・sを超える場合には、ドライフィルムにチッピング防止効果を付与するために環状エーテル化合物(C)を多量に添加する必要があり、これに伴いレジスト組成物の解像性や硬化後の耐熱性が低下する場合がある。一方、環状エーテル化合物(C)の粘度が10mPa・s未満の場合には、環状エーテル化合物(C)の揮発性が高くなり、ドライフィルムを作製する際の乾燥工程における条件設定が難しくなる。この様な環状エーテル化合物の具体例としては、エポキシ化合物及びオキセタン化合物等が挙げられる。これら環状エーテル化合物(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記エポキシ化合物は、その化学構造からグリシジルエーテル系、酸化系、グリシジルアミン系及びグリシジルエステル系等に分類されるが、グリシジルアミン系エポキシ化合物は、レジスト組成物を硬化する際に酸発生剤から発生する酸を消費することで、レジスト組成物の硬化速度が遅くなる場合がある。また、グリシジルエステル系エポキシ化合物は、一般にエーテル結合よりもエステル結合は耐熱性が低いため、レジスト組成物の硬化物の耐熱性が低下する場合がある。一方、グリシジルエーテル系エポキシ化合物は、例えば、酸化系エポキシ化合物と比べてカルボキシル基との反応性が適度に低いため、アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)が前記式(2)で表されるようにカルボキシル基を構造中に有する場合、レジスト組成物としての経時安定性に有利である。これらのことから、特にレジスト組成物の経時安定性及び硬化性を考慮した場合、前記エポキシ化合物としてはグリシジルエーテル系エポキシ化合物が好適である。
【0046】
グリシジルエーテル系エポキシ化合物の具体例としては、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
前記オキセタン化合物としては、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、1,4−ビス[〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル]ベンゼン、1,4−ビス〔(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ベンゼン、1,3−ビス〔(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ベンゼン、4,4’−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ビフェニル、ネオペンチルグリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル及びポリプロピレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の2官能オキセタン化合物等が挙げられる。
これらのうち、市場から入手しやすいこと及び比較的安価であること等の理由から、環状エーテル化合物(C)としてはグリシジルエーテル系エポキシ化合物がより好適である。
【0047】
また、本発明のレジスト組成物のようなアルカリ水溶液で現像可能なレジスト組成物は一般に親水性が高く、湿熱耐性に問題のある場合が多い。湿熱耐性の高いレジスト組成物を得るためには、環状エーテル化合物(C)として疎水性構造を有する化合物を用いることが効果的である。従って、前記グリシジルエーテル系エポキシ化合物のなかでも、ジシクロペンタジエン骨格のような疎水性の骨格を有する化合物を用いることで、硬化物の疎水性を高め硬化物の湿熱耐性を向上させることができる。そのため、ジシクロペンタジエン骨格を有するグリシジルエーテル系エポキシ化合物が特に好ましく、その具体例としてはジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0048】
尚、電子材料業界においては、特定のハロゲン化合物の燃焼時に燃焼条件等によりダイオキシンが発生する事実が報告されて以来、法規制を中心としたハロゲンフリー化が強く求められている。日本電子回路工業会(JPCA)や米国電子回路協会(IPC)では、塩素及び臭素がその対象であり、ハロゲンフリーの定義は、全塩素量900ppm以下、全臭素量900ppm以下、全塩素量及び全臭素量の合計が1500ppm以下とされているため、レジスト組成物の全塩素量を900ppm以下に抑えることが好ましいが、これらグリシジルエーテル系エポキシ化合物に代表される環状エーテル化合物(C)は一般的に塩素含有量が高いため、低塩素製造法又は精製工程を経て得られた全塩素量が3000ppm以下の環状エーテル化合物(C)が好ましく用いられる。環状エーテル化合物(C)の全塩素量が3000ppmを超える場合、レジスト組成物の全塩素含有量を900ppm以下に抑えることが困難なため、組成物の使用が制限される場合がある。
【0049】
本発明のレジスト組成物が、感光特性を維持し、かつ優れたチッピング防止効果を発現するための本発明のレジスト組成物における環状エーテル化合物(C)の含有量は、アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)、光酸発生剤(B)及び環状エーテル化合物(C)の合計に対して、通常16〜47質量%、好ましくは18〜36質量%である。環状エーテル化合物(C)の含有量が47質量%を超えると、液状のレジストとして使用した場合、溶剤乾燥後のレジスト膜にタックが残ることでマスクスティッキングが発生しやすくなり、ドライフィルムレジストとした場合、基材のフィルムを剥離する際にレジストフィルムの変形が起こりやすい。また、現像時にパターンの剥離が発生したり、解像性や硬化後の耐熱性が低下する場合もある。環状エーテル化合物(C)の含有量が16質量%未満の場合には、チッピングの改善効果が発現しにくく好ましくない。
【0050】
本発明のレジスト組成物は、溶剤で希釈して使用に供される。希釈に用い得る溶剤としては、例えばエチルメチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン及びアセトンなどのケトン類、トルエン、キシレン及びテトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル及びエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート及びカルビトールアセテートなどのエステル類、オクタン及びデカンなどの脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサなどの石油系溶剤等の有機溶剤類等を挙げることができる。これら溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
溶剤は、基材へ塗布する際の膜厚や塗布性を調整する目的で加えるものであり、前記各成分の溶解性、溶剤自体の揮発性、レジスト組成物の液粘度を適正に保持する為の使用量は、本発明のレジスト組成物100質量%に対して通常1〜99質量%、好ましくは10〜90質量%である。
【0051】
本発明のレジスト組成物には、紫外線を吸収し、吸収した光エネルギーを光酸発生剤に供与する役割を果たす増感剤を使用してもよい。増感剤としては、例えば9位と10位にアルコキシ基を有するアントラセン化合物(9,10−ジアルコキシ−アントラセン誘導体)が好ましい。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のC1〜C4のアルコキシ基が挙げられ、この9,10−ジアルコキシ−アントラセン誘導体は、9位と10位以外の部位に更に置換基を有していても良い。更に有しても良い置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基等のC1〜C4のアルキル基やスルホン酸アルキルエステル基、カルボン酸アルキルエステル基等が挙げられる。スルホン酸アルキルエステル基やカルボン酸アルキルエステル基におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等のC1〜C4のアルキル基が挙げられる。これらの置換基の置換位置は2位が好ましい。
【0052】
9,10−ジアルコキシ−アントラセン誘導体の具体例としては、例えば9,10−ジブトキシ−アントラセン、9,10−ジメトキシ−アントラセン、9,10−ジエトキシ−アントラセン、9,10−ジプロポキシ−アントラセン、9,10−ジメトキシ−2−エチル−アントラセン、9,10−ジエトキシ−2−エチル−アントラセン、9,10−ジプロポキシ−2−エチル−アントラセン、9,10−ジメトキシ−2−クロロ−アントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸メチルエステル,9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホン酸メチルエステル,9,10−ジメトキシアントラセン−2−カルボン酸メチルエステル等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
増感剤成分は少量で効果を発揮する為、本発明のレジスト組成物における使用量は、光酸発生剤(B)100質量%に対し5質量%以下が好ましく、特に好ましくは2質量%以下である。
【0053】
本発明のレジスト組成物には、基板に対する組成物の密着性を向上させる目的で、密着性付与剤を使用してもよい。密着性付与剤としては、例えば3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ユレイドプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキサン−1−イル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。これら密着性付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
密着性付与剤が本発明のレジスト組成物中の主要成分との反応性を持たない場合、基材界面で作用する以外の密着性付与剤が硬化後も硬化物中に残存し、物性低下などの悪影響を及ぼす懸念がある。基材によっては、少量の添加によっても効果を発揮する点から、悪影響を及ぼさない範囲内での使用が適当である。本発明のレジスト組成物における密着性付与剤の使用量は、本発明のレジスト組成物に対して通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
【0055】
本発明のレジスト組成物において、光酸発生剤由来のイオンによる悪影響を低減する必要がある場合には、トリスメトキシアルミニウム、トリスエトキシアルミニウム、トリスイソプロポキシアルミニウム、イソプロポキシジエトキシアルミニウム、トリスブトキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウム、トリスフェノキシアルミニウム、トリスパラメチルフェノキシアルミニウム等のフェノキシアルミニウム、トリスアセトキシアルミウム、トリスステアラトアルミニウム、トリスブチラトアルミニウム、トリスプロピオナトアルミニウム、トリスアセチルアセトナトアルミニウム、トリストリフルオロアセチルアセナトアルミニウム、トリスエチルアセトアセタトアルミニウム、ジアセチルアセトナトジピバロイルメタナトアルミニウム及びジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム等の有機アルミニウム化合物を添加してもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これら有機アルミニウム化合物の添加量は、本発明のレジスト組成物に対して10質量%以下である。
【0056】
又、本発明のレジスト組成物には、例えば硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び雲母粉等の無機充填剤を用いることができる。これら無機充填剤の配合比率は、本発明のレジスト組成物に対して0〜60質量%である。
【0057】
更に本発明のレジスト組成物には、必要に応じて、熱可塑性樹脂、着色剤、増粘剤、消泡剤及びレベリング剤等の各種添加剤を用いることが出来る。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエーテルスルホン、ポリスチレン及びポリカーボネート等があげられる。着色剤としては、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジン・グリーン、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック及びナフタレンブラック等があげられる。増粘剤としては、例えオルベン、ベントン及びモンモリロナイト等があげられる。消泡剤としては、例えばシリコーン系、フッ素系及び高分子系等の消泡剤があげられる。これらの添加剤等を使用する場合、その使用量は本発明のレジスト組成物に対して、例えば、それぞれ0.5〜30質量%程度が一応の目安であるが、使用目的に応じ適宜増減し得る。
【0058】
本発明のレジスト組成物は、前記各成分を混合、攪拌するだけで調整可能であり、必要に応じディゾルバー、ホモジナイザー及び3本ロールミル等の分散機を用いて分散、混合させてもよい。また、混合した後で、メッシュやメンブレンフィルター等を用いてろ過処理を施してもよい。
【0059】
溶剤に溶解した本発明のレジスト組成物を、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、バーコーターまたはグラビアコーター等を用いてベースフィルム上に塗布した後、60〜120℃に設定した乾燥炉で乾燥して所定量の溶剤を除去することにより、また、必要に応じてカバーフィルム等を積層することにより、ドライフィルムレジストとすることができる。この際、ベースフィルム上のレジストの厚さは、2〜100μmに調整される。ベースフィルム及びカバーフィルムとしては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のフィルムが使用される。このドライフィルムレジストを使用するには、例えば、カッター等を用いてドライフィルムレジストのロールから使用する大きさに切り出したドライフィルムレジストのカバーフィルムを剥離した後、マニュアルラミネータ、オートラミネータまたはハンドロール等を使用して、温度23〜100℃、圧力0.05〜2MPaの条件で基板にラミネートする。次に、ベースフィルム上から露光を行い、ベースフィルムをはがした後に加熱処理(露光後ベーク)及び現像を行う。また、現像後の構造体に更に後硬化(ハードベーク)を施すことは、硬化物の特性向上の点で好ましい。以下に露光、加熱及び現像工程について詳しく説明する。
【0060】
(1)露光:基板上設けられたドライフィルムレジスト層に、所望のパターンを有するマスクを介して、例えば波長が300〜500nmの紫外線や可視光線等の放射線を照射し、硬化させたい部分のみを露光させる。これらの放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプまたはアルゴンガスレーザーなどを用いることができる。ここでいう放射線とは、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線などを意味する。放射線の照射量は、組成物中の各成分の種類や配合量、塗膜の膜厚などによって異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100〜2000mJ/cm2である。
(2)露光後ベーク:露光後、例えば、ホットプレート、オーブン等の公知の方法を用いて加熱する。加熱条件は、通常50〜130℃で1〜50分間程度である。
(3)現像:現像方法としては、アルカリ性水溶液を現像液として用いて放射線未照射な部分を溶解、除去し、放射線照射部分のみを残存させる。現像液としては、例えばテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下「TMAH」と記載する)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムまたはケイ酸ナトリウム等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また前記アルカリ類の水溶液に、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を添加した水溶液を現像液として使用することもできる。現像条件は、組成物各成分の種類、配合割合、組成物の乾燥膜厚によって異なるが、通常、現像液濃度0.5〜10質量%、温度15〜30℃、現像時間1〜30分間程度の条件であり、また現像方法は液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法などのいずれでも良い。現像後に流水洗浄を30〜180秒間行うことが好ましく、その後、エアーガンやオーブン等を用いて得られた構造体を乾燥させてもよい。
(4)ハードベーク:現像工程後、例えば、ホットプレート、オーブン等の公知の方法を用いて加熱する。加熱条件は、通常120〜250℃で5〜120分間程度である。
【0061】
本発明のレジスト組成物は、以下に記載するように液状のまま使用してもよく、また、その硬化物にメタルバンプを形成することもできる。
溶剤に溶解した本発明のレジスト組成物を基板上に塗布した後、加熱により溶剤を除去することによって本発明のレジスト組成物の塗膜を形成する。基板上への塗布方法としては、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法及びアプリケーター法等の方法を採用することができる。基板上に塗布した後の加熱による溶剤除去条件は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なるが、通常は40〜150℃で、好ましくは60〜120℃で、2〜60分間程度である。
塗膜を形成した後、上記と同様に露光、加熱処理、現像を行えばよい。
【0062】
本発明のレジスト組成物の硬化物上にメタルバンプを形成するためのメッキ処理方法はとくに限定されず、それ自体公知の各種メッキ方法を採用することができる。メッキ液としては、特にニッケルメッキ、ハンダメッキ、銅メッキ液が好適に用いられる。
【0063】
本発明のレジスト組成物は、厚膜においても高アスペクト比の構造体を形成できることが一つの特徴である。従って、本発明のレジスト組成物によって得られる膜厚は、通常2〜150μm、好ましくは20〜120μm、より好ましくは40〜90μmである。
【0064】
本発明のレジスト組成物は、アルカリ可溶性エポキシ化合物及び光酸発生剤を含有し、環状エーテル化合物を含有しない従来のレジスト組成物と比較すると、ドライフィルム化したものを切断又はスリッティングした際に、チッピングが発生しないという点で非常に有用である。また、環状エーテル化合物、特にエポキシモノマーを使用することにより、現像後の密着性が向上する傾向にある。さらには、湿熱耐性に優れるため、デバイスの信頼性向上にも寄与することが見込まれる。また、本発明のレジスト組成物の重要な特性である高アスペクト比の構造体を従来の感光性レジストと遜色なくパターニング可能であり、さらに現像残渣も少ない。よって本発明のレジスト組成物は、バンプ形成、メタルポスト形成、配線形成等の精密加工だけでなく、MEMS中空パッケージ材、半導体中空パッケージ材、接着剤、各種基板のエッチング時の保護膜や電解メッキ時のレジストモールド、半導体製造用レジストとしても使用することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。尚、以下実施例において「部」は質量部を表す。
【0066】
合成例
一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)としてo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名 EOCN−4400H、日本化薬株式会社製、エポキシ当量189g/eq.)1890部(10当量)、一分子中に1個以上のカルボキシル基及び1個以上の水酸基を有する化合物(b)としてジメチロールプロピオン酸(DMPA)301.8部(2.25モル)、溶剤としてシクロペンタノン939.4部を仕込み、80℃に加熱、攪拌し、混合物を溶解した。次いで得られた液を60℃まで冷却し、触媒としてトリフェニルホスフィン8.0部(0.03モル)を仕込み、100℃まで昇温して約10時間反応させ、JIS K−5601−2−1に準じて測定した酸価が0.5mgKOH/g以下になった時点で50℃まで冷却した。次いで、多塩基酸無水物(c)として無水テトラヒドロフタル酸(新日本理化株式会社製、リカシッドTH)559.6部(3.68モル)、溶剤としてシクロペンタノン559.6部を仕込み、95℃まで昇温して10時間反応させることにより前記式(3)で示されるアルカリ可溶性エポキシ化合物(A)を70質量%含有するシクロペンタノン溶液を得た。得られたアルカリ可溶性エポキシ化合物の固形分酸価は75mgKOH/g、式(3)におけるm及びnの値はそれぞれ2.6及び7.8であった。
【0067】
尚、前記m及びnの値は次のようにして算出した。
m:反応に用いたエポキシ化合物(a)の分子量(2000)/繰り返し単位の分子量(176)×反応に用いたDMPAのモル数(2.25)/反応に用いたエポキシ化合物(a)の当量数(10)
n:反応に用いたエポキシ化合物(a)の分子量(2000)/繰り返し単位の分子量(176)−m(2.6)−1
上記の算出式において、エポキシ化合物(a)の当量数は「反応に用いたエポキシ化合物(a)の質量部/エポキシ化合物(a)のエポキシ当量」であり、エポキシ化合物(a)の分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定結果から算出したポリスチレン換算の数平均分子量であり、エポキシ当量はJIS K−7236に準じて測定した値である。
【0068】
実施例1〜実施例15及び比較例1
(レジスト組成物の調整)
表1〜表3に示す配合組成(単位は「部」である)に従って、各成分を攪拌羽根が取り付けられたセパラブルフラスコで混合した後、10μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することにより本発明及び比較用のレジスト組成物を得た。尚、比較例1は特許文献3に記載の例に準拠して調整したものである。
【0069】
(ドライフィルムレジスト)
上記実施例1〜18で得られた本発明の各レジスト組成物及び比較例1〜5で得られた比較用のレジスト組成物を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム(ベースフィルム、東レ社製)上に均一に塗布し、温風対流乾燥機により65℃で5分間および95℃で20分間乾燥した後、露出面上に膜厚30μmのポリエチレン(PE)フィルム(カバーフィルム、タマポリ社製)をラミネートして、レジスト層の膜厚が50μmのドライフィルムレジストを調製した。
【0070】
(ドライフィルムレジストのパターニング)
前記で得られたドライフィルムレジストのカバーフィルムを剥離し、ロール温度50℃、エアー圧力0.2MPa、速度0.5m/minでシリコンウエハ上にラミネートし、ベースフィルムでカバーされた50μmのレジスト組成物層を得た。このベースフィルムでカバーされたレジスト組成物層に、i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いて100〜2000mJ/cm2でパターン露光(ソフトコンタクト、i線)を行った。その後、ベースフィルムをはがし、ホットプレートにより65℃で2分間さらに95℃で5分間露光後ベーク(以下「PEB」と記載する)を行い、2.38質量%TMAH溶液を用いて、浸漬法により23℃で5分間現像処理を行うことで、基板上に硬化した樹脂パターンを得た。
【0071】
(ドライフィルムレジストの切断性評価)
上記のように調整した巾270mmのドライフィルムレジストをゴム製マット上にのせ、市販の作業用カッターナイフで巾方向に切断した。その時の切断面及び切断後のカッターナイフを目視で観察し、以下の基準で切断性を評価した。結果を表1〜表3に示した。
○:目視でチッピングが無く、組成物がカッターに付着しなかった
△:目視でチッピングが無いが、組成物がカッターに付着した
×:目視でチッピングがあり、組成物がカッターに付着した
【0072】
(レジスト組成物の感度評価)
前記パターン露光において、マスク転写精度が最良となる露光量を最適露光量とし、それぞれのレジスト組成物の感度の評価を行った。最適露光量の値が小さいほど感度が高いことを表す。結果を表1〜表3に示した。
【0073】
(レジスト組成物の解像性評価)
前記パターン露光において、15、20、25及び35μmのラインアンドスペースのフォトマスクを使用し、残渣がなく解像されたレジストパターンの中で、基板へ密着している最も細かいパターン幅(最小解像線幅)を測定した。結果を表1〜表3に示した。
【0074】
(レジスト組成物の湿熱耐性評価)
実施例1〜実施例18及び比較例1〜5で得られた各レジスト組成物を用いて各レジスト組成物の最適露光量で前記同様のパターニングを行い、更に温風対流式オーブンを用いて150℃、30分間のハードベークを施すことで、シリコンウエハ上に膜厚50μm、一辺が100μmの正方形のパターンを作製した。得られたシリコンウエハ上の正方形パターンに、シェアツールを用いて側面部から力を加え、基板からパターンが剥離した時点でのシェア強度を試験前の密着力とした。結果を表1〜表3に示した。
また、正方形パターンの形成されたシリコンウエハを恒温恒湿装置(エスペック社製)中に入れ、85℃、85%RH、100時間恒温恒湿状態を保持した後、試験片を取り出して前記と同様の方法で試験後の密着力(シェア強度)を測定し、試験前の密着力との比較により下記の基準で湿熱耐性を評価した。結果を表1〜表3に示した。
評価基準
○:密着力減少率が30%未満
△:密着力減少率が30%以上90%未満
×:密着力減少率が90%以上
※密着力減少率=(試験前の密着力−試験後の密着力)/試験前の密着力
尚、表中の比較例2および4における「測定不能」とは、4000mJ/cm2までの露光量においては、現像時にパターンの剥離が発生してしまい、現像性及び密着性を評価できなかった場合を示している。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
表1〜表3における(A−1)〜(C−12)はそれぞれ下記を示す。
(A−1):合成例で得られたアルカリ可溶性エポキシ化合物を含有するシクロペンタノン溶液。表中の部数はアルカリ可溶性エポキシ化合物の固形分の部数を示す。
(B−1):光酸発生剤(4−チオフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートと芳香族スルフォニウムヘキサフルオロアンチモネートの混合物の50%炭酸プロピレン溶液、商品名 UVI−6976、ダウケミカル製)
(B−2):光酸発生剤(トリス[4−(4−アセチルフェニルスルファニル)フェニル]スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニル]メタニド、商品名 GSID26−1、チバスペシャルティケミカルズ製)
(B−3):光酸発生剤(ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート、商品名 CPI−201S、サンアプロ製)
(C−1):環状エーテル化合物(1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、商品名 EX−212L、粘度 15mPa・s、ナガセケムテックス製)
(C−2):環状エーテル化合物(1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、商品名 EX−214L、粘度 15mPa・s、ナガセケムテックス製)
(C−3):環状エーテル化合物(ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、商品名 EX−506L、粘度 60mPa・s、ナガセケムテックス製)
(C−4):環状エーテル化合物(シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、商品名 EX−216L、粘度 65mPa・s、ナガセケムテックス製)
(C−5):環状エーテル化合物(ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、商品名 EX−850L、粘度 90mPa・s、ナガセケムテックス製)
【0079】
(C−6):環状エーテル化合物(トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、商品名 EX−321L、粘度 800mPa・s、ナガセケムテックス製)
(C−7):環状エーテル化合物(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名 602S、粘度 800mPa・s、日本化薬製)
(C−8):環状エーテル化合物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名 YDF−8170C、粘度 1500mPa・s、東都化成製)
(C−9):環状エーテル化合物(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名 YD−8125、粘度 4500mPa・s、東都化成製)
(C−10):環状エーテル化合物(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名 304S、粘度 5000mPa・s、日本化薬製)
(C−11):環状エーテル化合物(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名 310P、粘度 15000mPa・s、日本化薬製)
(C−12):環状エーテル化合物(ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル、商品名 EP−4088L、粘度 187mPa・s、全塩素量900ppm未満、ADEKA製)
溶剤 メチルエチルケトン(MEK)
フッ素系レベリング剤(商品名 メガファックF−470、DIC製)
シランカップリング剤(商品名 S−510、チッソ製)
尚、上記における環状エーテル化合物(C)の粘度は、E型粘度計(東機産業社製、TV−20)を用いて測定した25℃における粘度である。
【0080】
表1及び2の結果から、環状エーテル化合物(C)を16質量%以上含有する本発明のレジスト組成物(実施例1〜実施例18)は、環状エーテル化合物(C)の含有量が16質量%未満の比較例1、3及び5と比べてドライフィルムとした際のチッピング発生防止効果に優れていた。また、環状エーテル化合物(C)の含有量が47質量%を超える比較例2及び4は、露光量を4000mJ/cm2までの増やしたにも係らず基材に密着した構造体は得られなかったが、環状エーテル化合物(C)の含有量が47質量%以下の本発明のレジスト組成物(実施例1〜実施例18)は、比較例よりも少ない照射量で高感度及び高解像度の構造体が得られた。これらの結果から、本発明のレジスト組成物が、高感度、優れた解像性、基材への密着性および湿熱耐性を保持しながら、切断性に優れていることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明にかかるレジスト組成物は、アルカリ水溶液による現像により、高アスペクト比のパターン形成が可能である。さらに、高湿熱耐性、高密着性でかつ、ドライフィルム化した際にはチッピングが発生しないという優れた特性を有するため、バンプ形成、メタルポスト形成、配線形成等の精密加工材、MEMS中空パッケージ材、半導体中空パッケージ材、接着剤等のパッケージ材等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)、光酸発生剤(B)及び環状エーテル化合物(C)を含有してなるレジスト組成物であって、環状エーテル化合物(C)の25℃における粘度が10〜20000mPa・sであり、かつ、環状エーテル化合物(C)の含有量が、アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)、光酸発生剤(B)及び環状エーテル化合物(C)の合計に対して、16〜47質量%であるレジスト組成物。
【請求項2】
アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)が、1個以上のカルボキシル基を有するエポキシ化合物である請求項1に記載のレジスト組成物。
【請求項3】
アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)が、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と一分子中に1個以上のカルボキシル基及び1個以上の水酸基を有する化合物(b)との反応物(I)に、多塩基酸無水物(c)を反応させたものである請求項2に記載のレジスト組成物。
【請求項4】
アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)が、下記式(2)で表されるエポキシ化合物である請求項3に記載のレジスト組成物。
【化1】

(式(2)中、m及びnは平均値であり、0を超える実数を示し、m+nは0を超え30以下の実数である。又、D1及びD2はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよく、次に示される基からなる群から選ばれるいずれかの基を示す。)
【化2】

【請求項5】
アルカリ可溶性エポキシ化合物(A)が、下記式(3)で表されるエポキシ化合物である請求項4に記載のレジスト組成物。
【化3】

(式(3)中、m及びnは請求項4に記載の式(2)におけるのと同じ意味を示す。)
【請求項6】
環状エーテル化合物(C)が、2官能又は多官能エポキシモノマーである請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のレジスト組成物。
【請求項7】
環状エーテル化合物(C)が、グリシジルエーテル系エポキシ化合物である請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のレジスト組成物。
【請求項8】
環状エーテル化合物(C)の全塩素量が、3000ppm以下である請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のレジスト組成物。
【請求項9】
環状エーテル化合物(C)が、ジシクロペンタジエン骨格を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のレジスト組成物。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のレジスト組成物を基材で挟み込んだドライフィルムレジスト。

【公開番号】特開2010−271401(P2010−271401A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121092(P2009−121092)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】