説明

レセプタクルとコンタクトプローブの嵌合方法及びこの方法に使用されるコンタクトプローブ

【課題】従来と同等の呼び込み量を、より小型化したコンタクトプローブで可能にするとともに、コンタクトプローブとレセプタクルの接触特性の安定化を図ることにある。
【解決手段】コンタクトプローブを、レセプタクルとの軸心のずれ状態で押し下げたとき、中心導体の外周に進退自在に設けた筒状インシュレータの先端の逆円錐台状の呼び込み突部を、前記レセプタクルのすり鉢状凹部の斜面壁部に接触しつつ摺動して、前記呼び込み突部が前記すり鉢状凹部の底部に達するまで呼び込む工程と、呼び込みの終了後、前記レセプタクルの外周の筒状シェルを押し下げ、このシェルの先端に設けられ外周縁側に広がったガイド部を前記レセプタクルのシェルの外周縁部に接触しつつ摺動してこのレセプタクルのシェルの全外周面に前記ガイド部を接触して両者の軸心を一致せしめる工程と からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ付き同軸コネクタなどのレセプタクルに、コンタクトプローブを嵌合し、自動検査機械を用いて検査する場合におけるレセプタクルとコンタクトプローブの嵌合方法及びこの方法に使用されるコンタクトプローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、コンタクトプローブ72を用いてレセプタクルとしてのスイッチ付き同軸コネクタ80を自動検査するときにコンタクトプローブ72に対するスイッチ付き同軸コネクタ80の軸心合わせをする従来の方法が知られている(特許文献1)。
前記スイッチ付き同軸コネクタ80は、直径が2mm程度と極めて小さなもので、絶縁材からなる第1ハウジング81と、ピン差し込み孔82と、導電性金属からなるシェル89と、固定端子83と、可動端子85とで構成され、プリント基板78のパターン電極79に搭載されている。
【0003】
以上のようなスイッチ付き同軸コネクタ80のピン差し込み孔82に、コンタクトプローブ72の中心導体74を嵌合して中心導体74の先端面75で可動端子85の接触部87を押し下げ、固定端子83から可動端子85への信号経路を可動端子85から中心導体74への信号経路に切り替えて検査される。
このような検査は、コンタクトプローブ72を機械に据え付けてスイッチ付き同軸コネクタ80に自動嵌合して行われる。この嵌合時に、スイッチ付き同軸コネクタ80の軸心がコンタクトプローブ72の軸心とずれていた場合、コンタクトプローブ72の軸心にスイッチ付き同軸コネクタ80の軸心に一致するように呼び込むことが行われる。この呼び込みのために、従来のコンタクトプローブ72では、外部導体73の先端に、内方へのテーパー状のガイド面76が形成されている。
【0004】
このような構成において、コンタクトプローブ72を押し下げて、外部導体73のガイド面76にスイッチ付き同軸コネクタ80のシェル89の外周縁部が接触すると、スイッチ付き同軸コネクタ80は、コンタクトプローブ72の軸心に一致する方向に摺動して呼び込まれる。この呼び込みで完全に一致しなくても、さらに、中心導体74を押し下げると、先端面75が第1ハウジング81のすり鉢状凹部90に案内されて互いの軸心が近づく。中心導体74の直径D1<ピン差し込み孔82の直径D2に設定されているので、中心導体74は、ピン差し込み孔82に嵌合し、可動端子85の接触部87を押し下げ、可動接触部88が可動端子85の固定接触部84から離れ、スイッチオフとなる。すると、固定端子83から可動端子85への信号経路が可動端子85から中心導体74への信号経路に切り替わって検査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−123910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコンタクトプローブ11には、次のような問題があった。
(1)外部導体73のガイド面76にてスイッチ付き同軸コネクタ80のシェル89に接触しつつ押し込んで呼び込む構造となっているため、例えば、スイッチ付き同軸コネクタ80の直径が2.0mmである場合において、コンタクトプローブ72とスイッチ付き同軸コネクタ80の軸心のずれが0.6mmあったときの外部導体73の直径は3.2mm以上を必要とし、外部導体73の形状が大きくなるという問題があった。
(2)コンタクトプローブ72の外部導体73が大きくなると、スイッチ付き同軸コネクタ80との嵌合部分の面積がスイッチ付き同軸コネクタ80の数倍となり、スイッチ付き同軸コネクタ80を小型化してもコンタクトプローブ72による占有領域が増えてしまっていた。
(3)呼び込みを行うためのスイッチ付き同軸コネクタ80のシェル89とコンタクトプローブ72の外部導体73がともに金属で構成されており、この金属同士の接触だけで摺動しつつ移動させるので、摩耗したり、金属粉が発生したりする問題があった。
【0007】
本発明の目的は、レセプタクルに嵌合するコンタクトプローブの先端部に改良を加え、従来と同等の呼び込み量を、より小型化したコンタクトプローブで可能にするとともに、コンタクトプローブとレセプタクルの接触特性の安定化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による請求項1記載のレセプタクルとコンタクトプローブの嵌合方法は、
レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置合わせをして前記レセプタクルのピン差し込み孔に前記コンタクトプローブの中心導体の先端接触部を嵌合するようにした方法において、
前記レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置ずれ状態でコンタクトプローブを押し下げたとき、前記中心導体の外周に進退自在に設けた筒状インシュレータの先端の逆円錐台状の呼び込み突部を、前記レセプタクルのすり鉢状凹部の斜面壁部に接触しつつ摺動して、前記レセプタクルとコンタクトプローブの少なくともいずれか一方を前記コンタクトプローブの押し下げ方向に対して略直交する方向に、前記呼び込み突部が前記すり鉢状凹部の底部に達するまで呼び込む工程と、
呼び込みの終了後、前記レセプタクルの外周に進退自在に設けた筒状シェルを押し下げ、このシェルの先端に設けられ外周縁側に広がったガイド部を前記レセプタクルのシェルの外周縁部に接触しつつ摺動してこのレセプタクルのシェルの全外周面に前記ガイド部を接触して両者の軸心を一致せしめる工程と、
軸心が一致した状態で前記中心導体を押し出してこの中心導体の先端接触部が前記レセプタクルの中心のピン差し込み孔を通って下降し、可動端子を押し下げ、固定端子との接触を開放し、可動端子から中心導体へ信号経路を切り替える工程と
からなることを特徴とする。
【0009】
本発明による請求項2記載のコンタクトプローブは、
レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置合わせをして前記レセプタクルのピン差し込み孔に前記コンタクトプローブの中心導体の先端接触部を嵌合するようにしたコンタクトプローブにおいて、
前記中心導体を中心の中心導体進退孔内で進退自在に被覆した筒状のインシュレータと、このインシュレータを進退自在に被覆した筒状のシェルとを具備し、
前記インシュレータの先端に、前記レセプタクルの上面に形成したすり鉢状凹部の斜面壁部を押し込みながら摺動して前記コンタクトプローブとレセプタクルの軸心を一致させるために両者の相対的な位置を移動させるための逆円錐形の呼び込み突部を形成し、
前記シェルの先端部に、前記レセプタクルの外周に接触案内してさらに両者の軸心を一致させるための外周縁側に広がったガイド部を形成した
ことを特徴とする。
【0010】
本発明による請求項3記載のコンタクトプローブは、請求項2記載のコンタクトプローブにおいて、
レセプタクルは、円形のハウジングとこのハウジングの外周のシェルとを有し、前記ハウジングは、直径d6で、上面にすり鉢状凹部を有し、中央に直径d2のピン差し込み孔が穿設され、前記すり鉢状凹部は、斜面壁部とピン差し込み孔よりやや大きな直径d4の中央の平坦底部とからなり、コンタクトプローブの呼び込み突部は、内径が前記d2より大きく前記d4より小さな中心導体進退孔と略同一の直径d3で、外径が前記d6より小さな外径d5をもって形成し、前記コンタクトプローブのシェルの外径d8は、前記レセプタクルのハウジングのシェルの直径をd7としたとき、d8≧d4−d3+d7に設定したことを特徴とする。
【0011】
本発明による請求項4記載のコンタクトプローブは、請求項3記載のコンタクトプローブにおいて、
中心導体は、下端部にピン差し込み孔の直径d3より小さな直径d1の先端接触部を有し、この先端接触部の上部にd2より大きくd3以下の段部を形成したことを特徴とする。
【0012】
本発明による請求項5記載のコンタクトプローブは、請求項3記載のコンタクトプローブにおいて、
逆円錐形の呼び込み突部の角度は、すり鉢状凹部の斜面壁部より尖鋭に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、
レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置合わせをして前記レセプタクルのピン差し込み孔に前記コンタクトプローブの中心導体の先端接触部を嵌合するようにした方法において、
前記レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置ずれ状態でコンタクトプローブを押し下げたとき、前記中心導体の外周に進退自在に設けた筒状インシュレータの先端の逆円錐台状の呼び込み突部を、前記レセプタクルのすり鉢状凹部の斜面壁部に接触しつつ摺動して、前記レセプタクルとコンタクトプローブの少なくともいずれか一方を前記コンタクトプローブの押し下げ方向に対して略直交する方向に、前記呼び込み突部が前記すり鉢状凹部の底部に達するまで呼び込む工程と、
呼び込みの終了後、前記レセプタクルの外周に進退自在に設けた筒状シェルを押し下げ、このシェルの先端に設けられ外周縁側に広がったガイド部を前記レセプタクルのシェルの外周縁部に接触しつつ摺動してこのレセプタクルのシェルの全外周面に前記ガイド部を接触して両者の軸心を一致せしめる工程と、
軸心が一致した状態で前記中心導体を押し出してこの中心導体の先端接触部が前記レセプタクルの中心のピン差し込み孔を通って下降し、可動端子を押し下げ、固定端子との接触を開放し、可動端子から中心導体へ信号経路を切り替える工程と
からなるので、次のような効果を有する。
【0014】
(1)従来は、外部導体73のガイド面76だけでスイッチ付き同軸コネクタ80のシェル89に接触しつつ押し込んで呼び込む構造となっていたのを、筒状インシュレータの先端の逆円錐台状の呼び込み突部で第1段の呼び込みを行い、次いで、シェルの先端に設けられ外周縁側に広がったガイド部で第2段のガイドをするため、第1段の呼び込み分だけシェルの外径を小さくすることができる。ちなみに、従来のシェルの外径に比較して本発明のシェルは、面積比で40〜50%に小型化ができる。
(2)レセプタクルを小型化すれば、それに応じてコンタクトプローブによる占有領域を減らすことができる。
(3)レセプタクルのシェルとコンタクトプローブの筒状シェルがともに金属で構成されていても、この金属同士の接触による摺動が極めて少ないので、摩耗がほとんどなく、金属粉が発生することもない。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、
レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置合わせをして前記レセプタクルのピン差し込み孔に前記コンタクトプローブの中心導体の先端接触部を嵌合するようにしたコンタクトプローブにおいて、
前記中心導体を中心の中心導体進退孔内で進退自在に被覆した筒状のインシュレータと、このインシュレータを進退自在に被覆した筒状のシェルとを具備し、
前記インシュレータの先端に、前記レセプタクルの上面に形成したすり鉢状凹部の斜面壁部を押し込みながら摺動して前記コンタクトプローブとレセプタクルの軸心を一致させるために両者の相対的な位置を移動させるための逆円錐形の呼び込み突部を形成し、
前記シェルの先端部に、前記レセプタクルの外周に接触案内してさらに両者の軸心を一致させるための外周縁側に広がったガイド部を形成したので、コンタクトプローブの外径を大幅に小さくできる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、
レセプタクルは、円形のハウジングとこのハウジングの外周のシェルとを有し、前記ハウジングは、直径d6で、上面にすり鉢状凹部を有し、中央に直径d2のピン差し込み孔が穿設され、前記すり鉢状凹部は、斜面壁部とピン差し込み孔よりやや大きな直径d4の中央の平坦底部とからなり、コンタクトプローブの呼び込み突部は、内径が前記d2より大きく前記d4より小さな中心導体進退孔と略同一の直径d3で、外径が前記d6より小さな外径d5をもって形成し、前記コンタクトプローブのシェルの外径d8は、前記レセプタクルのハウジングのシェルの直径をd7としたとき、d8≧d4−d3+d7に設定したので、コンタクトプローブの外径をd6−d4だけ小型化できる。また、すり鉢状凹部は、斜面壁部とピン差し込み孔よりやや大きな直径の中央の平坦底部とからなるので、斜面壁部で第1段の呼び込みを行い、平坦底部でガイドすることができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、
中心導体は、下端部にピン差し込み孔の直径d3より小さな直径d1の先端接触部を有し、この先端接触部の上部にd2より大きくd3以下の段部を形成したので、中心導体の先端接触部が必要以上に押し込まれるのを防止できる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、
逆円錐形の呼び込み突部の角度は、すり鉢状凹部の斜面壁部より尖鋭に形成したので、呼び込み作用を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、
レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置合わせをして前記レセプタクルのピン差し込み孔に前記コンタクトプローブの中心導体の先端接触部を嵌合するようにした方法において、
前記レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置ずれ状態でコンタクトプローブを押し下げたとき、前記中心導体の外周に進退自在に設けた筒状インシュレータの先端の逆円錐台状の呼び込み突部を、前記レセプタクルのすり鉢状凹部の斜面壁部に接触しつつ摺動して、前記レセプタクルとコンタクトプローブの少なくともいずれか一方を前記コンタクトプローブの押し下げ方向に対して略直交する方向に、前記呼び込み突部が前記すり鉢状凹部の底部に達するまで呼び込む工程と、
呼び込みの終了後、前記レセプタクルの外周に進退自在に設けた筒状シェルを押し下げ、このシェルの先端に設けられ外周縁側に広がったガイド部を前記レセプタクルのシェルの外周縁部に接触しつつ摺動してこのレセプタクルのシェルの全外周面に前記ガイド部を接触して両者の軸心を一致せしめる工程と、
軸心が一致した状態で前記中心導体を押し出してこの中心導体の先端接触部が前記レセプタクルの中心のピン差し込み孔を通って下降し、可動端子を押し下げ、固定端子との接触を開放し、可動端子から中心導体へ信号経路を切り替える工程と
からなる。
【0020】
レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置合わせをして前記レセプタクルのピン差し込み孔に前記コンタクトプローブの中心導体の先端接触部を嵌合するようにしたコンタクトプローブにおいて、
本発明によるコンタクトプローブは、
前記中心導体を中心の中心導体進退孔内で進退自在に被覆した筒状のインシュレータと、このインシュレータを進退自在に被覆した筒状のシェルとを具備し、
前記インシュレータの先端に、前記レセプタクルの上面に形成したすり鉢状凹部の斜面壁部を押し込みながら摺動して前記コンタクトプローブとレセプタクルの軸心を一致させるために両者の相対的な位置を移動させるための逆円錐形の呼び込み突部を形成し、
前記シェルの先端部に、前記レセプタクルの外周に接触案内してさらに両者の軸心を一致させるための外周縁側に広がったガイド部を形成した
ことを特徴とするコンタクトプローブ。
【0021】
レセプタクルは、円形のハウジングとこのハウジングの外周のシェルとを有し、前記ハウジングは、直径d6で、上面にすり鉢状凹部を有し、中央に直径d2のピン差し込み孔が穿設され、前記すり鉢状凹部は、斜面壁部とピン差し込み孔よりやや大きな直径d4の中央の平坦底部とからなり、コンタクトプローブの呼び込み突部は、内径が前記d2より大きく前記d4より小さな中心導体進退孔と略同一の直径d3で、外径が前記d6より小さな外径d5をもって形成し、前記コンタクトプローブのシェルの外径d8は、前記レセプタクルのハウジングのシェルの直径をd7としたとき、d8≧d4−d3+d7に設定する。
【0022】
中心導体は、下端部にピン差し込み孔の直径d3より小さな直径d1の先端接触部を有し、この先端接触部の上部にd2より大きくd3以下の段部を形成する。
【0023】
逆円錐形の呼び込み突部の角度は、すり鉢状凹部の斜面壁部より尖鋭に形成する。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1を図1ないし図4に基づき説明する。
図2は、本発明によるコンタクトプローブ11の実施例1の断面図である。この図2において、前記コンタクトプローブ11は、上部が検査機のケーブルに接続された検査機連結部13と、この検査機連結部13の下側に設けられたコネクタ接続部14とからなる。
前記検査機連結部13は、外部導体15の内部に絶縁筒部16を介して中心導体17が設けられている。
前記コネクタ接続部14は、前記外部導体15の鍔の下面に、外部導体ハウジング23が設けられ、この外部導体ハウジング23の内側にフローティング用コイルばね24を介在して内部筒体35が設けられている。前記絶縁筒部16の下側に上部インシュレータ18とワッシャ19が設けられ、前記上部インシュレータ18と前記内部筒体35の間にシェル26が嵌合され、このシェル26と前記ワッシャ19との間にシェル用コイルばね21が介在されている。前記シェル26の内部には、筒体27が嵌合し、この筒体27と前記上部インシュレータ18との間にインシュレータ可動用ばね25が介在されている。前記筒体27の内部の進退孔28に下部インシュレータ29が設けられ、さらに、この下部インシュレータ29の内部に中心導体22が進退自在に設けられ、この中心導体22と前記中心導体17との間に中心導体用コイルばね20が介在されている。
【0025】
本発明の特徴的な構成は、図2(b)に示した拡大図に示されている。この特徴的な部分は、下部インシュレータ29の中心の中心導体進退孔34に中心導体22が進退自在に嵌合し、この下部インシュレータ29は、先端が尖った逆円錐台状の傾斜部32を形成し、この傾斜部32の先端の中心導体進退孔34の外周縁部が呼び込み突部33を構成している。この下部インシュレータ29の外周に嵌合した前記シェル26の下面は、内方にすり鉢状に傾斜した凹部からなるガイド部31を形成している。前記傾斜部32は、呼び込み突部33を構成するためのものであり、その傾斜角度は、後述するスイッチ付き同軸コネクタ9のすり鉢状凹部69の傾斜角度より大きな角度を有していればよく、直線、曲線などどのような形状でもよい。
【0026】
図1において、11は、前述の本発明によるコンタクトプローブを示しており、9は、レセプタクルとしての被測定機器のスイッチ付き同軸コネクタ9である。なお、72は、比較のための図5に示した従来のコンタクトプローブである。
前記レセプタクルとしてのスイッチ付き同軸コネクタ9の詳細は、図4に示されている。この図4において、このスイッチ付き同軸コネクタ9は、上半分が扁平な円筒形で、上面をすり鉢状となし、下半分が扁平な4角形をなし、全体で可能な限り背が低くなるように構成したプラスチック材料などの絶縁材料からなるハウジング40と、導電性金属板の絞り加工等によるシェル41と、さらに、導電性金属板のプレス加工等による少なくとも2個の端子、具体的には、固定端子42と可動端子43とから構成されている。
【0027】
前記ハウジング40は、上半分が背の低い円筒部44で、上面がすり鉢状凹部69をなし、下半分が左右にやや突出した端子支持突部46a,46bと前後にやや突出した回り止め突部47a,47bとで背の低い4角形をなしている。前記すり鉢状凹部69は、中央に向かって傾斜した斜面壁部69aと中央の平坦底部69bからなり、この平坦底部69bの中央部を貫通してピン差し込み孔45が穿設されている。前述の通り、前記コンタクトプローブ11の傾斜部32の傾斜角度は、前記斜面壁部69aの傾斜角度よりも大きく形成して前記呼び込み突部33が斜面壁部69aに点又は線接触しつつ摺動するように構成している。
【0028】
このピン差し込み孔45の下部に連通してピン差し込み孔45より十分大きな可動空隙部67が形成され、この可動空隙部67から側部に貫通して接触片挿入溝50が形成されている。
前記一方の端子支持突部46aには、固定端子42を圧入する垂直な端子圧入溝48が前記稼働空隙部67まで連通して形成されている。また、前記他方の端子支持突部46bには、可動端子43を圧入する垂直な端子圧入溝49が前記可動空隙部67に連通して形成され、この端子圧入溝49の図4の右側には、前記接触片挿入溝50が連通し、図4の左側の途中まで突部挿入溝49aが形成されている。
【0029】
前記シェル41は、上半分が前記ハウジング40の円筒部44に上から被さるようにハウジング嵌合孔51が穿設された円筒形をなし、外側全周囲に係止溝55が形成されている。このシェル41の下半部には、両側部に外向きにL字形に折曲して側壁部71とグランド端子部56が形成され、これら側壁部71には、ハウジング40の係止部52に係止する回り止め溝53が形成されている。前記グランド端子部56は、前記ハウジング40に組み立てられた後は、図4の鎖線で示すようにハウジング40の下面切欠き部70側に折曲されて固定とグランド端子として作用する。
【0030】
前記固定端子42は、図4に示すように、前記端子圧入溝48に圧入される垂直な圧入部59を有し、この圧入部59からクランク状に立ち上がった先端の下面が可動端子43と接離する接触片57を構成し、また、圧入部59の基端下面部が接続端子部58を構成している。59aは、図示しない突部挿入溝に圧入固定される圧入突部である。
前記可動端子43は、図4に示すように、前記端子圧入溝49に圧入される垂直な圧入部60を有し、この圧入部60の途中から立ち上げて湾曲してばね部61を構成し、このばね部61の先端部の水平部分を押圧部68とし、この押圧部68の先端の一部を接触片62とし、また、圧入部60の基端部が接続端子部63を構成している。60aは、突部挿入溝49aに圧入固定される圧入突部である。
【0031】
以上のように構成されたスイッチ付き同軸コネクタ9の各部品の組み立てを説明する。
図4に示すように、ハウジング40の端子圧入溝48に一方の固定端子42の圧入部59を圧入すると、固定端子42の接触片57が可動空隙部67内に進入し、かつ、接続端子部58がハウジング40の下面に臨ませられ、圧入突部59aが突部挿入溝に圧入されて固定的に取り付けられる。
ハウジング40の端子圧入溝49に他方の可動端子43の圧入部60を圧入すると、図3に示すように、可動端子43のばね部61と押圧部68と接触片62が接触片挿入溝50を通り、可動空隙部67まで進入し、かつ、押圧部68がピン差し込み孔45の下に臨ませられるとともに、接触片62が固定端子42の接触片57に下面から接触し、さらに、接続端子部63がハウジング40の下面に臨ませられ、圧入突部60aが突部挿入溝49aに圧入されて固定的に取り付けられる。
【0032】
ついでシェル41のハウジング嵌合孔51にハウジング40の円筒部44を上から嵌合し、シェル41の回り止め溝53の側壁にハウジング40の回り止め突部47を嵌合する。嵌合後、両側の側壁部71、71から突出したグランド端子部56、56を内側に折り込むと、グランド端子部56、56が端子支持突部46a,46bの下面にそれぞれ折込み係止して固着される。
【0033】
組み立てられたスイッチ付き同軸コネクタ9は、図3に示すように、接続端子部58、接続端子部63、グランド端子部56をプリント基板のプリント配線パターン部分に載せて半田等で電気的に接続すると共に、機械的に固着する。
【0034】
ここで、コンタクトプローブ11とスイッチ付き同軸コネクタ9が嵌合する各部の大きさ(内径と外径)は、次のように設定される。
中心導体22の先端の先端接触部30の直径d1<ピン差し込み孔45の直径d2<中心導体22の先端接触部30のやや上部の段部30aの外径(中心導体進退孔34の内径)d3<平坦底部69bの外径d4<下部インシュレータ29の外径d5<ハウジング40の外径d6<シェル41の外径d7<シェル26の外径d8の関係をもって形成する。
【0035】
つぎに、コンタクトプローブ11とスイッチ付き同軸コネクタ9を、呼び込みとガイドにより位置(軸心)を修正して嵌合する方法を図3に基づき説明する。
(1)図3(a):コンタクトプローブ11の軸心L1とスイッチ付き同軸コネクタ9の軸心L2とに距離x0すなわち{(d4−d3)/2≦x0≦(d6−d3)/2}だけ位置ずれが生じていたものとする。当初の位置ずれの最大値は、x0=(d6−d3)/2で表わされる。この状態でコンタクトプローブ11を押し下げると、下部インシュレータ29の呼び込み突部33が斜面壁部69aに接触し、呼び込み突部33でスイッチ付き同軸コネクタ9を呼び込む(図中左側に移動させる)。
(2)図3(b):呼び込み突部33が平坦底部69bまで達すると、スイッチ付き同軸コネクタ9の呼び込みを終了する。このとき、軸心L1とL2の位置ずれ距離x1=(d4−d3)/2となる。
(3)図3(c):スイッチ付き同軸コネクタ9の呼び込みの終了後、コンタクトプローブ11のシェル26を押し下げると、L2から最も近いガイド部31がシェル41の外周縁部に接触する。なお、シェル41の上部外周縁には、ガイド部31と略同一の傾斜角の傾斜面を形成しておくことにより両者の摺動が円滑になる。
(4)図3(d):ガイド部31がシェル41に接触したままさらにシェル26を押し込むと、呼び込み突部33が平坦底部69bの上をガイドされつつスイッチ付き同軸コネクタ9は図中左側に移動し、シェル41の全外周面にガイド部31が接触したところでスイッチ付き同軸コネクタ9の移動が停止する。このとき、軸心L1とL2が一致する。
(5)図3(e):軸心L1とL2が一致した状態で中心導体22を押し出すと、先端接触部30がピン差し込み孔45を通って下降し、可動端子43の押圧部68を押し下げ、固定端子42の接触片57と可動端子43の接触片62が開放し、固定端子42から可動端子43への信号経路が可動端子43から中心導体22への信号経路に切り替わって検査される。このとき、中心導体22の段部30aが平坦底部69bに当接して先端接触部30が必要以上に下降するのを防止している。
【0036】
図1は、本発明によるコンタクトプローブ11と従来のコンタクトプローブ72の大きさを比較したもので、本発明によるシェル26の外径d8は、d8≧{(d4−d3)/2+d7/2}×2、すなわち、呼び込み後の位置ずれ距離x1=(d4−d3)/2の分だけシェル41の外径d7より大きければよいので、d8≧d4−d3+d7であればよい。
これに対し、従来のコンタクトプローブ72の外部導体73の外径d9は、呼び込み作用を有しないので、d9≧{(d6−d3)/2+d7/2}×2、すなわち、当初の位置ずれの最大値x=(d6−d3)/2がそのまま効いてくるので、d9≧d6−d3+d7でなければならない。
このことは、本発明によるコンタクトプローブ11と従来のコンタクトプローブ72の大きさは、d4とd6の違いとしてあらわされ、小型化される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明によるコンタクトプローブ11と従来のコンタクトプローブ72がレセプタクルとしてのスイッチ付き同軸コネクタ9と嵌合する作用を説明する断面図である。
【図2】(a)は、本発明によるコンタクトプローブ11の全体の縦断面図、(b)は、(a)におけるコンタクトプローブ11の先端の要部の断面図である。
【図3】(a)(b)(c)(d)(e)は、本発明のコンタクトプローブ11によるレセプタクルとしてのスイッチ付き同軸コネクタ9との嵌合作用を説明する縦断面図である。
【図4】スイッチ付き同軸コネクタ9の分解斜視図である。
【図5】従来のコンタクトプローブ72によるスイッチ付き同軸コネクタ80との嵌合作用を説明する縦断面図である。
【符号の説明】
【0038】
9…レセプタクルとしてのスイッチ付き同軸コネクタ、11…コンタクトプローブ、12…プリント基板、13…検査機連結部、14…コネクタ接続部、15…外部導体、16…可動端子、17…中心導体、18…上部インシュレータ、19…ワッシャ、20…中心導体用コイルばね、21…シェル用コイルばね、22…中心導体、23…外部導体ハウジング、24…フローティング用コイルばね、25…インシュレータ可動用ばね、26…シェル、27…筒体、28…進退孔、29…下部インシュレータ、30…先端接触部、30a…段部、31…ガイド部、32…傾斜部、33…呼び込み突部、34…中心導体進退孔、35…内部筒体、40…ハウジング、41…シェル、42…固定端子、43…可動端子、44…円筒部、45…ピン差し込み孔、46a,46b…端子支持突部、47a,47b…回り止め突部、48…端子圧入溝、49…端子圧入溝、49a…突部挿入溝、50…接触片挿入溝、51…ハウジング嵌合孔、52…係止部、53…回り止め溝、55…係止溝、56…グランド端子部、57…接触片、58…接続端子部、59…圧入部、59a…圧入突部、60…圧入部、60a…圧入突部、61…ばね部、62…接触片、63…接続端子部、67…可動空隙部、68…押圧部、69…すり鉢状凹部、69a…斜面壁部、69b…平坦底部、70…下面切欠き部、71…側壁部、72…コンタクトプローブ、73…外部導体、74…中心導体、75…先端面、76…ガイド面、77…接触面、78…プリント基板、79…パターン電極、80…スイッチ付き同軸コネクタ、81…第1ハウジング、82…ピン差し込み孔、83…固定端子、84…固定接触部、85…可動端子、86…第2ハウジング、87…接触部、88…可動接触部、89…シェル、90…すり鉢状凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置合わせをして前記レセプタクルのピン差し込み孔に前記コンタクトプローブの中心導体の先端接触部を嵌合するようにした方法において、
前記レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置ずれ状態でコンタクトプローブを押し下げたとき、前記中心導体の外周に進退自在に設けた筒状インシュレータの先端の逆円錐台状の呼び込み突部を、前記レセプタクルのすり鉢状凹部の斜面壁部に接触しつつ摺動して、前記レセプタクルとコンタクトプローブの少なくともいずれか一方を前記コンタクトプローブの押し下げ方向に対して略直交する方向に、前記呼び込み突部が前記すり鉢状凹部の底部に達するまで呼び込む工程と、
呼び込みの終了後、前記レセプタクルの外周に進退自在に設けた筒状シェルを押し下げ、このシェルの先端に設けられ外周縁側に広がったガイド部を前記レセプタクルのシェルの外周縁部に接触しつつ摺動してこのレセプタクルのシェルの全外周面に前記ガイド部を接触して両者の軸心を一致せしめる工程と、
軸心が一致した状態で前記中心導体を押し出してこの中心導体の先端接触部が前記レセプタクルの中心のピン差し込み孔を通って下降し、可動端子を押し下げ、固定端子との接触を開放し、可動端子から中心導体へ信号経路を切り替える工程と
からなることを特徴とするレセプタクルとコンタクトプローブの嵌合方法。
【請求項2】
レセプタクルとコンタクトプローブの軸心の位置合わせをして前記レセプタクルのピン差し込み孔に前記コンタクトプローブの中心導体の先端接触部を嵌合するようにしたコンタクトプローブにおいて、
前記中心導体を中心の中心導体進退孔内で進退自在に被覆した筒状のインシュレータと、このインシュレータを進退自在に被覆した筒状のシェルとを具備し、
前記インシュレータの先端に、前記レセプタクルの上面に形成したすり鉢状凹部の斜面壁部を押し込みながら摺動して前記コンタクトプローブとレセプタクルの軸心を一致させるために両者の相対的な位置を移動させるための逆円錐形の呼び込み突部を形成し、
前記シェルの先端部に、前記レセプタクルの外周に接触案内してさらに両者の軸心を一致させるための外周縁側に広がったガイド部を形成した
ことを特徴とするコンタクトプローブ。
【請求項3】
レセプタクルは、円形のハウジングとこのハウジングの外周のシェルとを有し、前記ハウジングは、直径d6で、上面にすり鉢状凹部を有し、中央に直径d2のピン差し込み孔が穿設され、前記すり鉢状凹部は、斜面壁部とピン差し込み孔よりやや大きな直径d4の中央の平坦底部とからなり、コンタクトプローブの呼び込み突部は、内径が前記d2より大きく前記d4より小さな中心導体進退孔と略同一の直径d3で、外径が前記d6より小さな外径d5をもって形成し、前記コンタクトプローブのシェルの外径d8は、前記レセプタクルのハウジングのシェルの直径をd7としたとき、d8≧d4−d3+d7に設定したことを特徴とする請求項2記載のコンタクトプローブ。
【請求項4】
中心導体は、下端部にピン差し込み孔の直径d3より小さな直径d1の先端接触部を有し、この先端接触部の上部にd2より大きくd3以下の段部を形成したことを特徴とする請求項3記載のコンタクトプローブ。
【請求項5】
逆円錐形の呼び込み突部の角度は、すり鉢状凹部の斜面壁部より尖鋭に形成したことを特徴とする請求項3記載のコンタクトプローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−138637(P2011−138637A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296391(P2009−296391)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】