説明

レゾルバインタフェース、レゾルバからの入力信号を監視する方法、および差動位置センサインタフェース

【課題】動作環境に関わらず、正確な直交座標位置を示すことができるレゾルバインタフェースを設計および開発する。
【解決手段】レゾルバインタフェースが、正弦信号および余弦信号についての別個のアンチエイリアシングフィルタを含む。別々にフィルタリングされた信号は、時分割変換されてアナログ−デジタル(A/D)コンバータに送られる。すべての入力が同一のA/Dコンバータを介して供給されるので、このA/Dコンバータによって生じる誤差、相違ないしシフトは、すべての入力に亘って共通のものとなる。フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)およびプロセッサを使用して、デジタルフィルタリング、復調、および位置の算出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置測定装置からの信号の調整を行うインタフェースおよび方法に関し、詳しくは、レゾルバインタフェースの正確性を向上させるようにレゾルバからの信号の調整を行うレゾルバインタフェースおよび方法に関する。
【0002】
なお、本発明は、米国陸軍との契約番号w58rgz−05−c−0001に基づき米国政府の支援の下になされたものであり、米国政府は、所定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
モータシャフトなどの回転部材の回転位置を測定かつ通信するために、レゾルバが使用される。回転部材の回転位置は、正確な制御や操作を行うために通信される。従来のレゾルバは、生のアナログ信号を供給し、この生のアナログ信号が調整されて、所望の形態での信号を発生させる。レゾルバから受けた信号を調整し、所望の形態での信号を発生させるために、ソフトウェアおよび電子ハードウェアを含むインタフェースが利用される。測定される位置の正確性は、レゾルバ自体のみに依存するのではなく、レゾルバ出力信号の調整に利用されるインタフェースの堅牢性(robustness)にも依存して変化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、動作環境に関わらず、所望の正確性を提供することができるレゾルバインタフェースを設計および開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示のレゾルバインタフェースが、正弦信号、余弦信号、励磁信号の各々についての別個のアンチエイリアシングフィルタを含む。別々にフィルタリングされた信号は、次に、時分割多重化されて単一のアナログ−デジタル(A/D)コンバータに送られる。すべての入力が同一のA/Dコンバータを介して供給されるので、このA/Dコンバータによって生じる種々の誤差、相違ないしシフトは、すべての入力に亘って共通のものとなる。
【0006】
A/Dコンバータは、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)から送られる制御アルゴリズムに従って制御される。FPGAは、励磁信号を生成する正弦波発生器を含む。A/Dコンバータから出た信号は、FPGA内のデジタルフィルタを通るように供給される。このデジタルフィルタはFPGAの一部であるので、デジタルフィルタの各々を同一の構成にすることが可能であり、これにより、別個の素子に存在し得る固有誤差を除去する。デジタル復調計算は、レゾルバ励磁周波数と同期されて、共にFPGAによって実行される。更新した各データについての位相の直交座標位置を正確に示すために、「スライド式」正弦/余弦ルックアップテーブルを励磁信号の位相に同期させたままで、レートの更新を行う。
【0007】
従って、開示例のレゾルバインタフェースは、初期のフィルタリングから最終の計算までの間の誤差ないし相違の点を減らすことによって、正確性を向上させる。
【0008】
本発明の上記および他の特徴は、以下の詳細な説明および図面から最もよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】レゾルバインタフェースの一例の概略図。
【図2】アンチエイリアシングフィルタの一例の概略図。
【図3】制御器の一例の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照すると、レゾルバ16からの正弦入力12および余弦入力14を受けるレゾルバインタフェース・信号調整器10が概略的に示されている。このレゾルバインタフェースおよび信号調整器10は、。これらの正弦入力12および余弦入力14は、直交座標(四象限)での正確性および操作のために、回転装置15の位置を示すアナログ信号を提供する。レゾルバインタフェース10は、これらのアナログ信号12,14を、回転装置15についての直交座標での角度位置に変換する。変換された角度位置は、この回転位置情報を利用する制御器44または他の装置に通信される。開示例は、レゾルバインタフェースであるが、当業者であれば、例えば、線形可変差動トランス(LVDT)や回転可変差動トランス(RVDT)などの他の周知の差動位置センサにも適用できるという利点を理解されるであろう。
【0011】
レゾルバ16は、励磁信号18を受け、この励磁信号18は、レゾルバインタフェース10に供給される正弦入力12および余弦入力14の発生をもたらす。正弦入力12は、第1のアンチエイリアシングフィルタ20を介して供給される。余弦入力14は、第2のアンチエイリアシングフィルタ22を介して供給される。選択的に、励磁信号18を、外部パスまたは内部パスを経由して第3のアンチエイリアシングフィルタ24を介して供給することができる。アンチエイリアシングフィルタ20,22,24からのフィルタリングされた信号は、マルチプレクサ(多重化装置)26を介してアナログ−デジタル(A/D)コンバータ28まで案内される。これらの入力12,14は、同一のA/Dコンバータ28に供給されるので、A/Dコンバータ28によって生じる種々の誤差、相違ないしシフトは、入力12,14さらには選択的な入力18に亘って共通のものとなり、結果として得られる位置の正確性への影響が小さくなる。
【0012】
マルチプレクサ26は、正弦信号、余弦信号および励磁信号からなるほぼ同時の配列を供給するように、入力12,14,18をインタリーブ(interleave)する。正弦レゾルバ信号12および余弦レゾルバ信号14をほぼ同時にサンプリングすることによって、正弦レゾルバ出力のサンプリングと余弦レゾルバ出力のサンプリングとの間における位置/信号振幅が大きくは変化しないので、レゾルバ位置のスリューイング(回転)によって生じる誤差が小さくなる。
【0013】
別個のアンチエイリアシングフィルタ20,22が使用され、従って信号12,14の各々について別個の利得(ゲイン)パスが使用されるので、この例におけるアンチエイリアシングフィルタ20,22は、レゾルバ励磁周波数での利得の不一致が最小となるように最適化されている。
【0014】
図2を参照すると、例示のアンチエイリアシングフィルタ20,22の各々は、一致した性能特性を有するデュアルオペアンプを含む。例示のアンチエイリアシングフィルタ20,22は、バッファ増幅器と、6.44kHzのカットオフ周波数を有する4次サレン・キー(Sallen−Key)型利得バターワース・ローパスフィルタと、からなる。サレン・キー型単一利得トポロジーは、正弦入力および余弦入力に亘って最適に一致した利得を実現することにおいても重要である。不要な通過帯域外の信号を除去するために、他のアンチエイリアシングフィルタを利用してもよいことが理解されよう。
【0015】
図1および図3に、マルチプレクサ26からの出力がA/Dコンバータ28に供給されることを示す。A/Dコンバータ28は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)30から送られる制御アルゴリズムに従って制御される。FPGA30は、励磁信号18を生成する正弦波発生器32を含む。さらに、FPGA30は、デジタルフィルタ34を含む。A/Dコンバータ28は、レゾルバ励磁周波数の120倍のサンプリング周波数で、入力信号をオーバサンプリングする。この例においては、400Hzのレゾルバ励磁周波数は、400Hzの励磁信号18の各サイクルについて、120回オーバサンプリングされる。励磁周波数をオーバサンプリングすることによって、例示の400Hzの励磁周波数から外れた周波数のノイズを除去する有限インパルス応答(FIR)デジタルフィルタを使用することができる。
【0016】
オーバサンプリングされた正弦信号12,余弦信号14および励磁信号18は、A/Dコンバータ28からFPGA30に供給される。FPGA30内において、信号は、まずデジタルフィルタ34に供給される。このデジタルフィルタ34は、FPGA30の一部であり、従って、デジタルフィルタ34の各々を同一の構成にすることができるので、別個のアナログ素子を使った場合に生じ得る固有誤差を除くことができる。さらには、デジタルフィルタリングによって、レゾルバ位置の計算および確定に悪影響を及ぼし得る通過帯域外の周波数やノイズを除去する。
【0017】
各信号がデジタルフィルタにかけられると、オーバサンプリングされた点が10分の1に間引きされて、サンプル点の数が120から12に減少する。この間引き操作で、10番目毎のサンプル点を取り入れ、その間の9つの点を捨てる。この間引き操作によって、信号12,14,18の各々について、レゾルバ励磁周波数の12倍に相当する最終の出力レートを生み出す。間引きされた信号の10番目サンプルを得る毎に、位置の計算が実行される。例示のFPGAモジュール10では、一番古いデータの点を各計算から除外するとともに、最近の12個の点を使って各計算が行われる。
【0018】
デジタル復調計算は、レゾルバ励磁周波数と同期されて、共にFPGA30によって実行される。直交座標での正確な位相を提供するために、「スライド式」正弦/余弦ルックアップテーブルを励磁信号の位相に同期させたままで、レートの更新を行う。
【0019】
デジタル復調器36は、正弦レゾルバ信号,余弦レゾルバ信号および励磁信号の循環
A/Dデータについての互いに直交する同位相成分および直角位相成分を算出するための復調計算を実行する。これらの同位相および直角位相の結果は、位相の変化による信号損失をほとんど生じることなく、正弦信号と余弦信号の大きさを計算するために使用される。
【0020】
同位相成分(i_comp)および直角位相成分(q_comp)の計算は、レゾルバの正弦信号、余弦信号および励磁信号の循環サンプリングA/Dデータの各々について実行される。各々の新しいA/Dサンプルを得ると、最近の12個の受信データ点に関して、以下の式1および式2による計算が実行される。
【0021】
【数1】

【0022】
ここで、i_comp,I(n)は、同位相成分の結果
q_comp,Q(n)は、直角位相成分の結果
x(n)は、サンプリング(標本化)A/Dデータ
Nは、レゾルバ励磁周波数の1サイクル当たりの間引きされたサンプル数(この例においては12)。
【0023】
式(1)および式(2)は、レゾルバ励磁周波数のサイクル全体を包括するサンプル列(この例では12個のサンプル)に関して実行される演算を示す。式(1)および式(2)は、これらの計算がどのように割り出され、新しい間引きA/Dサンプルの各々を得た後にどのように更新されるか、を表していない。以下の式(3)および式(4)は、上式を代替的な形式で示すものであり、最近の12個のフィルタリングかつ間引きされたサンプルを使って同位相および直角位相の計算を行うために、サンプルをどのように更新するかを示している。また、レゾルバ励磁周波数のN倍となる頻度で(つまり間引きされたA/Dサンプル毎に1度)新しい更新が計算されるように、レゾルバ角度計算の更新レートを最大にするために、式(3)および式(4)が用いられる。
【0024】
【数2】

【0025】
式(3)および式(4)において、x(n)は最新のA/Dサンプルを、x(n−1)は直前のサンプルを表し、さらに過去のデータサンプルもこの様式で表している。開示例においては、最近の12個の間引きされたサンプルを利用しているが、所望のアプリケーションや要求される特定のシステム性能に応じて、これよりも多いか又は少ないサンプル数にできることが理解されよう。
【0026】
以下の式(5)および式(6)は、FPGA30のデジタル論理での実施を容易にするために簡略化したものである。
【0027】
【数3】

【0028】
ここで、I(n−1)およびQ(n−1)は、I成分およびQ成分の結果であり、N=12とする。
【0029】
式(5)および式(6)は、式(3)および式(4)を簡略化した代替式であり、一つの結果を得るために、2つの乗算と3項による加算のみを要求する。式(5)および式(6)の各々は、適切に割り出された正弦および余弦の列に現在のA/Dサンプルを乗算したものを直前の同位相および直角位相の結果に加算するとともに、最も古い正弦の項あるいは余弦の項を減算することを表す。
【0030】
上記の正弦および余弦の関数は、N個のサンプル毎に繰り返されるように行われ、N個のサンプル点を含む循環ルックアップテーブルを用いて実施することができる。この例においては、N=12である。一例として、正弦入力および余弦入力についての12点循環ルックアップテーブルを以下に示す。
【0031】
【数4】

【0032】
上記のルックアップテーブルにおける正弦列および余弦列の値を適切に割り出すことによって、最終の同位相成分および直角位相成分の結果に基づいて計算される直交座標での正確な位相(0〜360°)を算出することができる。例示のルックアップテーブルは、12個のサンプル数を含む開示例についてのものであることが理解されよう。例示のルックアップテーブルは、所望のサンプル数に一致するように修正することができる。
【0033】
上記の式(3),(4),(5),(6)は、同じ結果を算出するものであって、この例においては、レゾルバ周波数の12倍に相当する更新レートとなるように、新しいフィルタリングかつ間引き後のA/Dサンプルを得る毎に、新しい同位相および直角位相の結果を算出する。
【0034】
FPGA30からの値は、プロセッサ38への入力であり、この入力は、回転装置15の角度位置を示す値(符号46で概略的に示す)に変換されて、制御器44に通信される。上記のようにFPGA30によって発生した正弦、余弦、励磁および他のデータは、制御器44によって利用可能な所望の角度位置の値46を提供するために利用される。
【0035】
プロセッサ38は、以下の例の式で示される正弦、余弦および励磁の値に関する初期の大きさを計算する。
【0036】
【数5】

【0037】
ここで、mは、インタフェース入力を基準とした電圧ピークに結果を変換するための倍率である。
【0038】
sin_mag_vpおよびcos_mag_vpの値は、上記のように計算されたベクトルの大きさであり、常に正の値となる。ベクトルの大きさの値は常に正となるので、レゾルバの角度の計算に使用される逆タンジェントの関数値は、必然的に第1象限の値となる。そのため、以下の式12に示すように、この逆タンジェントの関数値と共に、正弦レゾルバ入力および余弦レゾルバ入力の両方のi_comp成分の結果を用いて、正確な直交座標位置を確定する。
【0039】
【数6】

【0040】
ここで、上記の記号「∧」は、論理和ANDである。他のすべての可変量の表し方は、前述の大きさの計算で定義した通りとする。
【0041】
式12から得られるangle_degの値は、角度の値46であり、この角度の値46は、回転装置15の現在の角度位置に関する情報を要求する他のシステムやプロセスで使用される制御器44に入力される。
【0042】
上記の式は、デジタル論理で或いはプロセッサによって実行することができ、レゾルバ励磁信号に基づいてサンプリングされたレゾルバ正弦出力信号およびレゾルバ余弦出力信号の同位相成分および直角位相成分を計算することを含んでいることを理解されたい。また、FPGA30によって実行されるデジタル復調および他の関数の手法による様々な関数を実行するために計算装置を使用できることに留意されたい。ハードウェアのアーキテクチャの観点からは、そのような計算装置としては、ローカルインタフェースを介して互いに通信可能に接続されたプロセッサ、記憶装置、および入力および/または1つまたは複数の出力(I/O)装置などがある。ローカルインタフェースとしては、例えば、1つまたは複数のバスおよび/または他のワイヤ接続やワイヤレス接続があるが、これらに限定しない。ローカルインタフェースは、さらには、通信を可能にするための、制御器、バッファ(キャッシュ)、ドライバ、中継器および受信器などの要素を含み得るが、簡略化のために省略してもよい。さらには、ローカルインタフェースとしては、上述の要素間における適切な通信を可能にする、アドレス制御、および/またはデータ接続などがある。
【0043】
プロセッサは、ソフトウェア特に記憶装置に保存されたソフトウェアを実行するハードウェア装置とすることができる。プロセッサは、オーダメイドまたは市販のプロセッサ、中央演算処理装置(CPU)、該計算装置に関連するさまざまなプロセッサ間の補助プロセッサ、半導体基マイクロプロセッサ(マイクロチップまたはチップセットの形態で)、またはソフトウェアの命令を実行する一般的な種々の装置とすることができる。
【0044】
記憶装置は、揮発性記憶素子(例えば、ランダムアクセスメモリ(DRAM,SRAM,SDRAM,VRAMなどのRAM))および/または不揮発性記憶素子(例えば、ROM,ハードドライブ、テープ、CD−ROMなど)のうちの1つまたはこれらの組み合わせとすることができる。さらには、記憶装置は、電子的、磁気的、光学的および/または他の種類の保存媒体を組み込んでいてもよい。なお、記憶装置は、種々の構成要素が互いに離れて配置されていて、プロセッサによってアクセス可能に構成された分散型アーキテクチャとすることもできる。
【0045】
記憶装置内のソフトウェアは、1つまたは複数の別個のプログラムを含み、これらのプログラムの各々が、論理関数を実行するための実行可能な命令の規則表を含むようにすることができる。ソフトウェアとして実現されるシステム要素は、さらには、実行すべき命令のセットを含む、ソースプログラム、実行可能プログラム(オブジェクトコード)、スクリプト、または種々の他の実体として構築することができる。プログラムは、ソースプログラムとして構築されているときには、コンパイラ、アセンブラ、インタプリタなどを介して翻訳されるが、これらのコンパイラ、アセンブラ、インタプリタは、記憶装置内に保存されていてもよいし保存されていなくてもよい。
【0046】
システムI/Oインタフェース(1つまたは複数)に接続できる入力/出力装置としては、例えば、キーボード、マウス、スキャナ、マイクロフォン、カメラ、検知装置などの入力装置があるが、これらに限定しない。さらには、入力/出力装置としては、例えば、プリンタ、ディスプレイなどの出力装置があるが、これらに限定しない。またさらには、入力/出力装置としては、入力および出力の両方を通信する装置があり、例えば、変調器/復調器(モデム;他の装置、他のシステムまたは他のネットワークの評価用)、無線周波(RF)または他の送受信機、電話インタフェース、ブリッジ、ルータなどがあるが、これらに限定しない。
【0047】
計算装置が作動中であるとき、プロセッサは、記憶装置内に保存されているソフトウェアを実行し、記憶装置の内外へデータを通信し、さらにはソフトウェアに従って計算装置の演算を全般的に制御するように構成することができる。記憶装置内のソフトウェアは、プロセッサによって全体的または部分的に読み込まれ、ときにはプロセッサ内でバッファ処理されてから実行される。
【0048】
例示のレゾルバインタフェース10は、レゾルバ16およびレゾルバインタフェース10の作動を検証するためのいくつかの内蔵型テスト・セルフチェック機能を備える。正弦入力12および余弦入力14の両方に対してオフスケール駆動信号40が与えられる。オフスケール駆動信号40は、正弦入力12および余弦入力14の欠落に応答して、通常の電圧よりも大きな直流電圧を入力する。直流電圧の増加は、平均値の上昇としてデジタル変調器によって検知される。直流電圧は、i_sine値およびi_cosine値に0の値を登録することが理解されよう。この「0」の値は、レゾルバ16の有効な位置表示の一つであり、この値のみでは、何の故障も示さない。しかし、レゾルバの種々の条件に対して予測される値よりも高い平均値の上昇が見られた場合、故障についての所望の表示を与える。このオフスケール駆動の機能は、別々の制御や特別なテストプロトコルを必要とすることなく、問題の状況を示すことができる。
【0049】
例示のレゾルバインタフェース10は、また、内部励磁チャネル42を含み、この内部励磁チャネル42は、通常の正弦信号、余弦信号、外部励磁信号の代わりに、アンチエイリアシングフィルタ20,22,24の各々に供給するように切換可能である。これによって、FPGAモジュール30が受けている結果の信号を知ることができる。マルチプレクサ26およびA/Dコンバータ28を介して受けた信号が予測とは異なる場合、レゾルバインタフェース10内の何かが所望の通りには作動していないことを指示する故障条件が示される。受信した信号が予測と同じである場合、レゾルバインタフェース10以外の何かが所望の通りには作動していない。外部励磁信号がレゾルバ16に供給されている間に故障条件が生じた場合、インタフェース10は、内部チャネルに切換可能であることが理解されよう。内部チャネルを使ってフィルタ20,22,24の各々へ入力を送っているときに何も故障が検出されなければ、レゾルバ16または該レゾルバ16との接続において望ましくないことがあると推測される。
【0050】
本明細書中に提示したデジタル復調技術は、ケーブル配線、信号調整回路またはレゾルバセンサ自体によって導入される正弦信号または余弦信号の位相シフトによって悪影響を受けることなく、正弦信号および余弦信号の大きさを計算する。本発明のデジタル復調は、レゾルバの励磁、正弦、余弦の各出力信号の間に導入される予測される程度の位相シフト誤差、あるいはレゾルバの正弦出力と余弦出力との間に導入される予測される程度の位相シフトによっては、悪影響を受けない。
【0051】
追加のテスト・検証プロセスは、レゾルバ励磁出力に対するレゾルバ正弦出力とレゾルバ余弦出力と間の位相差を示すための、レゾルバインタフェース10の一部である。レゾルバからの励磁信号と、正弦信号と、余弦信号と、の間の相対的位相差は、レゾルバ規格の普遍的部分であることが理解されよう。
【0052】
通常のレゾルバのレンジ/チェック・ビットに加え、励磁、正弦、余弦の各信号の相対的位相差を計算して、センサが正常に作動しているかの判定に利用することができる。いずれかのレゾルバ出力間の位相差が予測範囲からはずれた場合、レゾルバ性能の低下を示す証拠となり得る。そのような性能の低下は、レゾルバの性能に生じる故障の可能性を予告するために利用することができる。
【0053】
本発明の好ましい実施例を開示したが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、いくつかの修正がなされ得ることを理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング周波数でサンプリングするアナログ−デジタル(A/D)コンバータと、
上記A/Dコンバータへの信号を、正弦入力信号と、余弦入力信号と、励磁信号と、の間で時分割多重化するマルチプレクサと、
上記励磁信号と同期した正弦入力および余弦入力の発生、かつ上記A/Dコンバータ用のサンプリング周波数の生成、に利用される上記励磁信号を発生させる励磁源と、
を備えてなるレゾルバインタフェース。
【請求項2】
上記正弦入力をフィルタリングする第1のアンチエイリアシングフィルタと、上記余弦入力をフィルタリングする第2のアンチエイリアシングフィルタと、を含むことを特徴とする請求項1に記載のレゾルバインタフェース。
【請求項3】
上記第1のアンチエイリアシングフィルタおよび第2のアンチエイリアシングフィルタは、上記正弦入力および余弦入力の共通の利得をもたらすデュアルオペアンプおよび共通の増幅器パッケージからなることを特徴とする請求項2に記載のレゾルバインタフェース。
【請求項4】
上記第1のアンチエイリアシングフィルタおよび第2のアンチエイリアシングフィルタは、4次バターワース・フィルタであることを特徴とする請求項2に記載のレゾルバインタフェース。
【請求項5】
上記マルチプレクサは、上記正弦信号、余弦信号および励磁信号をインタリーブ多重化して上記A/Dコンバータに送ることを特徴とする請求項1に記載のレゾルバインタフェース。
【請求項6】
上記正弦入力および余弦入力は、上記励磁周波数の120倍のサンプリング周波数でサンプリングされることを特徴とする請求項1に記載のレゾルバインタフェース。
【請求項7】
上記A/Dコンバータからの正弦信号、余弦信号および励磁信号の各々に対してデジタルフィルタをかけるようにプログラムされたフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を含むことを特徴とする請求項1に記載のレゾルバインタフェース。
【請求項8】
上記FPGAは、上記正弦入力および余弦入力の大きさおよび直交座標位置を確定するためのデジタル復調計算を実行するデジタル復調器モジュールを含むことを特徴とする請求項7に記載のレゾルバインタフェース。
【請求項9】
故障条件を隔離するために、正弦信号パスおよび余弦信号パスを通るように励磁信号を案内する内部チャネルを含むことを特徴とする請求項1に記載のレゾルバインタフェース。
【請求項10】
レゾルバからの入力信号を監視する方法であって、
フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイを使って励磁信号を発生させ、
上記励磁信号に基づいて、回転要素の位置を示す正弦入力および余弦入力を発生させ、
別個のアンチエイリアシングフィルタ内で上記正弦入力および余弦入力から通過帯域外周波数をフィルタリングにより除き、
上記正弦入力および余弦入力を時分割多重化して、単一のアナログ/デジタルコンバータに送り、
フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)内で、上記正弦入力および余弦入力の各々をデジタルフィルタにかけ、
上記FPGA内で、上記励磁信号の周波数と同期したレートで上記正弦入力および余弦入力を復調させること、
を含む方法。
【請求項11】
上記正弦入力および余弦入力を、励磁周波数の120倍のサンプリング周波数でサンプリングすることを含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記A/Dコンバータからの上記正弦入力および余弦入力を10分の1に間引きし、上記励磁周波数の12倍となる間引きサンプルレートを提供することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
正弦信号処理パスおよび余弦信号処理パスを点検するために、別個のアンチエイリアシングフィルタを通るように上記励磁信号を案内し、上記正弦入力および余弦入力とともに上記励磁信号を時分割多重化して上記A/Dコンバータに送ることを含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
サンプリング周波数でサンプリングするアナログ−デジタル(A/D)コンバータと、
上記A/Dコンバータへの信号を、第1の差動センサ信号と、第2の差動センサ信号と、励磁信号と、の間で時分割多重化するマルチプレクサであって、該第1の差動センサ信号、第2の差動センサ信号および励磁信号をインタリーブ多重化して上記A/Dコンバータに送るマルチプレクサと、
上記励磁信号と同期した第1の差動センサ信号および第2の差動センサ信号の発生、かつ上記A/Dコンバータ用のサンプリング周波数の生成、に利用される上記励磁信号を発生させる励磁源と、
を備えてなる差動位置センサインタフェース。
【請求項15】
上記第1の差動センサ信号をフィルタリングする第1のアンチエイリアシングフィルタと、上記第2の差動センサ信号をフィルタリングする第2のアンチエイリアシングフィルタと、を含むことを特徴とする請求項14に記載の差動位置センサインタフェース。
【請求項16】
上記マルチプレクサは、上記第1の差動センサ信号および第2の差動センサ信号をインタリーブ多重化して上記A/Dコンバータに送ることを特徴とする請求項14に記載の差動位置センサインタフェース。
【請求項17】
上記第1の差動センサ信号および第2の差動センサ信号は、上記励磁周波数の120倍のサンプリング周波数でサンプリングされることを特徴とする請求項14に記載の差動位置センサインタフェース。
【請求項18】
上記A/Dコンバータからの第1の差動センサ信号、第2の差動センサ信号および励磁信号の各々にデジタルフィルタをかけるようにプログラムされたフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を含むことを特徴とする請求項14に記載の差動位置センサインタフェース。
【請求項19】
上記FPGAは、上記第1の差動位置センサ信号および第2の差動位置センサ信号の大きさおよび直交座標位置を確定するためのデジタル復調計算を実行するデジタル復調器モジュールを含むことを特徴とする請求項18に記載の差動位置センサインタフェース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−73276(P2012−73276A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9116(P2012−9116)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【分割の表示】特願2009−195005(P2009−195005)の分割
【原出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】