説明

レニン阻害剤、例えばアリスキレンの中間体の合成方法

本発明は、薬学的に活性な化合物、特にレニン阻害剤の合成における新規の有用な中間体である、式(I):


の化合物を製造するための、オレフィン複分解法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、薬学的に活性な化合物、特にレニン阻害剤の合成に有用な新規の製造方法、新規の各製造工程および新規の中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
レニンは、腎臓から血液を通り、アンジオテンシノーゲンの開裂に影響を及ぼし、デカペプチドであるアンジオテンシン Iを遊離し、次いでアンジオテンシン Iが、肺、腎臓および他の臓器中で開裂され、オクタペプチドであるアンジオテンシン IIが形成される。該オクタペプチドは、動脈の血管収縮によって直接的に、および、アンジオテンシンIIの作用に起因する細胞外液量の増大を伴う、副腎からナトリウムイオン保持ホルモンであるアルドステロンを遊離することによって間接的に、血圧を上昇させる。レニン酵素活性阻害剤は、アンジオテンシンIの形成を減退させ、結果としてアンジオテンシンIIの生産量を減少させる。活性なペプチドホルモンの濃度減少は、レニン阻害剤の降圧作用の直接的な成因である。
【0003】
例えば(国際一般名で)アリスキレン {(2S,4S,5S,7S)−5−アミノ−N−(2−カルバモイル−2−メチルプロピル)−4−ヒドロキシ−2−イソプロピル−7−[4−メトキシ−3−(3−メトキシプロポキシ)ベンジル]−8−メチルノナンアミド}などの化合物を含み、アンジオテンシンII生合成の始まりでレニン−アンジオテンシン系を妨げる、新規の抗高血圧剤が開発されている。
【0004】
化合物は4個のキラル炭素原子を含むため、エナンチオマーとして純粋な化合物の合成は、非常に困難である。従って、この複雑化されたタイプの分子のより簡便な合成を可能とする修正された合成経路が歓迎される。
【0005】
従って、本発明が解決すべき課題は、このクラスの化合物の簡便で且つ効率のよい入手を可能とする新規の合成経路および新規の中間体を提供することである。本発明は、従って、薬学的に活性な化合物、特にレニン阻害剤、例えば2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド骨格、例えばアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を含むレニン阻害剤の合成に有用な中間体の製造方法に関する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の概要
レニン阻害剤、特に2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド骨格を含むレニン阻害剤の全合成における代替の中間体の製造を調べる際に、“内部に”二重結合および2個のキラル中心が存在することを特徴とするC−8分子が鍵となる基質として同定された。この一般式(I)の4−オクテン−1,8−ジオン酸分子の合成は、下記のオレフィン複分解法に従って行われ、ここで、この鍵となる複分解反応は、例えば本明細書に記載したルテニウム金属カルベン錯体を用いる。
【0007】
該方法は、従って、鍵となる共通の特徴として、オレフィンの複分解反応工程を経て、式(I)の化合物のC−8のオクタ−1,8−ジオン酸骨格の集合を有する。分子内および分子間オレフィン複分解プロセスの双方が、このようなC−8骨格の集合に用いられ得る。これが、次いで、さらに、式(I)の4−オクテン−1,8−ジオン酸分子へと合成される。従って、本発明は、式(I)の化合物を製造するためのオレフィン複分解法、特に、式(I)の化合物のC−8骨格は、交差複分解(分子内オレフィン複分解)または閉環複分解(分子内オレフィン複分解)反応の何れかによって構築されるオレフィン複分解法を目的としている。
【0008】
これらのオレフィン複分解法の一つにおいて、式(I)の化合物のC−8骨格が、一般式(III)のトリエンとして、一般式(II)のC−5ジエン化合物の交差複分解反応によって構築される。次いで、キラル水素化触媒の使用によって、“外側の”二重結合を不斉に還元することによって、キラル中心が導入され、式(I)の化合物を得る。このアプローチの分子内オレフィン複分解変法もまた可能である。該変法において、式(I)の化合物のC−8オクタ−1,8−二酸骨格は、一般式(IIa)の連結ビス−C−5ジエン化合物の閉環複分解によって構築される。さらに、水素化および加水分解工程により、式(I)の化合物が得られる。
【0009】
別のオレフィン複分解法において、一般式(IV)の別のC−5化合物の交差複分解反応は、式(I)の化合物のC−8骨格の合成において重要な工程である。このアプローチの分子内オレフィン複分解の変法もまた可能である。該変法において、式(I)の化合物のC−8オクタ−1,8−二酸骨格は、一般式(IVa)の連結ビス−C−5ジエン化合物の閉環複分解によって構築される。その後の加水分解工程により、式(I)の化合物が得られる。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、一般式(I)の化合物の合成過程の本明細書に記載された何れかの製造方法によって得られる生成物、およびレニン阻害剤、特に2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド骨格を含むレニン阻害剤の製造におけるその使用に関する。さらに、本発明の製造方法の何れかの工程は、単独で、または適当な組み合わせで、レニン阻害剤、特に2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド骨格を含むレニン阻害剤、例えばアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩の合成に用いられ得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の詳細な説明
第1の局面において、本発明は、式(I):
【化1】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリールまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリールまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、該方法が、
a) 式(II):
【化2】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を、交差複分解反応させ、式(III):
【化3】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を得ること;
b) 式(III)の化合物またはその塩を水素化して、式(I)の化合物またはその塩を得ること;
の1個以上の工程を含む方法に関する。
【0012】
さらなる局面において、本発明は、式(I):
【化4】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリールまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリールまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩に関する。
【0013】
一つの態様において、R2は、直鎖または分枝鎖の、特に分枝のC1−7アルキル、例えばC1−4アルキル、例えばメチル、エチルまたはイソプロピル、特にイソプロピルである。
【0014】
別の態様において、R1は、OR3であり、ここで、R3は、例えば水素またはC1−7アルキルであり;特に水素、メチルまたはエチルである。一つの態様において、R1は、例えばOHである。
【0015】
さらに別の態様において、R1は、NR4R5であり、ここで、R4およびR5は、直鎖または分枝鎖のC1−7アルキル、例えばn−ブチルまたはイソプロピルであり、特にイソプロピルである。さらに別の態様において、R4およびR5は、一体となって、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含み得る、置換または非置換の3から7員の窒素含有飽和炭化水素環、例えば1,3−オキサゾリジン−2−オニル環を形成してもよい。
【0016】
一つの態様において、式(I)の化合物またはその塩は以下の立体化学を有する:
【化5】

ここで、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りであり、特に式(I)の化合物についての前記の態様において定義した通りである。
【0017】
別の態様において、式(I)の化合物またはその塩は、以下の立体化学を有する。
【化6】

ここで、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りであり、特にR1はOHであり、R2は分枝鎖のC1−7アルキル、例えばイソプロピルである。
【0018】
これらの化合物は全て、レニン阻害剤、特に2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド骨格を含むレニン阻害剤、例えばアリスキレンまたはその何れかの薬学的な塩の合成において、鍵となる中間体である。
【0019】
別の局面において、本発明の対象はまた、式(III):
【化7】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りであり、特に式(I)の化合物について前記の態様において記載した通りである。]
の化合物またはその塩を目的としている。
【0020】
一つの態様において、式(III)の化合物またはその塩は、以下の構造を有する:
【化8】

ここで、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りであり、特に式(IIIa)の化合物またはその塩について定義した通りであり、R1がOHであり、R2が分枝鎖のC1−7アルキルであり、例えばイソプロピルである。別の態様において、式(III)の化合物は、R1がNR4R5である、特にR4およびR5がイソプロピルである、式(IIIa)の化合物またはその塩である。さらに別の態様において、R4およびR5は、一体となって、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含み得る、置換または非置換の3から7員の窒素含有飽和炭化水素環、例えばピペリジンまたはオキサゾリジノンを形成してもよい。
【0021】
従って、非常に関連する局面において、本発明は、式(III):
【化9】

[式中、R1およびR2は上記で定義した通りである。]
の化合物またはその塩の製造方法に関し、該方法は、式(II):
【化10】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を、交差複分解反応させ、式(III)の化合物またはその塩を得る工程を含む。
【0022】
式(II)の出発化合物またはその塩は、スキーム1に示したアルドール縮合アプローチによって、容易に得られる。
スキーム1
【化11】

【0023】
塩基、例えばリチウム ジイソプロピルアミド、ヘキサメチルジシラザン リチウム、ヘキサメチルジシラザン ナトリウム、ヘキサメチルジシラザン カリウムまたはリチウム 2,2,6,6−テトラメチルピペリジドの使用によって製造され得るケトン(1)のエノレートと、アクロレインとの反応により、対応する2−synおよび2−antiアルドール付加物が得られる。例えば標準的な方法に従って、メシル化またはトシル化によって、ヒドロキシル基を良好な脱離基に変換し、続いて、塩基、例えばNaOMe、KOMe、LiOMeまたはKOBuと反応させて脱離させ、式(II)の化合物が得られる。一つの特定の態様において、R1=OEtおよびR2=Prである式(II)の化合物は、以下の順序によって製造され得る。対応するメシレート中間体を、2当量のNaOMeで、室温で一夜脱離させると、式(II)のエステルが、例えば20:1のE/Z比で得られる。
【0024】
式(II)の化合物またはその塩の交差複分解反応工程は、溶媒を添加して、または添加せずに行われる。一つの態様において、それは、溶媒と共に行われる。溶媒の例は、炭化水素類、例えばヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン;塩素化炭化水素類、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼン;エーテル類、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピル エーテル、テトラヒドロフラン、およびメチル tert−ブチル エーテル;およびエステル類、例えば酢酸エチル、酢酸n−プロピル、および酪酸メチルを含む。溶媒のさらなる例は、トルエン、ジクロロメタンまたはジクロロエタンであり、一つの態様において、溶媒はジクロロメタンである。溶媒は、特に、当業者に周知の標準的な方法に従って、脱気されている。用いられる溶媒の量は、反応物(II)の0から150ml/mmolの範囲で、例えば反応物(II)の1から100ml/mmolの範囲で、例えば反応物(II)の1から50ml/mmolの範囲で、特に反応物(II)の1から10ml/mmolの範囲であり得る。反応は、特に、不活性雰囲気下で行われる。用語“不活性”は、本明細書で用いられるとき、反応剤、溶媒、または他の反応混合物の成分の全てと反応しないことを意味する。このような不活性条件は、一般的に、不活性ガス、例えば二酸化炭素、ヘリウム、窒素、アルゴン、その他のガスの使用を伴う。この工程は、典型的には、−10から150℃の範囲の温度で、例えば0から100℃の範囲の温度で、例えば20から80℃の範囲の温度で、特に40から80℃の範囲の温度で行われる。
【0025】
米国特許出願第20060030742号に記載された通り、交差複分解のための複分解触媒は、複分解反応を触媒するのに有効であって、反応剤に存在する官能基と融和性(compatible)である、不均一系または均一系遷移金属化合物の何れかであり得る。特に、複分解触媒は、不均一系または均一系の、元素の周期表の4族(IVA)および6〜10族(VIA-10)から選択される遷移金属の化合物である。用語“不均一系化合物”によって、一般的な不活性な支持物質(例えばシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭素など)と混合した、それに担持した、それとイオン交換した、その上に堆積させた、またはそれと共に沈殿させた、元素の周期表の4族および6〜10族の何れかの遷移金属または金属化合物が意味される。支持物質はまた、酸性または塩基性のマクロ網状化イオン交換樹脂であってもよい。用語“均一系化合物”は、反応混合物中に溶解し得るまたは部分的に溶解し得る4族または6〜10族の遷移金属化合物の何れかを意味する。有効な複分解触媒は、当業者に周知の方法によって製造され得るか、化学文献、例えばMol et al Catal. Today, 1999, 51, 289-99や、PCT出願第02/00590号;欧州特許出願第1 022 282 A2号;および米国特許第5,922,863号;第5,831,108号;および第4,727,215号に記載されている。本発明の式(II)またはその塩の交差複分解において、オレフィン複分解触媒は、例えば、ルテニウム・アルキリデン触媒、特に、次に示すルテニウム・アルキリデン触媒である。
【0026】
【表1】

【表2】

ここで、用語IMesおよびSIMesは、それぞれ、N,N'−ビス(メシチル)イミダゾール−2−イリデンおよび3−ビス(メシチル)イミダゾリデン−2−イリデンリガンドを表し;用語iPr、PhおよびTolは、イソプロピル、フェニルおよびトリルを意味する。
【0027】
触媒1a(Grubbs第1世代)は、Sigma-Aldrichから購入可能である。Grubbs第1世代触媒の製造および使用は、Schwab, P.; France, M. B.; Ziller, J. W.; Grubbs, R. H. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1995, 34, 2039; Schwab, P.; Grubbs, R. H.; Ziller, J. W. J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 100 および Welhelm, T. E.; Belderrain, T. R.; Brown, S. N.; Grubbs, R. H. Organometallics 1997, 16, 3867等の化学文献に記載されている。触媒2a(Grubbs第2世代)は、Sigma-Aldrichから購入可能である。Grubbs第2世代触媒の製造および使用は、Scholl, M.; Ding, S. C.; Lee, W.; Grubbs, R. H. Org. Lett. 1999, 1, 953; Bielawski, C. W.; Grubbs, R. H. Angew. Chem., Int. Ed. 2000, 39, 2903; Trnka, T. M.; Morgan, J. P.; Sanford, M. S.; Wilhelm, T. E.; Scholl, M.; Choi, T.-L.; Ding, S.; Day, M. W.; Grubbs, R. H. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 2546 および Love, J. A.; Sanford, M. S.; Day, M. W.; Grubbs, R. H. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 10103等の化学文献に記載されている。触媒1b−g、2b−gおよび3a−cの製造は、米国特許第5,912,376号に記載されている。触媒4a−c(Grubbs第3世代)の製造および使用は、Sanford, M. S.; Love, J. A.; Grubbs, R. H. Organometallics 2001, 20, 5314 および Love, J. A.; Morgan, J. P.; Trnka, T. M.; Grubbs, R. H. Angew. Chem., Int. Ed. 2002, 41, 4035等の化学文献に記載されている。触媒5a、bは、Strem Chemicalsから購入可能である。その製造及び使用は、Jafarpour, L.; Schanz, H.-J.; Stevens, E. D.; Nolan, S. P. Organometallics 1999, 18, 5416; Fuerstner, A.; Thiel, O. R.; Ackermann, L.; Nolan, S. P.; Schanz, H.-J. J. Org. Chem. 2000, 65, 2204; Fuerstner, A; Guth, O.; Dueffels, A.; Seidel, G.; Liebl, M.; Gabor, B.; Mynott, R. Chem. Eur. J. 2001, 7, 4811; Fuerstner, A.; Schlede, M. Adv. Synth. Catal. 2002, 344, 657 および Opstal, T.; Verpoort, F. New J. Chem. 2003, 27, 257等の化学文献に記載されている。
【0028】
触媒6aの製造および使用は、Grela, K.; Harutyunyan, S.; Michrowska, A. Angew. Chem., Int. Ed. 2002, 41, 4038; Michrowska, A.; Bujok, R.; Harutyunyan, S.; Sashuk, V.; Dolgonos, G.; Grela, K. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 9318 および Harutyunyan, S.; Michrowska, A.; Grela, K. in Catalysts for Fine Chemical Synthesis; Roberts, S. M., Whittall, J., Mather, P., McCormack, P., Eds.; Wiley-Interscience: New York 2004; Vol. 3, 169等の化学文献に記載されている。触媒7a−cの製造は、、Van der Schaaf, P. A.; Muehlebach, A.; Hafner, A.; Kolly, Rらの化学文献等に記載されている。触媒8a(Hoveyda-Grubbs第1世代)および8b(Hoveyda-Grubbs第2世代)は、Sigma-Aldrichから購入可能であり、その製造および使用は、Kingsbury, J. S.; Harrity, J. P. A.; Bonitatebus, P. J.; Hoveyda, A. H. J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 791; Garber, S. B.; Kigsbury, J. S.; Gray, B. L.; Hoveyda, A. H. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 8168 および Nicola, T.; Brenner, M.; Donsbach, K.; Kreye, P. Org. Proc. Res. Dev. 2005, 9, 513等の化学文献に記載されている。触媒10aは、Strem Chemicalsから購入可能であり、その製造および使用は、Van der Schaaf, P. A.; Kolly, R.; Kirner, H.-J.; Rime, F.; Muehlebach, A.; Hafner, A. J. Organomet. Chem. 2000, 606, 65 および Katayama, H.; Nagao, M.; Ozawa, F. Organometallics, 2003, 22, 586等の化学文献に記載されている。
【0029】
別の触媒、例えば、触媒11a−eは、StremまたはAldrichから購入可能である。
【化12】

【0030】
一つの態様において、ルテニウム・アルキリデン触媒は、触媒2a(Grubbs第2世代触媒)、2g、4bおよび6aであり;例えば2aおよび2gであり;特に2aである。
【0031】
該方法に典型的に用いられる複分解触媒の量は、0.01(s/c 10000/1)から10%mol(s/c 10/1)の範囲であり、例えば0.05(s/c 2000/1)から5%mol(s/c 5/1)の範囲であり、例えば0.05(s/c 2000/1)から1%mol(s/c 100/1)の範囲であり、特に0.05(s/c 2000/1)から0.5%mol(s/c 200/1)の範囲であり得る。
【0032】
また、特定の添加剤、例えばトリエチルアミン、ピリジンまたはAsPhの使用によって、用いられる複分解触媒の性質に影響を与えることも可能である。
【0033】
本発明の交差複分解工程は、複分解触媒を一度に、または少しずつ添加することを含む。一つの特定の態様において、CHCl中の触媒の溶液(例えば0.05%mol)を、R1=OEtおよびR2=Prである式(II)のジエンに、30−50℃で、1から3時間に亘って、数回、例えば異なる量の4回に分けて、添加し得る。標準的な変換は、例えば4時間後に、異なる時間で、それぞれの触媒を添加した後の反応混合物をサンプリングすることによって観察され得る。非常に速い初期反応速度が観察され得る。変換の目的のためには、複分解触媒は一度に添加することが好ましい。
【0034】
交差複分解反応は、一般的に、0.5から48時間の反応時間後に完了する。反応完了後、式(III)の反応生成物は、結晶化、蒸留、抽出などを含む(これらに限定されない)、当業者に周知の幾つかの精製手順によって、反応混合物から分離され得る。例えば、反応生成物が揮発性であれば、生成物は、反応混合物から蒸留によって分離され得る。
【0035】
原則として、式(II)の化合物またはその塩の交差複分解反応は、一般式(III)のトリエンの全ての可能な立体異性体(E,E,E/Z,Z,Z/E,E,Z/E,Z,Z/Z,E,ZおよびE,Z,E)の混合物を提供し得る。本発明の交差複分解反応のE/Z選択性は、非常に高い。従って、さらなる態様において、本発明は、式(IIIa):
【化13】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
のE,E,E−トリエンまたはその塩の立体選択的合成方法を提供する。
【0036】
スキーム2において詳述している通り、一つの態様において、R1=OEtおよびR2=iPrである式(II)の化合物の6:1 E/Z混合物の交差複分解は、E,E,E:E,Z,E:E,E,Z比が67:5:28である、対応する式(III)の化合物を提供する。別の態様において、R1=OEtおよびR2=iPrである式(I)の化合物の20:1 E/Z混合物により、E,E,E:E,Z,E:E,E,Z比が87:5:8である対応する式(III)の化合物が提供される。
スキーム2
【化14】

【0037】
一般式(III)のトリエンの異性体混合物は、当業者に周知の異性化反応条件下に付される(例えばFeliu, A. L.; Seltzer, S. J. Org. Chem. 1985, 50, 447)。幾つかの反応条件が、特定の実施例に関して以下に例示されているが、一般的に適用可能であって、これらの例に限定されない。このような標準的異性化条件は、本発明の製造方法の使用によって得られる式(III)の化合物またはその塩の異性体の比をさらに変更する手段を提供し得る。一つの態様において、R1=NPrおよびR2=PrであるE体の式(II)の化合物の交差複分解により、例えばE,E,E:E,Z,E比が3:1である、対応する式(III)の化合物が提供され得る。得られた混合物を、ヘキサン中、ヨウ素で処理することにより、スキーム3で示した通り、例えばE,E,E:E,Z,E比が11:1である混合物が得られる。
スキーム3
【化15】

【0038】
別の態様において、R1=OEtおよびR2=Prである式(III)の化合物の異性体混合物を、ヨウ素で処理し、最初の混合物の組成(表1)に独立して、(E,E,E)/(E,E,Z)/(Z,E,Z)異性体の一貫した混合物、例えば4:4:1の混合物が提供される。
【表3】

最初の値は、特定のジアステレオアイソマーの初期パーセンテージを言い、二番目の値は、I/ヘキサン中で24時間撹拌した後の混合物中のジアステレオアイソマーのパーセンテージを言う。
【0039】
別の関連する局面において、本発明は、式(I):
【化16】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について上で定義した通りである。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、該製造方法が、式(III):
【化17】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を水素化して、式(I)の化合物またはその塩を得ることに関する。
【0040】
従って、本発明の製造方法の一つの態様は、前記の式(II)の化合物から得られる式(III)の化合物またはその塩をさらに反応させ、式(I)の化合物またはその塩を得る工程を含む。
【0041】
本発明は、従って、少なくとも1種の周期表のVIII族の遷移金属を活性な金属として含む(単独でまたは少なくとも1種の周期表のI族またはVIII族の遷移金属と共に)触媒の存在下で水素と接触させることによって、R1およびR2が式(I)について定義した通りである式(III)の化合物またはその塩を水素化する方法を提供する。特に、触媒は、例えば活性な金属として、ロジウムまたはルテニウムを含む。本発明の式(III)の化合物またはその塩の選択的水素化において、水素化触媒は、例えば、ルテニウム触媒、特に、次に示すルテニウム触媒である:
触媒1−9
【化18】

【表4】

ここで、BoPhozは、一般式(V)のリガンドを表し、ビノールは、2,2'−ジヒドロキシ−1,1'−ジナフチルを意味する。
【化19】

【0042】
Rh錯体におけるBoPhozリガンドの製造および使用は、Boaz, N. W.; Debenham, S. D.; Mackenzie, E. B.; Large, S. E. Org. Lett. 2002, 4, 2421; Boaz, N. W.; Debenham, S. D.; Large, S. E.; Moore, M. K. Tetrahedron: Asymmetry 2003, 14, 3575; Jia, X.; Li, X.; Lam, W. S.; Kok, S. H. L.; Xu, L.; Lu, G.; Yeung, C.-H.; Chan, A. S. C. Tetrahedron: Asymmetry 2004, 15, 2273 および Boaz, N. W.; Large, S. E.; Ponasik, J. A., Jr.; Moore, M. K.; Barnette, T.; Nottingham, W. D. Org. Process Res. Dev. 2005, 9, 472に記載されている。
【0043】
官能基化ケトン類の不斉な水素化のためのルテニウム錯体のBoPhozリガンドの使用は、以前に、Boaz, N. W.; Ponasik, J. A., Jr.; Large, S. E. Tetrahedron Lett. 2006, 47, 4033に記載されている。
【0044】
一つの態様において、本発明に用いられる水素化触媒は、[(S)-p-フルオロフェニルMeBoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl (2)、[(S)-3,5-ジフルオロフェニルMeBoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl (3)、[(S)-p-CF3フェニルMeBoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl (6)、[(R)-BnBoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl (7)、および、[(R)-フェネチル-(R)-BoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl (8)の群から選択され;特に、[(S)-3,5-ジフルオロフェニルMeBoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl (3)、および、[(R)-フェネチル-(R)-BoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl (8)である。
【0045】
該製造方法に典型的に用いられる触媒の量は0.01から10%molの範囲であり、一つの態様において0.05から5%molの範囲であり、別の態様において0.05から2%molの範囲であり、さらに別の態様において0.05から1%molの範囲であり得る。
【0046】
水素化は、1から400barの範囲の、一つの態様において、1から300barの範囲の、別の態様において、10から150barの範囲の水素圧で行われ得る。一つの態様において、反応温度は、20から200℃の範囲で、別の態様において、20から100℃の範囲で、さらなる態様において、20から80℃の範囲である。
【0047】
また、特定の添加剤、例えばトリエチルアミン、ナトリウム メトキシドまたはフルオロホウ酸の使用によって用いられる水素化触媒の性質に影響を与えることも可能である。
【0048】
水素化反応は、一般的に、1から48時間の反応時間後に完了する。反応完了後、反応生成物は、前述の通り、当業者に周知の幾つかの精製手順によって、反応混合物から分離され得る。
【0049】
別の関連する局面において、本発明は、式(I)
【化20】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について上で定義した通りである。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、該製造方法は、式(IIIa):
【化21】

[式中、R1およびR2は、式(I)について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を水素化して、式(I)の化合物またはその塩を得ることを含む方法に関する。
【0050】
一つの態様において、式(IIIa)の化合物またはその塩の水素化反応は、式(III)の化合物について上で記載した条件と同一の条件下で行う。
【0051】
一つの態様において、本発明は、R1=OHおよびR2=イソプロピルである式(IIIa)の化合物を水素化する方法を提供する。該新規のジカルボン酸は、本発明の一つの態様であり、これは、当業者に周知の方法および本明細書で記載された方法に従う、R1=OEtおよびR2=イソプロピルである式(IIIa)のトリエンエステルの加水分解反応によって得られる。該トリエンエステルは、上で詳述した交差複分解反応から得られる。特に、R1=OR3、例えばOEt、およびR2=イソプロピルである式(IIIa)の(E,E,E)−トリエンは、塩基性加水分解条件下で、対応する(E,E,E)−二酸に変換され得る。特に、該トリエンエステルは、例えば、THF/MeOHの1:1混合物に溶解し、塩基、例えば2M LiOHで処理し、60〜100℃、例えば80℃で一夜撹拌し、該(E,E,E)−二酸を得る(スキーム4)。
スキーム4
【化22】

【0052】
一般式(III)および(IIIa)の化合物の水素化反応のジアステレオ選択性は高い。一つの態様において、R1=OHおよびR2=イソプロピルである式(IIIa)の化合物の水素化反応は、例えば7:1のdl:メソで、対応する式(I)の化合物を提供し得る。例えば、当業者に周知の幾つかの手順によって、ジアステレオマーの塩の再結晶によって、(IB)−D,Lと(IB)−メソの分離が達成され得る(例えば Kozma, D. CRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation, CRC Press, 2002)。
【化23】

【0053】
従って、本発明は、式(III)のトリエン化合物またはその塩を、オレフィン水素化触媒の存在下で、化学選択的およびジアステレオ選択的方法で水素化し、式(I)の化合物またはその塩、特に式(Ia)の化合物またはその塩、あるいは、R1およびR2が前に定義した通りであり、特にR1およびR2置換基が前述の態様で記載された通りである式(Ib)の化合物またはその塩が得られる方法を提供する。
【0054】
一般的に、多重結合を含む化合物の選択的水素化は、興味深い。たとえ望ましい生成物が得られても、望ましくないより高次のまたは完全に飽和な生成物を伴って得られる。
【0055】
α,β−不飽和酸の選択的水素化方法は、文献で報告されている。BINAP-Ru(II) ジカルボキシレート錯体の使用による幾つかのα,β−不飽和カルボン酸の不斉水素化は、Noyori, R.; Ohta, M.; Hsiao, Y.; Kitamura, M.; Ohta, T.; Takaya, H. J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 7117; Ohta, T.; Takaya, H.; Kitamura, M.; Nagai, K.; Noyori, R. J. Org. Chem. 1987, 52, 3174; Ohta, T.; Takaya, H.; Noyori, R. Inorg. Chem. 1988, 27, 566; Ohta, T.; Takaya, H.; Noyori, R. Tetrahedron Lett. 1990, 31, 7189; Ashby, M. T.; Halpern, J. J. Am. Chem. Soc. 1991, 113, 589; Kitamura, M.; Tokunaga, M.; Noyori, R. J. Org. Chem. 1992, 57, 4053; Takaya, H.; Ohta, T.; Inoue. S.; Tokunaga, M.; Kitamura, M.; Noyori, R. Org. Synth. 1993, 72, 74 および Zhang, X.; Uemura, T.; Matsumura, K.; Sayo, N.; Kumobayashi, H.; Takaya, H. Synlett 1994, 501等の化学文献に記載されている。多数の新規のビアリールホスフィン・リガンドが、ここ10年の間で導入されており、α,β−不飽和酸の水素化の改善をもたらしている。P-Phos型のアトロプ異性体のビスホスフィン類は、特に良い結果であることが、Chan, A. S. C.; Chen, C.-C.; Yang, T. K.; Huang, J. H. Inog. Chim. Acta 1995, 234, 95; Chen, C.-C.; Huang, T.-T.; Ling, C.-W.; Cao, R.; Chan, A. S. C.; Wong, W. T. Inog. Chim. Acta 1998, 270, 247; Pai, C.-C.; Lin, C.-W.; Lin, C.-C.; Chen, C.-C.; Chan, A. S. C. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 11513; Qiu, L.; Qi, J.; Pai, C.-C.; Chan, S.; Zhou, Z.; Choi, M. C. K.; Chan, A. S. C. Org. Lett. 2002, 4, 4599 および Pai, C.-C.; Li, Y.-M.; Zhou, Z.-Y.; Chan, A. S. C. Tetrahedron Lett. 2002, 43, 2789の記載で示されている。α,β−不飽和ラクトン類およびα,β−不飽和エステル類の不斉水素化は、それぞれ、Ohta, T.; Miyake, T.; Seido, N.; Kumobayashi, H.; Takaya, H. J. Org. Chem. 1995, 60, 357 および Tang, W.; Wang, W.; Zhang, X. Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 2003, 42, 943等の化学文献に記載されている。α,β−不飽和ラクタム類の不斉水素化は、Schmid, R.; Broger, E. A.; Cereghetti, M.; Crameri, Y.; Foricher, J.; Lalonde, M.; Mueller, R. K.; Scalone, M.; Schoettel, G.; Zutter, U. Pure Appl. Chem. 1996, 68, 131等の化学文献に記載されている。
【0056】
本発明は、本明細書で記載された適切な水素化触媒を用いることによる、R1およびR2が式(I)について定義した通りであり、特にR1およびR2置換基が上記の態様において定義した通りである、式(III)のトリエンまたはその塩の化学選択的およびジアステレオ選択的水素化方法を提供する。
【0057】
式(III)のトリエンの水素化は、原則的に、スキーム5で示された幾つかの経路によって進められ得る。
スキーム5
【化24】

【0058】
それぞれ一つの二重結合の反応性と反応条件に依存して、生成物(I)または(VI)〜(IX)またはその混合物が得られる。式(III)のトリエンの“外側の”二重結合の化学選択的不斉還元は、例えば、ルテニウム触媒、特に少なくとも1個のBoPhozリガンドを含むルテニウム触媒の使用によって達成され得ることが本発明者らによって見出された。フェロセニルをベースとしたリガンドであるBoPhozのリガンドファミリーは、Boazらによって開発され(Boaz, N. W.; Large, S. E.; Ponasik, J. A., Jr.; Moore, M. K.; Barnette, T.; Nottingham, W. D. Org. Process Res. Dev. 2005, 9, 472)、高いエナンチオ選択的水素化反応について、重要な手段を提供することが示されている(Boaz, N. W.; Debenham, S. D.; Mackenzie, E. B.; Large, S. E. Org. Lett. 2002, 4, 2421)。
【0059】
本発明はまた、別の経路としての、R1およびR2が上で定義した通りである式(I)の化合物またはその塩の製造方法であって、式(IV):
【化25】

[式中、R1およびR2は、式(I)について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を交差複分解反応させ、式(I)の化合物またはその塩を得ることを含む方法に関する。
特に、R1およびR2は、前に記載した通りである。
【0060】
式(IV)の出発化合物またはその塩は、スキーム1で示されたケトン(1)のアルキル化によって、容易に得られる。
【化26】

【0061】
塩基、例えばジイソプロピルアミド リチウム、ヘキサメチルジシラザン リチウム、ヘキサメチルジシラザン ナトリウム、ヘキサメチルジシラザン カリウムまたは2,2,6,6−テトラメチルピペリジン リチウムの使用によって製造され得るケトン(1)のエノレートと、ハロゲン化アリル、例えば臭化アリルとの反応により、式(IV)の化合物が得られる。
【0062】
式(I)の化合物を製造するための複分解法の一つの特定の態様において、R1=(S)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノンである式(IV)の出発化合物は、該反応に従って製造され得る。得られた式(IV)の化合物を、交差複分解反応させ、対応する式(I)の化合物を提供する。式(IV)の化合物はまた、当業者に周知の方法に従って、例えばLiOH/Hでの処理によって加水分解し、続いて塩化チオニルで処理し、次にアルコール、例えばMeOHまたはEtOHと反応させることによって、例えばR1=OMeまたはOEtであるエステル誘導体に変換され得る。
【0063】
R1およびR2が上で定義した通りである式(IV)の化合物またはその塩の交差複分解反応は、特に、式(II)の化合物の態様で記載した条件と同じ条件下で起こる。従って、前述の交差複分解法で記載された特定の態様もまた、この別の交差複分解法の特定の態様である。一つの態様において、ルテニウム・アルキリデン触媒は、触媒2a、2b、2d−f、3a−c、4a−b、5b、6aから選択され;特に、2d、2f、4a、5bおよび6から選択される。
【0064】
本発明のさらに別の重要な局面は、複分解工程が分子内で起こる、式(I)の化合物またはその塩の製造方法に関する。従って、第1の複分解法の分子内変法もまた、本発明の一つの態様である。特に、本発明はまた、R1およびR2が前記の通りである式(I)の化合物またはその塩の製造方法であって、該方法が、
a) 式(IIa):
【化27】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を、交差複分解反応させ、式(IIIb):
【化28】

[式中、LおよびR2は、式(IIa)について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を得ること;
b) 式(IIIb)の化合物またはその塩を水素化し、続いて加水分解するか、あるいは、加水分解し、続いて水素化するかの何れかによって、式(IIIb)の化合物またはその塩を式(I)の化合物またはその塩に変換すること;
の1個以上の工程を含む方法に関する。
【0065】
別の態様において、該製造方法の第2工程が、式(IIIb)の化合物またはその塩を加水分解し、続いて水素化して、式(I)の化合物またはその塩を得ることを含む。
【0066】
この方法の一つの特定の態様において、スキーム6に示した通り、4個の工程プロトコルに従って、R1=OHおよびR2=イソプロピルである式(II)の出発化合物を式(III)の化合物に変換し得る。まず始めに、式(III)の化合物を、例えば塩化オキサリルで処理することによって、式(III)の酸塩化物に変換し得る。次に、該酸塩化物を、2,2'−ビフェニルジオールと反応させ、対応する式(IIa)の化合物を得て、例えばGrubbs第2世代触媒の使用によって、これを閉環複分解反応させ、式(IIIb)の化合物を得ることができる。最後に、当業者に周知の方法に従って、式(IIIb)の化合物を塩基で加水分解し、R1=OHおよびR2=イソプロピルである式(III)の化合物を得ることができる。該化合物の式(I)の化合物への変換は、前記の水素化反応によって達成され得る。
スキーム6
【化29】

【0067】
R1およびR2が式(I)の化合物について上で定義した通りである式(IIa)の化合物またはその塩の閉環複分解反応は、特に、式(II)の化合物について記載された反応条件と同じ反応条件下で起こる。従って、第1の交差複分解方法で記載された特定の態様はまた、この第1の閉環複分解法の特定の態様である。一つの態様において、ルテニウム・アルキリデン触媒がGrubbs第2世代触媒である。
【0068】
同様に、第2の複分解法の分子内変法はまた、本発明の一つの態様である。特に、本発明はまた、R1およびR2が前記の通りである式(I)の化合物またはその塩の製造方法であって、該方法は、
a) 式(IVa):
【化30】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を交差複分解反応させ、式(Ic):
【化31】

[式中、LおよびR2は、式(IVa)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を得ること;
b) 加水分解反応によって、式(Ic)の化合物またはその塩を式(I)の化合物またはその塩に変換すること;
の1個以上の工程を含む方法に関する。
【0069】
R1およびR2が式(I)について上で定義した通りである式(IVa)の化合物またはその塩の閉環複分解反応は、特に、式(IV)の化合物について記載された反応条件と同じ反応条件下で起こる。従って、第2の交差複分解法で記載された特定の態様はまた、この第2の閉環複分解法の特定の態様である。一つの態様において、ルテニウム・アルキリデン触媒は、2aである。
【0070】
式(IIa)、(IIIb)、(IVa)および(Ic)の化合物におけるリンカーは、本明細書で定義した通りであり、例えば、
a) 非置換または置換C1−6アルキレン鎖、特にC4−6アルキレン鎖;
b) 非置換または置換C4−8シクロアルキレン、特にC6−8シクロアルキレン;
c) 非置換または置換ヘテロシクリレン、特にN−(非置換または置換)アリールピロリジニレン、または、N−(非置換または置換)アリールピロリジンジオニレン;
d) 式(X):
−(CH)−A−(CH)−B−(CH)− (X)
[式中、
k、lおよびnは、独立して、0、1または2であり;
mは、0または1であり;
AおよびBは、独立して、非置換または置換アリールまたはヘテロアリールであり、例えばフェニルであり;独立して、オルト、パラまたはメタ位で結合しており、特にメタ位またはオルト位で結合している。]
のビラジカル;
からなる群から選択される。一つの態様において、式(X)のビラジカルは、−A−(CH)−B−または−(CH)−A−(CH)−であり、特に−CH−A−CH−または−A−または−A−B−である。
【0071】
特に、式(IIa)、(IIIb)、(IVa)および(Ic)の化合物におけるリンカーは、以下の部分:
【化32】

[式中、
アスタリスク(*)は、1つの酸素原子への結合点を表し;
R10は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリールまたはC3−8シクロアルキルであり、それぞれは非置換であるか、または、ハロ、ジアルキルアミノ、ニトロ、ハロ−C−C−アルキル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、ハロ−C−C−アルコキシ、例えばトリフルオロメトキシ、またはC−C−アルコキシ−C−C−アルコキシによって置換されており;
R11は、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリールまたはC3−8シクロアルキルであり、それぞれは非置換であるか、または、ハロ、ジアルキルアミノ、ニトロ、ハロ−C−C−アルキル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、ハロ−C−C−アルコキシ、例えばトリフルオロメトキシ、およびC−C−アルコキシ−C−C−アルコキシによって置換されており;
R12およびR13は、水素、ハロ、ジアルキルアミノ、ニトロ、ハロ−C−C−アルキル、C−C−アルキル、C−C−アルコキシ、ハロ−C−C−アルコキシ、例えばトリフルオロメトキシ、およびC−C−アルコキシ−C−C−アルコキシの群から独立して選択される。]
から選択される。
【0072】
上記のオレフィン複分解法は、それぞれ、レニン阻害剤、例えばアリスキレンを製造する方法において、個別に用いられ得る。
【0073】
式(I)の化合物またはその塩は、アリスキレンまたはその塩に変換され得る。スキーム7に示した通り、式(I)の出発化合物は、式(XIV)の化合物に変換され得る。
スキーム7
【化33】

【0074】
スキーム7に従って、R1およびR2が前に定義した通りである式(I)の化合物またはその塩は、当業者に周知の加水分解または脱保護法によって、式(Ic)の化合物に変換され得る。該方法の標準的な条件は、J. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973, in T. W. Greene および P. G. M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Third edition, Wiley, New York 1999 および Richard C. Larock, “Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations”, Second Edition, Wiley-VCH Verlag GmbH, 2000の関連の章に記載されている。次いで、式(Ic)の化合物またはその塩は、例えばMeIおよびKCO(R3=Me)で処理し、続いてN−ブロモスクシンイミドで処理することによって、R3が前に定義した通りである式(XI)の化合物またはその塩に変換され得る。次に、例えばアジ化ナトリウムの使用によって、ラクトン化および続くアジドによるブロミドの置換によって、式(XIII)のアジドラクトンまたはその塩が得られる。例えばパラジウム/炭素の存在下で水素による、式(XIII)のアジドラクトンまたはその塩の水素化によって、式(XIV)のラクトン−ラクタムまたはその塩が得られる。最後に、R2が式(I)の化合物について定義した通りである、特にR2がイソプロピルである式(XIV)のラクトン−ラクタムまたはその塩は、レニン阻害剤、特に2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド骨格を含むレニン阻害剤、例えばWO 2007/045420に、特にその請求項および実施例に記載されたアリスキレンまたはその塩の合成に用いられ得る。
【0075】
あるいは、式(I)の化合物またはその塩は、スキーム8に記載された通りに、重要な式(XIV)のラクトン−ラクタムまたはその塩に変換され得る。
スキーム8
【化34】

【0076】
特に、R1およびR2が前に定義した通りである式(I)の化合物またはその塩を、始めに、例えばSharpless条件下でアミノヒドロキシル化させる(M. A. Andersson, R. Epple, V. V. Fokin and K. B. Sharpless, Angew. Chem. Int. Ed., 41, 472, 2002)。アミノヒドロキシル化後、得られたR1およびR2が上に定義した通りである式(XV)のアミノアルコールまたはその塩を、加水分解または脱保護を経て、式(XIV)のラクトン−ラクタムまたはその塩に変換し得る。R1およびR2が前に定義した通りである式(XV)の化合物またはその塩の脱保護工程は、標準的な条件下で、参考文献、例えばJ. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973の関連の章において、T. W. Greene and P. G. M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Third edition, Wiley, New York 1999において記載された条件下で行われ得る。R1およびR2が前に定義した通りである式(XV)の化合物またはその塩の加水分解工程は、参考文献、例えばRichard C. Larock, “Comprehensive Organic Transformations: A Guide to Functional Group Preparations”, Second Edition, Wiley-VCH Verlag GmbH, 2000の関連の章に記載された条件下で行われ得る。
【0077】
一つの態様において、式(XI)〜(XV)の化合物またはその塩は、次に示す立体化学を有する:
【化35】

式(XIa)〜(XVa)の化合物についての基R1、R2およびR3は、上で定義した通りである。特に、R3はメチルである。特に、R2はイソプロピルである。
【0078】
別の態様において、式(XI)〜(XV)の化合物またはその塩は次に示す立体化学を有する:
【化36】

式(XIb)−(XVb)の化合物についての基R1、R2およびR3は、上で定義した通りである。特に、R3はメチルである。特に、R2はイソプロピルである。
【0079】
特定の態様において、スキーム7または8における式(I)の出発化合物は、(S,S)−(E)−2,7−ジイソプロピル−4−オクテン−1,8−二酸またはその塩[すなわち、R1=OHおよびR2=イソプロピルである式(Ib)の化合物またはその塩]である。
【0080】
別の態様において、本発明は、式(XVI):
【化37】

[式中、R2は、式(I)の化合物について定義した通りであり、R14は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−6ハロゲンアルキル、C1−6アルコキシ−C1−6アルキルオキシまたはC1−6アルコキシ−C1−6アルキルであり;R15は、ハロゲン、ヒドロキシル、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシである。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、
・本明細書で定義した式IIの化合物を、上で定義した通り処理することによる、本明細書で定義した式IIIの化合物の製造;
・本明細書で定義した式IIIの化合物を、上で定義した通り処理することによる、本明細書で定義した式Iの化合物の製造;
・本明細書で定義した式Iの化合物を上で定義した通り処理することによる、上記の式XVIの化合物、特にアリスキレンである式XVIの化合物の製造;
の1個以上の工程を独立してまたは何れかの組み合わせで含む製造方法に関する。
【0081】
さらに別の態様において、本発明は、上で定義した式(XVI)の化合物の製造方法であって、
・本明細書で定義した式IIaの化合物を、上で定義した通り処理することによる、本明細書で定義した式IIIbの化合物の製造;
・本明細書で定義した式IIIbの化合物を、上で定義した通り処理することによる、本明細書で定義した式Iの化合物の製造方法;
・本明細書で定義した式Iの化合物を、上で定義した通り処理することによる、上記の式XVIの化合物、特にアリスキレンである式XVIの化合物の製造;
の1個以上の工程を独立してまたは何れかの組み合わせで含む製造方法に関する。
【0082】
また、別の態様において、本発明は、上で定義した式(XVI)の化合物の製造方法であって、
・本明細書で定義した式IVの化合物を、上で定義した通り処理することによる、本明細書で定義した式Iの化合物の製造;
・本明細書で定義した式Iの化合物を、上で定義した通り処理することによる、上記の式XVIの化合物、特にアリスキレンである式XVIの化合物の製造;
の1個以上の工程を独立してまたは何れかの組み合わせで含む製造方法に関する。
【0083】
さらなる態様において、本発明は上で定義した式(XVI)の化合物の製造方法であって、
・本明細書で定義した式IVaの化合物を、上で定義した通り処理することによる、本明細書で定義した式Icの化合物の製造;
・本明細書で定義した式Icの化合物を、上で定義した通り処理することによる、本明細書で定義した式Iの化合物の製造;
・本明細書で定義した式Iの化合物を、上で定義した通り処理することによる、上記の式XVIの化合物、特にアリスキレンである式XVIの化合物の製造;
の1個以上の工程を独立してまたは何れかの組み合わせで含む製造方法に関する。
【0084】
本発明の一つの局面によると、薬学的に活性な化合物の製造における有益な出発物質として用いられ得る別の化合物の製造における中間体として有用な、式(XI)、(XII)、(XIII)および(XV)の化学化合物またはその塩が提供される。特に、式(XI)、(XII)、(XIII)および(XV)の化合物またはその塩は、レニン阻害剤、特に2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイル アミド骨格を含むレニン阻害剤、例えばアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩の製造における中間体である、式(XIV)の化合物またはその塩の製造における中間体として有用である。式(XIa)、(XIIa)、(XIIIa)および(XVa)の化合物またはその塩は、本発明の態様である。式(XIb)、(XIIb)、(XIIIb)および(XVb)の化合物またはその塩は、本発明のさらなる態様である。
【0085】
本発明のさらに別の重要な局面は、式(XIV)の化合物またはその塩の新規の製造方法に関する。一つの態様において、本発明は、式(XIVa)の化合物またはその塩の製造方法に関し、別の態様において、式(XIVb)の化合物またはその塩の製造方法に関する。
【0086】
また、本発明のさらなる局面によると、薬学的に活性な化合物の製造における有益な出発物質として用いられ得る別の化合物の製造における中間体として有用な、式(IIa)、(IIIb)、(IVa)および(Ic)の化学化合物またはそれらの塩が提供される。特に、式(IIa)、(IIIb)、(IVa)および(Ic)の化合物またはそれらの塩は、レニン阻害剤、特に2,7−ジアルキル−4−ヒドロキシ−5−アミノ−8−アリール−オクタノイルアミド骨格を含むレニン阻害剤、例えばアリスキレンまたはその薬学的に許容される塩の製造における中間体である、式(I)の化合物またはその塩の製造における中間体として有用である。
【0087】
本発明の新規中間体および合成工程を記載するために用いられる種々の用語の定義を以下に挙げる。本明細書で用いられる1個以上のまたは全ての一般的な表現または記号を置き換え、その結果、本発明の態様を得ることによって、これらの定義は、特に、具体例で個別にまたはより大きなグループの一部として限定されない限り、本明細書の全体で用いられる用語に適用する。
【0088】
用語“C−C−”は、7個以下の、特に4個以下の炭素原子を含む部分と定義し、該部分は、分枝鎖(1箇所以上)または直鎖であり、末端または末端以外の炭素を介して結合している。
【0089】
基としてまたは基の一部としての用語アルキルは、7個以下の炭素原子を有する部分、すなわちC1−7アルキル、特に4個以下の炭素原子を有する部分、すなわちC1−4アルキルと定義し、該部分は、分枝鎖(1箇所以上)または直鎖であり、末端または末端以外の炭素原子を介して結合している。低級またはC−C−アルキルは、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシルまたはn−ヘプチルであり、特にC−C−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、sec−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルである。イソプロピルが非常に好ましい。
【0090】
分枝鎖のアルキルは、特に、3から6個のC原子を含む。その例は、i−プロピル、i−およびt−ブチル、および、ペンチルおよびヘキシルの分枝異性体である。
【0091】
ハロ−C−C−アルキルは、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、特に1から4個のC原子を含み、例えば1または2個のC原子を含む。その例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2−クロロエチルおよび2,2,2−トリフルオロエチルである。
【0092】
基としてまたは基の一部としての用語“C3−8シクロアルキル”は、8個以下の、特に6個以下の炭素原子を有するシクロアルキル部分と定義する。該シクロアルキル部分は、例えば単環式または二環式であり、特に単環式であり、これらは、1個以上の二重結合および/または三重結合を含んでいてもよく、またこれらは、非置換であるか、または、1個以上の、例えば1から4個の置換基によって置換されている。その態様は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルを含み、これらは、非置換であるか、または置換されている。置換基は、例えば、ヒドロキシル、ハロ、オキソ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオール、アルキルチオ、ニトロ、ヒドロキシ−C−C−アルキル、ハロ−C−C−アルキル、C−C−アルキル、C−C−アルカノイル、例えばアセチル、C−C−アルコキシ、ハロ−C−C−アルコキシ、例えばトリフルオロメトキシ、ヒドロキシ−C−C−アルコキシ、およびC−C−アルコキシ−C−C−アルコキシ、カルバモイルおよびシアノの群から選択される。
【0093】
基としてまたは基の一部としての、非置換または置換アリールは、例えば、6から22個の炭素原子を有する単環式または二環式アリールであり、例えばフェニル、インデニル、インダニルまたはナフチルであり、特にフェニルであり、これらは、非置換であるか、または、特にシクロアルキルについて上で記載された置換基から独立して選択される、1個以上の、例えば1から3個の置換基によって置換されている。
【0094】
置換フェニル−またはナフチル−C−C−アルキルは、フェニル−またはナフチル−が、例えばシクロアルキルについて上で記載された置換基から独立して選択される、1個以上、例えば1から3個の置換基によって置換されている、フェニル−またはナフチル−C−C−アルキルを言う。
【0095】
R4およびR5によって形成される3から7員の窒素含有飽和炭化水素環は、非置換であっても置換されていてもよく、例えば非置換であるか、または、特にシクロアルキルについての置換基として上で記載されたものから独立して選択される、1個以上の、例えば1から4個の置換基によって置換されており、例えば、非置換であるか、または、例えば、ヒドロキシ、ハロ、例えばクロロ、C−C−アルキル、例えばメチル、シアノ、ヒドロキシ−C−C−アルキル、ハロ−C−C−アルキル、C−C−アルカノイル、例えばアセチル、C−C−アルコキシ、ハロ−C−C−アルコキシ、例えばトリフルオロメトキシ、ヒドロキシ−C−C−アルコキシ、およびC−C−アルコキシ−C−C−アルコキシから選択される、4個までの置換基、例えば1個の置換基によって置換されている、4員から7員の環であり;特に、非置換であるか、または、C−C−アルキル、アリール−C−C−アルキル、ヒドロキシル、ハロ、ヒドロキシ−C−C−アルキル、ハロ−C−C−アルキルおよびシアノから選択される4個までの基によって置換されている、R4およびR5によって形成されるオキサゾリジノンまたはピペリジン環であり;一つの態様において、非置換であるか、または、C−C−アルキル、置換アリール−C−C−アルキル、ヒドロキシル、ハロ、ヒドロキシ−C−C−アルキル、ハロ−C−C−アルキルおよびシアノから選択される4個までの基によって置換されている、R4およびR5によって形成されるオキサゾリジノンであるか、あるいは、非置換であるか、または、C−C−アルキル、アリール−C−C−アルキル、ヒドロキシル、ハロ、ヒドロキシ−C−C−アルキル、ハロ−C−C−アルキルおよびシアノから選択される4個までの基によって置換されている、R4およびR5によって形成されるピペリジンである。
【0096】
シリルは、−SiRR'R” (式中、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルである。)である。
【0097】
アルカノイルは、例えばC−C−アルカノイルであり、例えば、アセチル[−C(=O)Me]、プロピオニル、ブチリル、イソブチリルまたはピバロイルであり、特にC−C−アルカノイル、例えばアセチルである。
【0098】
基または基の一部であるアルコキシは、例えば、C−C−アルコキシであり、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシであり、また、対応するペンチルオキシ、ヘキシルオキシおよびヘプチルオキシ基を含み、特にC−Cアルコキシである。アルコキシは、直鎖であっても分枝であってもよく、特に1から4個のC原子を含む。その例は、メトキシ、エトキシ、n−およびi−プロピルオキシ、n−、i−およびt−ブチルオキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシである。
【0099】
ハロ−C−C−アルコキシは、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。その例は、トリフルオロメトキシおよびトリクロロメトキシである。
【0100】
アルコキシアルキルは、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。アルコキシ基は、例えば、1から7個の、特に1から4個のC原子を含み、そのアルキル基は、例えば1から7個の、特に1から4個のC原子を含む。その例は、メトキシメチル、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、5−メトキシペンチル、6−メトキシヘキシル、エトキシメチル、2−エトキシエチル、3−エトキシプロピル、4−エトキシブチル、5−エトキシペンチル、6−エトキシヘキシル、プロピルオキシメチル、ブチルオキシメチル、2−プロピルオキシエチルおよび2−ブチルオキシエチルである。
【0101】
アルキルアミノおよびジアルキルアミノは、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。そのアルキル基は、例えば、1から7個の、特に1から4個のC原子を含む。幾つかの例は、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、およびジエチルアミノである。
【0102】
アルキルチオは、直鎖であっても分枝鎖であってもよい。そのアルキル基は、例えば、1から7個の、特に1から4個のC原子を含む。幾つかの例は、メチルチオおよびエチルチオである。
【0103】
1−6アルキレンは、C1−6アルキルから誘導される二価の基であり、特に、C−C−アルキレンであるか、あるいは、1個以上の、例えば、1個または2個のC=C (これらは、アリールまたはヘテロアリール部分の一部であってもよい)、O、NRx (式中、RxはC1−7アルキル、非置換または置換フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、非置換または置換アリール、または、非置換または置換C3−8シクロアルキルであり、ここで、置換は、シクロアルキルについて上で記載された置換基から独立して選択される、1個以上の、例えば1から3個の置換基による置換を言う。)、または、Sによって隔てられているC−C−アルキレンである。C1−6アルキレンは、非置換であっても、特に、シクロアルキルについて上で記載された置換基から独立して選択される、1個以上の、例えば1から3個の置換基によって置換されていてもよい。
【0104】
4−8シクロアルキレンは、C4−8シクロアルキルから誘導される二価の基であり、特に、C−C−アルキレンであるか、あるいは、1個以上の、例えば1個または2個の、C=C (これらは、アリールまたはヘテロアリール部分の一部であってもよい。)、O、NRx (式中、Rxは、C1−7アルキル、非置換または置換フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、非置換または置換アリール、または、非置換または置換C3−8シクロアルキルであり、ここで、置換は、特にシクロアルキルについて上で記載された置換基から独立して選択される、1個以上の、例えば1から3個の置換基による置換を言う。)、または、Sによって隔てられているC−C−アルキレンである。C4−8シクロアルキレンは、非置換であっても、特にシクロアルキルについて上で記載された置換基から独立して選択される、1個以上の、例えば1から3個の置換基によって置換されていてもよい。
【0105】
ヘテロシクリレンは、本明細書で定義したヘテロシクリルから誘導される二価の基であり、特にN−(非置換または置換)アリールピロリジニレンまたはN−(非置換または置換)アリールピロリジンジオニレンである。
【0106】
上記の式において、
【化38】

は、共有結合を表し、それぞれのオレフィンの(E)体の立体異性体および(Z)体の立体異性体を含む。
【0107】
用語d、lおよびメソは、Gutsche, C. D.; Pasto, D. J. Fundamentals of Organic Chemistry, Prentice-Hall, Inc., Englewood Cliffs, New Jersey, 1975 および Eliel, E. L.; Wilen, S. H. Stereochemistry of Organic Compounds, John Wiley & Sons, Inc. 1994による、立体表記命名法に従って、本明細書で用いられる。
【0108】
ハロまたはハロゲンは、例えばフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードであり、特にフルオロ、クロロまたはブロモであり;ハロが記載されるとき、これは、例えばハロ−C−C−アルキルにおいて、例えばトリフルオロメチル、2,2−ジフルオロエチルまたは2,2,2−トリフルオロエチルにおいて、1個以上(例えば3個まで)のハロゲン原子が存在することを意味する。
【0109】
非置換または置換ヘテロシクリルは、単環式または多環式であり、例えば単環式、二環式または三環式、例えば単環式の、不飽和、部分的に飽和、飽和の環系または芳香環系であり、例えば3から22個(特に3から14個)の環原子を有し、かつ、窒素、酸素、硫黄、S(=O)−またはS−(=O)から独立して選択される、1個以上の、例えば1から4個のヘテロ原子を有し、また、非置換であるか、または、シクロアルキルについて上で記載された置換基から独立して選択される、1個以上の、例えば3個までの置換基によって置換されている。ヘテロシクリルが芳香環系であるとき、それは、ヘテロアリールとも言われる。
【0110】
アルキレン鎖、C4−8シクロアルキレン、ヘテロシクリレンは、それぞれ、C1−7アルキル、C4−8シクロアルキルおよびヘテロシクリルから誘導される二価の基であり、非置換であるか、あるいは、例えばシクロアルキルについて上で記載された置換基から独立して選択される、1個以上の、例えば3個までの置換基によって置換されている。
【0111】
塩は、特に、薬学的に許容される塩であるか、あるいは、一般的に、当業者が容易に理解する化学的理由のために除外されない限り、本明細書で記載された中間体の全ての塩である。例えば水溶液中で4から10のpH範囲で、少なくとも部分的に遊離された形態で存在し得る塩形成基、例えば塩基性基または酸性基が存在するとき、塩が形成され得るか、あるいは、例えば固体中、特に結晶の形態で単離され得る。
【0112】
このような塩は、塩基性窒素原子(例えばイミノまたはアミノ)を有する本明細書で記載された化合物または何れかの中間体から、例えば酸付加塩として、例えば有機酸または無機酸との酸付加塩として、特に薬学的に許容される塩として形成される。適当な無機酸は、例えば、ハロゲン酸、例えば塩酸、硫酸、またはリン酸である。適当な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、アミノ酸、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、安息香酸、メタン−もしくはエタン−スルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−もしくはN−プロピル−スルファミン酸、または、他の有機プロトン酸、例えばアスコルビン酸である。
【0113】
負電荷を有する基、例えばカルボキシまたはスルホが存在するとき、塩はまた、塩基と形成され、例えば金属塩またはアンモニウム塩、例えばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウムもしくはカルシウムの塩、または、アンモニアとのアンモニウム塩、または適当な有機アミン類、例えば第3級モノアミン類、例えばトリエチルアミン、または、トリ(2−ヒドロキシエチル)アミン、またはヘテロ環塩基、例えばN−エチル−ピペリジンもしくはN,N'−ジメチルピペラジンとの塩である。
【0114】
塩基性基と酸性基が同じ分子中に存在するとき、本明細書で記載された何れの中間体も、内部塩を形成し得る。
【0115】
本明細書で記載された中間体の何れかを単離または精製する目的のために、薬学的に許容されない塩、例えばピクリン酸塩または過塩素酸塩を使用することも可能である。
【0116】
例えば化合物またはその塩の精製または同定における、遊離形およびその塩形(中間体として用いられ得る塩を含む)の化合物と中間体の間の密接な関係を考慮すると、前記および後記の“化合物”、“出発物質”および“中間体”という記載は何れも、適切かつ便宜的な場合に、そして明確に特記されない限り、1種以上のこれらの塩、または、対応する遊離化合物、中間体または出発物質とそれらの1種以上の塩の混合物(これらは、それぞれ全ての溶媒和物または1種以上のその塩を含むことを意図している。)も指すものと理解されるべきである。異なる結晶形を得ることも可能であり、これもまた含まれる。
【0117】
化合物、出発物質、中間体、医薬製剤、疾患、障害などについて複数形を用いるとき、これは、1種または(特に)1種以上の化合物、塩、医薬製剤、疾患、障害などを意味することを意図しており、単数形または不定冠詞(“a”、“an”)を用いるとき、これは、複数を除外することを意図しておらず、単に好ましくは単数であることのみを意図している。
【0118】
下記の実施例は、本発明を説明するために提供され、本発明の範囲を限定しないが、一方で、これらは、アリスキレンまたはその塩の反応工程、中間体および/または製造方法の特定の態様を表す。
【0119】
【表5】

【表6】

【実施例】
【0120】
3−ヒドロキシ−2−イソプロピル−4−ペンテン酸エチル(2A)
【化39】

乾燥THF(140ml)中のジイソプロピルアミン(33.6ml, 240mmol)の溶液に、撹拌しながら、−78℃で、n−BuLi(138ml, ヘキサン中1.6M, 220mmol)を添加し、該溶液を0℃で30分間撹拌する。次いでイソ吉草酸エチル(30ml, 200mmol)を−78℃で加え、該溶液を、さらに30分間この温度で撹拌する。アクロレイン(14.7ml, 220mmol)を、−78℃で加え、該混合物をさらに1時間撹拌する。次いで、飽和水性NHCl(500ml)を添加することによって、該溶液をクエンチし、室温まで温める。水相をEtOAc(500ml)で抽出し、合わせた有機相を、水で、そして塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、蒸発乾固させ、2Aを褐色の油状物として得る。これを次の工程に直接用いる。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.90 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 0.92 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 1.20 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 2.0-2.1 (m, 1H), 2.35 (t, 1H, J = 6.8 Hz), 4.0-4.1 (m, 2H), 4.33 (t, J = 6.7 Hz, 1H), 5.11 (d, 1H, J = 10.4 Hz), 5.23 (dt, 1H, J = 17.2, 1.2 Hz), 5.89 (ddd, 1H, J = 17.1, 10.4, 6.7 Hz) ppm.
【0121】
2−イソプロピル−3−メタンスルホニルオキシ−4−ペンテン酸エチル(3A)
【化40】

乾燥THF(500ml)中の2A(37.2g, 200mmol)の溶液に、撹拌しながら、0℃で、連続して、EtN(59.6ml, 420mmol)および塩化メタンスルホニル(17.2ml, 220mmol)を加える。該混合物を室温で1時間撹拌し、次いでEtOAc(500ml)で希釈し、水で、そして塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、蒸発乾固し、3Aを褐色の油状物として得る。これをさらに精製することなく次の工程に用いる。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.91 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 0.94 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 1.19 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 1.9-2.1 (m, 1H,), 2.59 (dd, 1H, J = 8.2), 2.92 (s, 1H,), 4.08 (q, 2H, J = 7.1 Hz), 5.18 (t, J = 8.3 Hz, 1H), 5.35 (d, 1H, J = 10.3 Hz), 5.43 (d, 1H, J = 17.2 Hz), 5.98 (ddd, 1H, J = 17.2, 10.3, 8.5 Hz) ppm.
【0122】
(E)−2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸エチル(IIA)
【化41】

NaOMe(400ml, MeOH中1M, 400mmol)を、乾燥THF(1L)中の3A(52.8g, 200mmol)の溶液に加え、該混合物を室温で一夜撹拌する。次いで、該溶液をEtOAc(1L)で希釈し、水で、そして塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、蒸発させ、褐色の油状物を得る。55〜58℃で、250mTorrで蒸留し、IIAを明黄色の油状物として得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 1.14 (d, 6H, J = 7.0 Hz), 1.25 (t, 3H, J = 7.1 Hz), 3.00 (septuplet, 1H, J = 7.0 Hz), 4.13 (q, 2H, J = 7.1 Hz), 5.35 (d, 1H, J = 10.0 Hz), 5.47 (d, 1H, J = 16.6 Hz), 6.68 (ddd, 1H, J = 16.6, 11.4, 10.0 Hz), 6.94 (d, 1H, J = 11.4 Hz) ppm
【0123】
(E)−2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸(IIB)
【化42】

THF:MeOHの1:1混合物(12ml)中の(E)−2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸エチル(IIA)(2.02g, 12mmol)の溶液を、2M LiOH水溶液(12ml, 24mmol)で処理し、80℃で一夜撹拌する。室温まで冷却した後、反応混合物を水(12ml)で希釈し、MTBEで洗浄する。次いで、1M KHSOを添加することによって水相を酸性にし、MTBE(3×)で抽出する。合わせた有機相を乾燥し(MgSO)、蒸発させ、(E)−2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸(IIB)を油状物として得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 1.16 (d, 6H, J = 7.0 Hz,), 3.01 (septuplet, 1H, J = 7.0 Hz), 5.42 (d, 1H, J = 10.3 Hz), 5.53 (d, 1H, J = 16.7 Hz), 6.71 (ddd, 1H, J = 16.7, 11.5, 10.3 Hz), 7.11 (d, 1H, J = 11.5 Hz) ppm.
【0124】
(E)−2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸ジイソプロピルアミド(IIC)
【化43】

CHCl(15ml)中の(E)−2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸(IIB)(1.0g, 7.18mmol)の溶液を、1滴のDMFで、続いて塩化オキサリル(0.93ml, 10.8mmol)で処理する。室温で1時間撹拌した後、該混合物を0℃まで冷却し、トリエチルアミン(1.5ml, 10.8mmol)を、続いてジイソプロピルアミン(1.5ml, 10.8mmol)をゆっくりと加える。次いで該混合物を室温まで温め、さらに1時間撹拌し、飽和水性NaHCO(10ml)を添加することによってクエンチする。水相をMTBE(3×)で抽出し、10%クエン酸水溶液で、そして水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、蒸発させ、(E)−2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸ジイソプロピルアミド(IIC)を、単一の幾何異性体として得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 1.01 (brs, 6H), 1.08 (d, 6H, J = 7.0 Hz), 1.38 (brs, 6H), 2.92 (septuplet, 1H, J = 7.0 Hz), 3.34 (brs, 1H), 4.05 (brs, 1H), 5.1-5.2 (m, 2H), 5.75 (d, 1H, J = 9.0 Hz), 6.5-6.6 (m, 1H) ppm.
【0125】
(E)−2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸ジブチルアミド(IID)
【化44】

化合物IICについて前述した手順に従って、(E)−2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸(IIB)(1.0g, 7.18mmol)を、アミド(IID)に変換し得る。これは、12:1 E/Z混合物として得られる。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.7-0.9 (m, 6H), 1.08 (d, 6H, J = 7.0 Hz), 1.1-1.3 (m, 4H), 1.3-1.5 (m, 4H), 2.92 (septuplet, 1H, J = 7.0 Hz), 3.28 (brs, 2H), 3.19 (brs, 2H), 5.1-5.2 (m, 2H), 5.79 (d, 1H, J = 11.0 Hz), 6.5-6.6 (m, 1H) ppm.
【0126】
(E)−2−イソプロピル−1−ピペリジン−1−イル−2,4−ペンタジエン−1−オン(IIE)
【化45】

化合物IICについて前述した手順に従って、(E)−2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸(IIB)(660mg, 4.71mmol)を、アミド(IIE)に変換し得る。これは、11:1 E/Z混合物として得られる。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.9-1.2 (m, 6H), 1.3-1.6 (m, 6H), 2.93 (septuplet, 1H, J = 6.9 Hz), 3.38 (brs, 2H), 3.52 (brs, 2H), 5.16 (d, 1H, J = 10.0 Hz), 5.19 (d, 1H, J = 16.7 Hz), 5.78 (d, 1H, J = 11.0 Hz), 6.57 (ddd, 1H, J = 16.7, 11.0, 10.0 Hz) ppm.
【0127】
(E)−2−イソプロピル−1−トリメチルシラニル−2,4−ペンタジエン−1−オン(IIF)
【化46】

塩化トリメチルシリル(0.7ml, 5.5mmol)を、CHCl(15ml)中のカルボン酸(IIB)(700mg, 5mmol)およびピリジン(0.5ml, 6mmol)の溶液に、0℃でゆっくりと加える。次いで、該混合物を室温まで温め、一夜撹拌する。溶媒を減圧下で除去した後、次いで粗製の物質をMTBE(15ml)に溶解し、濾過し、真空下で蒸発させ、(E)−2−イソプロピル−1−トリメチルシラニル−2,4−ペンタジエン−1−オン(IIF)を得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.17 (s, 9H), 1.04 (d, 6H, J = 7.0 Hz), 2.89 (septuplet, 1H, J = 7.0 Hz), 5.27 (d, 1H, J = 10.0 Hz), 5.39 (d, 1H, J = 16.7 Hz), 6.71 (ddd, 1H, J = 16.7, 11.5, 10.0 Hz), 6.88 (d, 1H, J = 11.5 Hz) ppm.
【0128】
2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸 2'−(2−イソプロピル−2,4−ペンタジエノイルオキシ)ビフェニル−2−イル エステル(IIaA)
【化47】

塩化オキサリル(0.62ml, 6.6mmol)を、CHCl(5ml)中の(E)−2−イソプロピル−2,4−ペンタジエン酸(IIB)(616mg, 4.4mmol)の溶液に、0℃で加え、該混合物を室温で1時間撹拌した後、溶媒を減圧下で除去した。次いで、粗製の物質をTHF(5ml)に溶解し、予め1時間撹拌したTHF(10ml)中の2,2'−ビフェニルジオール(372mg, 2mmol)およびNaH(176mg, 油中60%, 4.4mmol)の溶液に、0℃で、ゆっくりと加える。室温でさらに1時間撹拌した後、該溶液をEtOAcで希釈し、飽和水性NHClで、水で、そして塩水で洗浄し、乾燥し(MgSO)、蒸発させ、無色の油状物を得る。カラムクロマトグラフィーによって精製し(SiO, ヘキサン中5% EtOAc)、800mgのIIaAを得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.97 (d, 12H, J = 7.0 Hz), 2.88 (septuplet, 2H, J = 7.0 Hz), 5.34 (d, 2H, J = 10.0 Hz), 5.39 (d, 2H, J = 16.6 Hz), 6.61 (ddd, 2H, J = 16.6, 11.4, 10.0 Hz), 6.84 (d, 2H, J = 161.4 Hz), 7.1-7.4 (m, 8H) ppm.
【0129】
ジエチル (2E,4E,6E)−2,7−ジイソプロピル−2,4,6−オクタトリエン−1,8−ジオエート (IIIA)
【化48】

化合物IIA(8.4g, 50mmol)を、真空/アルゴンサイクルを適用することによって、徹底的に脱酸素し、続いて40℃に温め、無水CHCl(5ml)中のGrubbs第2世代触媒2a(21.2mg, 0.025mmol, s/c 2000/1)の溶液で処理する。該混合物を40℃で4時間撹拌する。この時点での反応混合物のH−NMR分析により、トリエンへの変換が示された[84%(E,E,E), 6%(E,Z,E), 10%(E,E,Z)]。次いで、該混合物をMTBE(10ml)で希釈し、シリカゲル(5g)で処理し、15分間撹拌し、濾過する。溶媒を真空下で除去した後、粗製の物質を冷ヘキサンで磨砕し、IIIAと特性決定される白色の固体を得る。あるいは、IIA(8.4g, 50mmol)は、無水CHCl(10ml)中のGrubbs第2世代触媒2a(42.4mg, 0.05mmol, s/c 1000/1)の溶液で処理する。40℃で4時間後、反応混合物のH−NMR分析により、トリエンへの変換が示された[86%(E,E,E), 6%(E,Z,E), 8%(E,E,Z)]。冷ヘキサンで磨砕することによって、粗製の反応物から化合物IIIAを単離する。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 1.15 (d, 12H, J = 7.0 Hz), 1.24 (t, 6H, J = 7.1 Hz), 3.03 (septuplet, 2H, J = 7.0 Hz), 4.13 (q, 4H, J = 7.1 Hz), 6.81 (m, 2H), 7.06 (m, 2H) ppm.
【0130】
(2E,4E,6E)−2,7−ジイソプロピル−2,4,6−オクタトリエン−1,8−二酸 (IIIB)
【化49】

方法1: THF:MeOHの1:1混合物(50ml)中のIIIA (7.7g, 25mmol)の溶液を、2M LiOH水溶液(37.5ml, 75mmol)で処理し、80℃で一夜撹拌する。室温まで冷却した後、反応混合物を水(50ml)で希釈し、MTBEで洗浄する。1M KHSOを添加することによって、水相を酸性にする。次いで、水相から白色の固体が沈殿し、該固体を濾過し、水で徹底的に洗浄する。これは、(2E,4E,6E)−2,7−ジイソプロピル−2,4,6−オクタトリエン−1,8−二酸(IIIB)と同定される。
1H NMR (400.13 MHz, DMSO) δ 1.21 (d, 12H, J = 7.0 Hz), 3.18 (septuplet, 2H, J = 7.0 Hz), 7.0-7.2 (m, 4H) ppm.
【0131】
方法2: 無水CHCl(0.5ml)中のIIF(106mg, 0.5mmol)の溶液を、Grubbs第2世代触媒(8.5mg, 0.01mmol, 2mol%)で処理し、該混合物を40℃で24時間撹拌する。室温まで冷却した後、反応混合物を水(1ml)で希釈し、MTBEで洗浄する。1M KHSOを添加することによって水相を酸性にする。白色の固体が水相から沈殿し、該固体を濾過し、水で徹底的に洗浄する。これは、(2E,4E,6E)−2,7−ジイソプロピル−2,4,6−オクタトリエン−1,8−二酸(IIIB)と同定される。
【0132】
方法3: 無水CHCl(100ml)中のIIaA(215mg, 0.5mmol)の溶液を、Grubbs第2世代触媒(21mg, 0.025mmol, 5mol%)で処理し、40℃で24時間撹拌する。次いで、該溶液をシリカゲル(100mg)と共に15分間撹拌し、濾過する。溶媒を真空下で除去した後、粗製の物質をTHF:MeOHの1:1混合物(1ml)に溶解し、2M LiOH水溶液(1ml, 2mmol)で処理し、80℃で一夜撹拌する。室温まで冷却した後、該反応混合物を水(5ml)で希釈し、MTBEで洗浄する。1M KHSOを添加することによって水相を酸性にする。水相から白色の固体が沈殿し、該固体を濾過し、水で徹底的に洗浄する。これは、3:1 (E,E,E)/(E,Z,E)−オクタトリエン二酸(IIIB)と同定される。
【0133】
(2E,4E,6E)−2,7−ジイソプロピル−2,4,6−オクタトリエン−1,8−二酸ビスジイソプロピルアミド(IIIC)
【化50】

無水CHCl(18ml)中のIIC(1.4g, 6.1mmol)の溶液を、Grubbs第2世代触媒(105mg, 0.122mmol, 2mol%)で処理し、該混合物を40℃で24時間撹拌する。次いで、該溶液をシリカゲル(2.0g)で処理し、15分間撹拌し、濾過する。溶媒を真空下で除去した後、化合物IIICが、3:1 E,E,E/E,Z,E混合物として得られる。次いで、化合物IIICをヘキサン(50ml)に溶解し、ヨウ素の小さい結晶で処理し、室温で48時間撹拌する。次いで、該溶液を0.19M 水性チオ硫酸ナトリウム(30ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、蒸発させ、IIICを11:1 E,E,E/E,Z,E混合物として得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.9-1.3 (m, 24H), 1.39 (brs, 12H), 2.91 (septuplet, 2H, J = 7.0 Hz), 3.32 (brs, 2H), 4.07 (brs, 2H), 5.8-5.9 (m, 2H), 6.4-6.5 (m, 2H) ppm.
【0134】
(S)−4−ベンジル−3−[(S)−2−イソプロピル−4−ペンテノイル)−2−オキサゾリジノン(IVA)
【化51】

Rueger et al Tetrahedron Letters (2000), 41(51), 10085-10089に従って製造される(S)−4−ベンジル−3−(3−メチルブチリル)−2−オキサゾリジノン(13.0g, 50mmol)の、乾燥THFの溶液に、撹拌しながら、−78℃で、LiHMDS(55ml, トルエン中1.0M, 55mmol)を加え、該溶液を0℃で30分間撹拌した後、−78℃まで冷却する。次いで臭化アリル(4.0ml, 55mmol)を加え、該混合物を室温で2時間撹拌する。該生成物をEtOAcで抽出し、飽和水性NHClで、水で、そして飽和水性NaClで洗浄し、乾燥し(MgSO)、蒸発させ、黄色の油状物を得る。これを、10%EtOAc/ヘキサンで溶出するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、IVAを無色の油状物として得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.91 (d, 6H, J = 6.8 Hz), 1.8-2.0 (m, 1H), 2.2-2.5 (m, 2H), 2.57 (dd, 1H, J = 13.3, 10.1 Hz), 3.25 (dd, 1H, J = 13.3, 3.2 Hz), 3.7-3.9 (m, 1H), 4.0-4.1 (m, 2H), 4.5-4.7 (m, 1H), 4.95 (d, 1H, J = 10.2 Hz), 5.02 (dq, 1H, J = 17.1, 1.5 Hz), 5.7-5.8 (m, 1H), 7.1-7.3 (m, 5H) ppm.
【0135】
(S)−2−イソプロピル−4−ペンテン酸(IVB)
【化52】

THF(135ml)および水(35ml)中のIVA(19.0g, 63.1mmol)の溶液に、撹拌しながら、0℃で、H(37ml, 水中35%(w/v), 366mmol)を素早く加え、続いて、水性LiOH(70ml, 水中2.6M, 183mmol)を加える。0℃で1時間撹拌した後、該溶液を室温まで温め、一夜撹拌する。次いで、水性NaSO(70ml, 水中0.5M, 35mmol)を加え、続いて水(70ml)を加え、水相をMTBEで洗浄する(2×100ml, MTBE洗浄液を蒸発させ、開裂したキラル補助剤を回収する)。次いで、10%水性HClを添加して水相を酸性(pH=1)にして、生成物をMTBEで抽出する。有機相を、水で、そして飽和NaClで洗浄し、乾燥し(MgSO)、蒸発させ(250mbar, 40℃)、MTBEを含むIVBを明黄色の油状物として得る。このMTBE溶液を次の工程に直接用いる。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.82 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 0.83 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 1.7-1.9 (m, 1H), 2.0-2.3 (m, 3H), 4.87 (d, 1H, J = 10.2 Hz), 4.93 (dq, 1H, J = 17.1, 1.6 Hz), 5.62 (ddt, 1H, J = 17.1, 10.2, 6.8 Hz) ppm.
【0136】
(S)−2−イソプロピル−4−ペンテン酸メチル(IVC)
【化53】

アセトン(50ml)中のIVB (2.5g, 17.6mmol)の溶液に、MeI(3.3ml, 52.8mmol)およびKCO(3.66g, 26.4mmol)を加え、該混合物を室温で一夜撹拌する。次いで、該溶液を蒸発させ(250mbar, 40℃)、MTBEで希釈し、水で、そして飽和水性NaClで洗浄し、乾燥し(MgSO)、蒸発させ(250mbar, 40℃)、IVCを無色の油状物として得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.84 (d, 3H, J = 6.8 Hz, CHCH3), 0.88 (d, 3H, J = 6.8 Hz, CHCH3), 1.8-1.9 (m, 1H), 2.0-2.3 (m, 3H), 3.59 (s, 3H), 4.90 (d, 1H, J = 10.2 Hz), 4.93 (dq, 1H, J = 17.1, 1.6 Hz), 5.66 (ddt, 1H, J = 17.1, 10.2, 6.8 Hz) ppm.
【0137】
塩化 (S)−2−イソプロピルペンタ−4−エノイル(IVD)
【化54】

22mlのCHCl中のIVB(2.11g)の溶液を、1−クロロ−N,N−2−トリメチルプロペニルアミン(2.95ml)で処理する。室温で5時間撹拌した後、該溶液を濃縮し、さらに精製することなく次の工程に用いる。
【0138】
(S)−2−イソプロピルペンタ−4−エン酸 2−((S)−2−イソプロピルペンタ−4−エノイルオキシメチル)ベンジル エステル(IVaA)
【化55】

CHCl(3.5ml)中のピリジン(1ml)の溶液に、5mlのCHCl中1,2−ベンゼンジメタノール(250mg, 1.76mmol)の溶液を0℃で加える。20分後、IVDの溶液(粗製, 2.75g[7mmol], 5mlのDCM中)およびDMAP(38mg)を加え、該溶液を室温で16時間撹拌する。該混合物をEtOAc(10ml)で希釈し、HCl(5ml, 1N)を加える。有機相を水相から分離し、NaSOで乾燥し、蒸発させ、IVaAを得る。フラッシュクロマトグラフィーによって精製し(EtOAc/ヘキサン 1:15から1:5)、無色の油状物を得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.90 (d, J = 6.8 Hz, 6 H), 0.94 (d, J = 6.8 Hz, 6 H), 1.90 (m, 2 H), 2.22-2.40 (m, 6 H), 4.93-5.05 (m, 4 H), 5.20 (s, 4 H), 5.65-5.80 (m, 2 H), 7.32-7.45 (m, 4 H).
MS (M + NH4) = 405.
【0139】
(S)−2−イソプロピルペンタ−4−エン酸 3−((S)−2−イソプロピルペンタ−4−エノイルオキシメチル)ベンジル エステル(IVaB)
【化56】

CHCl(5ml)中のピリジン(0.5ml)の溶液に、1,3−ベンゼンジメタノール(194mg, 1.41mmol)を、0℃で加える。20分後、IVDの溶液(粗製, 677mg[4mmol], 5mlのCHCl中)およびDMAP(20mg)を加える。該溶液を室温で16時間撹拌する。混合物をEtOAc(10ml)で希釈し、HCl(5ml, 1N)を加える。有機相を水相から分離し、NaSOで乾燥し、蒸発させ、IVaBを得る。フラッシュクロマトグラフィーによって精製し(EtOAc/ヘキサン 1:15から1:5)、無色の油状物を得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.91 (d, J = 7.1 Hz, 6 H), 0.94 (d, J = 7.1 Hz, 6 H), 1.90 (m, 2 H), 2.22-2.40 (m, 6 H), 4.93-5.07 (m, 4 H), 5.10 (s, 4 H), 5.65-5.80 (m, 2 H), 7.28-7.40 (m, 4 H).
【0140】
(S)−2−イソプロピルペンタ−4−エン酸 2−((R)−2−イソプロピルペンタ−4−エノイルオキシ)フェニル エステル (IVaC)
【化57】

CHCl(8ml)中のピリジン(2.8ml)の溶液に、CHCl(36ml)中のベンゼン−1,2−ジオール(472mg, 4.3mmol)の溶液を、0℃で加える。20分後、IVDの溶液(粗製, 2g[12.9mmol], 8mlのCHCl中)を加え、該溶液を0〜5℃で3時間撹拌する。HCl(25ml, 1N)を加える。有機相を水相から分離し、NaSOで乾燥し、蒸発させる。フラッシュクロマトグラフィーによって精製し(EtOAc/ヘキサン 1:15から1:5)、IVaCを無色の油状物として得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 1.05 (dd, J = 6.5 Hz, 12 H), 2.1(m, 2 H), 2.30-2.55 (m, 6 H), 5.13 (d, J = 24.8 2 H), 5.18 (d, J = 28.2,2 H), 5.88 (m, 2 H), 7.20 (m, 4 H).
MS (M + NH4) = 376.
【0141】
(8S,13S)−8,13−ジイソプロピル−5,8,9,12,13,16−ヘキサヒドロ−6,15−ジオキサ−ベンゾシクロテトラデセン−7,14−ジオン(IcA)
【化58】

無水CHCl(2ml)中のIVaA(80mg, 0.2mmol)の溶液を、Grubbs第2世代触媒2a(10.5mg, 0.012mmol, s/c 100/6)で処理し、該混合物を室温で24時間撹拌する。次いで、該溶液をシリカゲル(1.0g)で処理し、15分間撹拌し、濾過する。フラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン 1:15から1:5)にかけた後、化合物IcAを、固体として、10:1のE:Z比で得る。
(E)-IcA: 1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.91 (d, J = 6.7 Hz, 6 H), 0.94 (d, J = 6.9 Hz, 6 H), 1.81 (m, 2 H), 2.10-2.30 (m, 6 H), 4.93 (d, J = 12.3 Hz, 2 H), 5.44 (d, J = 12.7 Hz, 2 H), 5.46 (s, 2 H), 5.65-5.80 (m, 2 H), 7.28-7.37 (m, 4 H).
【0142】
(5S,10S)−5,10−ジイソプロピル−3,12−ジオキサビシクロ[12.3.1]オクタデカ−1(17),7,14(18),15−テトラエン−4,11−ジオン(IcB)
【化59】

無水CHCl(2ml)中のIVaB(94mg, 0.24mmol)の溶液を、Grubbs第2世代触媒2a(12mg, 0.015mmol, s/c 100/6)で処理し、該混合物を室温で15時間撹拌する。次いで該溶液をシリカゲル(1.0g)で処理し、15分間撹拌し、濾過する。フラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン 1:15から1:5)にかけた後、化合物IcBを、油状物として、10:1のE:Z比で得る。
(E)-IcB: 1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.95 (d, J = 6.7 Hz, 12 H), 1.80-1.96 (m, 2 H), 2.10-2.40 (m, 6 H), 5.04 (d, J = 12.7 Hz, 2 H), 5.34 (d, J = 12.2 Hz, 2 H), 5.30 (s, 2 H), 7.17-7.40 (m, 4 H).
MS (M + NH4) = 376.
【0143】
(7S,12R)−7,12−ジイソプロピル−7,8,11,12−テトラヒドロ−5,14−ジオキサ−ベンゾシクロドデセン−6,13−ジオン(IcC)
【化60】

無水トルエン(2.8ml)中のIVaC(100mg, 0.28mmol)の溶液を、Grubbs第2世代触媒2a(0.48mg, 0.0006mmol, s/c 500/1)で処理し、該混合物を50℃で5時間撹拌する。次いで、該溶液をシリカゲル(1.0g)で処理し、15分間撹拌し、濾過する。フラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン 1:15から1:5)にかけた後、化合物IcCを、固体として、10:1のE:Z比で得る。
(E)-IcC:
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 1.03 (d, J = 6.7 Hz, 6 H), 1.04 (d, J = 6.6, 6 H), 1.87-1.97 (m, 2 H), 2.13-2.20 (m, 2 H), 2.40-2.55 (m, 4 H), 5.58 (m, 2 H), 5.88 (m, 2 H), 7.05 (m, 2 H), 7.25 (m, 2 H).
【0144】
ジメチル (2S,7S)−(E)−2,7−ジイソプロピル−4−オクテン−1,8−ジオエート (IA)
【化61】

無水CHCl(6ml)中のIVC(312mg, 2.0mmol)の溶液を、Grubbs第2世代触媒2a(17mg, 0.02mmol, s/c 100/1)で処理し、該混合物を40℃で24時間撹拌する。次いで、該溶液をシリカゲル(1.0g)で処理し、15分間撹拌し、濾過する。溶媒を真空下で除去した後、化合物IAを5:1 E/Z混合物(GC分析によって決定)として得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.89 (d, 6H, J = 6.7 Hz), 0.92 (d, 6H, J = 6.7 Hz), 1.7-1.9 (m, 2H), 2.1-2.3 (m, 6H), 3.65 (s, 6H), 5.37 (s, 2H) ppm.
GC分析: Chiraldex G-PN, 10 psi, 150-200℃, 23分, 保持時間:Z-IA 17.18分; E-IA 17.76分.
【0145】
(2S,7S)−(E)−2,7−ジイソプロピル−4−オクテン−1,8−二酸(IB)
【化62】

THF:MeOHの1:1混合物(1.8ml)中のIAの5:1 E/Z混合物(256mg, 0.9mmol)の溶液を、2M LiOH水溶液(1.8ml, 3.6mmol)で処理し、該混合物を80℃で一夜撹拌する。室温まで冷却した後、1M KHSOを注意深く添加することによって該反応混合物を酸性にして、MTBE(3×)で抽出する。合わせた有機相を乾燥し(MgSO)、蒸発させ、IBの5:1 E/Z混合物を白色の固体として得る。
1H NMR (400.13 MHz, CDCl3) δ 0.87 (dd, 12H, J = 6.5, 2.1 Hz), 1.76 (m, 2H), 2.0-2.2 (m, 6H), 5.33 (s, 2H) ppm.
【0146】
(E)−2,7−ジイソプロピル−4−オクテン−1,8−二酸 (IB)
【化63】

25mlのガラス内張容器に、[(R)-フェネチル-(R)-BoPhozRuCl (ベンゼン)]Cl (1.1mg, 0.001mmol, s/c 1000/1)を加える。これを、Parrオートクレーブに入れ、空気を水素で置き換える。次いで、メタノール(5ml)中のIIIB(252mg, 1mmol)およびEtN(0.26ml, 2mmol)の溶液を、Parrオートクレーブに加える。次いで、オートクレーブを水素で10barまで加圧し、室温で撹拌する。1時間後、水素の取り込みが停止する。オートクレーブを開け、該溶液をH−NMRによって分析する。NMR分析により、(IB)−D,Lと(IB)−メソの比が7:1であることが示された(それぞれ5.33および5.37ppmでのビニルのプロトンシグナルの積算値に従って)。
【0147】
(IB)−D,Lと(IB)−メソの分離は、例えば、当業者に周知の幾つかの方法によって、ジアステレオマーの塩の再結晶によって達成され得る(例えば Kozma, D. CRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation, CRC Press, 2002)。例えば、(IB)−(S,S)は、(S)−フェニルエチルアミンとの塩形成によって分離され得る。
【0148】
1,8−ビス−((S)−4−ベンジル−2−オキソ−オキサゾリジン−3−イル)−2,7−ジイソプロピル−4−オクテン−1,8−ジオン(IC)
【化64】

塩化メチレン(4ml)中のIVA(100mg, 0.33mmol)の溶液を、Grubbs第2世代触媒(14mg, 0.016mmol, s/c 100/5)で処理し、該混合物を50℃で18時間撹拌する。次いで、該溶液をシリカゲル(1.0g)で処理し、15分間撹拌し、濾過する。フラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン 1:15から1:5)にかけた後、化合物ICを、固体として、9:1のE:Z比で得る。
(E)-IC: 1H NMR (400.13 MHz, CDCl3): δ 0.86 (t, J = 7.0 Hz, 12 H), 1.90 (m, 2 H), 2.18 -2.40 (m, 4 H), 2.61 (d, J = 13.3 Hz, 1 H), 2.63 (d, J = 13.3 Hz, 1 H), , 3.27(dd, J = 3.2, 13.1 Hz, 2 H), 3.67 - 3.75 (m, 2 H), 4.03 - 4.08 (m, 4 H), 4.55 - 4.65 (m, 2 H), 5.46 (m, 2 H), 5.88 (m, 2 H), 7.13 - 7.30 (m, 10 H).
【0149】
触媒3の製造
エタノール(2ml)およびトルエン(1ml)中の、N−ジ(3,5−ジフルオロフェニル)ホスフィン N−メチル S−1−(R−2−ジフェニルホスフィノ)フェロセニルエチルアミン(0.1g, 0.146mmol)および[RuCl(ベンゼン)](0.036g, 0.073mmol)の溶液を、N雰囲気下、60℃で15分間撹拌した。溶媒を真空で除去し、該固体をジクロロメタン(1ml)に再度溶解した。メチル tert−ブチル エーテル(5ml)を加えると、橙色の固体が沈殿した。この固体を濾過によって集め、乾燥し、触媒3を橙色の固体として得た。
31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 85 (d) and 19 (d) ppm.
【0150】
触媒8の製造
エタノール(1ml)およびトルエン(0.5ml)中の、N−ジフェニルホスフィン N−(R)−フェニルエテニル R−1−(S−2−ジフェニルホスフィノ)フェロセニルエチルアミン(0.035g, 0.05mmol)および[RuCl(ベンゼン)](0.0125g, 0.005mmol)の溶液を、N雰囲気下、60℃で60分間撹拌した。溶媒を真空で除去し、該固体をジクロロメタン(1ml)に再度溶解した。メチル tert−ブチル エーテル(5ml)を加えると、橙色の固体が沈殿した。この固体を濾過によって集め、乾燥し、触媒8を橙色の固体として得た。
31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 78 (d) and 21 (d) ppm.
【0151】
触媒1、2、4、5、6、7および9の製造
触媒1、2、4、5、6、7および9は、触媒3および8について上で記載した手順と類似の手順に従って製造される。これらの触媒の製造のための対応するリガンドは、
N−ジフェニルホスフィン N−メチル S−1−(R−2−ジフェニルホスフィノ)フェロセニルエチルアミン(1および9)、
N−ジ(4−フルオロフェニル)ホスフィン N−メチル S−1−(R−2−ジフェニルホスフィノ)フェロセニルエチルアミン(2)、
N−(R)−ビノール−亜ホスフィン酸 N−メチル R−1−(S−2−ジフェニルホスフィノ)フェロセニルエチルアミン(4)、
N−(S)−ビノール−亜ホスフィン酸 N−メチル R−1−(S−2−ジフェニルホスフィノ)フェロセニルエチルアミン(5)、
N−ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン N−メチル S−1−(R−2−ジフェニルホスフィノ)フェロセニルエチルアミン(6)、および、
N−ジフェニルホスフィン N−ベンジル R−1−(S−2−ジフェニルホスフィノ)フェロセニルエチルアミン(7)
である。
31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 84 (d) and 22 (d) ppm, [(S)-BoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl R8 = Me, R9 =フェニル (触媒1)について;
31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 85 (d) and 22 (d) ppm, [(S)-BoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl R8 = Me, R9 = p-フルオロフェニル (触媒2)について;
31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 143 (d) and 28 (d) ppm, [(R)-BoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl R8 = Me, R9 = (R)-ビノール (触媒4)について;
31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 148 (d) and 33 (d) ppm, [(R)-BoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl R8 = Me, R9 = (S)-ビノール (触媒5)について;
31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 85 (d) and 20 (d) ppm, [(S)-BoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl R8 = Me, R9 = p-CF3フェニル (触媒6)について;
31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ 114 (d) and 43 (d), [(S)-BoPhoz RuCl (ベンゼン)]Cl R8 = Me, R9 = ベンジル (触媒7)について。
触媒9をin situで製造し、特性決定することなく直接用いる。
【0152】
リガンドの製造方法については、Boaz, N. W.; Ponasik, J. A. Jr.; Large, S. E.; Tetrahedron: Asymmetry 2005, 16, 2063; Boaz, N. W.; Mackenzie, E. B.; Debenham, S. D.; Large, S. E.; Ponasik, J. A. Jr. J. Org. Chem. 2005, 70, 1872; Li, X.; Jia, X.; Xu, L.; Kok, S. H. L.; Yip, C. W.; Chan, A. S. C. Adv. Synth. Catal. 2005, 347, 1904 および Boaz, N. W.; Ponasik, J. A., Jr.; Large, S. E. Tetrahedron Lett. 2006, 47, 4033を参照のこと。触媒4および5におけるリガンドの製造については、Jia, X.; Li, X.; Lam, W. S.; Kok, S. H. L.; Xu, L.; Lu, G.; Yeung, C.-H.; Chan, A. S. C. Tetrahedron: Asymmetry 2004, 15, 2273も参照のこと。
【0153】
(S,S)−ジイソプロピル−オクタ−4−エン二酸と(S)−フェニルエチルアミンとの塩形成
【化65】

2g(6.6mmol)の粗製の二酸を、5mlのアセトンに、室温で溶解する。次いで、0.8g(6.6mmol, 1当量)の(S)−フェニルエチルアミンを加え、黄色の溶液を室温で30分間撹拌する。さらに1当量の(S)−フェニルエチルアミン(0.8g, 6.6mmol)を加える。30分後、濃厚な結晶性懸濁液が形成される。3mlのTHFを加え、0℃で30分間撹拌を続ける。第1収穫物を濾過によって単離し、乾燥し、ビス−(S)−フェニルエチルアミン塩を得る。ヘプタンを添加することによって、母液から第2収穫物を単離する。0.15gの第1収穫物を1mlのDCMおよび1mlのTHFから再結晶する。一夜放置した後、白色の結晶を単離し、乾燥する(mp. 136 - 138℃)。
1H-NMR: (400 MHz,), δH (ppm) 0.70-0.85 (12H, 2d, 重複, -CH3), 1.2-1.3 (2H, brm, -CH), 1.4-1.55 (2H, brm, -CH), 1.6-1.7 (6H, d, 2 x -CH3), 1.80-1.95 (4H, brm, アリル-CH), 4.18-4.25 (2H, q, -CH3), 4.8-4.9 (2H, m, オレフィン-H), 7.25-7.4 (6H, brm, 芳香環-H), 7.5-7.6 (4H, d, o-芳香環-H), 8.2-9.8 (6H, very br., 2x -NH3+).
【0154】
2当量のヨードメタンによる二酸のジメチルエステルへのエステル化
【化66】

前記の実験の(S)−フェニルエチルアミン塩を水に溶解し、pH 2まで酸性にし、酸をEtOAcで抽出し、有機相を濃縮することによって製造される6.0g(23.4mmol)の光学的に純粋なE−(2S,7S)−ジイソプロピル−オクタ−4−エン二酸を、50mlのN−メチルピロリドンに溶解する。12mlの水を加え、続いて10.0gの炭酸カリウム(72.5mmol)を添加し、僅かに濁った溶液を得る。撹拌後、滴下漏斗を介して、9.97g(70.2mmol)のヨウ化メチルを加える。40℃まで温度を上げ、一夜撹拌を続ける。変換完了後(20時間)、粗製の反応混合物を、80mlの水と50mlのTBMEの層間に分配する。有機相を50mlずつのTBMEで数回抽出し、次いで、合わせた有機相を3×50mlの水で洗浄する。有機相を真空下で蒸発させ、次に、高真空で30分間脱気し、望ましいジエステル生成物を得る。
1H-NMR: (400 MHz, CDCl3), δH (ppm) 0.8-0.85 (6H, d, 2x -CH3), 0.85-0.90 (6H, d, 2x -CH3), 1.7-1.83 (2H, oct., -CH), 2.05-2.22 (6H, brm, アリル-H & -COOR), 3.60 (6H, s, -OCH3), 5.28-5.35 (2H, m, オレフィン-H).
[α]D = - 6.3 (1 %, MeOH中) ; [α]D = - 8.1 (1 %, ジクロロメタン中)
【0155】
ブロモヒドリン形成
【化67】

5.4g(18.98mmol)の前記の実験の(S,S)−ジイソプロピル オクテン二酸ジエステルを、33mlのTHFに溶解し、続いて26mlの水を添加する。二相性エマルジョンに、2部(3.76g, 20.8mmol)のN−ブロモスクシンイミドを加える。該混合物を室温で1時間撹拌する。HPLCコントロールにより、出発物質の変換完了が示された(92:8の比(エリア%)で2種の生成物の混合物が得られた)。該反応混合物に、25mlのTBMEを加え、相を分離する。水相を25mlのTBMEで2回抽出する。合わせた有機相を水で洗浄し、次いでMgSOで乾燥する。有機相を真空下で蒸発させ、黄色の油状物を得る。後処理後、HPLCにより、生成物の混合物の変化が示された(30:70)。NMRおよびLC−MSにより、後処理および熱処理後、望ましいブロモラクトンメチルエステルである主要な生成物と、ブロモヒドリンジメチルエステルからなる、より少ない生成物が示された。
HPLC保持時間:オレフィンジエステル, 11.05分;ブロモラクトンモノエステル, 10.17分;およびブロモヒドリンジエステル, 9.70分。
HPLCカラム:Inertsil ODS-3V (C-18, 5m), 4.6mm×250mm;40℃;流速1.5ml/分.
溶媒系:水(0.01 NH4H2PO4):アセトニトリル, 濃度勾配45:55から3:97
IR: (FTIR-マイクロスコピー, 透過, “ブロモヒドリンジエステル”の[cm-1](少量のラクトンが混入): 3501 (-OH), 2963 (as, CCH3), 2876 (s, CCH3), 1780 (ラクトン, weak), 1732 (エステル, strong), 1466, 1437, 1373, 1244, 1201, 1160
LC-MS: M+ = 381.31 (C16H29O5Brに対応): M+ = 349.10 (C15H25O4Brに対応)
【0156】
ブロモラクトンへのラクトン化
【化68】

ブロモヒドリン ジエステルおよびブロモラクトン モノエステル(7.1g)の混合物である前述の実験の残渣と、380mgのp−TosOHを、40mlのトルエンに溶解し、7時間還流し、ラクトン化を完了させる。水での後処理および蒸発後、望ましい生成物を得る。NMR分析により、20:80の比の2種のジアステレオマー成分が示された。
1H-NMR: (400 MHz, CDCl3), δH (ppm) 0.9-1.10 (12H, 重複 d, -CH3), 1.72-1.82 (1H, m), 1.85-1.95 (1H, m), 1.95-2.05 (1H, m), 2.15-2.30 (2H, brm), 2.35-2.50 (2H, brm), 2.60-2.70 (2H, brm), 3.70 (3H, s, -OCH3), 3.95-4.10 (1H, brm, 2 brm, 比(4:1)), 4.30-4.50 (1H, brm, 2 brm, 比(4:1).
IR: (FTIR-マイクロスコピー, 透過, “ブロモラクトン モノエステル”の[cm-1]; 2963, 2876, 1779 (ラクトン), 1732 (エステル), 1467, 1437, 1372, 1199, 1161
【0157】
アジドラクトン メチルエステルに至るDMF中のアジ化ナトリウムでの置換
【化69】

前記の実験から得た1.5g(4.3mmol)のブロモラクトン モノエステル・ジアステレオマー混合物を、10mlのDMFに溶解する。0.83gのNaN(12.76mmol)を加え、該混合物を70℃まで12時間加熱する。次いで該混合物を室温まで冷却し、次いで、20mlの水で希釈する。水とTBMEの層間で数回抽出することによって該生成物を単離する。合わせた有機相をMgSOで乾燥し、蒸発させ、該アジドラクトン モノエステルをジアステレオマーの混合物として得る。
MS: LC-MS: M + NH4+ = 329, 3種の異なる異性体
IR: FTIR-マイクロスコピー, 透過, [cm-1]; 2963, 2876, 2110 (-N3), 1782 (ラクトン), 1733 (エステル), 1700 (副生成物), 1468, 1437, 1373, 1264, 1195, 1161, 1119
【0158】
アジド−ラクトン メチルエステルのラクタム−ラクトンへの水素化
【化70】

1.5gのアジド−ラクトン メチルエステル(4.8mmol)を、15mlのトルエンに溶解する。0.5gのPd/C(5%)触媒(Engelhard 4522)を加え、室温で、1atmの圧力で、24時間かけて、水素化を行う。触媒を濾過し、濾液を真空で蒸発させ、半結晶性の灰白色の物質を得る。これは、H−NMR、IR、HPLCおよびTLCによると、望ましい(S,S,S,S)化合物を、他の2種のジアステレオマーのラクタム−ラクトン化合物と共に含んでいる。
1H-NMR (400MHz, CDCl3): δ = 6.04 (s,1H), 4.22-4.16 (m,1H), 3.51-3.46 (m,1H), 2.55-2.51 (m,1H), 2.44-2.38 (m,1H), 2.17-2.09 (m,3H), 2.07-1.99 (m,1H), 1.94-1.87 (m,1H), 1.80-1.73 (m,1H) 0.99-0.97 (d, 3H), 0.95-.93 (d,3H), 0.91-0.89 (d,3H), 0.85-0.84 (d,3H)
IR: 1776 = ラクトン, 1704 = ラクタム, cm-1 (FTIR-マイクロスコピー, 透過)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、該方法が、以下の1個以上の工程:
a) 式(II):
【化2】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を、交差複分解反応させ、式(III):
【化3】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を得ること;
b) 式(III)の化合物またはその塩を水素化して、式(I)の化合物またはその塩を得ること;
を含む方法。
【請求項2】
式(III):
【化4】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、該方法が、式(II):
【化5】

[式中、R1およびR2は、式(III)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を、交差複分解反応させ、式(III)の化合物またはその塩を得る工程を含む方法。
【請求項3】
式(I):
【化6】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、該方法が、式(III):
【化7】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を水素化し、式(I)の化合物またはその塩を得る工程を含む方法。
【請求項4】
レニン阻害剤の製造方法であって、以下の1個以上の工程:
a. 式(II):
【化8】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を交差複分解反応させ、式(III):
【化9】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を得ること;
b. R1およびR2が式(I)の化合物について定義した通りである式(III)の化合物またはその塩を水素化し、式(I):
【化10】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩を得ること;
を含む方法。
【請求項5】
式(I):
【化11】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、該方法が、以下の1個以上の工程:
a) 式(IIa):
【化12】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を交差複分解反応させ、式(IIIb):
【化13】

[式中、LおよびR2は、式(IIa)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を得ること;
b) 式(IIIb)の化合物またはその塩を水素化し、続いて加水分解するか、あるいは、加水分解し、続いて水素化するかの何れかによって、式(IIIb)の化合物またはその塩を式(I)の化合物またはその塩に変換すること;
を含む方法。
【請求項6】
式(IIIb):
【化14】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルである。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、該方法が、式(IIa):
【化15】

[式中、LおよびR2は、式(IIIb)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を交差複分解反応させ、式(IIIb)の化合物またはその塩を得る工程を含む方法。
【請求項7】
式(I):
【化16】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;あるいはSiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、該方法が、式(IIIb):
【化17】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を水素化し、続いて加水分解するか、あるいは、加水分解し、続いて水素化するかの何れかによって、式(IIIb)の化合物またはその塩を式(I)の化合物またはその塩に変換する工程を含む方法。
【請求項8】
レニン阻害剤の製造方法であって、以下の1個以上の工程:
a. 式(IIa):
【化18】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を交差複分解反応させ、式(IIIb):
【化19】

[式中、LおよびR2は、式(IIa)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を得ること;
b. 式(IIIb)の化合物またはその塩を水素化し、続いて加水分解するか、あるいは、加水分解し、続いて水素化するかの何れかによって、式(IIIb)の化合物またはその塩を式(I)の化合物またはその塩に変換すること;
を含む方法。
【請求項9】
式(I):
【化20】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、該方法が、式(IV):
【化21】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を交差複分解反応させ、式(I)の化合物またはその塩を得ることを含む方法。
【請求項10】
レニン阻害剤の製造方法であって、式(IV):
【化22】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を交差複分解反応させ、式(I):
【化23】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩を得ることを含む方法。
【請求項11】
式(I):
【化24】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、C1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはC3−8シクロアルキルであって、それぞれは非置換であるか、または置換されているか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩の製造方法であって、該方法が、以下の1個以上の工程:
a) 式(IVa):
【化25】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を交差複分解反応させ、式(Ic):
【化26】

[式中、LおよびR2は、式(IVa)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を得ること;
b) 式(Ic)の化合物またはその塩を、加水分解反応によって、式(I)の化合物に変換すること;
を含む方法。
【請求項12】
レニン阻害剤の製造方法であって、以下の1個以上の工程:
a. 式(IVa):
【化27】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を交差複分解反応させ、式(Ic):
【化28】

[式中、LおよびR2は、式(IVa)の化合物について定義した通りである。]
の化合物またはその塩を得ること;
b. 式(Ic)の化合物またはその塩を、加水分解反応によって、式(I)の化合物またはその塩に変換すること;
を含む方法。
【請求項13】
式(I)の化合物またはその塩が、式(Ia):
【化29】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の構造を有する、請求項1から12の何れか1項に記載された製造方法。
【請求項14】
式(I)の化合物またはその塩が、式(Ib):
【化30】

[式中、R1およびR2は、式(I)の化合物について定義した通りである。]
の構造を有する、請求項1から12の何れか1項に記載された製造方法。
【請求項15】
該レニン阻害剤がアリスキレンである、請求項4、8、10または12の何れか1項に記載された製造方法。
【請求項16】
該交差複分解反応が、ルテニウム・アルキリデン触媒を用いるものである、請求項1、2、4から6、8から12または12から15の何れか1項に記載された製造方法。
【請求項17】
該ルテニウム・アルキリデン触媒が、
【表1】

【表2】

からなる群から選択される、請求項16に記載された製造方法。
【請求項18】
該水素化反応が、ルテニウム触媒を用いるものである、請求項1または3から5または7または8または13から17の何れか1項に記載された製造方法。
【請求項19】
該ルテニウム触媒が、触媒1−9:
【化31】

【表3】

からなる群から選択される、請求項18に記載された製造方法。
【請求項20】
式(III):
【化32】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、分枝のC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル(ここで、フェニル−またはナフチル−は、非置換であるか、または置換されている。)、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロシクリル、または、非置換または置換C3−8シクロアルキルであるか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル(ここで、フェニル−またはナフチル−は、非置換であるか、または置換されている。)、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロシクリルまたは非置換または置換C3−8シクロアルキルであるか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩。
【請求項21】
式(IIIa):
【化33】

の構造を有する、請求項20に記載された化合物またはその塩。
【請求項22】
R1がOHであり、R2が分枝のC1−7アルキルである、請求項21に記載された化合物。
【請求項23】
式(I):
【化34】

[式中、
R1は、OR3またはNR4R5であり;
R2は、分枝のC1−7アルキルまたはC3−8シクロアルキルであり;
R3は、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル(ここで、フェニル−またはナフチル−は、非置換であるか、または置換されている。)、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロシクリル、または、非置換または置換C3−8シクロアルキルであるか;あるいは、SiRR'R”であり、ここで、R、R'およびR”は、互いに独立して、C1−7アルキル、アリールまたはフェニル−C1−4アルキルであり;
R4およびR5は、独立して、水素、C1−7アルキル、フェニル−またはナフチル−C1−4アルキル(ここで、フェニル−またはナフチル−は、非置換であるか、または置換されている。)、非置換または置換アリール、非置換または置換ヘテロシクリル、または、非置換または置換C3−8シクロアルキルであるか;
あるいは、R4およびR5は、一体となって、3から7員の窒素含有飽和炭化水素環を形成してもよく、該環は、NまたはOから選択される1個以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、かつ、非置換であっても、例えば、ヒドロキシル、ハロ、オキソ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、チオール、アルキルチオ、ニトロ、ヒドロキシ−C−C−アルキル、ハロ−C−C−アルキル、C−C−アルキル、C−C−アルカノイル、例えばアセチル、C−C−アルコキシ、ハロ−C−C−アルコキシ、例えばトリフルオロメトキシ、ヒドロキシ−C−C−アルコキシ、C−C−アルコキシ−C−C−アルコキシ、カルバモイル、シアノ、および、アリール−C−C−アルキル(ここで、アリールは置換されている。)の群から独立して選択される、1個以上の、例えば1から4個の置換基によって置換されていてもよい。]
の化合物またはその塩。
【請求項24】
式(Ia):
【化35】

の構造を有する、請求項23に記載された化合物またはその塩。
【請求項25】
式(Ib):
【化36】

[式中、
R1は、OHであり;
R2は、分枝のC1−7アルキルである。]
の化合物またはその塩。
【請求項26】
式:
【化37】

の化合物またはその塩。
【請求項27】
式(IIa):
【化38】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、分枝のC1−7アルキルである。]
の化合物またはその塩。
【請求項28】
式(IIIb):
【化39】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、分枝のC1−7アルキルである。]
の化合物またはその塩。
【請求項29】
式(IVa):
【化40】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、分枝のC1−7アルキルである。]
の化合物またはその塩。
【請求項30】
式(Ic):
【化41】

[式中、
Lは、1から6個の炭素骨格を介して2個の酸素原子を連結するリンカーであり;
R2は、分枝のC1−7アルキルである。]
の化合物またはその塩。
【請求項31】
レニン阻害剤を製造するための、請求項20から30の何れか1項に記載された化合物の使用。
【請求項32】
アリスキレンまたはその薬学的に許容される塩を製造するための、請求項31に記載された化合物の使用。

【公表番号】特表2010−530398(P2010−530398A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512671(P2010−512671)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057655
【国際公開番号】WO2008/155338
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】