説明

レンジフード

【課題】スイッチ操作部の意匠枠や運転ボタン用の開口部や隙間をなくし、使用者が手間をかけることなく清掃ができ、かつスイッチの耐久性を向上させたレンジフードを提供することを目的としている。
【解決手段】調理時に発生する油煙を屋外へ排出するための送風機2と、筐体12の表面に設けられ送風機2の運転入力をするスイッチの押圧部と、筐体12を介して運転入力を検出するコイル17と、コイル17が検出した信号をもとに送風機2の運転を決定する制御部22を備え、コイル17はスイッチ入力を天頂部11の変位によって検出することを特徴とするレンジフードとしたもので、使用者が操作する天頂部11の微小な変位によってスイッチ入力を判定するレンジフードが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油などにより汚れやすい環境に設置されるレンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
台所や厨房などに設置され、調理時に発生する油煙を排出するレンジフードのスイッチ操作部は、比較的高い場所に設置されたレンジフードの外郭全面に設けられ、その操作面が斜め下方に傾いており、調理機器の前方に立った使用者が操作しやすい構造のものが普及している。
【0003】
この種の従来のレンジフードにおけるスイッチ操作部の構造としては、金属の製品外郭に開口部を設け、その背面からスイッチ操作部をはめ込み、運転モードを設定する複数のスイッチ操作ボタンもしくはメンブレンシートを貼り付けたスイッチ操作部の意匠枠ごとを突出させる構造のものが知られていた(例えば特許文献1参照)。
【0004】
以下、そのレンジフードを図14を参照しながら説明する。
【0005】
図14、図15に示すように、調理機器101による調理時に発生する油煙を排出するために、内部に送風機102を設けたレンジフード本体103の内部にはスイッチ操作部109が配置され、送風機102および照明105の動作を設定する複数の押しボタンスイッチ110をならべて構成しかつメンブレンシート111が貼り付けられたスイッチ操作面104は、レンジフード本体103の前面に設けた開口部103aから突出した構成となっていた。また電装部周辺の機構は集約され、調理機器101を照射する照明105はスイッチ操作部109の上方に設けられ、電装部への油の侵入を防止するための金属製のボトムカバー106が設けられ、レンジフード本体103の下部に形成された捕集空間107から吸い込まれた油煙は、フィルター108を通過して送風機102によってダクトを介して屋外に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−89335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来のレンジフードでは、スイッチ操作部109のスイッチ操作面104を開口部103aに貫通させて取り付けていたので、調理時に油煙を排出することを主目的とするレンジフードでは、油煙によってメンブレンシート111や開口部103aに油が付着したうえにほこりが固着し、掃除しても簡単に落とせない汚れとなる。また送風機102の作用により、開口部103aとスイッチ操作面104との隙間または、押しボタンスイッチ110とメンブレンシートの隙間を通して空気が流れ、スイッチ可動部に油煙やほこりが侵入すると接点不良を起こし操作不能になる恐れもあった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、運転モードを設定するためのスイッチ操作部を取り付ける開口部をなくすことで、掃除性の向上が図れ、かつスイッチ可動部の油煙の侵入を防ぎ、操作性の低下を招かないレンジフードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレンジフードは上記目的を達成するために、調理機器の上方に設置され、調理時に発生する油煙を屋外へ排出するための送風手段と、レンジフード筐体の表面に設けられ前記送風手段の運転入力をするスイッチ操作部と、前記筐体の裏面に設けられ前記スイッチ操作部の操作を前記筺体を介して検出するスイッチ受付部と、前記スイッチ受付部が検出した信号をもとに前記送風手段の運転を決定する制御部を備えたレンジフードであって、スイッチ受付部はスイッチ操作部の入力を筐体の変位によって検出することを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0010】
この手段によりフードには開口部をなくし、一枚の金属で形成することが可能となる。そのため隙間や凹凸がなくなり、油や埃が付着しても簡単な拭き取りで掃除ができるレンジフードが得られる。
【0011】
また、本発明のレンジフードは上記目的を達成するために、スイッチ受付部は複数のインダクションセンサを並べた構成とし、インダクションの変化量、変化した時間、インダクションの変化方向によってスイッチ入力を判定することを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0012】
この手段により筺体が変化して復元するまでの間に発生するインダクション変化量、その変化時間、変化方向によって人によるスイッチ操作を判定することが可能となる。またインダクションの変化方向から筺体のたわみ、伸び、反発、反りを検出し、誤検知を防ぐことが可能なレンジフードが得られる。
【0013】
また、本発明のレンジフードは上記目的を達成するために、レンジフード筺体とスイッチ受付部との間に絶縁構造を設けたことを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0014】
この手段により、キッチン周辺のインバーター機器等から発生する輻射ノイズや人体静電気からスイッチ受付部を保護し、また経年変化による筺体の反りやたわみといった機械的ストレスから保護を行うことができ、誤動作や操作不能状態を回避可能なレンジフードが得られる。
【0015】
また、本発明のレンジフードは上記目的を達成するために、スイッチ操作部は筐体全体に対して厚みを薄くし、スイッチ押圧部分を変位しやすい構造としたことを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0016】
この手段により、押圧に対して変位しやすいスイッチ操作部を設けることで、インダクション変化量を大きくしスイッチ感度や応答性を高めることが可能となり、かつ使用者にとって操作感のあるレンジフードが得られる。
【0017】
また、本発明のレンジフードは上記目的を達成するために、スイッチ操作部の押圧部分を囲う支持機構をレンジフード内側に形成したことを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0018】
この手段により、筺体裏側からスイッチ操作部の押圧部分を支持することで過大な力が操作部に加わったとしてもスイッチ操作部を凹まないよう保護することが可能なレンジフードが得られる。
【0019】
また、本発明のレンジフードは上記目的を達成するために、押圧部分は内側に凹ませ、押圧に対して復元する力をフード裏面から与える構成としたことを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0020】
この手段により、使用者にとってスイッチ押下部が分かりやすく、かつ筺体裏側からスイッチ押圧部を支持することでスイッチ押下に対する復元力を得られ、過大な力が押下部に加わったとしてもスイッチ操作部を凹みから保護することが可能なレンジフードが得られる。
【0021】
また、本発明のレンジフードは上記目的を達成するために、押圧部分は外側に膨出させ、押圧に対して復元可能な構成としたことを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0022】
この手段により、使用者にとってスイッチ押下部が分かりやすく、かつ外側に反りを与えることでスイッチ押下に対する復元力のあるレンジフードが得られる。
【0023】
また、本発明のレンジフードは上記目的を達成するためにスイッチ操作部に突出部を設け、突出部の変位によって発生する筐体表面のたわみを検出することを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0024】
この手段により、使用者にとってスイッチ部分が分かりやすく、また突出部を傾けた際に発生する筐体のたわみをスイッチ入力として判定できるレンジフードが得られる。
【0025】
また、本発明のレンジフードは上記目的を達成するために、スイッチ操作部に突出部を設け、突出部の変位によって発生する筐体表面の反りを検出することを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0026】
この手段により、突出部を傾けた際に発生する筐体の反りをスイッチ入力として判定するレンジフードが得られる。
【0027】
また、本発明のレンジフードは上記目的を達成するために、突出部の繰り返し操作によって送風手段の動作モードを変更することを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0028】
この手段により、同じ方向の繰り返し操作を行うことで重複する運転パターンを強めたり弱めたりすることが可能なレンジフードが得られる。
【0029】
また、本発明のレンジフードは上記目的を達成するために、筐体の材質には形状記憶合金を用い、押圧が加わり変位しても元の形状に復元することを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0030】
この手段により、落下等で大きな外力がスイッチ操作部に加わっても元の形状に復元しスイッチ操作が可能なレンジフードが得られる。
【0031】
また、本発明のレンジフードは上記目的を達成するために、スイッチ操作部にエンボスによる運転表示を設けたことを特徴とするレンジフードとしたものである。
【0032】
この手段により、スイッチ操作部に設けられた押圧部の目的が明確となり、また点字ディスプレイとすることで視覚障害者のご操作を防止することが可能なレンジフードが得られる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、調理機器の上方に設置され、調理時に発生する油煙を屋外へ排出するための送風手段と、レンジフード筐体の表面に設けられ前記送風手段の運転入力をするスイッチ操作部と、前記筐体の裏面に設けられ前記スイッチ操作部の操作を前記筺体を介して検出するスイッチ受付部と、前記スイッチ受付部が検出した信号をもとに前記送風手段の運転を決定する制御部を備えたレンジフードであって、スイッチ受付部はスイッチ操作部の入力を筐体の変位によって検出することを特徴とするレンジフードとしたもので、使用者が触れることによって筐体が微小に変位する現象を利用してスイッチ入力を判定することから、フードには、操作スイッチを取り付ける開口部およびスイッチ操作面上には、ボタンと意匠枠との間の隙間をなくすことが可能となる。そして、隙間や凹凸がなくなり、油や埃が付着しても簡単に拭き取ることが可能な掃除性の優れたレンジフードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1のレンジフードの構成図
【図2】本発明の実施の形態1のスイッチ操作部の構成図((A)正面図、(B)側面図)
【図3】本発明の実施の形態1のスイッチ膨出部の構成図((A)スイッチ膨出部の側面図、(B)スイッチ突出部の側面図)
【図4】本発明の実施の形態1のスイッチ膨出部の断面図
【図5】本発明の実施の形態1のスイッチ操作部の斜視図
【図6】本発明の実施の形態1のコイル基板の正面図
【図7】本発明の実施の形態1の制御部の回路図
【図8】本発明の実施の形態1のスイッチ押圧部の誘起電圧波形を示す図
【図9】本発明の実施の形態1のスイッチ突出部の動作を示す図((A)タイミング34のスイッチ突出部の側面図、(B)タイミング35のスイッチ突出部の側面図、(C)タイミング36のスイッチ突出部の側面図)
【図10】本発明の実施の形態1のスイッチ突出部の誘起電圧波形を示す図((A)コイル21の誘起電圧波形を示す図、(B)コイル20の誘起電圧波形を示す図)
【図11】本発明の実施の形態2のスイッチ操作部の構成図((A)正面図、(B)側面図)
【図12】本発明の実施の形態2のスイッチ凹部の構成図
【図13】本発明の実施の形態2のスイッチ凹部の断面図
【図14】従来のレンジフードの構成図
【図15】従来のレンジフードのスイッチ操作部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の請求項1記載の発明は、調理機器の上方に設置され、調理時に発生する油煙を屋外へ排出するための送風手段と、レンジフード筐体の表面に設けられ前記送風手段の運転入力をするスイッチ操作部と、前記筐体の裏面に設けられ前記スイッチ操作部の操作を前記筺体を介して検出するスイッチ受付部と、前記スイッチ受付部が検出した信号をもとに前記送風手段の運転を決定する制御部を備えたレンジフードであって、スイッチ受付部はスイッチ操作部の入力を筐体の変位によって検出する構成したものであり、使用者がスイッチ操作部に触れることによって筐体が微小に変位することをスイッチ受付部で検出し、スイッチ入力を判定することができるという作用を有する。
【0036】
また、本発明の請求項2記載の発明は、スイッチ受付部は複数のインダクションセンサを並べた構成とし、インダクションの変化量、変化した時間、インダクションの変化方向によってスイッチ入力を判定することを特徴とする請求項1記載のレンジフードとしたものであり、使用者がスイッチ操作部に触れることによって微小に変位した筐体をインダクションの変化で検出し、インダクションの変化量、変化した時間、インダクションの変化方向によって筐体の変位が使用者の操作によるものと判断するという作用を有する。
【0037】
また、本発明の請求項3記載の発明は、レンジフード筺体とスイッチ受付部との間に絶縁構造を設けたものであり、絶縁構造により、キッチン周辺のインバーター機器等から発生する輻射ノイズや人体による静電気からスイッチ受付部を保護し、また経年変化による筺体の反りやたわみといった機械的ストレスからスイッチ受付部を保護できる作用を有する。
【0038】
また、本発明の請求項4記載の発明は、スイッチ操作部は筐体全体に対して厚みを薄くし、スイッチの押圧部分を変位しやすい構造としたものであり、押圧に対して変位しやすいスイッチ操作部によってインダクション変化量を大きくしスイッチ感度や応答性を高める作用を有する。
【0039】
また、本発明の請求項5記載の発明は、スイッチ操作部の押圧部分を囲う支持機構をレンジフード内側に形成したものであり、筺体裏側からスイッチ押圧部外周を支持することでスイッチの押圧部のみ変位させる作用を有する。
【0040】
また、本発明の請求項6記載の発明は、押圧部分は内側に凹ませ、押圧に対して復元する力をフード裏面から与える構成としたものであり、使用者にとってスイッチの押圧部が分かりやすく、かつ筺体裏側からスイッチの押圧部を支持することでスイッチ押下に対する復元力を得られる作用を有する。
【0041】
また、本発明の請求項7記載の発明は、押圧部分は外側に膨出させ、押圧に対して復元可能な構成としたものであり、使用者にとってスイッチ押下部が分かりやすく、かつ外側に反りを与えることで変位に対する復元力を得られる作用を有する。
【0042】
また、本発明の請求項8記載の発明は、スイッチ操作部に突出部を設け、突出部の変位によって発生する筐体表面のたわみを検出することを特徴としたものであり、突出部を傾けた際に発生する筐体のたわみをインダクション変化によって検知し、スイッチ入力として判定するという作用を有する。
【0043】
また、本発明の請求項9記載の発明は、スイッチ操作部に突出部を設け、突出部の変位によって発生する筐体表面の反りを検出することを特徴としたものであり、突出部を傾けた際に発生する筐体の反りをインダクション変化によって検知し、スイッチ入力として判定するという作用を有する。
【0044】
また、本発明の請求項10記載の発明は、突出部の変位方向よってスイッチ入力を判定することを特徴とするものであり、突出部を傾けた際に発生する筐体のたわみや反りをインダクション変化とその変化方向によって検知し、変化方向に応じてスイッチ入力確定内容を判別するという作用を有する。
【0045】
また、本発明の請求項11記載の発明は、突出部の繰り返し操作によって送風手段の動作モードを変更することを特徴とするものであり、突出部を傾けた際に発生する筐体のたわみや反りをインダクション変化とその変化方向によって検知し、同じ方向の繰り返し操作があった場合は運転パターンを強めたり弱めたりする作用を有する。
【0046】
また、本発明の請求項12記載の発明は、筐体の材質には形状記憶合金を用い、押圧が加わり変位しても元の形状に復元することを特徴とするものであり、落下等で大きな外力がスイッチ操作部に加わっても元の形状に復元する作用を有する。
【0047】
また、本発明の請求項13記載の発明は、スイッチ操作部にエンボスによる運転表示を設けたことを特徴とするものであり、スイッチ操作部に設けられた押圧部の機能が明確になるという作用を有する。
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0049】
(実施の形態1)
図1に示すように、ガスコンロ、IHコンロなどの調理機器1の上方に設置されるレンジフードは、調理時に発生する油煙等を排出する送風手段である送風機2と、この送風機2と油煙を屋外へ導く配管ダクトからなる送風機ユニット3と、調理時に発生した油煙を捕集する金属製のフード部4と、調理機器1を照射するLED照明5と、フード部4の前面に送風機2およびLED照明5の動作モードを設定するスイッチ操作部6とを設け構成されている。
【0050】
図2にスイッチ操作部6の構成を示す。スイッチ操作部6のスイッチの押圧部分は、フード部4をプレス加工して形成したもので、その形状により、スイッチ膨出部7〜9とスイッチ突出部10としたものであり、フード部4を貫通する孔または開口部は一切ない。本実施の形態1では使用する金属は電気亜鉛めっき鋼板(SECC)とし、厚みは0.5mmを使用するものとする。
【0051】
図3(a)はスイッチ膨出部7〜9の側面図を、図3(b)はスイッチ突出部10の側面図を示す。スイッチ膨出部7〜9はプレス成型により押し出された構造であり、フード部4の表面より高さ5mmまで押し出されている。また、天頂部11は直径30mmの円状で前面側へ膨出させた形状となっており、また、プレス加工により厚み0.3〜0.4mm程度に押しつぶされ、これが復元可能な構成として押圧に対して変位しやすい構成となっている。
【0052】
またスイッチ突出部10は縦10mm×横40mmの長方形状でプレス成型され、使用者の指が掛かる20mmの高さで突出している。
【0053】
図4はスイッチ膨出部7〜9の断面図を、図5にはスイッチ操作部6の斜視図を示す。筐体12の裏面には筐体12と、コイル基板13を絶縁するラバーシート14がはめ込まれており、このラバーシート14に形成した基板受部15でコイル基板13を受ける構造となっている。また、筐体12はコイル基板13を固定する樹脂成型部品16によって背面より支持されており、また樹脂成型部品16はスイッチ操作部6の背面にあるネジ孔が設けられたスイッチ取り付け枠50に嵌め込まれた後にネジによって固定される構造となっている。本構成によってスイッチ膨出部7〜9に押圧が加わった際は天頂部11以外の金属筐体が押し込まれることを防止している。
【0054】
図6にはスイッチ受付部となるコイル基板13の構造を示す。コイル基板13にはエナメル処理されたコイル17〜21が渦巻状に巻かれた状態でエポキシ樹脂によって固着され基板上に並べられている。各コイルは各スイッチ膨出部に対応する配置で並んでおり、コイル17はスイッチ膨出部7に、コイル18はスイッチ膨出部8に、コイル19はスイッチ膨出部9に、コイル20とコイル21は上下に並べられてスイッチ突出部10と向かい合う配置となっている。またそれぞれのコイルは制御部22に接続される。ここで、スイッチ膨出部7は送風機2の「切」操作スイッチ、スイッチ膨出部8は送風機2の「弱」運転操作スイッチ、スイッチ膨出部9は送風機2の「強」運転操作スイッチ、スイッチ突出部10はLED照明5の「点灯/消灯」操作スイッチの役割を行うものとし、以下そのスイッチ膨出部から操作入力を判定する動作原理についてスイッチ膨出部7を例にとって図7と図8を参照しながら説明する。
【0055】
制御部22ではマイコン27のOUTPUT―SIGNALポート(以降、OSポート)23にてコイル17に20kHzの周波数で発振電圧を印加し、コイル17から磁界を発生させている。ここで、第1インダクタンス25はコイル17のインダクタンスとコイル17および筐体12の相互インダクタンスの総和を表しており、また、第2インダクタンス26はコイル17が発生する磁界によって誘導される筐体12のインダクタンスを示している。そして、それらインダクタンスの発生レベルを誘起電圧によってANALOG―DIGITAL変換ポート(以降、ADポート)24にて検出している。
【0056】
次に、使用者がスイッチ膨出部7の天頂部11に押圧を加えると(図8のタイミング30)、押圧によって天頂部11は内側に反りこみ、コイル17が発生している磁束に接近する。するとコイル17と筐体12間との相互インダクタンスが変化し、第1インダクタンス25の磁束が変化する。このときのADポート24で検出される誘起電圧は大きくなる(図8のタイミング31)ことから制御部22ではスイッチ膨出部7が押されたと判断する。
【0057】
また、使用者が天頂部11への押圧を開放すると(図8のタイミング32)、天頂部11は弾性力によって外側へ反り返り元の形状に戻る。するとコイル17と筐体12との相互インダクタンスが変化しL21の磁束が変化する。このときのADポート24で検出される誘起電圧は小さくなる(図8のタイミング33)ことから制御部22ではスイッチ膨出部7が開放されたと判断する。
【0058】
上記に示すように、使用者が天頂部11を操作すると誘起電圧が変化を起こすことで制御部22はスイッチ膨出部が操作されたと判断でき、また、誘起電圧の変化方向によって膨出部の変位方向を検出することができる。
【0059】
以上の動作原理により、使用者がスイッチ膨出部8を押すと、送風機2は弱ノッチの排気風量で運転を開始する。また次にスイッチ膨出部9を押すと、送風機2は強ノッチの排気風量で運転を開始する。また使用者がスイッチ膨出部7を押すと、送風機2の運転は停止する。
【0060】
次にスイッチ突出部10におけるスイッチ検出原理について、図9、図10を参照しながら説明する。図10には、コイル21とコイル20に誘起される電圧を示している。
【0061】
図9(A)に示すように、スイッチ突出部10(図10(A)のタイミング34)を矢印26aの方向から力を加えると、すなわちスイッチ突出部10を上から下方向へ力を加えると、スイッチ突出部10の下側27は内側へたわむことでコイル21の磁束を変化させ、逆に上側28は外側へ反ることになりコイル20はコイル21と逆方向の磁束を発生させる(図10(A)(B)のタイミング35)。また、続けて矢印29の方向からスイッチ突出部10に力を加えると、すなわちスイッチ突出部10を下から上方向へ力を加えると、コイル21の磁束が変化し、コイル20の磁束はコイル21と逆方向に発生する(図10(A)(B)タイミング36)。さらに、続けてスイッチ突出部10へ加えた力を解放すると、金属の反発と引っ張りによってスイッチ突出部10は元の状態に復元される(図10(A)(B)のタイミング37)。
【0062】
上記の動作によりスイッチ突出部10の変位方向をコイル基板13を介して制御部22で読み取ることが可能となり、スイッチ突出部10が上方向へ変位すればLED照明5を点灯させ、また下方向へ変位すれば照明を消灯するよう制御部22はLED照明5を制御する。
【0063】
ここでスイッチ突出部10を連続して上方向に変位させると、LED照明5の照度を段階的にUPさせることが可能な構成とする。
【0064】
以上の構成により本実施の形態1のレンジフードは、使用者のスイッチ操作をスイッチ膨出部7〜9の天頂部11の変位で検出することが可能となり、スイッチ操作面上にはボタンや一切の開口部をなくし、油や埃が付着しても簡単に拭き取ることが可能な掃除性の優れたレンジフードを得ることが可能となる。
【0065】
またスイッチ膨出部の天頂部の変位をコイルのインダクタンスで検知し、かつ制御部22で変位の大きさ、変化時間、変化方向を読み取ることで、使用者のスイッチ操作を判定することが可能となる。
【0066】
またスイッチ膨出部7〜9において、天頂部11の厚みをプレス加工で薄くすることで、天頂部のみ変位しやすいスイッチ膨出部7〜9を実現することが可能となる。
【0067】
またスイッチ膨出部7〜9において、筐体12とコイルとの間にラバーシート14を挿入することで、コイルと筐体の離隔距離を確保しかつ、ノイズや静電気といった外乱に対してコイルを保護することが可能となる。
【0068】
またスイッチ膨出部7〜9において、樹脂成型部品16によって筐体12を背面から支持することで、膨出部以外の変位を防止することが可能となる。
【0069】
また天頂部11を外側に膨出させて外側への応力を形成することで、変位に対して元の状態に復元する天頂部11を形成することが可能となる。
【0070】
またスイッチ突出部10を側面方向(実施の形態では側面に沿って上側または下側)に変位させた際に発生するたわみと反りをコイル20、21で検出することでスイッチ突出部の変位方向を検出することが可能となり、また変位方向によってスイッチ入力を判定するレバースイッチを実現することが可能となる。
【0071】
またスイッチ突出部10において、同じ方向に繰り返し操作を行うと、重複する運転パターンを強めたり弱めたりすることが可能なレバースイッチを実現できる。
【0072】
また本実施の形態1の発明では、使用する金属は電気亜鉛めっき鋼板(SECC)としたが、形状記憶合金(ニッケルとチタンの合金5:5)を使用した場合は、レンジフードを落下させてスイッチ操作部が変形しても、時間と共に元の形状に復帰しスイッチ操作が可能となるレンジフードを得ることもできる。
【0073】
(実施の形態2)
図11、図12に本実施の形態2のスイッチ操作部6を示す。スイッチ操作部6の押圧部であるスイッチ凹部35〜38は、フード部4をプレス加工して形成したものである。したがって、フード部4を貫通する孔または開口部は一切ない。本実施の形態2は、実施の形態1と同様に使用する金属は電気亜鉛めっき鋼板(SECC)とし、厚みは0.5mmを使用するものとする。図12に示すように、スイッチ凹部35〜38は深さ5mm、たて30mm、横30mmでフード部4前面に対して反対側に凹んだ形状となっており、スイッチの上部にはそれぞれのスイッチの役割を示す点字「きり」39、点字「かんき」40、点字「かんき」41、点字「しょうめい」42がエンボス加工で施されている。
【0074】
図13には実施の形態2のスイッチ凹部の断面図を示す。筐体12と樹脂回路ケース45の間にはラバーシート44が密着した状態で挿入されており、使用者が天頂部46に押圧を加えた際には緩衝材として働き、また押圧が開放された場合は樹脂回路ケース45との間の反発力により天頂部46を押し戻す。
【0075】
樹脂回路ケース45の内部には、実施の形態1と同様の配置でコイル基板13の上にエナメル処理されたコイル17が渦巻状に巻かれた状態でエポキシ樹脂によって固着されて並べられている。コイル17は天頂部46の微小な変位を検出して、使用者のスイッチ操作を検出するものであり、そのスイッチ検出原理は実施の形態1の図7および図8と同様のため詳細な説明は省略する。
【0076】
本実施の形態2によれば、スイッチをフード部4表面に対し内側に凹ませ、復元する力をフード裏面から与える構成として天頂部46にラバーシート44と樹脂回路ケース45の反発力を与えることにより、使用者にとってスイッチ押下部が分かりやすく、かつ天頂部46を凹みから復帰させることが可能なレンジフードが得られる。
【0077】
またスイッチの上部にエンボス加工による点字文字を施すことで、スイッチの役割が明確となり、また視覚障害者の誤操作を防止することが可能なレンジフードが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように本発明のレンジフードは、隙間や開口部を有する機械的接点を用いず金属筐体を利用してスイッチ操作を可能としかつ清掃が容易であることから、油の付着や侵入などが懸念される工場設備や屋外設置機器に有用である。
【符号の説明】
【0079】
1 調理機器
2 送風機
3 送風機ユニット
4 フード部
5 LED照明
6 スイッチ操作部
7 スイッチ膨出部
8 スイッチ膨出部
9 スイッチ膨出部
10 スイッチ突出部
11 天頂部
12 筐体
13 コイル基板
14 ラバーシート
15 基板受部
16 樹脂成型部品
17 コイル
18 コイル
19 コイル
20 コイル
21 コイル
22 制御部
23 OSポート
24 ADポート
25 第1インダクタンス
26 第2インダクタンス
44 ラバーシート
46 天頂部
101 調理機器
102 送風機
103 レンジフード本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理機器の上方に設置され、調理時に発生する油煙を屋外へ排出するための送風手段と、レンジフード筐体の表面に設けられ前記送風手段の運転入力をするスイッチ操作部と、前記筐体の裏面に設けられ前記スイッチ操作部の操作を前記筺体を介して検出するスイッチ受付部と、前記スイッチ受付部が検出した信号をもとに前記送風手段の運転を決定する制御部を備えたレンジフードであって、スイッチ受付部はスイッチ操作部の入力を筐体の変位によって検出することを特徴とするレンジフード。
【請求項2】
スイッチ受付部は複数のインダクションセンサを並べた構成とし、インダクションの変化量、変化した時間、インダクションの変化方向によってスイッチ入力を判定することを特徴とする請求項1記載のレンジフード。
【請求項3】
レンジフード筺体とスイッチ受付部との間に絶縁構造を設けたことを特徴とする請求項1または2記載のレンジフード。
【請求項4】
スイッチ操作部は筐体全体に対して厚みを薄くし、スイッチの押圧部分を変位しやすい構造としたことを特徴とする請求項1、2または3記載のレンジフード。
【請求項5】
スイッチ操作部の押圧部分を囲う支持機構をレンジフード内側に形成したことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のレンジフード。
【請求項6】
押圧部分は内側に凹ませ、押圧に対して復元する力をフード裏面から与える構成としたことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のレンジフード。
【請求項7】
押圧部分は外側に膨出させ、押圧に対して復元可能な構成としたことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のレンジフード。
【請求項8】
スイッチ操作部に突出部を設け、突出部の変位によって発生する筐体表面のたわみを検出することを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のレンジフード。
【請求項9】
スイッチ操作部に突出部を設け、突出部の変位によって発生する筐体表面の反りを検出することを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のレンジフード。
【請求項10】
突出部の変位方向よってスイッチ入力を判定することを特徴とする請求項8または9記載のレンジフード。
【請求項11】
突出部の繰り返し操作によって送風手段の動作モードを変更することを特徴とする請求項9または10記載のレンジフード。
【請求項12】
筐体の材質には形状記憶合金を用い、押圧が加わり変位しても元の形状に復元することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載のレンジフード。
【請求項13】
スイッチ操作部にエンボスによる運転表示を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載のレンジフード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−58765(P2011−58765A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211407(P2009−211407)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】