説明

レンズ研磨方法及びレンズ研磨装置

【課題】研磨ムラの少ない高精度のレンズ研磨を効率的に行うことが可能なレンズ研磨方法およびレンズ研磨装置を提供する。
【解決手段】レンズ研磨方法は、研磨装置の回転軸に保持され該回転軸を中心に回転駆動するレンズに対し、研磨ツールが回転軸の軸線と直交する方向及び軸線方向から、レンズの光学面に回転軸を中心に同心円状又は螺旋状のいずれかの研磨軌跡を描くように光学面を非球面形状に研磨するレンズ研磨方法であって、レンズを、研磨軌跡の旋回中心から離間した位置に配置する工程と、研磨ツールが光学面を研磨する時に、研磨ツールと光学面との間に所定の圧力を付与する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、任意の自由曲面形状等からなるレンズ面を研磨するレンズ研磨方法及びレンズ研磨装置に関し、特に、同心円状又は螺旋状に旋回する研磨軌跡を描きながら研磨するレンズ研磨方法及びレンズ研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、NC制御のカーブジェネレータで非球面形状に研削されたレンズを研磨する場合、一様研磨法とスモールツール研磨法が用いられている。一様研磨法では、レンズを研削した後、レンズ加工面のカーブに沿った形状の研磨皿(バルーン状のもので、レンズの加工面全面に圧接される)を用いて、レンズ表面のスクラッチやクラック層を除去している。そして、最近では、累進多焦点レンズのような自由曲面形状のレンズ面に対応するために、レンズ加工面のカーブに合わせて研磨皿(すなわち、バルーン)の形状を制御することも行われている(例えば、特許文献1)。
【0003】
スモールツール研磨法では、レンズを研削した後、レンズより充分に小さい研磨皿(ポリシャ)を用いて、レンズを2次元に移動させながらレンズ表面の各位置のスクラッチやクラック層を除去している(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−183714号公報
【特許文献2】特開2000−296464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記一様研磨法では、研磨皿がレンズ加工面全体に接触して研磨するため、スモールツール研磨法と比較し、短時間でスクラッチやクラック層の除去を行うことが可能である。しかし、研磨圧力、研磨速度、研磨剤などが不均一になり易いため研磨ムラが生じ易く、一様に研磨することが難しい。そのため、一般的には、一様研磨後のレンズ形状が設計値になるように、予め研磨時の誤差分を見込んで研削を仕上げる等の工夫がなされているが、一様研磨誤差分を完全に把握することもまた困難であり、一様研磨後の形状も完全な設計値になるとは限らない。
【0006】
一方、スモールツール研磨法では、レンズの形状に拘わらずに研磨できるものの、レンズを2次元に移動させながらレンズ表面の比較的小さなエリア毎にスクラッチやクラック層の除去を行うため、レンズ全体を研磨するためには、多くの時間を要し、効率的な加工ができないという問題がある。
【0007】
また、一様研磨法又はスモールツール研磨法によって非球面形状のレンズを研磨する場合には、非球面形状に応じた研磨を行う必要性から、レンズ毎に研磨せざるを得ず、研磨工程が製造工程上のボトルネックとなっていた。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、レンズ研磨装置を用いたレンズ研磨工程において、研磨ムラの少ない高精度のレンズ研磨を効率的に行えるようにし、これにより、累進屈折力レンズなどの非球面レンズを簡単かつ高効率に製造することが可能なレンズ研磨方法およびレンズ研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のレンズ研磨方法は、研磨装置の回転軸に保持され該回転軸を中心に回転駆動するレンズに対し、研磨ツールが回転軸の軸線と直交する方向及び軸線方向から、レンズの光学面に回転軸を中心に同心円状又は螺旋状のいずれかの研磨軌跡を描くように光学面を非球面形状に研磨するレンズ研磨方法であって、レンズを研磨軌跡の旋回中心から離間した位置に配置する工程と、研磨ツールが光学面を研磨する時に研磨ツールと光学面との間に所定の圧力を付与する工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
このような構成のレンズ研磨方法によれば、レンズを研磨軌跡の旋回中心から離間した位置で回転させながら研磨加工を行うため、研磨剤が被加工レンズL上に滞留することなく、また、研磨ツールと光学面との間に所定の圧力が付与された状態で研磨がなされるため、研磨ムラの少ない高精度のレンズ研磨が実現される。
【0011】
また、研磨ツールと光学面との間に所定の圧力を付与する工程は、研磨ツールと光学面とが当接する角度に基づいて所定の圧力を設定する工程を含むことができる。この場合において、研磨ツールと光学面との間に所定の圧力を付与する工程は、光学面の法線方向の圧力が略一定となるように所定の圧力を設定する工程を含む構成とすることが望ましい。このような構成によれば、レンズの光学面の形状に因らず、一定の研磨圧力で研磨を行うことが可能となるため、より高精度のレンズ研磨を行うことができる。
【0012】
また、研磨ツールが、光学面を研磨軌跡の方向に略一定の速度で相対的に移動するように回転軸の回転速度を設定する工程を備えてもよい。このような構成によれば、研磨速度を一定にすることが可能となるため、さらに研磨ムラを抑え、高精度のレンズ研磨が可能となる。
【0013】
また、レンズが複数であって、旋回中心を取り囲むように配置され、各レンズに対してそれぞれに独立した3次元レンズ曲面を形成するように回転軸の軸線方向における研磨位置をレンズごとに数値制御し、全てのレンズを同時に研磨する工程を備えてもよい。このような構成によれば、それぞれ異なる形状の複数のレンズを同時に研磨することが可能となるため、研磨工程の効率が飛躍的に向上する。
【0014】
また、研磨位置をレンズごとに数値制御する工程は、研磨軌跡の進行方向で隣り合う2つのレンズ間の回転軸の軸線方向における研磨軌跡を、研磨軌跡の先行側に位置するレンズの研磨軌跡終端部における勾配と研磨軌跡の後行側に位置するレンズの研磨軌跡開始部における勾配とに基づいて設定する工程を含むことができる。この場合において、隣り合う2つのレンズ間の回転軸の軸線方向における研磨軌跡を設定する工程は、研磨軌跡終端部における勾配と研磨軌跡開始部における勾配の一次微分係数が略同一であるとともに、研磨軌跡終端部と研磨軌跡開始部との間の中間部分での前記回転軸の軸線方向における研磨軌跡を円弧又は平面の少なくともいずれか一方を含む滑らかな軌跡とすることが望ましい。このような構成によれば、各レンズ間の研磨軌跡が滑らかに結ばれるため、研磨による縁だれを抑えることが可能となる。
【0015】
また、レンズは、累進屈折力眼鏡レンズ、プリズム量を含む眼鏡レンズ又は累進屈折力とプリズム量を含む眼鏡レンズのいずれか一つであり、該レンズの光学中心における法線が、回転軸に対して所定の角度となるようにレンズを配置することが望ましい。この場合、累進屈折力眼鏡レンズの近用屈折力測定基準位置又は遠用屈折力基準位置の少なくとも一方を旋回中心から累進屈折力眼鏡レンズの光学中心を通る放射線に沿って設定する工程を備えていることが望ましい。また、レンズが乱視屈折力成分を含み、レンズの乱視屈折力表示がマイナス表示のときに、乱視軸の方向を放射線と直交する方向に設定する工程を備えていることが望ましい。このような構成によれば、回転軸に対してレンズの方向性を揃えることが可能となるため、研磨ツールの回転軸の軸線方向における移動量を最小限に抑えることが可能となる。
【0016】
また、別の観点からは、本発明のレンズ研磨装置は、レンズを保持する回転軸と、回転軸を駆動する駆動装置と、回転軸の軸線と直交する方向および軸線方向から、レンズの光学面に回転軸を中心に同心円状又は螺旋状のいずれかの研磨軌跡を描くように光学面を非球面形状に研磨する研磨ツールとを備えたレンズ研磨装置であって、レンズを、研磨軌跡の旋回中心から離間した状態で保持するレンズ保持手段と、研磨ツールが光学面を研磨する時に研磨ツールと光学面との間に所定の圧力を付与する圧力付与手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、回転軸を研磨ツールに対して送り移動するレンズ移動手段と、レンズ移動手段の移動位置と研磨軌跡の旋回角度とに基づいて、研磨ツールを回転軸の軸線と直交する方向に移動する研磨ツール移動手段とを備えた構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のレンズ研磨方法およびレンズ研磨装置によれば、レンズを研磨軌跡の旋回中心から離間させ、かつ、研磨ツールと光学面との間に所定の圧力を付与しているので、研磨圧力が安定し、また、レンズ表面に研磨剤が滞留しないため、高精度のレンズ研磨を効率的に行うことが可能となる。そして、この結果、累進屈折力レンズなどの非球面レンズを簡単かつ高効率に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るレンズ研磨装置1の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、本実施形態のレンズ研磨装置1を用いて行われる研磨工程の手順を示すフローチャートである。
【図3】図3は、本実施形態のレンズアダプタ50の構成を説明する図である。
【図4】図4は、本実施形態のレンズ研磨装置1のポリッシャ35と被加工レンズLとの位置関係をZ−X平面上で説明する図である。
【図5】図5は、本実施形態のレンズ研磨装置1のポリッシャ35と被加工レンズLとの位置関係をZ軸方向及び加工軌跡の進行方向で説明する図である。
【図6】図6は、本実施形態のレンズ研磨装置1にバルーンツールを適用した場合のポリッシャ35Mと被加工レンズLとの位置関係をZ−X平面上で説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係るレンズ研磨装置1の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係るレンズ研磨装置1は、制御装置10と、レンズ駆動ブロック20と、レンズ研磨ブロック30等を備える。なお、図1においては、左右方向をX軸と定義し、上下方向をZ軸と定義し、X軸とZ軸に直交する方向(すなわち、紙面と直交する方向)をY軸と定義する。
【0022】
レンズ駆動ブロック20は、ワークテーブル21と、テーブル駆動モータ22と、XYステージ23と、X軸モータ24と、Y軸モータ25を備えている。ワークテーブル21は、被加工レンズLが取り付けられた円盤状のレンズアダプタ50が載置される円盤状のテーブルである。ワークテーブル21の下方には、ワークテーブル21を回転させるテーブル駆動モータ22が配設され、ワークテーブル21の回転中心軸Zoとテーブル駆動モータ22の回転軸とが一致するように固定されている。テーブル駆動モータ22は制御装置10に接続され、制御装置10からの指示に従ってワークテーブル21を所定の回転数で反時計回りに回転させる。後述するように、レンズアダプタ50は、その中心がワークテーブル21の回転中心軸Zoと一致するようにワークテーブル21上に載置されており、被加工レンズLは、レンズアダプタ50の中心(すなわち、ワークテーブル21の回転中心軸Zo)の周囲に、例えば、4個等角度に配置される。従って、ワークテーブル21が回転中心軸Zoを中心に回転すると、ワークテーブル21上にレンズアダプタ50を介して載置された被加工レンズLも所定の回転数で反時計回りに回転することとなる。
【0023】
XYステージ23は、ワークテーブル21及びテーブル駆動モータ22を下側から支持する支持台であり、その下端には、ワークテーブル21及びデーブル駆動モータ22をX軸方向及びY軸方向にそれぞれ移動させるX軸モータ24及びY軸モータ25を備えている。X軸モータ24及びY軸モータ25は、それぞれ制御装置10に接続されたリニアモータであり、制御装置10からの指示に従って、XYステージ23(すなわち、ワークテーブル21)をX軸方向及びY軸方向に沿って移動させる。なお、詳細は後述するが、本実施形態のレンズ研磨装置1による被加工レンズLの研磨加工時においては、XYステージ23は、X軸モータ24によってX軸方向に沿ってのみ移動し、Y軸モータ25によるY軸方向の移動は、専らワークテーブル21とレンズ研磨ブロック30との位置合わせのために行われる。
【0024】
レンズ研磨ブロック30は、Z軸モータ31と、アクチュエータ32と、支持フレーム33と、アーム34と、ポリッシャ35と、ポリッシャ駆動モータ36とを備える。支持フレーム33は、その上端がZ軸モータ31に接続されている。Z軸モータ31は、制御装置10に接続されたリニアモータであり、制御装置10からの指示に従って、支持フレーム33をZ軸方向に沿って移動させる。また、アーム34は、Z軸方向に延びるアームであり、基端部は、ポリッシャ駆動モータ36の回転軸に接続され、先端部にポリッシャ35を備えている。ポリッシャ駆動モータ36は、制御装置10に接続されたモータであり、制御装置10からの指示に従って、アーム34を反時計方向に所定の回転数で回転させることにより先端部のポリッシャ35を回転させる。アクチュエータ32は、不図示のスプリング等の圧力付与機構を介してアーム34に接続され、制御装置10からの指示に従って、アーム34を介してポリッシャ35の先端に所定の圧力を付与する。レンズ研磨装置1による被加工レンズLの研磨加工時においては、Z軸モータ31及びアクチュエータ32は、ポリッシャ35の先端が回転しながら、被加工レンズLの所定の位置に所定の圧力で当接するように制御される(詳細は後述)。なお、本実施形態においては、ポリッシャ35は、レンズ径よりも小径の、いわゆるスモールツールポリシング用の研磨ポリッシャである。
【0025】
研磨剤供給ホース40は、研磨剤を供給するための供給口であり、レンズ研磨装置1による被加工レンズLの研磨加工時、被加工レンズLの加工面(研磨面)に、例えば、水に砥粉を分散させた研磨剤を供給する。
【0026】
制御装置10は、CPU11、メモリ12、ネットワークインターフェース(不図示)等を備えており、CPU11がメモリ12に記憶されたプログラムを実行することにより、レンズ研磨装置1の各構成要素を統括的に制御する。
【0027】
このように構成されたレンズ研磨装置1は、ネットワークインターフェースを介して制御装置10に入力される加工データに従って、上述のテーブル駆動モータ22、X軸モータ24、Y軸モータ25、Z軸モータ31、アクチュエータ32、ポリッシャ駆動モータ36、研磨剤の供給等を制御しながら被加工レンズLの研磨加工を行う。
【0028】
詳細は後述するが、本実施形態のレンズ研磨装置1は、ワークテーブル21上にレンズアダプタ50を介して配置した4つの被加工レンズLをワークテーブル21の回転中心軸Zoを中心に回転させながらX軸方向に沿って移動させ、ポリッシャ35をZ軸方向に移動制御することにより研磨加工を行うものである。すなわち、ポリッシャ35の位置は、ワークテーブル21(レンズアダプタ50)の周縁から中心に向けて順次移動し、その移動位置に応じてZ軸方向への位置が数値制御されることにより、4つの被加工レンズLの光学面が同時に、かつ、所定の非球面の3次元レンズ曲面に応じて研磨加工される。
【0029】
次に、本実施形態のレンズ研磨装置1を用いて行われる研磨工程について詳述する。図2は、本実施形態のレンズ研磨装置1を用いて行われる研磨工程の手順を示すフローチャートである。
【0030】
<図2のS101:被加工レンズLの配置>
本実施形態の研磨工程では、先ず、レンズアダプタ50に被加工レンズLを配置する。図3は、本実施形態のレンズアダプタ50の構成を説明する図である。図3(a)は、被加工レンズLを搭載したレンズアダプタ50の平面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A´断面図である。なお、図3(a)中、細線で示す円は、後述する研磨加工時のポリッシャ35の加工軌跡(研磨軌跡)を表している。
【0031】
図3(a)に示すように、予め研削装置等で研削された被加工レンズLは、レンズアダプタ50の回転軸Zoの周囲に、加工面(研磨面)を上にして、例えば、4個等角度に配置される。この場合、被加工レンズL間の最小間隔は、使用するポリッシャ35の大きさに応じて0.1〜50mmの範囲で設定されるが、好ましくは5〜10mm以上あるとよい。また、被加工レンズL間の最小間隔が小さくなると、被加工レンズLの周縁部(例えば、周縁部5〜10mm程度)の研磨を精度よく行うことができなくなるため、いわゆる縁ダレが生じ易くなるが、周縁部の品質を無視しても構わなければ、被加工レンズL同士が一部で隣接する配置としてもよい。また、レンズアダプタ50上に配置する被加工レンズLは、全て同じ設計値(すなわち、同じ形状)のレンズであってもよく、また、異なる設計値のレンズであってもよい。
【0032】
図3(b)に示すように、被加工レンズLは、加工面と対向する面に固定材52を介して保持部材51が取り付けられ、ブロッキング(保持)される。レンズアダプタ50は、保持部材51が嵌合するための複数の孔を有しており、ブロッキングされた被加工レンズLは、保持部材51を介してレンズアダプタ50の孔に固定される。固定材52には、例えば、保護テープ、粘着剤、接着剤、低融点合金などが用いられる。
【0033】
そして、被加工レンズLが固定されたレンズアダプタ50は、その中心がワークテーブル21の回転中心軸Zoと一致するようにワークテーブル21上に載置され固定される。
【0034】
なお、本実施形態においては、被加工レンズLを4個配置する構成としたが、1個以上であればよく、2個以上の複数個とするのが好適である。被加工レンズLを複数個配置する場合には、図3(a)に示すように、加工中心(レンズアダプタ50の回転中心軸Zo)を外して配置すればよく、加工中心に対称となるように配置するのが好ましい。
【0035】
また、被加工レンズLが、累進屈折力眼鏡レンズ、プリズム量を含む眼鏡レンズ又は累進屈折力とプリズム量を含む眼鏡レンズの場合、被加工レンズLの光学中心における法線は、Z軸(ワークテーブル21の回転中心軸Zo)に対して傾き(方向性)を有する。従って、各被加工レンズLは、その光学中心における法線が、ワークテーブル21の回転中心軸Zoに対して一定の角度となるようにレンズアダプタ50に配置されるのが好ましい。例えば、乱視屈折力レンズの場合(乱視屈折力表示がマイナス表示のときに)、乱視軸の方向がワークテーブル21の回転中心軸Zoから乱視屈折力レンズの光学中心を通る放射線と直交するように配置される。また、累進屈折力レンズの場合は、ワークテーブル21の回転中心軸Zoから累進屈折力レンズの光学中心を通る放射線上に遠用屈折路力測定基準点、または近用屈折路力測定基準点を配置すると好ましい。このように各被加工レンズLの方向性をワークテーブル21の回転中心軸Zo方向に揃えて配置すると、各被加工レンズLにおける加工軌跡及びレンズ間の加工軌跡をできるだけ単純化することが可能(すなわち、研磨加工中のポリッシャ35の移動量を最小化することが可能)となるため、研磨加工時間の短縮が可能となる。
【0036】
また、本実施形態の研磨装置1で研磨加工される被加工レンズLは、既に旋盤加工機等で研削されたレンズである。旋盤加工機としては、例えば、出願人が先に出願した国際特許出願第2008/120691号に記載のものを適用することが可能である。この旋盤加工機は、本実施形態の研磨装置1と同様、例えば、4つの被加工レンズLを、固定材52を介して保持部材51に取り付けてブロッキングし、レンズアダプタ50に固定して研削加工を行う装置である。従って、この旋盤加工機による研削加工の終了後、旋盤加工機からレンズアダプタ50を取外し、本実施形態の研磨装置1のワークテーブル21に載置すれば、被加工レンズLを取り外すことなく研磨加工することが可能となる。すなわち、本実施形態の研磨装置1と本旋盤加工機との組み合わせによれば、複数のレンズの研削、研磨加工を一連の製造工程の中で実施することが可能となるため、作業性、生産効率は格段に向上することとなる。
【0037】
<図2のS103:レンズ設計データの配置>
レンズアダプタ50に配置した被加工レンズLの配置情報(各被加工レンズLのレンズアダプタ50に対する位置、回転角度等)と、各被加工レンズLの設計データ(3次元形状データ)とに基づいて加工データKDを作成する。具体的には、研磨装置1の制御装置10とLAN(Local Area Network)等で接続された不図示のワークステーションやPC等によって、レンズアダプタ50に配置した各被加工レンズLの設計データから加工データKD、すなわち研磨加工時にポリッシャ35の位置を特定するための3次元座標データを作成する。
【0038】
加工データKDの作成にあたっては、先ず、レンズアダプタ50に配置した被加工レンズLの設計データを配置するための仮想の加工データを準備する。この仮想加工データは、本実施形態の研磨装置1によって研磨加工される1または複数の被加工レンズLの設計データを配置するためのレンズ光学面形状データ領域と、被加工レンズLが存在せず形状データがない部分(すなわち、被加工レンズL間の谷間の部分)を示すブランク領域とで構成される。なお、本実施形態においては、レンズ光学面形状データは、例えば、高さ(Z軸方向)データのマトリックス、またはスプライン関数にて表示される曲面データである。
【0039】
次に、各被加工レンズLの設計データを、レンズアダプタ50に配置した被加工レンズLの配置と一致するように(すなわち、各被加工レンズLのレンズアダプタ50上の位置、レンズの回転角度に合わせて)仮想加工データのレンズ光学面形状データ領域に各々配置する。この工程によって、レンズアダプタ50に配置した各被加工レンズLの設計データ(レンズ光学面形状データ)が仮想加工データ上にレイアウトされることとなる。
【0040】
<図2のS105:補間曲面データの作成>
次に、被加工レンズL間を加工軌跡t(図3(a))によって連結するための補間曲面データを作成する。補間曲面データは、仮想加工データのブランク領域でのポリッシャ35の位置を示す3次元座標データである。従って、補間曲面データとしては、各被加工レンズLとの境界において連続でかつ滑らかに接合される曲面とすることが好ましい。
【0041】
補間曲面データの作成にあたっては、先ず、レンズ光学面形状データのみが配置された仮想加工データ上に、レンズアダプタ50の回転軸Zoを中心とする螺旋状又は複数の同心円状の加工軌跡t(図3(a))のデータを重ねて比較する。この場合において、同心円の数は、例えば200mm程度の直径を有する領域であれば30〜70程度とするのが好ましい。
【0042】
そして、加工軌跡t上における各被加工レンズLの周縁部の3次元座標値(すなわち、各被加工レンズLの外径と加工軌跡tとが交差する位置における各被加工レンズLのレンズ光学面形状データ)、および勾配(周縁部勾配)を算出する。そして、加工軌跡tの方向において隣接する被加工レンズLの周縁部間において頂点または変曲点を有し、かつ各被加工レンズLの周縁部にて滑らかに接続する曲面を算出する。ここで、本明細書において、「滑らか」とは、レンズ光学面形状データと補間曲面データの境界面で3次元座標値が一致し、かつ1次微分および2次微分係数が補間曲面データ側およびレンズ光学面形状データ側において一致していることを意味する。また、各被加工レンズL間を結ぶ加工軌跡上の補間曲面データは、2次微分係数の符号が変更される変曲点を少なくとも一つ含むことが好ましい。
【0043】
各被加工レンズLの周縁部の3次元座標値及び勾配の算出方法については、例えば、2次元のスプライン関数を用い、2次元の離散データについてスプライン関数をフィッティングする方法を適用することが可能である。
【0044】
2次元のスプライン関数は、次式によって定義される正規化されたm階のB―スプライン関数である。
【0045】
【数1】

と書ける。ここに、Nm(x)、Nm(y)は、
【数2】

【0046】
上記式において、mは階数、h+2mはx方向の節点の本数、ξはx方向の節点定義位置、k+2mはy方向の節点の本数、ηはy方向の節点定義位置、cijは係数である。
【0047】
カーブジェネレータ(曲面加工装置)によって加工される眼鏡レンズ21の凸面または凹面のいずれか一方の加工面を、上述した形式のスプライン関数によってフィッティングする。凸面の形状関数をF(Y,Z)、凹面の形状関数をG(Y,Z)とすると、ある点(Y1,Z1)での凸面、凹面の高さ(X座標位置)は、下記のF(Y1、Z1)で表すことができる。
F(Y1,Z1)=ΣCij Nm(Y1)Nm(Z1)
【0048】
ここで、Nm(Y)Nm(Z)は、スプライン関数の特徴である、節点に依存する関数である。また、Cijは、形状をフィッティングする際に得られる係数で、この係数を求める際には最小2乗法を使用して求める。
【0049】
そして、形状関数Fの3次元形状データよりレンズ設計面の任意の位置での3次元位置座標、および勾配を算出する。
【0050】
なお、上述した本実施形態においては、被加工レンズL間について補完曲面データを作成する構成として説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、各被加工レンズLの周囲に所定(例えば10mm程度)のデータを追加して外挿を行う構成としてもよい。ここで、「外挿」とは、既に実験または計算により確定した値を得られている、幾つかの実験値(算出値)から実験値または算出値の存在しない部分について、それを推定して求めるという、数学用語である。このような構成の場合、補間曲面データは、外挿データの周縁部について、3次元座標値、ならびに勾配を算出することによって作成すればよい。
【0051】
また、補完曲面データの作成に先立ち、仮想加工データのレンズ光学面形状データ領域上のみで螺旋状又は同心円状の加工軌跡tを重ねて比較し、螺旋軌跡の存在しない位置を補間して補間曲面データを作成してもよい。
【0052】
<図2のS107:加工データの送信>
上記のようにして算出された加工データ(被加工レンズLの設計データ及び補間曲面データ)は、ネットワークインターフェース(不図示)を介してレンズ研磨装置1の制御装置10に送られる。
【0053】
<図2のS109:研磨加工>
次に、本実施形態のレンズ研磨装置1によって研磨加工が実行される。具体的には、レンズ研磨装置1のCPU11が、メモリ12に格納されたプログラムを呼び出し、受信した加工データに基づいてレンズ研磨装置1の各構成要素を制御して被加工レンズLを研磨する。図4は、本実施形態のレンズ研磨装置1のポリッシャ35と被加工レンズLとの位置関係をZ−X平面上で説明する図である。図5は、本実施形態のレンズ研磨装置1のポリッシャ35と被加工レンズLとの位置関係をZ軸方向及び加工軌跡の進行方向で説明する図である。
【0054】
研磨加工が開始されると、レンズ研磨装置1は、先ずX軸モータ24及びY軸モータ25を駆動し、ワークテーブル21の回転中心軸Zoが所定の初期位置となるようにXYステージ23を移動させる。ここで、所定の初期位置とは、ワークテーブル21上の被加工レンズLとポリッシャ35とがX軸方向において十分に離間し、かつ、ワークテーブル21の回転中心軸Zoとポリッシャ35とを結ぶ直線がX軸と平行となる位置である。すなわち、ワークテーブル21の回転軸Zoが初期位置に移動した時、ポリッシャ35の位置は図4の「a」で示される位置に移動する。
【0055】
次いで、レンズ研磨装置1は、不図示のポンプを駆動し、研磨剤供給ホース40から被加工レンズL上に研磨剤を供給する。そして、テーブル駆動モータ22を制御してワークテーブル21上の被加工レンズLを所定の回転数で回転させると共に、ポリッシャ駆動モータ36を制御してポリッシャ35を回転させる。
【0056】
次いで、レンズ研磨装置1は、X軸モータ24を駆動し、ワークテーブル21をX軸に沿ってポリッシャ35の方向に一定速度で移動させる。そして、ポリッシャ35が加工領域(すなわち、ワークテーブル21内の領域)に入ると、加工軌跡tに応じた加工データ(被加工レンズLの設計データ及び補間曲面データ)を順次読み出しながら、Z軸モータ31及びアクチュエータ32を制御する。具体的には、レンズ研磨装置1は、ポリッシャ35のZ軸方向の位置を加工軌跡tに応じて移動させながら、ポリッシャ35が被加工レンズL上に位置する場合には、アクチュエータ32を駆動してポリッシャ35と被加工レンズLとの間に所定の圧力を付与し、ポリッシャ35が被加工レンズL上に位置しない場合(すなわち、ポリッシャ35が被加工レンズL間に位置する場合)には、アクチュエータ32の駆動を停止して、ポリッシャ35が補間曲面データに従って移動するように制御する。
【0057】
従って、ポリッシャ35は、ワークテーブル21上を螺旋状又は同心円状に相対的に移動し(図3(a))、Z−X平面上でみた場合、図4に示すように、ワークテーブル21の周縁部に位置する側(図4の「b」で示す位置)から回転中心軸Zoの位置する側(図4の「c」、「d」で示す位置)に向かって順次移動しながら各被加工レンズLを研磨する。このように、各被加工レンズLは、ワークテーブル21の回転中心軸Zoと直交する方向(すなわち、X軸方向)および軸線方向(すなわち、Z軸方向)から研磨加工されることとなる。
【0058】
また、上述したように、被加工レンズL間の谷間の部分に相当する加工データは、補完曲面データによって補間されている。従って、図5に示すように、ポリッシャ35と被加工レンズLとの相対的な位置関係を時間軸で表わした場合、ポリッシャ35は、加工軌跡tの進行方向に隣接する被加工レンズL間を滑らかな曲線で結ぶように移動することとなる。なお、本実施形態においては、先行側(図5中左側)に位置する被加工レンズLの加工軌跡終端部における勾配θ1と、後行側(図5中右側)に位置する被加工レンズLの加工軌跡開始部における勾配θ2の一次微分係数が略同一になるとともに、先行側に位置する被加工レンズLの加工軌跡終端部と、後行側に位置する被加工レンズLの加工軌跡開始部との間の中間部分でのZ軸方向における加工軌跡tが円弧または平面を含む滑らかな軌跡となるように補間曲面データが作成されている。
【0059】
なお、本実施形態の構成の場合、ポリッシャ35と被加工レンズLとの当接角度が被加工レンズLの形状に応じて異なるため、ポリッシャ35と被加工レンズLとの間に一定の圧力を付与したとしても、研磨圧力は一定とならない。そこで、本実施形態においては、ポリッシャ35が各被加工レンズLに当接し研磨する時、その当接角度に応じてアクチュエータ32を制御し、ポリッシャ35の先端に付与する圧力を制御している。具体的には、ポリッシャ35と被加工レンズLとの当接角度を加工軌跡tの方向とX軸方向について求め、当接角度が大きいほど(すなわち、ポリッシャ35と被加工レンズLとの当接角度が垂直に近くなるほど)圧力が小さくなるように制御を行っている。より具体的には、ポリッシャ35と被加工レンズLとが当接する各位置において、被加工レンズLの法線を求め、ポリッシャ35によって付与される圧力が被加工レンズLの法線方向において略一定となるようにアクチュエータ32が制御される。従って、本実施形態の構成によれば、ポリッシャ35と被加工レンズLとの当接角度が異なっても、被加工レンズLは略一定の研磨圧力で研磨されることとなるため、高精度に研磨することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態においては、ワークテーブル21上の被加工レンズLを所定の回転数で回転させる構成としたが、ワークテーブル21のX軸方向の移動に合わせてテーブル駆動モータ22を制御し、被加工レンズLの加工軌跡tの周速が一定となるように構成してもよい。このような構成によれば、研磨速度を一定とすることが可能となるため、被加工レンズLを高精度に研磨することが可能となる。
【0061】
上述した研磨加工が進行し(ワークテーブル21がX軸に沿って移動し)、ポリッシャ35がワークテーブル21の回転中心軸Zoの真上に位置した時、レンズ研磨装置1のCPU11は、研磨加工が終了したと判断する。そして、X軸モータ24及びY軸モータ25を駆動し、ワークテーブル21を所定の取出し位置に移動させると共に、ワークテーブル21の回転及びポリッシャ35の回転を停止させる。
【0062】
<図2のS111:被加工レンズの取出し>
そして、ワークテーブル21からレンズアダプタ50を取外し、さらにレンズアダプタ50から各被加工レンズLを取り外して研磨工程は終了する。
【0063】
上述したように、本実施形態のレンズ研磨工程(研磨方法)によれば、複数の被加工レンズLの光学面を同時に、かつ、一定の圧力で研磨することが可能となる。従って、研磨圧力に起因する研磨ムラの発生を抑えつつ、効率的な研磨を行うことが可能となる。また、複数の被加工レンズLを配置したワークテーブル21を回転させながら研磨加工を行うため、被加工レンズL上に供給された研磨剤は、遠心力により、ワークテーブル21の中心から周縁部に移動することとなる。従って、研磨剤が被加工レンズL上に滞留することがなく、安定した研磨を行うことができ研磨ムラの発生がさらに抑えられる。
【0064】
また、本実施形態のレンズ研磨装置1は、ワークテーブル21の回転中心軸Zoを取り囲むように配置した複数の被加工レンズLを同時に研磨するものであるが、各被加工レンズLの設計データを基に作成した加工データに基づいて、ポリッシャ35の位置が制御されるため、各被加工レンズLのそれぞれに独立した3次元レンズ曲面を研磨加工することができる。つまり、設計データの異なる複数の被加工レンズLを同時に研磨することができる。
【0065】
以上が本実施形態の説明であるが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の技術的思想の範囲内において、様々な変形が可能である。例えば、本実施形態においては、ワークテーブル21をX軸及びY軸方向に移動可能に構成し、ポリッシャ35をZ軸方向に移動させる構成としたが、ポリッシャ35を固定し、ワークテーブル21をX軸、Y軸及びZ軸方向に移動させる構成としてもよい。
【0066】
また、本実施形態においては、ポリッシャ35は、ポリッシャ駆動モータ36によって回転する構成として説明したが、ポリッシャ35が被加工レンズLに当接すればよく、回転しない構成もまた本発明に含まれる。
【0067】
また、本実施形態においては、ポリッシャ35は、スモールツールポリシング用の研磨ポリッシャとして説明したが、特許文献1に記載されているようなバルーン状の研磨ツール(「バルーンツール」と称す)を適用することも可能である。図6は、バルーンツールを適用した場合のポリッシャ35Mと被加工レンズLとの位置関係をZ−X平面上で説明する図である。この場合、図6に示すように、ポリッシャ35Mは、その研磨面を被加工レンズLの光学面に当接させながら、被加工レンズL上をワークテーブル21の周縁部に位置する側(図6のeで示す位置)から回転中心軸Zoの位置する側(図6のfで示す位置)に向かって移動し被加工レンズLを研磨する。バルーンツールは、スモールツールと比較して被加工レンズLとの接触面積を大きくすることが可能となるため、研磨加工時間をさらに短縮することが可能となる。
【符号の説明】
【0068】
1 レンズ研磨装置
10 制御装置
11 CPU
12 メモリ
20 レンズ駆動ブロック
21 ワークテーブル
22 テーブル駆動モータ
23 XYステージ
24 X軸モータ
25 Y軸モータ
30 レンズ研磨ブロック
31 Z軸モータ
32 アクチュエータ
33 支持フレーム
34、34M アーム
35、35M ポリッシャ
36 ポリッシャ駆動モータ
50 レンズアダプタ
51 保持部材
52 固定材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨装置の回転軸に保持され該回転軸を中心に回転駆動するレンズに対し、研磨ツールが前記回転軸の軸線と直交する方向及び軸線方向から、前記レンズの光学面に前記回転軸を中心に同心円状又は螺旋状のいずれかの研磨軌跡を描くように前記光学面を非球面形状に研磨するレンズ研磨方法であって、
前記レンズを、前記研磨軌跡の旋回中心から離間した位置に配置する工程と、
前記研磨ツールが前記光学面を研磨する時に、前記研磨ツールと前記光学面との間に所定の圧力を付与する工程と、
を備えたことを特徴とするレンズ研磨方法。
【請求項2】
前記研磨ツールと前記光学面との間に所定の圧力を付与する工程は、前記研磨ツールと前記光学面とが当接する角度に基づいて前記所定の圧力を設定する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のレンズ研磨方法。
【請求項3】
前記研磨ツールと前記光学面との間に所定の圧力を付与する工程は、前記光学面の法線方向の圧力が略一定となるように前記所定の圧力を設定する工程を含むことを特徴とする請求項2に記載のレンズ研磨方法。
【請求項4】
前記研磨ツールが、前記光学面を前記研磨軌跡の方向に略一定の速度で相対的に移動するように前記回転軸の回転速度を設定する工程を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレンズ研磨方法。
【請求項5】
前記レンズが複数であって、前記旋回中心を取り囲むように配置され、前記各レンズに対してそれぞれに独立した3次元レンズ曲面を形成するように前記回転軸の軸線方向における研磨位置をレンズごとに数値制御し、全てのレンズを同時に研磨する工程を備えていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項にレンズ研磨方法。
【請求項6】
前記研磨位置をレンズごとに数値制御する工程は、前記研磨軌跡の進行方向で隣り合う2つのレンズ間の前記回転軸の軸線方向における研磨軌跡を、前記研磨軌跡の先行側に位置するレンズの研磨軌跡終端部における勾配と前記研磨軌跡の後行側に位置するレンズの研磨軌跡開始部における勾配とに基づいて設定する工程を含むことを特徴とする請求項5に記載のレンズ研磨方法。
【請求項7】
前記隣り合う2つのレンズ間の前記回転軸の軸線方向における研磨軌跡を設定する工程は、前記研磨軌跡終端部における勾配と前記研磨軌跡開始部における勾配の一次微分係数が略同一であるとともに、前記研磨軌跡終端部と前記研磨軌跡開始部との間の中間部分での前記回転軸の軸線方向における研磨軌跡を円弧又は平面の少なくともいずれか一方を含む滑らかな軌跡とすることを特徴とする請求項6に記載のレンズ研磨方法。
【請求項8】
前記レンズは、累進屈折力眼鏡レンズ、プリズム量を含む眼鏡レンズ又は累進屈折力とプリズム量を含む眼鏡レンズのいずれか一つであり、該レンズの光学中心における法線が、前記回転軸に対して所定の角度となるように前記レンズを配置することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレンズ研磨方法。
【請求項9】
前記累進屈折力眼鏡レンズの近用屈折力測定基準位置又は遠用屈折力基準位置の少なくとも一方を前記旋回中心から前記累進屈折力眼鏡レンズの光学中心を通る放射線に沿って設定する工程を備えていることを特徴とする請求項8に記載のレンズ研磨方法。
【請求項10】
前記レンズが乱視屈折力成分を含み、前記レンズの乱視屈折力表示がマイナス表示のときに、乱視軸の方向を前記放射線と直交する方向に設定する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項8に記載のレンズ研磨方法。
【請求項11】
レンズを保持する回転軸と、
前記回転軸を駆動する駆動装置と、
前記回転軸の軸線と直交する方向および軸線方向から、前記レンズの光学面に前記回転軸を中心に同心円状又は螺旋状のいずれかの研磨軌跡を描くように前記光学面を非球面形状に研磨する研磨ツールと、
を備えたレンズ研磨装置であって、
前記レンズを、前記研磨軌跡の旋回中心から離間した状態で保持するレンズ保持手段と、
前記研磨ツールが前記光学面を研磨する時に、前記研磨ツールと前記光学面との間に所定の圧力を付与する圧力付与手段と、
を備えたことを特徴とするレンズ研磨装置。
【請求項12】
前記回転軸を前記研磨ツールに対して送り移動するレンズ移動手段と、
前記レンズ移動手段の移動位置と前記研磨軌跡の旋回角度とに基づいて、前記研磨ツールを前記回転軸の軸線と直交する方向に移動する研磨ツール移動手段と、
を備えたことを特徴とする請求項11に記載のレンズ研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27963(P2013−27963A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166734(P2011−166734)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】