説明

レンズ鏡筒および光学機器

【課題】好適な撮影をすることが可能なレンズ鏡筒および光学機器を提供すること。
【解決手段】レンズ鏡筒42に含まれる光学系の少なくとも一部を駆動する駆動部31と、前記レンズ鏡筒42の姿勢に対応する第1信号P1を受信する受信部9と、前記受信部9が前記第1信号P1を受信したタイミングとは異なるタイミングで、前記レンズ鏡筒42の振れを検出し前記レンズ鏡筒42の振れに対応する第2信号P2を出力する振れ検出部3,3x,3yと、前記第2信号P2を用いて前記第1信号P1を補正し前記レンズ鏡筒42の姿勢に対応する補正信号Sを出力する補正部9と、前記補正信号Sを用いて前記駆動部31を制御する制御部9とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒および光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
オートフォーカス(AF)機能を備えたカメラでは、一般にレンズ鏡筒に備えられたレンズCPUがAFレンズの駆動制御を行う。従来では、レンズ鏡筒の姿勢を考慮せずにAFを行っていたために、レンズを重力方向に駆動させた場合や、反重力方向に駆動させた場合などに、レンズの自重の影響を受けてしまい、理想的な合焦制御を行うことが困難であった。
【0003】
なお、カメラボディ側に姿勢センサを設けてレンズCPUに姿勢データを常に送信し続けるか、レンズ鏡筒側に姿勢センサを設けてレンズCPUに姿勢データを送信することで、合焦制御を向上させる技術が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ボディ側の姿勢センサからレンズCPUに姿勢データを常に送信し続ける場合には、姿勢データのデータ量が膨大となり、ボディ−レンズ鏡筒間の他のデータ通信に支障を及ぼす虞がある。一方で、レンズ鏡筒側に姿勢センサを設ける場合には、コストが増大してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−50229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、好適な撮影をすることが可能なレンズ鏡筒および光学機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るレンズ鏡筒(42)は、
レンズ鏡筒(42)に含まれる光学系の少なくとも一部を駆動する駆動部(31)と、
前記レンズ鏡筒(42)の姿勢に対応する第1信号(P1)を受信する受信部(9)と、
前記受信部(9)が前記第1信号(P1)を受信したタイミングとは異なるタイミングで、前記レンズ鏡筒(42)の振れを検出し前記レンズ鏡筒(42)の振れに対応する第2信号(P2)を出力する振れ検出部(3,3x,3y)と、
前記第2信号(P2)を用いて前記第1信号(P1)を補正し前記レンズ鏡筒(42)の姿勢に対応する補正信号(S)を出力する補正部(9)と、
前記補正信号(S)を用いて前記駆動部(31)を制御する制御部(9)とを含む。
【0008】
例えば、第1信号(P1)を受信したタイミングとは異なるタイミングとは、第1信号(P1)を受信した後である。まず、受信部が、レンズ鏡筒の外部から姿勢に関する第1信号を受信する。その後に、補正部はレンズ鏡筒の振れに対応する第2信号を用いて第1信号を補正し、レンズ鏡筒の姿勢に対応する補正信号を出力する。この補正信号に基づいて光学系が駆動される。制御部は、レンズ鏡筒の外部から受信した第1信号を基に第2信号の相対的な変化を加味することにより仮想の姿勢データを算出し、レンズ鏡筒の姿勢の変化に応じ、光学系の駆動力を変化させることができる。したがって、レンズ鏡筒内に姿勢に関するセンサを別途設けることなく、レンズ鏡筒が有する振れ検出部を用いて、低コストでレンズ鏡筒の姿勢を考慮した正確なAF制御を行うことが可能となる。また、第1信号を常時受けとる必要がなく、通信データ量が膨大になることもない。
【0009】
レンズ鏡筒(42)は、光学系を駆動させる駆動部(31)と、実際の姿勢に関する第1信号(P1)を受けとることが可能な受信部(9)と、レンズの傾きに関する第2信号(P2)を出力する振れ検出部(3,3x,3y)と、前記第1信号(P1)と前記第2信号(P2)とを用いて、仮想姿勢データを算出し、前記仮想姿勢データに基づき前記駆動部(31)の駆動力を補正する補正部(9)とを有しても良い。前記振れ検出部(3,3x,3y)が角速度センサであっても良い。前記駆動部(31)がオートフォーカスを行うためのアクチュエータであっても良い。
【0010】
前記受信部(9)は、前記レンズ鏡筒(42)が接続されるカメラボディ(40)から前記第1信号(P1)を受信しても良い。前記補正部(9)が、前記駆動部(31)を制御する前に前記第1信号(P1)を受信しても良い。前記制御部(9)は、前記駆動部(31)に前記光学系の合焦動作をさせるための制御が可能であり、前記受信部(9)は、前記制御部(9)が前記駆動部(31)に合焦動作をさせるための制御をする前に、前記第1信号(P1)を受信しても良い。
【0011】
制御部は、駆動部を制御するよりも前に第1信号を受信済みの状態なので、第1信号を基にして、例えばリアルタイムに第2信号の相対的な変化を加味することができ、レンズ鏡筒の姿勢を考慮した正確なAF制御を例えばリアルタイムに行うことができる。
【0012】
前記カメラボディ(40)は、前記第1信号(P1)を前記受信部(9)に出力した後、合焦動作をさせるための制御信号(S)を前記受信部(9)に出力し、前記制御信号(S)を出力した後、合焦動作が完了するまで前記第1信号(P1)を前記受信部(9)に出力しなくても良い。本発明に係るカメラシステムは、上記のレンズ鏡筒(42)と、ボディ側の制御部(2)とを含み、前記ボディ側の制御部(2)は、前記駆動部(31)の動作中には前記第1信号(P1)を送信しなくても良い。
【0013】
受信部が第1信号を受信してから合焦動作が完了するまでの間は、ボディ側の制御部は第1信号を出力しないので、カメラボディからレンズ鏡筒へ送信する第1信号の通信量が膨大とならず、必要最小限にすることができる。そのため、カメラボディとレンズ鏡筒との間における他のデータ通信に支障を及ぼすこともない。
【0014】
前記制御部(9)は、前記補正信号に応じて、前記駆動部(31)が前記光学系を駆動する駆動力が変化するように制御しても良い。
【0015】
前記第1信号(P1)は、前記カメラボディ(40)の姿勢に対応する角度情報であり、前記第2信号(P2)は、前記レンズ鏡筒(42)の振れに対応する角速度情報であっても良い。前記第2信号(P2)を用いて、前記光学系による像の振れを補正する振れ補正部(21)を有しても良い。すなわち、前記振れ補正部(21)が前記第2信号(P2)に応じてブレ補正を行っても良い。
【0016】
本発明に係る光学機器は、上記のレンズ鏡筒(42)と、前記レンズ鏡筒(42)に接続されるカメラボディ(40)とを含む。
【0017】
なお、上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために、実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るカメラのブロック回路図である。
【図2】図2は、図1に示す角速度センサを含む振れ補正機構の概念図である。
【図3】図3は、ボディCPUの作動を示すフローチャートである。
【図4】図4は、レンズCPUの作動を示すフローチャートである。
【図5】図5は、信号検出タイミングを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、図1に基づき、本発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒を有するカメラの全体構成について説明する。カメラ100は、レンズ鏡筒42とカメラボディ40とを有している。図1に示すように、カメラボディ40には、レンズ鏡筒42が着脱自在に装着される。なお、カメラ100の説明においては、図1および図2等に示すように、光軸Zおよびカメラボディ40の底面40aと垂直な方向をY軸方向、Z軸およびY軸に直交する方向をX軸方向として説明を行う。X軸、Y軸、Z軸は、相互に垂直になっている。
【0020】
図1に示すカメラボディ40には、撮像素子4が固定されている。撮像素子4からZ軸方向に、ミラー46、変倍レンズ群201、ブレ補正レンズ群202、AFレンズ群203、焦点距離レンズ群204が、この順に配置されている。
【0021】
カメラボディ40は、ボディCPU2を有している。ボディCPU2は、電気接点54b〜54dを介してレンズCPU9と通信可能になっている。ボディCPU2には、AFセンサ72、姿勢センサ1などが接続されている。カメラボディ40は、その内部に着脱自在に内蔵される電池8を有する。この電池8の負極端子は電気接点54fに接続される。電池8の正極端子は、DC/DCコンバータ6および電気接点54aに接続され、レンズ鏡筒42に内蔵されるAF駆動回路30および防振駆動回路20に電圧を供給可能になっている。DC/DCコンバータ6は、ボディCPU2に電圧を供給可能にすると共に、電気接点54eを介してレンズCPU9にも電圧を供給可能になっている。
【0022】
レンズ鏡筒42は、レンズCPU9を有している。レンズCPU9には、AF駆動回路30、AFエンコーダ処理回路32、角速度センサ3、防振駆動回路20、レンズ位置検出回路22などが接続されている。レンズ鏡筒42には、上記の他に、防振アクチュエータ21、AFアクチュエータ31、変倍レンズ群201、ブレ補正レンズ群202、AFレンズ群203、焦点距離レンズ群204などが具備してある。
【0023】
カメラボディ40内に配置してあるミラー46は、光軸Z方向から入射した光束を反射して不図示のファインダーに像を導くためのもので、サブミラー46aは、ミラー46を透過した光束を反射してAFセンサ(たとえばCCDセンサ)72に導く。AFセンサ72は、フォーカスが合っているか否かを検出する。ミラー46およびサブミラー46aは、撮像素子4への露光時に不図示のミラー駆動部(たとえばDCモータ)により駆動され、露光中は光路から退避する。
【0024】
ボディCPU2は、AFセンサ72におけるデフォーカス量を算出し、さらにレンズ駆動量So(AFレンズ群203のZ軸方向への移動距離および移動速度)に変換する。もし、被写体が動体である場合には、公知の方法でボディCPU2が像面移動速度を演算し、被写体移動による像面移動を予想してレンズ駆動量Soを算出する。
【0025】
レンズ駆動量Soは、電気接点54b〜54dを介してレンズCPU9へ送信され、レンズCPU9がレンズ駆動量Soに基づき駆動ゲインSを算出し、AFアクチュエータ31を制御する。AFアクチュエータ31は、レンズCPU9によって演算された駆動ゲインSに基づいてAFレンズ群203の駆動を行い、被写体像を撮像素子4に合焦させる。駆動ゲインSは、レンズ駆動量Soと姿勢補正係数Agとによって演算される(図4にて詳述する)。
【0026】
AFレンズ群203の駆動機構にはエンコーダ(不図示)が設けられており、AFレンズ群203の位置を検出可能になっている。エンコーダの出力値がAFエンコーダ処理回路32に入力され、AFエンコーダ処理回路32の出力値を考慮して、レンズCPU9にてAFレンズ群203の制御量が演算されるため、AFレンズ群203のフィードバック制御が可能になっている。
【0027】
防振駆動回路20は防振アクチュエータ21に接続してあり、角速度センサ3の出力値に基づいてブレ補正レンズ群202を駆動制御可能になっている。ブレ補正レンズ群202の位置情報は、レンズ位置検出回路22を介してレンズCPU9に入力され、フィードバック制御が可能になっている。ブレ補正についての詳細は、以下に述べる。
【0028】
図2に示すように、本実施形態では、レンズ鏡筒42にブレ補正機構が備えられている。カメラ100のブレ補正は、通常、X軸回りに回転するピッチングと、Y軸回りに回転するヨーイングとの2つの運動に対して行われる。
【0029】
カメラ100のブレ運動は、レンズ鏡筒42に内蔵されるX軸角速度センサ3x,Y軸角速度センサ3yから構成される角速度センサ3によりモニタされる。X軸角速度センサ3xは、ピッチングブレ検出用の角速度計であり、Y軸角速度センサ3yは、ヨーイングブレ検出用の角速度計である。なお、角速度センサ3は、X軸回りおよびY軸回りのブレを検出する一体の2軸角速度センサでもよい。
【0030】
この角速度センサ3は撮影時のブレを検出し、図1に示すレンズCPU9に検出信号を出力する。レンズCPU9は、図1に示す防振駆動回路20(VCM202x,202y)を駆動するために用いられるブレ補正レンズ群202の目標駆動位置の情報を演算する。その演算結果を基に、レンズCPU9は、図2に示すVCM(ボイスコイルモータ)202x,202yを制御する。これらのVCM202x,202yは、ブレを打ち消す方向にブレ補正レンズ群202を駆動する。このようにしてブレ補正が行われる。なお、ブレ補正レンズ群202の駆動機構はVCMに限定されず、その他のアクチュエータを用いることができる。
【0031】
次に、図3に示すフローチャートに基づいて、図1に示すボディCPU2の動作について説明を行う。まず、図3に示すステップS1にて、図1に示すボディCPU2が不図示のレリーズスイッチの半押しを検出することにより、AF制御が開始される。
【0032】
ステップS2にて、図1に示すボディCPU2は、姿勢センサ1の出力値に基づきカメラ100(レンズ鏡筒42)の姿勢情報P1を演算し、電気接点54b〜54dを介して、レンズCPU9に姿勢情報P1を送信する。ボディCPU2は、図5に示すタイミングt2ごとに図1に示す姿勢センサ1からカメラ100(レンズ鏡筒42)の姿勢に関する情報を読み出している。図5に示すタイミングt1は、図1に示すボディCPU2が、電気接点54b〜54dを介してボディCPU2から姿勢情報P1をレンズCPU3へ送信するタイミングであり、ボディCPU2が姿勢センサ1にアクセスするタイミングt2の整数倍になっている。すなわち、ボディCPU2は、レンズCPU9に対して姿勢情報P1を間引いて送信している。図5の点線は間引かれた姿勢情報P1を示している。例えば、図示の実施例では、ボディCPU2からレンズCPU9に送信される姿勢情報が1/5に間引かれている。
【0033】
図1に示すステップS3にて、図1に示すボディCPU2は、AFセンサ72の出力値を基にAFレンズ群203のレンズ駆動量Soを演算する。そして、図3に示すステップS4にて、図1に示すボディCPU2は、レンズCPU9へレンズ駆動量Soを送信する。
【0034】
図3に示すステップS5にて、図1に示すボディCPU2は、AFセンサ72の出力値を基に、AFレンズ群203が駆動され合焦したか否かを判定する。図3に示すステップS5にて合焦していると判定された場合には、ステップS6に進み、AF動作を終了する。ステップS5にて、合焦していないと判定された場合にはステップS3に戻り、レンズ駆動量Soの演算(ステップS3)およびレンズ駆動量Soの送信(ステップS4)を繰り返す。
【0035】
次に、図4に示すフローチャートに基づいて、図1に示すレンズCPU9の動作について説明を行う。
【0036】
まず、図4に示すステップS11にて、図1に示すレンズCPU9がボディCPU2から姿勢情報P1を受信する。次に、図4に示すステップS12にて、図1に示すレンズCPU9がボディCPU2からレンズ駆動量Soを受信する。
【0037】
図1に示すレンズCPU9は、図1および図2に示すX軸角速度センサ3x,Y軸角速度センサ3yの出力信号P2を図5に示すタイミングt3ごとに受信する。図4に示すステップS13にて、図1に示すレンズCPU9は、図4に示すステップS11にて受信済みの姿勢情報P1を基に、角度情報である角速度センサ3の出力信号P2を加味して、現在のレンズ鏡筒42の仮想姿勢データを演算する。図1に示すレンズCPU9は、図5に示すタイミングt3毎に角速度センサ3から出力信号P2を読み出し、その出力信号に時間を掛けることにより、タイミングt3ごとに図1に示すレンズ鏡筒42が何度傾いたかを演算する。仮想姿勢データの演算にあたって、X軸角速度センサ3xとY軸角速度センサ3yに重力方向の重み付けを行う。
【0038】
すなわち、図2に示すカメラ100が正位置の時にロール方向の回転角度0°、ピッチ方向の回転角度0°とすると、カメラ100が例えばロール方向の回転角度0°であることが予め姿勢情報P1から分かっていれば、X軸角速度センサ3xが重力方向の姿勢検出を100%負担する。図2に示すカメラ100が例えばロール方向の回転角度45°であることが予め姿勢情報P1から分かっていれば、X軸角速度センサ3xが重力方向の姿勢検出を50%負担し、Y軸角速度センサ3yが重力方向の姿勢検出を50%負担する。
【0039】
図4に示すステップS14にて、図1に示すレンズCPU9は、ステップS13にて得られた仮想姿勢データに基づき姿勢補正係数Agを演算する。姿勢補正係数Agは、図4に示すステップS15でAFレンズ群203の駆動ゲインSを求めるために必要なパラメータである。姿勢補正係数Agは、図1に示すカメラ100が正位置の時にAg=1とする。例えばレンズ鏡筒42が重力下向きでAFレンズ群203を重力下方向に移動させる時に、Agは1以下の値をとり、図1に示すAFレンズ群203の自重によりAFレンズ群203の移動が早まるのを防止する。また、例えばレンズ鏡筒42が重力上向きでAFレンズ群203を重力上方向に移動させる時に、Agは1以上の値をとり、AFレンズ群203の自重によりAFレンズ群203の移動が遅れるのを防止する。
【0040】
次に、図4に示すステップ15に進み、図1に示すレンズCPU9は、AFレンズ群203の駆動ゲインSを演算する。駆動ゲインSは、以下の数1にて示すことができる。
【0041】
(数1) S=So×Ag
【0042】
数1に示すように、ステップS12にて図1に示すレンズCPU9が受信したレンズ駆動量Soに対し、図4に示すステップS14にて得られた姿勢補正係数Agを掛けることにより、レンズCPU9は、駆動ゲインSを演算する。
【0043】
ステップS16にて、図1に示すレンズCPU9は、図4に示すステップS15にて得られた駆動ゲインSに基づいて、図1に示すAFアクチュエータ31を駆動制御する。
【0044】
図4に示すステップS17にて、図1に示すレンズCPU9は、図5に示すタイミングt3毎に受信する角速度センサ3の出力値P2が、前回受信時に比べて変化しているか否かを判定する。出力値P2が変化したと判定された場合にはステップS13に戻り、図1に示すレンズCPU9が、ステップS11にて受信済みの姿勢情報P1を基に、角度情報である角速度センサ3の出力信号P2を加味して、現在のカメラ100の仮想姿勢データを演算する。
【0045】
図4に示すステップS17にて、図1に示す角速度センサ3の出力値P2が前回受信時に比べて変化していないと判定された場合にはステップS18に進む。ステップS18にて、図1に示すレンズCPU9は、AFエンコーダ処理回路32の出力値を受信し、目標パルス数に達したか否かを判定する。
【0046】
図4に示すステップS18にて、目標パルス数に達したと判定された場合にはステップS19に進み、次回のAF動作命令に備えて待機する。ステップS18にて、目標パルス数に達したと判定されなかった場合にはステップS16に戻り、図1に示すレンズCPU9は、目標パルス数に達するまでAFアクチュエータ31に駆動信号を出力する。
【0047】
上述した一連のAF制御動作において、図5に示すタイミングt1毎に、図1に示すレンズCPU9が姿勢情報P1を更新する。レンズCPU9は、更新した姿勢情報P1に基づいて、角度情報である角速度センサ3の出力信号P2を加味して、現在のカメラ100の仮想姿勢データを演算する。図5に示すように、第2信号である角速度センサ3の出力信号P2が更新されるタイミングt3は、第1信号である姿勢情報P1が更新されるタイミングよりも短い。
【0048】
上述したように、まず、レンズCPU9が、ボディCPU2から姿勢情報P1を受信する。その後に、レンズCPU9はレンズ鏡筒42の振れに対応する角速度センサ3の出力信号P2を用いて姿勢情報P1を補正し、レンズ鏡筒42の姿勢に対応する駆動ゲインSを出力する。この駆動ゲインSに基づいてAFレンズ群203が駆動される。レンズCPU9は、ボディCPU2から受信した姿勢情報P1を基に角速度センサ3の出力信号P2の相対的な変化を加味することにより仮想の姿勢データを算出し、レンズ鏡筒42の姿勢の変化に応じ、AFレンズ群203の駆動力を変化させることができる。したがって、レンズ鏡筒42内に姿勢に関するセンサを別途設けることなく、レンズ鏡筒42が有する角速度センサ3を用いて、低コストでレンズ鏡筒42の姿勢を考慮した正確なAF制御を行うことが可能となる。また、姿勢情報P1を常時受けとる必要がなく、通信データ量が膨大になることもない。また、間引かれた姿勢情報P1の分だけ、出力信号P2を用いた補正(補完)が可能であるため、好適な制御が可能となる。
【0049】
レンズCPU9は、AFアクチュエータ31を制御するよりも前に姿勢情報P1を受信済みの状態なので、姿勢情報P1を基にして、リアルタイムに角速度センサ3の出力信号P2の相対的な変化を加味することができ、レンズ鏡筒42の姿勢を考慮した正確なAF制御をリアルタイムに行うことができる。
【0050】
なお、図1に示すボディCPU2は、AFアクチュエータ31の動作中には、図5に示すタイミングt1に関わらず姿勢情報P1をレンズCPU9に送信しなくても良い。レンズCPU9が姿勢情報P1を受信してから合焦動作が完了するまでの間は、ボディCPU2は姿勢情報P1を出力しないので、カメラボディ40からレンズ鏡筒42へ送信する姿勢情報P1の通信量が膨大とならず、必要最小限にすることができる。そのため、カメラボディ40とレンズ鏡筒42との間における他のデータ通信に支障を及ぼすこともない。
【0051】
なお、本実施形態では、図1に示すAFセンサ72を用いて位相差検出方式のオートフォーカスを行っても良いし、撮像素子4の出力結果を基にオートフォーカスを行っても良い。
【0052】
また、本実施形態では、図1に示す角速度センサ3の出力値からレンズCPU9が仮想姿勢データを演算したが、角速度センサ3の出力値以外の信号に基づき姿勢データを演算しても良い。たとえば防振アクチュエータ21(図2に示すVCM202x,202y)の駆動信号波形からレンズCPU9が仮想姿勢データを演算しても良い。防振アクチュエータ21の駆動信号波形は、角速度センサ3の出力値に対応しているからである。
【0053】
本実施形態に係るレンズ鏡筒を有するカメラとしては、図1に示すようなレンズ交換式カメラに限定されず、レンズ鏡筒42とカメラボディ40とが一体のカメラであってもよく、カメラの種類は特に限定されない。また、本実施形態に係るレンズ鏡筒は、スチルカメラに限らず、ビデオカメラなどの光学機器にも適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1…姿勢センサ
2…ボディCPU
3…角速度センサ
3x…X軸角速度センサ
3y…Y軸角速度センサ
9…レンズCPU
30…AFアクチュエータ
31…AFアクチュエータ
40…カメラボディ
42…レンズ鏡筒
203…AFレンズ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ鏡筒に含まれる光学系の少なくとも一部を駆動する駆動部と、
前記レンズ鏡筒の姿勢に対応する第1信号を受信する受信部と、
前記受信部が前記第1信号を受信したタイミングとは異なるタイミングで、前記レンズ鏡筒の振れを検出し前記レンズ鏡筒の振れに対応する第2信号を出力する振れ検出部と、
前記第2信号を用いて前記第1信号を補正し前記レンズ鏡筒の姿勢に対応する補正信号を出力する補正部と、
前記補正信号を用いて前記駆動部を制御する制御部とを含むことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記受信部は、前記レンズ鏡筒が接続されるカメラボディから前記第1信号を受信することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項2に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記第1信号は、前記カメラボディの姿勢に対応する角度情報であり、
前記第2信号は、前記レンズ鏡筒の振れに対応する角速度情報であることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1から請求項3までの何れか1項に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記第2信号を用いて、前記光学系による像の振れを補正する振れ補正部を有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記制御部は、前記駆動部に前記光学系の合焦動作をさせるための制御が可能であり、
前記受信部は、前記制御部が前記駆動部に合焦動作をさせるための制御をする前に、前記第1信号を受信することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか1項に記載されたレンズ鏡筒であって、
前記制御部は、前記補正信号に応じて、前記駆動部が前記光学系を駆動する駆動力が変化するように制御することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項7】
請求項1から請求項6までの何れか1項に記載されたレンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒に接続されるカメラボディとを含むことを特徴とする光学機器。
【請求項8】
請求項7に記載された光学機器であって、
前記カメラボディは、前記第1信号を前記受信部に出力した後、合焦動作をさせるための制御信号を前記受信部に出力し、前記制御信号を出力した後、合焦動作が完了するまで前記第1信号を前記受信部に出力しないことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−27774(P2011−27774A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170181(P2009−170181)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】