説明

レンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付きモバイル端末装置

【課題】小型で簡易な構成で且つレンズ支持体のX方向及びY方向の位置を高精度で検出することができるレンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付きモバイル端末装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかるレンズ駆動装置1は、レンズ支持体5に設けた複数のX方向被検出部43a、43bと、各X方向被検出部43a、43bの位置を検出する複数のX方向位置検出部49a、49bと、レンズ支持体に設けた複数のY方向被検出部45a、45bと、各Y方向被検出部45a、45bの位置を検出する複数のY方向位置検出部51a、51bとを備え、各X方向位置検出部49a、49bが検出した位置の平均値をレンズ支持体5のX方向位置とし、各Y方向位置検出部51a、51bが検出した位置の平均値をY方向位置としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付きモバイル端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、小型カメラ用のレンズ駆動装置において、手振れセンサに応答してレンズ支持体をX−Y方向に移動することが開示されている。また、この特許文献1の技術では、固定体に位置検出用マグネットを設けてレンズ支持体に磁気検出素子を設けてX方向及びY方向におけるレンズ支持体の位置を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−85448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、X方向及びY方向におけるレンズ支持体の位置検出はX方向及びY方向にそれぞれ1つの位置検出用マグネットと磁気検出素子を設けているだけなので、レンズ支持体の移動により、位置検出用マグネットが磁気検知素子に対して近くなる場合と離れる場合とで、磁気検知素子の感度に差(又は斑)が生じて、正確な位置を検知することができず、高い精度で手振れ補正することができないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、小型で簡易な構成で且つレンズ支持体のX方向及びY方向の位置を高精度で検出することができるレンズ駆動装置、オートフォーカスカメラ及びカメラ付きモバイル端末装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、内周にレンズを支持するレンズ支持体と、内周側にレンズ支持体を移動自在に支持する固定体と、レンズ支持体をレンズの光軸方向へ移動するZ方向移動機構と、レンズ支持体を光軸方向と直交するX−Y方向へ移動するためのX−Y方向移動機構と、レンズ支持体に設けた複数のX方向被検出部と、各X方向被検出部の位置を検出する複数のX方向位置検出部と、レンズ支持体に設けた複数のY方向被検出部と、各Y方向被検出部の位置を検出する複数のY方向位置検出部とを備え、各X方向位置検出部が検出した位置の平均値をレンズ支持体のX方向位置とし、各Y方向位置検出部が検出した位置の平均値をY方向位置としていることを特徴とするレンズ駆動装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、レンズ支持体に設けた各X方向被検出部及び各Y方向被検出部は位置検出用マグネットであり、各X方向位置検出部と各Y方向位置検出部とは固定体に設けてあり且つレンズ支持体の外周側に位置する磁気検出素子であり、位置検出用マグネットは、レンズ支持体の光軸方向の最大移動量以上の長さを光軸方向に有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、各X方向被検出部及び各Y方向被検出部はレンズ支持体の後端に設けてあることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、固定体はヨークを備え、Z方向駆動機構はレンズ支持体の周囲に巻回した第1コイルと、第1コイルに対向してヨークに設けた駆動用マグネットとを備え、X―Y方向移動機構はレンズ支持体の周囲に90度の間隔をあけて配置した少なくとも2つの第2コイルを備え、駆動用マグネットは第2コイルが設けてある位置では第2コイルにも対向してあり、ヨークにはX方向検出用マグネット及びY方向検出用マグネットに対向した位置に空間を形成していることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置と、各X方向位置検出部が検出した位置の平均値を算出してレンズ支持体のX方向位置とし、各Y方向位置検出部が検出した位置の平均値を算出してレンズ支持体のY方向位置とするX−Y位置検出部とを備えることを特徴とするオートフォーカスカメラである。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のオートフォーカスカメラを搭載したことを特徴とするカメラ付きモバイル端末装置である。
モバイル端末装置とは、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン等を言う。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、レンズ支持体のX方向位置及びY方向位置は、各々複数個所で測定した平均値としているので、位置の検出精度を高めることができる。即ち、レンズ支持体がX方向やY方向に移動して、例えば、レンズ支持体がY方向に移動してX方向被検出部がX方向位置検出部に近づいたり遠ざかることによりX方向位置検出部の検出感度に差が生じてもX方向において各々複数の検出値の平均を取ることで、検出精度を高めることができる。また、レンズ支持体が光軸方向に対して傾いて移動した場合でも、複数の検出値の平均を取ることにより、検出精度を高めることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の作用効果を奏すると共に、各X方向被検出部及び各Y方向被検出部をマグネットとし、各X方向位置検出部と各Y方向位置検出部とを磁気検出素子とすることで、簡易な構成で且つ安価に製造できる。
更に、マグネットを、レンズ支持体の光軸方向における最大移動距離以上の長さにしているので、レンズ支持体が光軸方向に移動したときでも、光軸方向と直交するX−Y方向の検出精度の低下を防止できる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の作用効果を奏すると共に、各X方向被検出部及び各Y方向被検出部をレンズ支持体の後端に設けることにより、レンズ支持体の周囲に設ける場合に比較して、レンズ支持体の外周側の寸法を大きく取らないで済み、装置の小型化を図ることができる。特に、X−Y方向移動機構やZ方向移動機構をレンズ支持体の外周側に配置した場合でも、X方向被検出部、Y方向被検出部、X方向位置検出部及びY方向位置検出部が邪魔にならない。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項に記載の作用効果を奏すると共に、Z方向移動機構及びX−Y方向駆動機構をコイルとマグネットによる簡易な構成で少ない部品点数にすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか一項に記載の作用効果を奏するオートフォーカスカメラを提供できる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の作用効果を奏するカメラ付きモバイル端末装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【図3】(a)は本発明の実施の形態にかかるレンズ駆動装置の水平断面図であり、(b)は(a)に示すB部の作用を模式的に示した図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るオートフォーカスカメラにおける、コイル体と駆動部との関係を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかるレンズ支持体のX−Y位置検出部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態に係るレンズ駆動装置1は、携帯電話に組み込まれるオートフォーカスカメラのレンズ駆動装置である。
【0020】
このレンズ駆動装置1は、図1及び図2に示すように、内周にレンズ(図示せず)を支持するレンズ支持体5と、内周側にレンズ支持体5を移動自在に支持するヨーク3と、ヨーク3の光軸方向前側に配置されるスペーサ7及び前側スプリング9と、ヨーク3の後側に配置されるベース8及び後側スプリング11とを備えており、レンズ支持体5の外周にはコイル体4が固定されている。このレンズ駆動装置1は、前側及び外周を磁気シールドケース6で覆っており、周囲の電子部品や電子機器への磁気による影響を防止してある。尚、図1では磁気シールドケース6を除いて示している。
また、本実施の形態では、固定体はヨーク3及びベース8を有している。
【0021】
ヨーク3は外周側壁3aを有し、ヨーク3の外周側壁3aは前側から見て略四角形状を成しており、四角の角部14は面取りされた形状になっている。ヨーク3の中心部にはレンズ支持体5が配置される開口部2が設けられている。
【0022】
ヨーク3の外周側壁3aの各角部14にはその内周に駆動用マグネット17が固定されている。ヨークの各角部3bには駆動用マグネット17の内周側に延出する内周側壁3bが設けてあり、内周側壁3bは、コイル体4の内周側に配置されている。
また、ヨーク3の外周側壁3aには、前側から見て四角形状を成す4つの辺に対応した位置の後端部側に空間部13が形成されている。
【0023】
図3(a)に示すように、各駆動用マグネット17は、前側から見た平面がヨーク3の面取りされた角部14に沿って略台形形状を成しており、その内周側が後述する第1コイル19の外周面に沿った円弧状を成している。また、駆動用マグネット17は内周側と外周側とで磁極を異にしており、例えば内周側をN極とし、外周側をS極としてある。尚、図3(a)では、ヨークの3の内周側壁3bを省略している。
【0024】
図2に示すように、レンズ支持体5は略円筒形状であり、レンズ支持体5の外周に固定されているコイル体4は、第1コイル19と第2コイル16a、16b、16c、16dとから構成されている。
第1コイル19は、レンズ支持体5の周方向全周に亘って巻回した円環状を成している。
【0025】
更に、第1コイル19の外周には、4つの第2コイル16a〜16dが周方向に等間隔(90度の間隔)で合計4つ配置されている。図2に示すように、各第2コイル16a〜16dは各々、レンズ支持体の半径方向外側から見て側面視環状を成している。
【0026】
各第2コイル16a〜16dは、第1コイル19の外周面に重ねて配置しており、前側辺部22、後側辺部25及び左右側辺部24、26を第1コイル19に重ねている。
【0027】
各駆動用マグネット17は、第2コイル16a〜16dに対面して設けてあり、図3(b)に示すように、駆動用マグネット17の内周側面17aは、第2コイル16a〜16dの各辺部22、25、24、26に対面してあり、駆動用マグネット17の周方向の寸法は第2コイル16a〜16dの周方向の寸法と略同じ寸法としてあると共にマグネット17の内周側面17aの面積は、対面する第2コイル16a〜16dの面積と略同じ面積になっている。
【0028】
尚、各駆動用マグネット17は、対面する第2コイル16a〜16dを介して第1コイル19に対向している。Z方向移動機構は、マグネット17、ヨーク3及び第1コイル19で構成され、X−Y方向移動機構はマグネット17、ヨーク3及び第2コイル16a〜16dで構成される。
【0029】
図3(b)に示すように、駆動用マグネット17の内周面のうち右(左)側部から出た磁束線の向きは半径方向内方と円周方向右(左)方の成分を持ち、駆動用マグネット17の内周面17aから離れるほど右(左)側へカーブする。即ち、磁束線の向きは半径方向内方と半径方向に対する左右方向の成分を持つ。同様に、駆動用マグネット17の内周面17aのうち光軸方向前側部から出た磁束線は、内周面17aから離れるほど前方側へカーブする。また、駆動用マグネット17の内周面17aのうち光軸方向後側部から出た磁束線の向きは半径方向内方と光軸方向後方の成分を持ち、内周面17aから離れるほど後方側へカーブする。第2コイル16b〜16dについても同様である。
【0030】
例えば、第1コイル19に前方側から見て反時計方向に電流Iを流すと、半径方向内方の鎖交磁束成分が寄与してフレミングの左手の法則により光軸方向前方へ推力が生じ、レンズ支持体5は光軸方向前方へ移動する。第2コイル16aに外方から見て反時計方向に電流Iを流すと、第2コイル16aの光軸方向前の前側辺部22では光軸方向前方の鎖交磁束成分が寄与して半径方向内方へ推力が生じる。同様に、第2コイル16aの後側辺部25、右側辺部26、左側辺部24においても半径方向内方へ推力が生じる。そのため、レンズ支持体5は第2コイル16aが半径方向内方へ移動するように移動する。第2コイル16b〜16dについても同様である。
【0031】
即ち、第2コイル16a、16cは、駆動用マグネット17の磁力線のうち第2コイル16a、16cに直交する成分の磁力と、第2コイル16a、16cに流れる電流によって、フレミングの左手の法則により、図3(a)に示すように、レンズ支持体5の半径方向に推力Eが作用し、第2コイル16b、16dも同様に、レンズ支持体5の半径方向に推力Fが作用する。推力Eと推力Fとは互いに直交している。
【0032】
図4に模式的に示すように、第1コイル19はZ駆動部32に接続されており、各第2コイル16a〜16dはX―Y駆動部33に接続されており、各々駆動部32、33から所定値の電流が通電される。尚、図3において、一点鎖線で示すZ駆動部32と第1コイル19との接続線及びX―Y駆動部33と第2コイル16a〜16dとの接続線は、電流の入力側又は出力側のみの接続を示している。
本実施の形態では、第2コイル16a及び16cと、16b及び16dとが直列に接続されており、2つの第2コイル16a及び16cで推力Eの方向に、第2コイル16b及び16dで推力Fの方向に駆動するようになっている。
【0033】
Z駆動部32では、レンズ支持体5をフォーカス位置へ移動(光軸方向への移動)する場合には、第1コイル19に電流Zを流す。
同様に、手振れ補正をする場合には、X―Y駆動部33では、第2コイル16a及び16cに電流Eを流してE方向にレンズ支持体5を移動させ、第2コイル16b及び16dに電流Fを流してF方向にレンズ支持体5を移動させる。これにより、レンズ支持体5をE−F方向に移動して手振れ補正を行う。
【0034】
Z駆動部32では、画像センサ31から受ける高域成分(コントラスト)のピークを比較しつつ、合焦点位置へレンズ支持体5をZ方向へ直線移動する。
X―Y駆動部33には、ジャイロセンサ等の手振れセンサ37が接続されており、X方向及びY方向の手振れ量を算出し、その算出結果に基づいてX−Y駆動部33に駆動信号を発する。
【0035】
尚、図3及び図4において、符合Z、E、Fは流した電流に基づいて生じる推力の方向と大きさを示している。
但し、図3(a)に示すように、本実施の形態では、X方向は前面視四角形状のヨーク3の一辺方向であり、Y方向は前面視四角形状のヨーク3の隣りの辺の方向としてあり、ヨーク3の対角線方向に生じる推力E、Fについて、X方向の分力EXとFXの和がX方向の推力として、Y方向の分力EYとFYの和がY方向の推力として作用することになり、XーY駆動部33では、各X方向の分力の和EX+FXをX方向推力として、各Y方向の分力の和EY+FYをY方向推力となるように制御している。
【0036】
次に、図5、図1及び図2を参照して、レンズ支持体5の固定体に対するX方向及びY方向の位置を検出する位置検出部41について説明する。位置検出部41は、第1X方向被検出部としての第1X方向マグネット43a、第2X方向被検出部としての第2X方向マグネット43b、第1Y方向被検出部としての第1Y方向マグネット45a、第2Y方向被検出部としての第2Y方向マグネット45b、第1X方向位置検出部としての第1X方向磁気検知素子49a、第2X方向位置検出部としての第2X方向磁気検知素子49b、第1Y方向位置検出部としての第1Y方向磁気検知素子51a及び第2Y方向位置検出部としての第2Y方向磁気検知素子51bとを備えている。
第1X方向マグネット43aと第2X方向マグネット43bとは、レンズ支持体5のY方向における対向する2つの位置に設けてあり、第1Y方向マグネット45aと第2Y方向マグネット45bとは、レンズ支持体5のX方向における対向する2つの位置に設けてある。
【0037】
第1X方向マグネット43a及び第2X方向マグネット43bはX方向にN極とS極とが着磁してあり、第1Y方向マグネット43a及び第2Y方向マグネット43bはY方向にN極とS極とが着磁してある。
【0038】
第1X方向磁気検知素子49aは第1X方向マグネット43aに対向して配置してあり、同様に、第2X方向磁気検知素子49bは第2X方向マグネット43bに、第1Y方向磁気検知素子51aは第1Y方向マグネット45aに、第2Y方向磁気検知素子51bは第2Y方向マグネット45bに対向して設けてある。各磁気検知素子49a、49b、51a、51bは固定体であるベース8に固定される。各マグネット43a、43b、45a、45bは各磁気検知素子49a、49b、51a、51bと対向する面はそれぞれ光軸方向に平行である。
【0039】
図1に示すように、第1X方向マグネット43a、第2X方向マグネット43b、第1Y方向マグネット45a及び第2Y方向マグネット45bはレンズ支持体5の後端部に固定してある。
【0040】
第1X方向マグネット43a、第2X方向マグネット43b、第1Y方向マグネット45a及び第2Y方向マグネット45bは略同じ寸法で同じ重量の同種のマグネットが用いられている。
【0041】
図5に示すように、第1X方向マグネット43a、第2X方向マグネット43b、第1Y方向マグネット45a及び第2Y方向マグネット45bは、各々光軸方向の長さL1を有し、長さL1はレンズ支持体5の光軸方向における最大移動量L2以上である。これにより、レンズ支持体5が光軸方向に移動してもX方向及びY方向の移動が高い精度で検知することができる。
【0042】
また、第1X方向マグネット43a及び第2X方向マグネット43bの長さは、レンズ支持体5のX方向における最大移動量の2倍以上である。第1Y方向マグネット45a、第2Y方向マグネット45bについても同様である。これにより、レンズ支持体5がX方向に移動してもX(Y)方向位置検出部49a、49b(51a、51b)がX(Y)方向マグネット43a、43b(45a、45b)のX(Y)方向の位置を検出できるようになっている。
尚、第1X方向マグネット43a、第2X方向マグネット43b、第1Y方向マグネット45a及び第2Y方向マグネット45bはヨーク3の空間部13に対応した位置に配置されている。
【0043】
図1及び図2に示すように、各磁気検知素子49a、49b、51a、51bは、平面視略四角形状のベース8の辺部に設けてあり且つヨーク3の後側に位置している。また、図5に示すように、各磁気検知素子49a、49b、51a、51bは、X−Y位置検出部53に接続されている。
X−Y位置検出部53には、レンズ支持体5のX方向の位置を演算するX位置演算部55と、レンズ支持体5のY方向の位置を演算するY位置演算部57が設けてある。
【0044】
X位置演算部55では、第1X演算部59が第1X方向磁気検知素子49aからの検知信号を受けて第1X方向位置を演算し、第2X演算部61が第2X方向磁気検知素子49bからの検知信号を受けて第2X方向位置を演算し、平均演算部63が第1X方向位置と第2X方向位置の平均値を算出して、レンズ支持体5のX方向位置とし、X位置出力部65から、図4に示すX−Y駆動部33へ出力する。
【0045】
同様に、Y位置演算部57では、第1Y演算部67が第1Y方向磁気検知素子51aからの検知信号を受けて第1Y方向位置を演算し、第2Y演算部69が第2Y方向磁気検知素子51bからの検知信号を受けて第2Y方向位置を演算し、平均演算部71が第1Y方向位置と第2Y方向位置の平均値を算出して、レンズ支持体5のY方向位置とし、Y位置出力部73からX−Y駆動部33へ出力する。
【0046】
即ち、本実施の形態では、レンズ支持体5のX方向位置とY方向位置とは、各々2つの磁気検知素子で検出した位置の平均値を取っている。
【0047】
図2に示すように、前側スプリング9は、組み付け前の自然状態が平板状であり、平面視矩形の環状を成す外周側部9aと、外周側部9aの内周に配置され平面視円弧形状の内周側部9bと、外周側部9aと内周側部9bとを連結する4つの腕部9cとで構成されており、Z方向及びX―Y方向への変形が自在にできるようになっている。
【0048】
後側スプリング11は、組み付け前の自然状態が平板状であり、平面視矩形の環状を成す外周側部11aと、外周側部11aの内周に配置され平面視円形状の内周側部11bと、外周側部11aと内周側部11bとを連結する4つの腕部11cとで構成されている。後側スプリング11の各外周側部11aは、対応する端子部材18に重ねて固定されている。
【0049】
前側スプリング9の外周側部9aは、スペーサ7とヨーク3との間に挟持されており、内周側部9bはレンズ支持体5の前端に固定されている。後側スプリング11の外周側部11aはベース8とヨーク3の外周側壁3aとの間に挟持されており、内周側部11bはレンズ支持体5の後端に固定されている。これにより、レンズ支持体5は前側スプリング9と後側スプリング11とにより、光軸方向(Z方向)及びX―Y方向に移動自在に支持されている。第1コイル19、第2コイル16a、16c及び第2コイル16b、16dの各端部は、分割した前側スプリング9の内周側部9b、後側スプリング11の内周側部11bのいずれかに接続してあり、前側スプリング9と後側スプリング11とが各コイル16a〜16d及び19に流す直流電流の供給端子を兼ねている。
【0050】
そして、第1コイル19に電流を流すことにより、レンズ支持体5が光軸方向前方に移動すると、レンズ支持体5は、前側スプリング9及び後側スプリング11の前後方向の付勢力の合力と、第1コイル19及びマグネット17との間で生じる電磁力とが吊り合う位置で停止する。
【0051】
レンズ支持体5がX―Y方向に移動する場合には、所定の第2コイル16a〜16dに所定値の電流を流すことにより、レンズ支持体5は、前側スプリング9及び後側スプリング11のX―Y方向のスプリングの合力と、第2コイル16a〜16dと各対応するマグネット17との間で生じる電磁力とが吊り合う位置で停止する。
【0052】
次に、本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置1の組立て、作用及び効果について説明する。レンズ駆動装置1の組み立てに先立って、第1コイル19の外周面に各第2コイル16a〜16dを接着固定してコイル体4を形成し、レンズ支持体5の外周に固定する。また、レンズ支持体5の後端部には、第1X方向マグネット43a、第2X方向マグネット43b、第1Y方向マグネット45a、第2X方向マグネット45bを固定する。
【0053】
また、ベース8には平面視四角形の各辺の中央部に第1X方向磁気検知素子49a、第2X方向磁気検知素子49b、第1Y方向磁気検知素子51a及び第2Y方向磁気検知素子51bを取り付ける。
【0054】
レンズ駆動装置1の組立ては、図2に示すように、ベース8に、端子部材18、後側スプリング11、レンズ支持体5、各マグネット17を内周側面に固定したヨーク3、前側スプリング9、スペーサ7及び磁気シールドケース6をこの順序で組み付けて固定する。
【0055】
そして、第1コイル19はZ駆動部32に接続し、第2コイル16a〜16dは、対向するコイル16aと16c、16bと16dを直列に接続した後、X―Y駆動部33に接続する。
【0056】
本実施の形態に係るレンズ駆動装置1は、画像センサ31から受ける高域成分(コントラスト)のピークを比較しつつ、合焦点位置へレンズ支持体5をZ方向へ直線移動する。
【0057】
レンズ支持体5のZ方向への直線移動の際には、第1コイル19に電流Zを流すことにより生じるマグネット17との間で生じる電磁力と、前側スプリング9及び後側スプリング11との付勢力の合力とが吊り合う位置で停止する。
【0058】
また、レンズ支持体5のX―Y制御部(手振れ補正部)は、X−Y駆動部33がジャイロモセンサ等の手振れセンサ37からX―Y方向の手振れ量の大きさを信号として受け、X方向及びY方向の手振れ補正量を演算してレンズ支持体5の移動するべき目標位置E、F(X、Y)を各々決定して、第2コイル16a、16cと、第2コイル16b、16dとに通電することにより行う。
【0059】
そして、第1X方向磁気検出素子49aが第1X方向マグネット43aの磁束を検出すると共に第2X方向磁気検出素子49bが第2X方向マグネット43bの磁束を検出し、X−Y位置検出部53で、これらの検出値の平均値を算出して、レンズ支持体5のX方向位置を検出し、X−Y駆動部33では、レンズ支持体5がX方向の目標位置に達したかどうかを監視する。
【0060】
同様に、レンズ支持体5のY方向の移動においても、第1Y方向磁気検出素子51aが第1Y方向位置検出マグネット45aの磁束を検出すると共に第2Y方向磁気検出素子51bが第2Y方向マグネット45bの磁束を検出し、X−Y位置検出部53で、これらの検出値の平均値を算出して、レンズ支持体5のY方向位置を検出し、X−Y駆動部33では、レンズ支持体5がY方向の目標位置に達したかどうかを監視する。
【0061】
本実施の形態によれば、手振れセンサ37がX方向及びY方向の手振れ量を検出し、X―Y駆動部33では、手振れ量に基づくレンズ支持体5の移動するべき目標位置E、F(X、Y)を決定し、目標位置にレンズ支持体5がX方向及びY方向へ移動するようにレンズ支持体5に電流を流す。
尚、レンズ支持体5をX方向及びY方向に移動するための電流を流すときには、目標位置に移動する移動量よりも移動量が大きくなるような電流を流し、X方向磁気検出素子49a、49b及びY方向磁気検出素子51a、51bが目標位置に達したことを検出したところで、その位置を維持する為の電流値の電流を流し、レンズ支持体5のX方向及びY方向の移動を停止する。
【0062】
レンズ支持体5にはX方向位置検出マグネット43a、43b及びY方向位置検出マグネット45a、45bを設け、これらに各々対応して設けた磁気検出素子49a、49b、51a、51bが各位置検出マグネット43、45から磁束を検出して、手振れセンサ37が検出した手振れ量を打ち消す目標位置E、F(X、Y)にレンズ支持体5が移動したか否かを検知する。これにより、レンズ支持体5の手振れ補正を正確に且つ迅速に行うことができる。
【0063】
レンズ支持体5のX―Y方向の位置は、レンズ支持体5に設けた位置検出マグネット43a、43b、45a、45bと、ベース8に設けた磁気検出素子49a、49b、51a、51bとで検出できるから、小型で且つ簡易な構成である。
【0064】
また、レンズ支持体5が中心ではなく、例えばY方向にずれて位置している場合、第1X方向磁気検知素子49aの出力と第2X方向磁気検知素子49bの出力はレンズ支持体5が中心にある場合に比べて一方が大きく、他方が小さい。しかし、レンズ支持体5のX方向の位置は、第1X方向磁気検知素子49a、第2X方向磁気検知素子49bとの2つの磁気検知素子で検知してその平均値を算出しているので、レンズ支持体5がY方向にずれて位置していてもY方向の位置によらず、X方向の位置を正確に検出することができる。レンズ支持体5がX方向にずれて位置している場合も同様に、Y方向の位置を正確に検出することができる。よって、レンズ支持体5のX方向及びY方向の位置を高精度で検出できる。
【0065】
レンズ支持体5は、第1コイル19及び第2コイル16a〜16dに電流を流したときの電磁力により、光軸方向及びX―Y方向移動ができ、コンパクトな構成でレンズ支持体5の駆動ができる。
各位置検出マグネット43a、43b、45a、45bはヨーク3の空間部13に対応した位置に配置されているので、各位置検出マグネット43a、43b、45a、45bがレンズ駆動装置1の組立時及び動作時にヨーク3に吸引されるのを防止できる。
【0066】
マグネット17及び手振れ補正として機能する第2コイル16a〜16dを前側から見た平面視四角形のヨーク3の奥ゆきのある角部3bに配置することにより、手振れ補正機能を有しながら、手振れ補正機能を搭載していないレンズ駆動装置と同様なサイズで且つコンパクトな構成にできる。
【0067】
本発明は上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、本実施の形態において、X方向被検出部、Y方向被検出部、X方向位置検出部、Y方向位置検出部ではそれぞれ2つずつ設けたが、例えばベース8の各辺に対応する位置に2つずつ設けても良い。
第2コイル16a〜16d及び駆動用マグネット17はヨーク3の各角部3bに設けることに限らず、互いに周方向に90度の間隔をあけていれば良い。
【0068】
X方向被検出部とY方向被検出部とは共に金属板とし、X方向位置検出部とY方向位置検出部とはコイルとして、コイルに高周波電流を流したときのインダクタンスが金属板との距離により変化することを利用してX方向及びY方向の位置を検出するものであってもよい。
【0069】
第2コイル16a〜16dは、互いに90度間隔をあけて隣合わせに2つだけ設けても良い。
【0070】
第2コイル16a〜16dは、第1コイル19の内周側に配置しても良い。
【0071】
ヨーク3に形成する空間部13は、その形状や寸法は制限されず、各位置検出マグネット43a、43b、45a、45bがヨーク3に吸引されるのを防止できるものであれば良い。また、空間部13は内周側壁3bに設けても良いし、設けた方が望ましい。また、内周側部3bはなくても構わない。
【0072】
Z方向移動機構及びX−Y方向移動機構は、第1コイル19、第2コイル16a〜16dと駆動用マグネット17とすることに限らず、圧電素子による振動を利用したり、モータによりレンズ支持体5をZ方向及びX−Y方向に移動するものであっても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 レンズ駆動装置
3 ヨーク
5 レンズ支持体
13 空間部
32 Z駆動部
33 X−Y駆動部
37 手振れセンサ
43a 第1X方向マグネット
43b 第2X方向マグネット
45a 第1Y方向マグネット
45b 第2Y方向マグネット
49a 第1X方向磁気検出素子
49b 第2X方向磁気検出素子
51a 第1Y方向磁気検出素子
51b 第2Y方向磁気検出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周にレンズを支持するレンズ支持体と、内周側にレンズ支持体を移動自在に支持する固定体と、レンズ支持体をレンズの光軸方向へ移動するZ方向移動機構と、レンズ支持体を光軸方向と直交するX−Y方向へ移動するためのX−Y方向移動機構と、レンズ支持体に設けた複数のX方向被検出部と、各X方向被検出部の位置を検出する複数のX方向位置検出部と、レンズ支持体に設けた複数のY方向被検出部と、各Y方向被検出部の位置を検出する複数のY方向位置検出部とを備え、
各X方向位置検出部が検出した位置の平均値をレンズ支持体のX方向位置とし、各Y方向位置検出部が検出した位置の平均値をY方向位置としていることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
レンズ支持体に設けた各X方向被検出部及び各Y方向被検出部は位置検出用マグネットであり、各X方向位置検出部と各Y方向位置検出部とは固定体に設けてあり且つレンズ支持体の外周側に位置する磁気検出素子であり、位置検出用マグネットは、レンズ支持体の光軸方向の最大移動量以上の長さを光軸方向に有することを特徴とする請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
各X方向被検出部及び各Y方向被検出部はレンズ支持体の後端に設けてあることを特徴とする請求項1又は2項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
固定体はヨークを備え、Z方向駆動機構はレンズ支持体の周囲に巻回した第1コイルと、第1コイルに対向してヨークに設けた駆動用マグネットとを備え、X―Y方向移動機構はレンズ支持体の周囲に90度の間隔をあけて配置した少なくとも2つの第2コイルを備え、駆動用マグネットは第2コイルが設けてある位置では第2コイルにも対向してあり、ヨークにはX方向検出用マグネット及びY方向検出用マグネットに対向した位置に空間を形成していることを特徴とする請求項2又は3に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のレンズ駆動装置と、各X方向位置検出部が検出した位置の平均値を算出してレンズ支持体のX方向位置とし、各Y方向位置検出部が検出した位置の平均値を算出してレンズ支持体のY方向位置とするX−Y位置検出部とを備えることを特徴とするオートフォーカスカメラ。
【請求項6】
請求項5に記載のオートフォーカスカメラを搭載したことを特徴とするカメラ付きモバイル端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−177755(P2012−177755A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39731(P2011−39731)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000131348)シコー株式会社 (168)
【Fターム(参考)】