説明

レーザレーダ装置

【課題】装置の周囲において三次元的に物体を認識し得るレーザレーダ装置において、レーザ光の走査をより高速に行い得る構成を、小型化、軽量化を図りつつ実現する。
【解決手段】レーザレーダ装置1に設けられた偏向部41には、水平面に対する勾配状態がそれぞれ異なるように構成された複数の反射面101〜104が中心軸42aを中心として多重に且つ多段に配されている。更に、偏向面41aに対してライン走査がなされるようにミラー31が制御され、この偏向面41a上におけるレーザ光L1のライン走査位置は、偏向部41の回転に応じて複数の反射面101〜104上を相対的に移動する。そして、この相対移動の過程において、ライン走査されるレーザ光L1が複数の反射面101〜104にそれぞれ入射し、各反射面からは水平面に対する角度がそれぞれ異なるようにレーザ光L1が反射するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ光を用いて検出物体までの距離や方位を検出する技術として、例えば特許文献1のような装置が提供されている。この特許文献1の装置では、レーザ光発生手段からのレーザ光の光軸上に、レーザ光を透過させ、かつ検出物体からの反射光を検出手段に向けて反射する光アイソレータを設けている。さらに、光アイソレータを透過するレーザ光の光軸上において当該光軸方向の中心軸を中心として回動する凹面鏡を設け、この凹面鏡によってレーザ光を空間に向けて反射させると共に、検出物体からの反射光を光アイソレータに向けて反射させることで360°の水平走査を可能としている。
【0003】
特許文献1の技術では、凹面鏡の回動により360°の水平走査を可能とし、検出領域(レーザ光による走査がなされる領域)を装置の周囲全体に拡大しているが、検出領域が平面に限定されてしまうという問題がある。即ち、凹面鏡から空間に向けて反射されたレーザ光は所定平面(走査平面)内で走査がなされるため、その走査平面から外れた領域については検出不能となる。従って、走査平面から外れた検出物体は検出することができず、また、走査平面内に検出物体が存在する場合であってもその検出物体を立体的に把握することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2789741号公報
【特許文献2】特開2008−134163公報
【特許文献3】特開2009−98111公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような問題を解消し、三次元空間内で物体検出を可能とする技術としては、特許文献2、3のようなものが提供されている。例えば、特許文献2の三次元測距装置では、所定の回転軸線(P1)を中心として回転する回転体(8)を備えた二次元測距装置(100)と、この二次元測距装置(100)を第一軸心(P1)と斜交する第二軸心(P2)周りに回転駆動する第二回転機構(20)とが設けられている。この第二回転機構20には、第二軸心(P2)と直交する第三軸心(P3)周りに揺動支持する第一ブラケット(22)と、第一軸心(P1)上の所定位置にフリージョイント機構(24)を介して連結された回転アーム(24)とが設けられ、回転アーム(24)を駆動機構(28)によって回転駆動することにより、第一軸心(P1)のロール角度(α)及びピッチ角度(β)を変化させており、これにより、二次元測距装置(100)全体を揺動させて三次元走査を行っている。
【0006】
しかしながら、特許文献2のように二次元測距装置(100)をケースごと全体的に揺動させる方法では、三次元走査に必要となる動作機構(第二回転機構(20))や駆動源(第二のモータ(28))が大型化することが避けられないため、軽量化や小型化の面で極めて不利となる。また、二次元測距装置(100)全体を駆動するという構造上、動作機構や駆動源に生じる機械的或いは電気的な負担が大きくならざるを得ず、駆動に際しては多大なトルクや電力等を必要とするため、走査を高速に行うことが難しいという問題がある。
【0007】
特に、特許文献2の構成は、水平走査用のモータ(第一のモータ(11))によって駆動される部分(回転体(8))に対し、三次元動作用のモータ(第二のモータ(28))によって駆動される部分(二次元測距装置(100))が格段に大きく且つ重い構造であり、更に、第二のモータ(28)による動作は、第一ブラケット(22)やフリージョイント機構(24)での揺動を伴うものとなっている。このような構成では、軽量な回転体(8)を単純回転させる第一のモータ(11)側と比較すると、第二のモータ(28)側は動作が相当遅くならざるを得ない。このため、第一のモータ(11)側を高速回転させて走査の高速化を図ろうとしても、第二のモータ(28)側がその速度に対応できず、結果として、走査の高速化が阻害されてしまうという問題があった。
【0008】
一方、特許文献3には、レーザダイオード(10)からのレーザ光を揺動ミラー(31)によって偏向部(41)側に反射させる構成のレーザレーダ装置(1)が開示されている(図1等)。このレーザレーダ装置(1)では、揺動ミラー(31)の揺動を制御することにより偏向部(41)に入射するレーザ光の向きを変化させ、これにより、偏向部(41)からのレーザ光の照射方向を上下に変化させている。
【0009】
特許文献3の図1等のように、揺動ミラー(31)を変位させる構成とすれば、特許文献2の構成と比較して三次元的な認識に寄与する部分(揺動ミラー(31))を小型化、軽量化することができ、機械的、電気的負荷を低減することができる。しかしながら、この特許文献3の図1等の構成では、広い回転範囲で三次元的な認識を良好に行うために、揺動ミラー(31)を複雑に動作させなければならないという問題がある。例えば、特許文献3の図1等のように、揺動ミラー(31)を揺動させてレーザ走査を行う場合、駆動の高速化を図るためには、揺動ミラー(31)の駆動を単純化し、揺動ミラー(31)によるレーザ走査を単純なライン走査(一次元走査)にすることが考えられる。しかしながら、このように駆動を単純化すると、ライン走査されるレーザ光の移動方向(偏向部に入射する走査平面)と直交する方向に偏向部が向いている回転位置のときに、レーザ光の出射角度(偏向部から出射されるレーザ光と水平面とのなす角度)が変化しない現象が生じ、この回転位置付近では三次元的な認識ができなくなるという問題がある。このような問題を解消するためには、揺動ミラー(31)によるレーザ走査を単純なライン走査(一次元走査)とせず、レーザ光が多方向に移動し得るように揺動ミラー(31)を複雑に二次元動作させる必要があるが、このような複雑な揺動動作は高速化が困難であり、装置構成や制御方法の複雑化も避けられなかった。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、装置の周囲において三次元的に物体を認識し得るレーザレーダ装置において、レーザ光の走査をより高速に行い得る構成を、小型化、軽量化を図りつつ実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、
レーザ光を発生させるレーザ光発生手段と、
前記レーザ光発生手段からの前記レーザ光を導光する導光部材と、
前記導光部材の変位を制御する制御手段と、
所定の中心軸を中心として回転可能に構成された偏向部と、前記偏向部を回転駆動する駆動手段とを備え、前記偏向部を回転させつつ前記導光部材にて導光された前記レーザ光を前記偏向部により外部空間に向けて偏向させる回転偏向手段と、
前記偏向部により前記外部空間に向けて偏向された前記レーザ光が前記外部空間に存在する物体で反射したときに当該物体からの反射光を検出する光検出手段と、
前記物体からの前記反射光を前記光検出手段に向けて誘導する誘導手段と、
を備え、
前記偏向部において前記レーザ光が入射する側に配される偏向面は、前記中心軸を中心とした周方向において少なくとも所定の形成範囲に亘り、前記中心軸を囲んで円弧状又は環状に構成される複数の反射面が前記中心軸を中心として多重に且つ多段に配され、それら複数の前記反射面は、前記中心軸と直交する水平面に対する勾配状態がそれぞれ異なるように構成され、
前記制御手段により、前記導光部材からの前記レーザ光の向きが前記中心軸に沿った仮想平面上を移動するように前記導光部材の変位が制御されることで、前記偏向面に対する前記レーザ光のライン走査がなされ、
前記偏向部の回転に応じて前記偏向面上における前記レーザ光のライン走査位置が複数の前記反射面上を相対的に移動すると共に、その相対移動の過程において、前記仮想平面に沿って移動する前記レーザ光が複数の前記反射面にそれぞれ入射し、且つ各反射面から出射される前記レーザ光の前記水平面に対する角度がそれぞれ異なるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、偏向部においてレーザ光が入射する側に配される偏向面は、中心軸を中心とした周方向において少なくとも所定の形成範囲に亘り、中心軸を囲んで円弧状又は環状に構成される複数の反射面が中心軸を中心として多重に且つ多段に配されている。そして、それら複数の反射面は、中心軸と直交する水平面に対する勾配状態がそれぞれ異なるように構成されている。
更に、制御手段により、導光部材からのレーザ光の向きが中心軸に沿った仮想平面上を移動するように導光部材の変位が制御されることで、偏向面に対するレーザ光のライン走査がなされるようになっており、この偏向面上におけるレーザ光のライン走査位置は、偏向部の回転に応じて複数の反射面上を相対的に移動するようになっている。
このように構成されているため、中心軸を中心として多重に且つ多段に配された偏向面(複数の反射面)の各位置に対し、レーザ光をライン走査によって照射することが可能となり、異なる勾配状態で構成された各反射面から方向の異なる反射光(空間への照射光)を発生させることが可能となる。
また、偏向面上におけるライン走査位置の相対移動の過程において、仮想平面に沿って移動するレーザ光が複数の反射面にそれぞれ入射するようになっているため、偏向部が回転して偏向面の向きが変わっても、レーザ光を各反射面で反射させることができる。これにより、装置の周囲に向けて傾斜角度(水平面に対する角度)を変化させるようにレーザ光の走査を行うことができる。特に、偏向面に対してライン走査(一次元走査)によってレーザ光を照射することができるため、駆動機構を大型化、複雑化せずに偏向面に対するレーザ走査の高速化を図ることができ、ひいては装置の周囲に存在する物体の三次元的な認識をより高速に行うことができる。
【0013】
請求項2の発明において、上記形成範囲は、中心軸を中心とする周方向全範囲とされている。この構成では、偏向部がいずれの方向を向いている場合でも、レーザ光を各反射面に照射することが可能となり、装置の周囲においてより網羅的に三次元的な認識を行うことができる。
【0014】
請求項3の発明は、制御手段により、偏向部がN周(但しNは自然数)回転する毎に導光部材の向きが切り替えられることで、複数の反射面におけるレーザ光の入射対象面がN周毎に切り替わるようになっている。
この構成では、導光部材の切り替えをN周単位で行えば良いため、偏向部が1回転する間に複数回切り替え動作を行う構成と比較して、切り替え動作時の負荷を低減することができる。特に、1回転する間に複数回切り替え動作を行う構成では、複数回の切り替え動作時間を考慮しなければならないため偏向部を高速回転させにくいが、上記のようにN周毎に切り替え動作を行うようにすれば、偏向部を高速化しても適切なタイミングで遅延なく切り替えやすくなり、三次元的な認識を高速に行う上でより有利となる。
【0015】
請求項4の発明において、制御手段は、導光部材からのレーザ光の向きが仮想平面上の第1方向と第2方向との間の方向範囲で変化するように導光部材の変位を制御しており、且つ、偏向部が1周回転する間に、第1方向から第2方向までのレーザ光の走査が複数回繰り返されるように導光部材を揺動させている。
この構成では、空間に照射されるレーザ光の傾斜角度(水平面に対する角度)を、偏向部が1周回転する間に複数回切り替えることが可能となり、リサージュ走査が望まれる場合に有利となる。
【0016】
請求項5の発明において、複数の反射面は、中心軸を囲んで環状に構成され、制御手段により、仮想平面上における中心軸の一方側のみでレーザ光が移動するように導光部材の変位が制御されることで、中心軸の一方側のみで偏向面に対するレーザ光のライン走査がなされるようになっている。
そして、偏向部がいずれの回転位置にあるときでも、偏向面上におけるレーザ光のライン走査位置が複数の反射面に跨るようになっており、且つ、各反射面は、中心軸を中心とする周方向全領域に亘り段差の無い連続面として構成されている。
この構成では、偏向部がいずれの回転位置にあるときでもレーザ光のライン走査位置を複数の反射面に跨らせることが可能となるため、偏向部がいずれの方向を向いている場合でも各反射面にレーザ光を入射させることができる。
特に、各反射面は、中心軸を中心とする周方向全領域に亘り段差の無い連続面として構成されているため、段差に起因する死角の発生を防ぐことができる。例えば反射面の一部に段差が形成されている場合、段差付近にレーザ光が照射されたときに当該段差付近でレーザ光が不規則に反射してしまい、レーザ光が照射されない方向(死角)が発生することが懸念される。しかしながら、請求項5の発明では、レーザ光が各反射面の周方向いずれの位置に入射しても各反射面の勾配に応じた適切な方向にレーザ光を反射させることができるため、360°全方位において三次元的な認識を良好に行うことができる。
【0017】
請求項6の発明は、回転偏向手段が誘導手段として兼用されている。そして、制御手段は、仮想平面上を移動するレーザ光が、偏向面において形成範囲を含む入射対象領域内にのみ入射するように導光部材の変位を制御している。更に、偏向部は、偏向面側における入射対象領域の周囲が凹面鏡として構成され、物体にて反射した反射光が凹面鏡にて集光されつつ光検出手段側に誘導されるようになっている。
この構成では、偏向部において複数の前記反射面が形成された付近を入射対象領域としてレーザ光の照射に利用することができ、その周囲を凹面鏡として外部反射光(物体からの反射光)の誘導及び集光に利用することができる。従って、三次元的な認識を可能とする特徴的な構造を採用しつつ、構成の簡素化、及び部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザレーダ装置の概略断面図である。
【図2】図2は、偏向部に照射されるレーザ光の角度と偏向部からの照射角度との関係を説明する説明図である。
【図3】図3は、図1のレーザレーダ装置の凹面鏡付近を概略的に例示する斜視図である。
【図4】図4(A)は、図1のレーザレーダ装置の走査光反射部付近の構成を示す斜視図であり、図4(B)は、図4(A)とは異なる向きから見た斜視図である。
【図5】図5は、図1のレーザレーダ装置の走査光反射部付近の構成を示す平面図である。
【図6】図6(A)は、図5の0°の方向と180°の方向の位置で切断した断面を概略的に示す断面図である。図6(B)は、図5の45°の方向と−135°の方向の位置で切断した断面を概略的に示す断面図である。
【図7】図7(A)は、走査光反射部の向きが−45°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図7(B)は、その平面図である。
【図8】図8は、走査光反射部の向きが−45°のときのレーザ光の照射の様子を、図7(A)とは異なる方向から見た斜視図である。
【図9】図9(A)は、走査光反射部の向きが−30°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図9(B)は、走査光反射部の向きが−15°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図である。
【図10】図10(A)は、走査光反射部の向きが0°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図10(B)は、その平面図である。
【図11】図11は、走査光反射部の向きが0°のときのレーザ光の照射の様子を、図10(A)とは異なる方向から見た斜視図である。
【図12】図12(A)は、走査光反射部の向きが15°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図12(B)は、走査光反射部の向きが30°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図である。
【図13】図13(A)は、走査光反射部の向きが45°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図13(B)は、その平面図である。
【図14】図14は、走査光反射部の向きが45°のときのレーザ光の照射の様子を、図13(A)とは異なる方向から見た斜視図である。
【図15】図15は、第2実施形態に係るレーザレーダ装置の凹面鏡付近を概略的に例示する斜視図である。
【図16】図16は、第2実施形態に係るレーザレーダ装置に関し、偏向部に照射されるレーザ光の角度と偏向部からの照射角度との関係を説明する説明図である。
【図17】図17は、図15のレーザレーダ装置の走査光反射部付近の構成を示す斜視図である。
【図18】図18は、図15のレーザレーダ装置の走査光反射部付近の構成を示す平面図である。
【図19】図19(A)は、図18の0°の方向と180°の方向の位置で切断した接断面を概略的に示す断面図である。図19(B)は、図18の45°の方向と−135°の方向の位置で切断した切断面を概略的に示す断面図である。
【図20】図20は、図15のレーザレーダ装置において、走査光反射部の向きが0°のときのレーザ光走査位置を概念的に示す平面図である。
【図21】図21は、図15のレーザレーダ装置において、走査光反射部の向きが90°のときのレーザ光走査位置及びレーザ光の照射の様子を概念的に示す平面図である。
【図22】図22は、図15のレーザレーダ装置において、走査光反射部の向きが180°のときのレーザ光走査位置を概念的に示す平面図である。
【図23】図23(A)は、図15のレーザレーダ装置において、走査光反射部の向きが−60°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図23(B)は、走査光反射部の向きが−45°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図である。
【図24】図24(A)は、図15のレーザレーダ装置において、走査光反射部の向きが−30°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図24(B)は、走査光反射部の向きが−15°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図である。
【図25】図25は、図15のレーザレーダ装置において、走査光反射部の向きが0°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図である。
【図26】図26(A)は、図15のレーザレーダ装置において、走査光反射部の向きが15°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図26(B)は、走査光反射部の向きが30°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図である。
【図27】図27(A)は、図15のレーザレーダ装置において、走査光反射部の向きが45°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図27(B)は、走査光反射部の向きが60°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図である。
【図28】図28は、図15、図16とは異なる走査範囲でライン走査を行う例に関し、偏向部に照射されるレーザ光の角度と偏向部からの照射角度との関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(レーザレーダ装置の全体構成)
まず、図1等を参照し、第1実施形態に係るレーザレーダ装置の全体構成について概説する。図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザレーダ装置の概略断面図である。図2は、偏向部に照射されるレーザ光の角度と偏向部からの照射角度との関係を説明する説明図である。
図1に示すように、レーザレーダ装置1は、レーザダイオード10と、検出物体からの反射光L2を受光するフォトダイオード20とを備え、検出物体までの距離や方位を検出する装置として構成されている。
【0020】
レーザダイオード10は、「レーザ光発生手段」の一例に相当するものであり、例えば公知のレーザダイオードによって構成されている。このレーザダイオード10は、図示しない駆動回路からパルス電流の供給を受け、このパルス電流に応じてパルスレーザ光(レーザ光L1)を所定間隔おきに間欠的に投光するものである。
【0021】
フォトダイオード20は、例えば、アバランシェフォトダイオード等の公知のフォトダイオードで構成されており、レーザダイオード10からレーザ光L1が発生したときに、このレーザ光L1が外部空間に存在する物体で反射した反射光L2を受光し、電気信号に変換する構成をなしている。なお、検出物体からの反射光L2については、設定された視野範囲のものが取り込まれる構成となっている。図1の例では、水平方向に照射したレーザ光L1が外部空間に存在する物体で反射した反射光L2を受光する様子を示している。
【0022】
なお、フォトダイオード20は、「光検出手段」の一例に相当し、偏向部41により外部空間に向けて偏向されたレーザ光が外部空間に存在する物体で反射したときに当該物体からの反射光を検出するように機能する。
【0023】
レーザダイオード10から照射されるレーザ光L1の光軸上にはレンズ60が設けられている。このレンズ60は、コリメートレンズとして構成されるものであり、レーザダイオード10からのレーザ光L1を略平行光に変換する機能を有する。
【0024】
レンズ60を通過したレーザ光L1の光路上には、ミラー31が配置されている。このミラー31は、「導光部材」の一例に相当し、レーザダイオード10からのレーザ光L1を後述する回転偏向装置40に向けて導光する機能を有している。このミラー31は、アクチュエータ33による駆動力を受けて変位するように構成され、コリメートレンズ60を通過したレーザ光L1を自身の姿勢に応じた方向に反射するように構成されている。
【0025】
アクチュエータ33は、後述する制御回路70(図2参照)からの指令を受けて駆動するものであり、ミラー31を変位させることでミラー31で反射したレーザ光L1の向きを所定の仮想平面上で変化させるように構成されている。このアクチュエータ33は、例えば、ミラー31を所定の回動軸を中心として回動させるステッピングモータによって構成されており、図1、図2の例では、ミラー31の反射面31a上に設定される回動軸Gを中心としてミラー31を回動させている。
【0026】
図1の例において、回動軸(揺動軸)Gの方向は、コリメートレンズ60からのレーザ光の方向と直交する方向となっており、且つ、後述する回転偏向装置40の回転中心の方向(中心軸42aの方向)とも直交する方向となっている。本明細書では、コリメートレンズ60からミラー31に向かうレーザ光の方向をX軸方向とし、中心軸42aの方向をY軸方向としており、回転軸Gの方向は、これらX軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向として表わしている。アクチュエータ33は、これら方向(ミラー31に向かうレーザ光の方向、及び中心軸42aの方向)を含む仮想平面上(XY平面上)を、ミラー31からのレーザ光が移動するようにミラー31を揺動させており、これにより、後述する偏向部41に対してライン走査がなされるようになっている。この構成では、中心軸42aの軸線上に回動軸Gが位置して交差しており、この交差位置がレーザ光L1の反射位置P1となっている。従って、反射位置P1は位置が変化しない定位置となる。
【0027】
ミラー31で反射したレーザ光L1の光軸上には、回転偏向装置40が設けられている。この回転偏向装置40は、「回転偏向手段」の一例に相当するものであり、中心軸42aを中心として回転可能に構成された偏向部41と、偏向部41を回転駆動するモータ50とを備え、偏向部41を回転させつつレーザダイオード10にて発生したレーザ光L1を偏向部41により外部空間(ケース3の外部の空間)に向けて偏向(反射)させるように機能している。
【0028】
回転偏向装置40は、主として、偏向部41、軸部42、モータ50、回転角度センサ52によって構成されている。偏向部41は、走査光反射部100と凹面鏡130とを備えると共に中心軸42aを中心として回転可能に保持されており、いずれの回転位置にあるときでもレーザ光L1や反射光L2を受ける偏向面が斜め上方側を向くようになっている。
【0029】
走査光反射部100は、レーザダイオード10からのレーザ光L1(具体的には上述のミラー31にてライン走査されるレーザ光L1)を外部空間に向けて反射するように構成されている。この走査光反射部100は、本実施形態の特徴の一つであり、具体的構成については後に詳述する。
【0030】
凹面鏡130は、図1、図3に示すように、偏向部41の偏向面側において入射対象領域(走査光反射部100の領域)の周囲を取り囲むように配置されている。この凹面鏡130は、走査光反射部100から外部空間に照射されたレーザ光が外部空間に存在する物体で反射したときに、この物体からの反射光を集光しつつフォトダイオード20に向けて反射するように機能している。なお、装置内に取り込まれた反射光が凹面鏡130で反射してフォトダイオード20に至るまでの経路(反射光誘導経路)については一点鎖線(符号L2参照)にて概念的に示している。
【0031】
軸部42は、偏向部41と一体的に構成されており、図示しない軸受によって回転可能に支持されつつ、モータ50の駆動力を受けて回転するように構成されている。
モータ50は、「駆動手段」の一例に相当するものであり、例えば公知の直流モータ或いは公知の交流モータによって構成されている。そして、制御回路70からの駆動指示があったときに、図示しないモータドライバによって駆動状態(例えば、回転タイミングや回転速度)が制御されるようになっており、このときに、予め定められた一定の回転速度で定常回転するようになっている。このモータ50は、回転駆動軸が軸部42と一体的に構成されており、軸部42及び偏向部41を、中心軸42aを回転中心として定常回転させるように構成されている。
【0032】
また、図1に示すレーザレーダ装置1には、モータ50の軸部42の回転角度位置(即ち偏向部41の回転角度位置)を検出する回転角度センサ52が設けられている。回転角度センサ52は、ロータリーエンコーダなど、軸部42の回転角度位置を検出しうるものであれば様々な種類のものを使用できる。
【0033】
また、回転偏向装置40からフォトダイオード20に至るまでの反射光の光路上には、フォトダイオード20に向けて反射光を集光する集光レンズ62が設けられ、その集光レンズ62とフォトダイオード20の間にはフィルタ64が設けられている。集光レンズ62は、凹面鏡130からの反射光を集光してフォトダイオード20に導くように機能している。また、フィルタ64は、回転偏向装置40からフォトダイオード20に至るまでの反射光の光路上において反射光を透過させ且つ反射光以外の光を除去するように機能している。例えば、反射光L2に対応した特定波長の光(例えば一定領域の波長の光)のみを透過させそれ以外の光を遮断する波長選択フィルタによって構成することができる。
なお、本実施形態では、凹面鏡130及び集光レンズ62が「誘導手段」の一例に相当する。
【0034】
図2に示す制御回路70は、CPUを備えたマイクロコンピュータなどの1又は複数の制御回路によって構成されており、上述したレーザダイオード10の投光動作、モータ50の回転動作、アクチュエータ33の駆動動作などを制御するように構成されている。また、この制御回路70は、フォトダイオード20や回転角度センサ52に接続されており、これらからの信号を取得可能に構成されている。また、制御回路70には、ROM、RAM,不揮発性メモリなどの図示しないメモリが接続されており、制御回路70は、このメモリ内の情報の読み出しやメモリに対する書き込みが可能となっている。
【0035】
更に、上記各部品(レーザダイオード10、フォトダイオード20、ミラー31、アクチュエータ33、レンズ60、集光レンズ62、フィルタ64、回転偏向装置40、モータ50、回転角度センサ52、制御回路70等)はケース3の内部に収容されており、防塵や衝撃保護が図られている。ケース3における偏向部41の周囲には、当該偏向部41を取り囲むように、レーザ光L1及び反射光L2の通過を可能とする窓状の導光部4が形成されている。導光部4は、中心軸42aを中心とした環状形態で、ほぼ360°に亘って構成されており、この導光部4を閉塞する形態でガラス板等からなるレーザ光透過板5が配され、防塵が図られている。
【0036】
(特徴的構成)
次に、本実施形態の特徴的構成について詳述する。
図3は、図1のレーザレーダ装置の凹面鏡付近を概略的に例示する斜視図である。図4(A)は、図1のレーザレーダ装置の走査光反射部付近の構成を示す斜視図であり、図4(B)は、図4(A)とは異なる向きから見た斜視図である。図5は、図1のレーザレーダ装置の走査光反射部付近の構成を示す平面図である。図6(A)は、図5の0°の方向と180°の方向の位置で切断した断面を概略的に示す断面図である。図6(B)は、図5の45°の方向と−135°の方向の位置で切断した断面を概略的に示す断面図である。なお、図6は、いずれも−90°の方向から走査光反射部の断面を見たものである。なお、図3以降の図では、走査光反射部の下方に偏向部内に埋め込まれる台座Bが設けられた例を示しており、図4以降では、凹面鏡などを省略し走査光反射部と台座のみを示している。但し、この台座Bはあくまで説明のために示すものであり、走査光反射部の各反射面が露出し得る構成で配置されていれば台座Bは設けなくてもよい。
【0037】
図3、図4、図6に示すように、偏向部41の偏向領域(偏向面)は、走査光反射部100による反射領域と、凹面鏡130による反射領域(反射面130a)とに分かれている。このうち、走査光反射部100の反射領域には、中心軸42aを囲んで環状又は円弧状に構成される複数の反射面101、102a、102b、103a、103b、104a、104bが中心軸42aを中心として多重に且つ多段に配されている。本実施形態では、位置P2(中心軸42aと反射面101とが交わる位置)にレーザ光L1が入射したときに反射するレーザ光L1の水平成分の向き(図5の矢印F参照)が偏向部41の向きとなっており、位置P2を通り、且つ偏向部41の向きと直交する方向に、下側の反射面102a、103a、104aと、上側の反射面102b、103b、104bとの境界となる段差110が形成されている。具体的には、中心軸42aを含む平面であって且つ上記矢印Fの向きと直交する平面の位置が境界(段差110)の位置となっている。
【0038】
反射面101は、多重に構成される走査光反射部100の、中心領域に相当しており、中心軸42a上において当該中心軸42aに対して傾斜して配置されている。なお、この反射面101は中心軸42aを中心とした周方向全領域に亘り形成されている。従って、反射面101については、周方向全領域が「形成領域」に相当する。
【0039】
反射面102a、102bは、上記中心領域のすぐ外側に配される第2環状領域102を構成するものであり、いずれも反射面101に隣接してこの反射面101を囲むように配置されている。各反射面102a、102bは周方向半周程度に亘って円弧状に形成され、具体的には、段差110の位置に両端部が配置されるような略半円状となっている。従って、これら各反射面102a、102bは、中心軸42aを中心とする周方向半周程度の領域が「形成領域」に相当する。図3のように、走査光反射部100は、全体として一方側(偏向部41の向きF側)が下方位置となり、他方側(偏向部41の向きFとは逆側)が上方位置となるように傾斜状に構成されており、第2環状領域102では、反射面102aが境界(段差110)よりも下方寄りに配置され、反射面102bが境界(段差110)よりも上方寄りに配置されている。
【0040】
また、反射面103a、103bは、中心領域の2つ外側(第2環状領域102のすぐ外側)に配される第3環状領域103を構成するものであり、反射面103aは、反射面102aに隣接し、境界(段差110)の下方側においてこの反射面102aを囲むように円弧状(半円状)に配置されている。反射面103bは、反射面102bに隣接し、境界(段差110)の上方側においてこの反射面102bを囲むように円弧状(半円状)に配置されている。このように、各反射面103a、103bはいずれも中心軸42aを中心とする周方向半周程度に亘って円弧状に形成されているため、これら各反射面103a、103bは、周方向半周程度の領域が「形成領域」に相当する。
【0041】
また、反射面104a、104bは、中心領域の3つ外側(第3環状領域103のすぐ外側であって、走査光反射部100の最外周)に配される第4環状領域104を構成するものであり、反射面104aは、反射面103aに隣接し、境界(段差110)の下方側においてこの反射面103aを囲むように円弧状(半円状)に配置されている。また、反射面104bは、反射面103bに隣接し、境界(段差110)の上方側においてこの反射面103bを囲むように円弧状(半円状)に配置されている。このように、各反射面104a、104bはいずれも周方向半周程度に亘って円弧状に形成されているため、これら各反射面104a、104bは、周方向半周程度の領域が「形成領域」に相当する。
【0042】
上記のように構成される複数の反射面101〜104は、中心軸42aと直交する平面(水平面)に対する勾配状態がそれぞれ異なるように構成されている。具体的には、各反射面102a、102b、103a、103b、104a、104bがそれぞれ曲率の異なる放物面(回転放物曲面)として構成されており、各反射面102a、102b、103a、103b、104a、104bの曲率は、中心に近い領域ほど曲率が小さく、外周部となるほど、曲率が大きくなるように構成されている。即ち、第2環状領域102よりも第3環状領域103のほうが曲率が大きく、第3環状領域103よりも第4環状領域104のほうが曲率が大きくなるように構成されている。
【0043】
具体的には、中心軸42aを通り且つ方向Fの方向に走査光反射部100を切断した切断面を想定したときに、各反射面の外形の曲線が放物線となるように構成されている。図2の例では、図1のように、偏向部41の向き(図5の方向F)がX軸の正方向となっているときに、走査光反射部100をXY平面で切断したときの切断面(図6(A)参照)についての幾何学的関係を概略的に示している。図2の例では、走査光反射部100の偏向面(反射面)100aは、XY平面で切断したときの切断面の外形の傾斜角度α(水平面に対する傾斜角度)が45°となっている。
【0044】
図2の例では、位置Pm、位置Pnにおける反射面の各曲線を、以下の式(数1)で表わされる放物線とすることができる。なお、数1においてtはパラメータである。また、Lは、位置P1から位置P2までの距離である。
【0045】
【数1】

【0046】
また、XY平面の切断面外形が上記放物線で表わされる各反射面(位置Pm、Pnの反射面)は、以下の式(数2)で表わされる回転軸で回転させた放物面とすることができる。
【0047】
【数2】

【0048】
この場合、位置Pm、Pnで反射したレーザ光L1の水平面に対する傾斜角度βは以下の数3の通りとなる。
【0049】
【数3】

【0050】
位置Pnは、下方側の反射面102a,103a,104aにおけるXY平面上(方向FがX軸正方向にあるときのXY平面上)の各位置P3〜P5(図6)とすることができ、各位置のときの+θを用いて上記放物線の式(数1)、回転軸の式(数2)に当てはめれば、各位置P3〜P5に対応する放物面(即ち、各反射面102a,103a,104a)を形成することができる。なお、位置P3〜P5は、例えば各反射面102a,103a,104aの幅の中心となっている。
【0051】
位置Pmは、上方側の反射面102b,103b,104bにおけるXY平面上(方向FがX軸正方向にあるときのXY平面上)の各位置P6〜P8(図6)とすることができ、各位置のときの−θを用いて上記放物線の式(数1)、回転軸の式(数2)に当てはめれば、各位置P6〜P8に対応する放物面(即ち、各反射面102b,103b,104b)を形成することができる。なお、位置P6〜P8は、例えば各反射面102b,103b,10baの幅の中心となっている。
【0052】
(物体検出動作)
次に、レーザレーダ装置1で行われる物体の検出処理(監視処理)について基本的な動作を説明する。
図7(A)は、走査光反射部の向き(即ち偏向部の向き)が−45°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図7(B)は、その平面図である。図8は、走査光反射部の向きが−45°のときのレーザ光の照射の様子を、図7(A)とは異なる方向から見た斜視図である。なお、図7(A)は、図5における180°の方向から見た図であり、図8は、図5における−90°の方向から見た図である。
【0053】
図9(A)は、走査光反射部の向きが−30°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図9(B)は、走査光反射部の向きが−15°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図である。図10(A)は、走査光反射部の向きが0°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図10(B)は、その平面図である。図11は、走査光反射部の向きが0°のときのレーザ光の照射の様子を、図10(A)とは異なる方向から見た斜視図である。なお、図10(A)は、図5における180°の方向から見た図であり、図11は、図5における−90°の方向から見た図である。
【0054】
図12(A)は、走査光反射部の向きが15°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図12(B)は、走査光反射部の向きが30°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図である。図13(A)は、走査光反射部の向きが45°のときのレーザ光の照射の様子を概念的に示す斜視図であり、図13(B)は、その平面図である。図14は、走査光反射部の向きが45°のときのレーザ光の照射の様子を、図13(A)とは異なる方向から見た斜視図である。なお、図13(A)は、図5における180°の方向から見た図であり、図14は、図5における−90°の方向から見た図である。図7〜図14では、偏向部が向く側(偏向部からのレーザ光の照射側)に仮想的な照射対象平面を二点鎖線にて概念的に示している。
【0055】
図1に示すレーザレーダ装置1では、モータ50の駆動力により偏向部41が一定速度で回転するようになっている。図7〜図14では、偏向部41の回転の様子を示している。図7、図8では偏向部41の方向(図5のFの向き)が−45°の状態を示し、図9(A)では−30°、図9(B)では−15°、図10、図11では0°図12(A)では15°、図12(B)では30°、図13、図14では45°の状態をそれぞれ示している。なお、各角度は、基準方向からの回転角度であり、X軸の正方向が基準方向(基準角度0°)となっている。
【0056】
レーザレーダ装置1では、図2に示す制御回路70によってアクチュエータ33が駆動制御され、ミラー31が揺動することにより、ミラー31から偏向部41に向かうレーザ光L1が仮想平面内を移動するように走査される。この仮想平面は、図1に示すコリメートレンズ60からミラー31に向かうレーザ光L1の経路、及び中心軸42aの位置を通る平面であり、図1等の例では、位置P1を原点とするXY平面に相当している。そして、このようにミラー31の揺動によってレーザ光L1が仮想平面内を移動するため、この仮想平面と交差するように配される走査光反射部100上ではライン走査がなされることになる。
【0057】
走査光反射部100におけるライン走査位置は、図7の符号Lnに示すように、平面視したときに直線状(一定範囲内のライン状)となっている。レーザレーダ装置1では、XYZ座標系においてミラー31による走査領域(仮想平面内においてミラー31からのレーザ光が移動し得る領域)は固定領域であるため、図7(B)、図10(B)、図13(B)のように偏向部41が回転すると、偏向部41の回転に応じてライン走査位置Lnは複数の反射面101〜104上を相対的に移動することになる。
【0058】
そして、ライン走査位置が相対移動する過程において、偏向部41がいずれの回転位置にあるときでも、ライン走査位置が複数の反射面101、102a,102b,103a,103b,104a,104bに跨るようになっており、このため、偏向部41がいずれの回転位置にあるときでも、複数の反射面のいずれに対してもレーザ光を入射させることができる位置関係となる。従って、図7、図9(A)、図9(B)、図10(A)、図12(A)、図12(B)、図13(A)のように順次回転することで偏向部41の向きが変わっても、ミラー31の制御によってレーザ光をどの反射面でも反射させることができ、各反射面に対応する向きにレーザ光L1を照射することが可能となる。
【0059】
本実施形態では、制御回路70及びアクチュエータ33が「制御手段」の一例に相当し、ミラー31の変位を制御するように機能しており、具体的には、仮想平面上を移動するレーザ光L1が、走査光反射部100の領域内(即ち、反射面101〜104の形成範囲を含む入射対象領域内)にのみ入射するようにミラー31(導光部材)の変位を制御している。即ち、図7(B)等に示すライン走査位置Lnが走査光反射部100から外れて凹面鏡130側に入り込まないようにミラー31の角度が制御されるようになっている。
【0060】
このように構成されるレーザレーダ装置1では、偏向部41の回転時に、レーザダイオード10に対してパルス電流が供給されると、このパルス電流のタイミング及びパルス幅に応じた時間間隔のパルスレーザ光(レーザ光L1)がレーザダイオード10から出力される。このレーザ光L1は、ある程度の広がり角をもった拡散光として投光され、レンズ60を通過することで平行光に変換される。レンズ60を通過したレーザ光L1は、ミラー31で反射した後、偏向部41の走査光反射部100で更に反射し、空間に向けて照射される。
【0061】
このように走査光反射部100から照射されたレーザ光L1が、外部空間に存在する物体(検出物体)に当たったときには、この検出物体で反射して装置側に戻ってくる反射光の一部(反射光L2参照)がレーザ光透過板5を介してケース内に入り込み、凹面鏡130に入射することになる。凹面鏡130は、この反射光L2をフォトダイオード20側へ誘導(反射)し、その誘導された反射光L2は、集光レンズ62で集光され、フィルタ64を通過してフォトダイオード20に入射する。そして、フォトダイオード20は、このような反射光L2を受光したとき、その受光した反射光L2の強度に応じた電気信号(例えば受光した反射光L2に応じた電圧値)を出力する。
【0062】
制御回路70は、レーザダイオード10に対するパルス信号の送信タイミングとフォトダイオード20から受光信号が出力されるタイミングとに基づいて、レーザ光L1の投光から受光までの時間T(即ち、レーザダイオード10がパルスレーザ光L1を出力してからフォトダイオード20が当該パルスレーザ光に応じた反射光L2を受光するまでの時間)を測定しており、更に、制御回路70は、この時間Tと、既知の光速Cとに基づいて、装置内の基準位置(例えば位置P2)から検出物体までの距離Lを算出している。
【0063】
また、検出された物体の方位は、レーザダイオード10からレーザ光L1が照射されるときのミラー31の角度と、偏向部41の向き(方向F)とによって求めることができる。
まず、制御回路70は、パルスレーザ光L1が照射されるときの回転角度センサ52からの出力値(即ち、パルスレーザ光L1が照射されるタイミングにおける偏向部41の基準角度からの回転変位θ)を把握できるようになっている。更に、制御回路70は、アクチュエータ33の変位量を制御しているため、上記パルスレーザ光L1が照射されるときのミラー31の変位を把握でき(即ち、図2に示すθを把握でき)、これにより、反射面101、102a,102b,103a,103b,104a,104bのいずれにレーザ光L1が入射するかを把握できるようになっている。レーザ光L1がどの反射面に入射するかが特定されれば、反射面毎にレーザ光L1の傾斜角度(水平方向に対するレーザ光L1の傾斜角度)が特定されるため、この傾斜角度と上記回転変位θとによって物体の方位を検出することができる。
【0064】
なお、図7〜図14では、偏向部41が各回転位置にあるときに各反射面101,102a,102b,103a,103b,104a,104bにレーザ光L1が入射したときの各照射経路を概念的に示しているが、ライン走査位置Lnにおいてどの程度の早さでライン走査がなされるかは様々な設定とすることができる。
【0065】
例えば、偏向部41がN周(但しNは自然数)回転する毎にミラー31の向きが切り替えられることで、複数の反射面におけるレーザ光の入射対象面がN周毎に切り替わるようになっていてもよい。この方法はいわゆるラスタースキャンに相当するものであり、例えば、図3のように、ミラー31からのレーザ光L1の角度を7段階に切り替え可能とし、偏向部41が1周する毎に各方向に切り替え、7周完了したときに上記7段階の切り替えが1サイクル終わるようにしてもよい。
【0066】
(第1実施形態の主な効果)
本実施形態のレーザレーダ装置1によれば、中心軸42aを中心として多重に且つ多段に配された偏向面(複数の反射面101,102a,102b,103a,103b,104a,104b)の各位置に対し、レーザ光L1をライン走査によって照射することが可能となる。従って、異なる勾配状態で構成された各反射面101,102a,102b,103a,103b,104a,104bから方向の異なる反射光(空間への照射光)を発生させることが可能となる。
また、偏向面上におけるライン走査位置Lnの相対移動の過程において、仮想平面に沿って移動するレーザ光が複数の反射面にそれぞれ入射するようになっているため、偏向部41が回転して偏向面の向きが変わっても、レーザ光L1を各反射面で反射させることができる。これにより、装置の周囲に向けて傾斜角度(水平面に対する角度)を変化させるようにレーザ光の走査を行うことができる。特に、偏向面(各反射面)に対してライン走査(一次元走査)によってレーザ光を照射することができるため、駆動機構を大型化、複雑化せずに偏向面に対するレーザ走査の高速化を図ることができ、ひいては装置の周囲に存在する物体の三次元的な認識をより高速に行うことができる。
【0067】
また、レーザレーダ装置1では、ライン走査光を反射する反射面の形成範囲が、中心軸42aを中心とする周方向全範囲とされている。この構成では、偏向部41がいずれの方向を向いている場合でも、レーザ光を各反射面に照射することが可能となり、装置の周囲においてより網羅的に三次元的な認識を行うことができる。
【0068】
また、上述したレーザレーダ装置1では、制御回路70(制御手段)により、偏向部41がN周(但しNは自然数)回転する毎にミラー31の向きが切り替えられることで、複数の反射面におけるレーザ光の入射対象面がN周毎に切り替わるようになっている。
この構成では、ミラー31の切り替えをN周単位で行えば良いため、偏向部41が1回転する間に複数回切り替え動作を行う構成と比較して、切り替え動作時の負荷を低減することができる。特に、1回転する間に複数回切り替え動作を行う構成では、複数回の切り替え動作時間を考慮しなければならないため偏向部41を高速回転させにくいが、上記のようにN周毎に切り替え動作を行うようにすれば、偏向部41を高速化しても適切なタイミングで遅延なく切り替えやすくなり、三次元的な認識を高速に行う上でより有利となる。また、この場合、各反射面に入射している間は、偏向部41が回転しても空間に照射されるレーザ光の水平面に対する傾斜角度が一定角度(入射している反射面に対応する角度)で維持され、次の反射面に切り替わった後でも、当該反射面に入射している間は、偏向部41が回転しても空間に照射されるレーザ光の水平面に対する傾斜角度が一定角度で維持されることになる。
【0069】
また、レーザレーダ装置1において、制御回路70(制御手段)は、仮想平面上を移動するレーザ光が、走査光反射部100の領域内(各反射面101〜104の形成範囲を含む入射対象領域内)にのみ入射するようにミラー31の変位を制御している。更に、偏向部41は、偏向面側における入射対象領域の周囲が凹面鏡130として構成され、物体にて反射した反射光が凹面鏡130にて集光されつつフォトダイオード20(光検出手段)側に誘導されるようになっている。
この構成では、偏向部41において複数の反射面が形成された付近を入射対象領域としてレーザ光の照射に利用することができ、その周囲を凹面鏡130として外部反射光(物体からの反射光)の誘導及び集光に利用することができる。従って、三次元的な認識を可能とする特徴的な構造を採用しつつ、構成の簡素化、及び部品点数の削減を図ることができる。
【0070】
[第1実施形態の変更例1]
第1実施形態の上記代表例では、ラスタースキャンに相当する方法を例示したが、このようなスキャン方法に限られない。第1実施形態の構成では、ミラー31からのレーザ光L1の向きが仮想平面上の第1方向(中心軸42aに対する傾斜(図2の+θ)が最大となる角度)と第2方向(中心軸42aに対する傾斜(図2の−θ)が最小となる角度)との間の方向範囲で変化するようにミラー31の変位を制御しているが、このような構成において、偏向部41が1周回転する間に、上記第1方向から上記第2方向までのレーザ光の走査が複数回繰り返されるようにミラー31を揺動させてもよい。
この構成では、空間に照射されるレーザ光の傾斜角度(水平面に対する角度)を、偏向部41が1周回転する間に複数回切り替えることが可能となり、リサージュ走査が望まれる場合に有利となる。
【0071】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
図15は、第2実施形態に係るレーザレーダ装置の凹面鏡付近を概略的に例示する斜視図である。図16は、第2実施形態に係るレーザレーダ装置に関し、偏向部に照射されるレーザ光の角度と偏向部からの照射角度との関係を説明する説明図である。図17は、図15のレーザレーダ装置の走査光反射部付近の構成を示す斜視図である。図18は、図15のレーザレーダ装置の走査光反射部付近の構成を示す平面図である。図19(A)は、図18の0°の方向と180°の方向の位置で切断した接断面を概略的に示す断面図である。図19(B)は、図18の45°の方向と−135°の方向の位置で切断した切断面を概略的に示す断面図である。
なお、本実施形態でも、走査光反射部が露出し得る構成であれば、台座Bの部分は、偏向部内に埋め込まれていてもよく、台座Bの部分が省略されていてもよい。
【0072】
第2実施形態に係るレーザレーダ装置は、走査光反射部の構成、及びミラー31によるレーザ光の走査範囲のみが第1実施形態と異なり、それ以外は第1実施形態と同様である。よって、第1実施形態と同様の部分については、第1実施形態と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。なお、図1の構成については、走査光反射部以外は同一であるので、適宜図1を参照して説明する。
【0073】
本実施形態で用いられる偏向部41の偏向領域(偏向面)も、図15に示すように、走査光反射部200による反射領域と、凹面鏡130による反射領域(反射面130a)とに分かれている。このうち、走査光反射部200の反射領域には、中心軸42aを囲んで環状に構成される複数の反射面201〜207が中心軸42aを中心として多重に且つ多段に配されている。なお、本実施形態でも、位置P2(中心軸42aと反射面201とが交わる位置)にレーザ光L1が入射したときに反射するレーザ光L1の水平成分の向き(図18の矢印F参照)が偏向部41の向きとなっている。
【0074】
反射面201は、多重に構成される走査光反射部200の中心領域に相当し、平面視略円形に構成されており、中心軸42a上において当該中心軸42aに対して傾斜して配置されている。なお、この反射面201は中心軸42aを中心とした周方向全領域に亘り形成されている。従って、反射面201については、周方向全領域が「形成領域」に相当する。
【0075】
図15、図17、図18、図19に示すように、反射面201を中心として内側から順に第2の反射面202、第3の反射面203、第4の反射面204、第5の反射面205、第6の反射面206、第7の反射面207がそれぞれ環状に設けられている。各反射面202〜207は、中心軸42aを中心とする周方向全領域に亘り段差の無い連続面として構成されている。従って、各反射面202〜207についても、周方向全領域が「形成領域」に相当する。
【0076】
上記のように構成される複数の反射面201〜207は、中心軸42aと直交する平面(水平面)に対する勾配状態がそれぞれ異なるように構成されている。具体的には、各反射面201〜207がそれぞれ曲率の異なる放物面(回転放物曲面)として構成されており、各反射面201〜207の曲率は、中心に近い領域ほど曲率が小さく、外周部となるほど、曲率が大きくなるように構成されている。即ち、反射面202よりも反射面203の方が曲率が大きく、反射面203よりも反射面204のほうが曲率が大きくなっており、反射面207の曲率が最も大きくなっている。
【0077】
本実施形態では、中心軸42aを通り且つ方向F(図18)の方向に走査光反射部200を切断した切断面を想定したときに、各反射面の外形の曲線が放物線となるように構成されている。図16の例では、図1のように、偏向部41の向き(図18の方向F)がX軸の正方向となっているときに、走査光反射部200をXY平面で切断したときの切断面についての幾何学的関係を概略的に示している。図16の例では、走査光反射部200の偏向面200a(各反射面201〜207の領域)は、XY平面で切断したときの切断面の外形の基準傾斜角度α(水平面に対する傾斜角度)が45°以上となっている。
【0078】
図16の例では、位置Prにおける反射面の曲線を、以下の式(数4)で表わされる放物線とすることができる。位置Prは、中心軸42aに対するレーザ光L1の傾斜角度がθ(但しθ≦0°)のときの偏向面200aにおける入射位置である。なお、数4、数5においてtはパラメータである。また、Lは、位置P1から位置P2までの距離である。なお、β、θは任意の値をとり得るものであり(但しθ≦0°)、図16では、例えばθ=0°のときに、βの最小値(βmin)として、90−2α°となることを示している。
【0079】
【数4】

【0080】
ここで、数4のaについては、以下の式(数5)で表すことができる。
【0081】
【数5】

【0082】
また、XY平面の切断面外形が上記放物線(数4)で表わされる反射面(位置Prの反射面)は、以下の数6で表わされる回転軸で回転させた放物面とすることができる。
【0083】
【数6】

【0084】
この場合、位置Prで反射したレーザ光L1の水平面に対する傾斜角度βは以下の数7の通りとなる。
【0085】
【数7】

【0086】
位置Prは、反射面202〜207におけるXY平面上(方向FがX軸正方向にあるときのXY平面上)の位置であって、且つ位置P2よりも上方位置とすることができる。各反射面202〜207の各位置のときの−θを用いて上記放物線の式(数4)(数5)、及び回転軸の式(数6)に当てはめれば、各位置に対応する放物面(即ち、各反射面202〜207)を形成することができる。
【0087】
また、本実施形態のレーザレーダ装置でも、図16に示す制御回路70によってアクチュエータ33が駆動制御され、ミラー31が揺動することにより、ミラー31から偏向部41に向かうレーザ光L1が仮想平面内を移動するように走査される。この仮想平面は、図1に示すコリメートレンズ60からミラー31に向かうレーザ光L1の経路、及び中心軸42aの位置を通る平面であり、図1等の例では、位置P1を原点とするXY平面に相当している。そして、このようにミラー31の揺動によってレーザ光L1が仮想平面内を移動するため、この仮想平面と交差するように配される走査光反射部200上ではライン走査がなされることになる。
【0088】
走査光反射部200におけるライン走査位置は、図15、図20〜図22の符号Lnに示すように、平面視したときに直線状(一定範囲内のライン状)となっている。本実施形態では、上記仮想平面上における中心軸42aの一方側のみでレーザ光L1が移動するようにミラー31の変位が制御され、中心軸42aの一方側のみで偏向面に対するレーザ光L1のライン走査がなされるようになっている。従って、ライン走査位置Lnも、中心軸42aの一方側(180°の方向側)のみとなっている。
【0089】
本実施形態のレーザレーダ装置でも、XYZ座標系においてミラー31による走査領域(仮想平面内においてミラー31からのレーザ光が移動し得る領域)は固定領域であるため、図20、図21、図22のように偏向部41が回転すると(即ち、走査光反射部200が回転すると)、偏向部41の回転に応じてライン走査位置Lnは複数の反射面201〜207上を相対的に移動することになる。
【0090】
そして、ライン走査位置Lnが相対移動する過程において、偏向部41がいずれの回転位置にあるときでも、ライン走査位置Lnが複数の反射面201〜207に跨るようになっており、このため、偏向部41がいずれの回転位置にあるときでも、複数の反射面のいずれに対してもレーザ光を入射させることができる位置関係となる。従って、図23(A)(B)、図24(A)(B)、図25、図26(A)(B)、図27(A)(B)のように順次回転することで偏向部41の向きが変わっても、ミラー31の制御によってレーザ光をどの反射面でも反射させることができ、各反射面に対応する向きにレーザ光L1を照射することが可能となる。
【0091】
本実施形態でも、制御回路70及びアクチュエータ33が「制御手段」の一例に相当し、ミラー31の変位を制御するように機能しており、この例でも、仮想平面上を移動するレーザ光L1が、走査光反射部200の領域内(即ち、反射面201〜207の形成範囲を含む入射対象領域内)にのみ入射するようにミラー31(導光部材)の変位を制御している。即ち、図15等に示すライン走査位置Lnが走査光反射部200から外れて凹面鏡130側に入り込まないようにミラー31の角度が制御されるようになっている。
【0092】
また、本実施形態でも、第1実施形態と同様の物体検出方法を用いることができ、物体までの距離や物体の方位の算出方法は基本的に第1実施形態と同様である。なお、図23〜図27では、偏向部41が各回転位置にあるときに各反射面201〜207にレーザ光L1が入射したときの各照射経路を概念的に示しているが、ライン走査位置Lnにおいてどの程度の早さでライン走査がなされるかは様々な設定とすることができる。例えば、本実施形態でも、第1実施形態と同様のラスタースキャンを行うことができ、偏向部41がN周(但しNは自然数)回転する毎にミラー31の向きを切り替え、複数の反射面におけるレーザ光の入射対象面をN周毎に切り替わるようにしてもよい。例えば、図17のように、ミラー31からのレーザ光L1の角度を7段階に切り替え可能とし、偏向部41が1周する毎に各方向に切り替え、7周完了したときに上記7段階の切り替えが1サイクル終わるようにしてもよい。この場合、各反射面に入射している間は、偏向部41が回転しても、水平面に対するレーザ光の傾斜角度が一定角度(入射している反射面に対応する角度)で維持され(特に、段差等に起因する変化が無く維持され)、次の反射面に切り替わった後も同様であり、当該反射面に入射している間は、偏向部41が回転しても、水平面に対するレーザ光の傾斜角度が一定角度(入射している反射面に対応する角度)で維持されることになる。なお、このようにせずに上述のリサージュスキャン方式を用いてもよい。
【0093】
(本実施形態の主な効果)
本実施形態のレーザレーダ装置によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施形態形態において、複数の反射面202〜207は、中心軸42aを囲んで環状に構成され、制御回路70により、仮想平面上における中心軸42aの一方側のみでレーザ光L1が移動するようにミラー31の変位が制御されることで、中心軸42aの一方側のみで偏向面に対するレーザ光L1のライン走査がなされるようになっている。
そして、偏向部41がいずれの回転位置にあるときでも、偏向面上におけるレーザ光L1のライン走査位置Lnが複数の反射面201〜207に跨るようになっており、且つ、各反射面201〜207は、中心軸を中心とする周方向全領域に亘り段差の無い連続面として構成されている。
この構成では、偏向部41がいずれの回転位置にあるときでもレーザ光L1のライン走査位置Lnを複数の反射面201〜207に跨らせることが可能となるため、偏向部41がいずれの方向を向いている場合でも各反射面201〜207にレーザ光L1を入射させることができる。
特に、各反射面201〜207は、中心軸42aを中心とする周方向全領域に亘り段差の無い連続面として構成されているため、段差に起因する死角の発生を防ぐことができる。例えば反射面の一部に段差が形成されている場合、段差付近にレーザ光が照射されたときに当該段差付近でレーザ光が不規則に反射してしまい、レーザ光が照射されない方向(死角)が発生することが懸念される。しかしながら、本実施形態の構成では、レーザ光L1が各反射面の周方向いずれの位置に入射しても各反射面の勾配に応じた適切な方向にレーザ光を反射させることができるため、360°全方位において三次元的な認識を良好に行うことができる。
【0094】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0095】
上記実施形態では、回動軸Gを中心としてミラー31を回動させるためのアクチュエータとしてステッピングモータを例示したが、アクチュエータの例はこれに限られず、公知の他の回転アクチュエータを用いてもよい。
【0096】
上記実施形態では、レーザ光を空間に照射するための部分(走査光反射部)と、空間に存在する物体からの反射光をフォトダイオードに向けて反射するための部分(凹面鏡)とを共通の部材(偏向部41)によって兼用した構成を示したが、これらが別々の部材によって構成され、互いに同期して回転するような構成であってもよい。
【0097】
第2実施形態の代表例では、図16において、αが45°以上の場合を例示したが、αが45°以下の場合、図28のように、上述の仮想平面において図16でライン走査が行われた側(中心軸42aよりもX軸負方向側)とは逆側(中心軸42aよりもX軸正方向側)でライン走査を行うようにしてもよい。この場合も、第2実施形態の代表例と同様の放物線の式(数4)(数5)、回転軸の式(数6)を適用できる。この例でも、β、θは任意の値をとるものであり(但し、θ≧0°)、図28では、θ=0°のときに、βの最大値(βmax)として、90−2α°となることを示している。
【符号の説明】
【0098】
1…レーザレーダ装置
10…レーザダイオード(レーザ光発生手段)
20…フォトダイオード(光検出手段)
31…ミラー(導光部材)
33…アクチュエータ(制御手段)
40…回転偏向装置(回動偏向手段、誘導手段)
41…偏向部
42a…中心軸
50…モータ(駆動手段)
62…集光レンズ(誘導手段)
70…制御回路(制御手段)
100,200…走査光反射部
101,102a,102b,103a,103b,104a,104b,201〜207…反射面(偏向面)
130…凹面鏡(誘導手段)
130a…凹面鏡領域の反射面(偏向面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発生させるレーザ光発生手段と、
前記レーザ光発生手段からの前記レーザ光を導光する導光部材と、
前記導光部材の変位を制御する制御手段と、
所定の中心軸を中心として回転可能に構成された偏向部と、前記偏向部を回転駆動する駆動手段とを備え、前記偏向部を回転させつつ前記導光部材にて導光された前記レーザ光を前記偏向部により外部空間に向けて偏向させる回転偏向手段と、
前記偏向部により前記外部空間に向けて偏向された前記レーザ光が前記外部空間に存在する物体で反射したときに当該物体からの反射光を検出する光検出手段と、
前記物体からの前記反射光を前記光検出手段に向けて誘導する誘導手段と、
を備え、
前記偏向部において前記レーザ光が入射する側に配される偏向面は、前記中心軸を中心とした周方向において少なくとも所定の形成範囲に亘り、前記中心軸を囲んで円弧状又は環状に構成される複数の反射面が前記中心軸を中心として多重に且つ多段に配され、それら複数の前記反射面は、前記中心軸と直交する水平面に対する勾配状態がそれぞれ異なるように構成され、
前記制御手段により、前記導光部材からの前記レーザ光の向きが前記中心軸に沿った仮想平面上を移動するように前記導光部材の変位が制御されることで、前記偏向面に対する前記レーザ光のライン走査がなされ、
前記偏向部の回転に応じて前記偏向面上における前記レーザ光のライン走査位置が複数の前記反射面上を相対的に移動すると共に、その相対移動の過程において、前記仮想平面に沿って移動する前記レーザ光が複数の前記反射面にそれぞれ入射し、且つ各反射面から出射される前記レーザ光の前記水平面に対する角度がそれぞれ異なるように構成されていることを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記形成範囲は、前記中心軸を中心とする周方向全範囲であることを特徴とする請求項1に記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記制御手段により、前記偏向部がN周(但しNは自然数)回転する毎に前記導光部材の向きが切り替えられることで、複数の前記反射面における前記レーザ光の入射対象面がN周毎に切り替わるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記導光部材からの前記レーザ光の向きが前記仮想平面上の第1方向と第2方向との間の方向範囲で変化するように前記導光部材の変位を制御しており、且つ、前記偏向部が1周回転する間に、前記第1方向から前記第2方向までの前記レーザ光の走査が複数回繰り返されるように前記導光部材を揺動させていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザレーダ装置。
【請求項5】
複数の前記反射面は、前記中心軸を囲んで環状に構成され、
前記制御手段により、前記仮想平面上における前記中心軸の一方側のみで前記レーザ光が移動するように前記導光部材の変位が制御されることで、前記中心軸の前記一方側のみで前記偏向面に対する前記レーザ光のライン走査がなされるようになっており、
前記偏向部がいずれの回転位置にあるときでも、前記偏向面上における前記レーザ光のライン走査位置が複数の前記反射面に跨り、且つ、各反射面は、前記中心軸を中心とする周方向全領域に亘り段差の無い連続面として構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザレーダ装置。
【請求項6】
前記回転偏向手段が前記誘導手段として兼用され、
前記制御手段は、前記仮想平面上を移動する前記レーザ光が、前記偏向面において前記形成範囲を含む入射対象領域内にのみ入射するように前記導光部材の変位を制御しており、
前記偏向部は、前記偏向面側における前記入射対象領域の周囲が凹面鏡として構成され、前記物体にて反射した前記反射光が前記凹面鏡にて集光されつつ前記光検出手段側に誘導されることを特徴とする請求項1から請求項5に記載のレーザレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−211831(P2012−211831A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77731(P2011−77731)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】