レーザレーダ装置
【課題】レーザレーダ装置以外の他の距離測定装置を備えずに、高い距離測定精度と広い測定可能距離間隔を有するレーザレーダ装置を提供する。
【解決手段】 レーザ光を目標に向けて発振し、目標からの反射光を受信して受信信号に変換する光送受信部10と、あらかじめ設定された測定可能時間間隔に基づき、光送受信部10によるレーザ光の発振から反射光の受信までの時間を測定することでレーザ光の照射点までの距離を示す距離信号を算出すると共に、レーザ光の照射点からのレーザ光の反射光強度を示す強度信号を算出する距離強度算出部20と、距離強度算出部20により算出された距離信号及び強度信号に基づきあらかじめ設定された測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を設定する信号処理部30とを備え、距離強度算出部20は信号処理部30により設定された狭い測定可能時間間隔に基づいて距離信号を算出する。
【解決手段】 レーザ光を目標に向けて発振し、目標からの反射光を受信して受信信号に変換する光送受信部10と、あらかじめ設定された測定可能時間間隔に基づき、光送受信部10によるレーザ光の発振から反射光の受信までの時間を測定することでレーザ光の照射点までの距離を示す距離信号を算出すると共に、レーザ光の照射点からのレーザ光の反射光強度を示す強度信号を算出する距離強度算出部20と、距離強度算出部20により算出された距離信号及び強度信号に基づきあらかじめ設定された測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を設定する信号処理部30とを備え、距離強度算出部20は信号処理部30により設定された狭い測定可能時間間隔に基づいて距離信号を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光の発振時間と反射光の受光時間の差から目標までの距離を導出するレーザ距離測定法を用いたレーザレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザレーダ装置では、時間測定の基準となる時間標準を有しており、時間標準を基にレーザ光の発振時間から反射光の受光時間までの時間間隔である反射光帰還時間を測定し、反射光帰還時間と光速度から目標までの距離値を算出していた。
【0003】
図12は、レーザレーダ装置におけるレーザ光の発信時間と反射光の受光時間の差を測定する時間測定部の構成図例である。図12に示す時間測定部は時間標準として定電流源を用いたランプ電圧を有している。ランプ電圧はレーザ光の発振時間の基準となるゲート信号により定電流源のスイッチが入ることで電圧上昇を始め、定電流源の電流値に応じて時間に対して比例して増加する。反射光の受光による受信信号が発生するとピーク検出回路によりS/Hトリガが出力される。S/Hトリガによりランプ電圧のその瞬間の電圧値をS/H回路が読み取り、ホールド電圧値として出力する。その後、ゲート信号の入力が止まり、リセット信号が入力され、ランプ電圧が放電される。ゲート信号の時間とランプ電圧の時間に対する比例定数とホールド電圧値から上記反射光帰還時間を算出する。
【0004】
定電流源には一定のノイズが存在するため、ランプ電圧にもノイズが存在し、S/Hトリガのタイミングに対してホールド電圧値が誤差を有する。ホールド電圧値が誤差を有することにより、算出される反射光帰還時間も誤差を有することになる。
【0005】
ここで、ランプ電圧の比例定数を大きくすると時間に対するホールド電圧変化量が大きくなる一方、ホールド電圧値の誤差は一定値であるので、相対的に算出される反射光帰還時間の誤差は小さくなる。逆にランプ電圧の比例定数を小さくすると相対的に算出される反射光帰還時間の誤差は大きくなる。ランプ電圧の比例定数を大きくすることで算出される反射光帰還時間の誤差は小さくなるが、ランプ電圧値には上限があるので、測定可能時間間隔は短くなる。逆にランプ電圧の比例定数を小さくすると、誤差は大きくなるが測定可能時間間隔を長くすることが可能である。
【0006】
よって、反射光帰還時間の測定可能時間間隔が長いほど時間測定精度が悪くなり、測定可能時間間隔が短いほど時間測定精度が良くなる。
【0007】
同様に距離測定誤差は測定可能距離間隔に反比例する。広い距離間隔を測定する場合には距離測定精度が粗く、狭い距離間隔を測定する場合には細かい精度となる。これにより測定可能距離間隔と距離測定精度は両方高めることはできず、トレードオフの関係にある。
【0008】
この問題を解決する従来技術として、例えば特許文献1では、レーザレーダ装置と他の距離測定法を併せ持つ装置が提案されている。この発明は広い測定可能距離間隔を持つ他の距離測定法で目標を粗検出し、粗検出の結果を用いて高い距離測定精度を持つレーザレーダ装置で目標を精検出するという装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−240276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のようなレーザレーダ装置と他の距離測定法を併せ持つ装置では、レーザレーダ装置以外に他の距離測定装置を備えなければならず、装置が大きくなり、また部品数も多くなってしまうという課題があった。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、レーザレーダ装置以外の他の距離測定装置を備えずに、高い距離測定精度と広い測定可能距離間隔を有するレーザレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明に係るレーザレーダ装置は、レーザ光を目標に向けて発振し、目標からの反射光を受信して受信信号に変換する送受信部と、あらかじめ設定された測定可能時間間隔に基づき、送受信部によるレーザ光の発振から反射光の受信までの時間を測定することでレーザ光の照射点までの距離を示す距離信号を算出すると共に、レーザ光の照射点からのレーザ光の反射光強度を示す強度信号を算出する距離強度算出部と、距離強度算出部により算出された距離信号及び強度信号に基づきあらかじめ設定された測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を設定する信号処理部とを備え、距離強度算出部は信号処理部により設定された狭い測定可能時間間隔に基づいて距離信号を算出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るレーザレーダ装置によれば、目標までの距離の測定を複数回行い、初回測定では測定可能距離間隔を広く設定し目標を低精度で検出し、次回以降の測定では前回の測定の結果を用いて測定可能距離間隔を狭く再設定して目標を高精度に検出するため、レーザレーダ装置以外の他の距離測定装置を備えずに、高い距離測定精度と広い測定可能距離間隔を併せ持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の全体構成である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の初回測定時のランプ電圧を示したグラフである。
【図3】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の初回測定及び測定可能距離間隔の再設定について示したグラフである。
【図4】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の次回測定時のランプ電圧について示したグラフである。
【図5】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の処理手順のフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置における時間測定部のランプ電圧の時間変化を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の目標強度データが示す信号の強度が高い時と信号の強度が低い時のランプ電圧の時間変化を示す図である。
【図8】図1のレーザレーダ装置の全体構成において、受信視野中心とレーザ光伝搬方向が同軸方向でない場合の構成を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係るレーザレーダ装置の全体構成である。
【図10】この発明の実施の形態2に係るレーザレーダ装置のランプ電圧の時間変化を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係るレーザレーダ装置の全体構成である。
【図12】レーザレーダ装置におけるレーザ光の発信時間と反射光の受光時間の差を測定する時間測定部の構成図例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の全体構成である。この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置は、レーザ光を発振し、レーザ光の反射光を集光して電気信号である受信信号に変換する光送受信部10と、測定可能時間間隔の可変な時間標準を有し、光送受信部10によって変換された受信信号からセンサからレーザ光照射点までの距離を示す距離信号及びレーザ照射点からのレーザ光の反射光強度を示す強度信号を算出する距離強度算出部20と、距離信号及び強度信号から目標を検出し、検出された目標に対して最適な測定可能距離間隔を算出する信号処理部30を備えており、光送受信部10は、トリガ発生部11、レーザ部12、スキャナ部13、角度モニタ部14、受信レンズ部15、受光器部16によって、距離強度算出部20は、強度測定部21、時間測定部22、距離算出部23によって、信号処理部30は、距離強度画像算出部31、目標検出部32、最適測定可能距離間隔算出部33によって、それぞれ構成されている。
【0016】
トリガ発生部11はレーザ光の発振時間の基準となるトリガ信号を生成してレーザ部12と時間測定部22に出力し、レーザ部12はトリガ発生部11によって生成されたトリガ信号に基づいてレーザ光を発振する。スキャナ部13はレーザ部12によって発振されたレーザ光とレーザ光の反射光を受光可能な角度範囲である受信視野を2次元走査し、角度モニタ部14はスキャナ部13のその時のスキャナ角度を読み取り、スキャナ角度信号として距離強度画像算出部31に出力する。
【0017】
受信レンズ部15は受信視野中心に対して同軸方向に伝搬する目標からの散乱光を集光した反射光を受光器部16へ出力し、受光器部16は受信レンズ部15によって集光された反射光を電気信号である受信信号に変換して強度測定部21と時間測定部22に出力する。
【0018】
強度測定部21は、受光器部16によって変換された受信信号のピーク値を計測し、それに対応する電圧を強度信号として距離強度画像算出部31へ出力する。
【0019】
時間測定部22は図12に示すように構成されており、トリガ発生部11によって発生されたトリガ信号の時間を時間原点として時間に比例して増加するランプ電圧を時間標準として有する。時間測定部22は受光器部16によって変換された受信信号が入力されるとその受信信号のピークを検出してS/Hトリガを出力する。S/H回路はS/Hトリガの入力タイミングのランプ電圧値を読み取り、ホールド電圧値として距離算出部23に出力する。
時間測定部22は、ランプ電圧比例定数とゲート時間を変更することで測定可能時間間隔を変更することができ、初回測定においては測定可能距離間隔が広くなるようにあらかじめ決められた初回ランプ電圧比例定数C1と初回ゲート時間tg1を設定し、2回目以降の測定においては初回測定よりも測定可能距離間隔が狭くなるように最適測定可能距離間隔算出部33によって算出された次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2を設定する。
【0020】
図1に示す距離算出部23は、時間測定部22によって出力されたホールド電圧値からランプ電圧比例定数とゲート時間を用いて反射光帰還時間を算出し、反射光帰還時間と光速度から距離信号を算出して距離強度画像算出部31に出力する。
ここで、反射光帰還時間の算出に用いるランプ電圧比例定数とゲート時間は時間測定部22において設定される値であり、初回測定においては初回ランプ電圧比例定数C1と初回ゲート時間tg1に設定され、2回目以降の測定においては最適測定可能距離間隔算出部33によって算出された次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2に設定される。
【0021】
距離強度画像算出部31は、角度モニタ部14によって出力されたスキャナ角度信号から得られるレーザ光照射点の2次元情報と、距離算出部23から得られる距離信号と、強度測定部21から得られる強度信号により生成される、空間的に3次元の画像データである3次元距離画像データと、空間的に2次元の反射光強度画像データである2次元強度画像データを算出して目標検出部32へ出力する。
【0022】
目標検出部32は、距離強度画像算出部31によって算出された3次元距離画像データと2次元強度画像データから目標を検出し、検出した目標までの距離を示す目標距離データと検出した目標の反射光強度を示す目標強度データを算出して最適測定可能距離間隔算出部33へ出力する。
【0023】
最適測定可能距離間隔算出部33は、目標検出部32によって出力された目標距離データから最適な測定可能距離間隔を算出し、算出した測定可能距離間隔に基づきランプ電圧比例定数信号とゲート信号を算出して時間測定部22と距離算出部23に出力する。
【0024】
ここで、最適な測定可能距離間隔とこれに基づくランプ電圧比例定数信号、ゲート信号の算出について説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の初回測定時のランプ電圧を示したグラフであり、図2の時間原点はレーザ発振タイミングとし、ランプ電圧開始時間(初回ゲート時間)をtg1、ランプ電圧の傾きをC1、ランプ電圧の最大値をVmax、ランプ電圧終了時間をtmax1とする。光速をcとすると、このときの測定可能距離Lmin1〜Lmax1は、tg1×c〜tmax1×cとなる。ランプ電圧において設定可能なのはランプ電圧開始時間とランプ電圧傾きの2つのパラメータであり、ランプ電圧の最大値Vmaxは不変の値である。また、tmax1は式(1)で表わされる。
tmax1=tg1+Vmax/C1 (1)
【0025】
図3は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の初回測定及び測定可能距離間隔の再設定について示したグラフである。ある時間tにレーザ反射光を受光し、その瞬間のランプ電圧VRをホールド電圧値として出力する。このホールド電圧値VR1と時間tの関係を式(2)に示す。
VR1=C1×(t−tg1) (2)
また、このときのランプ電圧誤差をΔVR1とする。
【0026】
ランプ電圧誤差ΔVR1から時間誤差Δt1を逆算する。Δt1とΔVR1の関係は式(3)で表される。
Δt1=ΔVR1/C1 (3)
また、距離誤差ΔLは光速cを用いて式(4)で表わされる。
ΔL1=c×Δt1 (4)
【0027】
ここで、次回ランプ電圧のランプ電圧開始時間tg2と終了時間tmax2が、図3に示すように時間誤差Δtに一致するよう、ランプ電圧開始時間とランプ電圧傾きを再設定する。このときの測定可能距離Lmin2〜Lmax2は、tg2×c〜tmax2×cとなる。この測定可能距離が距離誤差を含んだ最小の測定可能距離となるため、「最適な測定可能距離間隔」となる。また、このときのランプ電圧傾きをC2とすると、次回ランプ電圧のランプ電圧開始時間tg2及びランプ電圧傾きC2は式(5)、式(6)で表わされる。
tg2=t−Δt1/2 (5)
C2=Vmax/Δt1 (6)
また、ランプ電圧終了時間tmax2は式(7)で表わされる。
tmax2=t+Δt1/2 (7)
【0028】
次に、初回測定と同様に、測定可能距離間隔を再設定されたランプ電圧を用いて、次回測定を行う。図4は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の次回測定時のランプ電圧について示したグラフである。レーザ拡散光を受光するタイミングは図3と同じtである。このときホールドされるホールド電圧値VR2は式(8)で表わされる。
VR2=C2×(t−tg2) (8)
また、ランプ電圧誤差は、図3と同じΔVRとする。
【0029】
初回測定と同様にランプ電圧誤差ΔVRから時間誤差Δt2を逆算する。Δt2とΔVRの関係は式(9)で表わされる。
Δt2=ΔVR/C2 (9)
また、距離誤差ΔL2は式(10)で表わされる。
ΔL2=c×Δt2 (10)
【0030】
初回測定時の距離誤差ΔL1と次回測定時の距離誤差ΔL2を比較した結果を(4)、式(6)、式(9)、式(10)を用いて、式(11)に示す。
【0031】
ΔL2/ΔL1=Δt2/Δt1=ΔVR/C2/Δt1=ΔVR/Vmax(11)
【0032】
以上のことから最適な測定可能距離を設定することで、距離誤差をΔVR/Vmaxに減少させることが可能となる。
【0033】
次に、この実施の形態1に係るレーザレーダ装置の動作について説明する。図5は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の処理手順のフローチャートである。まず、時間測定部22が、ランプ電圧比例定数とゲート時間に初期値を設定する(ステップST1)。
【0034】
次に、トリガ発生部11がトリガ信号を生成し、このトリガ信号に基づいてレーザ部12がレーザ光を発振する(ステップST2)。
【0035】
次に、受信視野の中心がレーザ光の伝搬方向と同軸方向に配向している受信レンズ部15が目標からの反射光を集光し、受信レンズ部15によって集光された反射光を、受光器部16が電気信号である受信信号に変換して強度測定部21と時間測定部22へ出力する(ステップST3)。受光器部16によって変換された受信信号から強度測定部21がレーザ光の反射光強度を読み取って強度信号として距離強度画像算出部31に出力する(ステップST4)。
【0036】
次に、受光器部16によって変換された受信信号が時間測定部22に入力されると、時間測定部22がその瞬間のランプ電圧値を読み取ってホールド電圧値として距離算出部23に出力し(ステップST5)、時間測定部22によって出力されたホールド電圧値から距離算出部23が反射光帰還時間を算出し、反射光帰還時間と光速度からセンサからレーザ光照射点までの距離を算出し、距離信号として距離強度画像算出部31に出力する(ステップST6)。
【0037】
ここで、図6はこの発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置における時間測定部22のランプ電圧の時間変化を示す図である。トリガ発生部11によって発生されたトリガ信号を時間原点とし、時間測定部22の初回ホールド電圧値をVR、初回ゲート時間をtg1、初回ランプ電圧比例定数をC1とそれぞれすると、時間測定部22によって出力されたホールド電圧値から距離算出部23が反射光帰還時間tを算出する処理は式(12)で表される。
【0038】
t=VR/C1+tg1 (12)
【0039】
つまり、距離算出部23は(12)の式により、初回ホールド電圧値VRとステップST1において設定された初回ランプ電圧比例定数C1と初回ゲート時間tg1から目標からの反射光帰還時間tを算出する。
【0040】
次に、図5に示すように、角度モニタ部14がスキャナ角度信号を出力し、スキャナ部13が駆動してレーザを走査する(ステップST7)。そして、距離強度画像算出部31が、出力されたスキャナ角度信号から2次元走査が完了したかを判定する(ステップST8)。
【0041】
距離強度画像算出部31が、2次元走査が完了していないと判定した場合(ステップST8のNOの場合)は、ステップST2に戻って処理を繰り返す。一方、距離強度画像算出部31が、2次元走査が完了していると判定した場合(ステップST8のYESの場合)には、距離強度画像算出部31が3次元距離画像データと2次元強度画像データを算出して目標検出部32に出力する(ステップST9)。
【0042】
距離強度画像算出部31によって出力された3次元距離画像データと2次元強度画像データから目標検出部32が目標を検出したか判定する(ステップST10)。目標検出部32が、目標を検出しなかったと判定した場合(ステップST10のNOの場合)、ステップST1に戻って処理を繰り返す。一方、目標検出部32が目標を検出したと判定した場合(ステップST10のYESの場合)には、目標距離データと目標強度データを算出し(ステップST11)、最適測定可能距離間隔算出部33に出力する。
【0043】
次に、最適測定可能距離間隔算出部33が目標検出部32によって算出された目標距離データから最適な測定可能距離間隔を算出し、最適な測定可能距離間隔に合わせた次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2を算出する(ステップST12)。
【0044】
その後、最適測定可能距離間隔算出部33が、算出した次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2をそれぞれランプ電圧比例定数信号とゲート信号として時間測定部22及び距離算出部23に出力して再設定を行い(ステップST13)、ステップST2に戻って処理を繰り返す。
【0045】
時間測定部22及び距離算出部23の再設定は、時間測定部22がランプ電圧比例定数とゲート時間について最適測定可能距離間隔算出部33によって算出された次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2をそれぞれ設定する。よって、次回測定におけるステップST6において距離算出部23によって算出される反射光帰還時間tは式(13)で表わされる。また、次回測定におけるランプ電圧の時間変化を図6に示す。
【0046】
t=VR/C2+tg2 (13)
【0047】
このように、ゲート時間とランプ電圧比例定数について測定結果に基づいて再設定を複数回繰り返すことで、測定精度を高めることができる。
【0048】
ここで、最適測定可能距離間隔算出部33による最適な測定可能距離間隔の算出は、目標距離データだけでなく、目標強度データも加えて用いて行ってもよい。図3を用いて上述したように、最適な測定可能距離は、目標距離データとランプ電圧誤差によって決定され、通常の場合、このランプ電圧誤差は事前に設定した値を用いる。しかし、目標強度データが大きいほど、このランプ電圧誤差は小さくなるため、この対応関係を用いて、誤差を最適化して再設定することも可能となる。これにより変動する誤差に応じて最適な測定可能距離を測定できるようになる。
【0049】
目標強度データを用いて最適な測定可能距離間隔を算出する場合、目標強度データが示す目標の強度値が高いほど、距離測定精度が高くなる。そのため、初回測定において目標の強度値が高い場合は距離測定精度も高いので、次回測定ではより精密な距離測定を行うことができる。
【0050】
図7は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の目標強度データが示す信号の強度が高い時と信号の強度が低い時のランプ電圧の時間変化を示す図である。図7に示すように、初回測定における信号の強度が高い場合は信号の強度が低い場合よりも次回ゲート時間tg2を反射光帰還時間の近くに設定し、次回ランプ電圧比例定数C2をより大きく設定するものとする。これにより初回測定時の強度値に応じて次回測定の距離測定精度を高めることができる。
【0051】
なお、次回ゲート時間tg2は反射光帰還時間に可能な限り近づけて設定してもよい。例えば、図3において、ランプ電圧誤差ΔVRと強度信号Iに反比例した場合、ΔVRは定数kを用いて式(14)で表される。
ΔVR=k/I (14)
すると、ゲート時間tg2は、式(3)、式(5)、式(14)より、式(15)のように設定される。
tg2=t−k/2C1I (15)
よって、強度信号Iが強いほど、ゲート時間tg2を反射光帰還時間tに近づけて設定することができると言える。
【0052】
また、図7に示すように、時間測定部22の時間標準であるランプ電圧は定電流を時間積分することによって時間に比例して上昇する。ここで、定電流源が一定の電流ノイズInを有する場合、ランプ電圧を示すホールド電圧値のノイズVnはランプ電圧比例定数Cを用いて式(16)によって算出することができる。
【0053】
【0054】
ここで、図3において、ランプ電圧誤差ΔVRがゲート時間tg2からの経過時間に比例するため、ΔVRは比例定数hを用いて式(17)のように表わされる。
ΔVR=h(t−tg2) (17)
よって、ゲート時間tg2から反射光帰還時間tまでの経過時間がなるべく短くなるようにゲート時間tg2を設定することで、ノイズの上昇を抑え、高精度な測距が可能となる。
【0055】
また、受信視野中心とレーザ光伝搬方向は同軸方向でなくてもよい。図8は図1のレーザレーダ装置の全体構成において、受信視野中心とレーザ光伝搬方向が同軸方向でない場合の構成を示す図である。受信視野中心とレーザ光伝搬方向が同軸方向でない場合、図8に示すようにスキャナ部13は受信視野を走査せず、レーザ光のみ受信レンズ部15の固定された視野内に2次元走査する。
【0056】
受信視野をスキャナ部13と分離することにより、受信開口がスキャナ部13の大きさにより制限されなくなり、受信光強度を大きくすることができる。
【0057】
スキャナ部13が行う走査は2次元走査でも1次元走査でもよい。1次元走査の場合、ラインセンサとなり1次元の距離データと強度データを取得する。
【0058】
なお、スキャナ部13はなくても良い。スキャナ部13が備えない構成の場合、実施の形態1のレーザレーダ装置は定点の測距装置となり、ある定点の距離データと強度データが取得できる。この場合、スキャナ部13の他に角度モニタ部14、距離強度画像算出部31、目標検出部32が必要なくなる。なお、最適測定可能距離間隔算出部33は距離信号と強度信号から最適な測定可能距離間隔を算出する。
【0059】
以上のようにして、レーザ光を目標に向けて発振し、目標からの反射光を受信して受信信号に変換する光送受信部10と、あらかじめ設定された測定可能時間間隔に基づき、光送受信部10によるレーザ光の発振から反射光の受信までの時間を測定することで目標までの距離を示す距離信号を算出すると共に、受信信号の強度を示す強度信号を算出する距離強度算出部20と、距離強度算出部20により算出された距離信号及び強度信号に基づきあらかじめ設定された測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を設定する信号処理部30とを備え、距離強度算出部20は信号処理部30により設定された狭い測定可能時間間隔に基づいて距離信号を算出するように構成したので、レーザレーダ装置以外の他の距離測定装置を備えずに、高い距離測定精度と広い測定可能距離間隔を併せ持つことができる。
【0060】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2に係るレーザレーダ装置の全体構成であり、実施の形態1の図1に示すレーザレーダ装置の構成に対して、目標距離誤差算出部34を信号処理部30の構成に追加で備えるものである。図1と同一符号は同一又は相対部分を示すので説明を省略する。
【0061】
目標距離誤差算出部34は、あらかじめ設定された目標最大移動速度と1回の測定にかかる時間から目標距離誤差値を算出して目標距離誤差データとして最適測定可能距離間隔算出部33に出力する。
【0062】
最適測定可能距離間隔算出部33は、目標検出部32によって算出された目標距離データと目標強度データから最適な測定可能距離間隔だけでなく、目標距離誤差算出部34によって算出された目標距離誤差値を用いて、最適な測定可能距離間隔を算出して次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2をそれぞれランプ電圧比例定数信号、ゲート信号として時間測定部22に出力する。
【0063】
目標の最大移動速度vtが想定できる場合、目標距離誤差算出部34が目標の最大移動速度vtと距離強度画像取得における初回測定と次回測定の時間差Δtdから目標が移動する最大の距離を示す目標距離誤差ΔLとする。目標距離誤差ΔLを表す式を式(18)に示す。
【0064】
【0065】
目標距離誤差算出部34は式(18)を用いて、あらかじめ設定された目標の最大移動速度vtと時間差Δtdから目標距離誤差ΔLを計算して最適測定可能距離間隔算出部33に出力する。
【0066】
最適測定可能距離間隔算出部33は、目標距離誤差算出部34によって算出された目標距離誤差ΔLから目標の反射光帰還時間誤差Δtr’を算出する。目標距離誤差ΔLから目標の反射光帰還時間誤差Δtr’を表す式を式(19)を示す。ここでcは光速を示す。
【0067】
【0068】
最適測定可能距離間隔算出部33は式(19)を用いて、目標距離誤差ΔLから目標の反射光帰還時間誤差Δtr’を算出し、算出したΔtr’を用いて次回ゲート時間tg2と次回ランプ電圧比例定数C2の設定を行う。
【0069】
図10は、この発明の実施の形態2に係るレーザレーダ装置のランプ電圧の時間変化を示す図である。次回ゲート時間tg2と次回ランプ電圧比例定数C2は図10に示すように上記反射光帰還時間誤差Δtr’の幅を含むように設定する。
【0070】
例えば、図3において、目標が移動することを想定し、距離誤差ΔL1に目標移動距離誤差ΔLmを追加する。よって距離誤差ΔL1’は式(20)で表される。
ΔL1’= ΔL1+ΔLm (20)
式(20)より算出した時間誤差ΔL1’からΔt1’を算出し、式(5)、式(6)により次回ゲート時間tg2と次回ランプ電圧比例定数C2を設定する。
【0071】
以上のようにして、信号処理部30は、あらかじめ設定された目標の最大移動速度と1回の測定にかかる時間から目標距離誤差値を算出する目標距離誤差算出部34を備え、目標距離誤差値を用いて測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を算出するように構成したので、これにより目標が移動しても目標が測定可能距離間隔内に収まるので、目標を検出することができる。
【0072】
実施の形態3.
図11は、この発明の実施の形態3に係るレーザレーダ装置の全体構成であり、実施の形態1の図1に示すレーザレーダ装置の構成に対して、トリガ周期制御部41を追加で備えるものである。図1と同一符号は同一又は相対部分を示すので説明を省略する。
【0073】
トリガ周期制御部41は、最適測定可能距離間隔算出部33によって算出された測定可能距離間隔に基づいて算出されたゲート信号及びランプ電圧比例定数信号から最適なトリガ周期信号を算出してトリガ発生部11に出力する。
【0074】
最適なトリガ周期信号の算出方法について説明すると、トリガ周期T1は、測定終了時間であるランプ電圧終了時間tmax1よりも大きな値を取る。
T1>tmax1
例えば、再設定されたランプ電圧終了時間tmax2が初回ランプ電圧時間tmax1の1/A倍(Aは定数)だったとする。
tmax2=tmax1/A
すると、再設定されたトリガ周期T2もランプ電圧終了時間の変化に応じて1/A倍にすることが可能となる。
T2=T1/A
このように、トリガ周期を短くすることで、データ取得を高速化することができる。
【0075】
トリガ周期制御部41によって最適なトリガ周期信号が出力されると、トリガ発生部11は最適なトリガ周期信号に応じた周期でトリガを発生させる。
【0076】
反射光帰還時間を測定するために、レーザ部12は測定可能距離間隔に応じた測定可能時間間隔だけ次のレーザ光の発振を待つ必要がある。測定可能距離間隔が広い場合には測定可能時間間隔が長くなるので、レーザ光の発振繰り返し周期を長くする必要がある。逆に測定可能距離間隔が狭い場合には測定可能時間間隔が短くなり、レーザ光の発振周期を短くすることができる。
【0077】
実施の形態3に係るレーザレーダ装置では2回目以降の測定において測定可能距離間隔を目標距離付近に最適化するので、測定可能時間間隔は小さくなる。そこで、この発明の実施の形態3に係るレーザレーダ装置では、最適測定可能距離間隔算出部33によって算出されたランプ電圧比例定数信号とゲート信号からトリガ周期制御部41が測定可能時間間隔を算出し、算出した測定可能時間間隔に応じて最適なレーザ光のトリガ周期を決定するトリガ周期を算出する。
【0078】
以上のようにして、測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔隔から最適なトリガ周期信号を算出するトリガ周期制御部41を備え、光送受信部10は最適なトリガ周期信号に応じた周期でトリガを発生させるように構成したので、2回目以降の測定において最適なトリガ周期信号に応じた周期でレーザ光を発振し、レーザ発振繰り返し周期を短縮することができる。
【0079】
また、1回の距離強度画像の撮像周期はレーザの発振周期に比例するので、レーザ発振繰り返し周期を短縮することで2回目以降の測定において距離強度画像の撮像周期を短縮することができる。
【0080】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 光送受信部、11 トリガ発生部、12 レーザ部、13 スキャナ部、14 角度モニタ部、15 受信レンズ部、16 受光器部、20 距離強度算出部、21 強度測定部、22 時間測定部、23 距離算出部、30 信号処理部、31 距離強度画像算出部、32 目標検出部、33 最適測定可能距離間隔算出部、34 目標距離誤差算出部、41 トリガ周期制御部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光の発振時間と反射光の受光時間の差から目標までの距離を導出するレーザ距離測定法を用いたレーザレーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザレーダ装置では、時間測定の基準となる時間標準を有しており、時間標準を基にレーザ光の発振時間から反射光の受光時間までの時間間隔である反射光帰還時間を測定し、反射光帰還時間と光速度から目標までの距離値を算出していた。
【0003】
図12は、レーザレーダ装置におけるレーザ光の発信時間と反射光の受光時間の差を測定する時間測定部の構成図例である。図12に示す時間測定部は時間標準として定電流源を用いたランプ電圧を有している。ランプ電圧はレーザ光の発振時間の基準となるゲート信号により定電流源のスイッチが入ることで電圧上昇を始め、定電流源の電流値に応じて時間に対して比例して増加する。反射光の受光による受信信号が発生するとピーク検出回路によりS/Hトリガが出力される。S/Hトリガによりランプ電圧のその瞬間の電圧値をS/H回路が読み取り、ホールド電圧値として出力する。その後、ゲート信号の入力が止まり、リセット信号が入力され、ランプ電圧が放電される。ゲート信号の時間とランプ電圧の時間に対する比例定数とホールド電圧値から上記反射光帰還時間を算出する。
【0004】
定電流源には一定のノイズが存在するため、ランプ電圧にもノイズが存在し、S/Hトリガのタイミングに対してホールド電圧値が誤差を有する。ホールド電圧値が誤差を有することにより、算出される反射光帰還時間も誤差を有することになる。
【0005】
ここで、ランプ電圧の比例定数を大きくすると時間に対するホールド電圧変化量が大きくなる一方、ホールド電圧値の誤差は一定値であるので、相対的に算出される反射光帰還時間の誤差は小さくなる。逆にランプ電圧の比例定数を小さくすると相対的に算出される反射光帰還時間の誤差は大きくなる。ランプ電圧の比例定数を大きくすることで算出される反射光帰還時間の誤差は小さくなるが、ランプ電圧値には上限があるので、測定可能時間間隔は短くなる。逆にランプ電圧の比例定数を小さくすると、誤差は大きくなるが測定可能時間間隔を長くすることが可能である。
【0006】
よって、反射光帰還時間の測定可能時間間隔が長いほど時間測定精度が悪くなり、測定可能時間間隔が短いほど時間測定精度が良くなる。
【0007】
同様に距離測定誤差は測定可能距離間隔に反比例する。広い距離間隔を測定する場合には距離測定精度が粗く、狭い距離間隔を測定する場合には細かい精度となる。これにより測定可能距離間隔と距離測定精度は両方高めることはできず、トレードオフの関係にある。
【0008】
この問題を解決する従来技術として、例えば特許文献1では、レーザレーダ装置と他の距離測定法を併せ持つ装置が提案されている。この発明は広い測定可能距離間隔を持つ他の距離測定法で目標を粗検出し、粗検出の結果を用いて高い距離測定精度を持つレーザレーダ装置で目標を精検出するという装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−240276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のようなレーザレーダ装置と他の距離測定法を併せ持つ装置では、レーザレーダ装置以外に他の距離測定装置を備えなければならず、装置が大きくなり、また部品数も多くなってしまうという課題があった。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、レーザレーダ装置以外の他の距離測定装置を備えずに、高い距離測定精度と広い測定可能距離間隔を有するレーザレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明に係るレーザレーダ装置は、レーザ光を目標に向けて発振し、目標からの反射光を受信して受信信号に変換する送受信部と、あらかじめ設定された測定可能時間間隔に基づき、送受信部によるレーザ光の発振から反射光の受信までの時間を測定することでレーザ光の照射点までの距離を示す距離信号を算出すると共に、レーザ光の照射点からのレーザ光の反射光強度を示す強度信号を算出する距離強度算出部と、距離強度算出部により算出された距離信号及び強度信号に基づきあらかじめ設定された測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を設定する信号処理部とを備え、距離強度算出部は信号処理部により設定された狭い測定可能時間間隔に基づいて距離信号を算出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るレーザレーダ装置によれば、目標までの距離の測定を複数回行い、初回測定では測定可能距離間隔を広く設定し目標を低精度で検出し、次回以降の測定では前回の測定の結果を用いて測定可能距離間隔を狭く再設定して目標を高精度に検出するため、レーザレーダ装置以外の他の距離測定装置を備えずに、高い距離測定精度と広い測定可能距離間隔を併せ持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の全体構成である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の初回測定時のランプ電圧を示したグラフである。
【図3】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の初回測定及び測定可能距離間隔の再設定について示したグラフである。
【図4】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の次回測定時のランプ電圧について示したグラフである。
【図5】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の処理手順のフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置における時間測定部のランプ電圧の時間変化を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の目標強度データが示す信号の強度が高い時と信号の強度が低い時のランプ電圧の時間変化を示す図である。
【図8】図1のレーザレーダ装置の全体構成において、受信視野中心とレーザ光伝搬方向が同軸方向でない場合の構成を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係るレーザレーダ装置の全体構成である。
【図10】この発明の実施の形態2に係るレーザレーダ装置のランプ電圧の時間変化を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係るレーザレーダ装置の全体構成である。
【図12】レーザレーダ装置におけるレーザ光の発信時間と反射光の受光時間の差を測定する時間測定部の構成図例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の全体構成である。この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置は、レーザ光を発振し、レーザ光の反射光を集光して電気信号である受信信号に変換する光送受信部10と、測定可能時間間隔の可変な時間標準を有し、光送受信部10によって変換された受信信号からセンサからレーザ光照射点までの距離を示す距離信号及びレーザ照射点からのレーザ光の反射光強度を示す強度信号を算出する距離強度算出部20と、距離信号及び強度信号から目標を検出し、検出された目標に対して最適な測定可能距離間隔を算出する信号処理部30を備えており、光送受信部10は、トリガ発生部11、レーザ部12、スキャナ部13、角度モニタ部14、受信レンズ部15、受光器部16によって、距離強度算出部20は、強度測定部21、時間測定部22、距離算出部23によって、信号処理部30は、距離強度画像算出部31、目標検出部32、最適測定可能距離間隔算出部33によって、それぞれ構成されている。
【0016】
トリガ発生部11はレーザ光の発振時間の基準となるトリガ信号を生成してレーザ部12と時間測定部22に出力し、レーザ部12はトリガ発生部11によって生成されたトリガ信号に基づいてレーザ光を発振する。スキャナ部13はレーザ部12によって発振されたレーザ光とレーザ光の反射光を受光可能な角度範囲である受信視野を2次元走査し、角度モニタ部14はスキャナ部13のその時のスキャナ角度を読み取り、スキャナ角度信号として距離強度画像算出部31に出力する。
【0017】
受信レンズ部15は受信視野中心に対して同軸方向に伝搬する目標からの散乱光を集光した反射光を受光器部16へ出力し、受光器部16は受信レンズ部15によって集光された反射光を電気信号である受信信号に変換して強度測定部21と時間測定部22に出力する。
【0018】
強度測定部21は、受光器部16によって変換された受信信号のピーク値を計測し、それに対応する電圧を強度信号として距離強度画像算出部31へ出力する。
【0019】
時間測定部22は図12に示すように構成されており、トリガ発生部11によって発生されたトリガ信号の時間を時間原点として時間に比例して増加するランプ電圧を時間標準として有する。時間測定部22は受光器部16によって変換された受信信号が入力されるとその受信信号のピークを検出してS/Hトリガを出力する。S/H回路はS/Hトリガの入力タイミングのランプ電圧値を読み取り、ホールド電圧値として距離算出部23に出力する。
時間測定部22は、ランプ電圧比例定数とゲート時間を変更することで測定可能時間間隔を変更することができ、初回測定においては測定可能距離間隔が広くなるようにあらかじめ決められた初回ランプ電圧比例定数C1と初回ゲート時間tg1を設定し、2回目以降の測定においては初回測定よりも測定可能距離間隔が狭くなるように最適測定可能距離間隔算出部33によって算出された次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2を設定する。
【0020】
図1に示す距離算出部23は、時間測定部22によって出力されたホールド電圧値からランプ電圧比例定数とゲート時間を用いて反射光帰還時間を算出し、反射光帰還時間と光速度から距離信号を算出して距離強度画像算出部31に出力する。
ここで、反射光帰還時間の算出に用いるランプ電圧比例定数とゲート時間は時間測定部22において設定される値であり、初回測定においては初回ランプ電圧比例定数C1と初回ゲート時間tg1に設定され、2回目以降の測定においては最適測定可能距離間隔算出部33によって算出された次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2に設定される。
【0021】
距離強度画像算出部31は、角度モニタ部14によって出力されたスキャナ角度信号から得られるレーザ光照射点の2次元情報と、距離算出部23から得られる距離信号と、強度測定部21から得られる強度信号により生成される、空間的に3次元の画像データである3次元距離画像データと、空間的に2次元の反射光強度画像データである2次元強度画像データを算出して目標検出部32へ出力する。
【0022】
目標検出部32は、距離強度画像算出部31によって算出された3次元距離画像データと2次元強度画像データから目標を検出し、検出した目標までの距離を示す目標距離データと検出した目標の反射光強度を示す目標強度データを算出して最適測定可能距離間隔算出部33へ出力する。
【0023】
最適測定可能距離間隔算出部33は、目標検出部32によって出力された目標距離データから最適な測定可能距離間隔を算出し、算出した測定可能距離間隔に基づきランプ電圧比例定数信号とゲート信号を算出して時間測定部22と距離算出部23に出力する。
【0024】
ここで、最適な測定可能距離間隔とこれに基づくランプ電圧比例定数信号、ゲート信号の算出について説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の初回測定時のランプ電圧を示したグラフであり、図2の時間原点はレーザ発振タイミングとし、ランプ電圧開始時間(初回ゲート時間)をtg1、ランプ電圧の傾きをC1、ランプ電圧の最大値をVmax、ランプ電圧終了時間をtmax1とする。光速をcとすると、このときの測定可能距離Lmin1〜Lmax1は、tg1×c〜tmax1×cとなる。ランプ電圧において設定可能なのはランプ電圧開始時間とランプ電圧傾きの2つのパラメータであり、ランプ電圧の最大値Vmaxは不変の値である。また、tmax1は式(1)で表わされる。
tmax1=tg1+Vmax/C1 (1)
【0025】
図3は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の初回測定及び測定可能距離間隔の再設定について示したグラフである。ある時間tにレーザ反射光を受光し、その瞬間のランプ電圧VRをホールド電圧値として出力する。このホールド電圧値VR1と時間tの関係を式(2)に示す。
VR1=C1×(t−tg1) (2)
また、このときのランプ電圧誤差をΔVR1とする。
【0026】
ランプ電圧誤差ΔVR1から時間誤差Δt1を逆算する。Δt1とΔVR1の関係は式(3)で表される。
Δt1=ΔVR1/C1 (3)
また、距離誤差ΔLは光速cを用いて式(4)で表わされる。
ΔL1=c×Δt1 (4)
【0027】
ここで、次回ランプ電圧のランプ電圧開始時間tg2と終了時間tmax2が、図3に示すように時間誤差Δtに一致するよう、ランプ電圧開始時間とランプ電圧傾きを再設定する。このときの測定可能距離Lmin2〜Lmax2は、tg2×c〜tmax2×cとなる。この測定可能距離が距離誤差を含んだ最小の測定可能距離となるため、「最適な測定可能距離間隔」となる。また、このときのランプ電圧傾きをC2とすると、次回ランプ電圧のランプ電圧開始時間tg2及びランプ電圧傾きC2は式(5)、式(6)で表わされる。
tg2=t−Δt1/2 (5)
C2=Vmax/Δt1 (6)
また、ランプ電圧終了時間tmax2は式(7)で表わされる。
tmax2=t+Δt1/2 (7)
【0028】
次に、初回測定と同様に、測定可能距離間隔を再設定されたランプ電圧を用いて、次回測定を行う。図4は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の次回測定時のランプ電圧について示したグラフである。レーザ拡散光を受光するタイミングは図3と同じtである。このときホールドされるホールド電圧値VR2は式(8)で表わされる。
VR2=C2×(t−tg2) (8)
また、ランプ電圧誤差は、図3と同じΔVRとする。
【0029】
初回測定と同様にランプ電圧誤差ΔVRから時間誤差Δt2を逆算する。Δt2とΔVRの関係は式(9)で表わされる。
Δt2=ΔVR/C2 (9)
また、距離誤差ΔL2は式(10)で表わされる。
ΔL2=c×Δt2 (10)
【0030】
初回測定時の距離誤差ΔL1と次回測定時の距離誤差ΔL2を比較した結果を(4)、式(6)、式(9)、式(10)を用いて、式(11)に示す。
【0031】
ΔL2/ΔL1=Δt2/Δt1=ΔVR/C2/Δt1=ΔVR/Vmax(11)
【0032】
以上のことから最適な測定可能距離を設定することで、距離誤差をΔVR/Vmaxに減少させることが可能となる。
【0033】
次に、この実施の形態1に係るレーザレーダ装置の動作について説明する。図5は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の処理手順のフローチャートである。まず、時間測定部22が、ランプ電圧比例定数とゲート時間に初期値を設定する(ステップST1)。
【0034】
次に、トリガ発生部11がトリガ信号を生成し、このトリガ信号に基づいてレーザ部12がレーザ光を発振する(ステップST2)。
【0035】
次に、受信視野の中心がレーザ光の伝搬方向と同軸方向に配向している受信レンズ部15が目標からの反射光を集光し、受信レンズ部15によって集光された反射光を、受光器部16が電気信号である受信信号に変換して強度測定部21と時間測定部22へ出力する(ステップST3)。受光器部16によって変換された受信信号から強度測定部21がレーザ光の反射光強度を読み取って強度信号として距離強度画像算出部31に出力する(ステップST4)。
【0036】
次に、受光器部16によって変換された受信信号が時間測定部22に入力されると、時間測定部22がその瞬間のランプ電圧値を読み取ってホールド電圧値として距離算出部23に出力し(ステップST5)、時間測定部22によって出力されたホールド電圧値から距離算出部23が反射光帰還時間を算出し、反射光帰還時間と光速度からセンサからレーザ光照射点までの距離を算出し、距離信号として距離強度画像算出部31に出力する(ステップST6)。
【0037】
ここで、図6はこの発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置における時間測定部22のランプ電圧の時間変化を示す図である。トリガ発生部11によって発生されたトリガ信号を時間原点とし、時間測定部22の初回ホールド電圧値をVR、初回ゲート時間をtg1、初回ランプ電圧比例定数をC1とそれぞれすると、時間測定部22によって出力されたホールド電圧値から距離算出部23が反射光帰還時間tを算出する処理は式(12)で表される。
【0038】
t=VR/C1+tg1 (12)
【0039】
つまり、距離算出部23は(12)の式により、初回ホールド電圧値VRとステップST1において設定された初回ランプ電圧比例定数C1と初回ゲート時間tg1から目標からの反射光帰還時間tを算出する。
【0040】
次に、図5に示すように、角度モニタ部14がスキャナ角度信号を出力し、スキャナ部13が駆動してレーザを走査する(ステップST7)。そして、距離強度画像算出部31が、出力されたスキャナ角度信号から2次元走査が完了したかを判定する(ステップST8)。
【0041】
距離強度画像算出部31が、2次元走査が完了していないと判定した場合(ステップST8のNOの場合)は、ステップST2に戻って処理を繰り返す。一方、距離強度画像算出部31が、2次元走査が完了していると判定した場合(ステップST8のYESの場合)には、距離強度画像算出部31が3次元距離画像データと2次元強度画像データを算出して目標検出部32に出力する(ステップST9)。
【0042】
距離強度画像算出部31によって出力された3次元距離画像データと2次元強度画像データから目標検出部32が目標を検出したか判定する(ステップST10)。目標検出部32が、目標を検出しなかったと判定した場合(ステップST10のNOの場合)、ステップST1に戻って処理を繰り返す。一方、目標検出部32が目標を検出したと判定した場合(ステップST10のYESの場合)には、目標距離データと目標強度データを算出し(ステップST11)、最適測定可能距離間隔算出部33に出力する。
【0043】
次に、最適測定可能距離間隔算出部33が目標検出部32によって算出された目標距離データから最適な測定可能距離間隔を算出し、最適な測定可能距離間隔に合わせた次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2を算出する(ステップST12)。
【0044】
その後、最適測定可能距離間隔算出部33が、算出した次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2をそれぞれランプ電圧比例定数信号とゲート信号として時間測定部22及び距離算出部23に出力して再設定を行い(ステップST13)、ステップST2に戻って処理を繰り返す。
【0045】
時間測定部22及び距離算出部23の再設定は、時間測定部22がランプ電圧比例定数とゲート時間について最適測定可能距離間隔算出部33によって算出された次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2をそれぞれ設定する。よって、次回測定におけるステップST6において距離算出部23によって算出される反射光帰還時間tは式(13)で表わされる。また、次回測定におけるランプ電圧の時間変化を図6に示す。
【0046】
t=VR/C2+tg2 (13)
【0047】
このように、ゲート時間とランプ電圧比例定数について測定結果に基づいて再設定を複数回繰り返すことで、測定精度を高めることができる。
【0048】
ここで、最適測定可能距離間隔算出部33による最適な測定可能距離間隔の算出は、目標距離データだけでなく、目標強度データも加えて用いて行ってもよい。図3を用いて上述したように、最適な測定可能距離は、目標距離データとランプ電圧誤差によって決定され、通常の場合、このランプ電圧誤差は事前に設定した値を用いる。しかし、目標強度データが大きいほど、このランプ電圧誤差は小さくなるため、この対応関係を用いて、誤差を最適化して再設定することも可能となる。これにより変動する誤差に応じて最適な測定可能距離を測定できるようになる。
【0049】
目標強度データを用いて最適な測定可能距離間隔を算出する場合、目標強度データが示す目標の強度値が高いほど、距離測定精度が高くなる。そのため、初回測定において目標の強度値が高い場合は距離測定精度も高いので、次回測定ではより精密な距離測定を行うことができる。
【0050】
図7は、この発明の実施の形態1に係るレーザレーダ装置の目標強度データが示す信号の強度が高い時と信号の強度が低い時のランプ電圧の時間変化を示す図である。図7に示すように、初回測定における信号の強度が高い場合は信号の強度が低い場合よりも次回ゲート時間tg2を反射光帰還時間の近くに設定し、次回ランプ電圧比例定数C2をより大きく設定するものとする。これにより初回測定時の強度値に応じて次回測定の距離測定精度を高めることができる。
【0051】
なお、次回ゲート時間tg2は反射光帰還時間に可能な限り近づけて設定してもよい。例えば、図3において、ランプ電圧誤差ΔVRと強度信号Iに反比例した場合、ΔVRは定数kを用いて式(14)で表される。
ΔVR=k/I (14)
すると、ゲート時間tg2は、式(3)、式(5)、式(14)より、式(15)のように設定される。
tg2=t−k/2C1I (15)
よって、強度信号Iが強いほど、ゲート時間tg2を反射光帰還時間tに近づけて設定することができると言える。
【0052】
また、図7に示すように、時間測定部22の時間標準であるランプ電圧は定電流を時間積分することによって時間に比例して上昇する。ここで、定電流源が一定の電流ノイズInを有する場合、ランプ電圧を示すホールド電圧値のノイズVnはランプ電圧比例定数Cを用いて式(16)によって算出することができる。
【0053】
【0054】
ここで、図3において、ランプ電圧誤差ΔVRがゲート時間tg2からの経過時間に比例するため、ΔVRは比例定数hを用いて式(17)のように表わされる。
ΔVR=h(t−tg2) (17)
よって、ゲート時間tg2から反射光帰還時間tまでの経過時間がなるべく短くなるようにゲート時間tg2を設定することで、ノイズの上昇を抑え、高精度な測距が可能となる。
【0055】
また、受信視野中心とレーザ光伝搬方向は同軸方向でなくてもよい。図8は図1のレーザレーダ装置の全体構成において、受信視野中心とレーザ光伝搬方向が同軸方向でない場合の構成を示す図である。受信視野中心とレーザ光伝搬方向が同軸方向でない場合、図8に示すようにスキャナ部13は受信視野を走査せず、レーザ光のみ受信レンズ部15の固定された視野内に2次元走査する。
【0056】
受信視野をスキャナ部13と分離することにより、受信開口がスキャナ部13の大きさにより制限されなくなり、受信光強度を大きくすることができる。
【0057】
スキャナ部13が行う走査は2次元走査でも1次元走査でもよい。1次元走査の場合、ラインセンサとなり1次元の距離データと強度データを取得する。
【0058】
なお、スキャナ部13はなくても良い。スキャナ部13が備えない構成の場合、実施の形態1のレーザレーダ装置は定点の測距装置となり、ある定点の距離データと強度データが取得できる。この場合、スキャナ部13の他に角度モニタ部14、距離強度画像算出部31、目標検出部32が必要なくなる。なお、最適測定可能距離間隔算出部33は距離信号と強度信号から最適な測定可能距離間隔を算出する。
【0059】
以上のようにして、レーザ光を目標に向けて発振し、目標からの反射光を受信して受信信号に変換する光送受信部10と、あらかじめ設定された測定可能時間間隔に基づき、光送受信部10によるレーザ光の発振から反射光の受信までの時間を測定することで目標までの距離を示す距離信号を算出すると共に、受信信号の強度を示す強度信号を算出する距離強度算出部20と、距離強度算出部20により算出された距離信号及び強度信号に基づきあらかじめ設定された測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を設定する信号処理部30とを備え、距離強度算出部20は信号処理部30により設定された狭い測定可能時間間隔に基づいて距離信号を算出するように構成したので、レーザレーダ装置以外の他の距離測定装置を備えずに、高い距離測定精度と広い測定可能距離間隔を併せ持つことができる。
【0060】
実施の形態2.
図9は、この発明の実施の形態2に係るレーザレーダ装置の全体構成であり、実施の形態1の図1に示すレーザレーダ装置の構成に対して、目標距離誤差算出部34を信号処理部30の構成に追加で備えるものである。図1と同一符号は同一又は相対部分を示すので説明を省略する。
【0061】
目標距離誤差算出部34は、あらかじめ設定された目標最大移動速度と1回の測定にかかる時間から目標距離誤差値を算出して目標距離誤差データとして最適測定可能距離間隔算出部33に出力する。
【0062】
最適測定可能距離間隔算出部33は、目標検出部32によって算出された目標距離データと目標強度データから最適な測定可能距離間隔だけでなく、目標距離誤差算出部34によって算出された目標距離誤差値を用いて、最適な測定可能距離間隔を算出して次回ランプ電圧比例定数C2と次回ゲート時間tg2をそれぞれランプ電圧比例定数信号、ゲート信号として時間測定部22に出力する。
【0063】
目標の最大移動速度vtが想定できる場合、目標距離誤差算出部34が目標の最大移動速度vtと距離強度画像取得における初回測定と次回測定の時間差Δtdから目標が移動する最大の距離を示す目標距離誤差ΔLとする。目標距離誤差ΔLを表す式を式(18)に示す。
【0064】
【0065】
目標距離誤差算出部34は式(18)を用いて、あらかじめ設定された目標の最大移動速度vtと時間差Δtdから目標距離誤差ΔLを計算して最適測定可能距離間隔算出部33に出力する。
【0066】
最適測定可能距離間隔算出部33は、目標距離誤差算出部34によって算出された目標距離誤差ΔLから目標の反射光帰還時間誤差Δtr’を算出する。目標距離誤差ΔLから目標の反射光帰還時間誤差Δtr’を表す式を式(19)を示す。ここでcは光速を示す。
【0067】
【0068】
最適測定可能距離間隔算出部33は式(19)を用いて、目標距離誤差ΔLから目標の反射光帰還時間誤差Δtr’を算出し、算出したΔtr’を用いて次回ゲート時間tg2と次回ランプ電圧比例定数C2の設定を行う。
【0069】
図10は、この発明の実施の形態2に係るレーザレーダ装置のランプ電圧の時間変化を示す図である。次回ゲート時間tg2と次回ランプ電圧比例定数C2は図10に示すように上記反射光帰還時間誤差Δtr’の幅を含むように設定する。
【0070】
例えば、図3において、目標が移動することを想定し、距離誤差ΔL1に目標移動距離誤差ΔLmを追加する。よって距離誤差ΔL1’は式(20)で表される。
ΔL1’= ΔL1+ΔLm (20)
式(20)より算出した時間誤差ΔL1’からΔt1’を算出し、式(5)、式(6)により次回ゲート時間tg2と次回ランプ電圧比例定数C2を設定する。
【0071】
以上のようにして、信号処理部30は、あらかじめ設定された目標の最大移動速度と1回の測定にかかる時間から目標距離誤差値を算出する目標距離誤差算出部34を備え、目標距離誤差値を用いて測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を算出するように構成したので、これにより目標が移動しても目標が測定可能距離間隔内に収まるので、目標を検出することができる。
【0072】
実施の形態3.
図11は、この発明の実施の形態3に係るレーザレーダ装置の全体構成であり、実施の形態1の図1に示すレーザレーダ装置の構成に対して、トリガ周期制御部41を追加で備えるものである。図1と同一符号は同一又は相対部分を示すので説明を省略する。
【0073】
トリガ周期制御部41は、最適測定可能距離間隔算出部33によって算出された測定可能距離間隔に基づいて算出されたゲート信号及びランプ電圧比例定数信号から最適なトリガ周期信号を算出してトリガ発生部11に出力する。
【0074】
最適なトリガ周期信号の算出方法について説明すると、トリガ周期T1は、測定終了時間であるランプ電圧終了時間tmax1よりも大きな値を取る。
T1>tmax1
例えば、再設定されたランプ電圧終了時間tmax2が初回ランプ電圧時間tmax1の1/A倍(Aは定数)だったとする。
tmax2=tmax1/A
すると、再設定されたトリガ周期T2もランプ電圧終了時間の変化に応じて1/A倍にすることが可能となる。
T2=T1/A
このように、トリガ周期を短くすることで、データ取得を高速化することができる。
【0075】
トリガ周期制御部41によって最適なトリガ周期信号が出力されると、トリガ発生部11は最適なトリガ周期信号に応じた周期でトリガを発生させる。
【0076】
反射光帰還時間を測定するために、レーザ部12は測定可能距離間隔に応じた測定可能時間間隔だけ次のレーザ光の発振を待つ必要がある。測定可能距離間隔が広い場合には測定可能時間間隔が長くなるので、レーザ光の発振繰り返し周期を長くする必要がある。逆に測定可能距離間隔が狭い場合には測定可能時間間隔が短くなり、レーザ光の発振周期を短くすることができる。
【0077】
実施の形態3に係るレーザレーダ装置では2回目以降の測定において測定可能距離間隔を目標距離付近に最適化するので、測定可能時間間隔は小さくなる。そこで、この発明の実施の形態3に係るレーザレーダ装置では、最適測定可能距離間隔算出部33によって算出されたランプ電圧比例定数信号とゲート信号からトリガ周期制御部41が測定可能時間間隔を算出し、算出した測定可能時間間隔に応じて最適なレーザ光のトリガ周期を決定するトリガ周期を算出する。
【0078】
以上のようにして、測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔隔から最適なトリガ周期信号を算出するトリガ周期制御部41を備え、光送受信部10は最適なトリガ周期信号に応じた周期でトリガを発生させるように構成したので、2回目以降の測定において最適なトリガ周期信号に応じた周期でレーザ光を発振し、レーザ発振繰り返し周期を短縮することができる。
【0079】
また、1回の距離強度画像の撮像周期はレーザの発振周期に比例するので、レーザ発振繰り返し周期を短縮することで2回目以降の測定において距離強度画像の撮像周期を短縮することができる。
【0080】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 光送受信部、11 トリガ発生部、12 レーザ部、13 スキャナ部、14 角度モニタ部、15 受信レンズ部、16 受光器部、20 距離強度算出部、21 強度測定部、22 時間測定部、23 距離算出部、30 信号処理部、31 距離強度画像算出部、32 目標検出部、33 最適測定可能距離間隔算出部、34 目標距離誤差算出部、41 トリガ周期制御部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を目標に向けて発振し、目標からの反射光を受信して受信信号に変換する光送受信部と、
あらかじめ設定された測定可能時間間隔に基づき、前記光送受信部によるレーザ光の発振から反射光の受信までの時間を測定することで前記レーザ光の照射点までの距離を示す距離信号を算出すると共に、前記レーザ光の照射点からのレーザ光の反射光強度を示す強度信号を算出する距離強度算出部と、
前記距離強度算出部により算出された距離信号及び強度信号に基づき前記あらかじめ設定された測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を設定する信号処理部とを備え、
前記距離強度算出部は前記信号処理部により設定された狭い測定可能時間間隔に基づいて距離信号を算出する
ことを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記送受信部は、前記発振されたレーザ光と当該レーザ光の反射光の受信視野を2次元走査するスキャナ部と、前記スキャナ部のスキャナ角度を読み取って前記信号処理部へ出力する角度モニタ部とを有し、
前記信号処理部は前記角度モニタ部によって読み取られたスキャナ角度に基づいて前記測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、あらかじめ設定された目標の最大移動速度と1回の測定にかかる時間から目標距離誤差値を算出する目標距離誤差算出部を備え、前記目標距離誤差値を用いて測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を算出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔から最適なトリガ周期信号を算出するトリガ周期制御部を備え、
前記送受信部は前記最適なトリガ周期信号に応じた周期でトリガを発生させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーザレーダ装置。
【請求項1】
レーザ光を目標に向けて発振し、目標からの反射光を受信して受信信号に変換する光送受信部と、
あらかじめ設定された測定可能時間間隔に基づき、前記光送受信部によるレーザ光の発振から反射光の受信までの時間を測定することで前記レーザ光の照射点までの距離を示す距離信号を算出すると共に、前記レーザ光の照射点からのレーザ光の反射光強度を示す強度信号を算出する距離強度算出部と、
前記距離強度算出部により算出された距離信号及び強度信号に基づき前記あらかじめ設定された測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を設定する信号処理部とを備え、
前記距離強度算出部は前記信号処理部により設定された狭い測定可能時間間隔に基づいて距離信号を算出する
ことを特徴とするレーザレーダ装置。
【請求項2】
前記送受信部は、前記発振されたレーザ光と当該レーザ光の反射光の受信視野を2次元走査するスキャナ部と、前記スキャナ部のスキャナ角度を読み取って前記信号処理部へ出力する角度モニタ部とを有し、
前記信号処理部は前記角度モニタ部によって読み取られたスキャナ角度に基づいて前記測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のレーザレーダ装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、あらかじめ設定された目標の最大移動速度と1回の測定にかかる時間から目標距離誤差値を算出する目標距離誤差算出部を備え、前記目標距離誤差値を用いて測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔を算出する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーザレーダ装置。
【請求項4】
前記測定可能時間間隔より狭い測定可能時間間隔から最適なトリガ周期信号を算出するトリガ周期制御部を備え、
前記送受信部は前記最適なトリガ周期信号に応じた周期でトリガを発生させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーザレーダ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−251862(P2012−251862A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124315(P2011−124315)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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