レーザ・マイクロポレータ
a)パルス・ビーム(4)を発射し、レーザ・ダイオード(7c)を有するレーザ源(7)と、b)1mm幅未満のレーザ・ビーム(4)を生体膜(1)上に向けるようにパルス・ビームを変える光学素子(8a、8b、8x)と、c)レーザ・ビーム(4)を様々な方向に向けるように配向した偏向器(8f)と、d)レーザ・ビーム(4)のエネルギー強度分布を作り直すレーザ・ビーム成形装置と、e)複数の個別孔(2)から成る穿孔を生体膜(1)に作り出すためにレーザ源(7)を制御する穿孔制御器(11)とを備える、生体膜(1)に孔を設けるためのレーザ・マイクロポレータ(10)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ・マイクロポレータ、および生物組織の透過性を高めるためにこのレーザ・マイクロポレータを操作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチン、抗原提示細胞、治療用抗体、タンパク質、ペプチド、およびDNA構成要素を含む多くの新たな薬剤および既に有る薬剤もまた、疾病および疾患のためのさらに良好で効果的な治療のために開発されてきた。特に近年の分子生物学およびバイオテクノロジーの進歩に起因して、遺伝子組換え型ヒトインスリン、成長ホルモン、卵胞刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン、エタネルセプト、およびエリスロポエチンなどのますます強力な医薬剤が利用可能である。しかしながら、これらの新たな薬剤の使用における1つの重大な制限は、特に薬剤が治療に効果的な速度と量とで1つまたは複数の生体バリヤを横切って移送される必要がある場合に有効な薬剤供給システムをしばしば欠如することである。
【0003】
殆どの薬剤は経口投与される。しかしながら、多くの薬剤、特にタンパク質に基づいた薬剤(例えばタンパク質、ペプチド、および/または核酸など)は胃腸管における分解性、腸の膜における貧弱な吸収、および/または肝臓による初回通過分解のせいでこの方式では効果的に吸収されることができない。したがって生体利用効率は極めて貧弱であり、それにより、極めて高い薬剤投与率が適用されなければならない。そのような難題を回避するために、非経口投与が採用されることが可能である。通常ではそのような投与法は標準的な注射器またはカテーテルを使用した患者の循環器系または筋肉組織または皮内もしくは皮下組織への薬剤の注射に頼っている。特に小児科では、非常の場合には骨内適用が使用される。残念ながら、針注射は多くの患者でしばしば針恐怖症、これに続く痛み、および/または皮膚への局所的損傷を誘発する。さらに、特に針注射に基づいた体液へのアクセスが長期の薬剤投与について必要とされる場合、数多くの課題が生じる。例えば、患者の血管系に長期にわたって残されるとき、針は詰まる傾向を有する。また、患者の移動性も概して制限される。さらに、注射針およびカテーテルは感染を生じさせる可能性もある。さらに、注射針の安全な投棄は難しくかつ高額の費用がかかり、注射針の再生による感染率は高い。
【0004】
場合によっては、膜貫通型の供給が採用されることが可能であり、これは普通では皮膚などの生体膜を横切る薬剤の受動的拡散に頼っている。しかしながら、膜貫通型、特に経皮供給はしばしば、数多くの薬剤に関して皮膚は比較的有効なバリヤを与えるので広範に応用可能ではない。皮膚の最外層である角質層は、よく知られている皮膚のバリヤ特性に主に関与する。したがって、約500ダルトンを超える分子量の薬剤または他の分子の体内への経皮流束に対する最大のバリヤを与えるのがこの層である。親油性または親水性、極性および可溶性もやはり経皮透過性にとって重要な要素である。いったん薬剤が表皮層の下にある真皮領域に達すると、薬剤は血液循環を介して急速に系の深い組織層および他の部分へと拡散する。皮膚を貫通する薬剤供給の速度を改善するために、化学的エンハンサ、イオントフォレーゼ、エレクトロポレーション、超音波、および加熱素子が使用されてきた。しかしながら、特定の薬剤に応じて、そのような技術は治療レベルの供給を与えるのに頻繁に失敗する。さらに悪いことには、そのような技術は長期の薬剤供給に関して望ましくない皮膚の反応をときどき引き起こすであろう。
【0005】
結果として出血につながらない方式で患者の皮膚に穴をあけるようにレーザを使用して経皮供給を改善するためにいくつかの試みが為されてきた。そのような穿孔法は通常では角質層または角質層と表皮の両方を通って貫通する。これは皮膚を通る薬剤供給を可能にする。欧州特許第1133953号明細書に述べられたそのようなレーザの1例は最大で0.5mmの幅と最大で2.5mmの長さを備えたスリット形状の穿孔を与える(これおよび他の引用文は全文を本願明細書に援用する)。残念ながら、そのような穿孔を通じた薬剤供給率は限られている。この穿孔もやはり望ましくない皮膚の反応を引き起こし、皮膚の穿孔は高い頻度で痛みを生じさせる。穿孔は事後の貼付薬の貼り付けを必要とする。しかしながら、そのような薬剤投与はしばしば一貫性のない薬剤用量、不都合な用法、およびときには感染にさえ結果としてつながる。
【0006】
米国特許第6328733号明細書は、ガウスレーザ・ビームを使用して毛髪移植のために頭皮に一連の穴またはスリットを作り出すレーザ・ポレータを開示している。作り出される穴またはスリットのサイズおよび深さは比較的大きく、これらは経皮薬剤供給に適していない。
【0007】
国際公開第00/78242号パンフレットは、ガウスレーザ・ビームを使用して角質層に微小孔を形成するためのレーザ・ポレータを開示している。このレーザ・ポレータの目的は流体中に存在する分析対象物質を検査するために間質液を簡単に集めることである。このレーザ・ポレータで作り出される微小孔もやはり経皮薬剤供給に適していない。このレーザ・ポレータのさらなる欠点は、電池などの携帯型電源を供給されるとレーザ・ポレータの合計動作時間が極めて短いことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、当該技術で知られている薬剤投与のための様々な方法および装置が存在するが、それらのすべてまたは殆どすべてが1つまたは複数の不都合を難題にしている。中でも、現在知られている方法および装置は制御されて再現性のある薬剤の投与を可能にすることができない。現在知られている方法および装置は、向上した安全性、効率、および利便性を伴った薬剤供給の即時の開始と中断を提供することもやはりできない。現在知られている装置は微小孔を形成する工程でもやはり制限を受ける。現在知られている装置はまた、携帯不可能であるか、または携帯型電源を供給されても相応の時間的期間にわたって運転されることができない。したがって本発明の目的は、組織または細胞の膜などの生体膜を横切って薬剤および生体分子を含む分子の膜貫通型供給を改善するための装置および方法を提供することである。
【0009】
この問題は請求項1の特徴を有するレーザ・マイクロポレータで解決される。従属請求項2から35は場合によって付け加えられる特徴を開示している。この問題はさらに特許請求項36の特徴を有するレーザ・マイクロポレータを操作するための方法で解決され、従属請求項37から52は場合によって付け加えられる特徴を開示している。この問題はさらに特許請求項53から63の特徴を有する方法で解決される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る装置および方法は、パルス・レーザ・ビーム、およびこのレーザ・ビームを生体膜上の複数の異なる場所に方向付けて複数の個別微小孔または孔から成る微小穿孔を作り出すための偏向器を利用する。この装置はレーザ・ビーム成形装置を有しており、これは特に輪郭のくっきりした強度分布を得るため、および/または特に生体膜上の集束範囲、焦点深度、集束点または焦点でビームの均質な強度分布を得るためにレーザ・ビームのエネルギー強度分布作り直すために使用される。そのようなビームは薬剤供給のために非常に適切な形状の微孔を生成することを可能にする。そのようなビームは削減されたエネルギーで微小孔を作り出すことをさらに可能にし、これは携帯型マイクロポレータ、好ましくは超小型で電池駆動のマイクロポレータを構築することを可能にする。レーザ・エネルギーのレベルは生体膜、特に角質層および皮膚の表皮の部分を除去する範囲内である。これは皮膚の個別微小孔に作用し、これが結果として様々な物質に対する皮膚の透過性の増大につながる。これは皮膚に塗布される物質の経皮または皮内供給を可能にする。本発明は生物の選択部位への浸透物質の膜貫通型流動速度を促進するための方法を提供し、この方法は生物の前記選択部位の前記浸透物質に対する透過性を、生体膜に複数の微小孔を形成するレーザ・マイクロポレータで前記生体膜を前記選択部位で穿孔することによって促進する工程、それにより、前記浸透物質の流動に対する前記生体膜のバリヤ特性を削減する工程を含む。
【0011】
本願で使用される「穿孔」、「微小穿孔」は、ヒトまたは哺乳動物の皮膚、粘膜または器官などの生体膜もしくは組織、または生物もしくは植物の外層の中に、または貫通して所望の深さに小さい穴もしくは孔、または複数の穴もしくは孔を形成することを意味し、それによって体内への浸透物質または薬剤の通過に対するこの生体膜のバリヤ特性を減少させる。本願で言及する微小穿孔は直径で1ミクロン以上、深さで少なくとも1ミクロンである。
【0012】
本願で使用される「微小孔」、「孔」または「個別孔」は、微小穿孔法によって形成された開口を意味する。
本願で使用される「アブレーション」は、生体膜もしくは組織のいくつかの部分を含む細胞または他の構成要素を含むことも可能な物質の制御された除去である。これは以下、すなわちそのような物質の蒸発可能な成分のいくらかもしくは全部が、蒸発が起こるポイントまで加熱され、結果として生じるこの相変化に起因する体積の急激な膨張がこの物質および考え得るいくらかの隣接物質が除去部位から取り除かれる原因となるときに放出される運動エネルギー;穿孔部位でのプラズマ形成および/または導電物質を介した加熱による穿孔部位の組織のいくらかまたは全部の熱的または機械的分解のいずれかによって引き起こされる。
【0013】
本願で使用される「組織」は、限定はされないが細胞、生体膜、骨、コラーゲン、生物のいくらかの部分を含む流体などを含む生物のいずれかの構成要素を意味する。
本願で使用される「穿刺」または「微小穿刺」はヒト、哺乳動物、鳥の皮膚または粘膜層、または植物の外側組織層に全体的もしくは部分的に穴を開けるために機械的、水圧、音波、電磁気的、または熱的手段を使用することを意味する。
【0014】
「アブレーション」および「穿刺」が穿孔の同じ目的、すなわち場合によっては下地の組織に重大な損傷を伴わずに生体膜に穴もしくは孔を作り出す目的を達成する程度まで、これらの用語は置き換え可能に使用されることが可能である。
【0015】
本願で使用される「穿刺表面」は、除去または穿刺処理された生体膜の外側表面の穴もしくは孔の表面を意味する。
本願で使用される「経皮の」、「皮膚を通しての」、「膜貫通型の」、「経粘膜の」、「頬を通しての」、「組織を通しての」または「組織内の」という用語は、皮下層、および筋肉、骨または他の下地組織などのさらなる組織に作用するように意図された浸透物質を供給するための生体膜もしくは組織の中への、またはこれらを通る浸透物質の通過を意味する。最も好ましい実施形態では、薬剤の効果的な治療血中レベルを達成するために経皮供給は浸透物質を血液中に導入する。さらなる好ましい実施形態では、浸透物質の経皮供給はランゲルハンス細胞を介して免疫応答を誘発する。これらの用語はまた、体内に存在する分子(「分析対象物質」)の生体膜もしくは組織を貫通した外部への通過を意味し、それにより、分析対象分子は体の外側で集められることが可能になる。
【0016】
本願で使用される「皮内」という用語は、真皮層に浸透物質を供給し、その中で薬剤の効果的な治療または美容上の組織中レベルを達成し、または薬剤の量を或る一定の時間にわたって生体膜もしくは組織中に蓄えることで例えば角質層の下の真皮層の状態を治療するための生体膜もしくは組織の中への、またはこれらを通る浸透物質の通過を意味する。
【0017】
本願で使用される「浸透表面」は、微小孔もしくは孔を取り囲む組織の表面を意味する。「浸透表面」は個別の微小孔もしくは孔の表面を意味すること、またはすべての個別微小孔もしくは孔のすべての個別表面の合計を意味する合計浸透表面を意味することも可能である。
【0018】
本願で使用される「補正後の浸透表面」は、因数または特定の量で、例えば角質層の部分である微小孔もしくは孔の表面を差し引くことによって補正された浸透表面を意味する。
【0019】
本願で使用される「生物活性薬剤」、「浸透物質」、「薬剤」、または「薬理活性薬剤」もしくは「供給可能な物質」という用語、または他のいずれの類似した用語は、以前に当該技術で知られている方法および/または本発明に教示される方法による供給に適したいずれかの化学的または生物学的物質もしくは化合物を意味し、限定はされないが(1)生物に予防効果を有して望ましくない生物学的効果を防ぐ(例えば感染を防ぐ)こと、(2)物質(例えばビタミン類、電解質など)の欠乏または過剰を緩和すること、(3)疾病によって引き起こされる状態を緩和する(例えば疾病の結果として引き起こされる痛みまたは炎症を緩和する)こと、(4)生物から疾病を軽減するか、削減するか、または完全に取り除くこと、および/または(5)生物の生存能力のある組織層の中への化合物もしくは製剤の配置(これは特定の分析対象物質の濃度の変化に(場合によっては可逆的な方式で)反応し、その際、この領域への(電磁気的、機械的、または音響的であってもよい)エネルギーの適用に対するこの化合物もしくは製剤の測定可能な反応の検出可能な変化を引き起こす)を含む場合もある生物学的または薬理学的効果などの望ましい効果を誘発する。この効果は局所麻酔効果を供給するなどの局所性であることも可能であり、全身性であることも可能であり、または非全身性、例えば放射線不透過性の物質、造影剤または組織に灌注するための液体の投与であることも可能である。本発明は微小穿孔技術の効力による以外の新規の浸透物質または新たな部類の活性薬剤に引き込まれるのみでなく、通常では経皮、経粘膜、膜貫通型または頬を通じての供給に使用されない物質がここで使用可能になり得る。さらに正確に述べると、当該技術に存在し、または後になって能動性もしくは受動性薬剤として確立されることが見込まれ、かつ本発明による供給に適している生物活性薬剤または浸透物質の供給の様式に向けられる。
【0020】
そのような物質は普通では生物の中に、皮膚を含めた体表面と膜経由で、ならびに注射針、水圧、または超高速度法を含めた注射によって供給される広範な部類の化合物を含む。概して、限定はされないがこれは治療用抗体、抗原提示細胞(APC)、タンパク質とペプチドを含むポリペプチド(例えばインスリン);卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)を含む放出因子;炭水化物(例えばヘパリン);核酸;ワクチン;および薬理活性薬剤(例えば抗生物質および抗ウィルス薬などの抗感染薬);鎮痛薬および鎮痛薬の組合せ;食欲抑制薬;抗蠕虫薬;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗痙攣薬;抗うつ剤;抗糖尿病薬;下痢止め薬;抗ヒスタミン剤;抗炎症薬;抗片頭痛製剤;制嘔吐薬;抗腫瘍薬;パーキンソン病治療薬;かゆみ止め薬;抗精神病薬;解熱剤;鎮痙薬;抗コリン作用薬;副交感神経興奮薬;交感神経興奮薬;キサンチン誘導体;カリウムおよびカルシウムチャンネル遮断薬、ベータ受容体遮断薬、アルファ受容体遮断薬、および不整脈治療剤を含む循環器官用薬剤;利尿剤と抗利尿剤;冠状動脈、末梢血管および脳血管を含む血管拡張剤;中枢神経系刺激剤;血管収縮薬;充血除去剤を含む咳止めおよび風邪薬;エストラジオール、テストステロン、プロゲステロンおよび他のステロイド類を含むホルモン、およびコルチコステロイドを含む誘導体および類似体;睡眠薬;麻酔剤;免疫抑制剤;筋肉弛緩剤;副交感神経遮断薬;交感神経遮断薬;神経刺激薬;鎮静剤;およびトランキライザー、ならびに化粧品と薬用化粧品を含む。本発明の方法によって、イオン化と非イオン化との両方の浸透物質が、10ダルトン未満から1000000ダルトンを超える範囲にわたる分子量を備えた物質を含むいずれかの分子量の浸透物質、または1mg以下もしくはこれを超える重量を有するナノ粒子または微粒子として供給されることが可能である。
【0021】
本願で使用される「効果的な」量の浸透物質は、所望の局所性または全身性の効果および妥当な損益比でいずれかの治療に参加する性能を与えるのに十分な量の化合物を意味する。局所性の効果はまた、放射線不透過性物質または造影剤または腎臓を検査するための物質などの浸透物質の十分な局所的濃度であってもよい。
【0022】
本願で使用される「基剤」または「賦形剤」は、他の浸透物質と共に投与されるのに適した使用量で有意の薬理活性を伴わない担体物質に言及し、当該技術で知られているいずれかのそのような物質、例えばいずれかの液体、ゲル、溶剤、液体希釈剤、可溶化剤、ミクロスフィア、リポソーム、微粒子、脂質複合体、浸透促進剤などを含み、使用される量では十分に無毒であり、投与される薬剤と有害な方式で相互作用しない。本願における使用のための適切な基剤の例は、水、緩衝液、鉱油、シリコーン、無機もしくは有機のゲル、水性エマルジョン、様々なアルコール、液状の糖、シクロデキストリン、界面活性剤、脂質、微粒子およびナノ粒子、ワックス、ワセリン、および様々な他の油類、ポリマー材料およびリポソームを含む。
【0023】
本願で使用される「生体膜」は、生命体の1つの領域を他から分離し、多くの例では生命体を外部環境から分離する生命体内部に存在する組織物質を意味する。したがって、皮膚、粘膜および口腔内の膜が植物の外層と同様に含まれる。また、細胞、臓器、歯、骨、または血管の壁もこの定義の中に含まれるであろう。
【0024】
本願で使用される「粘液膜」または「粘膜」は、口、舌、中咽頭、鼻咽頭、喉頭、気道、尿生殖路、胃腸管、肛門、腸、眼、結膜、角膜の上皮層、および内視鏡装置を介してアクセス可能な例えば膀胱、結腸、肺、血管、心臓などのすべての他の表面に言及する。
【0025】
本願で使用される「口腔内の膜」は口の粘膜を含む。
本願で使用される「経皮流動速度」は、被験体の皮膚を通って外に出るいずれかの分析対象物質の通過速度、または外部環境から生命体を分離する皮膚の中に、またはこれを通って入るいずれかの生物活性薬剤、薬、薬理活性薬剤、染料、粒子または顔料の通過速度に言及する。「経粘膜流動速度」および「頬を通じての流動速度」は粘膜および頬の膜を通るそのような通過に言及し、「膜貫通型流動速度」はいずれかの生体膜を通るそのような通過に言及する。
【0026】
本出願の背景で使用される「個別の孔」という用語は、概して生体膜から延びる通路である微小孔または孔に言及する。生体膜は例えば皮膚であり、このとき個別の孔は皮膚の表面から角質層全体または大部分を通って延びる。最も好ましい実施形態では、個別の孔の通路は角質層全体と表皮の部分を通って延びるが真皮の中へは延びず、それにより出血は起こらない。最も好ましい実施形態では、個別の孔は10μm(新生児については5μm)と150μmとの間の深さを有する。
【0027】
本願で使用される「初期の微小穿孔」という用語は、作り出される孔の合計数に言及する。「初期の微小穿孔データセット」は初期の微小穿孔が規定される場合のデータのセットに言及する。このデータセットは断面、深さ、形状、浸透表面、個別の孔の合計数、生体膜上の孔の幾何学的配列、孔と孔の間の最小距離、およびすべての個別の孔の合計浸透表面から成る群から選択される少なくとも1つのパラメータを含む。初期の微小穿孔データセットは、すべての個別の孔の形状および幾何学的配列を規定することが好ましい。初期の微小穿孔データセットは、作り出される初期の穿孔が正確に規定され、かつ生体膜上の多様な場所、同様に多様な対象物、被験体または個人で再現されることが可能になるように、後にマイクロポレータを使用して作り出されるであろうすべての個別の孔の形状および幾何学的配列を規定することが好ましい。
【0028】
本願で使用される「ビーム成形装置」という用語は、レーザ・ビームが輪郭のくっきりしたものになるように、かつ/または均質な強度分布になるようにレーザ・ビームのエネルギー強度分布作り直すための装置に言及する。
【0029】
本願で使用される「ビームの均質な強度分布」という表現は、均質なエネルギー強度分布または一様な断面的エネルギー強度分布を有するビームまたはビーム・スポットに言及する。そのようなビームまたはビーム・スポットは、ビーム・ホモジナイザを有するレーザ・ビーム成形装置を使用することによって達成される。そのようなビーム・ホモジナイザは、例えば屈折性の平凸マイクロレンズまたは回折光学素子(DOE)を使用するマイクロレンズ、好ましくはマイクロレンズ・アレイを含んでもよい。ビーム均質化用光学素子は、通常ではガウス強度分布を備えたレーザからの出力ビームを一様な断面的エネルギー分布を有する均質ビームに作り直す。
【0030】
穿孔の後、薬剤などの物質が好ましくは経皮用当て布の形態で皮膚に貼付される。この経皮用当て布は他の服用形態を上回る様々な有意の臨床的利点を提供する。経皮薬剤供給は患者への薬剤の制御された放出を提供するので所定の血中レベル・プロファイルを可能にし、結果として減少した全身性副作用、およびときには他の服用形態を上回る改善された効能につながる。付け加えると、経皮用当て布は使い勝手が良く、便利であって痛みを伴わず、かつ複数日数の投薬を提供する。したがって経皮用当て布は改善された患者のコンプライアンスを提供する。
【0031】
本発明は個別の孔を作り出し、かつ生体膜、例えば皮膚に浸透表面を作り出すように患者の皮膚に孔を設けるためにレーザを使用する。穿孔は、標的組織の表面をレーザからの電磁エネルギーのパルスもしくは複数パルスで照射することによって形成される。処置に先立って、標的組織に正確に孔を設けるため、健全な近接組織の望ましくない損傷を排除するため、および十分なサイズの浸透表面を作り出すために、波長、エネルギー・フルエンス(照射面積で除算されたパルスのエネルギー)、パルス時間幅、照射スポットのサイズ、および個別の孔の幾何学的配列が適切に選択される。加えられる複数のパルスは個別の孔を取り巻く壁の再現性のある形状を有する個別の孔を作り出すことを可能にし、個別の孔の再現性のある下端部の形状を作り出すこともやはり可能にすることが好ましい。壁の表面および下端部、特に壁の表面と表皮または真皮の部分である下端部の表面の合計は重要であり、なぜならばこの合計の表面は大部分の浸透物質がこれを通って組織、例えば表皮と真皮の中へと通過する浸透表面を形成するからである。好ましい実施形態では、このレーザ・マイクロポレータは生体膜上に平行または準平行のレーザ・ビームを加え、これは個別の孔の正確な形状全体にわたる制御を容易にする。本願で使用される「平行または準平行のレーザ・ビーム」という用語は、皮膚上で焦点が合わず、ビーム・エネルギーの最低限90%に関して3°未満から5°の逸脱を有するレーザ・ビームに言及する。平行または準平行のレーザ・ビームを使用する本発明によるレーザ・マイクロポレータは、高度に再現性のある浸透表面を備えた個別の孔の形成を可能にする。さらなる好ましい実施形態では、このレーザ・マイクロポレータは生体膜上にレーザ・ビームの焦点を合わせる光学素子を有する。さらなる実施形態では、レーザは多重モードで動作するように設定され、ここではさらに良好なエネルギー強度分布のためにビームは多数のガウス・スポットを有する。さらなる好ましい実施形態では、このレーザ・マイクロポレータはビームの均質な強度分布、特に集束範囲における均質な強度分布を得るためにレーザ・ビームのエネルギー強度分布を作り直すレーザ・ビーム成形装置を有する。適切なビーム成形装置は、例えば回折光学素子(DOE)または屈折性ビーム・ホモジナイザ(ROE)であってもよい。そのようなビームは薬剤供給に極めて適した形状の微小孔、特に比較的鋭い端面を備えた微小孔を作り出すことを可能にする。そのようなビームはまた、余分な組織が殆どまたは全く除去されず、かつ作り出された微小孔が余分な頂点を有さないでビームの全エネルギーが適切な形状の微小孔を形成するのに使用されるので少ないエネルギーで組織を除去すること、またはエネルギーを節約することを可能にする。さらにエネルギーを節約するためにいくつかのさらなる特徴が追加されることが可能であり、これは携帯型で、例えば電池駆動のレーザ・マイクロポレータを起動するのに必要である。パルス・ビームは2.8ミクロンと3.1ミクロンとの間の波長または200ナノメートル未満の波長を有することが最も好ましく、なぜならばこれらの範囲内で水が高い吸光係数を有するからである。そのようなビームはまた、波長が特にヒトの皮膚を除去するのに、したがって限られたエネルギーで複数または多量の孔を作り出すのに極めて効率的であるので、わずかなエネルギーでマイクロポレータを起動すること、またはエネルギーを節約することを可能にする。2.8ミクロンと3.1ミクロンとの間の波長を作り出すためにQ−スイッチレーザ源が使用されることが最も好ましい。レーザ源をポンプ駆動するために高効率レーザ・ダイオードが使用されることが最も好ましい。パルス当たり必要なエネルギーが、例えばヒトの皮膚に関して1平方センチ当たり1ジュールのアブレーション閾値の上に留まるために過不足なく高くなるように、ビームの直径は1mm未満であることが最も望ましい。1μs未満の時間幅を有するパルスが使用されることが好ましく、50nsと150nsとの間であることが最も好ましい。そのような時間幅は、3ミクロンの波長での水の熱緩和時間が約1μsであるので微小孔を取り巻く組織の熱的損傷を最小へと減少させる。したがって、皮膚内の熱伝導は極めて低く、極めて高いパルス繰り返し速度によって与えられるのみである。150ns未満の時間幅は、高いパルス繰り返し速度でもやはり熱緩和が低いという事実に起因して微小孔を取り巻く組織の加熱をさらに減少させる。これらの短いパルス幅のさらなる利点はプラズマ・アブレーションの部分的発生およびキャビテーションバブルの発生である。これらのバブルは細胞内結合を乱す高い圧力波を生じさせ、これが組織を通る浸透物質の流動速度を付加的に増大させる。これらの短いパルス幅のさらなる利点は、浸透物質の流動およびランゲルハンス細胞の活性化を引き下げる細胞密閉メカニズムの減退である。50μsを超えるパルス幅を備えた自励レーザは巻き添え組織損傷類似の細胞密閉を孔に隣接する領域に生じさせ、この領域は約15から25ミクロンの深さを有する。低い繰り返し速度と1μs未満のパルス幅を備えた短パルス・レーザ、または150ns未満のパルス幅を備えた高い繰り返し速度のレーザは、2ミクロン未満から4ミクロンの巻き添え損傷を生じさせる。熱緩和は、これによって熱が伝導で組織または水を通って拡散する過程である。レーザ曝露が熱緩和時間未満であるとき、熱的損傷は最小限である。皮膚の熱緩和時間は約1msであると見込まれ、水の熱緩和時間は約1μsであると見込まれる。そのようなパルス長以上のレーザ光が組織に加えられれば、周囲の組織への高い熱移動が起こるであろう。好ましい実施形態では皮膚または水の熱緩和時間よりも下である短いパルス印加が理由で組織は損傷を受けない。両方の効果はパルス当たりの必要エネルギーを引き下げることを可能にする。これらの方策は、単独または相互の組合せで、生体膜に初期の微小穿孔を作り出すためにわずかなエネルギーのみを必要とするレーザ・ポレータを構築することを可能にし、この初期の微小穿孔は100個と10000個の間の個別の孔を有することが好ましい。レーザ源のパルス繰り返し周波数は好ましくは200Hzよりも高く、最も好ましくは1kHzよりも高い。これは、初期の微小穿孔すべてを作り出すための合計時間が10秒未満を要することが好ましいことを意味する。この短い時間的期間の利点は、初期の微小穿孔の形成および作成の間に発生した熱を蓄えるためにレーザ・ポレータの素子、例えば電子素子またはハウジングの熱容量が使用され得ることである。初期の微小穿孔を作り出すための時間的期間がそのように短いので、素子はオーバーヒートせず、初期の微小穿孔終了後に冷えることができる。したがって好ましい実施形態では、レーザ・ポレータはさらなるエネルギーを浪費する換気装置のような能動性の冷却手段を必要としない。レーザ源、光学系、偏向器、レーザ・ビーム成形装置、およびポレータ制御器を有するこのレーザ・ポレータは、レーザ・ポレータのユーザの手に快適に適合するサイズ、形状、および重量にされたハウジングの中に嵌め込まれることが可能である。このレーザ・ポレータはハウジングの中に配置された電源もやはり含むことが最も好ましい。この電源は電池、例えば再充電可能または取り替え可能な電池から成ることが可能であるが、しかし燃料電池、電力キャパシタ、または光起電力素子などの他のタイプの電源から成ることもやはり可能である。組み合わされる素子に応じて、ハンドヘルドのレーザ・ポレータは1つの単一電源で約100回の初期の微小穿孔を作り出すことが可能であり、各々の微小穿孔は例えば100個の個別の孔を含む。電源は後に再充電されなければならない。
【0032】
好ましい実施形態では、レーザ・ビームの少なくとも2つのパルスが同じ孔に向けられる。偏向器は第2、第3、またはさらに多くのレーザ・ビームが同じ孔に向けられることができるように構築または制御される。この同じ孔の多重標的化は、比較的低エネルギーのレーザ・ビームを使用することもやはり可能にする。これは、約3ミクロンの波長でヒトの皮膚における最大光学貫通深さが例えば約2から4ミクロンであるので意味をなす。したがって、1つの単一レーザ・パルスで70から100ミクロンの極めて深い孔を作り出すことは極めて非効率的である。この多重標的化はまた、エネルギーを節約することおよび携帯型電源で動作する小型のレーザ・ポレータを構築することを支援する。70から200ミクロンのそのような深い孔は、例えば表皮を貫通して真皮の血管に至る親油性および大型の親水性浸透物質の一層高い浸透速度にとって必要とされる。レーザ・ビームは同じ孔に最大で10倍、または最大で50倍にさえ向けられることも可能であり、それにより、ビームは同じ孔に連続して向けられることが好ましく、したがって生体膜の中に微小穴を「ドリルあけ」する。ビームはまた、複数の他の孔のうちの1つに当てられた後に複数の孔のうちの単一の孔に再び向けられることが可能である。
【0033】
好ましい実施形態では、このレーザ・ポレータは特徴、例えば個別の孔の深さを分析する手段を有する。このフィードバック・ループは、例えば、個別の孔の下端部が角質層の中にあるか否か、表皮の中にあるか否か、または真皮の中にあるか否かを、反射光、または無傷の組織または蒸発組織または組織の羽状毛の蛍光に基づいて検出するための分光器であってもよい。さらなる実施形態では、このフィードバック・ループは穿孔によって引き起こされる皮膚のインピーダンスの減少を検出および分析するためのインピーダンス測定システムであってもよい。さらなる実施形態では、このフィードバック・ループは、共焦点顕微鏡、レーザ三角測量器、飛行時間測定型測定、干渉計、光干渉断層撮影、ライン・プロジェクションまたはレーザ走査装置に類似した測定システムを含んでもよい。さらなる実施形態では、このフィードバック・ループは孔を照明する、例えば孔の外側から孔を照明する光源を有し、孔の内側に発生する影を分析してもよい。このフィードバック・ループは個別の孔の深さを測定するための装置、例えば個別の孔の下端部または全体的3D構造を走査するレーザ・ビームを有する装置であってもよい。レーザ・ビームが個別の孔の中に発射される度に毎回個別の孔の特徴を分析することが特に有利である。この方策は個別の孔の各々の実際の深さについての連続的な情報を提供する。隣接する組織の特徴を予測するために孔の分析は、例えば、各々のパルスの後または統計学的分析のために有用なサンプリング速度で無作為のサンプリングによって実行されることが可能である。
【0034】
最も好ましい実施形態では、フィードバック・ループはレーザ源を作動させる穿孔制御器に動作可能に連結される。穿孔制御器は個別の孔の測定された特徴を所定の値と比較し、個別の孔の特徴が予め設定された値に相当すれば個別の孔にさらなるレーザ・パルスを発射するのを停止する。個別の孔の深さがモニタされることが最も好ましい。これは、材料に穴をドリルあけするのと同様の個別の孔の形成を可能にし、ここでは穴、例えば孔の深さが繰り返し測定される。個別の孔の最終深さの精度は、例えば、1パルス当たりで少ないレーザ・エネルギーが適用される(これは1パルス当たりでさらに少量の生体膜が除去される原因となる)場合に改善されることが可能である。レーザ・エネルギーは、例えば最終発射中にさらに低いレーザ・エネルギーを印加するため、正確な最終深さで個別の孔を形成するために個別の孔の深さの関数として変えられることが可能である。これは、浸透表面が正確もしくは極めて正確であると判っている個別の孔を作り出す。したがって、すべての個別の孔の合計の浸透表面もやはり判定されることが可能である。なおもさらに、例えば分光器を使用することによって表皮が始まる深さを知ることが可能である。したがって、角質層の深さが測定されることが可能である。この情報を考慮に入れると、補正された浸透表面が算出されることが可能である。この補正された浸透表面は、例えば表皮の浸透表面のみを含む。塗布される薬剤に応じて経皮流動速度はしばしば、例えば真皮の下側領域と血液中への薬剤の高い通過量を可能にする浸透表面の量によって決まるので、これは重要である。補正された浸透表面(これは表皮および/または真皮の浸透表面を意味する)を知ることは患者への薬剤の経皮供給をさらに良好に制御および予測すること、例えば患者への薬剤の放出をさらに良好に制御および予測することを可能にする。したがって、本発明に係る方法は、皮膚または生体膜を通る経皮流動速度の制御または予測を可能にする。
【0035】
一つの実施形態では、孔の深さを見積もるために統計学的データが使用されてもよい。波長、パルス長、強度、ビーム形状、またはビーム径などのレーザ・パラメータのうちの少なくとも1つに関して、印加されるレーザ・パルス当たりの除去深さは、例えば前記レーザ・パラメータの関数で作り出される複数の孔の統計学的分析によって識別されることが可能である。孔の形成時に適用されるレーザ・パラメータに基づいて、1パルス当たりで除去される深さが計算されることが可能であり、同じ孔に印加されるパルスの数を知ると、形成される孔の合計深さが見積もられることが可能である。この方法は、フィードバック・ループの必要性を伴わずに形成される孔の深さを見積もることを可能にする。
【0036】
一つの実施形態では、レーザ・ビームの幅および/またはレーザ・ビームのエネルギー密度が調節されることが可能であり、これは個別の孔の幅ならびに1パルス当たりで除去される深さを調節することを可能にする。
【0037】
このレーザ・マイクロポレータは、組織を加熱するか、または組織のプラズマを作り出すために、Er:YAG、Er/Pr:YAG、パルスCO2、Ho:YAG、Er:YAP、Er/Cr:YSGG、Ho:YSGG、Er:YSGG、Er:GGSG、Er:YLF、Tm:YAG、CrTmEr:YAG、Ho/Nd:YAG、CTE:YAG、ダイオード・レーザ、ファイバ・レーザ、OPOおよびOPA、自由電子レーザから成る群から状況に応じて選択されるレーザ源を使用することが好ましい。
【0038】
このレーザ・マイクロポレータは、0.05ミクロン(マイクロメートル)と15ミクロンとの間、好ましくは2ミクロンと10ミクロンとの間、特定すると2.8ミクロンと3.1ミクロンもしくは3.15ミクロンとの間の波長を有するレーザ源を使用することが好ましい。水の最大吸収は中間赤外領域にあるので2.95ミクロンの波長が使用されることが最も好ましい。
【0039】
このレーザ・マイクロポレータは、0.05mmと0.5mmとの間の幅を有するレーザ・ビームを発生する光学装置を使用することが好ましい。好ましい実施形態では、このレーザ・ビームは円形、楕円形、または方形の形状を有し、円形レーザ・ビームの幅は直径であり、方形レーザ・ビームの幅は方形または楕円形の長さのうちの1つである。
【0040】
このレーザ・マイクロポレータは、1nsと1000μsとの間、特定すると1nsと1μsとの間、最も好ましくは10nsと50nsとの間、または50nsと150nsとの間にあるパルス時間幅を有するレーザ源を使用することが好ましい。
【0041】
このレーザ・マイクロポレータはまた、1mJ/cm2と100000J/cm2との間、特定すると10mJ/cm2と5J/cm2との間のレーザ・ビームのエネルギー密度を有するレーザ源を使用することが好ましい。
【0042】
本発明の1つの利点は、生体膜上で破壊される表面が小さいことであり、これは自由神経終末のわずかな損傷、または無損傷の原因となる。本発明は痛みを引き起こさず、神経系のどのような不可逆的損傷も殆ど生じさせず、軽微な長期効果を生じさせるのみである。破壊される表面が小さいので、メラニン形成細胞の損傷を無視することができる。これは色素沈着に殆ど異常を生じさせず、これは一方では美的問題であり、他方ではメラニン形成細胞がUV放射(太陽光、サンルーム)によって引き起こされる皮膚癌を防止するための重要な防護因子である。
【0043】
生体膜に孔を設けるためのこのマイクロポレータは、例えば同一出願人のPCT特許出願である2005年4月18日に提出された「Microporator for porating a biological membrane and integrated permeant administering system」という表題のPCT欧州特許出願公開第2005/051702号パンフレットに開示されたシステムのような一体型薬剤投与システムを含むかまたはその一部であってもよい。生体膜は、例えば同一出願人のPCT特許出願である2005年4月18日に提出された「Method for creating a permeation surface」という表題のPCT欧州特許出願公開第2005/051703号パンフレットに開示された方法に従って孔を設けられてもよい。すべての引用文献はその全文が本願明細書に援用される。生体膜に孔を設けるためのこのマイクロポレータは、例えば同一出願人のPCT特許出願である2006年1月31日に提出された「A system for transmembrane administration of a permeant and method for administering a permeant」という表題のPCT欧州特許出願公開第2006/050574号パンフレットに開示されたシステムのような浸透物質の経皮投与のためのシステムを含むかまたはその一部であってもよい。
【0044】
本発明は、本願に援用される添付図面を参照することで当業者によってさらによく理解され、かつその利点が評価されることが可能である。図面類は或る実施形態の或る細部を例示しているが、本願に開示される発明はそのように例示された実施形態のみに限定されない。その背景を別の方式で明確に形成しない限り、すべての範囲はその端点も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図1は、表面1eを有し、角質層1a、表皮層もしくは表皮1bおよび真皮層もしくは真皮1cを含むヒトの皮膚である生体膜1の上層部の断面図を示している。皮膚の最外層である角質層1aは死んだ細胞層であって、普通では個体差によって決まる10ミクロンと20ミクロン(μm)の間の厚さであり、この角質層は、例えば新生児については約5μmのみの厚さを有することもあり得る。角質層1aは、疎水性の細胞外脂肪マトリックスによって取り囲まれた親水性のケラチン生成細胞を含む。構造的および組成的特異性のせいで、角質層1aは体内に入る薬剤または他の分子の、および体外へ出る体液または分析対象物質の経皮流動に対する最大のバリヤを与える。角質層1aは、角質層細胞の脱落によって2〜3週間の平均交代時間で絶え間なく更新される。
【0046】
角質層1aの下地にあるのは成長可能な表皮もしくは表皮層1bであり、これは普通では50μmと150μmの間の厚さである。表皮は自由神経終末を含むが血管を含まず、表皮1bの直ぐ下に位置する真皮1cに出入りする拡散によって代謝産物を自由に交換する。表皮は1cm2当たり最大で約1000の自由神経終末を含む。真皮1cは1mmと3mmの間の厚さであり、血管、リンパ管、および神経を含む。いったん薬剤が真皮層に到達すると、薬剤は概して循環系を通って灌流するであろう。
【0047】
図1はまた、直径Dを備えた円形の形状を有し、かつ皮膚1の表面に作用する皮膚1上に焦点集束される平行または準平行のレーザ・ビーム4またはレーザ・ビーム4を示している。レーザ・ビーム4は他の形状、好ましくは方形の形状を有することもやはりあり得る。皮膚1上へのレーザ・ビーム4の衝突は組織のアブレーションを引き起こす。レーザ・ビーム4の最初のショットは下端部3aを伴う個別孔2を生じさせる。この最初のショットは、皮膚1の外表面にスポットBとも呼ばれる穿刺表面Bを約(D/2)2×πのサイズでもたらし、これは除去または穿刺された生体膜の外表面の量に相当する。同じ場所へのレーザ・ビーム4の第2のショットは下端部3bまでの個別孔2の深さの増大を生じさせ、同じ場所への第3および第4のショットは下端部3cおよび3dまでのさらなる深さの増大を生じさせる。個別孔2を取り囲む組織1の合計表面は浸透表面Aに相当し、これは底面と側壁表面の和である。穿刺表面Bに組織は無く、したがって穿刺表面Bは浸透表面Aの一部ではない。
【0048】
主として組織の特性、パルス・レーザ・ビーム4のエネルギー密度およびレーザ・ビーム4のパルス時間幅に応じて1パルス当たりの深さの増減は変化する。焦点が合わされたレーザ・ビーム4が使用される場合、レーザ・ビーム4は好ましくはビームの伝搬方向に対して直角の平面内で均質な強度分布を有するべきである。レーザ・ビーム4は、好ましくは均質なエネルギー強度分布を少なくとも焦点深度の領域内で有するべきである。均質な強度分布を備えたレーザ・ビーム4の使用、場合によっては平行もしくは準平行のレーザ・ビーム4を備えた非集束レーザ・ビーム4の使用は、図1に開示されるように、個別孔2の浸透表面Aが普通では正確な形状、例えば円筒形状を有するという利点、および孔2の底部が正確で好ましくは平坦な形状を有するという利点を有する。最も好ましい実施形態では、レーザ・ビーム4は個別孔2の下端部3cが表皮1bに到達できるが真皮1cに到達できないように作動させられる。
【0049】
自然な皮膚再生過程に起因して、表皮1bおよび角質層1aを構築する細胞は基底層から外へと成長する。基底層は表皮1bと真皮1cとの間の皮膚層である。普通では1日に3から15μmが再生される。約14日後に細胞は死んで角質層を構築する。約14日のさらなる期間の後、これらの細胞は皮膚から剥がれ落ちる。したがって、各々の個別孔2の下端部3dは約3から15μm/日の速度で角質層の方向へと動いており、それにより、浸透表面Aを減少させていると言うことができる。角質層1aの表面を伴わない表皮1bのみの浸透表面である補正後の浸透表面は、遺伝的にプログラムされた細胞死のせいで下端部3dの細胞が死ぬと直ぐに穿刺表面(これは角質層1a内の穴の表面を意味する)のサイズになり、角質層1aの第1層になる。角質層1a内の残りの穴は既に述べた14日後に閉じられるであろう。細胞の成長と死とのこの知られているメカニズムは本願では詳しく述べられない。細胞の持続的成長は角質層の厚さを増大させ、したがって残りの穴のバリヤ特性を大幅に増大させ、角質層を再生させる。最後には、個別孔2は細胞成長のせいで消えてなくなり、以前に除去された組織は新たな細胞によって再生される。
【0050】
図1aは3つの孔2を示している。中間の孔2は皮膚1の表面に対して直角であり、それに対して左および右の穴2は角度αで皮膚1の中に突き通り、この角度αは0°から70°までの間の範囲にある。孔2のこの配列の利点は、孔2が真皮1cの中に入ることなく孔2の合計長さが極めて長くなり得ることである。左または右の孔2は、例えば中間の孔2の長さの2倍を有することが可能であり、一層大きい浸透表面Aを有する。
【0051】
図2は、Q−スイッチレーザ源7およびレーザ・ビーム成形およびガイド用装置8を含むレーザ・マイクロポレータ10を示している。レーザ源7は、レーザ活性物質7bの光学的励起のための光源7cおよび1セットの反射ミラー7d、7eを有する。レーザ源7は、レーザ結晶7b、好ましくはErおよび場合によっては追加的にPrでドープしたYAGを含むレーザ・キャビティ7aを有し、これが励起子7cによるポンプ作用を受け、この励起子7cはエミッタ・バーまたはエミッタ・バーのスタックのようなシングルエミッタ・レーザダイオードまたはシングルエミッタ・レーザダイオードのアレイである。レーザ源7はさらに、レーザ結晶7bの後方に配置された高反射率ミラー7dおよびレーザ結晶7bの前方に配置された出力結合ミラー7eから成る光共振器、およびレーザ結晶の後方に配置された可飽和吸収体7fを含む。可飽和吸収体7fはQ−スイッチとして働く。平行もしくは準平行レーザ・ビーム4または集束レーザ・ビーム4を作り出すために焦点集束用レンズ8aおよび発散レンズ8bが出力結合レンズ7eの向こう側に配置される。レンズ8a、8bの代用として、マイクロポレータ10は異なる光学手段8a、8bを含んでもよく、これらは、例えば皮膚1の表面上にレーザ・ビーム4の焦点を合わせる。発散レンズ8bはモータ8cによって図示された方向に移動させられることが可能である。これはレーザ・ビーム4を広げることまたは狭めることを可能にし、レーザ・ビーム4の幅およびレーザ・ビーム4のエネルギー・フルエンスを変えることを可能にする。モータ8eによって駆動される可変吸収体8dが、レーザ・ビーム4のエネルギー・フルエンスを変えるために発散レンズ8bの向こう側に配置される。図2kまたは図2uに開示されるように、レーザ・ビーム4のエネルギー強度分布を作り直すレーザ・ビーム成形装置7h、8yもやはり含まれる。レーザ・ビーム4を様々な方向に向けることで皮膚1に多様な位置で個別孔2を作り出すためにx−y駆動装置8gで駆動される偏向器(ミラー)8fが吸収体8dの向こう側に配置される。制御装置11は、配線11aによってレーザ源7、駆動素子8c、8e、8g、センサ類、および詳細に開示されていない他の素子と接続される。
【0052】
好ましい実施形態では、レーザ・マイクロポレータ10は、それぞれがフィードバック・メカニズムであるフィードバック・ループ13も含む。図2では、フィードバック・ループ13は個別孔2の深さを測定するための装置9を含み、レーザ・ビーム9dを作り出す光学素子を備えたセンサ9aおよび光学素子9bを備えた受光器を含むことが好ましい。レーザ・ビーム9dは個別孔2の直径よりも小さい(例えば1/5の)幅を有し、それにより、レーザ・ビーム9dは個別孔2の下端部に到達することができる。偏向ミラー8fは送光器9aのビームを測定対象の個別孔2へと向け、反射されたビーム9dを受光器9bに返すように導く。様々な方式で構築されることが可能なこの距離測定装置9は、個別孔2の下端部の位置、例えば深さを測定することを可能にする。好ましい実施形態では、個別孔2の深さはパルス・レーザ・ビーム4が発射された後に毎回測定され、個別孔2の深さに対する各々のレーザ・パルスの影響を制御することを可能にする。フィードバック・ループ13は個別孔2のフィードバック信号を測定することを可能にするように様々な方式で構築されることが可能である。フィードバック・ループ13は、個別孔2の下端部によって反射される光のスペクトル変化を検出するために、例えば、分光器14として構築された送光器9aと受光器9bとを含む。これは、例えば、個別孔2の実際の下端部3a、3b、3c、3dが角質層1aの一部であるか、または表皮1bの一部であるかを検出することを可能にする。レーザ・ポレータ10はまた、個別孔2の特定のデータを有する穿孔メモリ12も有する。レーザ・ポレータ10は穿孔メモリ12内に事前記述されたように個別孔2を作り出すことが好ましい。レーザ・ポレータ10はまた、データをポレータ10と交換することを可能にするため、特にメモリ12の中への個別孔2のパラメータ類、初期の微小穿孔のデータセットの転送を可能にするため、または特定の個別孔2iの実際の深さまたは合計表面Aiなどのデータを得るための、1つまたは複数の入出力装置15またはインターフェース15も含む。入出力装置15は、カードリーダー、スキャナ、有線インターフェース、または例えばブルートゥースなどの無線接続であってもよい。
【0053】
このポレータはさらに、物質、個人、およびさらに多くのデータのようなデートを手動で交換するための1つまたは複数の入出力装置またはユーザ・インターフェース15を含むことも可能である。このユーザ・インターフェースは、例えばディスプレイ、ボタン、音声制御、および指紋センサを含むこともあり得る。
【0054】
レーザ源7を構築するための多様な方式がある。レーザ源7は、例えば、固定の幅(例えば250μmの幅)のビーム4を作り出す光学素子を備えたレーザ・ダイオードとして構築されてもよい。レーザ源7は吸収体8dもやはり含むことが好都合である。単純なバージョンでは、レーザ・ポレータ10は内蔵式レンズ系、および様々な方向でのレーザ・ビーム4の方向付けのための偏向ミラー8fを備えたレーザ源7のみを含むこともあり得る。したがって、吸収体8dの代わりに、レーザ・ビーム4の強度はレーザ・ダイオード7を駆動することによって直接調節されることもあり得る。図2aに開示されるように、皮膚1上の様々な場所にレーザ・ビーム4を向けるためにレーザ・ダイオード7の位置がモータ駆動部8gによって調節されることが可能である。吸収体8dが発散レンズ8bの後段に配置されるのではなく、吸収体8dがレーザ源7の中に、例えば出力結合ミラー7eの後段であってレーザ源7を出るビーム4の前段に配置されることもやはりあり得る。
【0055】
吸収体8dの代わりに可変シャッターが全レーザ・ビームのうちの小部分を選択するために使用されることも可能である。ビームの好ましい均質な光強度分布を得るために、回折光学素子(DOE)などのビーム・ホモジナイザ(例えばスーパガウス・レンズまたは多段エッチングされたウェハ)またはマイクロレンズもしくはマイクロレンズ・アレイ(MLA)などの他の光学素子が標的組織とレーザ源との間に配置されてもよい。レーザ源は薄ディスクレーザであることもやはり可能である。レーザ・ダイオードはまた、単一レーザ・ダイオードよりもはるかに大きいエネルギーを供給することが可能なレーザ・ダイオード・アレイまたはレーザ・ダイオード・アレイのスタックであってもよい。
【0056】
レーザ源7のパルス繰り返し周波数は、1Hzから1MHzの範囲、好ましくは100Hzから100kHzの範囲、最も好ましくは500Hzから10kHzの範囲内である。レーザ・ポレータ10の1つの応用の中で、2個と100万個との間の個別孔2、好ましくは10個と10000個との間の個別孔2、最も好ましくは10個と1000個との間の個別孔2が生体膜に作り出されてもよく、各々の孔2が0.05mmと0.5mmとの間の範囲、または最大1mmまでの幅を有し、各々の孔2が5μmと200μmとの間の範囲の深さを有し、しかし個別孔2の下端部は表皮の中にあることが好ましい。必要であれば、ポレータ10は200μmを超える深さの孔を作り出すこともやはり可能である。
【0057】
レーザ・ポレータ10はまた、皮膚1上に向けられるときにのみレーザ・パルスが発射されるようにインターロック機構も備える。フィードバック・ループ13は、例えばパルスが皮膚1上に向けられているか否かを検出するために使用されてもよい。インターロック機構を作り出すために数多くの方式があり、すべてのそのような方式が考慮されることを当業者は理解するであろう。一つの実施形態は図4aに述べられる。
【0058】
個別孔2の深さはレーザ・パルスの印加の前後で測定されてもよく、角質層、表皮、および真皮が異なる特性(例えば異なる量の水)を有するという事実のせいで、印加レーザ・パルス当たりのアブレーション量の変化に応じて、1パルス当たり同じエネルギーが使用されるのであれば孔の下端部が角質層にあるか、表皮にあるか、または真皮にあるかを判定することが可能である。好ましい実施形態では、角質層1a、または必要であれば表皮1bの厚さは1パルス当たりの深さのアブレーション量の変化についての情報に基づいて判定されることが可能である。別の実施形態では、組織層は分光学的手段で差別化されることもあり得る。
【0059】
図2は、円筒状の個別孔2を作り出す円形レーザ・ビーム4を開示している。個別孔2は他の形状を有してもよく、例えばそこではレーザ・ビーム4は円形ではなく楕円の形状、正方形または長方形を有する。個別孔2は偏向器8fの適切な移動によって形作られることもやはり可能であり、これは広範に多様な形状を備えた個別孔2の形成を可能にする。
【0060】
図3は距離測定装置9を詳細に示している。送光器9aはレーザ・ビーム9dを発射し、これが半透明ミラー9cおよび偏向器9eを通過して個別孔2の下端部で反射され、偏向器9eを通じて戻り、半透明ミラー9cで反射され、受光器9bに入る。レーザ・ビーム9dの幅L1は個別孔2の内径Dよりも小さい(例えば1/5)。偏向ミラー9eは様々な方向、および開示されるように様々な個別孔2の中にレーザ・ビーム9dを偏向させることが可能である。好ましい実施形態では、レーザ・ビーム9dは皮膚1の表面上、例えばその平均値が基準値を規定する3つの位置Xへもやはり偏向させられる。この基準値に基づいて、各々の個別孔2の深さHが極めて正確に、例えば0.5μmの分解能で測定されることが可能である。一つの好ましい実施形態では、送光器9aと距離を測定するべき点との間の距離a、b、Hを正確に測定するために位相シフト技術が使用される。
【0061】
さらなる実施形態では、距離測定装置9は個別孔2の深さを測定することができるのみでなく、個別孔2のさらなる特徴を測定することも可能であり、特にこの装置は個別孔2全体の幾何学形状を走査することが可能である。これは、例えば、偏向器9eを使用したレーザ・ビーム9dの適切な偏向によって達成されることが可能である。したがって、浸透表面Aの形状およびサイズもやはり意味する孔2全体の側壁の形状が正確に測定されることが可能である。この配列は1つまたは複数の個別孔2の形状の調査を可能にする。個別孔2は図3の右側に開示されるように皮膚1の表面に対して直角に延びてもよい。個別孔2はまた、図3の左側に開示されるように皮膚1の表面に対して斜めに延びてもよい。
【0062】
好ましい実施形態では、フィードバック・ループ9、13は動作可能に穿孔制御器11に連結され、例えばこの制御器は個別孔2の特徴、例えば深さが予め設定した値よりも大きいかまたは等しければさらなるレーザ・ビーム4のパルスが個別孔2に向けられなくてもよくなるように個別孔2の深さを所定の値と比較することが可能である。これは所定の深さを備えた個別孔2の形成を可能にする。
【0063】
図3bは前腕の断面を示している。レーザ・マイクロポレータ装置10は接続具10bを含む弾性ベルト10aを使用して前腕に着脱可能に取り付けられる。この配列はマイクロポレータ10と上にマイクロポレータ10の前部が配置される前腕の領域との間の相対的移動を抑制または削減することを可能にする。
【0064】
マイクロポレータ10は孔2の合計数に応じてすべての個別孔2を作り出すために1秒未満と約10秒との間の時間範囲を必要とすることが好ましい。したがって、レーザ・ビーム4を印加している間のマイクロポレータ10と皮膚1との間の相対的移動を阻止するために、マイクロポレータ10を図3bに開示されるように身体と接続すると好都合であることが可能である。すべての個別孔2を作り出すためのレーザ・ビーム4の合計時間は1秒未満であるので、普通ではこの接続は必要とされない。マイクロポレータ10と皮膚1との間の相対的移動がこの時間的期間中に起こる見込みは極めて小さい。もしも相対的移動が起これば、これはフィードバック・ループ9によって検出されることが可能であり、フィードバック・ループ9は皮膚1内に作り出された孔2の位置を走査し、それによって知られた形成孔2の位置に基づいて残りの孔2を作り出すために使用されることが可能である。したがって、たとえマイクロポレータ10と皮膚1との間の相対的移動が穿孔中に起こっても孔2の正確なパターンが作り出されることが可能である。
【0065】
図2bは、単一のレーザ源7(好ましくはレーザ・ダイオード)、およびレーザ・ビーム4を複数の光ファイバ8hの中に導き、それによってレーザ・ビーム4を複数の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dへと分割する光学レンズ8b、8aをやはり含むレーザ・ビーム成形およびガイド用装置を有するレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。エネルギー強度分布を作り直すレーザ・ビーム成形装置は詳しく開示されない。すべての光ファイバ8hは一体になって偏向器8fを形成し、これが個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dを様々な方向に向ける。個々のビーム4a、4b、4c、4dは各光ファイバ8hを出ている。光ファイバ8hの端部は駆動部8gによって移動させられることが可能であり、それにより、個別ビーム4を移動させる。光ファイバ8hは個別孔2を中に作り出すように皮膚1の上に位置している。防護ガラス8iが光ファイバ8hと皮膚1の表面との間に配置されることも可能である。防護ガラス8iは個別レーザ・ビーム4a〜4dを個別に停止、減衰、または通過させることを可能にする光スイッチ8kをさらに含んでもよい。
【0066】
図2cは複数の個別レーザ源7(好ましくはレーザ・ダイオード)を備えるレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示しており、各々のレーザ源は、各々のレーザ源7のビーム4が個別に皮膚の表面上へと方向付けられることで複数の個別孔2を作り出せるようにモータ8gによって個別に駆動される。レーザ源7のビーム成形装置は詳しく開示されない。
【0067】
図2dは、単一のレーザ源7(好ましくはレーザ・ダイオード)、およびレーザ・ビーム4を複数の光ファイバ8hの中に導き、それによってレーザ・ビーム4を複数の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dへと分割する光学レンズ8b、8aを含むレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。すべての光ファイバ8hは一体になって偏向器8fを形成し、これが個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dを様々な方向に向ける。図2bによる実施形態とは対照的に、このレーザ・マイクロポレータ10はモータ8gおよび防護ガラス8iを含まない。皮膚1上の微小孔2の配列は偏向器8fによって予め決定される。このレーザ・マイクロポレータ10はどのような移動部品も伴わずに構築されることが可能であり、これは極めて頑丈で極めて安価なマイクロポレータ10を構築することを可能にする。このレーザ・マイクロポレータ10は例えば一度使用されるのみであってもよく、これは使い捨てのレーザ・マイクロポレータ10を意味する。さらなる実施形態では、個別光ファイバ8hの方向を変えることによって皮膚1上の微小孔の最終配列が変えられることが可能となるように光ファイバはある程度可撓性である。
【0068】
図2eは、単一のレーザ源7、およびレーザ・ビーム4を複数の光ファイバ8hの中に導き、それによってレーザ・ビーム4を複数の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dへと分割する光学素子8を含むレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。すべての光ファイバ8hは一体になって偏向器8fを形成し、これが個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dを様々な方向に向ける。各々の光ファイバ8hの出口端部は、光ファイバ8hを出る個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dが例えば平行の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dを形成できるように個別に配向した表面を有する。
【0069】
図2fは、単一のレーザ源7、レーザ・ビーム4を様々な方向を向く複数の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dへと分割する光学素子8と偏向器8fを含むレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。光学素子8は例えばマイクロレンズのアレイを備え、これらが偏向器8fを形成する。このマイクロポレータ10は極めて安価に製造されることが可能であり、使い捨てに適している。
【0070】
図2gは、レーザ源7、ビーム4を広げるための光学素子8、および複数の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dを形成するための複数の開口16aを備えた穴開きプレート16を備えるレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dは平行であっても異なる方向を向いていてもよい。図2hは穴開きプレート16の前部の光景を方向Aで開示しており、図2gに開示されるように複数の開口16aを備え、各々の開口16aが個別レーザ・ビーム4aを生じさせる。
【0071】
図2bから図2hに開示されたレーザ源7は、例えば図2に開示されたようなレーザ源7、または平行光学系を備えたレーザ・ダイオードであってもよい。
図2iはレーザ・ビーム4を作り出すための、レーザ結晶7b、励起子またはポンピング・レーザ・ダイオード7c、および2色性ミラーである入力結合ミラー7gを含むQ−スイッチレーザ源7、出力結合ミラー7e、および可飽和吸収体7fを備えたレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。可飽和吸収体7fはQ−スイッチとして働く。電気光学結晶、音響光学結晶、または回転型Q−スイッチなどのさらなるQ−スイッチが使用されてもよい。このレーザ・ポレータ10はさらに、0.05から0.5mmの範囲にある異なる直径の7つの開口16aを備えた穴開きプレート16を有する。図2tは穴開きプレート16の前面図を示している。各々の孔16aの中に場合によって追加される光学素子が配置されることも可能である。皮膚1の表面に発射されるビーム4の直径は、ビーム4の経路内に配置されるそれぞれの開口16aの直径によって決まる。発射されるビーム4aの直径が適切な直径を備えた開口16aをビーム4の経路内に位置決めすることによって決定されることができるように、穴開きプレート16は回転可能である。好ましい実施形態では、開口16aと皮膚1との間の距離は50から60mmの範囲にある。
【0072】
図2kはリボルバーとも呼ばれる穴開きプレート16を拡大して示している。リボルバー16は5から10個の異なる直径の開口16aを有する。適切な開口16aをビーム4の経路内に置くようにモータ17がリボルバーを駆動し、それにより、ビーム4aの直径が選択されることが可能である。
【0073】
図2lは、レーザ源7を出るビーム4のレーザ・ビーム強度プロファイル4adのグラフ表現を示している。この強度プロファイルはガウス分布を有する。縦軸は正規化されたレーザの強度を示し、横軸はビーム4の軸方向光心に対するビーム4の場所を示す。一つの好ましい実施形態では、レーザ・ビームのエネルギー強度分布を作り直すビーム成形装置8yはホモジナイザ7hであり、ビーム4の均質な強度もしくはエネルギーの分布を得るためにレーザ・ビーム4のエネルギー強度分布を変更する8yはビーム4の経路内に位置決めされるスーパガウス・レンズ7hであってもよく、これがビーム4aのほぼ長方形のエネルギー強度プロファイルを生じさせる。ビーム成形装置7h、8yは、例えば屈折性の平凸マイクロレンズを使用する1つまたは2つのマイクロレンズ・アレイを有することも可能である。例えば、いわゆる「画像ホモジナイザ」は普通では同一のレンズ間距離を備えた2つの同様のマイクロレンズ・アレイから成る。第1のマイクロレンズ・アレイは入射ビームを多数の小ビームに分割するために使用される。後方に位置する球面レンズと組合せになった第2のマイクロレンズ・アレイは対物レンズのアレイとして作用し、これが第1のアレイの小ビームの各々の画像を均質化平面上に重ね合わせる。球面レンズの後方の一方の焦点距離に置かれる均質化平面は、均質なエネルギー分布を有するビーム・スポットである。図2mは、異なる直径を備えた3つのビーム4aa、4ab、4acのそのような長方形のエネルギー強度プロファイルを有する3つのビーム・スポットを開示している。したがって3つのビーム4aa、4ab、4acすべてがいわゆる輪郭のくっきりした強度分布を有する。そのようなプロファイルはまたトップ・ハット・プロファイルまたはフラットトップ・プロファイルと呼ばれる。ビーム4aa、4ab、4acの上部が平らなプロファイルの一層鋭いエッジと一層小さいばらつきは、例えば、マイクロレンズ・アレイにおけるフレネル回折に起因する一層高いフレネル数によって達成されることが可能である。図2mはレーザ・ビーム4aがビームの軸方向光心に対して平坦上部においてほぼ一定のエネルギー密度を有することを開示している。普通、画像ホモジナイザは、同一のレンズ間距離を備えた2つの同様のマイクロレンズ・アレイから成る。正方形タイプのレンズ開口はフーリエ平面内で正方形の平坦上部またはシルクハット型の強度分布を発生する。円形または六角形マイクロレンズなどの他の形状はそれぞれ円形または六角形の平坦上部を発生するであろう。また、2つの異なるマイクロレンズ・アレイから成る画像ホモジナイザが使用されてもよく、これは長方形または直線形状の平坦上部といった様々な形状の強度分布を作り出す。この強度分布は平坦上部内で10%未満で変化することが好ましい。
【0074】
図2nは、通過するレーザ・ビーム4aが減少した直径を有し得るようにレーザ・ビーム4よりも小さい開口16aを備えたリボルバー16の断面を示している。レーザ・ビーム4はほぼ一定のエネルギー密度を有するので、開口16aを通過するレーザ・ビーム4aのエネルギー密度はレーザ・ビーム4aの直径に関係無くほぼ同じである。
【0075】
図2oおよび図2pは本願で平行もしくは準平行のレーザ・ビームと称するレーザ・ビーム4aを開示している。レーザ・ビーム4aはレーザ・ビーム4aの伝搬方向ベクトルvpdとレーザ・ビーム4aの主発散の発散ベクトルvdを有する。方向ベクトルvpdと発散ベクトルvdとの間の角度βは3°未満から5°、好ましくは1°未満、最も好ましくは0.5°未満である。これは、平行もしくは準平行のレーザ・ビーム4aが3°未満から5°の発散を有することを意味する。平行もしくは準平行のレーザ・ビーム4aの直径は、ベクトル方向vpdで伝搬するときに図2oに開示されるようにさらに広くなることが見込まれ、または図2pに開示されるようにさらに狭くなることが見込まれる。平行もしくは準平行のレーザ・ビーム4aは少なくとも或る一定の範囲内の焦点で図2oおよび2pに開示された特性を示し、伝搬方向ベクトルvpdの方向で延びるこの焦点または焦点範囲は約1cmから5cmの範囲、好ましくは2cmから3cmの範囲である。
【0076】
図2qはレーザ・ビーム4aによって皮膚1に作り出された孔2の側面図の概略表現を示している。レーザ・ビーム4aは均質なエネルギー密度を有し、これは光学素子、例えばガウス・レンズを使用することによって、または多重モードのレーザ・ビーム発生によって到達されることが可能である。レーザ・ビーム4aは、いわゆるシルクハット型プロファイルを有する。レーザ・ビーム4aは発散およびエネルギー分布に関してほぼ均質である。したがってこのレーザ・ビーム4aは、深さおよび形状の点で皮膚1の所定のアブレーションを引き起こす。対照的に、均質なエネルギー分布を伴わないレーザ・ビーム4および/または平行もしくは準平行のレーザ・ビーム4を伴わないレーザは図2rおよび2sに開示されるような孔2を皮膚1に生じさせることも可能である。普通に使用されるレーザ・ビーム4は、図2lに開示されたようなガウス強度プロファイルを有する。そのようなビーム4は図2rおよび2sに開示されるような中央に極めて深い部分を有する孔2を作り出す。そのようなレーザ・ビーム4は国際公開第00/78242号パンフレットに開示されるようなレーザ・ポレータに極めて適しており、なぜならばこのレーザ・ポレータの目的は間質液を容易に集めることであるからである。したがって、最も重要な態様は図2rおよび図2sに開示されるように孔が中央にピークを伴って深いことであり、その一方で、作り出された孔2の形状は重要ではない。そのようなレーザ・ビーム4は表皮と真皮の間の敏感な層に損傷を与える可能性が高く、それにより、出血および痛みが起こる。そのような孔2は経皮薬剤供給にとって価値が無い。図2qに開示されるようなレーザ・ビーム4aは、最上部から底部までの孔2の形状が同じもしくは同様に保たれ、それにより、好ましくは極めて正確で再現性のある孔2が作り出されるという利点を有する。図2qのレーザ・ビーム4aはまた、作り出された孔2が中央にピークを有さず、ビームのエネルギーすべてが適切に形作られた微小孔を作り出すために使用されるのでエネルギーを節約することも可能にする。したがって、初期の微小穿孔を作り出すためにはるかに少ないエネルギーが必要とされ、これはさらに低いエネルギーのレーザ・パルスを使用することを可能にし、レーザ・ポレータを駆動するために電池などの携帯型電源を使用すること、およびハンドヘルド型レーザ・ポレータを構築することを可能にする。
【0077】
図10aは半径rの関数でガウス強度分布Iを備えたレーザ・ビーム4adを示しており、このビーム4adはImaxの最大強度を有する。そのようないわゆる単一モードのレーザ・ビームは、最大のエネルギー集中を与え、例えば深い穴を作り出すのでしばしば使用される。レーザ・ビーム4のエネルギー強度分布を作り直すレーザ・ビーム成形装置の効果が、強度Ihの輪郭がくっきりして均質な強度分布を有するレーザ・ビーム4aeでもって概略で開示されている。現実では、これらのレーザ・ビーム4ad、4aeは三次元幾何学形状である。これらの形状の体積は、レーザ・ビーム4ad、4aeのエネルギーの物理的意義を有する。E1、E2、E3、およびE4はこれらの形状のうちの異なった部分を示す。これらの部分はビーム・エネルギーの各部として解釈されることが可能である。E3はエネルギーの実効「円筒部」であり、作り直されたレーザ・ビーム4aeのエネルギーに相当する。E1は、作り直されたレーザ・ビーム4aeの強度Ihを上回る余剰のエネルギーにあるガウス関数の頂上部である。E1はエネルギーの浪費であり、作り出される微小孔の形状に関して悪影響にもやはりつながる。E2およびE4はガウス関数の尾部であり、これはエネルギーの浪費であり、例えば作り出される微小孔の形状に関して、または組織のオーバーヒートに関して悪影響にもやはりつながる。正確に形作られた孔を作り出し、かつ/または孔を作り出すためのエネルギーを節約し、かつ/または生体膜の損傷を回避する観点で見ると、部分E3のエネルギーのみが重要であり、それに対して部分E1、E2およびE4のエネルギーは浪費である。言い換えると、生体膜に孔を作り出すときにガウス強度分布を備えたレーザ・ビーム4adを使用することは、例えばエネルギーの約40%が部分E3を作り出すのに有効であり、例えばエネルギーの約60%が悪影響のせいで浪費であるという効果を有する。もちろん、この例は図10aに基づく単純化された幾何学的解釈に基づいているが、しかし明らかにレーザ・エネルギーの損失の効果を示しており、かつレーザ・ビームのエネルギー強度分布を作り直すビーム成形装置を使用する効果を明らかに示している。通常のレーザ源はガウス関数のビーム強度分布を有する。レーザ・ビームのエネルギー強度分布を作り直すビーム成形装置は輪郭のくっきりした強度分布を生じさせ、これは普通では側部で一層切り立った傾斜および/または平坦な最上部を意味し、それにより、このプロファイルは明確なエッジを示すことができる。図2mに開示されるように長方形に近い形状を有する、平坦上部またはシルクハット型のプロファイルとも呼ばれるほぼ均質な分布を作り出すために極めて頻繁にビーム・ホモジナイザが使用される。このビーム成形は特別に設計された光学系、例えばいわゆるホモジナイザによって与えられることが可能である。
【0078】
図10bはビーム成形を伴わないビーム4で作り出される皮膚1の孔2を示しており、このビーム4はガウス強度プロファイル4adを有する。図10cはビーム成形を使用するビーム4で作り出される皮膚1の孔2を示しており、ビーム4はシルクハット型の強度プロファイル4acを有する。作り出される孔2は円筒状またはほぼ円筒状である。図10bは点線2rもやはり示しており、これは図10cに開示された孔2の形状にほぼ相当する。図10bに作り出された孔2と比較すると、図10bで適用されるレーザ・ビーム4は1dで印を付けられた組織体積を過剰に除去し、これは追加的なエネルギーもやはり必要とする。したがって、図10cに開示されるような孔2を作り出すためには、図10bに開示される孔2よりも少ないエネルギーを必要とする。図10bに開示される孔は、例えば、この孔2が痛みを引き起こすというさらなる不都合を有する。図10dはビーム成形を使用するビーム4で作り出される皮膚1の孔2を示しており、ビーム4はくぼみ4agを含むシルクハット型の強度プロファイル4afを有する。くぼみ4agはビーム4の最大エネルギーの低下を示す。このくぼみはビーム4の最大エネルギーよりも最大で30%少ないエネルギーを有する可能性もあるが、好ましくは10%、20%、または30%少ないエネルギーである。開示されるように、強度プロファイル4afはまた、輪郭のくっきりした強度分布を有する。
【0079】
レーザ・ビーム4aは2.8ミクロンと3.1ミクロンの間の波長、および50nsと150nsの間のパルス時間幅を有することが最も好ましい。そのようなレーザ・ビーム4aの1つの利点は、作り出された孔2に隣接する組織の活性化または加熱の影響が極めて低いことであり、これは細胞のさらに少ない破壊の原因となる。700nmと1200nmの間の波長を有する従来式のレーザ・ダイオードの使用は、脂質が最大で500℃まで加熱され、これは隣接する組織内の強く増大した損傷ゾーンにつながるでることから、高度に非効率的な孔2の形成につながるであろう。対照的に、2.8ミクロンと3.1ミクロンの間の波長の使用は殆ど脂質を加熱しない。さらなる利点は、孔2の下端部が容易に検出され得るので孔2の深さの測定が簡単で正確であることである。対照的に、図2rおよび2sに開示された孔2は明確な下端部を有さない。したがって、孔2の深さを測定することは困難、または不可能でさえある。
【0080】
図2uは、レーザ源7、およびレーザ・ビーム成形およびガイド用装置8を有するさらなるレーザ・マイクロポレータ10を示している。レーザ源7はレーザ・ダイオード7cのアレイ、好ましくは複数の直線状に配列されたレーザ・ダイオード・バーとも呼ばれるレーザ・ダイオード・エミッタ(これらはさらに大きい出力パワーのためにいわゆるレーザ・ダイオード・スタックへと追加的に一緒に積み重ねられることもあり得る)を備える。レーザ・ダイオード7cは、10℃から40℃の様々な環境温度の理由から、レーザ・ダイオード7cの温度をほぼ一定のレベルに保つために熱電素子7iによって調節されることが好ましい。発射されるレーザ・ダイオード7cの波長は温度によって決まる。熱電素子7iは発射波長を一定値に保つため、またはダイオード7cの温度を変えることによって発射波長を変えるために使用されることが可能である。発射されたレーザ・ダイオード7cの光はレンズ7i、7lおよび2色性ミラーを通過し、衝突点7q回転型レーザ結晶7n、例えばEr:YAGディスクに当たる。ディスクの形状を有するレーザ結晶7nは、例えば銅のような取付け台で回転軸7pを備えた駆動部7oに接続されたレーザ結晶取付け台7t上に装着される。モータ7oは、レーザ結晶7nが軸7pの周りで回転することができるようにレーザ結晶取付け台7tを駆動する。レーザ結晶7nはレーザ・ダイオード・バーまたはスタック7cのビームによって光学的にポンピングされ、それにより、レーザ結晶7nはレーザ・ビームを発射し、これがQ−スイッチ7rを通って2色性ミラー7mと出力結合器7sとの間で反射され、これが、数パーセントのレーザ・ビームの波長に関するその透過特性に起因して部分的に出力結合器7sを通過してレーザ・ビーム成形およびガイド用装置8に至る。レーザ・ダイオード7cは、例えば965nmの波長を有してもよく、レーザ源を出るレーザ・ビーム4は、例えば約2.94ミクロン(μm)の波長を有してもよい。
【0081】
レーザ源7から外に結合したレーザ・ビーム4は、例えば1mmのビーム径を有してもよい。この出て行くビームは、レンズ8b、8aによって例えば4mmの平行ビーム4bに広げられることが好ましい。レンズ8aに続いて、レーザ・ビーム4の焦点を表面1上に合わせるためにビーム・ホモジナイザ8yおよび球面レンズ8xが駆動部8cによって駆動される共通の担体上に配列される。ビーム4は、駆動部8g、例えばステッピング・モータおよび制御装置11で動かされるミラー8fによって偏向させられる。ビーム4が表面1上に向けられることが可能な領域は例えば20mmの合計の直径を有することも可能である。表面1または微小孔2に当たるビーム4は600μm未満の直径を有することが好ましい。例えば図2に開示されるようにさらなるレーザ・ビーム9dが表面1に向けられる場合、あるいは表面1の詳細な光景を得るため、あるいは孔の幾何学形状を分析するため、または組織もしくは組織の羽状毛の蛍光を分光学的に分析するために例えば撮像装置が使用される場合、ビーム・スプリッタ8zが使用されてもよい。レーザ源7(これは出力結合器7sでレーザ源7を出た後を意味する)と表面1との間のレーザ・ビーム4の経路長は最大で10cmの範囲内であることが好ましい。
【0082】
マイクロポレータ10は、電池、再充電可能な電池、交換可能な電池、燃料電池、光起電力電池などといった電源10cを有する。この電源10cはマイクロポレータ10のハウジング10dの中に配置される。
【0083】
図2xは、レーザ・ビーム成形装置8y、すなわちビーム・ホモジナイザ8yをさらに詳細に示している。ビーム・ホモジナイザ8yは同一のレンズ間距離を備えた2つのマイクロレンズ・アレイから成る。レーザ・ビーム4bから外に正方形の平坦上部の強度分布を焦点FPでもあるフーリエ平面内で作り出すために正方形タイプのレンズ開口が使用される。球面レンズ8xはビーム4を焦点FP上に集束させ、ここではビームは正方形の形状を有する。ビーム4は焦点FPで、例えば約1mmの焦点深度を有する。
【0084】
図2uに開示されたレーザ源7(ここではレーザ結晶7nが回転する)とは対照的に、図2vのレーザ源7は直線状の厚板7n、好ましくはEr:YAG結晶を使用し、これが例えばアルミニウムの取付け台7tに保持され、駆動部7oによって直線方向7pに移動させられる。
【0085】
図2uおよび図2vに開示された両方のレーザ源7は200Hzと20kHzとの間の速度で供給されるナノ秒パルスで動作させられることが好ましい。運動するレーザ結晶7nは、普通では最大繰り返し速度を制限する結晶7nの端部準位のライフタイムの問題に打ち勝つことを可能にする。レーザ源7の動作中にレーザ結晶7nを永続的に運動させるかまたは位置決めすることによって、レーザLED7cによって発射される連続的パルスは結晶7nの同じ領域に当たらず、したがってレーザ結晶7nの端部準位のライフタイムは最大繰り返し速度に影響を与えず、結晶7nはそれ以上レーザ・パルスを発射することができる。これは高い周波数出力、例えば最大で20kHzの範囲のレーザ・ビーム4を、例えば2.94μmの波長、および例えば965nmのポンピング波長で作り出すことを可能にする。
【0086】
図2wは、例えばNdをドープしたレーザ結晶7nをナノ秒パルスでポンピングするレーザ・ダイオード・バーもしくはスタック7cを含むさらなるレーザ源7を示している。ビーム4の経路に沿ってレンズ7k、7l、2色性ミラー7m、レーザ結晶7n、Q−スイッチ7r、ビームを折り曲げるための2つ以上の高反射率ミラー7u、さらなる2色性ミラー7m、非線形光学(NLO)結晶7v、および出力結合器7sが配置される。NLO結晶7vは軸7wの周りで回転させられることが可能である。このNLO結晶すなわち単一共振の光パラメトリック発振器(OPO)7vは、Q−スイッチの例えばNdドープされたレーザによってポンピングされる。NLO結晶7vを軸7wの周りで回転させることは結果として(例えば2.6〜3.2μmで)調整可能なOPOアイドラ出力につながり、それによって2.95μmが使用されることが好ましい。
【0087】
図4aは、場合によってはレーザ・ポレータ10のレーザ・ハウジング8lの中に嵌め込まれてアブレーション部位の近傍に位置決めされる使い捨てのチップ8nを示している。チップ8nは、円筒状の壁および防護ガラス8iを備えた容器を形成する。この容器はアブレーションによって除去された組織およびその他の物体を集める。チップ8nはレーザ・ポレータ10の中への容易な挿入を可能にするように形作られてもよい。防護ガラス8iはレーザ・ビーム4にとって少なくとも部分的に透明の媒質であり、ガラス、ポリカーボネート、またはレーザ・ビーム4にとって少なくとも部分的に透明である他の媒質で作られてもよい。開示されたチップ8nは、電線8pによって接続される電気的接触素子8o、8qを有する。接触素子8qはレーザ・ハウジング8lの接触素子8mと接続される。この配列は接触素子8oとの間の皮膚1のインピーダンスを測定することを可能にする。このチップは場合によっては感熱性である接着性の細長片をさらに含むことも可能である。
【0088】
この配列は、レーザ源7が活性化されるのに先立ってチップ8nが皮膚の上に配置されることを確実にするためにインターロック機構として使用されることが好ましい。チップ8nはセンサ類、例えば皮膚の湿度、温度、またはpH値を測定するためのセンサ類を含むこともやはり可能である。これらのセンサはインターロック機構として使用されることもやはり可能である。好ましい実施形態では適切に扱われないと傷の原因になりかねない平行もしくは準平行のレーザ・ビームが使用されるので、チップ8nが皮膚の上に置かれるときにのみレーザ・ビーム4が活性化されることが極度に重要である。図4bおよび図4cに示されるように、使い捨てのチップ8nは1回のみチップ8nを使用することを可能にする安全機構8sを含んでもよい。安全機構8sはレーザ・ハウジング8l内の嵌合接触を伴う2つの接触素子8t、8u、および電流が印加された後に蒸発するかまたは機械的に壊れるかまたは電子装置(例えば再プログラムされることが可能なマイクロチップ)である溶融素子を含む。穿孔が終了するとその後、そのような変化が安全機構8sに加えられる。安全機構8sの状態はチップ8nが1回のみ使用されることができるようにレーザ・ポレータ10によって制御される。チップ8nはチップ8の前方で皮膚1を引き伸ばすための手段8w、例えば図4dに開示されるような弾性のリングを含んでもよい。チップ8nが皮膚1に押し付けられると、この弾性リングが皮膚1を半径方向外側に押し、それにより、弾性リングの内側の皮膚が引き伸ばされ、皮膚の表面は主に平面になる。
【0089】
図5aは皮膚1の個別孔2のアレイを示している。すべての個別孔2はほぼ同じ形状および深さを有する。
図5bは様々な形状の個別孔2aから2fを示しており、これらはレーザ・ポレータ10を制御する穿孔制御器11の支援で作り出されることが可能である。図5bに示された個別孔を作り出すために、少なくともレーザ・ビーム4の断面は変えられることが可能でなければならない。好ましい実施形態では、レーザ・ポレータ10は各々の連続的パルス・レーザ・ビーム4の断面および/またはエネルギー密度を変化させ、これは個別孔2を多数の異なる形状で作り出すことを可能にする。1つのパルス・レーザ・ビーム4当たりで除去される層が極めて少ない場合、図5cに開示されるような円錐形に形作られた個別孔2g、2h、2iでさえ作り出されることが可能である。
【0090】
図5dは、集団で微小穿孔を形成する個別孔2の規則的なアレイを有する皮膚の平面図を示している。レーザ・ポレータ10が穿孔を終了した後の生体膜上の微小穿孔は「初期の微小穿孔」と呼ばれる。穿孔メモリ12は初期の微小穿孔のデータセットを有し、これが初期の微小穿孔を規定する。初期の微小穿孔のデータセットは、各々の孔の幅、深さ、および形状、個別孔2の合計数、生体膜上の孔2の幾何学的配列、孔2と孔2の間の最短距離などを含めたどのような適切なパラメータも含む。レーザ・ポレータ10は初期の微小穿孔のデータセットによって規定されるように孔2を作り出す。これはまた、例えば図5fに開示されるように皮膚1上で個別孔2を様々な形状に配列することも可能にする。
【0091】
図5eは薬剤容器5aと貼付部材5bとを含む経皮用当て布5を開示しており、これは皮膚1上に貼付され、薬剤容器5aは個別孔2を含む領域の上に位置決めされる。この領域は、1mm2と1600mm2の間の範囲内で個別孔2の数と間隔によって決まる表面を有してもよく、好ましくは20×20mm、例えば400mm2の表面である。
【0092】
各々の個別孔2iに関して、内壁の表面および下端部の表面は重要であり、特に浸透表面Aiはこれらの両方の表面の合計である。好ましい実施形態では、レーザ・ポレータ10は浸透表面Aiを極めて正確に判定することを容易にする距離測定装置9を含む。さらなる好ましい実施形態では、表皮の開始部は角質層の厚さを最初に判定することによって見積もられる。これが今度は他方で、各々の孔2iについて補正された浸透表面Aiを判定することを可能にし、これが表皮1bの実効浸透表面を確定し、または角質層の厚さで個別孔2iの深さを増大させることを可能にする。この浸透表面Aiは、各々の個別孔2iに関して容易に算出されることが可能である。個別孔2iが例えば円筒状の形状を有する場合、浸透表面AiはD×π×Hと(D/2)2×πの和に相当し、ここでDは個別孔2の直径であり、Hは個別孔2の深さまたは表皮1bの中の個別孔2の深さの合計である。孔2の実効浸透表面Aiはしばしば正確にDとHで規定される幾何学形状に対応しないが、これは孔2の表面が粗くなり得ること、または人工物を含み得ることが原因であり、これは実効浸透表面が計算された浸透表面Aiよりも大きいことを意味する。浸透表面Aiは少なくとも実効浸透表面の妥当な推定値である。普通では、孔2の浸透表面Aiと実効浸透表面との間の差異はわずかのみであるかまたは存在しない。このとき、n個の個別孔2iの合計の浸透表面Aはすべての個別孔2iのすべての浸透表面Aiの和Aである。
【0093】
表皮の各々の個別孔2は、普通では1日当たり10から15μmの細胞成長を有し、これらの細胞は方向Zで個別孔2の下端部から角質層1aへと成長する。この細胞成長は各々の個別孔2iの浸透表面Ai、すべての個別孔2の合計の浸透表面Aをそれぞれ時間の関数で減少させる。
【0094】
最大で100または1000または10000またはそれ以上であることもあり得る個別孔2の合計数に応じて、個別孔2の幾何学的形状、および細胞成長を考慮に入れると時間の関数である合計の浸透表面が広範囲で変化することがあり得る。時間の関数である合計の浸透表面は孔2の数の適切な選択およびこれらの幾何学的形状および場合によっては付加的な再生層(閉鎖包帯、様々な化学物質など)によって予測および計算されることが可能である。
【0095】
図6aおよび図6bは時間の関数である合計浸透表面Aの実例を示している。図4aおよび4bは補正された合計浸透表面A(t)を示しており、これは表皮1aのみの合計浸透表面A(t)である。レーザ・ポレータ10は生体膜1の微小穿孔を、前記生体膜1内に微小孔2のアレイを作り出すことによって可能にし、それにより、微小孔2の数およびこれらの微小孔2の形状は微小孔2の合計が初期の浸透表面を形成できるように、および初期の浸透表面の浸透表面A(t)が微小孔2内の細胞成長のせいで所定の時間の関数で減少できるように適切に選択される。
【0096】
図6aによる初期の穿孔のデータセットは異なる形状を備えた円筒状微小孔2の3つの群を含み、
・第1の群は250μmの直径、50μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A1を備えた415個の孔から成り、
・第2の群は250μmの直径、100μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A2を備えた270個の孔から成り、
・第3の群は250μmの直径、150μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A3を備えた200個の孔から成る。
【0097】
時間の関数である合計の浸透表面Aは3つの浸透表面A1、A2、およびA3すべての和である。
初期の微小穿孔を意味する個別孔2iの全部は極めて短い時間的期間の中で、例えば2〜3秒の数分の一の時間範囲内で作り出され、それにより、穿孔の時間TPから始まって、初期の浸透表面を形成するすべての形成孔2iの和は細胞成長のせいで時間の関数として減少する。時間TCで個別孔2iのすべてが閉じられ、これはバリヤ特性が大幅に増大することを意味する。
【0098】
図6bによる初期の穿孔のデータセットもやはり異なる形状を備えた円筒状微小孔2の3つの群から成り、
・第1の群は50μmの直径、50μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A1を備えた4500個の孔から成り、
・第2の群は50μmの直径、100μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A2を備えた2060個の孔から成り、
・第3の群は50μmの直径、150μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A3を備えた1340個の孔から成る。
【0099】
合計の浸透表面Aは3つの浸透表面A1、A2、およびA3すべての和である。
孔2の数とこれらの形状、特に孔2の直径と深さに応じて、合計浸透表面Aの時間的関数は広範囲に変えられることが見込まれる。これは、個別孔2の穿孔が初期の浸透表面を決定するばかりでなく時間と共に変わる合計浸透表面Aの関数も決定することを明らかにしている。図6aおよび図6bは90mm2の初期の浸透表面から始まって9日の時間的期間にわたる合計浸透表面Aを示している。浸透表面Aは9日以内で極めて小さい値またはゼロまで減少する。個別孔2の形状に応じて、この時間的期間ははるかに短く、例えば丁度1日またはさらに短く、例えば数時間になることもあり得る。
【0100】
時間の関数である殆どどのような浸透表面も個別孔2の数と形状との適切な選択によって達成されることが可能である。図7は時間の関数である浸透表面の所定の関数AGを示している。図7はまた、時間と共に変わる個別孔2の多様な群A1、A2、A3、A4、A5、...の浸透表面も示している。各々の群は孔の数、直径および深さによって規定される。すべての個別孔2が円筒状の形状を有する。すべての群の個別浸透表面(A1、A2、A3、A4、A5、...)を組み合わせることによって浸透表面A(t)が得られ、この関数は所定の関数AGに極めて類似している。個別孔の多様な群、それらの数、およびそれらの形状は当業者に知られている数学的方法によって決定されることが可能である。
【0101】
図5eは薬剤5aを含み、個別孔2の上で皮膚1上に固定される当て布5を示している。図8は、この薬剤の血清中濃度Sを血中の時間の関数として示している。この薬剤は受動的拡散によって浸透表面に入っている。浸透表面に入る薬剤の量は時間と共に変わる浸透表面A(t)によって主に決定される。したがって、時間の関数である血清中濃度は時間TPにおける初期の微小穿孔による皮膚1の適切な穿孔によって決定されることが可能である。
【0102】
図9aから図9bは同じ量の薬剤、例えば100mgのアセチルサリチル酸の投与を示しており、この薬剤は図5eに開示されるように皮膚1上に配置される。時間の関数である浸透表面A(t)に応じて、血清中濃度のレベルならびに薬剤が放出される時間が予め記述されることが可能である。図9aでは、浸透表面A(t)は約2時間の短い時間的期間にわたって最大血清中濃度が約25g/lになるように選択される。図9bは約2時間の短い時間的期間にわたって約30g/lの最大血清中濃度を伴う薬剤の高速適用(ターボ)を示している。本発明の1つの利点は、激しい変動を示す経口服用OAとは対照的に、経皮適用TDでもって血清中濃度がほぼ一定値に達することである。さらなる利点は、皮膚1に塗布される同じ量の薬剤、例えば同じ当て布が時間と共に変わる浸透表面Aの関数によってのみ決まる多様な血清中濃度を生じさせることである。これは、同じ薬剤を多様な方式で投与することを可能にする。これは同じ薬剤を個別の方式で投与することもやはり可能にし、ここでは薬剤が適用される個人の個々のパラメータに応じて浸透表面が作り出される。
【0103】
これは、疾病を治療するためにマイクロポレータを使用することもやはり可能にする。疾病を治療するこの方法は、所望の効果を誘発するように意図される薬剤の経皮供給にとって望ましい寸法特性を有する孔を作り出す目的で、患者の皮膚内の複数のスポットの各々にエネルギーの繰り返しビームを当てる工程、および所望の効果を誘発するのに有効な量で薬剤が孔を通って皮膚に吸収されることができるように薬剤を孔に適用する工程を含む。この所望の効果は、普通では疾病を治療すること、または治癒させることである。このエネルギーのビームはレーザを含むが、代用としてプラズマを作り出すためのビームを含むこともやはり可能である。寸法特性は普通では孔の深さを含み、この孔の深さは5μmと200μmの間である。本方法はさらに、少なくとも10個の孔を患者に作り出す工程を含み、各々の孔は直径で少なくとも1μm、深さで少なくとも1μmである。本方法はさらに、寸法特性に関して前のパルスと後のパルスとの間にフィードバックを供給する工程、およびこのフィードバックの関数として後のパルスを自動的に変える工程を含む。孔に薬剤を適用する工程は当て布で薬剤を皮膚に適用する工程を含むことが好ましい。
【0104】
レーザ装置を市販する方法は、所望の効果を誘発するように意図される薬剤の経皮供給にとって望ましい寸法特性を有する孔を作り出す目的で、患者の皮膚内の複数のスポットの各々にエネルギーの繰り返しビームを当てるために医療専門家に使用説明書を供給する工程を含む。この所望の効果は普通では疾病を治療すること、または治癒させることである。本方法は、所望の効果を誘発するのに有効な量で薬剤が孔を通って皮膚に吸収されることができるように薬剤を孔に適用することをこの専門家にアドバイスする工程をさらに含むことが好ましい。寸法特性は孔の深さを含むことが好ましく、適切な孔の深さが5μmと200μmの間であることをこの専門家にアドバイスする工程をさらに含む。この使用説明書は、本装置が寸法特性に関して前のパルスと後のパルスとの間にフィードバックを供給すること、およびこのフィードバックの関数として後のパルスを自動的に変えることをこの専門家にアドバイスする工程をさらに含むことが好ましい。
【0105】
マイクロポレータ10は純粋の美容処置のために使用されることもやはり可能であり、ここでは生体膜1、例えば皮膚は複数の個別孔2を有することができるように穿孔処理される。これらの孔2は、或る一定時間の後にこれらの孔2が新たに発生した細胞で満たされることができるように表皮内で細胞成長を開始する。唯一の目的は美容上の理由でヒトまたは動物の皮膚を美しくすることである。微小孔のアレイを作り出すこの美容処置は、多数の領域で細胞成長を生じさせるために数回、例えば10日毎に繰り返されてもよい。
【0106】
フィードバック・ループ13、個別孔2の深さを測定するためのそれぞれの装置9、ならびに穿孔制御器11は本発明で開示されるようなレーザ・ビームを利用するマイクロポレータ10ばかりでなく、ヒトまたは哺乳動物の皮膚または粘膜、または植物の外側組織層などの生体膜に全体的もしくは部分的に孔を設けるために機械的、水圧、音波、電磁気、電気的または熱的手段を利用するマイクロポレータ10も含めてどのような種類のマイクロポレータ10でも使用されることがあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】レーザで孔を設けられた皮膚の1つの孔の概略の断面を示す図。
【図1a】レーザで孔を設けられた皮膚の3つの孔の概略の断面を示す図。
【図2】レーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2a】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2b】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2c】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2d】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2e】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2f】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2g】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2h】複数の開口を備えたプレートを方向Aの光景で示す図。
【図2i】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2k】図2iによるレーザ装置の細部を示す図。
【図2l】レーザ・ビーム・プロファイルを示す図。
【図2m】レーザ・ビーム・プロファイルを示す図。
【図2n】開口の細部を示す図。
【図2o】平行または準平行のレーザ・ビームを示す図。
【図2p】平行または準平行のレーザ・ビームを示す図。
【図2q】孔の横方向の光景を示す図。
【図2r】さらなる孔の横方向の光景を示す図。
【図2s】さらなる孔の横方向の光景を示す図。
【図2t】図2iに開示されたプレートの前部の光景を示す図。
【図2u】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2v】2つのレーザ源を示す図。
【図2w】2つのレーザ源を示す図。
【図2x】ビーム・ホモジナイザを詳細に示す図。
【図3】光学距離測定装置を示す図。
【図3a】皮膚、孔、および光学距離測定装置のレーザ・ビームを示す平面図。
【図3b】前腕とその上のレーザ・マイクロポレータ装置の断面を示す図。
【図4a】マイクロポレータに適した先端の断面を示す図。
【図4b】この先端の前面を示す図。
【図4c】この先端の透視図。
【図4d】さらなる先端の前端部を示す図。
【図5a】微小穿孔の適切な形状の実例の透視図。
【図5b】微小穿孔の適切な形状の実例の透視図。
【図5c】微小穿孔の適切な形状の実例の透視図。
【図5d】微小穿孔のアレイを備えた皮膚を示す平面図。
【図5e】皮膚表面に取り付けられた薬剤容器を備えた孔のあいた皮膚の断面を概略で示す図。
【図5f】微小穿孔のアレイを備えた皮膚を示す平面図。
【図6a】すべての微小孔の浸透表面を経時的に示す図。
【図6b】すべての微小孔の浸透表面を経時的に示す図。
【図7】所定の浸透表面および作り出された浸透表面を示す図。
【図8】薬剤の経時的な供給を浸透表面と組み合わせて示す図。
【図9a】薬剤の経時的な血清中濃度を、同量の薬剤であるが異なる浸透表面と共に示す図。
【図9b】薬剤の経時的な血清中濃度を、同量の薬剤であるが異なる浸透表面と共に示す図。
【図10a】ビーム成形を伴わない場合と伴う場合の強度分布を概略で示す図。
【図10b】ビーム成形を伴わない場合に作り出される孔を示す図。
【図10c】ビーム成形を伴う場合に作り出される孔を示す図。
【図10d】ビーム成形を伴う場合に作り出される孔を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ・マイクロポレータ、および生物組織の透過性を高めるためにこのレーザ・マイクロポレータを操作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチン、抗原提示細胞、治療用抗体、タンパク質、ペプチド、およびDNA構成要素を含む多くの新たな薬剤および既に有る薬剤もまた、疾病および疾患のためのさらに良好で効果的な治療のために開発されてきた。特に近年の分子生物学およびバイオテクノロジーの進歩に起因して、遺伝子組換え型ヒトインスリン、成長ホルモン、卵胞刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン、エタネルセプト、およびエリスロポエチンなどのますます強力な医薬剤が利用可能である。しかしながら、これらの新たな薬剤の使用における1つの重大な制限は、特に薬剤が治療に効果的な速度と量とで1つまたは複数の生体バリヤを横切って移送される必要がある場合に有効な薬剤供給システムをしばしば欠如することである。
【0003】
殆どの薬剤は経口投与される。しかしながら、多くの薬剤、特にタンパク質に基づいた薬剤(例えばタンパク質、ペプチド、および/または核酸など)は胃腸管における分解性、腸の膜における貧弱な吸収、および/または肝臓による初回通過分解のせいでこの方式では効果的に吸収されることができない。したがって生体利用効率は極めて貧弱であり、それにより、極めて高い薬剤投与率が適用されなければならない。そのような難題を回避するために、非経口投与が採用されることが可能である。通常ではそのような投与法は標準的な注射器またはカテーテルを使用した患者の循環器系または筋肉組織または皮内もしくは皮下組織への薬剤の注射に頼っている。特に小児科では、非常の場合には骨内適用が使用される。残念ながら、針注射は多くの患者でしばしば針恐怖症、これに続く痛み、および/または皮膚への局所的損傷を誘発する。さらに、特に針注射に基づいた体液へのアクセスが長期の薬剤投与について必要とされる場合、数多くの課題が生じる。例えば、患者の血管系に長期にわたって残されるとき、針は詰まる傾向を有する。また、患者の移動性も概して制限される。さらに、注射針およびカテーテルは感染を生じさせる可能性もある。さらに、注射針の安全な投棄は難しくかつ高額の費用がかかり、注射針の再生による感染率は高い。
【0004】
場合によっては、膜貫通型の供給が採用されることが可能であり、これは普通では皮膚などの生体膜を横切る薬剤の受動的拡散に頼っている。しかしながら、膜貫通型、特に経皮供給はしばしば、数多くの薬剤に関して皮膚は比較的有効なバリヤを与えるので広範に応用可能ではない。皮膚の最外層である角質層は、よく知られている皮膚のバリヤ特性に主に関与する。したがって、約500ダルトンを超える分子量の薬剤または他の分子の体内への経皮流束に対する最大のバリヤを与えるのがこの層である。親油性または親水性、極性および可溶性もやはり経皮透過性にとって重要な要素である。いったん薬剤が表皮層の下にある真皮領域に達すると、薬剤は血液循環を介して急速に系の深い組織層および他の部分へと拡散する。皮膚を貫通する薬剤供給の速度を改善するために、化学的エンハンサ、イオントフォレーゼ、エレクトロポレーション、超音波、および加熱素子が使用されてきた。しかしながら、特定の薬剤に応じて、そのような技術は治療レベルの供給を与えるのに頻繁に失敗する。さらに悪いことには、そのような技術は長期の薬剤供給に関して望ましくない皮膚の反応をときどき引き起こすであろう。
【0005】
結果として出血につながらない方式で患者の皮膚に穴をあけるようにレーザを使用して経皮供給を改善するためにいくつかの試みが為されてきた。そのような穿孔法は通常では角質層または角質層と表皮の両方を通って貫通する。これは皮膚を通る薬剤供給を可能にする。欧州特許第1133953号明細書に述べられたそのようなレーザの1例は最大で0.5mmの幅と最大で2.5mmの長さを備えたスリット形状の穿孔を与える(これおよび他の引用文は全文を本願明細書に援用する)。残念ながら、そのような穿孔を通じた薬剤供給率は限られている。この穿孔もやはり望ましくない皮膚の反応を引き起こし、皮膚の穿孔は高い頻度で痛みを生じさせる。穿孔は事後の貼付薬の貼り付けを必要とする。しかしながら、そのような薬剤投与はしばしば一貫性のない薬剤用量、不都合な用法、およびときには感染にさえ結果としてつながる。
【0006】
米国特許第6328733号明細書は、ガウスレーザ・ビームを使用して毛髪移植のために頭皮に一連の穴またはスリットを作り出すレーザ・ポレータを開示している。作り出される穴またはスリットのサイズおよび深さは比較的大きく、これらは経皮薬剤供給に適していない。
【0007】
国際公開第00/78242号パンフレットは、ガウスレーザ・ビームを使用して角質層に微小孔を形成するためのレーザ・ポレータを開示している。このレーザ・ポレータの目的は流体中に存在する分析対象物質を検査するために間質液を簡単に集めることである。このレーザ・ポレータで作り出される微小孔もやはり経皮薬剤供給に適していない。このレーザ・ポレータのさらなる欠点は、電池などの携帯型電源を供給されるとレーザ・ポレータの合計動作時間が極めて短いことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、当該技術で知られている薬剤投与のための様々な方法および装置が存在するが、それらのすべてまたは殆どすべてが1つまたは複数の不都合を難題にしている。中でも、現在知られている方法および装置は制御されて再現性のある薬剤の投与を可能にすることができない。現在知られている方法および装置は、向上した安全性、効率、および利便性を伴った薬剤供給の即時の開始と中断を提供することもやはりできない。現在知られている装置は微小孔を形成する工程でもやはり制限を受ける。現在知られている装置はまた、携帯不可能であるか、または携帯型電源を供給されても相応の時間的期間にわたって運転されることができない。したがって本発明の目的は、組織または細胞の膜などの生体膜を横切って薬剤および生体分子を含む分子の膜貫通型供給を改善するための装置および方法を提供することである。
【0009】
この問題は請求項1の特徴を有するレーザ・マイクロポレータで解決される。従属請求項2から35は場合によって付け加えられる特徴を開示している。この問題はさらに特許請求項36の特徴を有するレーザ・マイクロポレータを操作するための方法で解決され、従属請求項37から52は場合によって付け加えられる特徴を開示している。この問題はさらに特許請求項53から63の特徴を有する方法で解決される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る装置および方法は、パルス・レーザ・ビーム、およびこのレーザ・ビームを生体膜上の複数の異なる場所に方向付けて複数の個別微小孔または孔から成る微小穿孔を作り出すための偏向器を利用する。この装置はレーザ・ビーム成形装置を有しており、これは特に輪郭のくっきりした強度分布を得るため、および/または特に生体膜上の集束範囲、焦点深度、集束点または焦点でビームの均質な強度分布を得るためにレーザ・ビームのエネルギー強度分布作り直すために使用される。そのようなビームは薬剤供給のために非常に適切な形状の微孔を生成することを可能にする。そのようなビームは削減されたエネルギーで微小孔を作り出すことをさらに可能にし、これは携帯型マイクロポレータ、好ましくは超小型で電池駆動のマイクロポレータを構築することを可能にする。レーザ・エネルギーのレベルは生体膜、特に角質層および皮膚の表皮の部分を除去する範囲内である。これは皮膚の個別微小孔に作用し、これが結果として様々な物質に対する皮膚の透過性の増大につながる。これは皮膚に塗布される物質の経皮または皮内供給を可能にする。本発明は生物の選択部位への浸透物質の膜貫通型流動速度を促進するための方法を提供し、この方法は生物の前記選択部位の前記浸透物質に対する透過性を、生体膜に複数の微小孔を形成するレーザ・マイクロポレータで前記生体膜を前記選択部位で穿孔することによって促進する工程、それにより、前記浸透物質の流動に対する前記生体膜のバリヤ特性を削減する工程を含む。
【0011】
本願で使用される「穿孔」、「微小穿孔」は、ヒトまたは哺乳動物の皮膚、粘膜または器官などの生体膜もしくは組織、または生物もしくは植物の外層の中に、または貫通して所望の深さに小さい穴もしくは孔、または複数の穴もしくは孔を形成することを意味し、それによって体内への浸透物質または薬剤の通過に対するこの生体膜のバリヤ特性を減少させる。本願で言及する微小穿孔は直径で1ミクロン以上、深さで少なくとも1ミクロンである。
【0012】
本願で使用される「微小孔」、「孔」または「個別孔」は、微小穿孔法によって形成された開口を意味する。
本願で使用される「アブレーション」は、生体膜もしくは組織のいくつかの部分を含む細胞または他の構成要素を含むことも可能な物質の制御された除去である。これは以下、すなわちそのような物質の蒸発可能な成分のいくらかもしくは全部が、蒸発が起こるポイントまで加熱され、結果として生じるこの相変化に起因する体積の急激な膨張がこの物質および考え得るいくらかの隣接物質が除去部位から取り除かれる原因となるときに放出される運動エネルギー;穿孔部位でのプラズマ形成および/または導電物質を介した加熱による穿孔部位の組織のいくらかまたは全部の熱的または機械的分解のいずれかによって引き起こされる。
【0013】
本願で使用される「組織」は、限定はされないが細胞、生体膜、骨、コラーゲン、生物のいくらかの部分を含む流体などを含む生物のいずれかの構成要素を意味する。
本願で使用される「穿刺」または「微小穿刺」はヒト、哺乳動物、鳥の皮膚または粘膜層、または植物の外側組織層に全体的もしくは部分的に穴を開けるために機械的、水圧、音波、電磁気的、または熱的手段を使用することを意味する。
【0014】
「アブレーション」および「穿刺」が穿孔の同じ目的、すなわち場合によっては下地の組織に重大な損傷を伴わずに生体膜に穴もしくは孔を作り出す目的を達成する程度まで、これらの用語は置き換え可能に使用されることが可能である。
【0015】
本願で使用される「穿刺表面」は、除去または穿刺処理された生体膜の外側表面の穴もしくは孔の表面を意味する。
本願で使用される「経皮の」、「皮膚を通しての」、「膜貫通型の」、「経粘膜の」、「頬を通しての」、「組織を通しての」または「組織内の」という用語は、皮下層、および筋肉、骨または他の下地組織などのさらなる組織に作用するように意図された浸透物質を供給するための生体膜もしくは組織の中への、またはこれらを通る浸透物質の通過を意味する。最も好ましい実施形態では、薬剤の効果的な治療血中レベルを達成するために経皮供給は浸透物質を血液中に導入する。さらなる好ましい実施形態では、浸透物質の経皮供給はランゲルハンス細胞を介して免疫応答を誘発する。これらの用語はまた、体内に存在する分子(「分析対象物質」)の生体膜もしくは組織を貫通した外部への通過を意味し、それにより、分析対象分子は体の外側で集められることが可能になる。
【0016】
本願で使用される「皮内」という用語は、真皮層に浸透物質を供給し、その中で薬剤の効果的な治療または美容上の組織中レベルを達成し、または薬剤の量を或る一定の時間にわたって生体膜もしくは組織中に蓄えることで例えば角質層の下の真皮層の状態を治療するための生体膜もしくは組織の中への、またはこれらを通る浸透物質の通過を意味する。
【0017】
本願で使用される「浸透表面」は、微小孔もしくは孔を取り囲む組織の表面を意味する。「浸透表面」は個別の微小孔もしくは孔の表面を意味すること、またはすべての個別微小孔もしくは孔のすべての個別表面の合計を意味する合計浸透表面を意味することも可能である。
【0018】
本願で使用される「補正後の浸透表面」は、因数または特定の量で、例えば角質層の部分である微小孔もしくは孔の表面を差し引くことによって補正された浸透表面を意味する。
【0019】
本願で使用される「生物活性薬剤」、「浸透物質」、「薬剤」、または「薬理活性薬剤」もしくは「供給可能な物質」という用語、または他のいずれの類似した用語は、以前に当該技術で知られている方法および/または本発明に教示される方法による供給に適したいずれかの化学的または生物学的物質もしくは化合物を意味し、限定はされないが(1)生物に予防効果を有して望ましくない生物学的効果を防ぐ(例えば感染を防ぐ)こと、(2)物質(例えばビタミン類、電解質など)の欠乏または過剰を緩和すること、(3)疾病によって引き起こされる状態を緩和する(例えば疾病の結果として引き起こされる痛みまたは炎症を緩和する)こと、(4)生物から疾病を軽減するか、削減するか、または完全に取り除くこと、および/または(5)生物の生存能力のある組織層の中への化合物もしくは製剤の配置(これは特定の分析対象物質の濃度の変化に(場合によっては可逆的な方式で)反応し、その際、この領域への(電磁気的、機械的、または音響的であってもよい)エネルギーの適用に対するこの化合物もしくは製剤の測定可能な反応の検出可能な変化を引き起こす)を含む場合もある生物学的または薬理学的効果などの望ましい効果を誘発する。この効果は局所麻酔効果を供給するなどの局所性であることも可能であり、全身性であることも可能であり、または非全身性、例えば放射線不透過性の物質、造影剤または組織に灌注するための液体の投与であることも可能である。本発明は微小穿孔技術の効力による以外の新規の浸透物質または新たな部類の活性薬剤に引き込まれるのみでなく、通常では経皮、経粘膜、膜貫通型または頬を通じての供給に使用されない物質がここで使用可能になり得る。さらに正確に述べると、当該技術に存在し、または後になって能動性もしくは受動性薬剤として確立されることが見込まれ、かつ本発明による供給に適している生物活性薬剤または浸透物質の供給の様式に向けられる。
【0020】
そのような物質は普通では生物の中に、皮膚を含めた体表面と膜経由で、ならびに注射針、水圧、または超高速度法を含めた注射によって供給される広範な部類の化合物を含む。概して、限定はされないがこれは治療用抗体、抗原提示細胞(APC)、タンパク質とペプチドを含むポリペプチド(例えばインスリン);卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)を含む放出因子;炭水化物(例えばヘパリン);核酸;ワクチン;および薬理活性薬剤(例えば抗生物質および抗ウィルス薬などの抗感染薬);鎮痛薬および鎮痛薬の組合せ;食欲抑制薬;抗蠕虫薬;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗痙攣薬;抗うつ剤;抗糖尿病薬;下痢止め薬;抗ヒスタミン剤;抗炎症薬;抗片頭痛製剤;制嘔吐薬;抗腫瘍薬;パーキンソン病治療薬;かゆみ止め薬;抗精神病薬;解熱剤;鎮痙薬;抗コリン作用薬;副交感神経興奮薬;交感神経興奮薬;キサンチン誘導体;カリウムおよびカルシウムチャンネル遮断薬、ベータ受容体遮断薬、アルファ受容体遮断薬、および不整脈治療剤を含む循環器官用薬剤;利尿剤と抗利尿剤;冠状動脈、末梢血管および脳血管を含む血管拡張剤;中枢神経系刺激剤;血管収縮薬;充血除去剤を含む咳止めおよび風邪薬;エストラジオール、テストステロン、プロゲステロンおよび他のステロイド類を含むホルモン、およびコルチコステロイドを含む誘導体および類似体;睡眠薬;麻酔剤;免疫抑制剤;筋肉弛緩剤;副交感神経遮断薬;交感神経遮断薬;神経刺激薬;鎮静剤;およびトランキライザー、ならびに化粧品と薬用化粧品を含む。本発明の方法によって、イオン化と非イオン化との両方の浸透物質が、10ダルトン未満から1000000ダルトンを超える範囲にわたる分子量を備えた物質を含むいずれかの分子量の浸透物質、または1mg以下もしくはこれを超える重量を有するナノ粒子または微粒子として供給されることが可能である。
【0021】
本願で使用される「効果的な」量の浸透物質は、所望の局所性または全身性の効果および妥当な損益比でいずれかの治療に参加する性能を与えるのに十分な量の化合物を意味する。局所性の効果はまた、放射線不透過性物質または造影剤または腎臓を検査するための物質などの浸透物質の十分な局所的濃度であってもよい。
【0022】
本願で使用される「基剤」または「賦形剤」は、他の浸透物質と共に投与されるのに適した使用量で有意の薬理活性を伴わない担体物質に言及し、当該技術で知られているいずれかのそのような物質、例えばいずれかの液体、ゲル、溶剤、液体希釈剤、可溶化剤、ミクロスフィア、リポソーム、微粒子、脂質複合体、浸透促進剤などを含み、使用される量では十分に無毒であり、投与される薬剤と有害な方式で相互作用しない。本願における使用のための適切な基剤の例は、水、緩衝液、鉱油、シリコーン、無機もしくは有機のゲル、水性エマルジョン、様々なアルコール、液状の糖、シクロデキストリン、界面活性剤、脂質、微粒子およびナノ粒子、ワックス、ワセリン、および様々な他の油類、ポリマー材料およびリポソームを含む。
【0023】
本願で使用される「生体膜」は、生命体の1つの領域を他から分離し、多くの例では生命体を外部環境から分離する生命体内部に存在する組織物質を意味する。したがって、皮膚、粘膜および口腔内の膜が植物の外層と同様に含まれる。また、細胞、臓器、歯、骨、または血管の壁もこの定義の中に含まれるであろう。
【0024】
本願で使用される「粘液膜」または「粘膜」は、口、舌、中咽頭、鼻咽頭、喉頭、気道、尿生殖路、胃腸管、肛門、腸、眼、結膜、角膜の上皮層、および内視鏡装置を介してアクセス可能な例えば膀胱、結腸、肺、血管、心臓などのすべての他の表面に言及する。
【0025】
本願で使用される「口腔内の膜」は口の粘膜を含む。
本願で使用される「経皮流動速度」は、被験体の皮膚を通って外に出るいずれかの分析対象物質の通過速度、または外部環境から生命体を分離する皮膚の中に、またはこれを通って入るいずれかの生物活性薬剤、薬、薬理活性薬剤、染料、粒子または顔料の通過速度に言及する。「経粘膜流動速度」および「頬を通じての流動速度」は粘膜および頬の膜を通るそのような通過に言及し、「膜貫通型流動速度」はいずれかの生体膜を通るそのような通過に言及する。
【0026】
本出願の背景で使用される「個別の孔」という用語は、概して生体膜から延びる通路である微小孔または孔に言及する。生体膜は例えば皮膚であり、このとき個別の孔は皮膚の表面から角質層全体または大部分を通って延びる。最も好ましい実施形態では、個別の孔の通路は角質層全体と表皮の部分を通って延びるが真皮の中へは延びず、それにより出血は起こらない。最も好ましい実施形態では、個別の孔は10μm(新生児については5μm)と150μmとの間の深さを有する。
【0027】
本願で使用される「初期の微小穿孔」という用語は、作り出される孔の合計数に言及する。「初期の微小穿孔データセット」は初期の微小穿孔が規定される場合のデータのセットに言及する。このデータセットは断面、深さ、形状、浸透表面、個別の孔の合計数、生体膜上の孔の幾何学的配列、孔と孔の間の最小距離、およびすべての個別の孔の合計浸透表面から成る群から選択される少なくとも1つのパラメータを含む。初期の微小穿孔データセットは、すべての個別の孔の形状および幾何学的配列を規定することが好ましい。初期の微小穿孔データセットは、作り出される初期の穿孔が正確に規定され、かつ生体膜上の多様な場所、同様に多様な対象物、被験体または個人で再現されることが可能になるように、後にマイクロポレータを使用して作り出されるであろうすべての個別の孔の形状および幾何学的配列を規定することが好ましい。
【0028】
本願で使用される「ビーム成形装置」という用語は、レーザ・ビームが輪郭のくっきりしたものになるように、かつ/または均質な強度分布になるようにレーザ・ビームのエネルギー強度分布作り直すための装置に言及する。
【0029】
本願で使用される「ビームの均質な強度分布」という表現は、均質なエネルギー強度分布または一様な断面的エネルギー強度分布を有するビームまたはビーム・スポットに言及する。そのようなビームまたはビーム・スポットは、ビーム・ホモジナイザを有するレーザ・ビーム成形装置を使用することによって達成される。そのようなビーム・ホモジナイザは、例えば屈折性の平凸マイクロレンズまたは回折光学素子(DOE)を使用するマイクロレンズ、好ましくはマイクロレンズ・アレイを含んでもよい。ビーム均質化用光学素子は、通常ではガウス強度分布を備えたレーザからの出力ビームを一様な断面的エネルギー分布を有する均質ビームに作り直す。
【0030】
穿孔の後、薬剤などの物質が好ましくは経皮用当て布の形態で皮膚に貼付される。この経皮用当て布は他の服用形態を上回る様々な有意の臨床的利点を提供する。経皮薬剤供給は患者への薬剤の制御された放出を提供するので所定の血中レベル・プロファイルを可能にし、結果として減少した全身性副作用、およびときには他の服用形態を上回る改善された効能につながる。付け加えると、経皮用当て布は使い勝手が良く、便利であって痛みを伴わず、かつ複数日数の投薬を提供する。したがって経皮用当て布は改善された患者のコンプライアンスを提供する。
【0031】
本発明は個別の孔を作り出し、かつ生体膜、例えば皮膚に浸透表面を作り出すように患者の皮膚に孔を設けるためにレーザを使用する。穿孔は、標的組織の表面をレーザからの電磁エネルギーのパルスもしくは複数パルスで照射することによって形成される。処置に先立って、標的組織に正確に孔を設けるため、健全な近接組織の望ましくない損傷を排除するため、および十分なサイズの浸透表面を作り出すために、波長、エネルギー・フルエンス(照射面積で除算されたパルスのエネルギー)、パルス時間幅、照射スポットのサイズ、および個別の孔の幾何学的配列が適切に選択される。加えられる複数のパルスは個別の孔を取り巻く壁の再現性のある形状を有する個別の孔を作り出すことを可能にし、個別の孔の再現性のある下端部の形状を作り出すこともやはり可能にすることが好ましい。壁の表面および下端部、特に壁の表面と表皮または真皮の部分である下端部の表面の合計は重要であり、なぜならばこの合計の表面は大部分の浸透物質がこれを通って組織、例えば表皮と真皮の中へと通過する浸透表面を形成するからである。好ましい実施形態では、このレーザ・マイクロポレータは生体膜上に平行または準平行のレーザ・ビームを加え、これは個別の孔の正確な形状全体にわたる制御を容易にする。本願で使用される「平行または準平行のレーザ・ビーム」という用語は、皮膚上で焦点が合わず、ビーム・エネルギーの最低限90%に関して3°未満から5°の逸脱を有するレーザ・ビームに言及する。平行または準平行のレーザ・ビームを使用する本発明によるレーザ・マイクロポレータは、高度に再現性のある浸透表面を備えた個別の孔の形成を可能にする。さらなる好ましい実施形態では、このレーザ・マイクロポレータは生体膜上にレーザ・ビームの焦点を合わせる光学素子を有する。さらなる実施形態では、レーザは多重モードで動作するように設定され、ここではさらに良好なエネルギー強度分布のためにビームは多数のガウス・スポットを有する。さらなる好ましい実施形態では、このレーザ・マイクロポレータはビームの均質な強度分布、特に集束範囲における均質な強度分布を得るためにレーザ・ビームのエネルギー強度分布を作り直すレーザ・ビーム成形装置を有する。適切なビーム成形装置は、例えば回折光学素子(DOE)または屈折性ビーム・ホモジナイザ(ROE)であってもよい。そのようなビームは薬剤供給に極めて適した形状の微小孔、特に比較的鋭い端面を備えた微小孔を作り出すことを可能にする。そのようなビームはまた、余分な組織が殆どまたは全く除去されず、かつ作り出された微小孔が余分な頂点を有さないでビームの全エネルギーが適切な形状の微小孔を形成するのに使用されるので少ないエネルギーで組織を除去すること、またはエネルギーを節約することを可能にする。さらにエネルギーを節約するためにいくつかのさらなる特徴が追加されることが可能であり、これは携帯型で、例えば電池駆動のレーザ・マイクロポレータを起動するのに必要である。パルス・ビームは2.8ミクロンと3.1ミクロンとの間の波長または200ナノメートル未満の波長を有することが最も好ましく、なぜならばこれらの範囲内で水が高い吸光係数を有するからである。そのようなビームはまた、波長が特にヒトの皮膚を除去するのに、したがって限られたエネルギーで複数または多量の孔を作り出すのに極めて効率的であるので、わずかなエネルギーでマイクロポレータを起動すること、またはエネルギーを節約することを可能にする。2.8ミクロンと3.1ミクロンとの間の波長を作り出すためにQ−スイッチレーザ源が使用されることが最も好ましい。レーザ源をポンプ駆動するために高効率レーザ・ダイオードが使用されることが最も好ましい。パルス当たり必要なエネルギーが、例えばヒトの皮膚に関して1平方センチ当たり1ジュールのアブレーション閾値の上に留まるために過不足なく高くなるように、ビームの直径は1mm未満であることが最も望ましい。1μs未満の時間幅を有するパルスが使用されることが好ましく、50nsと150nsとの間であることが最も好ましい。そのような時間幅は、3ミクロンの波長での水の熱緩和時間が約1μsであるので微小孔を取り巻く組織の熱的損傷を最小へと減少させる。したがって、皮膚内の熱伝導は極めて低く、極めて高いパルス繰り返し速度によって与えられるのみである。150ns未満の時間幅は、高いパルス繰り返し速度でもやはり熱緩和が低いという事実に起因して微小孔を取り巻く組織の加熱をさらに減少させる。これらの短いパルス幅のさらなる利点はプラズマ・アブレーションの部分的発生およびキャビテーションバブルの発生である。これらのバブルは細胞内結合を乱す高い圧力波を生じさせ、これが組織を通る浸透物質の流動速度を付加的に増大させる。これらの短いパルス幅のさらなる利点は、浸透物質の流動およびランゲルハンス細胞の活性化を引き下げる細胞密閉メカニズムの減退である。50μsを超えるパルス幅を備えた自励レーザは巻き添え組織損傷類似の細胞密閉を孔に隣接する領域に生じさせ、この領域は約15から25ミクロンの深さを有する。低い繰り返し速度と1μs未満のパルス幅を備えた短パルス・レーザ、または150ns未満のパルス幅を備えた高い繰り返し速度のレーザは、2ミクロン未満から4ミクロンの巻き添え損傷を生じさせる。熱緩和は、これによって熱が伝導で組織または水を通って拡散する過程である。レーザ曝露が熱緩和時間未満であるとき、熱的損傷は最小限である。皮膚の熱緩和時間は約1msであると見込まれ、水の熱緩和時間は約1μsであると見込まれる。そのようなパルス長以上のレーザ光が組織に加えられれば、周囲の組織への高い熱移動が起こるであろう。好ましい実施形態では皮膚または水の熱緩和時間よりも下である短いパルス印加が理由で組織は損傷を受けない。両方の効果はパルス当たりの必要エネルギーを引き下げることを可能にする。これらの方策は、単独または相互の組合せで、生体膜に初期の微小穿孔を作り出すためにわずかなエネルギーのみを必要とするレーザ・ポレータを構築することを可能にし、この初期の微小穿孔は100個と10000個の間の個別の孔を有することが好ましい。レーザ源のパルス繰り返し周波数は好ましくは200Hzよりも高く、最も好ましくは1kHzよりも高い。これは、初期の微小穿孔すべてを作り出すための合計時間が10秒未満を要することが好ましいことを意味する。この短い時間的期間の利点は、初期の微小穿孔の形成および作成の間に発生した熱を蓄えるためにレーザ・ポレータの素子、例えば電子素子またはハウジングの熱容量が使用され得ることである。初期の微小穿孔を作り出すための時間的期間がそのように短いので、素子はオーバーヒートせず、初期の微小穿孔終了後に冷えることができる。したがって好ましい実施形態では、レーザ・ポレータはさらなるエネルギーを浪費する換気装置のような能動性の冷却手段を必要としない。レーザ源、光学系、偏向器、レーザ・ビーム成形装置、およびポレータ制御器を有するこのレーザ・ポレータは、レーザ・ポレータのユーザの手に快適に適合するサイズ、形状、および重量にされたハウジングの中に嵌め込まれることが可能である。このレーザ・ポレータはハウジングの中に配置された電源もやはり含むことが最も好ましい。この電源は電池、例えば再充電可能または取り替え可能な電池から成ることが可能であるが、しかし燃料電池、電力キャパシタ、または光起電力素子などの他のタイプの電源から成ることもやはり可能である。組み合わされる素子に応じて、ハンドヘルドのレーザ・ポレータは1つの単一電源で約100回の初期の微小穿孔を作り出すことが可能であり、各々の微小穿孔は例えば100個の個別の孔を含む。電源は後に再充電されなければならない。
【0032】
好ましい実施形態では、レーザ・ビームの少なくとも2つのパルスが同じ孔に向けられる。偏向器は第2、第3、またはさらに多くのレーザ・ビームが同じ孔に向けられることができるように構築または制御される。この同じ孔の多重標的化は、比較的低エネルギーのレーザ・ビームを使用することもやはり可能にする。これは、約3ミクロンの波長でヒトの皮膚における最大光学貫通深さが例えば約2から4ミクロンであるので意味をなす。したがって、1つの単一レーザ・パルスで70から100ミクロンの極めて深い孔を作り出すことは極めて非効率的である。この多重標的化はまた、エネルギーを節約することおよび携帯型電源で動作する小型のレーザ・ポレータを構築することを支援する。70から200ミクロンのそのような深い孔は、例えば表皮を貫通して真皮の血管に至る親油性および大型の親水性浸透物質の一層高い浸透速度にとって必要とされる。レーザ・ビームは同じ孔に最大で10倍、または最大で50倍にさえ向けられることも可能であり、それにより、ビームは同じ孔に連続して向けられることが好ましく、したがって生体膜の中に微小穴を「ドリルあけ」する。ビームはまた、複数の他の孔のうちの1つに当てられた後に複数の孔のうちの単一の孔に再び向けられることが可能である。
【0033】
好ましい実施形態では、このレーザ・ポレータは特徴、例えば個別の孔の深さを分析する手段を有する。このフィードバック・ループは、例えば、個別の孔の下端部が角質層の中にあるか否か、表皮の中にあるか否か、または真皮の中にあるか否かを、反射光、または無傷の組織または蒸発組織または組織の羽状毛の蛍光に基づいて検出するための分光器であってもよい。さらなる実施形態では、このフィードバック・ループは穿孔によって引き起こされる皮膚のインピーダンスの減少を検出および分析するためのインピーダンス測定システムであってもよい。さらなる実施形態では、このフィードバック・ループは、共焦点顕微鏡、レーザ三角測量器、飛行時間測定型測定、干渉計、光干渉断層撮影、ライン・プロジェクションまたはレーザ走査装置に類似した測定システムを含んでもよい。さらなる実施形態では、このフィードバック・ループは孔を照明する、例えば孔の外側から孔を照明する光源を有し、孔の内側に発生する影を分析してもよい。このフィードバック・ループは個別の孔の深さを測定するための装置、例えば個別の孔の下端部または全体的3D構造を走査するレーザ・ビームを有する装置であってもよい。レーザ・ビームが個別の孔の中に発射される度に毎回個別の孔の特徴を分析することが特に有利である。この方策は個別の孔の各々の実際の深さについての連続的な情報を提供する。隣接する組織の特徴を予測するために孔の分析は、例えば、各々のパルスの後または統計学的分析のために有用なサンプリング速度で無作為のサンプリングによって実行されることが可能である。
【0034】
最も好ましい実施形態では、フィードバック・ループはレーザ源を作動させる穿孔制御器に動作可能に連結される。穿孔制御器は個別の孔の測定された特徴を所定の値と比較し、個別の孔の特徴が予め設定された値に相当すれば個別の孔にさらなるレーザ・パルスを発射するのを停止する。個別の孔の深さがモニタされることが最も好ましい。これは、材料に穴をドリルあけするのと同様の個別の孔の形成を可能にし、ここでは穴、例えば孔の深さが繰り返し測定される。個別の孔の最終深さの精度は、例えば、1パルス当たりで少ないレーザ・エネルギーが適用される(これは1パルス当たりでさらに少量の生体膜が除去される原因となる)場合に改善されることが可能である。レーザ・エネルギーは、例えば最終発射中にさらに低いレーザ・エネルギーを印加するため、正確な最終深さで個別の孔を形成するために個別の孔の深さの関数として変えられることが可能である。これは、浸透表面が正確もしくは極めて正確であると判っている個別の孔を作り出す。したがって、すべての個別の孔の合計の浸透表面もやはり判定されることが可能である。なおもさらに、例えば分光器を使用することによって表皮が始まる深さを知ることが可能である。したがって、角質層の深さが測定されることが可能である。この情報を考慮に入れると、補正された浸透表面が算出されることが可能である。この補正された浸透表面は、例えば表皮の浸透表面のみを含む。塗布される薬剤に応じて経皮流動速度はしばしば、例えば真皮の下側領域と血液中への薬剤の高い通過量を可能にする浸透表面の量によって決まるので、これは重要である。補正された浸透表面(これは表皮および/または真皮の浸透表面を意味する)を知ることは患者への薬剤の経皮供給をさらに良好に制御および予測すること、例えば患者への薬剤の放出をさらに良好に制御および予測することを可能にする。したがって、本発明に係る方法は、皮膚または生体膜を通る経皮流動速度の制御または予測を可能にする。
【0035】
一つの実施形態では、孔の深さを見積もるために統計学的データが使用されてもよい。波長、パルス長、強度、ビーム形状、またはビーム径などのレーザ・パラメータのうちの少なくとも1つに関して、印加されるレーザ・パルス当たりの除去深さは、例えば前記レーザ・パラメータの関数で作り出される複数の孔の統計学的分析によって識別されることが可能である。孔の形成時に適用されるレーザ・パラメータに基づいて、1パルス当たりで除去される深さが計算されることが可能であり、同じ孔に印加されるパルスの数を知ると、形成される孔の合計深さが見積もられることが可能である。この方法は、フィードバック・ループの必要性を伴わずに形成される孔の深さを見積もることを可能にする。
【0036】
一つの実施形態では、レーザ・ビームの幅および/またはレーザ・ビームのエネルギー密度が調節されることが可能であり、これは個別の孔の幅ならびに1パルス当たりで除去される深さを調節することを可能にする。
【0037】
このレーザ・マイクロポレータは、組織を加熱するか、または組織のプラズマを作り出すために、Er:YAG、Er/Pr:YAG、パルスCO2、Ho:YAG、Er:YAP、Er/Cr:YSGG、Ho:YSGG、Er:YSGG、Er:GGSG、Er:YLF、Tm:YAG、CrTmEr:YAG、Ho/Nd:YAG、CTE:YAG、ダイオード・レーザ、ファイバ・レーザ、OPOおよびOPA、自由電子レーザから成る群から状況に応じて選択されるレーザ源を使用することが好ましい。
【0038】
このレーザ・マイクロポレータは、0.05ミクロン(マイクロメートル)と15ミクロンとの間、好ましくは2ミクロンと10ミクロンとの間、特定すると2.8ミクロンと3.1ミクロンもしくは3.15ミクロンとの間の波長を有するレーザ源を使用することが好ましい。水の最大吸収は中間赤外領域にあるので2.95ミクロンの波長が使用されることが最も好ましい。
【0039】
このレーザ・マイクロポレータは、0.05mmと0.5mmとの間の幅を有するレーザ・ビームを発生する光学装置を使用することが好ましい。好ましい実施形態では、このレーザ・ビームは円形、楕円形、または方形の形状を有し、円形レーザ・ビームの幅は直径であり、方形レーザ・ビームの幅は方形または楕円形の長さのうちの1つである。
【0040】
このレーザ・マイクロポレータは、1nsと1000μsとの間、特定すると1nsと1μsとの間、最も好ましくは10nsと50nsとの間、または50nsと150nsとの間にあるパルス時間幅を有するレーザ源を使用することが好ましい。
【0041】
このレーザ・マイクロポレータはまた、1mJ/cm2と100000J/cm2との間、特定すると10mJ/cm2と5J/cm2との間のレーザ・ビームのエネルギー密度を有するレーザ源を使用することが好ましい。
【0042】
本発明の1つの利点は、生体膜上で破壊される表面が小さいことであり、これは自由神経終末のわずかな損傷、または無損傷の原因となる。本発明は痛みを引き起こさず、神経系のどのような不可逆的損傷も殆ど生じさせず、軽微な長期効果を生じさせるのみである。破壊される表面が小さいので、メラニン形成細胞の損傷を無視することができる。これは色素沈着に殆ど異常を生じさせず、これは一方では美的問題であり、他方ではメラニン形成細胞がUV放射(太陽光、サンルーム)によって引き起こされる皮膚癌を防止するための重要な防護因子である。
【0043】
生体膜に孔を設けるためのこのマイクロポレータは、例えば同一出願人のPCT特許出願である2005年4月18日に提出された「Microporator for porating a biological membrane and integrated permeant administering system」という表題のPCT欧州特許出願公開第2005/051702号パンフレットに開示されたシステムのような一体型薬剤投与システムを含むかまたはその一部であってもよい。生体膜は、例えば同一出願人のPCT特許出願である2005年4月18日に提出された「Method for creating a permeation surface」という表題のPCT欧州特許出願公開第2005/051703号パンフレットに開示された方法に従って孔を設けられてもよい。すべての引用文献はその全文が本願明細書に援用される。生体膜に孔を設けるためのこのマイクロポレータは、例えば同一出願人のPCT特許出願である2006年1月31日に提出された「A system for transmembrane administration of a permeant and method for administering a permeant」という表題のPCT欧州特許出願公開第2006/050574号パンフレットに開示されたシステムのような浸透物質の経皮投与のためのシステムを含むかまたはその一部であってもよい。
【0044】
本発明は、本願に援用される添付図面を参照することで当業者によってさらによく理解され、かつその利点が評価されることが可能である。図面類は或る実施形態の或る細部を例示しているが、本願に開示される発明はそのように例示された実施形態のみに限定されない。その背景を別の方式で明確に形成しない限り、すべての範囲はその端点も含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図1は、表面1eを有し、角質層1a、表皮層もしくは表皮1bおよび真皮層もしくは真皮1cを含むヒトの皮膚である生体膜1の上層部の断面図を示している。皮膚の最外層である角質層1aは死んだ細胞層であって、普通では個体差によって決まる10ミクロンと20ミクロン(μm)の間の厚さであり、この角質層は、例えば新生児については約5μmのみの厚さを有することもあり得る。角質層1aは、疎水性の細胞外脂肪マトリックスによって取り囲まれた親水性のケラチン生成細胞を含む。構造的および組成的特異性のせいで、角質層1aは体内に入る薬剤または他の分子の、および体外へ出る体液または分析対象物質の経皮流動に対する最大のバリヤを与える。角質層1aは、角質層細胞の脱落によって2〜3週間の平均交代時間で絶え間なく更新される。
【0046】
角質層1aの下地にあるのは成長可能な表皮もしくは表皮層1bであり、これは普通では50μmと150μmの間の厚さである。表皮は自由神経終末を含むが血管を含まず、表皮1bの直ぐ下に位置する真皮1cに出入りする拡散によって代謝産物を自由に交換する。表皮は1cm2当たり最大で約1000の自由神経終末を含む。真皮1cは1mmと3mmの間の厚さであり、血管、リンパ管、および神経を含む。いったん薬剤が真皮層に到達すると、薬剤は概して循環系を通って灌流するであろう。
【0047】
図1はまた、直径Dを備えた円形の形状を有し、かつ皮膚1の表面に作用する皮膚1上に焦点集束される平行または準平行のレーザ・ビーム4またはレーザ・ビーム4を示している。レーザ・ビーム4は他の形状、好ましくは方形の形状を有することもやはりあり得る。皮膚1上へのレーザ・ビーム4の衝突は組織のアブレーションを引き起こす。レーザ・ビーム4の最初のショットは下端部3aを伴う個別孔2を生じさせる。この最初のショットは、皮膚1の外表面にスポットBとも呼ばれる穿刺表面Bを約(D/2)2×πのサイズでもたらし、これは除去または穿刺された生体膜の外表面の量に相当する。同じ場所へのレーザ・ビーム4の第2のショットは下端部3bまでの個別孔2の深さの増大を生じさせ、同じ場所への第3および第4のショットは下端部3cおよび3dまでのさらなる深さの増大を生じさせる。個別孔2を取り囲む組織1の合計表面は浸透表面Aに相当し、これは底面と側壁表面の和である。穿刺表面Bに組織は無く、したがって穿刺表面Bは浸透表面Aの一部ではない。
【0048】
主として組織の特性、パルス・レーザ・ビーム4のエネルギー密度およびレーザ・ビーム4のパルス時間幅に応じて1パルス当たりの深さの増減は変化する。焦点が合わされたレーザ・ビーム4が使用される場合、レーザ・ビーム4は好ましくはビームの伝搬方向に対して直角の平面内で均質な強度分布を有するべきである。レーザ・ビーム4は、好ましくは均質なエネルギー強度分布を少なくとも焦点深度の領域内で有するべきである。均質な強度分布を備えたレーザ・ビーム4の使用、場合によっては平行もしくは準平行のレーザ・ビーム4を備えた非集束レーザ・ビーム4の使用は、図1に開示されるように、個別孔2の浸透表面Aが普通では正確な形状、例えば円筒形状を有するという利点、および孔2の底部が正確で好ましくは平坦な形状を有するという利点を有する。最も好ましい実施形態では、レーザ・ビーム4は個別孔2の下端部3cが表皮1bに到達できるが真皮1cに到達できないように作動させられる。
【0049】
自然な皮膚再生過程に起因して、表皮1bおよび角質層1aを構築する細胞は基底層から外へと成長する。基底層は表皮1bと真皮1cとの間の皮膚層である。普通では1日に3から15μmが再生される。約14日後に細胞は死んで角質層を構築する。約14日のさらなる期間の後、これらの細胞は皮膚から剥がれ落ちる。したがって、各々の個別孔2の下端部3dは約3から15μm/日の速度で角質層の方向へと動いており、それにより、浸透表面Aを減少させていると言うことができる。角質層1aの表面を伴わない表皮1bのみの浸透表面である補正後の浸透表面は、遺伝的にプログラムされた細胞死のせいで下端部3dの細胞が死ぬと直ぐに穿刺表面(これは角質層1a内の穴の表面を意味する)のサイズになり、角質層1aの第1層になる。角質層1a内の残りの穴は既に述べた14日後に閉じられるであろう。細胞の成長と死とのこの知られているメカニズムは本願では詳しく述べられない。細胞の持続的成長は角質層の厚さを増大させ、したがって残りの穴のバリヤ特性を大幅に増大させ、角質層を再生させる。最後には、個別孔2は細胞成長のせいで消えてなくなり、以前に除去された組織は新たな細胞によって再生される。
【0050】
図1aは3つの孔2を示している。中間の孔2は皮膚1の表面に対して直角であり、それに対して左および右の穴2は角度αで皮膚1の中に突き通り、この角度αは0°から70°までの間の範囲にある。孔2のこの配列の利点は、孔2が真皮1cの中に入ることなく孔2の合計長さが極めて長くなり得ることである。左または右の孔2は、例えば中間の孔2の長さの2倍を有することが可能であり、一層大きい浸透表面Aを有する。
【0051】
図2は、Q−スイッチレーザ源7およびレーザ・ビーム成形およびガイド用装置8を含むレーザ・マイクロポレータ10を示している。レーザ源7は、レーザ活性物質7bの光学的励起のための光源7cおよび1セットの反射ミラー7d、7eを有する。レーザ源7は、レーザ結晶7b、好ましくはErおよび場合によっては追加的にPrでドープしたYAGを含むレーザ・キャビティ7aを有し、これが励起子7cによるポンプ作用を受け、この励起子7cはエミッタ・バーまたはエミッタ・バーのスタックのようなシングルエミッタ・レーザダイオードまたはシングルエミッタ・レーザダイオードのアレイである。レーザ源7はさらに、レーザ結晶7bの後方に配置された高反射率ミラー7dおよびレーザ結晶7bの前方に配置された出力結合ミラー7eから成る光共振器、およびレーザ結晶の後方に配置された可飽和吸収体7fを含む。可飽和吸収体7fはQ−スイッチとして働く。平行もしくは準平行レーザ・ビーム4または集束レーザ・ビーム4を作り出すために焦点集束用レンズ8aおよび発散レンズ8bが出力結合レンズ7eの向こう側に配置される。レンズ8a、8bの代用として、マイクロポレータ10は異なる光学手段8a、8bを含んでもよく、これらは、例えば皮膚1の表面上にレーザ・ビーム4の焦点を合わせる。発散レンズ8bはモータ8cによって図示された方向に移動させられることが可能である。これはレーザ・ビーム4を広げることまたは狭めることを可能にし、レーザ・ビーム4の幅およびレーザ・ビーム4のエネルギー・フルエンスを変えることを可能にする。モータ8eによって駆動される可変吸収体8dが、レーザ・ビーム4のエネルギー・フルエンスを変えるために発散レンズ8bの向こう側に配置される。図2kまたは図2uに開示されるように、レーザ・ビーム4のエネルギー強度分布を作り直すレーザ・ビーム成形装置7h、8yもやはり含まれる。レーザ・ビーム4を様々な方向に向けることで皮膚1に多様な位置で個別孔2を作り出すためにx−y駆動装置8gで駆動される偏向器(ミラー)8fが吸収体8dの向こう側に配置される。制御装置11は、配線11aによってレーザ源7、駆動素子8c、8e、8g、センサ類、および詳細に開示されていない他の素子と接続される。
【0052】
好ましい実施形態では、レーザ・マイクロポレータ10は、それぞれがフィードバック・メカニズムであるフィードバック・ループ13も含む。図2では、フィードバック・ループ13は個別孔2の深さを測定するための装置9を含み、レーザ・ビーム9dを作り出す光学素子を備えたセンサ9aおよび光学素子9bを備えた受光器を含むことが好ましい。レーザ・ビーム9dは個別孔2の直径よりも小さい(例えば1/5の)幅を有し、それにより、レーザ・ビーム9dは個別孔2の下端部に到達することができる。偏向ミラー8fは送光器9aのビームを測定対象の個別孔2へと向け、反射されたビーム9dを受光器9bに返すように導く。様々な方式で構築されることが可能なこの距離測定装置9は、個別孔2の下端部の位置、例えば深さを測定することを可能にする。好ましい実施形態では、個別孔2の深さはパルス・レーザ・ビーム4が発射された後に毎回測定され、個別孔2の深さに対する各々のレーザ・パルスの影響を制御することを可能にする。フィードバック・ループ13は個別孔2のフィードバック信号を測定することを可能にするように様々な方式で構築されることが可能である。フィードバック・ループ13は、個別孔2の下端部によって反射される光のスペクトル変化を検出するために、例えば、分光器14として構築された送光器9aと受光器9bとを含む。これは、例えば、個別孔2の実際の下端部3a、3b、3c、3dが角質層1aの一部であるか、または表皮1bの一部であるかを検出することを可能にする。レーザ・ポレータ10はまた、個別孔2の特定のデータを有する穿孔メモリ12も有する。レーザ・ポレータ10は穿孔メモリ12内に事前記述されたように個別孔2を作り出すことが好ましい。レーザ・ポレータ10はまた、データをポレータ10と交換することを可能にするため、特にメモリ12の中への個別孔2のパラメータ類、初期の微小穿孔のデータセットの転送を可能にするため、または特定の個別孔2iの実際の深さまたは合計表面Aiなどのデータを得るための、1つまたは複数の入出力装置15またはインターフェース15も含む。入出力装置15は、カードリーダー、スキャナ、有線インターフェース、または例えばブルートゥースなどの無線接続であってもよい。
【0053】
このポレータはさらに、物質、個人、およびさらに多くのデータのようなデートを手動で交換するための1つまたは複数の入出力装置またはユーザ・インターフェース15を含むことも可能である。このユーザ・インターフェースは、例えばディスプレイ、ボタン、音声制御、および指紋センサを含むこともあり得る。
【0054】
レーザ源7を構築するための多様な方式がある。レーザ源7は、例えば、固定の幅(例えば250μmの幅)のビーム4を作り出す光学素子を備えたレーザ・ダイオードとして構築されてもよい。レーザ源7は吸収体8dもやはり含むことが好都合である。単純なバージョンでは、レーザ・ポレータ10は内蔵式レンズ系、および様々な方向でのレーザ・ビーム4の方向付けのための偏向ミラー8fを備えたレーザ源7のみを含むこともあり得る。したがって、吸収体8dの代わりに、レーザ・ビーム4の強度はレーザ・ダイオード7を駆動することによって直接調節されることもあり得る。図2aに開示されるように、皮膚1上の様々な場所にレーザ・ビーム4を向けるためにレーザ・ダイオード7の位置がモータ駆動部8gによって調節されることが可能である。吸収体8dが発散レンズ8bの後段に配置されるのではなく、吸収体8dがレーザ源7の中に、例えば出力結合ミラー7eの後段であってレーザ源7を出るビーム4の前段に配置されることもやはりあり得る。
【0055】
吸収体8dの代わりに可変シャッターが全レーザ・ビームのうちの小部分を選択するために使用されることも可能である。ビームの好ましい均質な光強度分布を得るために、回折光学素子(DOE)などのビーム・ホモジナイザ(例えばスーパガウス・レンズまたは多段エッチングされたウェハ)またはマイクロレンズもしくはマイクロレンズ・アレイ(MLA)などの他の光学素子が標的組織とレーザ源との間に配置されてもよい。レーザ源は薄ディスクレーザであることもやはり可能である。レーザ・ダイオードはまた、単一レーザ・ダイオードよりもはるかに大きいエネルギーを供給することが可能なレーザ・ダイオード・アレイまたはレーザ・ダイオード・アレイのスタックであってもよい。
【0056】
レーザ源7のパルス繰り返し周波数は、1Hzから1MHzの範囲、好ましくは100Hzから100kHzの範囲、最も好ましくは500Hzから10kHzの範囲内である。レーザ・ポレータ10の1つの応用の中で、2個と100万個との間の個別孔2、好ましくは10個と10000個との間の個別孔2、最も好ましくは10個と1000個との間の個別孔2が生体膜に作り出されてもよく、各々の孔2が0.05mmと0.5mmとの間の範囲、または最大1mmまでの幅を有し、各々の孔2が5μmと200μmとの間の範囲の深さを有し、しかし個別孔2の下端部は表皮の中にあることが好ましい。必要であれば、ポレータ10は200μmを超える深さの孔を作り出すこともやはり可能である。
【0057】
レーザ・ポレータ10はまた、皮膚1上に向けられるときにのみレーザ・パルスが発射されるようにインターロック機構も備える。フィードバック・ループ13は、例えばパルスが皮膚1上に向けられているか否かを検出するために使用されてもよい。インターロック機構を作り出すために数多くの方式があり、すべてのそのような方式が考慮されることを当業者は理解するであろう。一つの実施形態は図4aに述べられる。
【0058】
個別孔2の深さはレーザ・パルスの印加の前後で測定されてもよく、角質層、表皮、および真皮が異なる特性(例えば異なる量の水)を有するという事実のせいで、印加レーザ・パルス当たりのアブレーション量の変化に応じて、1パルス当たり同じエネルギーが使用されるのであれば孔の下端部が角質層にあるか、表皮にあるか、または真皮にあるかを判定することが可能である。好ましい実施形態では、角質層1a、または必要であれば表皮1bの厚さは1パルス当たりの深さのアブレーション量の変化についての情報に基づいて判定されることが可能である。別の実施形態では、組織層は分光学的手段で差別化されることもあり得る。
【0059】
図2は、円筒状の個別孔2を作り出す円形レーザ・ビーム4を開示している。個別孔2は他の形状を有してもよく、例えばそこではレーザ・ビーム4は円形ではなく楕円の形状、正方形または長方形を有する。個別孔2は偏向器8fの適切な移動によって形作られることもやはり可能であり、これは広範に多様な形状を備えた個別孔2の形成を可能にする。
【0060】
図3は距離測定装置9を詳細に示している。送光器9aはレーザ・ビーム9dを発射し、これが半透明ミラー9cおよび偏向器9eを通過して個別孔2の下端部で反射され、偏向器9eを通じて戻り、半透明ミラー9cで反射され、受光器9bに入る。レーザ・ビーム9dの幅L1は個別孔2の内径Dよりも小さい(例えば1/5)。偏向ミラー9eは様々な方向、および開示されるように様々な個別孔2の中にレーザ・ビーム9dを偏向させることが可能である。好ましい実施形態では、レーザ・ビーム9dは皮膚1の表面上、例えばその平均値が基準値を規定する3つの位置Xへもやはり偏向させられる。この基準値に基づいて、各々の個別孔2の深さHが極めて正確に、例えば0.5μmの分解能で測定されることが可能である。一つの好ましい実施形態では、送光器9aと距離を測定するべき点との間の距離a、b、Hを正確に測定するために位相シフト技術が使用される。
【0061】
さらなる実施形態では、距離測定装置9は個別孔2の深さを測定することができるのみでなく、個別孔2のさらなる特徴を測定することも可能であり、特にこの装置は個別孔2全体の幾何学形状を走査することが可能である。これは、例えば、偏向器9eを使用したレーザ・ビーム9dの適切な偏向によって達成されることが可能である。したがって、浸透表面Aの形状およびサイズもやはり意味する孔2全体の側壁の形状が正確に測定されることが可能である。この配列は1つまたは複数の個別孔2の形状の調査を可能にする。個別孔2は図3の右側に開示されるように皮膚1の表面に対して直角に延びてもよい。個別孔2はまた、図3の左側に開示されるように皮膚1の表面に対して斜めに延びてもよい。
【0062】
好ましい実施形態では、フィードバック・ループ9、13は動作可能に穿孔制御器11に連結され、例えばこの制御器は個別孔2の特徴、例えば深さが予め設定した値よりも大きいかまたは等しければさらなるレーザ・ビーム4のパルスが個別孔2に向けられなくてもよくなるように個別孔2の深さを所定の値と比較することが可能である。これは所定の深さを備えた個別孔2の形成を可能にする。
【0063】
図3bは前腕の断面を示している。レーザ・マイクロポレータ装置10は接続具10bを含む弾性ベルト10aを使用して前腕に着脱可能に取り付けられる。この配列はマイクロポレータ10と上にマイクロポレータ10の前部が配置される前腕の領域との間の相対的移動を抑制または削減することを可能にする。
【0064】
マイクロポレータ10は孔2の合計数に応じてすべての個別孔2を作り出すために1秒未満と約10秒との間の時間範囲を必要とすることが好ましい。したがって、レーザ・ビーム4を印加している間のマイクロポレータ10と皮膚1との間の相対的移動を阻止するために、マイクロポレータ10を図3bに開示されるように身体と接続すると好都合であることが可能である。すべての個別孔2を作り出すためのレーザ・ビーム4の合計時間は1秒未満であるので、普通ではこの接続は必要とされない。マイクロポレータ10と皮膚1との間の相対的移動がこの時間的期間中に起こる見込みは極めて小さい。もしも相対的移動が起これば、これはフィードバック・ループ9によって検出されることが可能であり、フィードバック・ループ9は皮膚1内に作り出された孔2の位置を走査し、それによって知られた形成孔2の位置に基づいて残りの孔2を作り出すために使用されることが可能である。したがって、たとえマイクロポレータ10と皮膚1との間の相対的移動が穿孔中に起こっても孔2の正確なパターンが作り出されることが可能である。
【0065】
図2bは、単一のレーザ源7(好ましくはレーザ・ダイオード)、およびレーザ・ビーム4を複数の光ファイバ8hの中に導き、それによってレーザ・ビーム4を複数の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dへと分割する光学レンズ8b、8aをやはり含むレーザ・ビーム成形およびガイド用装置を有するレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。エネルギー強度分布を作り直すレーザ・ビーム成形装置は詳しく開示されない。すべての光ファイバ8hは一体になって偏向器8fを形成し、これが個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dを様々な方向に向ける。個々のビーム4a、4b、4c、4dは各光ファイバ8hを出ている。光ファイバ8hの端部は駆動部8gによって移動させられることが可能であり、それにより、個別ビーム4を移動させる。光ファイバ8hは個別孔2を中に作り出すように皮膚1の上に位置している。防護ガラス8iが光ファイバ8hと皮膚1の表面との間に配置されることも可能である。防護ガラス8iは個別レーザ・ビーム4a〜4dを個別に停止、減衰、または通過させることを可能にする光スイッチ8kをさらに含んでもよい。
【0066】
図2cは複数の個別レーザ源7(好ましくはレーザ・ダイオード)を備えるレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示しており、各々のレーザ源は、各々のレーザ源7のビーム4が個別に皮膚の表面上へと方向付けられることで複数の個別孔2を作り出せるようにモータ8gによって個別に駆動される。レーザ源7のビーム成形装置は詳しく開示されない。
【0067】
図2dは、単一のレーザ源7(好ましくはレーザ・ダイオード)、およびレーザ・ビーム4を複数の光ファイバ8hの中に導き、それによってレーザ・ビーム4を複数の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dへと分割する光学レンズ8b、8aを含むレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。すべての光ファイバ8hは一体になって偏向器8fを形成し、これが個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dを様々な方向に向ける。図2bによる実施形態とは対照的に、このレーザ・マイクロポレータ10はモータ8gおよび防護ガラス8iを含まない。皮膚1上の微小孔2の配列は偏向器8fによって予め決定される。このレーザ・マイクロポレータ10はどのような移動部品も伴わずに構築されることが可能であり、これは極めて頑丈で極めて安価なマイクロポレータ10を構築することを可能にする。このレーザ・マイクロポレータ10は例えば一度使用されるのみであってもよく、これは使い捨てのレーザ・マイクロポレータ10を意味する。さらなる実施形態では、個別光ファイバ8hの方向を変えることによって皮膚1上の微小孔の最終配列が変えられることが可能となるように光ファイバはある程度可撓性である。
【0068】
図2eは、単一のレーザ源7、およびレーザ・ビーム4を複数の光ファイバ8hの中に導き、それによってレーザ・ビーム4を複数の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dへと分割する光学素子8を含むレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。すべての光ファイバ8hは一体になって偏向器8fを形成し、これが個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dを様々な方向に向ける。各々の光ファイバ8hの出口端部は、光ファイバ8hを出る個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dが例えば平行の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dを形成できるように個別に配向した表面を有する。
【0069】
図2fは、単一のレーザ源7、レーザ・ビーム4を様々な方向を向く複数の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dへと分割する光学素子8と偏向器8fを含むレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。光学素子8は例えばマイクロレンズのアレイを備え、これらが偏向器8fを形成する。このマイクロポレータ10は極めて安価に製造されることが可能であり、使い捨てに適している。
【0070】
図2gは、レーザ源7、ビーム4を広げるための光学素子8、および複数の個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dを形成するための複数の開口16aを備えた穴開きプレート16を備えるレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。個別レーザ・ビーム4a、4b、4c、4dは平行であっても異なる方向を向いていてもよい。図2hは穴開きプレート16の前部の光景を方向Aで開示しており、図2gに開示されるように複数の開口16aを備え、各々の開口16aが個別レーザ・ビーム4aを生じさせる。
【0071】
図2bから図2hに開示されたレーザ源7は、例えば図2に開示されたようなレーザ源7、または平行光学系を備えたレーザ・ダイオードであってもよい。
図2iはレーザ・ビーム4を作り出すための、レーザ結晶7b、励起子またはポンピング・レーザ・ダイオード7c、および2色性ミラーである入力結合ミラー7gを含むQ−スイッチレーザ源7、出力結合ミラー7e、および可飽和吸収体7fを備えたレーザ・マイクロポレータ10のさらなる実施形態を示している。可飽和吸収体7fはQ−スイッチとして働く。電気光学結晶、音響光学結晶、または回転型Q−スイッチなどのさらなるQ−スイッチが使用されてもよい。このレーザ・ポレータ10はさらに、0.05から0.5mmの範囲にある異なる直径の7つの開口16aを備えた穴開きプレート16を有する。図2tは穴開きプレート16の前面図を示している。各々の孔16aの中に場合によって追加される光学素子が配置されることも可能である。皮膚1の表面に発射されるビーム4の直径は、ビーム4の経路内に配置されるそれぞれの開口16aの直径によって決まる。発射されるビーム4aの直径が適切な直径を備えた開口16aをビーム4の経路内に位置決めすることによって決定されることができるように、穴開きプレート16は回転可能である。好ましい実施形態では、開口16aと皮膚1との間の距離は50から60mmの範囲にある。
【0072】
図2kはリボルバーとも呼ばれる穴開きプレート16を拡大して示している。リボルバー16は5から10個の異なる直径の開口16aを有する。適切な開口16aをビーム4の経路内に置くようにモータ17がリボルバーを駆動し、それにより、ビーム4aの直径が選択されることが可能である。
【0073】
図2lは、レーザ源7を出るビーム4のレーザ・ビーム強度プロファイル4adのグラフ表現を示している。この強度プロファイルはガウス分布を有する。縦軸は正規化されたレーザの強度を示し、横軸はビーム4の軸方向光心に対するビーム4の場所を示す。一つの好ましい実施形態では、レーザ・ビームのエネルギー強度分布を作り直すビーム成形装置8yはホモジナイザ7hであり、ビーム4の均質な強度もしくはエネルギーの分布を得るためにレーザ・ビーム4のエネルギー強度分布を変更する8yはビーム4の経路内に位置決めされるスーパガウス・レンズ7hであってもよく、これがビーム4aのほぼ長方形のエネルギー強度プロファイルを生じさせる。ビーム成形装置7h、8yは、例えば屈折性の平凸マイクロレンズを使用する1つまたは2つのマイクロレンズ・アレイを有することも可能である。例えば、いわゆる「画像ホモジナイザ」は普通では同一のレンズ間距離を備えた2つの同様のマイクロレンズ・アレイから成る。第1のマイクロレンズ・アレイは入射ビームを多数の小ビームに分割するために使用される。後方に位置する球面レンズと組合せになった第2のマイクロレンズ・アレイは対物レンズのアレイとして作用し、これが第1のアレイの小ビームの各々の画像を均質化平面上に重ね合わせる。球面レンズの後方の一方の焦点距離に置かれる均質化平面は、均質なエネルギー分布を有するビーム・スポットである。図2mは、異なる直径を備えた3つのビーム4aa、4ab、4acのそのような長方形のエネルギー強度プロファイルを有する3つのビーム・スポットを開示している。したがって3つのビーム4aa、4ab、4acすべてがいわゆる輪郭のくっきりした強度分布を有する。そのようなプロファイルはまたトップ・ハット・プロファイルまたはフラットトップ・プロファイルと呼ばれる。ビーム4aa、4ab、4acの上部が平らなプロファイルの一層鋭いエッジと一層小さいばらつきは、例えば、マイクロレンズ・アレイにおけるフレネル回折に起因する一層高いフレネル数によって達成されることが可能である。図2mはレーザ・ビーム4aがビームの軸方向光心に対して平坦上部においてほぼ一定のエネルギー密度を有することを開示している。普通、画像ホモジナイザは、同一のレンズ間距離を備えた2つの同様のマイクロレンズ・アレイから成る。正方形タイプのレンズ開口はフーリエ平面内で正方形の平坦上部またはシルクハット型の強度分布を発生する。円形または六角形マイクロレンズなどの他の形状はそれぞれ円形または六角形の平坦上部を発生するであろう。また、2つの異なるマイクロレンズ・アレイから成る画像ホモジナイザが使用されてもよく、これは長方形または直線形状の平坦上部といった様々な形状の強度分布を作り出す。この強度分布は平坦上部内で10%未満で変化することが好ましい。
【0074】
図2nは、通過するレーザ・ビーム4aが減少した直径を有し得るようにレーザ・ビーム4よりも小さい開口16aを備えたリボルバー16の断面を示している。レーザ・ビーム4はほぼ一定のエネルギー密度を有するので、開口16aを通過するレーザ・ビーム4aのエネルギー密度はレーザ・ビーム4aの直径に関係無くほぼ同じである。
【0075】
図2oおよび図2pは本願で平行もしくは準平行のレーザ・ビームと称するレーザ・ビーム4aを開示している。レーザ・ビーム4aはレーザ・ビーム4aの伝搬方向ベクトルvpdとレーザ・ビーム4aの主発散の発散ベクトルvdを有する。方向ベクトルvpdと発散ベクトルvdとの間の角度βは3°未満から5°、好ましくは1°未満、最も好ましくは0.5°未満である。これは、平行もしくは準平行のレーザ・ビーム4aが3°未満から5°の発散を有することを意味する。平行もしくは準平行のレーザ・ビーム4aの直径は、ベクトル方向vpdで伝搬するときに図2oに開示されるようにさらに広くなることが見込まれ、または図2pに開示されるようにさらに狭くなることが見込まれる。平行もしくは準平行のレーザ・ビーム4aは少なくとも或る一定の範囲内の焦点で図2oおよび2pに開示された特性を示し、伝搬方向ベクトルvpdの方向で延びるこの焦点または焦点範囲は約1cmから5cmの範囲、好ましくは2cmから3cmの範囲である。
【0076】
図2qはレーザ・ビーム4aによって皮膚1に作り出された孔2の側面図の概略表現を示している。レーザ・ビーム4aは均質なエネルギー密度を有し、これは光学素子、例えばガウス・レンズを使用することによって、または多重モードのレーザ・ビーム発生によって到達されることが可能である。レーザ・ビーム4aは、いわゆるシルクハット型プロファイルを有する。レーザ・ビーム4aは発散およびエネルギー分布に関してほぼ均質である。したがってこのレーザ・ビーム4aは、深さおよび形状の点で皮膚1の所定のアブレーションを引き起こす。対照的に、均質なエネルギー分布を伴わないレーザ・ビーム4および/または平行もしくは準平行のレーザ・ビーム4を伴わないレーザは図2rおよび2sに開示されるような孔2を皮膚1に生じさせることも可能である。普通に使用されるレーザ・ビーム4は、図2lに開示されたようなガウス強度プロファイルを有する。そのようなビーム4は図2rおよび2sに開示されるような中央に極めて深い部分を有する孔2を作り出す。そのようなレーザ・ビーム4は国際公開第00/78242号パンフレットに開示されるようなレーザ・ポレータに極めて適しており、なぜならばこのレーザ・ポレータの目的は間質液を容易に集めることであるからである。したがって、最も重要な態様は図2rおよび図2sに開示されるように孔が中央にピークを伴って深いことであり、その一方で、作り出された孔2の形状は重要ではない。そのようなレーザ・ビーム4は表皮と真皮の間の敏感な層に損傷を与える可能性が高く、それにより、出血および痛みが起こる。そのような孔2は経皮薬剤供給にとって価値が無い。図2qに開示されるようなレーザ・ビーム4aは、最上部から底部までの孔2の形状が同じもしくは同様に保たれ、それにより、好ましくは極めて正確で再現性のある孔2が作り出されるという利点を有する。図2qのレーザ・ビーム4aはまた、作り出された孔2が中央にピークを有さず、ビームのエネルギーすべてが適切に形作られた微小孔を作り出すために使用されるのでエネルギーを節約することも可能にする。したがって、初期の微小穿孔を作り出すためにはるかに少ないエネルギーが必要とされ、これはさらに低いエネルギーのレーザ・パルスを使用することを可能にし、レーザ・ポレータを駆動するために電池などの携帯型電源を使用すること、およびハンドヘルド型レーザ・ポレータを構築することを可能にする。
【0077】
図10aは半径rの関数でガウス強度分布Iを備えたレーザ・ビーム4adを示しており、このビーム4adはImaxの最大強度を有する。そのようないわゆる単一モードのレーザ・ビームは、最大のエネルギー集中を与え、例えば深い穴を作り出すのでしばしば使用される。レーザ・ビーム4のエネルギー強度分布を作り直すレーザ・ビーム成形装置の効果が、強度Ihの輪郭がくっきりして均質な強度分布を有するレーザ・ビーム4aeでもって概略で開示されている。現実では、これらのレーザ・ビーム4ad、4aeは三次元幾何学形状である。これらの形状の体積は、レーザ・ビーム4ad、4aeのエネルギーの物理的意義を有する。E1、E2、E3、およびE4はこれらの形状のうちの異なった部分を示す。これらの部分はビーム・エネルギーの各部として解釈されることが可能である。E3はエネルギーの実効「円筒部」であり、作り直されたレーザ・ビーム4aeのエネルギーに相当する。E1は、作り直されたレーザ・ビーム4aeの強度Ihを上回る余剰のエネルギーにあるガウス関数の頂上部である。E1はエネルギーの浪費であり、作り出される微小孔の形状に関して悪影響にもやはりつながる。E2およびE4はガウス関数の尾部であり、これはエネルギーの浪費であり、例えば作り出される微小孔の形状に関して、または組織のオーバーヒートに関して悪影響にもやはりつながる。正確に形作られた孔を作り出し、かつ/または孔を作り出すためのエネルギーを節約し、かつ/または生体膜の損傷を回避する観点で見ると、部分E3のエネルギーのみが重要であり、それに対して部分E1、E2およびE4のエネルギーは浪費である。言い換えると、生体膜に孔を作り出すときにガウス強度分布を備えたレーザ・ビーム4adを使用することは、例えばエネルギーの約40%が部分E3を作り出すのに有効であり、例えばエネルギーの約60%が悪影響のせいで浪費であるという効果を有する。もちろん、この例は図10aに基づく単純化された幾何学的解釈に基づいているが、しかし明らかにレーザ・エネルギーの損失の効果を示しており、かつレーザ・ビームのエネルギー強度分布を作り直すビーム成形装置を使用する効果を明らかに示している。通常のレーザ源はガウス関数のビーム強度分布を有する。レーザ・ビームのエネルギー強度分布を作り直すビーム成形装置は輪郭のくっきりした強度分布を生じさせ、これは普通では側部で一層切り立った傾斜および/または平坦な最上部を意味し、それにより、このプロファイルは明確なエッジを示すことができる。図2mに開示されるように長方形に近い形状を有する、平坦上部またはシルクハット型のプロファイルとも呼ばれるほぼ均質な分布を作り出すために極めて頻繁にビーム・ホモジナイザが使用される。このビーム成形は特別に設計された光学系、例えばいわゆるホモジナイザによって与えられることが可能である。
【0078】
図10bはビーム成形を伴わないビーム4で作り出される皮膚1の孔2を示しており、このビーム4はガウス強度プロファイル4adを有する。図10cはビーム成形を使用するビーム4で作り出される皮膚1の孔2を示しており、ビーム4はシルクハット型の強度プロファイル4acを有する。作り出される孔2は円筒状またはほぼ円筒状である。図10bは点線2rもやはり示しており、これは図10cに開示された孔2の形状にほぼ相当する。図10bに作り出された孔2と比較すると、図10bで適用されるレーザ・ビーム4は1dで印を付けられた組織体積を過剰に除去し、これは追加的なエネルギーもやはり必要とする。したがって、図10cに開示されるような孔2を作り出すためには、図10bに開示される孔2よりも少ないエネルギーを必要とする。図10bに開示される孔は、例えば、この孔2が痛みを引き起こすというさらなる不都合を有する。図10dはビーム成形を使用するビーム4で作り出される皮膚1の孔2を示しており、ビーム4はくぼみ4agを含むシルクハット型の強度プロファイル4afを有する。くぼみ4agはビーム4の最大エネルギーの低下を示す。このくぼみはビーム4の最大エネルギーよりも最大で30%少ないエネルギーを有する可能性もあるが、好ましくは10%、20%、または30%少ないエネルギーである。開示されるように、強度プロファイル4afはまた、輪郭のくっきりした強度分布を有する。
【0079】
レーザ・ビーム4aは2.8ミクロンと3.1ミクロンの間の波長、および50nsと150nsの間のパルス時間幅を有することが最も好ましい。そのようなレーザ・ビーム4aの1つの利点は、作り出された孔2に隣接する組織の活性化または加熱の影響が極めて低いことであり、これは細胞のさらに少ない破壊の原因となる。700nmと1200nmの間の波長を有する従来式のレーザ・ダイオードの使用は、脂質が最大で500℃まで加熱され、これは隣接する組織内の強く増大した損傷ゾーンにつながるでることから、高度に非効率的な孔2の形成につながるであろう。対照的に、2.8ミクロンと3.1ミクロンの間の波長の使用は殆ど脂質を加熱しない。さらなる利点は、孔2の下端部が容易に検出され得るので孔2の深さの測定が簡単で正確であることである。対照的に、図2rおよび2sに開示された孔2は明確な下端部を有さない。したがって、孔2の深さを測定することは困難、または不可能でさえある。
【0080】
図2uは、レーザ源7、およびレーザ・ビーム成形およびガイド用装置8を有するさらなるレーザ・マイクロポレータ10を示している。レーザ源7はレーザ・ダイオード7cのアレイ、好ましくは複数の直線状に配列されたレーザ・ダイオード・バーとも呼ばれるレーザ・ダイオード・エミッタ(これらはさらに大きい出力パワーのためにいわゆるレーザ・ダイオード・スタックへと追加的に一緒に積み重ねられることもあり得る)を備える。レーザ・ダイオード7cは、10℃から40℃の様々な環境温度の理由から、レーザ・ダイオード7cの温度をほぼ一定のレベルに保つために熱電素子7iによって調節されることが好ましい。発射されるレーザ・ダイオード7cの波長は温度によって決まる。熱電素子7iは発射波長を一定値に保つため、またはダイオード7cの温度を変えることによって発射波長を変えるために使用されることが可能である。発射されたレーザ・ダイオード7cの光はレンズ7i、7lおよび2色性ミラーを通過し、衝突点7q回転型レーザ結晶7n、例えばEr:YAGディスクに当たる。ディスクの形状を有するレーザ結晶7nは、例えば銅のような取付け台で回転軸7pを備えた駆動部7oに接続されたレーザ結晶取付け台7t上に装着される。モータ7oは、レーザ結晶7nが軸7pの周りで回転することができるようにレーザ結晶取付け台7tを駆動する。レーザ結晶7nはレーザ・ダイオード・バーまたはスタック7cのビームによって光学的にポンピングされ、それにより、レーザ結晶7nはレーザ・ビームを発射し、これがQ−スイッチ7rを通って2色性ミラー7mと出力結合器7sとの間で反射され、これが、数パーセントのレーザ・ビームの波長に関するその透過特性に起因して部分的に出力結合器7sを通過してレーザ・ビーム成形およびガイド用装置8に至る。レーザ・ダイオード7cは、例えば965nmの波長を有してもよく、レーザ源を出るレーザ・ビーム4は、例えば約2.94ミクロン(μm)の波長を有してもよい。
【0081】
レーザ源7から外に結合したレーザ・ビーム4は、例えば1mmのビーム径を有してもよい。この出て行くビームは、レンズ8b、8aによって例えば4mmの平行ビーム4bに広げられることが好ましい。レンズ8aに続いて、レーザ・ビーム4の焦点を表面1上に合わせるためにビーム・ホモジナイザ8yおよび球面レンズ8xが駆動部8cによって駆動される共通の担体上に配列される。ビーム4は、駆動部8g、例えばステッピング・モータおよび制御装置11で動かされるミラー8fによって偏向させられる。ビーム4が表面1上に向けられることが可能な領域は例えば20mmの合計の直径を有することも可能である。表面1または微小孔2に当たるビーム4は600μm未満の直径を有することが好ましい。例えば図2に開示されるようにさらなるレーザ・ビーム9dが表面1に向けられる場合、あるいは表面1の詳細な光景を得るため、あるいは孔の幾何学形状を分析するため、または組織もしくは組織の羽状毛の蛍光を分光学的に分析するために例えば撮像装置が使用される場合、ビーム・スプリッタ8zが使用されてもよい。レーザ源7(これは出力結合器7sでレーザ源7を出た後を意味する)と表面1との間のレーザ・ビーム4の経路長は最大で10cmの範囲内であることが好ましい。
【0082】
マイクロポレータ10は、電池、再充電可能な電池、交換可能な電池、燃料電池、光起電力電池などといった電源10cを有する。この電源10cはマイクロポレータ10のハウジング10dの中に配置される。
【0083】
図2xは、レーザ・ビーム成形装置8y、すなわちビーム・ホモジナイザ8yをさらに詳細に示している。ビーム・ホモジナイザ8yは同一のレンズ間距離を備えた2つのマイクロレンズ・アレイから成る。レーザ・ビーム4bから外に正方形の平坦上部の強度分布を焦点FPでもあるフーリエ平面内で作り出すために正方形タイプのレンズ開口が使用される。球面レンズ8xはビーム4を焦点FP上に集束させ、ここではビームは正方形の形状を有する。ビーム4は焦点FPで、例えば約1mmの焦点深度を有する。
【0084】
図2uに開示されたレーザ源7(ここではレーザ結晶7nが回転する)とは対照的に、図2vのレーザ源7は直線状の厚板7n、好ましくはEr:YAG結晶を使用し、これが例えばアルミニウムの取付け台7tに保持され、駆動部7oによって直線方向7pに移動させられる。
【0085】
図2uおよび図2vに開示された両方のレーザ源7は200Hzと20kHzとの間の速度で供給されるナノ秒パルスで動作させられることが好ましい。運動するレーザ結晶7nは、普通では最大繰り返し速度を制限する結晶7nの端部準位のライフタイムの問題に打ち勝つことを可能にする。レーザ源7の動作中にレーザ結晶7nを永続的に運動させるかまたは位置決めすることによって、レーザLED7cによって発射される連続的パルスは結晶7nの同じ領域に当たらず、したがってレーザ結晶7nの端部準位のライフタイムは最大繰り返し速度に影響を与えず、結晶7nはそれ以上レーザ・パルスを発射することができる。これは高い周波数出力、例えば最大で20kHzの範囲のレーザ・ビーム4を、例えば2.94μmの波長、および例えば965nmのポンピング波長で作り出すことを可能にする。
【0086】
図2wは、例えばNdをドープしたレーザ結晶7nをナノ秒パルスでポンピングするレーザ・ダイオード・バーもしくはスタック7cを含むさらなるレーザ源7を示している。ビーム4の経路に沿ってレンズ7k、7l、2色性ミラー7m、レーザ結晶7n、Q−スイッチ7r、ビームを折り曲げるための2つ以上の高反射率ミラー7u、さらなる2色性ミラー7m、非線形光学(NLO)結晶7v、および出力結合器7sが配置される。NLO結晶7vは軸7wの周りで回転させられることが可能である。このNLO結晶すなわち単一共振の光パラメトリック発振器(OPO)7vは、Q−スイッチの例えばNdドープされたレーザによってポンピングされる。NLO結晶7vを軸7wの周りで回転させることは結果として(例えば2.6〜3.2μmで)調整可能なOPOアイドラ出力につながり、それによって2.95μmが使用されることが好ましい。
【0087】
図4aは、場合によってはレーザ・ポレータ10のレーザ・ハウジング8lの中に嵌め込まれてアブレーション部位の近傍に位置決めされる使い捨てのチップ8nを示している。チップ8nは、円筒状の壁および防護ガラス8iを備えた容器を形成する。この容器はアブレーションによって除去された組織およびその他の物体を集める。チップ8nはレーザ・ポレータ10の中への容易な挿入を可能にするように形作られてもよい。防護ガラス8iはレーザ・ビーム4にとって少なくとも部分的に透明の媒質であり、ガラス、ポリカーボネート、またはレーザ・ビーム4にとって少なくとも部分的に透明である他の媒質で作られてもよい。開示されたチップ8nは、電線8pによって接続される電気的接触素子8o、8qを有する。接触素子8qはレーザ・ハウジング8lの接触素子8mと接続される。この配列は接触素子8oとの間の皮膚1のインピーダンスを測定することを可能にする。このチップは場合によっては感熱性である接着性の細長片をさらに含むことも可能である。
【0088】
この配列は、レーザ源7が活性化されるのに先立ってチップ8nが皮膚の上に配置されることを確実にするためにインターロック機構として使用されることが好ましい。チップ8nはセンサ類、例えば皮膚の湿度、温度、またはpH値を測定するためのセンサ類を含むこともやはり可能である。これらのセンサはインターロック機構として使用されることもやはり可能である。好ましい実施形態では適切に扱われないと傷の原因になりかねない平行もしくは準平行のレーザ・ビームが使用されるので、チップ8nが皮膚の上に置かれるときにのみレーザ・ビーム4が活性化されることが極度に重要である。図4bおよび図4cに示されるように、使い捨てのチップ8nは1回のみチップ8nを使用することを可能にする安全機構8sを含んでもよい。安全機構8sはレーザ・ハウジング8l内の嵌合接触を伴う2つの接触素子8t、8u、および電流が印加された後に蒸発するかまたは機械的に壊れるかまたは電子装置(例えば再プログラムされることが可能なマイクロチップ)である溶融素子を含む。穿孔が終了するとその後、そのような変化が安全機構8sに加えられる。安全機構8sの状態はチップ8nが1回のみ使用されることができるようにレーザ・ポレータ10によって制御される。チップ8nはチップ8の前方で皮膚1を引き伸ばすための手段8w、例えば図4dに開示されるような弾性のリングを含んでもよい。チップ8nが皮膚1に押し付けられると、この弾性リングが皮膚1を半径方向外側に押し、それにより、弾性リングの内側の皮膚が引き伸ばされ、皮膚の表面は主に平面になる。
【0089】
図5aは皮膚1の個別孔2のアレイを示している。すべての個別孔2はほぼ同じ形状および深さを有する。
図5bは様々な形状の個別孔2aから2fを示しており、これらはレーザ・ポレータ10を制御する穿孔制御器11の支援で作り出されることが可能である。図5bに示された個別孔を作り出すために、少なくともレーザ・ビーム4の断面は変えられることが可能でなければならない。好ましい実施形態では、レーザ・ポレータ10は各々の連続的パルス・レーザ・ビーム4の断面および/またはエネルギー密度を変化させ、これは個別孔2を多数の異なる形状で作り出すことを可能にする。1つのパルス・レーザ・ビーム4当たりで除去される層が極めて少ない場合、図5cに開示されるような円錐形に形作られた個別孔2g、2h、2iでさえ作り出されることが可能である。
【0090】
図5dは、集団で微小穿孔を形成する個別孔2の規則的なアレイを有する皮膚の平面図を示している。レーザ・ポレータ10が穿孔を終了した後の生体膜上の微小穿孔は「初期の微小穿孔」と呼ばれる。穿孔メモリ12は初期の微小穿孔のデータセットを有し、これが初期の微小穿孔を規定する。初期の微小穿孔のデータセットは、各々の孔の幅、深さ、および形状、個別孔2の合計数、生体膜上の孔2の幾何学的配列、孔2と孔2の間の最短距離などを含めたどのような適切なパラメータも含む。レーザ・ポレータ10は初期の微小穿孔のデータセットによって規定されるように孔2を作り出す。これはまた、例えば図5fに開示されるように皮膚1上で個別孔2を様々な形状に配列することも可能にする。
【0091】
図5eは薬剤容器5aと貼付部材5bとを含む経皮用当て布5を開示しており、これは皮膚1上に貼付され、薬剤容器5aは個別孔2を含む領域の上に位置決めされる。この領域は、1mm2と1600mm2の間の範囲内で個別孔2の数と間隔によって決まる表面を有してもよく、好ましくは20×20mm、例えば400mm2の表面である。
【0092】
各々の個別孔2iに関して、内壁の表面および下端部の表面は重要であり、特に浸透表面Aiはこれらの両方の表面の合計である。好ましい実施形態では、レーザ・ポレータ10は浸透表面Aiを極めて正確に判定することを容易にする距離測定装置9を含む。さらなる好ましい実施形態では、表皮の開始部は角質層の厚さを最初に判定することによって見積もられる。これが今度は他方で、各々の孔2iについて補正された浸透表面Aiを判定することを可能にし、これが表皮1bの実効浸透表面を確定し、または角質層の厚さで個別孔2iの深さを増大させることを可能にする。この浸透表面Aiは、各々の個別孔2iに関して容易に算出されることが可能である。個別孔2iが例えば円筒状の形状を有する場合、浸透表面AiはD×π×Hと(D/2)2×πの和に相当し、ここでDは個別孔2の直径であり、Hは個別孔2の深さまたは表皮1bの中の個別孔2の深さの合計である。孔2の実効浸透表面Aiはしばしば正確にDとHで規定される幾何学形状に対応しないが、これは孔2の表面が粗くなり得ること、または人工物を含み得ることが原因であり、これは実効浸透表面が計算された浸透表面Aiよりも大きいことを意味する。浸透表面Aiは少なくとも実効浸透表面の妥当な推定値である。普通では、孔2の浸透表面Aiと実効浸透表面との間の差異はわずかのみであるかまたは存在しない。このとき、n個の個別孔2iの合計の浸透表面Aはすべての個別孔2iのすべての浸透表面Aiの和Aである。
【0093】
表皮の各々の個別孔2は、普通では1日当たり10から15μmの細胞成長を有し、これらの細胞は方向Zで個別孔2の下端部から角質層1aへと成長する。この細胞成長は各々の個別孔2iの浸透表面Ai、すべての個別孔2の合計の浸透表面Aをそれぞれ時間の関数で減少させる。
【0094】
最大で100または1000または10000またはそれ以上であることもあり得る個別孔2の合計数に応じて、個別孔2の幾何学的形状、および細胞成長を考慮に入れると時間の関数である合計の浸透表面が広範囲で変化することがあり得る。時間の関数である合計の浸透表面は孔2の数の適切な選択およびこれらの幾何学的形状および場合によっては付加的な再生層(閉鎖包帯、様々な化学物質など)によって予測および計算されることが可能である。
【0095】
図6aおよび図6bは時間の関数である合計浸透表面Aの実例を示している。図4aおよび4bは補正された合計浸透表面A(t)を示しており、これは表皮1aのみの合計浸透表面A(t)である。レーザ・ポレータ10は生体膜1の微小穿孔を、前記生体膜1内に微小孔2のアレイを作り出すことによって可能にし、それにより、微小孔2の数およびこれらの微小孔2の形状は微小孔2の合計が初期の浸透表面を形成できるように、および初期の浸透表面の浸透表面A(t)が微小孔2内の細胞成長のせいで所定の時間の関数で減少できるように適切に選択される。
【0096】
図6aによる初期の穿孔のデータセットは異なる形状を備えた円筒状微小孔2の3つの群を含み、
・第1の群は250μmの直径、50μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A1を備えた415個の孔から成り、
・第2の群は250μmの直径、100μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A2を備えた270個の孔から成り、
・第3の群は250μmの直径、150μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A3を備えた200個の孔から成る。
【0097】
時間の関数である合計の浸透表面Aは3つの浸透表面A1、A2、およびA3すべての和である。
初期の微小穿孔を意味する個別孔2iの全部は極めて短い時間的期間の中で、例えば2〜3秒の数分の一の時間範囲内で作り出され、それにより、穿孔の時間TPから始まって、初期の浸透表面を形成するすべての形成孔2iの和は細胞成長のせいで時間の関数として減少する。時間TCで個別孔2iのすべてが閉じられ、これはバリヤ特性が大幅に増大することを意味する。
【0098】
図6bによる初期の穿孔のデータセットもやはり異なる形状を備えた円筒状微小孔2の3つの群から成り、
・第1の群は50μmの直径、50μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A1を備えた4500個の孔から成り、
・第2の群は50μmの直径、100μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A2を備えた2060個の孔から成り、
・第3の群は50μmの直径、150μmの深さ、および時間の関数である浸透表面A3を備えた1340個の孔から成る。
【0099】
合計の浸透表面Aは3つの浸透表面A1、A2、およびA3すべての和である。
孔2の数とこれらの形状、特に孔2の直径と深さに応じて、合計浸透表面Aの時間的関数は広範囲に変えられることが見込まれる。これは、個別孔2の穿孔が初期の浸透表面を決定するばかりでなく時間と共に変わる合計浸透表面Aの関数も決定することを明らかにしている。図6aおよび図6bは90mm2の初期の浸透表面から始まって9日の時間的期間にわたる合計浸透表面Aを示している。浸透表面Aは9日以内で極めて小さい値またはゼロまで減少する。個別孔2の形状に応じて、この時間的期間ははるかに短く、例えば丁度1日またはさらに短く、例えば数時間になることもあり得る。
【0100】
時間の関数である殆どどのような浸透表面も個別孔2の数と形状との適切な選択によって達成されることが可能である。図7は時間の関数である浸透表面の所定の関数AGを示している。図7はまた、時間と共に変わる個別孔2の多様な群A1、A2、A3、A4、A5、...の浸透表面も示している。各々の群は孔の数、直径および深さによって規定される。すべての個別孔2が円筒状の形状を有する。すべての群の個別浸透表面(A1、A2、A3、A4、A5、...)を組み合わせることによって浸透表面A(t)が得られ、この関数は所定の関数AGに極めて類似している。個別孔の多様な群、それらの数、およびそれらの形状は当業者に知られている数学的方法によって決定されることが可能である。
【0101】
図5eは薬剤5aを含み、個別孔2の上で皮膚1上に固定される当て布5を示している。図8は、この薬剤の血清中濃度Sを血中の時間の関数として示している。この薬剤は受動的拡散によって浸透表面に入っている。浸透表面に入る薬剤の量は時間と共に変わる浸透表面A(t)によって主に決定される。したがって、時間の関数である血清中濃度は時間TPにおける初期の微小穿孔による皮膚1の適切な穿孔によって決定されることが可能である。
【0102】
図9aから図9bは同じ量の薬剤、例えば100mgのアセチルサリチル酸の投与を示しており、この薬剤は図5eに開示されるように皮膚1上に配置される。時間の関数である浸透表面A(t)に応じて、血清中濃度のレベルならびに薬剤が放出される時間が予め記述されることが可能である。図9aでは、浸透表面A(t)は約2時間の短い時間的期間にわたって最大血清中濃度が約25g/lになるように選択される。図9bは約2時間の短い時間的期間にわたって約30g/lの最大血清中濃度を伴う薬剤の高速適用(ターボ)を示している。本発明の1つの利点は、激しい変動を示す経口服用OAとは対照的に、経皮適用TDでもって血清中濃度がほぼ一定値に達することである。さらなる利点は、皮膚1に塗布される同じ量の薬剤、例えば同じ当て布が時間と共に変わる浸透表面Aの関数によってのみ決まる多様な血清中濃度を生じさせることである。これは、同じ薬剤を多様な方式で投与することを可能にする。これは同じ薬剤を個別の方式で投与することもやはり可能にし、ここでは薬剤が適用される個人の個々のパラメータに応じて浸透表面が作り出される。
【0103】
これは、疾病を治療するためにマイクロポレータを使用することもやはり可能にする。疾病を治療するこの方法は、所望の効果を誘発するように意図される薬剤の経皮供給にとって望ましい寸法特性を有する孔を作り出す目的で、患者の皮膚内の複数のスポットの各々にエネルギーの繰り返しビームを当てる工程、および所望の効果を誘発するのに有効な量で薬剤が孔を通って皮膚に吸収されることができるように薬剤を孔に適用する工程を含む。この所望の効果は、普通では疾病を治療すること、または治癒させることである。このエネルギーのビームはレーザを含むが、代用としてプラズマを作り出すためのビームを含むこともやはり可能である。寸法特性は普通では孔の深さを含み、この孔の深さは5μmと200μmの間である。本方法はさらに、少なくとも10個の孔を患者に作り出す工程を含み、各々の孔は直径で少なくとも1μm、深さで少なくとも1μmである。本方法はさらに、寸法特性に関して前のパルスと後のパルスとの間にフィードバックを供給する工程、およびこのフィードバックの関数として後のパルスを自動的に変える工程を含む。孔に薬剤を適用する工程は当て布で薬剤を皮膚に適用する工程を含むことが好ましい。
【0104】
レーザ装置を市販する方法は、所望の効果を誘発するように意図される薬剤の経皮供給にとって望ましい寸法特性を有する孔を作り出す目的で、患者の皮膚内の複数のスポットの各々にエネルギーの繰り返しビームを当てるために医療専門家に使用説明書を供給する工程を含む。この所望の効果は普通では疾病を治療すること、または治癒させることである。本方法は、所望の効果を誘発するのに有効な量で薬剤が孔を通って皮膚に吸収されることができるように薬剤を孔に適用することをこの専門家にアドバイスする工程をさらに含むことが好ましい。寸法特性は孔の深さを含むことが好ましく、適切な孔の深さが5μmと200μmの間であることをこの専門家にアドバイスする工程をさらに含む。この使用説明書は、本装置が寸法特性に関して前のパルスと後のパルスとの間にフィードバックを供給すること、およびこのフィードバックの関数として後のパルスを自動的に変えることをこの専門家にアドバイスする工程をさらに含むことが好ましい。
【0105】
マイクロポレータ10は純粋の美容処置のために使用されることもやはり可能であり、ここでは生体膜1、例えば皮膚は複数の個別孔2を有することができるように穿孔処理される。これらの孔2は、或る一定時間の後にこれらの孔2が新たに発生した細胞で満たされることができるように表皮内で細胞成長を開始する。唯一の目的は美容上の理由でヒトまたは動物の皮膚を美しくすることである。微小孔のアレイを作り出すこの美容処置は、多数の領域で細胞成長を生じさせるために数回、例えば10日毎に繰り返されてもよい。
【0106】
フィードバック・ループ13、個別孔2の深さを測定するためのそれぞれの装置9、ならびに穿孔制御器11は本発明で開示されるようなレーザ・ビームを利用するマイクロポレータ10ばかりでなく、ヒトまたは哺乳動物の皮膚または粘膜、または植物の外側組織層などの生体膜に全体的もしくは部分的に孔を設けるために機械的、水圧、音波、電磁気、電気的または熱的手段を利用するマイクロポレータ10も含めてどのような種類のマイクロポレータ10でも使用されることがあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】レーザで孔を設けられた皮膚の1つの孔の概略の断面を示す図。
【図1a】レーザで孔を設けられた皮膚の3つの孔の概略の断面を示す図。
【図2】レーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2a】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2b】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2c】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2d】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2e】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2f】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2g】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2h】複数の開口を備えたプレートを方向Aの光景で示す図。
【図2i】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2k】図2iによるレーザ装置の細部を示す図。
【図2l】レーザ・ビーム・プロファイルを示す図。
【図2m】レーザ・ビーム・プロファイルを示す図。
【図2n】開口の細部を示す図。
【図2o】平行または準平行のレーザ・ビームを示す図。
【図2p】平行または準平行のレーザ・ビームを示す図。
【図2q】孔の横方向の光景を示す図。
【図2r】さらなる孔の横方向の光景を示す図。
【図2s】さらなる孔の横方向の光景を示す図。
【図2t】図2iに開示されたプレートの前部の光景を示す図。
【図2u】さらなるレーザ・マイクロポレータ装置を示す図。
【図2v】2つのレーザ源を示す図。
【図2w】2つのレーザ源を示す図。
【図2x】ビーム・ホモジナイザを詳細に示す図。
【図3】光学距離測定装置を示す図。
【図3a】皮膚、孔、および光学距離測定装置のレーザ・ビームを示す平面図。
【図3b】前腕とその上のレーザ・マイクロポレータ装置の断面を示す図。
【図4a】マイクロポレータに適した先端の断面を示す図。
【図4b】この先端の前面を示す図。
【図4c】この先端の透視図。
【図4d】さらなる先端の前端部を示す図。
【図5a】微小穿孔の適切な形状の実例の透視図。
【図5b】微小穿孔の適切な形状の実例の透視図。
【図5c】微小穿孔の適切な形状の実例の透視図。
【図5d】微小穿孔のアレイを備えた皮膚を示す平面図。
【図5e】皮膚表面に取り付けられた薬剤容器を備えた孔のあいた皮膚の断面を概略で示す図。
【図5f】微小穿孔のアレイを備えた皮膚を示す平面図。
【図6a】すべての微小孔の浸透表面を経時的に示す図。
【図6b】すべての微小孔の浸透表面を経時的に示す図。
【図7】所定の浸透表面および作り出された浸透表面を示す図。
【図8】薬剤の経時的な供給を浸透表面と組み合わせて示す図。
【図9a】薬剤の経時的な血清中濃度を、同量の薬剤であるが異なる浸透表面と共に示す図。
【図9b】薬剤の経時的な血清中濃度を、同量の薬剤であるが異なる浸透表面と共に示す図。
【図10a】ビーム成形を伴わない場合と伴う場合の強度分布を概略で示す図。
【図10b】ビーム成形を伴わない場合に作り出される孔を示す図。
【図10c】ビーム成形を伴う場合に作り出される孔を示す図。
【図10d】ビーム成形を伴う場合に作り出される孔を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)パルス・ビーム(4)を発射し、レーザ・ダイオード(7c)を有するレーザ源(7)と、
b)1mm幅未満のレーザ・ビーム(4)を生体組織(1)上に向けるように該パルス・ビームを変える光学素子(8a、8b、8x)と、
c)該レーザ・ビーム(4)を様々な方向に向けるように構成された偏向器(8f)と、
d)該レーザ・ビーム(4)のエネルギー強度分布を作り直すレーザ・ビーム成形装置と、
e)複数の個別孔(2)から成る穿孔を該生体組織(1)に作り出すために該レーザ源(7)を制御する穿孔制御器(11)とを備える、該生体組織(1)に孔を設けるためのレーザ・マイクロポレータ(10)。
【請求項2】
前記レーザ・ビーム成形装置が、輪郭のくっきりした強度分布を形成するために前記レーザ・ビーム(4)のエネルギー強度分布を作り直すように構成される請求項1に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項3】
前記レーザ・ビーム成形装置が、前記レーザ・ビーム(4)の均質な強度分布を形成するように構成されたビーム・ホモジナイザ(8y、7h)を備える請求項2に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項4】
前記光学素子(8a、8b、8x)が前記レーザ・ビーム(4)の焦点を前記生体組織(1)上に合わせるように構成され、前記レーザ・ビーム(4)が均質な強度分布を焦点において有する請求項3に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項5】
前記レーザ・ビーム(4)の強度分布がシルクハット型プロファイルの形状を有する請求項3または請求項4に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項6】
前記レーザ・ビーム(4)の均質な強度分布が10%未満で変化する請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項7】
前記ビーム成形装置が、前記強度分布の中央がくぼむように前記ビーム(4)を作り直すように構成される請求項2に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項8】
前記穿孔制御器(11)が少なくとも2つの、場合によっては連続的なパルスを発射するように前記レーザ源を制御するように構成され、さらに、前記パルスを前記複数の孔(2)のうちの単一の1つに当たるように方向付けるように構成される請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項9】
前記穿孔制御器(11)がさらに、前記偏向器(8f)の配向を制御し、それにより前記レーザ・ビーム(4)を方向付けるように構成される請求項8に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項10】
前記パルス・ビーム(4)が2ミクロンから10ミクロンの範囲の波長を有する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項11】
前記パルス・ビーム(4)が2.8ミクロンと3.1ミクロンとの間の波長を有する請求項10に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項12】
前記パルス・ビーム(4)が200ナノメートル未満の波長を有する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項13】
前記パルスが1nsと1μsとの間の時間幅を有する請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項14】
前記パルスが10nsと150nsとの間の時間幅を有する請求項13に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項15】
前記レーザ源(7)のパルス繰り返し周波数が200Hzよりも高く、好ましくは1kHzよりも高い請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項16】
前記レーザ源(7)がQ−スイッチ(7f)、および前記レーザ・ダイオード(7c)によるポンピングを受けるレーザ結晶(7b)を備える請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項17】
能動的な冷却を伴うことなく前記生体組織(1)に孔を設けることを可能にするように構成される請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項18】
前記ポレータと前記制御器のうちの少なくとも一方が10秒未満で前記生体組織(1)に孔を設けるように構成される請求項17に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項19】
前記レーザ源(7)、前記光学素子(8a、8b)、前記偏向器(8f)、前記レーザ・ビーム成形装置(7h、8y)、および前記穿孔制御器(11)が、レーザ・ポレータの使用者の手に適合するようにサイズと形状とが決められたハウジングの中に少なくとも部分的に入れられる請求項1から請求項18のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項20】
前記ハウジングの中に、前記レーザ・ポレータに電力を供給するように構成された自立した電源(10c)をさらに備える請求項19に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項21】
前記光学素子(8a、8b)が前記生体組織(1)上で平行もしくは準平行のレーザ・ビーム(4)を作り出すように構成される請求項1から請求項20のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項22】
前記複数の孔(2)のうちの少なくとも1つの特性を分析するように構成されたフィードバック機構(13)を備える請求項1から請求項21のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項23】
前記フィードバック機構(13)が前記パルスのうちの連続したパルスの後に特性を分析するように構成される請求項22に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項24】
前記フィードバック機構(13)が、前記複数の孔(2)のうちの少なくとも1つを分光学的に評価するように構成される分光器(13)を備える請求項22または請求項23に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項25】
前記フィードバック機構(13)が前記個別孔(2)の深さを測定するように構成される請求項22から請求項24のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項26】
前記フィードバック・ループ(13)が、前記レーザ・ビーム(4)よりも小さい幅を有する第2のレーザ・ビーム(9d)を含む請求項25に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項27】
前記フィードバック・ループ(13)が、前記第2のレーザ・ビーム(9d)を前記複数の孔(2)の個々の1つの中、および前記生体組織(1)の表面の基準部位(X)の上へと偏向させるように構成される装置(9e)を含む請求項25または請求項26に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項28】
前記フィードバック・ループ(13)が動作可能に前記穿孔制御器(11)へと連結され、前記制御器(11)が前記複数の孔(2)の個々の1つの特性を所定の値と比較し、かつ前記個別孔(2)の特性が所定の値と少なくとも同等に大きい場合、または前記個別孔(2)の特性が所定の範囲内である場合に前記レーザ・ビーム(4)のさらなるパルスが前記個別孔(2)の中に向けられるのを阻止するように構成される請求項22から請求項27のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項29】
前記所定の値が5μmと200μmとの間の値を有する前記孔(2)の深さである請求項28に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項30】
0.05mmと0.5mmとの間の幅を有する前記レーザ・ビーム(4)を作るように構成される光学素子(8a、8b、8x)をさらに備える請求項1から請求項29のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項31】
前記レーザ・ビーム(4)が100mJ/cm2と5J/cm2との間のエネルギー密度を有する請求項1から請求項30のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項32】
前記レーザ・ビーム(4)の幅を調節するように構成された光学素子(8a、8b、8x)をさらに備える請求項1から請求項31のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項33】
吸収体(8d)が前記ビーム(4)の経路に沿って配置され、該吸収体が前記レーザ・ビーム(4)のエネルギー密度を調節するように構成される請求項1から請求項32のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項34】
前記複数の孔(2)のうちの少なくとも1つについて、断面、深さ、形状、および浸透表面から成る群から選択される少なくとも1つのパラメータを含むパラメータを保存するようにプログラムされる穿孔メモリ(12)をさらに備え、前記制御器(11)が、前記穿孔メモリ(11)の該パラメータに従って前記個別孔(2)を形作るフィードバック・ループ(13)、光学素子(8a、8b、8x)、ビーム成形装置(8y)、および吸収体(8d)のうちの少なくとも1つをさらに含む請求項1から請求項33のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項35】
前記穿孔メモリ(12)がさらに、個別孔(2)の合計数、生体膜上の該孔(2)の幾何学的配列、該孔(2)の間の最短距離、およびすべての個別孔(2)の合計の浸透表面から成る群から選択されるパラメータを有するようにプログラムされる請求項34に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項1】
a)パルス・ビーム(4)を発射し、レーザ・ダイオード(7c)を有するレーザ源(7)と、
b)1mm幅未満のレーザ・ビーム(4)を生体組織(1)上に向けるように該パルス・ビームを変える光学素子(8a、8b、8x)と、
c)該レーザ・ビーム(4)を様々な方向に向けるように構成された偏向器(8f)と、
d)該レーザ・ビーム(4)のエネルギー強度分布を作り直すレーザ・ビーム成形装置と、
e)複数の個別孔(2)から成る穿孔を該生体組織(1)に作り出すために該レーザ源(7)を制御する穿孔制御器(11)とを備える、該生体組織(1)に孔を設けるためのレーザ・マイクロポレータ(10)。
【請求項2】
前記レーザ・ビーム成形装置が、輪郭のくっきりした強度分布を形成するために前記レーザ・ビーム(4)のエネルギー強度分布を作り直すように構成される請求項1に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項3】
前記レーザ・ビーム成形装置が、前記レーザ・ビーム(4)の均質な強度分布を形成するように構成されたビーム・ホモジナイザ(8y、7h)を備える請求項2に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項4】
前記光学素子(8a、8b、8x)が前記レーザ・ビーム(4)の焦点を前記生体組織(1)上に合わせるように構成され、前記レーザ・ビーム(4)が均質な強度分布を焦点において有する請求項3に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項5】
前記レーザ・ビーム(4)の強度分布がシルクハット型プロファイルの形状を有する請求項3または請求項4に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項6】
前記レーザ・ビーム(4)の均質な強度分布が10%未満で変化する請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項7】
前記ビーム成形装置が、前記強度分布の中央がくぼむように前記ビーム(4)を作り直すように構成される請求項2に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項8】
前記穿孔制御器(11)が少なくとも2つの、場合によっては連続的なパルスを発射するように前記レーザ源を制御するように構成され、さらに、前記パルスを前記複数の孔(2)のうちの単一の1つに当たるように方向付けるように構成される請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項9】
前記穿孔制御器(11)がさらに、前記偏向器(8f)の配向を制御し、それにより前記レーザ・ビーム(4)を方向付けるように構成される請求項8に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項10】
前記パルス・ビーム(4)が2ミクロンから10ミクロンの範囲の波長を有する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項11】
前記パルス・ビーム(4)が2.8ミクロンと3.1ミクロンとの間の波長を有する請求項10に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項12】
前記パルス・ビーム(4)が200ナノメートル未満の波長を有する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項13】
前記パルスが1nsと1μsとの間の時間幅を有する請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項14】
前記パルスが10nsと150nsとの間の時間幅を有する請求項13に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項15】
前記レーザ源(7)のパルス繰り返し周波数が200Hzよりも高く、好ましくは1kHzよりも高い請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項16】
前記レーザ源(7)がQ−スイッチ(7f)、および前記レーザ・ダイオード(7c)によるポンピングを受けるレーザ結晶(7b)を備える請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項17】
能動的な冷却を伴うことなく前記生体組織(1)に孔を設けることを可能にするように構成される請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項18】
前記ポレータと前記制御器のうちの少なくとも一方が10秒未満で前記生体組織(1)に孔を設けるように構成される請求項17に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項19】
前記レーザ源(7)、前記光学素子(8a、8b)、前記偏向器(8f)、前記レーザ・ビーム成形装置(7h、8y)、および前記穿孔制御器(11)が、レーザ・ポレータの使用者の手に適合するようにサイズと形状とが決められたハウジングの中に少なくとも部分的に入れられる請求項1から請求項18のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項20】
前記ハウジングの中に、前記レーザ・ポレータに電力を供給するように構成された自立した電源(10c)をさらに備える請求項19に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項21】
前記光学素子(8a、8b)が前記生体組織(1)上で平行もしくは準平行のレーザ・ビーム(4)を作り出すように構成される請求項1から請求項20のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項22】
前記複数の孔(2)のうちの少なくとも1つの特性を分析するように構成されたフィードバック機構(13)を備える請求項1から請求項21のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項23】
前記フィードバック機構(13)が前記パルスのうちの連続したパルスの後に特性を分析するように構成される請求項22に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項24】
前記フィードバック機構(13)が、前記複数の孔(2)のうちの少なくとも1つを分光学的に評価するように構成される分光器(13)を備える請求項22または請求項23に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項25】
前記フィードバック機構(13)が前記個別孔(2)の深さを測定するように構成される請求項22から請求項24のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項26】
前記フィードバック・ループ(13)が、前記レーザ・ビーム(4)よりも小さい幅を有する第2のレーザ・ビーム(9d)を含む請求項25に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項27】
前記フィードバック・ループ(13)が、前記第2のレーザ・ビーム(9d)を前記複数の孔(2)の個々の1つの中、および前記生体組織(1)の表面の基準部位(X)の上へと偏向させるように構成される装置(9e)を含む請求項25または請求項26に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項28】
前記フィードバック・ループ(13)が動作可能に前記穿孔制御器(11)へと連結され、前記制御器(11)が前記複数の孔(2)の個々の1つの特性を所定の値と比較し、かつ前記個別孔(2)の特性が所定の値と少なくとも同等に大きい場合、または前記個別孔(2)の特性が所定の範囲内である場合に前記レーザ・ビーム(4)のさらなるパルスが前記個別孔(2)の中に向けられるのを阻止するように構成される請求項22から請求項27のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項29】
前記所定の値が5μmと200μmとの間の値を有する前記孔(2)の深さである請求項28に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項30】
0.05mmと0.5mmとの間の幅を有する前記レーザ・ビーム(4)を作るように構成される光学素子(8a、8b、8x)をさらに備える請求項1から請求項29のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項31】
前記レーザ・ビーム(4)が100mJ/cm2と5J/cm2との間のエネルギー密度を有する請求項1から請求項30のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項32】
前記レーザ・ビーム(4)の幅を調節するように構成された光学素子(8a、8b、8x)をさらに備える請求項1から請求項31のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項33】
吸収体(8d)が前記ビーム(4)の経路に沿って配置され、該吸収体が前記レーザ・ビーム(4)のエネルギー密度を調節するように構成される請求項1から請求項32のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項34】
前記複数の孔(2)のうちの少なくとも1つについて、断面、深さ、形状、および浸透表面から成る群から選択される少なくとも1つのパラメータを含むパラメータを保存するようにプログラムされる穿孔メモリ(12)をさらに備え、前記制御器(11)が、前記穿孔メモリ(11)の該パラメータに従って前記個別孔(2)を形作るフィードバック・ループ(13)、光学素子(8a、8b、8x)、ビーム成形装置(8y)、および吸収体(8d)のうちの少なくとも1つをさらに含む請求項1から請求項33のいずれか一項に記載のレーザ・ポレータ。
【請求項35】
前記穿孔メモリ(12)がさらに、個別孔(2)の合計数、生体膜上の該孔(2)の幾何学的配列、該孔(2)の間の最短距離、およびすべての個別孔(2)の合計の浸透表面から成る群から選択されるパラメータを有するようにプログラムされる請求項34に記載のレーザ・ポレータ。
【図1】
【図1a】
【図2】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図2g】
【図2h】
【図2i】
【図2k】
【図2l】
【図2m】
【図2n】
【図2o】
【図2p】
【図2q】
【図2r】
【図2s】
【図2t】
【図2u】
【図2v】
【図2w】
【図2x】
【図3】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図1a】
【図2】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図2g】
【図2h】
【図2i】
【図2k】
【図2l】
【図2m】
【図2n】
【図2o】
【図2p】
【図2q】
【図2r】
【図2s】
【図2t】
【図2u】
【図2v】
【図2w】
【図2x】
【図3】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図5e】
【図5f】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【公表番号】特表2009−506795(P2009−506795A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507066(P2008−507066)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061639
【国際公開番号】WO2006/111526
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(507344874)パンテック バイオソリューションズ アクチェンゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】PANTEC BIOSOLUTIONS AG
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061639
【国際公開番号】WO2006/111526
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(507344874)パンテック バイオソリューションズ アクチェンゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】PANTEC BIOSOLUTIONS AG
【Fターム(参考)】
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