説明

レーザービームを用いた材料の穿孔および除去装置

本発明はレーザービームを用いて材料を穿孔および除去する装置に関連し、前記装置は回転する像回転器(2);ビーム方向から見たとき像回転器の前面に設けられ、ビームの角度と位置を像回転器の回転軸に対して調整するビーム操作器(1)、像回転器の出力側に設けられた焦点部品(3)からなる。本発明は補償部品(3、13、14、15)が像回転器と焦点部品の間に設けられ、像回転器と同じ回転方向に同じ回転周波数で回転することが特徴である。補償機構は平行移動ユニット(15)と角度変更ユニット(13、14)を有し、基本設定では、回転位置が像回転器に対して調節可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザービームを用いた穿孔および材料除去のための装置に関し、本装置は回転する像回転器、ビーム方向から見て像回転器の前面に設けられビームの角度と位置を像回転器の回転軸に対して調整するビーム操作器、像回転器の出力側に設けられた焦点部品からなる。
【背景技術】
【0002】
自動車産業では、フィルタリング技術、エレクトロニクスその他多くの方面で、小孔や穿孔が多種多様の応用に必要とされる。例えば噴射過程で一様な燃料分布を確実にするように特定の配置をされた多数の穿孔や小孔が結果的に燃料消費を少なくする燃料噴射ノズルがある。この分野そして他の応用で可能な限り一様で再現可能な分布を達成するため、穿孔は極小かつ高精度に製造されなければならない。典型的な孔径は、例えばディーゼル噴射ノズルの場合、部材の厚さが1mmに対して100μm程度で、精度1μmが必要である。同等の要求があり、一部はより小径の直径20μm〜50μmの孔の他の例は、織物繊維の出糸突起、空気軸受けの出口ノズル、ワイヤーカットEDMの開始孔の穿孔である。これら全ての例において、従来の穿孔方法は部材、アスペクト比、要求された孔の幾何学的配置、作業速度に対する要求により限定された程度で使用されるに過ぎない。
【0003】
特有の照射特性を有するレーザー技術は、過去何年もの間、上述の方面で多くの応用を導く代替案を提供した。ここでは異なる穿孔原理が用いられる。
【0004】
単発穿孔の場合、パルス継続時間が典型的には数百μsの単発のレーザーパルスが部材を加熱・溶融し、部分的蒸発により穿孔から放出する。
【0005】
衝撃穿孔の場合、多数の連続的パルスにより穿孔は形成される。穿孔のさい、小径の孔が最初に形成され、より大きい孔が次に切り抜かれる。
【0006】
これらいずれの場合も穿孔過程自体は強力な溶融の形成に特徴があり、そのため孔の品質は低い。最高の品質はいわゆるラセン穿孔技法、すなわち部材が主に短レーザーパルスにより蒸発する平面的除去過程で達成される。高度に反復的なレーザーの個々のレーザーパルスが重なり合って並べられ、円軌跡に沿って孔周囲に沿って導かれる。各々の完全な回転により、レーザーエネルギーと部材によるが、0.1μm〜10μmの薄い層が除去される。多数のこのような円運動により適切な孔が形成される。孔径はビーム回転径とビーム径に追随する。連続するパルスの重畳程度は、一方では照射を受けていないエッジの数が可能な限り少なくなるように、他方ではレーザー照射が、先行するパルスにより溶融した液状部に完全には当たらないように、2つのパルスの間に移動するように選択される。典型的には重畳程度は50%〜95%の範囲に選択される。
【0007】
溶融物はレーザービームが通過したあと再度凝固するため、部材はほとんど蒸発で除去され、その結果、高品質の孔の壁が得られ、また孔の再現性が高い。この効果は短パルスおよび極短パルスのレーザーの使用で更に増加する。
【0008】
特にフェムト秒ないしピコ秒領域のレーザーは、パルスパワーが100MWの範囲であり、溶融膜の厚さが1μmを切るため、特に孔の品質が高くなる。
【0009】
この穿孔過程を使用するための必須の前提条件は輪郭上をレーザービームが回転することである。最も単純な場合は円形の軌跡である。レーザービームの円運動速度は極めて速いので、ビームを回転させる光学系への要求は特に厳しい。例えばレーザービームの径が20μm、重畳度が50%、パルス周波数が20kHzの場合、円運動速度は200mm/sである。要求の孔径が60μmならばレーザービームの回転周波数は約1000Hzとなる。
【0010】
このような高周波数は、もはや従来のビーム偏向系、たとえばガルバノメーター走査系では実現できない。この目的のため多数の異なる高速回転する系が過去に開発され、既に文献に記載されている。
【0011】
レーザービームを円軌跡に回転させる一つの可能性はレーザービームを円軌跡に導くような回転するくさび板からなる構成により提供される。この系ではレーザービームはくさび板と同一の速さで回転する。孔の径と開き角の設定は、回転するくさび板の相互の移動と回転により実現される。
【0012】
もう一つの可能性はレーザー照射が中を通過するような回転する像回転器を使用することである。像回転器を通過後レーザー照射は像回転器の回転軸とそれ自体の両方について回転する。静止した焦点レンズを像回転器の下流に設置すれば、円形の孔が焦点を合わせられたレーザー照射の2つの回転運動により形成される。レーザー照射自体の回転により、最小の孔径をらせんの径にすること、つまり像回転器の軸の周りのレーザー照射の回転径をゼロにすることも可能になる。しかしこれはレーザー照射自体が回転していない系では不可能であり、その場合は最小のらせん径が常に必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、レーザービームを用いて部材を穿孔および除去する本発明の装置の一部品である像回転器を製造する際に発生する幾何学的欠陥の影響を補償することである。像回転器はドーブプリズムやアッベ・ケーニッヒプリズムのような照射伝播プリズムだけでなくK鏡機構のような反射系もあり得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の型の装置においてこの目的は、補償部品が像回転器と焦点部品の間に設置され、像回転器と同じ回転方向と回転周期で回転し、補償部品は平行移動ユニットと角度変更ユニットからなり、補償部品は、基本設定では、回転位置が像回転器に対して調節可能であることにより達せられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成によれば一様な回転動作(ビーム形状)とその結果として一様な除去が作業平面で実現され丸孔が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の構成に必須の部品は、基本設定では、相対的回転位置が像回転器に対して調節可能な補償部品である。好ましくは、傾斜可能に支持された平行平面板と傾斜可能に支持された二枚のくさび板を有する平面変位ユニットからなるこのような補償部品により、像回転器から出射されたレーザービームは図的な円軌跡から中心に再調整される。補償部品は、好ましくは中空軸内に置かれた像回転器の軸の周りを回転可能に設置され、ドーブプリズムと同じ角速度で回転する。この構成により、像回転器に基礎を置く回転光学系の全ての製作および調整誤差を完全に補償することができる。この機構の特に有利なことは、修正のための調整が一度は必要であるが、その後は像回転器への全入力ビームの位置と角度に適用できることである。補償部品は調整作業後には中空軸に堅く結合される。
【0017】
ビーム回転の径はビーム操作器を通じて、したがって像回転器に対する入力レーザービームの角度調整により設定される。ビームの横移動は、好ましくは焦点レンズである、穿孔光学に用いられる焦点部品の焦点位置にある部材へのレーザー照射の入射角の変化に影響する。ビーム操作器による変位とビーム傾斜の設定に従い、異なる径を有する正負の円錐度を有する孔が形成され得る。
【0018】
さらに像回転器と、同時回転する補償部品すなわち好ましい実施例における修正・調整くさび板との特別な配置のおかげで、より複雑で従ってより融通の利くユニットが、最後に述べた部品の入射角と回転径のためのビーム操作器の静止調整部品に利用できる。
【0019】
ドーブプリズムとK鏡は付加手段なしで像回転器として用いられるが、偏向および反射面の僅かの角度誤差により、プリズムの回転に偏向誤差を引き起こし、不規則なビーム運動をもたらすという決定的な欠点があることを強調しておく。例えば原理的にレーザービームはプリズムが1回転するとドーブプリズム内でプリズムの2倍の角速度で回転する。レーザービームがドーブプリズムに特定の角度で入射したとき、レーザービームはプリズムの1回転の間に同一直径の2個の同心円を描く。プリズムの幾何学的寸法が僅か数mradないしはμ(N)mだけ偏差しただけでも2個の円の直径は明らかに異なり、円の中心はもはや同心ではなく、円軌跡は一方向に扁平になる。もし入射光ビームが正確にプリズムの回転軸に位置したならば、レーザービームは幾何学的誤差のため、それ自体のみの代わりに、プリズムと同じ角速度でプリズムに追随して円軌跡に沿って回転する。
【0020】
これらの不十分さは既に文献に記載され補償不可能と考えられてきたが、像回転器の出力側に補償部品を備えた本発明の構成により取り除かれた。
【0021】
好ましい実施態様において補償部品の一部である平行移動ユニットは、好ましくはレーザービームの軸に垂直方向に傾斜可能または回転可能に保持された平行平面板である。レーザービームの軸に対して小角度で平行平面板を調整することは、像回転器の製造欠陥によるレーザー照射の、理想的に製造された像回転器を通過したレーザービーム位置からの位置ずれを補償する。
【0022】
第二の部品は補償機構の一部で、好ましくは、それぞれが像回転器と補償部品の回転軸に垂直な方向に、従ってレーザービームの軸にも垂直な方向に回転可能に設けられた二個のくさび板を備えた角度変更ユニットである。好ましくは逆のくさび角度を有する、この二個のくさび板により、像回転器の製造欠陥によるレーザー照射の、理想的に製造された像回転器を通過したレーザービーム位置からの角度変化は補償される。
【0023】
基本配置では、二個のくさび板と平行平面板は互いに調整可能に保持される。この末端には適当な作動装置が設けられる。基本配置では、さらにこれらの部品は像回転器に対して固定した配列で中空軸内に取り付けられる。
【0024】
最初に述べたように像回転器はプリズムにより最も簡単な構成をとることが可能である。さらにドーブプリズムが像回転器に用いられる。
【0025】
像回転器内のプリズムは、像回転器が1回転したとき、プリズム内を導かれるレーザービームが何回も回転するように、最も簡単な場合2回転するように構成される。
【0026】
本発明の構成により、例えば、高速回転レーザービーム穿孔光学機器の要素としてのドーブプリズムの系に内在する制約が取り除かれる。
【0027】
最も単純な構成では像回転器は中空軸モーターに組み込まれる。
【0028】
ドーブプリズムは安価な設計が望まれ、レーザー照射源がプリズムから高度に伝播される波長で使用されるときいつも像回転器として好まれるが、固定式K鏡機構は異なる波長の照射源が全体構成中で使用されるとき像回転器として使われる。
【0029】
このようなK鏡機構は中空軸モーターに対する像回転器の調整が、例えば温度変化により問題があるときも、調整可能として配備される。
【0030】
ドーブプリズムの代わりにアッベ−ケーニッヒプリズムも像回転器として使用可能である。
【0031】
補償部品の中で角度変更ユニットとして好ましく用いられる二個のくさび板はビーム方向から見たとき互いに隣接するように設けられる。簡単な構成では二個のくさび板は固定した関係のまま回転することができる。
【0032】
レーザービームの入射ビームの位置と入射ビームの角度を設定するため、対応する部品がビーム操作器に設けられる。これらの調整ユニットは高度に動的な作動装置である。
【0033】
このようなビーム操作装置は、例えば回転径を設定するのに光学素子が必要で入射ビーム角が同時回転できない回転式くさび板機構と比べると利点がある。これにより機械的構造が簡単になり構造寸法がかなり小さくなる。さらにこの構成により1000Hzを超えるより速い回転速度が像回転器と組み合わせて実現される。レーザービームはプリズムの一回転の間に2回転するから、これはこの系のおかげでプリズムは500Hzで回転すればよいことを意味する。
【0034】
必要な1000Hzを超える高い偏向周波数を実現するためニオブ酸リチウムを基材とするねじり傾斜鏡のような高度に動的な偏向系が用いられる。
【0035】
例えば本発明の実施形態においては高度に動的な走査器がビーム偏向、従ってビーム操作器内の回転径を設定するのに用いられる。回転角とビーム偏向を同期させることにより、例えば人工繊維の出糸突起の製造に必要な長方形や自由形状のような所望の穿孔形状が実現される。
【0036】
補償部品の後にビーム方向に設けられる焦点部品は、加工部品上の焦点または焦点深さを事前または加工中に設定できるように、ビーム方向に移動できるように好ましくは付加的に設けられる。
【0037】
像回転器中のレーザービームの入射ビーム位置、そして孔の入口径を設定するため、そして入射ビーム角度、そして孔の出口径を設定するため、光路に垂直な方向に回転できるように設けられた回転可能なくさび板と、くさび板と結合してビーム伝播方向に移動可能な鏡が用いられる。この構成により二つの調整因子を結合して設定できる。例えばもし入口径がくさび板の調節で変更されたが出口径は変わっていないとすると、入射ビーム角度は鏡とくさび板の移動により適合させられる。
【0038】
レーザー照射の偏光は孔の高い品質を形成し管理する上に重要な因子である。レーザー照射の一回転中のレーザー照射の異なる偏光方向は異なる除去結果を生む。これが、偏光が入射平面に対して定められた方法で同時回転させられるとき、または円偏光レーザー光が用いられるときに有利な理由である。しかしこの結果、同時回転しなければならない特別な光学要素が必要になる。偏光を同時回転させるため、像回転器と同期して同時回転するλ/2板がビーム操作器と像回転器の間に設けられる。
【0039】
別の方法として、直線偏光照射の場合、前記の照射は静置されたλ/4板を用いて円偏光照射に変換され、偏光に起因する除去のばらつきは低減される。
【0040】
本発明の特定の実施態様においては、照射されたレーザービームの偏光に起因する性能のばらつきが最小化され、ビーム回転に沿った穿孔された孔形状への影響が認識できないような、特殊な台形角度を有するドーブプリズムが用いられる。像回転器のプリズムはプリズムの一回転中の偏光に起因する除去ばらつきが最小化された台形角度を有する。台形角度はできるだけ大きく保たれるが、これは回転光学系の構成長を著しく長くする、従って装置のため大きな台形角度と最大の構成長を互いに比較検討する必要がある。
【0041】
もし回転対称でない穿孔が形成されたらならば、ビーム操作器の要素が像回転器の回転運動と同期して運動できるように調整される。
【0042】
本発明の装置は特に最初に従来技術を参照して概説した分野で用いられる。
【0043】
本発明の更なる利点と特徴は図と結合した以下の実施態様の記載から明らかになる。
【実施例】
【0044】
本装置は図に示されるようにレーザービームを用いて材料に穿孔し除去するように設けられている。
【0045】
本装置は符号5を付したレーザービームの延長方向に見てビーム操作器1、像回転器2、補償部品3、焦点部品4に分割できる。
【0046】
像回転器2は高速回転する中空軸モーター6内に設けられ、その中心が穿孔光学系を形成し、図示された実施態様ではドーブプリズム7が像回転器2として用いられる。ドーブプリズム7は、像回転器2または中空軸モーター6がそれぞれ回転矢印8に描かれたように一回転したとき、プリズム7を通り抜けるレーザービーム5が中空軸モーター6の出力側に二回転矢印8’で示されているように2回転するように、中空軸モーター6内に設置される。
【0047】
ビーム操作器1はレーザー5のビーム方向から見たとき中空軸モーター6の前に設けられ、符号9、10を付した2つの調整部品からなる。調整部品9は、図1のように端に鏡9が軸11(軸11はレーザービーム5のビーム方向の垂直方向に延びている)について回転可能または傾斜可能に保持され、レーザービーム5の入射ビーム位置を調整する機能をもつ部品である。調整部品10は像回転器2のプリズム7に入射するレーザービーム5の入射ビーム角度を調整する機能をもつ。2つの調整部品9、10には図の細部は示されていないが、例えばピエゾ調整器、固体傾斜調整器のような高度に動的な作動装置が備えられており、符号12をつけた加工平面で回転対称でない穿孔を実現することができる。
【0048】
レーザービーム5のビーム方向から見て、2つの調整可能なくさび板13、14が平行平面板15と共に中空軸モーター6の後ろに設けられる。この平行平面板と2つの調整可能のくさび板13、14は回転軸について同軸的に回転可能なスリーブ16内に保持される。ビーム方向から見て平行平面板15は中空軸モーター6と像回転器2それぞれの直後に設けられ、レーザービーム5の平行移動ユニットを形成し、ビーム方向から見て平行平面板15に続くくさび板13、14はレーザービーム5の角度変更ユニットを形成する。この補償部品3により、ドーブプリズムの幾何学的ないしは位置欠点により中心からずれたレーザービーム5は中心すなわち像回転器2の回転軸に戻すように調整できる。
【0049】
このような構成により平行平面板15は軸17について、二方向の矢印18に示されるように、ビーム軸または中空軸モーター6の軸に直交する方向に傾斜させることができる。このことは各々の軸19、20について、ビーム軸に直交する方向に二方向の矢印21に示されるように傾斜可能な二つのくさび板13、14についてもまた真である。二枚のくさび板13、14についての角度誤差(平行移動)を修正するため、図1に見られるように、これらのくさび板は逆方向のくさび角度を有する。しかしこれらのくさび角度は同一でなくてもよい。
【0050】
平行平面板15と同様に二枚のくさび板13、14も補償部品3の内部で、互いに異なる構成と互いに異なる距離で、その時々平板とくさび板の幾何学的関係に依存して構成される。しかし補償部品のこれらの光学部品はスリーブ16内で調整されるようにスリーブ16内に設けられ、レーザービームを設定するため、調整完了後は互いに固定された位置関係を保って像回転器2と一緒に回転し、そのため補償部品3のスリーブ16は図示の結合部品23を通して結合していることが重要である。スリーブ16を通じたこの結合のおかげで中空軸モーター6、像回転器2、補償部品3、スリーブ16はそれぞれ同じ回転速度で回転している。
【0051】
ビーム方向から見ると、補償部品3の後ろに設けられた焦点部品4は、図1にはレーザービーム5が加工部品と加工面12のそれぞれに焦点を結ぶための1枚のレンズしか示されていないが、1枚から数枚の焦点レンズからなる。この焦点部品4は両矢の矢印22で示されるように、ビーム方向に追加的に移動可能で、深い孔や孔の幾何形状変更のためレーザービーム焦点の連続的な調節を可能にする。
【0052】
図2はプリズム7、平行平面板15、二枚のくさび板13、14を通ったレーザービーム5の延長を示す。
【0053】
プリズム7に入射したビーム5はプリズム7中の対応する反射とプリズム7の出口面での回折により変位する。製造工程の公差によりプリズム7から出射するレーザービーム5は位置と角度が、理想的なプリズムを通って得られるレーザービーム39と図2のように異なる。図2は平行平面板15とくさび板13、14の軸がレーザービーム5と39により形成される平面と垂直で、プリズム7に対して同軸的に変化または回転する補償部品3を示す。これは空間位置と角度のずれを平面的なずれに変換する(プリズム7に対する補償部品3の回転運動が両矢の矢印40により示される)。
【0054】
角度を変更するためくさび板13、14が、くさび角度と入射レーザービームに対するくさび角度の方向、各々の軸19、20に対する傾きを考慮して、レーザービーム5の角度を理想的なレーザービーム39の角度に変更するように備えられる。レーザービーム5はくさび板13、14により位置も変えられる。平行平面板15はレーザービーム5の位置を、ビーム5に角度変化をもたらさないで変更する。これは実際のプリズム7のレーザービーム5が理想的なレーザービーム39の位置に調整されるという効果を有する。
【0055】
図2を参照して見られるように補償部品3により、像回転器2の製造欠陥により発生する空間位置とレーザービーム5の角度変化を補償することが可能である。
【0056】
各図は他の図と同一またはほぼ同一の部品を示しており、似た符号が使用されているので、一つの実施態様の観察は他の実施態様に類推で応用できることに注意すべきである。
【0057】
同様に図2から8の各図にはそれぞれレーザー照射の理想的な光路を一点鎖線で、(プリズムの幾何学的および位置欠陥を有する)実際の光路を実線で表わされている。
【0058】
図3は図2のドーブプリズムに比べて大きい台形角度を有するドーブプリズム7を示す。このような大きな台形角度を有するドーブプリズム7はレーザー照射の一回転において偏光により引き起こされる除去のばらつきを最小にする効果がある。
【0059】
図4の実施態様において像回転器として使用されているのはアッベ−ケーニッヒプリズム25だけである。アッベ−ケーニッヒプリズム25は図2、3に示されたドーブプリズム7と置換可能である。
【0060】
ドーブプリズム7やアッベ−ケーニッヒプリズム25の代わりにK鏡構造26も像回転器2に用いられる。像回転器としても知られるこのようなK鏡構造26は二枚の鏡面28からなる屋根型の鏡構造27、さらに前記の鏡面28と対向する鏡面29からなり、これは第一の鏡面28に当たるレーザービーム5が先の鏡面29の方向に向かい、そこから他の鏡面28に当たり、そこから機構の軸24の方向に伝播するように設けられている。固定された、すなわち硬い鏡面28、29を含むこのK鏡構造26において、再び、K鏡構造26から出射するレーザービーム5が軸24に平行には進まないという問題が発生するので、上述したような補償部品3による対応する補正が再び必要となる。
【0061】
図5は硬いK鏡構造26を示しているが、図6は二枚の鏡面28’が互いに分離され、それぞれの軸31に対して旋回する矢印32で示されるように調整可能で、更に次の鏡29’が軸33回りに矢印34の方向に旋回可能で、さらに両矢印35の方向に軸24に垂直距離を移動可能で調整可能なK鏡構造30を用いた可動構造を示している。これらの調整可能性により中空軸モーターに対する像回転器の位置誤差は補償できる。
【0062】
図7は図1の構成を示しているが、レーザービームの光路内のビーム操作器1の入力側に設けられた追加のλ/4板36を有する。このλ/4板36は直線偏光レーザー照射を円偏光レーザー照射に変換する。他の点では図7の装置構成は図1に示されたものと同じで、図1を参照して記載された。
【0063】
最後に図8は図1の装置と同様であるが、レーザービーム5の光路内のビーム操作器1の出力側に設けられた追加のλ/2板37を有する。このλ/2板37は連動輪と二個の結合部材とからなる回転ユニット38に取り付けられ、二個の結合部材はそれぞれ連動輪と中空軸モーターの間および連動輪とλ/2板37の間にあり、これによりλ/2板37は中空軸モーター6と同軸方向に回転させられる。このようなλ/2板37はレーザー照射の偏光を同時回転させる機能を有するため、レーザー照射の一回転において偏光により引き起こされる除去のばらつきを最小にする。
【0064】
図7のλ/4板36、図8のλ/2板37は図2から6に示された他の装置でも図7、8に示されたように対応する位置で使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】ドーブプリズム様式の像回転器を有する本発明の装置。
【図2】図1の像回転器、補償部品、焦点部品の細部。
【図3】図2に対応する図、但しより大きな台形角度のドーブプリズムを有する。
【図4】図2、3に対応する図でアッベ−ケーニッヒプリズムが像回転器として用いられる。
【図5】図2から4に対応する図で固定構成のK鏡構造が用いられる。
【図6】図5に対応する図、但し調整可能なK鏡構造が用いられる。
【図7】図1に対応する説明図で、図1と比較してλ/4板がビーム操作器の入力側に備えられている。
【図8】図1に対応する説明図で、図1と比較してλ/2板がビーム操作器の出力側に備えられている。
【符号の説明】
【0066】
1 ビーム操作器
2 像回転器
3 補償部品
4 焦点部品
5 レーザービーム
6 中空軸モーター
7 ドーブプリズム
8、8’ 矢印
9 調整部品、鏡
10 調整部品
11 軸
12 加工面
13、14 くさび板
15 平行平面板
16 スリーブ
17 軸
18 矢印
19 軸
21 矢印
22 矢印
23 結合部品
24 軸
25 アッベ−ケーニッヒプリズム
26 鏡構造
27 鏡構造
28 鏡面
29 鏡
29 鏡面
30 鏡構造
31 軸
32 矢印
33 軸
34 矢印
35 矢印
36 λ/4板
37 λ/2板
38 回転ユニット
39 レーザービーム
40 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する像回転器と、
ビーム方向から見て像回転器の前面に設けられ、像回転器の回転軸に対してビームの角度と位置を調整する機能を有するビーム操作器と、
像回転器の出力側に設けられた焦点部品とからなるレーザービームを用いた材料の穿孔および除去装置において、
補償部品(3)が像回転器(2)と焦点部品(4)との間に設けられ、像回転器(2)と同じ回転方向と同じ回転周波数で回転し、補償部品(3)が平行移動ユニット(15)と角度変更ユニット(13、14)からなり、
補償部品(3;13、14、15)が基本構成では回転位置を像回転器(2)に対して調整可能であることを特徴とするレーザービームを用いた材料の穿孔および除去装置。
【請求項2】
平行移動ユニットが平行平面板(15)からなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
平行平面板(15)が回転軸に垂直方向に回転可能であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
角度変更ユニットが二個のくさび板(13、14)からなり、それぞれが回転軸に垂直方向に回転可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
二個のくさび板(13、14)が反対のくさび角度を有することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
二個のくさび板(13、14)と平行平面板(15)が基本構成で互いに調整可能に維持されていることを特徴とする請求項2または4に記載の装置。
【請求項7】
像回転器(2)がプリズム(7;25)からなることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
像回転器(2)がドーブプリズム(7)により形成されてなることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
像回転器(2)が一回転するときプリズム(7;25)を通過するレーザービーム(5)が二回転するように像回転器(2)内にプリズム(7;25)が設けられたことを特徴とする請求項6または7に記載の装置。
【請求項10】
像回転器(2)が硬いK鏡機構(26)からなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
像回転器(2)がアッベ−ケーニッヒプリズム(25)からなることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項12】
二個のくさび板(13、14)が互いに近接して設けられたことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項13】
像回転器(2)が中空軸モーター(6)内に設けられたことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
ビーム操作器(1)が入射ビーム位置の調整と入射ビーム角度の調整をする各々の調整部品(9、10)からなることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
各々の調整部品(9、10)が高度な動的作動装置からなることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
補償部品(3)の部品(13、14、15)がスリーブ(16)内に像回転器(2)の軸について同軸的に回転可能であるように設けられたことを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
ビーム方向から見たとき焦点部品(4)が補償部品(3)の後ろに設けられ、焦点部品が付加的にビーム方向(22)に移動可能に備えられたことを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
入射ビーム位置そして孔入口径と、入射ビーム角度そして孔出口径が、光路に垂直方向に回転可能なくさび板(10)とビーム伝播方向にくさび板と共に移動可能な鏡(9)により調整可能なことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項19】
プリズム(7)が、プリズム(7)の一回転において偏光により引き起こされる強度ばらつきが最小になるような台形角度を有することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項20】
像回転器(2)と同期して同時回転するλ/2板(37)が、ビーム操作器(1)と像回転器(2)の間に、偏光を同時回転させるために設けられたことを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
非回転対称な孔をあけるため、ビーム操作器(1)の要素が像回転器(2)の回転運動と同期して運動可能なことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項22】
像回転器が、反射表面(28’、29’)が互いに調整可能なK鏡機構(30)からなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項23】
ビーム伝播方向に垂直方向に調整可能なλ/4板(36)がビーム操作器(1)の前面に設けられたことを特徴とする請求項1から22のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−543576(P2008−543576A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518647(P2008−518647)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001964
【国際公開番号】WO2007/000194
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(505201168)フラウンホファー ゲゼルシャフト ツール フェルドルンク デル アンゲヴァントテン フォルシュンク エー ファウ (10)
【Fターム(参考)】