説明

レーザーマーキング用の積層体

【課題】レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物を巧みに利用し、例えば熱可塑性樹脂のシート状成形品のS面に表示を施す手段として有用なレーザーマーキング用の積層体を提供する。
【解決手段】A層の少なくとも片面にB層が積層されたレーザーマーキング用の積層体であって、A層は、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより2以上の異なる色調にマーキングされる、以下の(1)及び(2)を満足する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物にて形成された層であり、B層は、透明熱可塑性樹脂にて形成された、単層での光線透過率が70%以上の層であるレーザーマーキング用の積層体。
(1)有彩色着色剤と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質と、熱可塑性重合体とを以下の割合で含有する。
(2)上記熱可塑性重合体を100重量部とした場合に、上記有彩色着色剤の含有量を0.001〜3重量部、上記黒色物質を0.01〜2重量部含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザーマーキング用の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、プリペイドカードの様な、熱可塑性樹脂のシート状成形品の表面に表示(文字、図形、記号、これらの組合せ等)を施す場合、シルク印刷などの印刷手段が採用される。ところが、印刷手段による場合は、表示毎に版を作成しなければならないため、コスト高であり且つ長期の製作日数を要するばかりか、印刷時の版のずれや印刷インクの滲みによって発生した不良品は、リサイクルが困難なため、廃棄せざるを得ないという重大な欠点がある。
【0003】
一方、近時、レーザー光照射によって樹脂表面に多色のマーキングを施すことが出来るレーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物が提案されている。特に、近年、マーキングの色を多様化させる技術も開発されてきており、例えば、レーザー光の吸収により変色又は脱色する物質とレーザー光の影響を受けにくい色素物質とを含有する成形品にレーザー光を照射する方法も提案されている(特許文献1及び2参照)。そして、斯かるレーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物により、家庭用品、電気用品、OA機器などのいわゆる肉厚製品を成形し、その表面にレーザーマーキング装置によって表示を刻印する。
【0004】
【特許文献1】特開平6−297828号公報
【特許文献2】特開平8−127175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物を巧みに利用し、例えば熱可塑性樹脂のシート状成形品の表面に表示を施す手段として有用なレーザーマーキング用の積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、検討を重ねた結果、レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物と透明熱可塑性樹脂とを積層してレーザーマーキング用の積層体とするならば、透明熱可塑性樹脂を溶着手段として活用することが出来るため、マーキングを施した上記の積層体を熱可塑性樹脂のシート状成形品の表面に容易に貼着することができるとの発想に至った。
【0007】
本発明は、上記の発想に基づいて完成されたものであり、その要旨は、A層の少なくとも片面にB層が積層されたレーザーマーキング用の積層体であって、A層は、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより2以上の異なる色調にマーキングされる、以下の(1)及び(2)を満足する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物にて形成された層であり、B層は、透明熱可塑性樹脂にて形成された、単層での光線透過率が70%以上の層であることを特徴とするレーザーマーキング用の積層体に存する。
【0008】
(1)有彩色着色剤と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質と、熱可塑性重合体とを以下の割合で含有する。
(2)上記熱可塑性重合体を100重量部とした場合に、上記有彩色着色剤の含有量を0.001〜3重量部、上記黒色物質を0.01〜2重量部含有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば熱可塑性樹脂のシート状成形品の表面に表示を施す手段として有用なレーザーマーキング用の積層体を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のレーザーマーキング用の積層体(以下、単に積層体と略記する)は、A層の少なくとも片面にB層が積層され、A層は、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより2以上の異なる色調にマーキングされる、特定の多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)にて形成され、B層は、単層での光線透過率が70%以上の透明熱可塑性樹脂(b)にて形成されている。
【0011】
<多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)>
本発明において、多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)は、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより2以上の異なる色調にマーキングされる熱可塑性重合体組成物を指す。
【0012】
本発明においては、上記の熱可塑性重合体組成物(a)として、有彩色着色剤と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質と、熱可塑性重合体とを含有し、上記有彩色着色剤の含有量は、上記熱可塑性重合体を100重量部とした場合に0.001〜3重量部であり、上記黒色物質の含有量は、上記熱可塑性重合体を100重量部とした場合に0.01〜2重量部である熱可塑性重合体組成物を使用する。
【0013】
上記の熱可塑性重合体組成物(a)による多色発色レーザーマーキングの発色機構は、判明していないが、概ね、以下のような現象に基づいているものと推定される。尚、本発明に係る多色発色レーザーマーキングの発色機構は、以下の機構に限定されるものではない。
【0014】
上記の熱可塑性重合体組成物(a)を一層に含む本発明の積層体にレーザー光を照射すると、レーザー光のエネルギーに応じて、黒色物質の消滅、変色等、有彩色着色剤の分解、飛散等が生じる。ここで、黒色物質の気化、変色等が生じた部分は、相対的にこれらが生じていない部分に比べ黒色物質以外の物質の色が強く現れる。更に、有彩色着色剤の分解、飛散等が生じた部分は、これらが生じていない部分に比べ相対的に有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色、あるいは、白色になる。該色変化の生じる程度が、照射したレーザー光のエネルギーの違いに応じて異なるため、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより、2以上の異なる色調にマーキングされると考えられる。また、本発明における有彩色着色剤は、通常、黒色物質を気化、変色等させるエネルギーより高いエネルギーで分解、飛散等を起こすため、例えば、黒色又は暗色系の地色を呈する成形品に対し、低エネルギーのレーザー光が照射されると、その照射部が有彩色着色剤に由来する物質の影響が強く現れた色(以下、単に「有彩色着色剤に由来する色」ともいう。)に発色し、高エネルギーのレーザー光が照射されると、その照射部が有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色に発色した、各マーキングをそれぞれ得ることが可能となる。以上のようにして、レーザー光の未照射部の色(地色)である黒色又は暗色系の色以外の、2以上の異なる色調にマーキングをすることができると考えられる。
【0015】
1.多色発色レーザーマーキング用有彩色着色剤:
本発明における有彩色着色剤は、本発明における多色発色レーザーマーキングの優れた性能を妨げるものでなければどのような着色剤でもよいが、該着色剤は、示差熱分析で360℃以上590℃以下の範囲に発熱ピークを有するものである。該発熱ピーク範囲の下限温度は、更に好ましくは380℃、特に好ましくは400℃であり、同上限温度は、更
に好ましくは585℃である。温度が低すぎると、低エネルギーのレーザー光を照射した場合に、有彩色着色剤に由来する色のマーキングが不鮮明となる傾向にある。一方、温度が高すぎると、高エネルギーのレーザー光を照射した場合に、有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色のマーキングが不鮮明となる傾向にある。尚、示差熱分析の測定条件は、参考例に記載の通りである。
【0016】
本発明における有彩色着色剤は、示差熱分析による発熱ピークが上述の温度範囲にあり、レーザー光照射により本発明の積層体に2以上の異なる色調のレーザーマーキングができれば、どのような物質でも良い。また、発熱ピークの範囲が上述の範囲であれば、2種以上の有彩色着色剤を組み合わせて用いてもよい。本発明における有彩色着色剤の色は、黒色及び白色以外であれば、赤色系、黄色系、青色系、紫系、緑色系等どのような色でもよい。また、顔料でも染料でも構わない。
【0017】
示差熱分析による発熱ピークが上述の温度範囲にある有彩色着色剤の例を以下に示す。括弧内には、各着色剤の色の一例を示す。フタロシアニン骨格を有する顔料又は染料(青〜緑色)、ジケトピロロピロール骨格を有する顔料又は染料(橙〜赤色)、ジオキサジン骨格を有する顔料又は染料(紫色)、キナクリドン骨格を有する顔料又は染料(橙〜紫色)、キノフタロン骨格を有する顔料又は染料(黄〜赤色)、アンスラキノン骨格を有する顔料又は染料(黄〜青色)、ペリレン骨格を有する顔料又は染料(赤〜紫色)、ペリノン骨格を有する顔料又は染料(橙〜赤色)、金属錯体骨格を有する顔料又は染料(黄〜紫色)、インダンスロン系顔料(青〜緑色)、トリアリルカルボニウム系顔料(青色)、モノアゾ系顔料(黄〜緑色)、ジスアゾ系顔料(黄〜緑色)、イソインドリノン系顔料(黄〜紫色)、チオインジゴ系顔料(赤〜紫色)、アンスラピリドン系染料(黄色)等である。このうち、組成物(成形品)が、フタロシアニン骨格、ジケトピロロピロール骨格、ジオキサジン骨格、キナクリドン骨格、キノフタロン骨格、アンスラキノン骨格、ペリレン骨格、金属錯体骨格等から選ばれる少なくとも1種の骨格を有する有彩色着色剤を含む場合には、黒色又は暗色系の地色を呈する組成物(成形品)の表面に、有彩色着色剤に由来する色を含む2以上の異なる色調のマーキングを鮮明に形成することができるため好ましい。なかでも、フタロシアニン骨格、ジケトピロロピロール骨格、ジオキサジン骨格、キナクリドン骨格、キノフタロン骨格、ペリレン骨格及び金属錯体骨格から選ばれる少なくとも1種の骨格を有する有彩色着色剤が更に好ましく、フタロシアニン骨格、ジケトピロロピロール骨格及びジオキサジン骨格から選ばれる少なくとも1種の骨格を有する有彩色着色剤が特に好ましい。以下に具体的に例示する。
【0018】
1−1.フタロシアニン骨格を有する有彩色着色剤:
上述のフタロシアニン骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0019】
【化1】

【0020】
上記のフタロシアニン骨格を有する有彩色着色剤は、顔料又は染料である。上記一般式(1)において、Mは、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)又は2つの水素原子であることが好ましく、銅(Cu)、アルミニウム(Al)又は亜鉛(Zn)が更に好ましく、銅(Cu)又はアルミニウム(Al)が特に好ましい。尚、Mが金属の場合、ハロゲン原子、OH等の配位子を有してもよい。
【0021】
また、上記一般式(1)において、R〜R16は、水素原子;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;スルホン酸アミド基(−SONHR)、−SO−・NH等の置換基(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基である。)が好ましく、R〜R16のうちの複数の隣接するRが連結して芳香環を形成した基も好ましい。特に好ましくは水素原子又はスルホン酸アミド基である。
【0022】
上記のフタロシアニン骨格を有する有彩色着色剤として、好ましい具体的な構造を以下の(1)〜(6)に列挙する。このうち、(1)、(3)及び(4)が特に好ましい。
【0023】
(1)上記一般式(1)におけるMがCuであり、且つ、R〜R16が水素原子である銅フタロシアニン顔料(下記式(2))。
【0024】
【化2】

上記銅フタロシアニン顔料の結晶はα型であっても、β型であってもよい。β型銅フタロシアニン顔料の平均二次粒子径は、一般的に、20μmを超え30μm以下であるが、本発明においては、その上限が好ましくは20μm、より好ましくは10μmであり、下限が1μmである。尚、平均二次粒子径は、レーザー散乱法粒径分布測定装置等により確認することができる。
【0025】
(2)上記一般式(1)におけるMがCuであり、R〜R16が、各々、独立して水素原子又はハロゲン原子であるハロゲン含有銅フタロシアニン顔料。尚、ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0026】
(3)上記一般式(1)におけるMがCuであり、R〜R16のうちの4〜8個、好ましくは4個が、上述のスルホン酸アミド基又は−SO−・NH、好ましくはスルホン酸アミドである溶剤可溶型銅フタロシアニン染料。特に好ましい溶剤可溶型銅フタロシアニン染料の構造を、下記一般式(3)に示す。
【0027】
【化3】

上記一般式(3)において、各Rは、各々、独立して炭素数4〜8のアルキル基であることが特に好ましい。
【0028】
(4)上記一般式(1)におけるMがAlであり、且つ、R〜R16が水素原子であるアルミニウムフタロシアニン顔料。Alは、配位子として−OH又は−Clを有しているものが好ましく、−OHを有しているものが更に好ましい。特に好ましいアルミニウムフタロシアニン顔料の構造を、以下の式(4)に示す。
【0029】
【化4】

【0030】
(5)上記一般式(1)におけるMがSnであり、且つ、R〜R16が、各々、独立して水素原子又はハロゲン原子であるスズフタロシアニン顔料。
【0031】
(6)上記一般式(1)におけるMがZnであり、且つ、R〜R16が、各々、独立して水素原子又はハロゲン原子である亜鉛フタロシアニン顔料。該亜鉛フタロシアニン顔料の構造を、下記一般式(5)に示す。
【0032】
【化5】

【0033】
上記の亜鉛フタロシアニン顔料としては、上記一般式(5)におけるR〜R16がすべて水素原子である亜鉛フタロシアニン顔料が特に好ましい。
【0034】
1−2.ジケトピロロピロール骨格を有する有彩色着色剤:
ジケトピロロピロール骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(6)で表される化合物が挙げられ、該着色剤は、通常、顔料である。
【0035】
【化6】

【0036】
Ar及びAr'を構成する芳香族環は、芳香族性を有すれば、どのような環でもよいが
、通常、5又は6員環の、単環又は2〜6縮合環からなる芳香環であり、O、S、N等のヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アンスラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、ピリジン環、チオフェン環、ピロール環、フラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、イミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、チアゾール環、ジベンゾチオフェン環等が挙げられ、これらのうち、6員環が好ましく、6員環の単環が更に好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0037】
芳香族環は置換基を有することが好ましく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、アミノ基、−NHCOR、−COR及び−COOR(但し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数12以下の(ヘテロ)アリール基である。)が挙げられ、このうち、ハロゲン原子、特に塩素原子が好ましい。
【0038】
1−3.ジオキサジン骨格を有する有彩色着色剤:
ジオキサジン骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(7)で表される骨格を含む化合物が挙げられ、該着色剤は、通常、顔料である。
【0039】
【化7】

【0040】
この骨格を含む着色剤は、置換基を有する化合物であっても、有しない化合物であってもよいが、置換基を有する化合物であることが好ましい。置換基を有する化合物の構造は、例えば、下記一般式(8)で表される。
【0041】
【化8】

【0042】
〔式中、R17〜R22は、各々、独立して、ハロゲン原子、−NHCOR(但し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数12以下の(ヘテロ)アリール基である。)、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシル基である。〕
【0043】
上述のジオキサジン骨格を有する有彩色着色剤としては、上記一般式(8)において、置換基R17及びR18を有することが特に好ましい。R17及びR18は、ハロゲン原子又は−NHCORが好ましく、−NHCORが更に好ましい。また、R19〜R22は、ハロゲン原子、−NHCOR、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基等が好ましく、炭素数1〜12のアルコキシル基又は−NHCORが更に好ましい。
【0044】
1−4.キナクリドン骨格を有する有彩色着色剤:
キナクリドン骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(9)で表される骨格を含む化合物が挙げられ、該着色剤は、通常、顔料である。
【0045】
【化9】

【0046】
この骨格を含む着色剤は、置換基を有する化合物であっても、有しない化合物であってもよいが、置換基を有する化合物の構造は、例えば、下記一般式(10)で表される。
【0047】
【化10】

【0048】
上記の一般式(10)において、置換基は、R23〜R26の位置に結合していることが好ましい。好ましい置換基としては、ハロゲン原子又は炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
【0049】
1−5.キノフタロン骨格を有する有彩色着色剤:
キノフタロン骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(11)で表される骨格を含む化合物が挙げられ、該着色剤は、顔料又は染料である。
【0050】
【化11】

【0051】
この骨格を含む着色剤は、置換基を有する化合物であっても、有しない化合物であってもよいが、置換基を有する化合物の構造は、例えば、下記一般式(12)で表される。
【0052】
【化12】

【0053】
〔式中、R27〜R30は、各々、独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基又は環構造を含む基であり、R31は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルコキシル基、炭素数5〜12のアリールオキシ基、炭素数1〜12のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数5〜12のアリールチオ基又は炭素数1〜12のヘテロアリールチオ基であり、R32は、水素原子又はヒドロキシル基であり、R33〜R36は、各々、独立して水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、−COOR又は−CONR12(但し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数12以下の(ヘテロ)アリール基である。)である。尚、R28及びR29、R31及びR32、R33及びR34、R34及びR35、並びに、R35及びR36は、各々、互いに連結して環を形成してもよい。〕
【0054】
上記の一般式(12)において、R27〜R30が環構造を含む基である場合、該基としては、下記一般式(13)で表される置換基が挙げられる。
【0055】
【化13】

【0056】
上記一般式(12)におけるR27が、上記一般式(13)で表される置換基である場合の着色剤の構造を、下記に一般式(14)として示す。
【0057】
【化14】

【0058】
上記の一般式(14)で表される、キノフタロン骨格を有する有彩色着色剤としては、R28〜R30が水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシル基であり、R31及びR32が水素原子であり、且つ、R33〜R36がハロゲン原子である化合物が好ましい。より好ましい着色剤は、R28及びR29が水素原子又はハロゲン原子であり、R30〜R32が水素原子であり、R33〜R36がハロゲン原子であり、且つ、X〜Xがハロゲン原子である化合物である。この着色剤は、通常、顔料である。特に好ましい着色剤は、R28及びR29が水素原子であり、R30〜R32が水素原子であり、R33〜R36がハロゲン原子(X〜X12)であり、且つ、X〜Xがハロゲン原子である化合物である(下記一般式(15)参照)。
【0059】
【化15】

【0060】
尚、上記一般式(12)において、R27及びR30が水素原子であり、R28及びR29がハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシル基である化合物(下記一般式(16)参照)は、通常、染料である。
【0061】
【化16】

【0062】
〔式中、R28及びR29は、各々、独立してハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシル基であり、R31は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルコキシル基、炭素数5〜12のアリールオキシ基、炭素数1〜12のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、炭素数5〜12のアリールチオ基又は炭素数1〜12のヘテロアリールチオ基であり、R32は、水素原子又はヒドロキシル基であり、R33〜R36は、各々、独立して水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、−COOR、−CONR12(但し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数12以下の(ヘテロ)アリール基である。)である。尚、R28及びR29、R31及びR32、R33及びR34、R34及びR35、並びに、R35及びR36は、各々、互いに連結して環を形成してもよい。〕
【0063】
1−6.アンスラキノン骨格を有する有彩色着色剤:
アンスラキノン骨格を有する有彩色着色剤としては、下記一般式(17)で表される骨格を含む化合物が挙げられる。該着色剤は、下記骨格を1つのみ含む化合物であってもよいし、2つ以上を含む化合物であってもよい。
【0064】
【化17】

【0065】
上記の着色剤としては、下記一般式(18)で表される化合物、上記骨格を複数含む化合物、及び、アミノ基を有する化合物が好ましく、2つのアンスラキノン骨格及び2つのアミノ基を有する化合物が特に好ましい。下記一般式(18)で表される化合物は、通常、黄〜青色の染料である。
【0066】
【化18】

【0067】
〔式中、R37〜R44は、各々、独立して水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、炭素数5〜12のアリール基、炭素数1〜12のヘテロアリール基、−NHR、−NR12、−OR、−SR、−COOR又は−NHCOR(但し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数12以下の(ヘテロ)アリール基である。)である。〕
【0068】
また、2つのアンスラキノン骨格及び2つのアミノ基を有する化合物としては、下記一般式(19)及び構造式(20)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物は、通常、青色の顔料である。
【0069】
【化19】

【0070】
〔式中、R45及びR46は、各々、独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のアリール基、炭素数1〜12のヘテロアリール基、炭素数2〜13のアルキルカルボニル基、炭素数6〜13のアリールカルボニル基又は炭素数2〜13のヘテロアリールカルボニル基である。〕
【0071】
【化20】

【0072】
尚、構造式(20)で表される化合物は、芳香族環に結合する水素原子がハロゲン原子等に置換されていてもよい。
【0073】
1−7.ペリレン骨格を有する有彩色着色剤:
上述のペリレン骨格を有する有彩色着色剤としては、例えば、下記一般式(21)で表される化合物が挙げられ、該着色剤は、通常、顔料である。
【0074】
【化21】

【0075】
〔式中、R47及びR48は、各々、独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜12のアリール基、炭素数1〜12のヘテロアリール基、−COR又は−COOR(但し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数12以下の(ヘテロ)アリール基である。)である。〕
【0076】
上記の一般式(21)で表される、ペリレン骨格を有する有彩色着色剤としては、R47及びR48が炭素数1〜12のアルキル基である着色剤が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基である着色剤が更に好ましい。
【0077】
1−8.金属錯体骨格を有する有彩色着色剤:
金属錯体骨格を有する有彩色着色剤としては、例えば、有機色素骨格に金属イオンが配位した化合物等が挙げられる。該有機色素骨格としては、アゾ基を有するもの、アゾメチン基を有するもの等があり、アゾ基あるいはアゾメチン基のオルト位又はペリ位にヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基等を有してもよい。金属イオンとしては、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛等のイオンが挙げられる。
【0078】
2.多色発色レーザーマーキング用黒色物質:
この黒色物質は、レーザー光の受光により消滅する又は変色するものであれば特に限定されない。即ち、レーザー光のエネルギーによりそれ自身が消滅する、変色する等して、本発明の積層体におけるレーザー光の照射部の色が、該黒色物質以外の物質の色の影響の
強く現れた色となるものであれば、どのような黒色物質でもよい。尚、上述の黒色物質の「消滅」は、気化、揮散又は分解して黒色物質が存在しなくなることを、「変色」は、物質の少なくとも一部又は全てが、分解等により受光前と異なる色(好ましくは白色)になること(例えば、黒色→水色又は白色)をそれぞれ意味する。また、黒色物質の「黒色」は、黒色を含む暗色系の色であり、例えば、赤色−黒色系(茶色−黒色系)、緑色−黒色系、青色−黒色系、紫色−黒色系、灰色−黒色系等の黒系の色を含む。
【0079】
上述の黒色物質としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル100重量部及び黒色物質0.1重量部のみからなる黒色試験片に対し、ロフィン・バーゼル社製「RSM30D型」を用いて、出力31A、周波数5.5kHz、波長1,064nmのレーザー光を照射した場合に、該照射部が白色又は黒色以外の色に変色するものが好ましい。
【0080】
上述の黒色物質は、無機物質でも有機物質でもよく、顔料でも染料でもよく、更に、本発明の優れた効果を損なわなければ、これらに含まれない化合物や鉱物等を含んでいてもよい。上述の黒色物質は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。上述の黒色物質としては、カーボンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄等の無機顔料、黒鉛、活性炭等が挙げられる。これらのうち、カーボンブラック、チタンブラック及び黒色酸化鉄のように、後述のレーザー光照射による発泡が起こりやすい物質が主成分であることが好ましく、特に、カーボンブラックを主成分とするものが好ましい。
【0081】
カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。上述のカーボンブラックの平均粒径の下限は、好ましくは0.1nm、更に好ましくは1nm、特に好ましくは5nm、最も好ましくは10nmであり、上限は、好ましくは1,000nm、更に好ましくは500nm、特に好ましくは100nm、最も好ましくは80nmである。また、上述のカーボンブラックの窒素吸着比表面積の下限は、好ましくは1m/g、更に好ましくは5m/g、特に好ましくは10m/g、最も好ましくは20m/gであり、上限は、好ましくは1,0000m/g、更に好ましくは5,000m/g、特に好ましくは2,000m/g、最も好ましくは1,500m/gである。
【0082】
本発明で使用する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)がカーボンブラックを含有する場合、レーザー光が照射されると、レーザー光を吸収して気化することが知られている。カーボンブラックが気化して無くなると、レーザー光照射部の色は、カーボンブラック由来の色(黒色又は暗色)の影響が小さく又は無くなり、多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)に含まれるカーボンブラック以外の成分に由来する色の影響が強くなり、即ち、有彩色着色剤に由来する色に発色する。
【0083】
チタンブラックは、一般に、二酸化チタンを還元して得られるものである。上述のチタンブラックの平均粒径の下限は、好ましくは0.01μm、更に好ましくは0.05μm、特に好ましくは0.1μmであり、上限は、好ましくは2μm、更に好ましくは1.5μm、特に好ましくは1.0μm、最も好ましくは0.8μmである。
【0084】
上述のチタンブラックは、レーザー光が照射されると、白色の二酸化チタンに変化することが知られている。従って、カーボンブラックを含有する組成物にレーザー光を照射した場合と同様、照射部の色は、黒色の度合いが小さく又は無くなり、有彩色着色剤に由来する色に発色する。
【0085】
また、黒色酸化鉄は、一般に、Fe又はFeO・Feで表される鉄の酸化物である。上述の黒色酸化鉄の平均粒径の下限は、好ましくは0.01μm、更に好ましくは0.05μm、特に好ましくは0.1μm、最も好ましくは0.3μmであり、上限
は、好ましくは2μm、更に好ましくは1.5μm、特に好ましくは1.0μm、最も好ましくは0.8μmである。
【0086】
上述の黒色酸化鉄は、レーザー光が照射されると、赤みがかった白色に変化することが知られている。従って、カーボンブラックやチタンブラックを含有する組成物にレーザー光を照射した場合と同様、照射部の色は、黒色の度合いが小さく又は無くなり、有彩色着色剤に由来する色に発色する。
【0087】
3.多色発色レーザーマーキング用重合体:
この重合体は、レーザー光の照射による多色発色を妨げるものでなければ、どのような重合体でもよい。従って、熱可塑性、熱硬化性、光(可視光線〜紫外線の他、電子線等も含む)硬化性、室温硬化性等の重合体を含むことが好ましい。これらは、樹脂、エラストマー、ポリマーアロイ、ゴム等のいずれでもよい。また、上述のうちの1種で用いても、これらに属さない他の重合体の併用も含め2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、上述の「硬化性」の重合体は、硬化後に重合体となるオリゴマー等を含むものとする。
【0088】
また、上述の硬化性の重合体等の硬化の時期は、特に限定されず、本発明で使用する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)を用いてフィルム又はシート(以下、両者を纏めて成形品ということがある)を製造した際、該成形品に対してレーザー光を照射した際等とすることができる。尚、上述の硬化性の重合体等は、本発明における有彩色着色剤、黒色物質等と混練する時点、多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)とした時点、及び、成形品を製造した時点で硬化していなくてもよい。この場合は、未硬化の重合体、オリゴマー等を示すこととする。
【0089】
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;ゴム強化熱可塑性樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリエチレン等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル酸エステルの1種以上を用いた(共)重合体等のアクリル系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,12等のポリアミド系樹脂(PA);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリアセタール樹脂(POM);ポリカーボネート樹脂(PC);ポリアリレート樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;液晶ポリマー;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;感光性樹脂;生分解性プラスチック等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、ゴム強化熱可塑性樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)及びウレタン系樹脂が好ましい。尚、上述の「ゴム強化熱可塑性樹脂」は、ゴム質重合体の存在下に、ビニル系単量体を重合して得られるゴム強化共重合樹脂、又は、該ゴム強化共重合樹脂とビニル系単量体の(共)重合体との混合物からなるもの等である。
【0090】
熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー;ジエン系エラストマー;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ウレタン系エラストマー;塩ビ系エラストマー;ポリアミド系エ
ラストマー;フッ素ゴム系エラストマー等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリマーアロイとしては、PA/ゴム強化熱可塑性樹脂、PC/ゴム強化熱可塑性樹脂、PBT/ゴム強化熱可塑性樹脂、PC/PMMA等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
熱硬化性、光硬化性、室温硬化性等の硬化性重合体としては、アクリル系樹脂(エポキシ基を有するアクリル系重合体を含む)、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン系樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、これらの樹脂は、硬化剤等を含むものであってもよいし、自己架橋性の重合体のみからなるものであってもよい。これらのうち、エポキシ基を有するアクリル系重合体が好ましい。
【0093】
また、上述の重合体として、レーザー光の受光により発泡しやすい重合体を含む場合には、レーザー光の照射による多色発色がより鮮明となる。従って、上述の重合体は、該重合体のみからなる試験片に対し、前述の「RSM30D型」を用いて、出力31A、周波数5.5kHz、波長1,064nmのレーザー光を照射した場合に、照射部の断面に発泡状態が電子顕微鏡により観察される重合体であることが好ましい。
【0094】
本発明の積層体にレーザー光が照射されて、その照射部が発泡部となると、レーザー光照射時の有彩色着色剤の挙動によっては、レーザー光照射部(発泡部)とその周辺の未照射部との屈折率差が大きくなり、マーキングがより鮮明となる。例えば、高エネルギーのレーザー光によって有彩色着色剤が分解、飛散等することで、白色又はその着色剤に由来する色の濃度が低下した色となった場合には、レーザー光照射部(発泡部)とその周辺の未照射部との屈折率差が大きいために、より鮮明なマーキングが形成される。
【0095】
上述の重合体のうち、(1)単量体成分としてメタクリル酸メチルを用いたゴム強化熱可塑性樹脂、(2)ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、メタクリル酸メチル単量体単位を30重量%以上含む共重合体等のアクリル系樹脂、(3)ポリアセタール樹脂、(4)ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂が発泡しやすく、好ましい。
【0096】
本発明において好ましいゴム強化熱可塑性樹脂は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b1)を重合して得られるゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、該ゴム強化共重合樹脂(A1)とビニル系単量体(b2)の(共)重合体(A2)との混合物等において、ゴム強化共重合樹脂(A1)又は混合物中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位量が、ゴム質重合体(a)以外の成分中、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、更に好ましくは50重量%以上であるものである。この範囲から外れると、鮮明なマーキングを容易に得ることができない場合がある。
【0097】
上述の通り、ゴム強化共重合樹脂(A1)及びビニル系単量体(b2)の(共)重合体(A2)の形成のために、(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましいことから、ゴム質重合体(a)の存在下に、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系単量体(
b1)を重合して得られるゴム強化共重合樹脂(A1)、又は、該ゴム強化共重合樹脂(A1)とビニル系単量体(b2)の(共)重合体(A2)との混合物からなるゴム強化共重合樹脂が特に好ましい。尚、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b1)を重合すると、通常、ビニル系単量体(b1)がゴム質重合体にグラフト重合しているグラフト重合体成分と、グラフトしていないビニル系単量体(b1)の(共)重合体成分との混合物等が得られる。
【0098】
上述の(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物のうち、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0099】
上述のゴム質重合体(a)としては、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、イソブチレン・イソプレン共重合体等の重合体;これら重合体の水素化物;ブチルゴム;エチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体;シリコーン系ゴム;アクリル系ゴム等が挙げられる。これらの重合体は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
上述のゴム強化共重合樹脂(A1)の形成に用いられるビニル系単量体(b1)は、(メタ)アクリル酸エステル以外に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物等を含んでもよい。また、必要に応じて、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物を用いてもよい。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
また、上述の(共)重合体(A2)の形成に用いられるビニル系単量体(b2)としては、上述の(メタ)アクリル酸エステル;芳香族ビニル化合物;シアン化ビニル化合物;マレイミド系化合物;エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、上述のビニル系単量体(b1)及びビニル系単量体(b2)は、同一の単量体を同量で又は異なる量で用いてもよいし、異なる種類の単量体を用いてもよい。
【0102】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、メチル−α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、モノクロルスチレン、ジクロロスチレン等の塩素化スチレン;モノブロモスチレン、ジブロモスチレン等の臭素化スチレン;モノフルオロスチレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合
わせて用いてもよい。また、これらのうち、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましい。
【0103】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのうち、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。
【0104】
マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、α,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。尚、マレイミド系化合物単位の上述の重合体への導入は、無水マレイン酸を共重合してからイミド化する等してもよい。
【0105】
上述の官能基を有するビニル系化合物としては、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸、メタクリル酸、N,N−ジメチルアミノメチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノメチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
上述のゴム強化共重合樹脂(A1)の形成に用いられるビニル系単量体(b1)、又は、上述の(共)重合体(A2)の形成に用いられるビニル系単量体(b2)の使用量(単位はいずれも重量%)は、いずれも以下の通りである。
(1)芳香族ビニル化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは5、更に好ましくは10、特に好ましくは20であり、同上限は、好ましくは100、更に好ましくは80である。
【0107】
(2)シアン化ビニル化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは1、更に好ましくは3、特に好ましくは5であり、同上限は、好ましくは50、更に好ましくは40、特に好ましくは35である。
【0108】
(3)(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは1、更に好ましくは5であり、同上限は、好ましくは100、更に好ましくは95であり、特に好ましくは90である。
【0109】
(4)マレイミド系化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは1、更に好ましくは5であり、同上限は、好ましくは70、更に好ましくは60であり、特に好ましくは55である。
【0110】
(5)官能基を有するビニル系化合物を用いる場合、ビニル系単量体の全量に対する使用量の下限は、好ましくは0.1、更に好ましくは0.5、特に好ましくは1であり、同上限は、好ましくは30、更に好ましくは25である。ビニル系単量体の使用量が上述の範囲内にあると、用いる単量体の効果が十分に発揮されるので好ましい。
【0111】
上述のゴム強化共重合樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b1)を、乳化重合、溶液重合、塊状重合等による方法で製造することができる。これらのうち、乳化重合が好ましい。乳化重合により製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
【0112】
上述のゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b1)を乳化重合させる際の、ビニル系単量体(b1)の使用方法は、通常、以下の通りであるが、本発明において、ゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体(b1)を重合させる際のビニル系単量体(b1)の使用方法は、この使用方法に限定されない。尚、反応系において、ゴム質重合体(a)全量の存在下に、ビニル系単量体(b1)を全量一括して添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、ゴム質重合体(a)の全量又は一部を、重合の途中で添加してもよい。
【0113】
上述の重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等で代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等で代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系、あるいは過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、t−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられ、これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、反応系への添加は一括して行っても連続的に行ってもよい。尚、該重合開始剤の使用量は、上述のビニル系単量体(b1)の全量に対し、通常、0.1〜1.5重量%、好ましくは0.2〜0.7重量%である。
【0114】
上述の連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられ、これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。該連鎖移動剤の使用量は、上述のビニル系単量体(b1)の全量に対して、通常、0.05〜2.0重量%である。
【0115】
上述の乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;高級脂肪族カルボン酸塩;ロジン酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型;アルキルエーテル型等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。該乳化剤の使用量は、上述のビニル系単量体(b1)の全量に対して、通常、0.3〜5.0重量%である。
【0116】
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。該凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。溶液重合、塊状重合による製造方法については、公知の方法を適用することができる。
【0117】
上述のゴム強化共重合樹脂(A1)に含まれるグラフト重合体のグラフト率(ゴム質重合体(a)へグラフトしたビニル系単量体(b1)の重量割合)は、好ましくは10〜200%、更に好ましくは15〜150%、特に好ましくは20〜100%である。グラフト重合体のグラフト率が低すぎると、衝撃強度の低下を招くことがある。また、高すぎると、加工性が劣る。
【0118】
ここで、グラフト率とは、ゴム強化共重合樹脂(A1)1g中のゴム成分をxg、該ゴム強化共重合樹脂(A1)1gをアセトン(但し、ゴム質重合体(a)としてアクリル系ゴムを用いる場合は、アセトニトリルを使用する)に溶解させた際の不溶分をygとしたときに、次式により求められる値である。
【0119】
【数1】

【0120】
尚、該グラフト率(%)は、ゴム強化共重合樹脂(A1)を製造するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変化させることにより、容易に制御することができる。
【0121】
上述の(共)重合体(A2)は、例えば、バルク重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等により得ることができる。
【0122】
上述の(共)重合体(A2)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、成形加工性と耐衝撃性の物性バランスの点から、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。該極限粘度〔η〕は、上述のゴム強化共重合樹脂(A1)と同様、製造方法の調整により制御することができる。また、上述のゴム強化熱可塑性樹脂のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、成形加工性と耐衝撃性の物性バランスの点から、好ましくは0.1〜0.8dl/g、より好ましくは0.15〜0.7dl/gである。
【0123】
上述のゴム強化熱可塑性樹脂は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。上述のゴム強化熱可塑性樹脂の好ましい態様の例を以下(1)〜(4)に示す。
【0124】
(1)ゴム質重合体の存在下、メタクリル酸メチルを含む単量体を重合して得られたゴム強化共重合樹脂。
【0125】
(2)上述の(1)と、メタクリル酸メチルを含む単量体を重合して得られた(共)重合体とを組み合わせたゴム強化熱可塑性樹脂。
【0126】
(3)上述の(1)と、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体を重合して得られた(共)重合体とを組み合わせたゴム強化熱可塑性樹脂。
【0127】
(4)ゴム質重合体の存在下、メタクリル酸メチルを用いず、芳香族ビニル化合物と、シアン化ビニル化合物とを含む単量体を重合して得られたゴム強化共重合樹脂と、メタクリル酸メチルを含む単量体を重合して得られた(共)重合体とを組み合わせたゴム強化熱可塑性樹脂。
【0128】
本発明における重合体が、上述のゴム強化熱可塑性樹脂を主として含むことで、耐衝撃性に優れた成形品を与える組成物とすることができる。本発明における重合体が、上述のゴム強化熱可塑性樹脂を含む場合、該重合体中のゴム質重合体(a)の含有量(単位はいずれも重量%)の下限は、好ましくは0.5、更に好ましくは1、特に好ましくは3、最も好ましくは5、同上限は、好ましくは60、更に好ましくは40、特に好ましくは35である。ゴム質重合体(a)の含有量が少なすぎると、成形品の耐衝撃性が劣る傾向にあり、多すぎると、硬度、剛性が劣る傾向にある。
【0129】
本発明における重合体として、上述のゴム強化熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、更に、他の重合体と組み合わせて用いてもよい。他の重合体としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂;アクリル系樹脂(エ
ポキシ基を有するアクリル系重合体を含む)、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら他の重合体は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
また、本発明において好ましいアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体から形成された(共)重合体であるが、この(メタ)アクリル酸エステルとしては、上述のゴム強化熱可塑性樹脂の形成に用いた(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。他の単量体としては、芳香族ビニル化合物;シアン化ビニル化合物;マレイミド系化合物;エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物等が挙げられる。従って、上述のアクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチルを含む単量体を用いて得られた樹脂が特に好ましく、メタクリル酸メチル単量体単位を30重量%以上含む(共)重合体、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が好ましい。
【0131】
また、メタクリル酸メチル30〜80重量%、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステル20〜50重量%、他のビニル系単量体0〜50重量%から成る共重合体も好ましい。メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/スチレン系の軟質共重合体の市販品としては、株式会社クラレ製の「パラペレット SA−N」(商品名)がある。
【0132】
上述のアクリル系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは50,000〜500,000、更に好ましくは70,000〜400,000、特に好ましくは80,000〜300,000である。
【0133】
また、本発明において好ましいポリアセタール樹脂としては、オキシメチレン基(−CH2O−)を主な構成単位とする高分子化合物であれば特に限定されない。該ポリアセタール樹脂は、ポリオキシメチレンホモポリマー、オキシメチレン基以外に他の構成単位を含有するコポリマー(ブロックコポリマーを含む)及びターポリマーのいずれであってもよく、その分子構造は、線状のみならず分岐、架橋構造を有するものであってもよい。また、該ポリアセタール樹脂は、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基を有してもよい。更に、該ポリアセタール樹脂は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
また、本発明において好ましいポリアミド樹脂は、主鎖に酸アミド結合(−CO−NH−)を有する高分子化合物であれば特に限定されない。
【0135】
上述のポリアミド樹脂としては、ナイロン4、6、7、8、11、12、6.6、6.9、6.10、6.11、6.12、6T、6/6.6、6/12、6/6T、6T/6I等が挙げられる。尚、ポリアミド樹脂の末端は、カルボン酸、アミン等で封止されていてもよい。上述のポリアミド樹脂は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
また、本発明において好ましいポリウレタン樹脂は、主鎖にウレタン結合(−NH−COO−)を有する高分子化合物であれば特に限定されない。該ポリウレタン樹脂は、通常、ジオール及びジイソシアネートを反応させること等により得られる。
【0137】
尚、上述のように、本発明におけるレーザーマーキング用重合体として、熱可塑性重合体及び熱硬化性重合体を併用することができるが、その場合の熱可塑性重合体の含有量100重量部に対する熱硬化性重合体の含有量の下限は、好ましくは0.01重量部、更に好ましくは0.05重量部、特に好ましくは0.1重量部であり、同上限は、好ましくは20重量部、更に好ましくは10重量部、特に好ましくは5重量部である。熱硬化性重合体の含有量を上記とすることにより、マーキング部が変色(退色を含む)することがなく鮮明な発色が長期間維持され、マーキング部の形状がより安定となりやすい。尚、熱可塑性重合体及び熱硬化性重合体を併用する場合、本発明で使用する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)において、該熱硬化性重合体は、連結状態であってもよいし、粒子状等の小片物として分散状態で含まれてもよい。
【0138】
4.多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物:
本発明で使用する多色発色レーザーマーキング用樹脂組成物(a)は、上述の有彩色着色剤、黒色物質及び重合体を、それぞれ、所定量で含み、該組成物に対して、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより、2以上の異なる色調にマーキングされる。
【0139】
鮮明なマーキングを得るために、本発明で使用する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)は、上述の各成分の組成を以下の範囲とする。即ち、重合体100重量部とした場合、有彩色着色剤の含有量は、0.001〜3重量部であり、黒色物質の含有量は、0.01〜2重量部である。有彩色着色剤の含有量の下限は、好ましくは0.002重量部、特に好ましくは0.005重量部であり、同上限は、好ましくは1重量部、特に好ましくは0.8重量部である。上述の有彩色着色剤の含有量が多すぎると、白色マーキングが得にくくなる等、高エネルギーのレーザー光の照射により高エネルギーのレーザー光照射部分と低エネルギーのレーザー光照射部分の識別が困難になりやすい。一方、少なすぎると、有彩色着色剤由来の色のマーキングが得にくくなる等、低エネルギーのレーザー光照射と未照射部分の識別が困難になりやすい。
【0140】
また、黒色物質の含有量の下限は、好ましくは0.03重量部、特に好ましくは0.05重量部であり、同上限は、好ましくは1重量部、特に好ましくは0.8重量部である。上述の黒色物質の含有量が多すぎると、レーザー光照射部分が黒すぎて、レーザー光照射によるマーキングの識別が困難になりやすい。尚、上述の重合体として、硬化性重合体を用いる場合は、「硬化後の重合体が100重量部」となるように原料成分が調整されているものとする。
【0141】
本発明で使用する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)の地色は、上述の重合体に有彩色着色剤、黒色物質等が分散しているため、黒色又は暗色系の色を呈する。本発明においては、白色物質等の白色系物質を更に含有させることにより、この地色の明度を調節及びレーザーマーキングの際に発色した色の白色度を向上させることができる。後者の場合、例えば、レーザー光の照射により発色した、白色又は本発明で使用する着色剤由来の色の濃度が低下した色の白色度を向上させることができる。
【0142】
上述の白色系物質としては、本発明に係るマーキングの識別を非常に困難にする等、本発明に係る多色発色マーキングの優れた性能を大幅に妨げるものでなければどのような白色系の物質でもよく、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
上述の白色系物質の平均粒径は、特に限定されないが、通常、0.1〜3.0μm、好ましくは0.1〜2.0μm、より好ましくは0.1〜1.0μmである。上述の白色系物質の含有量は、上述の重合体100重量部に対して、好ましくは0.001〜1重量部、より好ましくは0.001〜0.5重量部、更に好ましくは0.001〜0.1重量部である。含有量が多すぎると、コントラストの良好なマーキングが得られない場合があり、一方、少なすぎると、成形後の地色の自由度が制限される場合がある。
【0144】
本発明で使用する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)は、目的や用途に応じて、更に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、耐候剤、可塑剤、充填材、滑剤、抗菌剤、親水性付与剤、加飾剤、淡色系着色剤等の添加剤を含有してもよい。特に、帯電防止剤、難燃剤、充填材、抗菌剤及び加飾剤等を、それぞれ、所定量含有する場合には、鮮明に発色したマーキングを得るのみならず、所望の機能を高レベルに発揮、維持する成形品を得ることができる。
【0145】
本発明で使用する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)は、例えば、上述の成分を、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等に投入し、混練りすること等によって得ることができる。混練方法としては、各成分を一括添加してもよいし、多段添加方式で混練りしてもよい。
【0146】
ところで、上記の(ゴム強化)アクリル系熱可塑性樹脂組成物において、ポリカーボネート樹脂を含有する場合、アクリル系樹脂とポリカーボネート樹脂との屈折率の差異により必然的に特異な真珠光沢が生じる。斯かる真珠光沢は、黒色マトリックス色に白色を発現させるに際しては好ましくない。そこで、本発明においては、上記の様な真珠光沢を防止するため、ポリカーボネート樹脂(A)とアクリル系樹脂(B)との相溶化剤として特願2004−267602号に記載されているリン酸エステル系化合物(C)を使用することが推奨される。
【0147】
上記「リン酸エステル系化合物(C)」は、下記(C−1)及び/又は下記(C−2)である。
【0148】
【表1】

【0149】
<透明熱可塑性樹脂(b)>
透明熱可塑性樹脂(b)に使用する樹脂としては、積層体として使用する厚さの単層での光線透過率が70%以上の透明熱可塑性樹脂であれば特に制限されないが、ポリエステル樹脂、(メチル)メタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの中ではポリエステル樹脂が好ましい。
【0150】
光線透過率の測定は、日本分光株式会社製分光光度計「V−570」を使用し、波長200〜1,100nmの範囲の光線を使用して行う。本発明において、光線透過率が70%以上とは、上記範囲の何れか少なくとも1つの波長の光線で測定した場合の光線透過率が70%以上であることを意味する。光線透過率は好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。光線透過率が70%未満の場合は、レーザーマーキングによる発色性が劣る。
【0151】
ポリエステル樹脂としては、全ジカルボン酸成分中の50モル%以上がテレフタル酸成分からなり、全ジオール成分中の50%以上がエチレングリコール成分からなるポリエステル樹脂が好適である。
【0152】
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4
,4´−ジフェニルジカルボン酸、4,4´−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4´−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ジグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸、の一種又は二種以上が挙げられる。
【0153】
エチレングリコール以外のジオール成分としては、例えば、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオールの一種又は二種以上が挙げられる。
【0154】
更に、例えば、グリコール酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、並びに、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分、等の一種又は二種以上を、共重合成分として用いてもよい。
【0155】
上記の中で、テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分としてはイソフタル酸が、また、エチレングリコール以外のジオール成分としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下、1,4−CHDMと略記する)が好適であり、更にジカルボン酸成分としてテレフタル酸を主成分とし、ジオール成分として、エチレングリコールと1,4−CHDMとを主成分とし、かつ全ジオール成分中の1,4−CHDM比率が全ジオール成分に対して15〜50モル%であるポリエステル樹脂が特に好適であり、斯かるポリエステル樹脂としては、イーストマンケミカル社製の「EASTAR PETG Copolyester6763」(商品名)が挙げられる。尚、ここで言う主成分とは、各成分中85モル%以上、好ましくは90モル%以上であることを示す。
【0156】
透明熱可塑性樹脂(b)には、ブロッキング防止処理を施すのが好ましい。ブロッキング防止処理は不活性粒子を利用した粗面化によって達成される。そして、不活性粒子を利用した粗面化は、積層体の製造工程において透明熱可塑性樹脂(b)に不活性粒子を配合する方法または積層体に不活性粒子含有塗布液を塗布した後に乾燥する方法の何れであってもよい。しかしながら、前者の方法による場合は積層体の製造工程における滑り性の改良効果が顕著である。
【0157】
上記の不活性粒子としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、ゼオライト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、セライト、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシム、フッ化リチウム、カオリン、タルク、特公昭59−5216号公報に記載された様な架橋高分子微粉体を挙げることが出来る。
【0158】
上記の不活性粒子の平均粒径は、通常1.0〜10μm、好ましくは2.0〜6.0μmである。平均粒径が1.0μm未満の場合は滑り性改良効果が十分ではなく、10μmを超える場合は透明熱可塑性樹脂層の透明性が損なわれる。また、不活性粒子の含有量は、通常0.05〜2.0重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%、更に好ましくは0.2〜1.0重量%である。含有量が0.05重量%未満場合は滑り性改良効果が十分ではなく、2.0重量%を超える場合は透明熱可塑性樹脂層の透明性が損なわれる。
【0159】
透明熱可塑性樹脂層に不活性粒子を配合する方法としては、現在公知である任意の方法を採用することが出来る。例えば、重合時に添加したり、重合後の透明熱可塑性樹脂にブレンダーを使用して混合したり、不活性粒子の高濃度のマスターバッチを作成しておき、希釈して透明熱可塑性樹脂に混合したりして配合することが出来る。
【0160】
透明熱可塑性樹脂層には、上記の不活性粒子の他に、滑り性や透明性を損なわない範囲で、帯電防止剤、安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、各種の添加剤を添加することが出来る。更に、透明熱可塑性樹脂層の表面に帯電防止剤や、シリコーン、ワックス等の滑剤を塗布することが出来る。滑剤の塗布により、前記の不活性粒子を利用した粗面化と相まって高度な耐ブロッキング性が付与される。すなわち、枚葉式で貯蔵される際におけるブロッキングの問題が一挙に解決される。
【0161】
上記の滑剤の好適な一例として、ジメチルシロキサンが挙げられる。通常、ジメチルシロキサンはエマルジョンとして使用され、固形分濃度1〜5重量%のエマルジョンとして1〜5ml/mの割合で使用される。
【0162】
<積層体>
本発明の積層体は、A層の少なくとも片面にB層が積層され、A層/B層から成る基本的層構成を有する。他の層構成としてはB層/A層/B層が挙げられる。斯かる3層構成において、2つのB層は、異なる種類の透明熱可塑性樹脂(b)で形成してもよい。更に、他の層構成としては、B層/A層/C層またはB層/A層/C層/B層が挙げられる。C層は例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)等の耐光性に優れる樹脂にて形成することが出来る。本発明の好ましい他態様の積層体はB層/A層/C層から成る層構成を有する。
【0163】
本発明の積層体の製造方法は、特に限定されないが、通常、共押出法が採用される。例えば、各樹脂を常法により乾燥した後、別々の押出機に供給し、所定温度で、マルチマニホールドダイやフィードブロックダイより押出して、通常0〜80℃、好ましくは10〜50℃に調節されたキャスティングドラム上で冷却固化させて積層シートを形成する。この際、キャスティングドラムの近傍に1個以上のタッチロールを装備し、シート化時に当該タッチロールを押さえロールとして使用することが均一厚さの積層体が得られる点で好ましい。なお、押出機にベントポートを装着することにより、乾燥工程を省略したり、乾燥時間を短縮化することが出来る。
【0164】
多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)の溶融温度は、通常200〜260℃である。透明熱可塑性樹脂(b)の溶融温度は樹脂の種類により異なる。ポリエステル樹脂の場合は通常240〜310℃である。ポリカーボネート樹脂の場合は通常280〜320℃、ポリエチレン樹脂の場合は通常180〜220℃、PMMAの場合は通常260〜320℃である。
【0165】
また、各層の厚みは通常それぞれの押出機からの溶融樹脂の吐出量を調節することにより制御する。前記の層構成おける各層の厚さは積層体の使用態様(フイルム使用またはシート使用)により異なるが、A層の厚さは通常40μmないし50mm、B層およびC層の厚さは5μmないし5mmであり、積層体の全体厚さに対するA層の厚さの比率は通常90〜95%である。
【0166】
上述の様にして得られた積層体の表面に帯電防止剤や、シリコーン、ワックス等の滑剤を塗布する場合、キャスティングドラムの後流に設けられたブロッキング防止剤塗布装置で処理した後、例えば、20〜70℃に保持されたドライヤー内で5〜30秒の滞留時間処理されて乾燥された後、カールすることがない様に案内ロールで水平に維持されたまま切断装置に供給されて所定のサイズに切断されて積み上げられる。こうして得られた枚葉品の積層体は、包装された後に出荷される。
【0167】
また、本発明の積層体は、上記の共押出法の他、ドライラミネート法や塗布法によって製造することが出来る。例えば、塗布法の場合、A層に対応するフィルム又はシートを製造し、その表面にB層またはC層に対応させて塗布層を形成する。また、ドライラミネート法や塗布法においては、A層に対応する部分は、フィルム又はシート以外の成形品とすることも出来る。
【0168】
すなわち、本発明で使用する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)それ自身を、あるいは、他の重合体と更に混合してから、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、シート押出、真空成形、発泡成形、ブロー成形等の成形方法等によって所定形状を有する成形品とすることができる。斯かる成形品の形状は、目的、用途等に応じて様々な形状のものが選択可能であり、レーザー光が照射可能であれば、マーキングされる部分が平面、曲面、角部を有する凹凸面等であってもよい。上記の成形品は、重合体、有彩色着色剤及び黒色物質を少なくとも含み、その地色が通常、黒色又は暗色系の色である。
【0169】
<多色発色レーザーマーキング方法>
本発明の積層体に対して、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより、2以上の異なる色調のマーキングを形成することができる。 一般的に、レーザー光の「エネルギー」は、レーザー光の照射条件に依存する。具体的には、照射するレーザー光の種類、波長、パルス幅、周波数、出力の他、照射時間、照射面積、光源から積層体までの距離と角度、照射方法等を変えることにより、2以上のレーザー光を照射する際の「異なるエネルギーを有する」レーザー光とすることができる。具体的には、波長の異なるレーザー光を用いる場合のみならず、同一波長のレーザー光を用い、照射時間等の他の照射条件が異なる場合も、異なるエネルギーとすることができる。また、照射条件を同一として、1回照射の場合、及び、2回以上照射の場合において、被照射物に対するエネルギーは異なり、この場合、照射時間の長い後者の方が「高いエネルギー」となる。
【0170】
また、本発明における「異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光」とは、被照射物に与えるダメージの程度が異なる、2以上のレーザー光のことをいう。上述の照射条件が全て同一のとき、これを1回で照射した場合と複数回に分けて照射した場合とで被照射物に与えるダメージが異なるが、この場合も、本発明に係る「異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光」に含めることとする。即ち、与える総エネルギーが同一でも、1回照射の方が2回照射より、被照射物が受けるダメージが大きい場合は、前者を「高いエネルギー」とする。
【0171】
本発明に係るレーザーマーキング方法において、積層体に照射するレーザー光は、本発明に係る多色発色レーザーマーキングの優れた性能を大幅に損なわなければ、どのような照射条件で行ってもよい。照射方法も、スキャン方式及びマスク方式のいずれでもよく、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を同時に照射してもよいし、1つずつ照射してもよい。また、レーザー光の照射装置としては、一般的なレーザーマーキング用装置等を用いることができる。該装置は、通常、レーザー発振器、レーザー変調器、ハンドリングユニット、コントローラー等を備えており、レーザー発振器から発振したレーザー光を、レーザー変調器によりパルス変調し、積層体の表面に照射することで、マーキングを形成させる。尚、レーザーマーキングに際しては、1台の装置で異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射してもよいし、複数の装置を用いてもよい。2波長のレーザーマーキングが可能な装置としては、例えば、ロフィン・バーゼル社製レーザーマーキングシステム「RSM50D型」、「RSM30D型」等を用いることができる。
【0172】
本発明で使用するレーザー光は、気体、固体、半導体、色素、エキシマー及び自由電子のいずれでもよいが、波長が100〜2,000nmの範囲内にあるものが好ましい。尚
、本発明において、例えば、1,064nm、532nmのようにレーザー光の「波長」を示す数字は、いずれも中心波長を意味し、通常、±3%の誤差を含むものとする。
【0173】
気体レーザーとしては、ヘリウム・ネオンレーザー、希ガスイオンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、金属蒸気レーザー、炭酸ガスレーザー等が挙げられる。固体レーザーとしては、ルビーレーザー、ネオジウムレーザー、波長可変固体レーザー等が挙げられる。半導体レーザーは、無機でも有機でもよく、無機の半導体レーザーとしては、GaAs/GaAlAs系、InGaAs系、InP系等が挙げられる。また、Nd:YAG、Nd:YVO4、Nd:YLF等の半導体レーザー励起固体レーザーを用いることもできる。上述に例示したレーザー光は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0174】
本発明に係る多色発色レーザーマーキングによると、本発明の積層体にレーザー光を照射したとき、黒色物質の変化(消滅、変色等)が生じた部分は黒色物質以外の物質の色が強く現れ、有彩色着色剤の変化(分解、飛散等)が生じた部分は有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色、あるいは、白色になる。レーザー光のエネルギーが低い場合は、黒色物質の気化、揮散、完全分解等による消滅;又は、該黒色物質の少なくとも一部又は全てがそこに留まり、分解等により元の黒色と異なる色となる変色が起こり、レーザー光照射部は、有彩色着色剤に由来する色に発色する。レーザー光のエネルギーが更に高くなると、本発明で使用する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)に含まれる有彩色着色剤の変化が、通常、黒色物質が上記のように変化するエネルギーより高いエネルギーで起こるため、高エネルギーのレーザー光照射部は、白色、あるいは、有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色に発色する。
【0175】
レーザー光照射による発色方法の例を図面により簡単に説明するが、本発明に係る多色発色レーザーマーキング方法は、これに限定されるものではない。
本発明の積層体(1)に対し、2つの異なるエネルギーを有するレーザー光を異なる位置に照射する(図1の〔I〕)。このとき、レーザー光の照射は同時に行ってよいし、別々に行ってもよい。低エネルギーのレーザー光の照射部は、有彩色着色剤に由来する色にマーキング(図1の(3a))され、一方、高エネルギーのレーザー光の照射部は、白色、あるいは、有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色にマーキング(図1の(3b))される(図1の〔II〕)。以上の要領で、2つの異なる色調にマーキングされた積層体(1)(多色マーキング付き積層体)を得ることができる。
【0176】
また、本発明の積層体(1)に対し、低エネルギーのレーザー光を照射することにより、広い面積の、有彩色着色剤に由来する色のマーキング部を形成し、その後、該マーキング部の中に、更にレーザー光を照射することにより、その照射部を、白色、あるいは、有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色にマーキングすることができる(図2参照)。即ち、図2は、低エネルギーのレーザー光の照射により形成された、有彩色着色剤に由来する色のマーキング部((3a))の内部に、更に、レーザー光が照射されて形成された、白色、あるいは、有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色のマーキング部(3b)を有する、2つの異なる色調にマーキングされた積層体(1)(多色マーキング付き積層体)を示す。この方法によると、有彩色着色剤に由来する色のマーキング部(3a)と、白色、あるいは、有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色のマーキング部(3b)とが隣り合ったレーザーマーキングを実現することができる。尚、この2回目に照射するレーザー光のエネルギーは、1回目と同じであってよいし、異なってもよく、特に限定されない。
【0177】
本発明に係る多色発色レーザーマーキング方法により、2色の鮮明なマーキングを得る場合は、通常、低エネルギーのレーザー光は、黒色物質由来の色の消失を顕著に起こさせ
る方が有彩色着色剤由来の色が鮮明になりやすくてよい。また、高エネルギーのレーザー光は、有彩色着色剤由来の色の濃度を顕著に低下させるほどよい。
【0178】
本発明に係る色発色レーザーマーキング方法により、3色以上の鮮明なマーキングを得る場合は、A層が有彩色着色剤を1種のみ含む積層体に対して行ってもよいし、A層が有彩色着色剤を2種以上含む積層体に対して行ってもよいが、より鮮明なマーキングを形成しやすい点で後者が好ましい。
【0179】
異なるエネルギーを有するレーザー光を得る簡便な方法は、異なる波長のレーザー光を使用することである。例えば、波長だけが異なるレーザー光照射により、本発明に係る多色発色レーザーマーキングを鮮明に行う場合、各レーザー光の波長の差は、好ましくは100nm以上、更に好ましくは200nm以上、特に好ましくは500nm以上である。尚、上限は、通常、1,500nmである。
【0180】
本発明で使用する有彩色着色剤、即ち、360℃以上590℃以下の温度範囲に示差熱分析による発熱ピークを有する有彩色着色剤を用いる場合、波長のみが異なる2つのレーザー光照射によって、有彩色着色剤に由来する色のマーキングと、白色、あるいは、有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色のマーキングとを鮮明に形成するには、波長1,064nmのレーザー光及び波長532nmのレーザー光を用いることが好ましい。即ち、波長1,064nmのレーザー光照射で有彩色着色剤に由来する色に、波長532nmのレーザー光照射で白色、あるいは、有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色に、発色した鮮明なマーキングを形成するのに適している。
【0181】
本発明に係るレーザーマーキング方法により得られる「有彩色着色剤に由来する色」は、主に、レーザー光照射により黒色物質が消滅する、変色する等の結果、得られる色をいう。具体的には、黒色物質の消滅、変色等により黒色物質の色の影響が小さくなることにより現れる、(a)本発明で使用する有彩色着色剤そのものの色(以下、単に「本発明の着色剤の色」ともいう。)、(b)本発明の着色剤の色に黒色がかった色(本発明の着色剤の色+黒色物質の色、本発明の着色剤の色+黒色物質が変色した色)、(c)本発明で使用する有彩色着色剤が変色して色調が変化した色、(d)上述の色(c)に黒色がかった色、等が含まれる。
【0182】
また、本発明に係るレーザーマーキング方法により得られる「有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色」は、上述の『有彩色着色剤に由来する色』の濃度が低下した色」をいう。該色は、主に、レーザー光照射により有彩色着色剤が変化した結果、得られる色であり、具体的には、有彩色着色剤の分解、飛散等により有彩色着色剤の色の影響が小さくなることにより現れる色の他、本発明で使用する有彩色着色剤が変色して色調が変化した色等も含まれる。「有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色」は、白色に近い色であるほど、上述の「有彩色着色剤に由来する色」と区別しやすいため好ましい。
【0183】
本発明に係るレーザーマーキング方法により得られる、上述の「白色」は、通常、本発明で使用する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)に含まれる重合体そのものの色を主として、純白に限らず、他の色が混じった白系の色も含まれる。更に、この色の他、該組成物(a)にチタンブラックが黒色物質として含まれる場合には、レーザー光の照射により二酸化チタンに変化した後の、該二酸化チタンに由来の色、あるいは、該色と上記重合体の色との混合色、更には、必要に応じて配合される白色系物質等に由来する色、あるいは、該色と上記重合体の色との混合色等である。多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物(a)に含まれる重合体がレーザー光の受光により発泡しやすいものである場合、高エネルギーのレーザー光の照射部における発色は、白色度がより高くなる。
【0184】
尚、上述の「白色」の白色度は、JIS K7105等により評価することができる。該白色度は、色の白さの度合いを意味し、ある一定光量の光を対象物に照射したときの反射率により評価される。該反射率は、ハンター白色度計等により測定することができる。ここで、該反射率は、照射する光の種類(波長等)によって異なり、ハンター白色度計の場合は、光の3原色である青色光で測定を行う。本発明の積層体(1)において得られた白色マーキングの白色度(%)は、酸化マグネシウムの反射光に対する強度の割合で表すことができる。人間の視覚による白さと白色度計による白色度とは必ずしも一致しないこともあるが、本発明の積層体(1)において得られた白色マーキングは、白色度が低くても人間の目に白く見えればよい。しかしながら、白色度の目安としては、好ましくは55〜100%、より好ましくは60〜100%、更に好ましくは70〜100%、特に好ましくは80〜100%である。
【0185】
<多色発色レーザーマーキング付き積層体>
本発明の2以上の異なる色調にマーキングされた積層体(以下、単に「本発明の多色マーキング付き積層体」ともいう。)は、上述の積層体に、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより得られる。
【0186】
本発明の多色マーキング付き積層体中のA層における、マーキングされていない部分(レーザー光未受光部)は、重合体と、有彩色着色剤と、黒色物質等とから構成されている。また、低エネルギーのレーザー光(例えば、波長1,064nmのレーザー光)の受光部は、黒色物質が消滅又は変色(白色化等)しており、有彩色着色剤がそのまま残っている。更に、より高エネルギーのレーザー光(例えば、波長532nmのレーザー光)の受光部は、白色又はその有彩色着色剤に由来する色の濃度が低下した色を呈しており、この部分において、黒色物質は気化又は白色化しており、その有彩色着色剤は一部残存しているかもしれないが、ほとんど存在していない。有彩色着色剤は、レーザー光により分解、飛散等したためである。
【0187】
尚、本発明の多色マーキング付き積層体におけるA層を構成する重合体の種類によっては、マーキング部が発泡している場合がある。特に、ポリアセタール樹脂、単量体成分としてメタクリル酸メチルを用いたスチレン系樹脂、単量体成分としてメタクリル酸メチルを用いたゴム強化熱可塑性樹脂等を用いた場合には発泡したマーキング部とすることができる。
【0188】
本発明の多色マーキング付き積層体において、レーザー光によるマーキング部(レーザー光受光部)は、A層の重合体の種類、黒色物質の種類等によって、変形している場合がある。即ち、レーザー光の照射によって、受光部に発泡、膨張等が発生することにより、凸部となったり、収縮等が発生することにより凹部となったりする場合がある。
【0189】
本発明の多色マーキング付き積層体は、各種の用途に供することが出来る。特に、積層体におけるB層は、他の物品に貼り合わせる際、ラミネート層として機能し、接着剤塗布層や融着層として使用することが出来る。従って、本発明の積層体は、プリペイドカードの他、例えば、タクシーの運転者席の後部に貼り合わせて宣伝用プレートとして使用することが出来る。
【実施例】
【0190】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例で使用した物性の測定方法は次の通りである。また、実施例中の「%」及び「部」は、特に断らない限り重量基準である。
【0191】
<1.試験方法>
(1)有彩色着色剤の発熱ピーク温度:
後述の着色剤について、示差熱分析により発熱ピーク温度を測定した。測定装置は、セイコー電子社製「TG−DTA320型(横型炉)」である。3mgの試料をアルミニウム製の直径5mm×高さ2.5mmの皿型容器に均一に密に充填し、昇温速度を10℃/分として、空気中、流速200ml/分で測定した。尚、測定装置における温度の較正は、インジウム及びスズを用いて行った。また、重量の較正は、室温下、分銅を用いて行い、更に、シュウ酸カルシウムを用いて行った。発熱ピーク温度は、昇温曲線におけるピークトップにより決定した。着色剤の昇温曲線は、以下の着色剤C−1について図3に示す。各着色剤の発熱ピーク温度の結果を表7に示す。
【0192】
(2)積層体シートの評価方法:
(i)表層の光線透過率:
表層と同じ厚さのフィルムを作成し、日本分光株式会社製分光光度計「V−570」を使用し、波長600nmの光線で測定した。
【0193】
(ii)シート外観評価:
押出機で得られた幅1000mm、長さ5mのシートについて目視により外観観察を行い、次の基準で評価した。
【0194】
【表2】

【0195】
(iii)有彩色の発色評価:
レーザーマーキング装置として、ロフィンバーゼル社「Power Line−E」(1064nmタイプ)を使用し、出力24.0〜30.0A、周波数4.0〜13.0kHz、スキャン速度400mm/sの条件でシートを発色させて目視観察を行い、次の基準で評価した。
【0196】
【表3】

【0197】
(iv)白色の発色評価:
レーザーマーキング装置として、ロフィンバーゼル社「Power Line−E」(1064nmタイプ)を使用し、出力24.0〜30.0A、周波数4.0〜13.0kHz、スキャン速度400mm/sの条件でシートを発色させて目視観察を行い、次の基準で評価した。
【0198】
【表4】

【0199】
(v)表面平滑性評価:
押出機で得られた幅1000mm、長さ5mのシートについて触感評価を行い、次の基準で評価した。
【0200】
【表5】

【0201】
(vi)耐薬品性評価:
エタノール(1級)をガーゼに1mlしみこませて、1kg荷重で白発色または黒発色を有するマーキング部を200回往復させた後、表層の外観の目視観察を行い、次の基準で評価した。なお、1往復に要する時間は10秒に設定した。
【0202】
【表6】

【0203】
(vi)動摩擦係数(μd)の測定方法:
平滑なガラス板上に、幅15mm、長さ150mmに切り出した後述の積層体同士を2枚重ね、その上にゴム板を載せ、更に、その上に荷重を載せることにより、2枚の積層体接触圧力を2g/cmとし、20mm/minの速度で積層体同士を滑られて摩擦力を測定した。5mm滑らせた点での摩擦係数を動摩擦係数(μd)とした。測定器には、東洋精機社製の摩擦測定器「TR−2」を使用した。
【0204】
(vii)ヒートシール性:
後述の積層体同士を2枚重ね、両外面を厚さ100μmの保護用テフロン(登録商標)製シートで挟み、温度140℃、圧力5kg/cm、時間10秒の条件下、バーシーラーを使用してヒートシールした。次いで、テフロン(登録商標)製シートを取り外し、ヒートシール部分の幅が15mmとなる様に、短冊条のT字型剥離強度測定用サンプルを切り出した。T字型剥離強度は、引張試験機を使用し、温度30℃、相対湿度50%の環境下、チャック間距離100mm、引張速度300mm/分の条件にて測定した。測定は5回繰り返し、その平均値をもって剥離強度とした。
【0205】
(viii)レーザーマーキング処理面の耐久試験評価:
後述の積層体にレーザーマーキング処理を施し、処理面(縦30mm、横30mm)に対し、2kg荷重で繰り返し百万回の打鍵試験を行ない、試験後の外観評について目視観察を行い、次の基準で評価した。
【0206】
【表7】

【0207】
<3.使用材料>
(A)中間層に使用する材料:
(A−1)ゴム強化アクリル系グラフト共重合体:
ポリブタジエンゴム含量30重量%、スチレン含量16重量%、メタクリル酸メチル含量49重量%、アクリロニトリル含量5重量%であり、グラフト率65%、アセトン可溶分の[η](メチルエチルケトン溶媒を使用して30℃で測定した値)0.48dl/gのゴム強化アクリル系グラフト共重合体
【0208】
(A−2)アクリル系共重合体:
スチレン含量21重量%、メタクリル酸メチル含量72重量%、アクリロニトリル含量7重量%であり、[η](メチルエチルケトン溶媒を使用して30℃で測定した値)0.49dl/gのアクリル系共重合体
【0209】
(A−3)スチレン系共重合体:
スチレン含量60重量%、アクリロニトリル含量40重量%であり、[η](メチルエチルケトン溶媒を使用して30℃で測定した値)0.52dl/gのアスチレン系共重合体
【0210】
(A−4)黒色物質(カーボンブラック):
三菱化学社製「三菱カーボン♯45」
【0211】
(B)表層に使用する材料:
(B−1)ポリエチレンテレフタレート樹脂:
イーストマンケミカル社製「EASTAR PETG Copolyester6763」
【0212】
(B−2)ポリエチレンテレフタレート樹脂:
日本ユニペット社製「UNIPET RT523」
【0213】
(B−3)ポリカーボネート樹脂:
三菱エンジニアリングプラスチック社製「NOVAREX 7022A」
【0214】
(B−4)アクリル樹脂:
三菱レーヨン社製「アクリペット VH001」
【0215】
(B−5)白色ポリエチレンテレフタレート樹脂:
日本ユニペット社製のポリエチレンテレフタレート樹脂「UNIPET RT523」に平均粒径0.3μmのアナターゼ型酸化チタンを酸化チタンとして3重量%となる量で混合し、内径30mmの二軸押出機を使用し、シリンダー温度270℃で溶融混練して調製した。
【0216】
(C)有彩色着色剤:
有彩色着色剤として、以下の(C−1)〜(C−14)を使用した。これらの発熱ピーク温度を表8に示す。また、(C−1)の昇温曲線を図3に示す。
【0217】
(C−1)銅フタロシアニン顔料:
レーザー散乱法粒径分布測定装置による平均二次粒子径が7.1μmであるβ型銅フタロシアニン顔料(下記式(30))を用いた。
【0218】
【化22】

【0219】
【化23】

【0220】
【化24】

【0221】
【化25】

【0222】
【化26】

【0223】
【化27】

【0224】
【化28】

【0225】
【化29】

【0226】
【化30】

【0227】
【化31】

【0228】
【化32】

【0229】
【化33】

【0230】
【化34】

【0231】
【表8】

【0232】
<4.中間層に使用するペレットの作成>
以下の表9に示す(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−4)及び(C)をミキサーに投入して混合した。次いで、この混合物を内径50mmの押出機を使用し、シリンダー温度190〜260℃で溶融混練し、ペレット(1)〜(3)を得た。
【0233】
【表9】

【0234】
実施例1〜12及び比較例1〜7:
表10〜12に示す中間層(A層)及び表層(B層)の各材料をそれぞれベントポート付き120mmφ二軸押出機(A層用)とベントポート付き65mmφ二軸押出機(B層用)に供給した。更に、B層用押出機には、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B−1)に対して5重量%の不定形シリカ(平均粒径4μm)を混合したマスターバッチを、混合後の粒子濃度がB層を形成する材料に対して0.2重量%となる様に供給した。
【0235】
中間層(A層)及び表層(B層)の各材料の温度を250℃とし、両者をフィードブロック付きTダイより押し出し、温度40℃のキャスティングドラム上で急冷した。各押出機の吐出量を制御することにより、B層厚みが20μm、A層厚みが260μmの2種3層(B/A/B)の積層体を得た(B層の合計厚みはシート全体の厚みの13%に相当)。
【0236】
次いで、上記の積層体の表面に、固形分濃度が30重量%のジメチルシロキサンエマル
ジョンを3重量%となる様に希釈した水溶液を、2ml/mとなる量で塗布した後、乾燥し、一定長さにカッティングして、枚葉体として得た。得られた積層体シートを前述の方法で評価し、その結果を表10〜12に示す。
【0237】
【表10】

【0238】
【表11】

【0239】
【表12】

【0240】
実施例1〜12は、本発明に係る多色発色積層体であり、外観、レーザー発色性、耐表面平滑性、耐薬品性について、目的の性能を有している。一方、比較例1は、表層に本発明の規定外の材料を使用しており、レーザー発色性、表面平滑性、耐薬品性、動摩擦係数およびレーザーマーキング処理面の耐久性に劣る。比較例2は、表層に本発明の規定外の材料を使用しており、レーザー発色性、表面平滑性および接着性に劣る。比較例3は中間層の材料に本発明の規定外の材料を使用しており、レーザー発色性に劣る。比較例4〜7は、有彩色着色剤に発明の規定外の着色剤を使用しており、レーザー発色性に劣る。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】本発明におけるレーザーマーキング方法を示す説明図である。
【図2】本発明の多色マーキング付き積層体の一例の説明図である。
【図3】銅フタロシアニン顔料の発熱ピーク温度の説明図である。
【符号の説明】
【0242】
1:積層体
2:多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物にて形成されるA層
3a:有彩色マーキング部
3b:白色マーキング部
4:透明熱可塑性樹脂にて形成されるB層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A層の少なくとも片面にB層が積層されたレーザーマーキング用の積層体であって、A層は、異なるエネルギーを有する2以上のレーザー光を照射することにより2以上の異なる色調にマーキングされる、以下の(1)及び(2)を満足する多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物にて形成された層であり、B層は、透明熱可塑性樹脂にて形成された、単層での光線透過率が70%以上の層であることを特徴とするレーザーマーキング用の積層体。
(1)有彩色着色剤と、レーザー光の受光によりそれ自身が消滅する又は変色する黒色物質と、熱可塑性重合体とを以下の割合で含有する。
(2)上記熱可塑性重合体を100重量部とした場合に、上記有彩色着色剤の含有量を0.001〜3重量部、上記黒色物質を0.01〜2重量部含有する。
【請求項2】
A層の多色発色レーザーマーキング用熱可塑性重合体組成物を構成する熱可塑性重合体が(メタ)アクリル酸エステルが共重合されている共重合体である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
共重合体がゴム強化グラフト共重合体である請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
B層の透明熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂である請求項1〜3の何れかに記載の積層体。
【請求項5】
B層の透明熱可塑性樹脂がブロッキング防止処理されている請求項1〜4の何れかに記載の積層体。
【請求項6】
ポリエステル樹脂が、全ジオール成分中の1,4−シクロヘキサンジメタノール比率が全ジオール成分に対して15〜50モル%であるポリエステル樹脂である請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
フィルム又はシート状である請求項1〜6の何れかに記載の積層体。
【請求項8】
レーザー光の照射により多色の表示が施されている請求項1〜7の何れかに記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−256308(P2006−256308A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32835(P2006−32835)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】