説明

レーザー光源装置

【課題】複雑な作業を必要とすることなくプリズムホルダの所定位置にプリズムを配置すること。
【解決手段】光源ユニット3から発せられるレーザー光の光路上に配置されるプリズム401と、このプリズム401を保持するプリズムホルダ(ケース402、保持部材403)と、このプリズムホルダを回動させる駆動ギア720とを具備するレーザー光源装置1において、プリズムホルダにプリズム401を弾性的に保持する保持片403f、403gを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光源装置に関し、特に、レーザー光の光軸調整が可能なレーザー光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色レーザー光、緑色レーザー光、青色レーザー光をそれぞれ出射する赤色レーザーデバイス、緑色レーザーデバイス、青色レーザーデバイスを備え、各色のレーザー光を結合して単一の光ビームを生成し、生成された単一の光ビームを、レーザー制御系を介してスクリーンに投射するレーザーディスプレイシステムがある(例えば、特許文献1参照)。このようなレーザーディスプレイシステムでは、レーザー光源装置においてレーザー光の向きを調整する調整機構を備えている。
【0003】
一方、マルチビーム走査装置における光ビーム調整を容易化した光ビーム調整機構が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載のマルチビーム走査装置は、光源部からの光ビームを走査結像光学系により被走査面に向って集光し、被走査面の走査線を光走査する。そして、光ビームの光路中に結像機能を持たないプリズムを配置し、プリズムの空間的な状態を変化させることにより、プリズムを透過する光ビームの位置および/または向きを調整している。また、プリズムの空間的な状態を、ギア機構を用いてモータ駆動にて変化させることができるように構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−300009号公報
【特許文献2】特開2002−174785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーザー光源装置において、レーザー光の向きを調整する調整機構として、特許文献2記載の光ビーム調整機構を適用し、光ビームの位置および/または向きを調整するプリズムをギア機構に連動させる場合には、ギア機構で駆動されるプリズムホルダの所定位置に適切にプリズムを配置する必要がある。しかしながら、プリズム自体の形状は必ずしも一定ではなく、製造条件等に起因してバラツキが発生し得る。このため、プリズムホルダの所定位置にプリズムを配置するためには、接着剤によりプリズムをプリズムホルダの所定位置に固着させる必要があった。接着剤によりプリズムホルダの所定位置にプリズムを固着させる場合には、プリズム又はプリズムホルダに接着剤を付着させ、所定位置にプリズムを位置決めしながらプリズムホルダにプリズムを押圧する等の作業が必要となり、プリズムホルダにプリズムを保持させる際の作業が煩雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、複雑な作業を必要とすることなくプリズムホルダの所定位置にプリズムを配置することができるレーザー光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレーザー光源装置は、光源から発せられるレーザー光の光路上に配置されるプリズムと、前記プリズムを保持するプリズムホルダと、前記プリズムホルダを回動させる駆動ギアとを具備するレーザー光源装置であって、前記プリズムホルダに前記プリズムを弾性的に保持する保持片を設けたことを特徴とする。
【0008】
上記レーザー光源装置によれば、プリズムホルダにプリズムを弾性的に保持する保持片を設けたことから、プリズム自体の形状にバラツキが発生している場合においても、当該形状のバラツキを吸収しながらプリズムを保持することができるので、複雑な作業を必要とすることなくプリズムホルダの所定位置にプリズムを配置することが可能となる。
【0009】
上記レーザー光源装置において、前記プリズムホルダは、前記プリズムが配置されるケースと、前記保持片を有し前記ケースに取り付けられる保持部材とを備えることが好ましい。この場合には、ケースにプリズムを配置した後、保持部材をケースに取り付けるという簡単な作業により、プリズム自体の形状に発生したバラツキを吸収しながらプリズムホルダの所定位置にプリズムを配置することが可能となる。
【0010】
また、上記レーザー光源装置において、前記保持部材は、前記プリズムホルダが回動可能に軸支されるベース部材側に前記プリズムを付勢する弾性片を有することが好ましい。この場合には、弾性片によりプリズムをベース部材側に付勢することができるので、プリズムホルダの回動軸のスラスト方向に発生し得るプリズムのガタツキを抑制することが可能となる。
【0011】
特に、上記レーザー光源装置においては、前記プリズムホルダが軸支される前記ベース部材の一部に、当該プリズムホルダの回動方向の遊びをなくすための付勢部材を配設することが好ましい。この場合には、回動方向の遊びをなくすための付勢部材を、駆動ギアからの駆動力が付与されるプリズムホルダの近傍に配置することができるので、例えば、上記付勢部材がプリズムを挟んでプリズムホルダの反対側に配置される場合にプリズムに作用し得る応力(プリズムをねじる応力)が発生するのを回避して適切にプリズムホルダの回動を制御することが可能となる。
【0012】
また、上記レーザー光源装置においては、前記プリズム及びプリズムホルダを介在させて前記ベース部材に取り付けられる取付部材を備え、前記取付部材に前記保持部材の弾性片を前記ベース部材側に押圧する押圧部を設けることが好ましい。この場合には、取付部材の押圧部により保持部材の弾性片が押圧されることから、弾性片の付勢力を安定してプリズムに付与することができるので、プリズムホルダの回動軸のスラスト方向に発生し得るプリズムのガタツキをより効果的に抑制することが可能となる。
【0013】
さらに、上記レーザー光源装置においては、前記取付部材の一部で前記駆動ギアに連結される駆動モータを前記ベース部材側に押圧することが好ましい。この場合には、取付部材に、保持部材の弾性片を押圧する機能と、駆動モータを押圧する機能とを持たせることができるので、装置を組み立てる際の作業効率を向上することができると共に、装置の部品点数を削減して製造コストを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プリズムホルダにプリズムを弾性的に保持する保持片を設けたことから、プリズム自体の形状にバラツキが発生している場合においても、当該形状のバラツキを吸収しながらプリズムを保持することができるので、複雑な作業を必要とすることなくプリズムホルダの所定位置にプリズムを配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレーザー光源装置の分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係るレーザー光源装置の組み立て状態の斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係るレーザー光源装置の組み立て状態の側面図である。
【図4】上記実施の形態に係るレーザー光源装置が有する光源照射ユニットの組み立て状態を説明するための図である。
【図5】上記実施の形態に係るレーザー光源装置が有するブラケットの構成を説明するための図である。
【図6】上記実施の形態に係るレーザー光源装置が有する光軸調整ユニットの構成を説明するための図である。
【図7】上記実施の形態に係るレーザー光源装置を組み立てる際の工程を説明するための図である。
【図8】上記実施の形態に係るレーザー光源装置を組み立てる際の工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態に係るレーザー光源装置は、例えば、レーザーディスプレイシステムの光源装置に適用されるものである。図1は、本発明の一実施の形態に係るレーザー光源装置1の分解斜視図であり、図2及び図3は、それぞれレーザー光源装置1の組み立て状態の斜視図及び側面図である。図1〜図3に示すように、本実施の形態に係るレーザー光源装置1は、ベース部材としての基台2と、この基台2に取り付けられる光源ユニット3及び光源照射ユニット4と、これらの光源ユニット3及び光源照射ユニット4を固定する取付部材としてのブラケット5と、このブラケット5に取り付けられる光軸調整ユニット6と、光源照射ユニット4を駆動する駆動ユニット7とを主な構成要素として備える。なお、以下においては、説明の便宜上、光源照射ユニット4側をレーザー光源装置1の前方側と呼び、光源ユニット3側をレーザー光源装置1の後方側と呼ぶものとする。
【0017】
基台2は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成形され、レーザー光源装置1の底面部を構成する。基台2の後方側端部には、後述するレンズホルダ303を保持する保持穴部201aが形成された垂直支持体201が設けられている。この垂直支持体201の前方側には、後述する駆動ユニット7の駆動モータ710を保持するモータ保持部202が設けられ、このモータ保持部202の近傍には、後述する駆動ユニット7の駆動ギア720を回転可能に支持する軸部203が設けられている。また、モータ保持部202の前方側には、後述する光源照射ユニット4の固定軸404が挿入される筒状部204が設けられ、この筒状部204の近傍には、組み立て時において、筒状部204の周囲に巻回されたトーションばね8の一端を係止する係止片205が設けられている。
【0018】
光源ユニット3は、光源としてのレーザダイオードを保持するレーザダイオードホルダ(光源支持板)301と、レーザダイオードに電源を供給するための電源ボードとしての機能を少なくとも果たすプリント回路基板(以下、「回路基板」という)302と、コリメータレンズを保持する円筒形状のレンズホルダ303とを有している。レーザダイオードホルダ301は、放熱機能を有するように熱伝導性の良い金属から構成されており、その中央部にレーザー光出射口301aを有している。レンズホルダ303は、前方側に配置された小径部で垂直支持体201の保持穴部201aに嵌着される。レーザダイオードホルダ301及び回路基板302は、レンズホルダ303を保持した状態の垂直支持体201の後面側にネジ304により固定される。また、回路基板302は、その下端部近傍をネジ305により基台2の底面部に固定されている。このように、本実施の形態において、光源ユニット3は、基台2の垂直支持体201よりも後方側にまとめて配設されている。
【0019】
光源照射ユニット4は、回動可能なプリズム401と、このプリズム401の下端部を保持するケース402と、プリズム401の上方側から被せられ、ケース402に取り付けられる保持部材403と、ケース402に挿通される固定軸404とを有している。本実施の形態においては、ケース402と保持部材403とでプリズムホルダが構成される。プリズム401は、光源ユニット3から出射されるレーザー光の出射方向を規定する。ケース402は、駆動ユニット7からの駆動力を受け、プリズム401を回動させる。ケース402の下面には、基台2の筒状部204に巻回されたトーションばね8の一端を係止する係止部402aが設けられている。また、ケース402の中央には、固定軸404が貫通する貫通孔402bが形成されている。さらに、ケース402の側面部近傍には、後述する保持部材403の係合腕部403cが挿通される複数のスリット部402cが形成されている(図1に不図示、図4(d)参照)。さらに、ケース402の下面には、後述する駆動ユニットの駆動ギアと噛合するギア部402dが設けられている(図1に不図示、図4(d)参照)。
【0020】
保持部材403は、例えば、薄い金属板材を折り曲げて形成され、プリズム401の上面を押える上面部403aと、上面部403aの対向する側端部から垂下する側面部403bと、側面部403bの下端部から下方側に延出する係合腕部403cとを有している。上面部403aには、その一部を上方側に僅かに折り曲げて形成された弾性部403dと、この弾性部403dの中央近傍に設けられ、後述するブラケット5の押圧突起501iからの押圧を受ける被押圧部403eと、その前端部及び後端部から下方側に延出する保持片403fとを有する。側面部403bには、その一部に概してU字状のスリットを形成することで保持片403gが設けられている。固定軸404は、ケース402の貫通孔402bを貫通して下方側に突出し、その突出した部分で基台2の筒状部204に固定されるものとなっている。このように固定軸404が筒状部204に固定されることで、ケース402と保持部材403とからなるプリズムホルダが回動可能に基台2に軸支されるものとなっている。
【0021】
図4は、本実施の形態に係るレーザー光源装置1が有する光源照射ユニット4の組み立て状態を説明するための図である。光源照射ユニット4を組み立てる場合、図4に示すように、ケース402の貫通孔402bに固定軸404が貫通されると共にその上からプリズム401が載置された状態で保持部材403が被せられる。この場合、保持部材403の係合腕部403cがケース402の側面部近傍に形成されたスリット部402cに挿通され、その先端部を内側に折り曲げることでプリズム401がケース402に固定される。保持部材403の保持片403f、403gは、プリズム401の前後面、側面を弾性的に保持した状態となっている。このように保持片403f、403gが、ケース402に配置されたプリズム401の側面を弾性的に保持するようにしたことから、プリズム401の形状にバラツキが発生した場合においても、当該形状のバラツキを吸収しながらプリズム401を保持でき、ケース402における所定位置に固定することができるものとなっている。また、保持部材403の弾性部403dは、プリズム401の上面から僅かに浮き上がった状態となっており、被押圧部403eは、プリズム401の上面から僅かに離間した位置で略平行に配置された状態となっている。これらの弾性部403d及び被押圧部403eによりプリズム401を基台2側に付勢する弾性片が構成され、後述するブラケット5の押圧突起501iからの押圧により確実にプリズム401を基台2側に付勢することができるものとなっている。
【0022】
ブラケット5は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成形されており、概して、基台2に固定され、後述する駆動ユニット7の駆動モータ710を収容する基部501と、この基部501の上端部分から延出して垂直支持体201に固定され、回路基板302の上端部を保持する延出部502とを有している。基部501は、図5により詳しく示すように、下方側に開口して後述する駆動ユニット7の駆動モータ710を収容する収容部501aと、この収容部501aの下端部から側方側に延出して設けられる固定部501bと、収容部501aの後端部に設けられた壁部501cと、収容部501aの前端部中央から前方側に延出して設けられた押圧部501dとを有している。
【0023】
収容部501aの側面には、弾性変形可能に設けられ、後述する駆動モータ710のフランジ部713を押圧する押圧片501eが設けられている。固定部501bは、基台2の底面と平行に延出して設けられ、複数のネジ501fにより基台2の固定孔206に固定される。壁部501cの上端部及び下端部には、後述するX軸移動部610をスライド移動可能に案内するガイド部501g、501hが形成されている(図1にガイド部501hは不図示、図5(c)参照)。また、この壁部501cにおける光軸に対応する部分には、不図示の開口部が形成されている。押圧部501dは、収容部501aの上端部分から連続して設けられ、その下面には光源照射ユニット4が有する保持部材403の被押圧部403eを押圧する押圧突起501iが設けられている。さらに、収容部501aの内壁面には、後述する駆動モータ710のモータ本体711の表面を基台2側に押圧する押圧片501jが設けられている。
【0024】
延出部502は、基部501の上端部分における後方側端部近傍から上方側に延出すると共に、後方側に延出する腕部502aと、この腕部502aの後端部に設けられ、回路基板302の上端部を保持する保持部502bとを有している。腕部502aは、側面視にて概してL字形状を有しており、保持部502bとの連結部分近傍において、ネジ502cにより垂直支持体201の上面部に形成された固定孔207に固定される。保持部502bは、腕部502aの後端部から側方側部分で後方側に延出する一対の爪部502dと、回路基板302の前面部に当接する当接部502eとを有している。保持部502bは、当接部502eを回路基板302の前面部に当接させた状態で、爪部502dにより回路基板302の上端部の後面を係止することで当該回路基板302を保持する。
【0025】
光軸調整ユニット6は、レーザダイオードから出射されるレーザー光の光軸調整を行なう凹レンズ600と、この凹レンズ600のXY軸方向の位置を調整するための調整機構とを有している。本実施の形態に係るレーザー光源装置1においては、光軸に対して垂直平面をXY平面として、XY平面内において互いに直交する方向をX軸方向及びY軸方向とする(図2参照)。上述した調整機構は、X軸方向に移動可能なX軸移動部610と、このX軸移動部610と一体的に移動すると共に、Y軸方向に移動可能なY軸移動部620とから構成され、これらのX軸移動部610及びY軸移動部620により、それぞれ凹レンズ600のX軸方向及びY軸方向の位置調整を行う。
【0026】
X軸移動部610は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成形され、概して平板形状に設けられると共に、その中央に矩形状の開口部611が形成されている。X軸移動部610の前面側であって上端部分近傍の側方部には、前方側に突出する一対の係合片612が設けられている。これらの係合部612は、ブラケット5のガイド部501gに係合する。これらの係合片612の下端部には、下方側に開口した溝部612aが形成され、この溝部612aの内壁には複数の突起部612bが設けられている(突起612bについては図1に不図示、図6(a)参照)。溝部612aは、X軸移動部610のスライド移動の際にブラケット5のガイド部501gに案内される部分であり、突起部612bは、このスライド移動の際にガイド部501gの表面に摺接する部分である。また、係合片612の外側面には、凹凸形状で構成される摘み部612cが設けられている。摘み部612cは、作業者が凹レンズ600の位置調整のためにX軸移動部610を移動させる際に利用される部分である。
【0027】
一方、X軸移動部610の前面側であって下端部分には、前方側に突出して係合壁部613が設けられている。この係合壁部613は、ブラケット5のガイド部501hに係合する。この係合壁部613における側端部は、中央部よりも肉厚に設けられ、この肉厚部分に上方側に開口した溝部613aが形成されている。この溝部613aの内壁には、溝部612aと同様に、複数の突起部613bが設けられている(突起613bについては図1に不図示、図6(a)参照)。溝部613aは、X軸移動部610のスライド移動の際にブラケット5のガイド部501hに案内される部分であり、突起部613bは、このスライド移動の際にガイド部501hの表面に摺接する部分である。X軸移動部610は、これらの係合部612及び係合壁部613によりブラケット5のガイド部501g、501hに取り付けられ、X軸方向にスライド移動可能に構成されている。
【0028】
また、一対の係合片612の間には、X軸調整手段としての、弾性変形可能な一対の弾接片614が設けられている。これらの弾接片614は、X軸移動部610の板状部に概してU字状のスリットを形成することで設けられ、上端部が固定される一方、下端部が自由端として弾性変形可能に構成されている。弾接片614の下端部には、前方側に突出する突出片614aが設けられている。弾接片614は、X軸移動部610がブラケット5に取り付けられた場合に突出片614aを壁部501cの後面に弾接させ、X軸移動部610の移動を規制する。すなわち、弾接片614は、ブラケット5の一部に弾接してX軸移動部610を係止させて凹レンズ600のX軸方向の位置を調整する役割を果たすものとなっている。
【0029】
さらに、X軸移動部610の後面側であって上端部分には、後方側に突出する突出片615が設けられている。突出片615は、X軸移動部610の中央部分で上下方向に延在して設けられ、後述するY軸移動部620の弾接片624が弾接可能な位置に配置されている。この突出片615の側方側には、上下方向に延出する一対のガイド部616が設けられている。これらのガイド部616は、X軸移動部610の後面から後方側に突出すると共にその後端で側方側に延出して設けられ、Y軸移動部620を上下方向にスライド移動可能に案内する。
【0030】
Y軸移動部620は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成形され、概して平板形状に設けられると共に、その中央に円形状の開口部621が形成されている。Y軸移動部620の前面側であって上端部分近傍の側方部には、前方側に突出する一対の係合部622が設けられている。これらの係合部622は、X軸移動部610のガイド部616に係合する。これらの係合部622の対向する内壁部には、互いに相手側に開口した溝部622aが形成され、この溝部622aの内壁には複数の突起部622bが設けられている(突起622bについては図1に不図示、図6(b)参照)。溝部622aは、Y軸移動部620のスライド移動の際にX軸移動部610のガイド部616に案内される部分であり、突起部622bは、このスライド移動の際にガイド部616の表面に摺接する部分である。また、係合部622の外側面には、凹凸形状で構成される摘み部622cが設けられている。摘み部622cは、作業者が凹レンズ600の位置調整のためにY軸移動部620を移動させる際に利用される部分である。
【0031】
一方、Y軸移動部620の前面側であって下端部分近傍の側方部には、前方側に突出する一対の係合部623が設けられている。これらの係合部623は、係合部622と同様に、X軸移動部610のガイド部616に係合する。これらの係合部623の対向する内壁部には、互いに相手側に開口した溝部623aが形成され、この溝部623aの内壁には複数の突起部623bが設けられている(突起623bについては図1に不図示、図6(d)参照)。溝部623aは、Y軸移動部620のスライド移動の際にX軸移動部610のガイド部616に案内される部分であり、突起部623bは、このスライド移動の際にガイド部616の表面に摺接する部分である。Y軸移動部620は、これらの係合部622、623によりX軸移動部610のガイド部616に取り付けられ、Y軸方向にスライド移動可能に構成されている。
【0032】
また、一対の係合部622の間には、Y軸調整手段としての、弾性変形可能な弾接片624が設けられている。この弾接片624は、Y軸移動部620の左右方向に沿って波形状に形成されており、X軸移動部610の突出片615に弾接可能な形状に構成されている。言い換えると、弾接片624は、X軸移動部610の一部(突出片615)に当接する当接部と、この当接部に連続して設けられた屈曲部とを有する弾性部材で構成され、X軸移動部610に弾接可能に構成されている。この弾接片624は、Y軸移動部620がX軸移動部610に取り付けられた場合に突出片615の後端部に弾接してY軸移動部620の移動を規制する。すなわち、弾接片624は、X軸移動部610の一部に弾接してY軸移動部620を係止させて凹レンズ600のY軸方向の位置を調整する役割を果たすものとなっている。さらに、Y軸移動部620の後面側には、凹レンズ600を保持可能な円弧形状のレンズ保持部625が設けられている。例えば、凹レンズ600は、レンズ保持部625に圧入されると共に、接着剤等により接着固定される。
【0033】
図6は、本実施の形態に係るレーザー光源装置1が有する光軸調整ユニット6の組み立て状態を説明するための図である。図6に示すように、Y軸移動部620は、X軸移動部610のガイド部616にスライド移動可能に取り付けられる。そして、X軸移動部610は、不図示のブラケット5のガイド部501gにスライド移動可能に取り付けられている。この場合において、Y軸移動部620は、X軸移動部610の突出片615に弾接片624を弾接させた状態で取り付けられ、X軸移動部610は、ブラケット5の壁部501cに弾接片614を弾接させた状態で取り付けられている。これにより、Y軸移動部620は、X軸移動部610に対して現在の位置で停止した状態に保持され、X軸移動部610は、ブラケット5に対して現在の位置で停止した状態に保持される。このため、凹レンズ600の位置調整を行う作業者は、手でX軸移動部610及びY軸移動部620をスライド移動させることにより、簡単に凹レンズ600の位置調整を行うことが可能となっている。
【0034】
このように、X軸移動部610及びY軸移動部620に、凹レンズ600の位置を調整すると共にX軸移動部610及びY軸移動部620の位置を係止させることができる弾接片614及び弾接片624を設けることにより、X軸移動部610及びY軸移動部620自体によって凹レンズ600の位置調整を行うと共に位置調整後の凹レンズ600を保持することができるものとなっている。また、X軸移動部610及びY軸移動部620を、それぞれブラケット5のガイド部501g及びX軸移動部610のガイド部616に沿ってスライド移動させることにより、X軸移動部610及びY軸移動部620の移動経路を安定化させることができるので、弾接片614及び弾接片624による弾接箇所を特定し易く、X軸移動部610及びY軸移動部620を適切にブラケット5及びX軸移動部610に係止できるものとなっている。特に、弾接片624を、波形状を有する弾性部材、すなわち、X軸移動部610の一部に当接する当接部と、当該当接部に連続して設けられた屈曲部とを有する弾接部材で構成し、X軸移動部610の突出片615と弾接させることにより、簡単な構成でY軸移動部620をX軸移動部610に係止させることができるものとなっている。なお、弾接片624の構成としては、このような波形状に限定されるものではない。
【0035】
駆動ユニット7は、光源照射ユニット4を回動させる駆動力を供給する駆動モータ710と、この駆動モータ710からの駆動力をケース402に伝達する駆動ギア720とを有する。駆動モータ710は、モータ本体711と、モータ本体711から前方側に突出する駆動軸712と、駆動軸712における駆動モータ710の近傍に設けられたフランジ部713と、モータ本体703に電気信号を供給するためのフラットケーブル714とを有する。駆動モータ710は、モータ保持部202を構成する、概してU字形状の一対の保持片202a、202bの間にフランジ部713が配置されると共に、駆動軸712が回転可能に保持された状態で基台2に取り付けられる。駆動軸712の表面には、後述する駆動ギア720の第1ギア部721と噛合する溝部が形成されている。フラットケーブル714は、後方側に引き出され、回路基板302の後面に設けられた端子部に接続される。
【0036】
駆動ギア720は、第1ギア部721と、この第1ギア部721よりも小径の第2ギア部722とを有し、軸部203に挿通された状態で基台2に取り付けられる。この場合において、駆動ギア720は、第1ギア部721が駆動軸712に噛合すると共に、第2ギア部722がケース402のギア部402dに噛合する位置に取り付けられている。駆動モータ710に電気信号が供給されて駆動軸712が回転すると、これに伴って第1ギア部721が回転し、第1ギア部721に一体化されている第2ギア部722の回転に応じてケース402が回転してプリズム401を回動させることが可能となっている。
【0037】
ここで、上記構成を有するレーザー光源装置1を組み立てる際の工程について説明する。図7及び図8は、本実施の形態に係るレーザー光源装置1を組み立てる工程を説明するための斜視図である。本実施の形態に係るレーザー光源装置1を組み立てる場合、まず、基台2の垂直支持体201の保持穴部201aにレンズホルダ303を嵌着させる。そして、レンズホルダ303を嵌着させた状態の垂直支持体201の後面に対して、レーザダイオードホルダ301を間に配置した状態で回路基板302をネジ304、305により固定する。
【0038】
次に、フランジ部713を保持片202a、202bの間に配置すると共に、駆動軸712を回転可能に保持させた状態で駆動モータ710を基台2のモータ保持部202に配設すると共に、モータ本体711に接続されたフラットケーブル714を回路基板302の端子部に接続する。そして、第1ギア部721が駆動軸702のギア溝部と噛合するように駆動ギア720を軸部203に取り付ける。このように光源ユニット3及び駆動ユニット7を基台2に取り付けることにより、図7に示す状態のレーザー光源装置1が得られる。なお、基台2に対する回路基板302等の固定作業と、基台2に対する駆動モータ710の取付作業とについては順番が前後入れ替わっても構わない。
【0039】
次に、基台2の筒状部204の周囲にトーションばね8を配置し、その上から固定軸404を筒状部204に挿通するように光源照射ユニット4を取り付ける。トーションばね8は、その一端をケース402の係止部402aに係止させ、一定の付勢力を付与することによりケース402の回動方向の遊びをなくす役割を果たすものである。しかしながら、光源照射ユニット4を取り付ける作業と、トーションばね8の一端を係止部402aに係止させる作業とを同時に行う場合には、トーションばね8の一端を手で保持した状態で光源照射ユニット4を取り付ける等の煩雑な作業が必要となる。このため、本実施の形態に係るレーザー光源装置1においては、基台2の係止片205にトーションばね8の一端を係止させた状態で光源照射ユニット4を取り付けた後、そのトーションばね8の一端を解放することにより、ケース402の係止部402aに係止させるようにしている。この場合には、光源照射ユニット4を取り付ける作業と、トーションばね8の一端を係止部402aに係止させる作業とを別々に行うことができるので、光源照射ユニット4を組み付ける作業効率を向上することが可能となる。このように光源照射ユニット4を基台2に取り付けることにより、図8に示す状態のレーザー光源装置1が得られる。
【0040】
図8に示すように、本実施の形態に係るレーザー光源装置1においては、駆動ユニット7からの駆動力を受けるケース402と、このケース402に一端が係止され、ケース402の回動方向の遊びをなくすトーションばね8とをプリズム401の下方側部分に配置させている。これにより、例えば、このようなトーションばね8がプリズム401を挟んで保持部材403の反対側(上方側)に配置される場合にプリズム401に作用し得る応力(プリズム401をねじる応力)が発生するのを回避して適切にケース402の回動を制御することが可能となっている。
【0041】
次に、図8に示す状態のレーザー光源装置1の上方から、光軸調整ユニット6が取り付けられたブラケット5を基台2に取り付ける。ブラケット5を取り付ける際には、基部501の収容部501aで駆動モータ710を収容するようにして、基部501の固定部501bをネジ501fで基台2の固定孔206に固定すると共に、延出部502の保持部502bをネジ502cにより垂直支持体201に固定孔207に固定する。このように光軸調整ユニット6が取り付けられたブラケット5を基台2に取り付けることにより、図2に示す状態のレーザー光源装置1が得られる。本実施の形態においては、光軸調整ユニット6が取り付けられたブラケット5を基台2に取り付けることにより、X軸方向及びY軸方向に移動可能な調整機構を有する光軸調整ユニット6を基台2に直接的に取り付ける作業を排除し、レーザー光源装置1を組み立てる際の作業効率を向上している。
【0042】
このようにブラケット5が基台2に取り付けられると、基部501の押圧部501dの押圧突起501iにより、光源照射ユニット4の保持部材403の被押圧部403eが押圧された状態となる。これにより、保持部材403の弾性部403dによってプリズム401が基台2側に付勢されることとなるので、プリズムホルダの回動軸のスラスト方向に発生し得るプリズム401のガタツキを抑制できるものとなっている。また、延出部502の保持部502bの一対の爪部502dにより、回路基板302の上端部の後面が保持された状態とされる。これにより、基台2に固定された回路基板3の上端部が保持されることとなり、基台2とブラケット5との一体化を図ることができるものとなっている。さらに、基部501の収容部501aの内壁面に設けられた押圧片501jにより駆動モータ710が基台2側に押圧された状態となる。これにより、別途、駆動モータ710を基台2側に押圧(位置決め)するための構成を必要とすることなく、ブラケット5を基台2に取り付けるだけで駆動モータ710を押圧できるものとなっている。このようにブラケット5に、被押圧部401を押圧する機能や駆動モータ710を押圧する機能などの複数の機能を持たせることにより、装置の部品点数を削減して製造コストを低減すると共に、装置を組み立てる際の作業効率を向上できるものとなっている。
【0043】
図2に示すように組み立てられた後、本実施の形態に係るレーザー光源装置1においては、光軸調整ユニット6のX軸移動部610及びY軸移動部620を手でスライド移動させることによって凹レンズ600の位置調整を行うと共に、駆動ユニット7で光源照射ユニット4を回動させることによってプリズム401の角度調整を行う。そして、光軸調整ユニット6のX軸移動部610及びY軸移動部620を接着剤等により固定する。これにより、調整後の光軸を確実に保持させることができるものとなり、レーザー光源装置1が完成する。
【0044】
このように組み立てられたレーザー光源装置1において、光源ユニット3のレーザダイオードホルダ301に保持されたレーザダイオードからのレーザー光は、レーザー光出射口301aから出射されて、レンズホルダ303に保持されたコリメータレンズを通った後、光軸調整ユニット6の凹レンズ600を通過し、光源照射ユニット4のプリズム401によって規定される方向へと進行して、例えば、レーザーディスプレイシステムのディスプレイスクリーンへと導かれる。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態に係るレーザー光源装置1においては、光源照射ユニット4において、プリズムホルダにプリズム401を弾性的に保持する保持片403f、403gを設けたことから、プリズム401自体の形状にバラツキが発生している場合においても、当該形状のバラツキを吸収しながらプリズム401を保持することができるので、従来のように接着剤等によりプリズム401をプリズムホルダに固定する複雑な作業を必要とすることなくプリズムホルダの所定位置にプリズム401を配置することが可能となる。特に、上記プリズムホルダを、プリズム401が配置されるケース402と、保持片403f、403gを有し、ケース402に取り付けられる保持部材403とで構成していることから、ケース402にプリズム401を配置した後、保持部材403をケース402に取り付けるという簡単な作業により、プリズム401自体の形状に発生したバラツキを吸収しながらプリズムホルダの所定位置にプリズム401を配置することが可能となる。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0047】
例えば、上記実施の形態においては、ブラケット5の押圧突起501iにより、保持部材403の被押圧部403eが押圧される場合に、保持部材403の弾性部403dによってプリズム401が基台2側に付勢される場合について説明しているが、プリズム401を付勢するための構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。ブラケット5の押圧突起501iによる被押圧部403eの押圧は必ずしも必要ではなく、保持部材403の弾性部403dが有する弾性力のみによってプリズム401を基台2側に付勢するようにしても良い。この場合においても、プリズムホルダの回動軸のスラスト方向に発生し得るプリズム401のガタツキを抑制できるという効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 レーザー光源装置
2 基台
201 垂直支持体
202 モータ保持部
203 軸部
204 筒状部
205 係止片
206、207 固定孔
3 光源ユニット
301 レーザダイオードホルダ
301a レーザー光出射口
302 プリント回路基板(回路基板)
303 レンズホルダ
304、305 ネジ
4 光源照射ユニット
401 プリズム
402 ケース
402a 係止部
402b 貫通孔
403 保持部材
403a 上面部
403b 側面部
403c 係合腕部
403d 弾性部
403e 被押圧部
403f、403g 保持片
404 固定軸
5 ブラケット
501 基部
501a 収容部
501b 固定部
501c 壁部
501d 押圧部
501e 押圧片
501g、501h ガイド部
501i 押圧突起
502 延出部
502a 腕部
502b 保持部
502c ネジ
502d 爪部
502e 当接部
6 光軸調整ユニット
600 凹レンズ
610 X軸移動部
611 開口部
612 係合部
612a 溝部
612b 突起部
612c 摘み部
613 係合壁部
613a 溝部
613b 突起部
614 弾接片
614a 突出片
615 突出片
616 ガイド部
620 Y軸移動部
621 開口部
622 係合部
622a 溝部
622b 突起部
622c 摘み部
623 係合部
623a 溝部
623b 突起部
624 弾接片
625 レンズ保持部
7 駆動ユニット
710 駆動モータ
711 モータ本体
712 駆動軸
713 フランジ部
714 フラットケーブル
720 駆動ギア
721 第1ギア部
722 第2ギア部
8 トーションばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発せられるレーザー光の光路上に配置されるプリズムと、前記プリズムを保持するプリズムホルダと、前記プリズムホルダを回動させる駆動ギアとを具備するレーザー光源装置であって、前記プリズムホルダに前記プリズムを弾性的に保持する保持片を設けたことを特徴とするレーザー光源装置。
【請求項2】
前記プリズムホルダは、前記プリズムが配置されるケースと、前記保持片を有し前記ケースに取り付けられる保持部材とを備えることを特徴とする請求項1記載のレーザー光源装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記プリズムホルダが回動可能に軸支されるベース部材側に前記プリズムを付勢する弾性片を有することを特徴とする請求項2記載のレーザー光源装置。
【請求項4】
前記プリズムホルダが軸支される前記ベース部材の一部に、当該プリズムホルダの回動方向の遊びをなくすための付勢部材を配設したことを特徴とする請求項3記載のレーザー光源装置。
【請求項5】
前記プリズム及びプリズムホルダを介在させて前記ベース部材に取り付けられる取付部材を備え、前記取付部材に前記保持部材の弾性片を前記ベース部材側に押圧する押圧部を設けたことを特徴とする請求項3又は請求項4記載のレーザー光源装置。
【請求項6】
前記取付部材の一部で前記駆動ギアに連結される駆動モータを前記ベース部材側に押圧することを特徴とする請求項5記載のレーザー光源装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−250090(P2010−250090A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99791(P2009−99791)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】