説明

レーザー加工装置

【課題】保護部材の定期的なメンテナンス作業を容易に行うことができるレーザー加工装置を提供すること。
【解決手段】集光レンズ42を内部に保持するレンズホルダー51と、集光レンズ42によりウェーハWに集光されるレーザービーム47の加工点に向けて、エアーを噴射するブローノズル52とを備え、ブローノズル52には、集光レンズ42の加工点側においてレーザービーム47を透過すると共に、加工点側からの異物から集光レンズ42を保護する保護部材75が設けられ、ブローノズル52がレンズホルダー51に対して位置決め状態で着脱自在な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等のワークに対してレーザービームを照射し、アブレーション加工を施すレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSIなどの半導体集積回路は、通常、半導体ワーク表面のストリートと呼ばれる分割予定ラインによって区画された領域内に形成される。そして、半導体デバイスの製造工程においては、半導体ワークを、格子状のストリートに沿って切断することで複数の半導体チップに分割している。
【0003】
半導体ワークのストリートに沿った切断は、メカニカルダイシングによって行われることが多い。メカニカルダイシングは、ダイサーと呼ばれる切削装置を用いて行われるため、ウェーハを高速に分割できるというメリットがある。一方で、半導体デバイスの微細化によってlow-k膜が用いられるようになると、メカニカルダイシングでは、当該膜の剥離やクラックといった深刻な問題が生じ、十分な切断速度を確保することが難しくなる。
【0004】
上述の問題を解消する手段の一つとして、レーザービームの照射によって部材の一部を昇華させ、切断する加工技術が実用化されている。アブレーション加工と呼ばれる当該技術においては、加工点から加工屑(デブリ)が飛散するため、加工装置の性能低下を防止するために集光レンズなどの光学部品を保護する必要が生じる。従来、レーザー加工時に飛散する加工屑から集光レンズを保護する保護部材を加工ヘッドに設けたレーザー加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載のレーザー加工装置の加工ヘッドは、集光レンズを保持したレンズホルダーの下部に、レーザービームが出射されるノズルを一体的に設けて構成されている。レンズホルダー内には、集光レンズの前方に保護部材としての保護ガラスが配置されている。保護ガラスは、集光レンズの前方に配置されることで、ノズルの開口から入り込んだ加工屑の集光レンズ側への侵入を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−164495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のレーザー加工装置では、ノズルの開口から入り込んだ加工屑が保護ガラスに付着し、保護ガラス自体が汚染されるという問題が生じる。この場合、保護ガラスを定期的に交換する必要があるが、保護ガラスが配置されたレンズホルダーとノズルとが一体形成されるため、レンズホルダーごと保護ガラスを交換しなければならなかった。
【0008】
一方、レンズホルダーに対してノズルを着脱自在とし、レンズホルダーからノズルを取り外して、ノズルが取り外された側からレンズホルダー内の保護ガラスだけを交換する構成も考えられる。しかしながら、レンズホルダーに対して再びノズルを取り付ける際に、十分な取付精度を得ることが困難となっていた。このように、特許文献1に記載のレーザー加工装置では、保護ガラスの定期的なメンテナンス作業が煩雑になるという問題があった。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、保護部材の定期的なメンテナンス作業を、従来のレーザー加工装置と比較して容易に行うことができるレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のレーザー加工装置は、ワークを保持する保持手段と、前記保持手段に保持されたワークにレーザービームを照射してアブレーション加工を行うレーザー加工手段と、を有するレーザー加工装置であって、前記レーザー加工手段は、レーザービームを発振する発振器と、前記発振器から発振したレーザービームをワークに向けて集光する集光レンズと、前記集光レンズを内部に支持する筒形状のレンズホルダーと、加工屑による汚染から前記集光レンズを保護する気体を噴出するブローノズルと、を有し、前記ブローノズルは、前記集光レンズで集光されたレーザービームと前記気体とが通過する開口と、レーザービームを透過する材質で構成され、加工屑による汚染から前記集光レンズを保護する保護部材と、前記集光レンズと前記開口との間に前記保護部材を支持する保護部材支持部と、前記保護部材と前記開口との間の空間を通過させて前記開口から噴出する様に気体を流す流路と、前記レンズホルダーの外壁部に嵌合する内壁部と、を有し、前記レンズホルダーに対して脱着自在に構成され、前記保護部材を支持した前記ブローノズルを前記レンズホルダーから外して前記保護部材のメンテナンスが可能なことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、集光レンズを支持するレンズホルダーに対してブローノズルが着脱自在に構成され、このブローノズルに集光レンズを保護する保護部材が設けられている。よって、従来のようにレンズホルダーごと保護部材を交換することなく、レンズホルダーからブローノズルを取り外すことで保護部材を交換することができる。また、レンズホルダーに対するブローノズルの取付時には、レンズホルダーの外壁部にブローノズルの内壁部を嵌合させることで、レンズホルダーに対してブローノズルが位置決めされるため、ブローノズルの着脱が繰り返された場合であっても、一定の取付精度を得ることができる。このように、保護部材のメンテナンス作業を、従来のレーザー加工装置と比較して容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
レンズホルダーに対してブローノズルを取り外すことで保護部材を交換可能とし、レンズホルダーに対しブローノズルを位置決め状態で取付可能とすることで、保護部材の定期的なメンテナンス作業を、従来のレーザー加工装置と比較して容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、レーザー加工装置の外観斜視図である。
【図2】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、レーザー加工装置の光学系の模式図である。
【図3】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、加工ヘッドの部分断面図である。
【図4】本発明に係るレーザー加工装置の実施の形態を示す図であり、保護部材の交換作業の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1を参照して、レーザー加工装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の斜視図である。
【0015】
図1に示すように、レーザー加工装置1は、ウェーハWにレーザービームを照射するレーザー加工ユニット(レーザー加工手段)26とウェーハWを保持する保持テーブル(保持手段)20とを相対移動させて、ウェーハWを加工するように構成されている。ウェーハWは、略円板状に形成されており、表面に格子状に配列された図示しない分割予定ラインによって複数の領域に区画されている。分割予定ラインによって区画された各領域には、IC、LSI等のデバイスが形成されている。ウェーハWは、貼着テープ31を介して環状フレーム32に支持され、レーザー加工装置1に搬入される。
【0016】
なお、本実施の形態では、ワークとして、シリコンウェーハ(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)等の半導体ウェーハを例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではない。チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス、サファイア(Al2O3)系の無機材料基板、液晶ディスプレイドライバー等の各種電気部品やミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料等が含まれる。
【0017】
レーザー加工装置1は、直方体状の加工台10と、加工台10の上面後方に立設した支柱部24とを有している。支柱部24の前面には、前方に突出したアーム部25が設けられ、アーム部25の先端側にはレーザー加工ユニット26の加工ヘッド27が設けられている。また、加工台10の上面には、Y軸方向に延在する一対のガイドレール11a、11bが設けられている。一対のガイドレール11a、11bには、加工送り方向となるY軸方向に移動可能に支持されたモーター駆動のY軸テーブル12が配置されている。
【0018】
Y軸テーブル12の上面には、X軸方向に延在する一対のガイドレール15a、15bが設けられている。一対のガイドレール15a、15bには、割出送り方向となるX軸方向に移動可能に支持されたモーター駆動のX軸テーブル16が配置されている。X軸テーブル16の上面には、保持テーブル20が設けられている。また、Y軸テーブル12、X軸テーブル16の背面側には、それぞれ図示しないナット部が形成され、これらナット部にそれぞれボールネジ13、17が螺合されている。ボールネジ13、17の一端部には、駆動モーター14、18が連結され、この駆動モーター14、18によりボールネジ13、17が回転駆動される。
【0019】
保持テーブル20は、X軸テーブル16の上面においてZ軸回りに回転可能なθテーブル21と、θテーブル21の上部に設けられ、ウェーハWを吸着保持するワーク保持部22とを有している。ワーク保持部22は、所定の厚みを有する円板状であり、上面中央部分にはポーラスセラミック材により吸着面が形成されている。吸着面は、負圧により貼着テープ31を介してウェーハWを吸着する面であり、θテーブル21の内部の配管を介して吸引源に接続されている。
【0020】
ワーク保持部22の周囲には、θテーブル21の四方から径方向外側に延びる一対の支持アームを介して4つのクランプ部23が設けられている。この4つのクランプ部23は、エアーアクチュエータにより駆動し、ウェーハWの周囲の環状フレーム32を四方から挟持固定する。
【0021】
レーザー加工ユニット26は、アーム部25の先端に設けられた加工ヘッド27を有している。加工ヘッド27は、ウェーハWを加工するためのレーザービームを照射するものであり、集光レンズ42(図2参照)を保持するレンズホルダー51と、レンズホルダー51の下部に取り付けられ、加工点に向けてエアー(気体)を噴射するブローノズル52とを有している。なお、レンズホルダー51およびブローノズル52の詳細構成については後述する。
【0022】
レンズホルダー51、アーム部25、支柱部24内には、レーザー加工ユニット26の光学系が設けられている。なお、レーザー加工ユニット26の光学系は、レンズホルダー51、アーム部25、支柱部24にまたがって形成される構成に限定されるものではなく、レンズホルダー51内にのみ形成される構成としてもよい。
【0023】
ここで、図2を参照して、レーザー加工装置の光学系について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るレーザー加工装置の光学系の模式図である。
【0024】
図2に示すように、レーザー加工装置1の光学系は、ウェーハWに対してレーザービーム47を発振する発振器41と、発振器41が発振したレーザービーム47を集光する集光器44とを備えている。また、発振器41から発振されるレーザービーム47の光路上には、上記した集光器44の他に、レーザービーム47を反射して集光器44に導くミラー43が配置されている。
【0025】
発振器41としては、ルビーやYAGなどの結晶をレーザー媒質として用いた固体レーザー、ガリウムヒ素やインジウムガリウムヒ素リンなどの半導体をレーザー媒質として用いた半導体レーザー、ヘリウム−ネオンやアルゴンなどの気体をレーザー媒質として用いた気体レーザー、アルゴンやクリプトン、キセノンなどの希ガスと、フッ素や塩素などのハロゲンの混合気体をレーザー媒質として用いたエキシマレーザー、などの各種発振器を用いることができる。発振器41によるレーザー発振の態様は、出力特性からパルス発振であることが望ましいが、連続発振であっても構わない。
【0026】
集光器44は、主に、レーザービーム47を透過、集光可能な集光レンズ42を含んで構成される。集光レンズ42は、単レンズ、または組み合わせレンズで構成されてもよいし、その他の光学部品を組み合わせてもよい。また、集光器44に用いることができる光学部品の点数についても特に制限はなく、ワークであるウェーハWの加工点への集光を、適切に実現できる構成を採用すればよい。
【0027】
図2に示す光学系では、発振器41から出射されたレーザービーム47は、ミラー43にて反射されて集光器44に向けられ、集光器44を通じてウェーハWの加工点に集光される。レーザービーム47が、ウェーハWの加工点に集光されると、この加工点においてウェーハWが部分的に昇華される。そして、レーザー加工装置1は、加工ヘッド27に対して保持テーブル20を、分割予定ラインに沿って加工送りすることにより、ウェーハWを分割予定ラインに沿って加工する。
【0028】
次に、図3を参照して、加工ヘッドの詳細構成について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る加工ヘッドの部分断面図である。
【0029】
図3に示すように、加工ヘッド27は、レンズホルダー51の下部にナット53を介してブローノズル52を取り付けて構成される。レンズホルダー51は、円筒状の大径部55と、大径部55の下部に連なる円筒状の小径部56とを有している。小径部56の内部には、レーザービーム47の光路に沿って円筒状の空間が形成され、この円筒状の空間の下端側に集光レンズ42が配置されている。また、円筒状の空間は、集光レンズ42の前方側(下側)において広く形成されており、小径部56の下端部と後述する保護部材75との接触を防止する逃げ部57を形成している。
【0030】
小径部56の外壁部58には、鍔状部59が外周面から外方に突出して設けられている。鍔状部59は、ブローノズル52の内壁部66に嵌合することにより、レンズホルダー51に対するブローノズル52の位置決めを可能とする。また、鍔状部59は、小径部56に取り付けられたナット53を抜け止めすると共に、ブローノズル52の取り付け時のナット53の締め込み量を調整する。
【0031】
ナット53は、中央に開口61を有する円板部62と、円板部62の外周縁から下方に立ち下がる周壁部63とを有している。円板部62の開口61は、小径部56の外周寸法よりも僅かに大きく形成されている。このため、円板部62の開口61に小径部56が挿通されることで、ナット53が小径部56に回転可能に支持される。周壁部63の内周面には、ブローノズル52の取付用の雌ネジ部64が形成されている。
【0032】
ブローノズル52は、略円筒状の内壁部66と、内壁部66を囲うように設けられた外壁部67とにより、二重壁構造となっている。内壁部66には、加工点側に突出したノズル部68が設けられている。また、内壁部66は、レンズホルダー51の小径部56の外径よりも僅かに大径の収容空間を有しており、小径部56の収容によりエアーの内部流路(流路)71を形成する。内部流路71の上流側は、ブローノズル52内にエアーを取り込むための供給流路72に連通されている。また、内部流路71の下流側は、内壁部66のノズル部68に形成された略円錐形状のノズル孔(開口)73に連通されている。
【0033】
供給流路72には、図示しないコンプレッサー等の供給源からエアーが供給される。この場合、供給源から供給流路72に供給されるエアーは、汚染源となる物質を除去したクリーンエアーとすることが好ましい。なお、エアーは空気に限定されず、例えば、ウェーハWとの反応性が低い不活性気体を用いることができる。不活性気体としては、ヘリウムやアルゴンをはじめとする希ガス、窒素などが適用される。
【0034】
また、内壁部66の底部には、保護部材75を支持する保護部材支持部76が設けられている。保護部材支持部76は、レーザービーム47の光路上にて、集光レンズ42とノズル孔73との間で保護部材75を支持している。保護部材75は、レーザービーム47を透過可能なガラスにより板状に形成されている。保護部材支持部76に支持された保護部材75は、小径部56の下端に形成された逃げ部57内に位置し、ノズル孔73を介して侵入する加工屑から集光レンズ42を保護している。
【0035】
なお、保護部材75の材料は、レーザービーム47の波長に応じて適宜変更でき、例えば、紫外域の波長のレーザービームを用いる場合にはフッ化カルシウム(透過波長域:170nm〜)、可視域の波長のレーザービームを用いる場合にはサファイア(透過波長域:210nm〜)、赤外域の波長のレーザービームを用いる場合にはセレン化亜鉛(透過波長域:650nm〜10μm)をそれぞれ用いることができる。もちろん、保護部材75に用いることができる材料はこれに限定されない。
【0036】
内壁部66の上端部には、小径部56の鍔状部59に嵌合する環状の段部77が形成されている。ブローノズル52は、小径部56の鍔状部59に内壁部66の段部77が嵌合することで、レンズホルダー51に対して位置決めされる。また、段部77の外周面には、ナット53の雌ネジ部64に螺合する雄ネジ部78が形成されている。ブローノズル52は、ナット53の雌ネジ部64が段部77の雄ネジ部78に締め込まれることにより、ナット53を介してレンズホルダー51に取り付けられている。
【0037】
外壁部67内には、加工点から飛散した加工屑を排出するための外部流路81が形成されている。外部流路81の上流側は、外壁部67の底部に形成された開口82に連通されている。外部流路81の下流側は、開口82を介して取り込まれた加工屑を排出するための排出流路83に連通されている。排出流路83内のエアーは、図示しない真空ポンプ等の排出源により排出される。なお、排出源は、加工屑などを十分に排出可能であれば、どのような構成でもよい。また、排出源は、加工屑を捕集するフィルタなどを備えることが好ましい。
【0038】
このブローノズル52において、供給流路72を介して供給されたエアーは、内部流路71を通ってノズル孔73からウェーハWの加工点に向けて噴射される。このとき、供給流路72内のエアーは、ノズル孔73に流入する直前で、保護部材75の下面に沿って流れることで、保護部材75を洗浄している。このため、保護部材75の汚染が抑えられ、保護部材75の交換頻度が低減される。
【0039】
また、ノズル孔73は、略円錐形状であるため、加工点側で開口が小さく形成される。このため、ノズル孔73は、加工点側のエアーの流速を高めて噴射することで、内部への加工屑の侵入を抑制する。なお、ノズル孔73は、略円錐形状に限定されるものではない。ノズル孔73は、加工点側に向かってエアーの流速を高めると共に、加工点側の開口を小さくできれば、どのような形状でもよい。
【0040】
ブローノズル52の外部流路81においては、加工点側から飛散した加工屑が開口82を介して取り込まれる。外部流路81に取り込まれた加工屑は、排出流路83を介して排出される。このとき、開口82には、ノズル部68の先端が突出しているが、ノズル孔73の先端が小さく形成されると共に、加工点側へのエアーの噴射によりノズル孔73への加工屑の侵入が抑制されている。
【0041】
このように構成されたブローノズル52は、上記したように、ナット53を介してレンズホルダー51に着脱自在に取り付けられている。また、保護部材75が保護部材支持部76を介してブローノズル52に取り付けられている。このため、メンテナンス作業時には、ナット53を緩めて、レンズホルダー51からブローノズル52を取り外すことで保護部材75の交換を容易にしている。
【0042】
また、上記したように、ブローノズル52は、レンズホルダー51の小径部56に対して位置決め状態で取り付けられる。より詳細には、鍔状部59の下面85と段部77の底面86とが当接されることで、レンズホルダー51に対するブローノズル52の高さ方向の位置決めがされ、鍔状部59の外周面87と段部77の内周面88とが合わされることで水平方向の位置決めがされる。このため、レンズホルダー51に対するブローノズル52の取付時には、ブローノズル52の着脱時に十分な取付精度(0.2mm程度)を得ることが可能となる。
【0043】
このとき、小径部56の下部は、内壁部66の底部の近傍に位置されている。このため、小径部56の下端側に配置された集光レンズ42をノズル孔73に近付けることができ、焦点距離の短い集光レンズ42を使用可能となっている。さらに、保護部材支持部76に支持された保護部材75は、小径部56の下端に形成された逃げ部57により、集光レンズ42に近付けて配置することが可能となる。このため、保護部材75は、加工点から遠く、集光レンズ42に近い位置に配置されるため、加工屑による集光レンズ42の汚染を抑制すると共に、自身の汚染も抑制することができる。
【0044】
次に、図4を参照して、保護部材の交換作業について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る保護部材の交換作業の説明図である。
【0045】
図4(a)に示すように、ブローノズル52は、ナット53を緩めることで、レンズホルダー51から取り外される。そして、ブローノズル52内の保護部材支持部76から保護部材75が取り外され、保護部材支持部76に新たな保護部材75が取り付けられる。この場合、保護部材75は、着脱自在なブローノズル52に取り付けられているため、レーザー加工装置に固定されたレンズホルダー内に取り付けられている構成と比較して、容易な交換作業となっている。なお、保護部材75は、ブローノズル52ごと交換される構成としてもよい。
【0046】
次に、図4(b)に示すように、保護部材75が交換されると、レンズホルダー51の鍔状部59にブローノズル52の段部77が嵌め込まれる。このとき、段部77の内周面88が鍔状部59の外周面87に沿った状態で、段部77の底面86が鍔状部59の下面85に付き当てられる。これにより、ブローノズル52がレンズホルダー51に対して高さ方向および平面方向で位置決めされる。また、ブローノズル52内では、保護部材75がレンズホルダー51の逃げ部57内に位置されて、集光レンズ42に接近される。このように、保護部材75が加工点から遠い集光レンズ42側に位置するため、加工屑による保護部材75の汚染が抑制される。
【0047】
次に、図4(c)に示すように、レンズホルダー51の鍔状部59にブローノズル52の段部77が嵌め込まれた状態で、ブローノズル52に対してナット53が締め込まれる。ブローノズル52に対してナット53が締め込まれると、ナット53の円板部62とブローノズル52の段部77との間にレンズホルダー51の鍔状部59を挟み込むようにしてレンズホルダー51にブローノズル52が固定される。このとき、ブローノズル52がレンズホルダー51に対して位置決め状態で固定されるため、ブローノズル52の着脱が繰り返された場合であっても一定の取付精度を得ることが可能となる。
【0048】
次に、ウェーハの分割方法の全体的な流れについて説明する。まず、保持テーブル20にウェーハWが載置されると、保持テーブル20が加工ヘッド27の加工位置に移動される。次に、加工ヘッド27の出射口がウェーハWの分割予定ラインに位置合わせされると共に、集光器44によりレーザービーム47の焦点がウェーハWの加工点に調整され、アブレーション加工処理が開始される。
【0049】
この場合、保持テーブル20がウェーハWを保持した状態でY軸方向に加工送りされ、分割予定ラインに沿ってウェーハWが分割される。続いて、保持テーブル20が数ピッチ分だけX軸方向に移動され、加工ヘッド27の出射口が隣接する分割予定ラインに位置合わせされる。そして、保持テーブル20がウェーハWを保持した状態でY軸方向に加工送りされ、分割予定ラインに沿ってウェーハWが分割される。この動作が繰り返されてウェーハWのY軸方向の全ての分割予定ラインに沿ってウェーハWが加工される。次に、θテーブル21が90度回転され、同様な動作により、ウェーハWのX軸方向の全ての分割予定ラインに沿ってウェーハWが加工される。すべてのアブレーション加工処理が完了すると、ウェーハWは保持テーブル20から取り外される。
【0050】
以上、この構成によれば、集光レンズ42を支持するレンズホルダー51に対してブローノズル52が着脱自在に構成され、このブローノズル52に加工屑から集光レンズ42を保護する保護部材75が設けられている。よって、レンズホルダー51からブローノズル52を取り外すことで保護部材75を交換することが可能となる。また、レンズホルダー51に対するブローノズル52の取付時には、レンズホルダー51の鍔状部59にブローノズル52の段部77を嵌合させることで、レンズホルダー51に対してブローノズル52が位置決めされる。このため、ブローノズル52の着脱が繰り返された場合であっても、一定の取付精度を得ることが可能となる。このように、保護部材75のメンテナンス作業を容易に行うことが可能となる。
【0051】
なお、上記した実施の形態においては、光学系が発振器、ミラー、集光器により構成されたが、この構成に限定されるものではない。光学系は、レーザービームをワークに向けて集光可能な構成であればよく、例えば、ビームエキスパンダーなどを適宜組み合わせてもよい。
【0052】
また、上記した実施の形態においては、ブローノズルが加工点側からの加工屑を取り込んで排出する構成としたが、この構成に限定されるものではない。ブローノズルは、加工点に向けてエアーを噴射可能であればよく、加工屑を取り込まない構成としてもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態においては、保護部材が板状に形成されたが、この構成に限定されるものではない。保護部材は、レーザービームを透過すると共に、加工点側からの異物から集光レンズを保護する構成であればよく、例えば、フィルム状やブロック状に形成されていてもよい。
【0054】
また、上記した実施の形態においては、レンズホルダーの鍔状部にブローノズルの段部を嵌合させることで、ブローノズルがレンズホルダーに対して位置決めされる構成としたが、この構成に限定されるものではない。ブローノズルがレンズホルダーに対して位置決めされる構成であればよく、例えば、ブローノズルおよびレンズホルダーのいずれか一方に設けたピンを、いずれか他方に設けたピン穴に差し込むことで位置決めしてもよい。
【0055】
また、上記した実施の形態においては、ブローノズルが、ナットを介してレンズホルダーに固定される構成としたが、この構成に限定されるものではない。ブローノズルは、ナットを介さずに直にレンズホルダーに固定される構成としてもよい。
【0056】
また、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明は、保護部材の定期的なメンテナンス作業を容易に行うことができるという効果を有し、特に、半導体ウェーハ等のワークに対してレーザービームを照射し、アブレーション加工を施すレーザー加工装置に有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 レーザー加工装置
20 保持テーブル(保持手段)
26 レーザー加工ユニット(レーザー加工手段)
27 加工ヘッド
41 発振器
42 集光レンズ
43 ミラー
47 レーザービーム
51 レンズホルダー
52 ブローノズル
53 ナット
58 外壁部
59 鍔状部(外壁部)
66 内壁部
71 内部流路(流路)
73 ノズル孔(開口)
75 保護部材
76 保護部材支持部
77 段部(内壁部)
81 外部流路
W ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、前記保持手段に保持されたワークにレーザービームを照射してアブレーション加工を行うレーザー加工手段と、を有するレーザー加工装置であって、
前記レーザー加工手段は、
レーザービームを発振する発振器と、
前記発振器から発振したレーザービームをワークに向けて集光する集光レンズと、
前記集光レンズを内部に支持する筒形状のレンズホルダーと、
加工屑による汚染から前記集光レンズを保護する気体を噴出するブローノズルと、を有し、
前記ブローノズルは、
前記集光レンズで集光されたレーザービームと前記気体とが通過する開口と、
レーザービームを透過する材質で構成され、加工屑による汚染から前記集光レンズを保護する保護部材と、
前記集光レンズと前記開口との間に前記保護部材を支持する保護部材支持部と、
前記保護部材と前記開口との間の空間を通過させて前記開口から噴出する様に気体を流す流路と、
前記レンズホルダーの外壁部に嵌合する内壁部と、を有し、前記レンズホルダーに対して脱着自在に構成され、
前記保護部材を支持した前記ブローノズルを前記レンズホルダーから外して前記保護部材のメンテナンスが可能なことを特徴とするレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−24831(P2012−24831A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168263(P2010−168263)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】