説明

レーザー加工装置

【課題】ウエーハの反りを矯正することができウエーハ保持手段を備え、ウエーハの裏面を保持してウエーハの裏面側からレーザー加工を施すことができるレーザー加工装置を提供する。
【解決手段】ウエーハを仮置きする仮置きテーブル7と、仮置きテーブル7に仮置きされたウエーハ10を吸引保持するウエーハ保持手段6と、ウエーハ保持手段6に保持されたウエーハ10にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段8と、ウエーハ保持手段6とレーザー光線照射手段8とを加工送り方向に相対的に加工送りする加工送り手段30と、ウエーハ保持手段6とレーザー光線照射手段8とを加工送り方向と直交する割り出し送り方向に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段50とを具備し、ウエーハ保持手段6は、加工送り方向に沿って形成された複数のスリット621と、該複数のスリット621間に設けられた吸引部622を有する保持プレート62を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数のストリートが格子状に形成されているとともに複数のストリートによって区画された複数の領域にMEMS(微小電気機械システム)やCMOS(Complementary Metal Semiconductor)等のデバイスが形成されたウエーハに、ストリートに沿ってレーザー加工を施すレーザー加工装置に関する。
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI、MEMS(微小電気機械システム)やCMOS(Complementary Metal Semiconductor)等のデバイスを形成する。そして、ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々のデバイスを製造している。
【0003】
このようなウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハ等の被加工物に形成されたストリートに沿ってパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている。
【0004】
しかるに、ウエーハのストリートに沿ってレーザー光線を照射すると、照射された領域に熱エネルギーが集中してデブリが発生し、このデブリがデバイスの表面に付着してデバイスの品質を低下させるという新たな問題が生じる。
【0005】
上記デブリによる問題を解消するために、ウエーハの加工面にポリビニルアルコール等の保護膜を被覆し、保護膜を通してウエーハにレーザー光線を照射するようにしたレーザー加工機が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0006】
一方、MEMSやCMOSのように表面に保護膜を被覆するとデバイスの品質が低下する虞があるウエーハにおいては、ウエーハの裏面側からストリートに沿ってレーザー光線を照射して分割起点となるレーザー加工溝を形成している。このとき、デバイスが形成されているウエーハの表面側をレーザー加工装置のチャックテーブルに保持することになるが、デバイスが形成されているデバイス領域をチャックテーブルに直接載置するとデバイスが破損する虞があるため、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域のみを吸引保持する特殊なチャックテーブルを用いている。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−201178号公報
【特許文献2】特開2010−29930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、ウエーハには反りがあるため、外周余剰領域のみを吸引保持する特殊なチャックテーブルを用いた場合には、ウエーハの反りを矯正することができず、加工品質が不安定になるという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、ウエーハの反りを矯正することができるウエーハ保持手段を備え、ウエーハの裏面を保持してウエーハの裏面側からレーザー加工を施すことができるレーザー加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、表面に複数のストリートが格子状に形成されているとともに該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハにストリートに沿ってレーザー加工を施すためのレーザー加工装置であって、
ウエーハを仮置きする仮置きテーブルと、該仮置きテーブルに仮置きされたウエーハを吸引保持するウエーハ保持手段と、該ウエーハ保持手段に保持されたウエーハにレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該ウエーハ保持手段と該レーザー光線照射手段とを加工送り方向に相対的に加工送りする加工送り手段と、該ウエーハ保持手段と該レーザー光線照射手段とを加工送り方向と直交する割り出し送り方向に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段と、を具備し、
該ウエーハ保持手段は、加工送り方向に沿って形成された複数のスリットと、該複数のスリット間に設けられた吸引部を有する保持プレートを備えている、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【0011】
上記仮置きテーブルは、支持テーブルと、該支持テーブルの上面に装着された緩衝部材と、支持テーブルを回動する回動手段とを具備している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるレーザー加工装置においては、加工送り方向に沿って形成された複数のスリットと、該複数のスリット間に設けられた吸引部を有する保持プレートを備えているので、保持プレートの吸引部にウエーハの裏面におけるデバイスに対応する領域が吸引保持されるので、ウエーハに反りがあっても保持プレートの吸引部に吸引保持されることによって矯正される。そして、保持プレートの吸引部に吸引保持されたウエーハには保持プレートに形成されたスリットを通してウエーハの裏面に照射するので、デブリがウエーハの表面に形成されたデバイスの表面に付着することはない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
【図2】被加工物としてのウエーハの斜視図。
【図3】図1に示すレーザー加工装置によって実施するウエーハ保持行程の説明図。
【図4】図1に示すレーザー加工装置によって実施するアライメント行程の説明図。
【図5】図1に示すレーザー加工装置によって実施するレーザー加工溝形成行程の説明図。
【図6】図5に示すレーザー加工溝形成行程が実施されたウエーハの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。
図1に示されたレーザー加工装置1は、静止基台2と、第1の可動基台3と、第2の可動基台4と、第3の可動基台5を具備している。この静止基台2の手前側の側面には、矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に沿って平行に延びる一対の案内レール21、21が設けられている。
【0016】
上記静止基台2には、第1の可動基台3が上記一対の案内レール21、21に沿って摺動可能に装着されている。即ち、図1に示すように第1の可動基台3における第1の可動基台3と対向する一方の面には静止基台2に設けられた一対の案内レール21、21に嵌合する一対の被案内溝31、31が設けられており、この一対の被案内溝31、31を上記一対の案内レール21、21に嵌合することにより、第1の可動基台3は静止基台2に一対の案内レール21、21に沿ってX軸方向に摺動可能に装着される。また、第1の可動基台3の他方の面には、矢印Zで示す集光点位置調整方向(Z軸方向)に平行に延びる一対の案内レール32、32が設けられている。図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は、第1の可動基台3を上記静止基台2に設けられた一対の案内レール21、21に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段30を具備している。加工送り手段30は、一対の案内レール21と21との間に該案内レールと平行に配設された雄ネジロッド301と、該雄ネジロッド301を回転駆動するためのパルスモータ302とを含んでいる。雄ネジロッド301は、上記第1の可動基台3に設けられた雌ネジ33と螺合し、その一端が静止基台2に配設された軸受部材303に回転可能に支持されている。パルスモータ302は、その駆動軸が雄ネジロッド301の他端に連結されている。従って、パルスモータ302を正転または逆転駆動して雄ネジロッド301を正転または逆転駆動することにより、第1の可動基台3を静止基台2に設けられた一対の案内レール21、21に沿ってX軸方向に移動せしめる。
【0017】
上記第1の可動基台3には、第2の可動基台4が上記一対の案内レール32、32に沿って摺動可能に装着されている。即ち、第2の可動基台4における第1の可動基台3と対向する一方の側面には第1の可動基台3に設けられた一対の案内レール32、32に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝41、41が設けられており、この一対の被案内溝41、41を上記一対の案内レール32、32に嵌合することにより、第2の可動基台4は第1の可動基台3に一対の案内レール32、32に沿ってZ軸方向に摺動可能に装着される。また、第2の可動基台4は、上記一方の側面に対して垂直な側面に設けられ矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に平行に延びる一対の案内レール42、42を備えている。図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は、第2の可動基台4を上記第1の可動基台3に設けられた一対の案内レール32、32に沿ってZ軸方向に移動させるための集光点位置調整手段40を具備している。集光点位置調整手段40は、一対の案内レール32と32との間に該案内レールと平行に配設された雄ネジロッド401と、該雄ネジロッド401を回転駆動するためのパルスモータ402とを含んでいる。雄ネジロッド401は、上記第2の可動基台4に設けられた雌ネジ43と螺合し、その一端が第1の可動基台3に配設された軸受部材403に回転可能に支持されている。パルスモータ402は、その駆動軸が雄ネジロッド401の他端に連結されている。従って、パルスモータ402を正転または逆転駆動して雄ネジロッド401を正転または逆転駆動することにより、第2の可動基台4を第1の可動基台3に設けられた一対の案内レール32、32に沿ってZ軸方向に移動せしめる。
【0018】
上記第2の可動基台4には、第3の可動基台5が上記一対の案内レール42、42に沿って摺動可能に装着されている。即ち、第3の可動基台5における第2の可動基台4と対向する一方の側面には上記第2の可動基台4に設けられた一対の案内レール42、42に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝51、51(図1においては上側の一方だけが示されている)が設けられており、この一対の被案内溝51、51を上記一対の案内レール42、42に嵌合することにより、第3の可動基台5は第2の可動基台4に一対の案内レール42、42に沿って上記X軸方向と直交するY軸方向に摺動可能に装着される。図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は、第3の可動基台5を上記第2の可動基台4に設けられた一対の案内レール42、42に沿ってY軸方向に移動させるための割り出し送り手段50を具備している。割り出し送り手段50は、一対の案内レール42と42との間に該案内レールと平行に配設された雄ネジロッド501と、該雄ネジロッド501を回転駆動するためのパルスモータ502とを含んでいる。雄ネジロッド501は、上記第3の可動基台5に設けられた雌ネジ(図示せず)と螺合し、その一端が第2の可動基台4に配設された軸受部材503に回転可能に支持されている。パルスモータ502は、その駆動軸が雄ネジロッド501の他端に連結されている。従って、パルスモータ502を正転または逆転駆動して雄ネジロッド501を正転または逆転駆動することにより、第3の可動基台5を第3の可動基台4に設けられた一対の案内レール42、42に沿ってY軸方向に移動せしめる。
【0019】
上記第3の可動基台5の他方の面には、図2に示す被加工物としてのウエーハ10を吸引保持するウエーハ保持手段6が配設されている。ここで、図2に示すウエーハ10について説明する。図2に示すウエーハ10は、厚みが例えば400μmのシリコンウエーハからなっており、表面10aに格子状に形成された複数のストリート101によって複数の領域が区画されるとともに該区画された領域にデバイス102としてのMEMS(微小電気機械システム)が形成されている。
【0020】
上述したウエーハ10を吸引保持するウエーハ保持手段6は、第3の可動基台5に取り付けられた支持部材61と、該支持部材61の先端に装着された円形状の保持プレート62とを具備している。保持プレート62には、加工送り方向(X軸方向)に沿って形成された複数のスリット621が設けられている。この複数のスリット621の幅は、ウエーハ10に形成されたストリート101が例えば3本入る寸法に形成されている。この保持プレート62は、金属材によって中空状に形成され下方の面における複数のスリット621間に複数の吸引孔622aが開口された吸引部622を備えている。このように形成された保持プレート62は、複数の吸引孔622aが中空部を介して図示しない吸引手段に連通されている。
【0021】
上記ウエーハ保持手段6の下方には、ウエーハ10を仮置きする仮置きテーブル7が配設されている。仮置きテーブル7は、円形の支持テーブル71と、該支持テーブル71の上面に装着されたスポンジからなる緩衝部材72と、支持テーブル71を回転駆動する回動手段としてのパルスモータ73からなっている。
【0022】
図1に示すレーザー加工装置1は、ウエーハ保持手段6に保持された被加工物であるウエーハにレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段8を具備している。レーザー光線照射手段8は、支持基台80に所定の間隔を設けて配設されたケーシング81と該ケーシング81内に配設されたYAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器等のレーザー光線発振手段(図示せず)と、ケーシング81の一端部上面に配設されレーザー光線発振手段から発振されたパルスレーザー光線を集光して下方に向けて照射する集光器82を具備している。
【0023】
レーザー光線照射手段8の下側にはレーザー光線照射手段8によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段9が支持基台80上に配設されている。この撮像手段9は支持基台80上に配設され、被加工物を照明する照明手段と、該照明手段によって照明された領域を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた像を撮像する撮像素子(CCD)等を備え、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。この撮像手段9は、図示の実施形態においては集光器82の直下に所定の間隔を置いて配置されている。
【0024】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置1は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
【0025】
上述したレーザー加工装置1を用いて図2に示すウエーハ10の裏面10b側からストリート101に沿ってレーザー加工を施すには、先ず図3に示すようにウエーハ10の表面10a側を仮置きテーブル7を構成する支持テーブル71の上面に装着されたスポンジからなる緩衝部材72上に載置する。従って、支持テーブル71の上面に装着されたスポンジからなる緩衝部材72上に載置されたウエーハ10は、裏面10bが上側となる。次に、加工送り手段30および割り出し送り手段50を作動してウエーハ保持手段6の保持プレート62を仮置きテーブル7の直上に位置付ける。そして、集光点位置調整手段40を作動してウエーハ保持手段6を下降し、保持プレート62の下面を支持テーブル71の上面に装着されたスポンジからなる緩衝部材72上に載置されたウエーハ10の裏面10bに接触させる。このとき、保持プレート62に設けられた複数のスリット621がウエーハ10に所定方向に形成されたストリート101と対応する位置に位置付けられる。そして、スリット621内には図示の実施形態においてはストリート101が3本位置付けられる。次に、図示しない吸引手段を作動することにより、保持プレート62の下面に開口する複数の吸引孔622aを通してウエーハ10の裏面10bにおけるデバイス102に対応する領域に負圧が作用し、ウエーハ10の裏面10bが保持プレート62の吸引部622に吸引保持される(ウエーハ保持工程)。このように保持プレート62の下面にウエーハ10の裏面10bにおけるデバイス102に対応する領域が吸引保持されるので、ウエーハ10に反りがあっても保持プレート62の下面に吸引保持されることによって矯正される。このウエーハ保持工程においては、ウエーハ10の表面10aを仮置きテーブル7を構成する支持テーブル71に載置した状態で、保持プレート62の下面を接触させるが、支持テーブル71の上面にはスポンジからなる緩衝部材72が装着されているので、ウエーハ10の表面10aに形成されているデバイス102としてのMEMS(微小電気機械システム)が損傷することはない。
【0026】
上述したウエーハ保持工程を実施したならば、ウエーハ10を吸引保持したウエーハ保持手段6の保持プレート62は加工送り手段30を作動することにより図4に示すように撮像手段9の直上(集光器82の真下)に位置付ける。
【0027】
ウエーハ10を吸引保持したウエーハ保持手段6の保持プレート62が撮像手段9の直上に位置付けられると、撮像手段9および図示しない制御手段によってウエーハ10のストリート101に沿ってレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント工程を実行する。即ち、撮像手段9および図示しない制御手段は、ウエーハ10の所定方向に形成されているストリート101と、該ストリート101に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段8の集光器82との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメントを遂行する。
【0028】
以上のようにしてウエーハ保持手段6の保持プレート62に吸引保持されたウエーハ10に形成されているストリート101を検出し、レーザー光線照射位置のアライメントが行われたならば、加工送り手段30および割り出し送り手段50を作動して図5の(a)で示すようにウエーハ保持手段6の保持プレート62をレーザー光線照射手段8の集光器82が位置するレーザー光線照射領域に移動し、保持プレート62に設けられた複数のスリット621内に位置している所定のストリート101の一端(図5の(a)において左端)をレーザー光線照射手段8の集光器82の直下に位置付ける。そして、集光点位置調整手段40を作動してパルスレーザー光線の集光点Pがウエーハ10の裏面10b(上面)に位置付けられるように調整する。次に、集光器82からシリコンウエーハに対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつ加工送り手段30を作動してウエーハ10を吸引保持したウエーハ保持手段6の保持プレート62を図5の(a)において矢印X1で示す方向に所定の送り速度で移動せしめる。このとき、集光器82から照射されるパルスレーザー光線は、保持プレート62に設けられたスリット621を通してウエーハ10の裏面10bに照射される。そして、図5の(b)で示すようにレーザー光線照射手段8の集光器82の照射位置にストリート101の他端(図5の(b)において右端)が達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにウエーハ10を吸引保持したウエーハ保持手段6の保持プレート62の移動を停止する。この結果、ウエーハ10の裏面10bには、ストリート101に沿ってレーザー加工溝110が形成される(レーザー加工溝形成工程)。
【0029】
上記レーザー加工溝形成工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4レーザー
波長 :355nmのパルスレーザー
平均出力 :1.5W
繰り返し周波数 :80kHz
集光スポット径 :φ5μm
送り速度 :150mm/秒
【0030】
なお、上述した加工条件においては1回のレーザー光線の照射によって形成されるレーザー加工溝110の深さは10μm程度である。このようにして、保持プレート62に設けられた複数のスリット621内に位置している全てのストリート101に沿って上記レーザー加工溝形成工程を実行したならば、加工送り手段30および割り出し送り手段50を作動してウエーハ10を吸引保持したウエーハ保持手段6の保持プレート62を仮置きテーブル7の直上に位置付ける。次に、集光点位置調整手段40を作動してウエーハ保持手段6を下降し、保持プレート62の下面に吸引保持されたウエーハ10を支持テーブル71の上面に装着されたスポンジからなる緩衝部材72上に載置させ、保持プレート62によるウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、集光点位置調整手段40を作動してウエーハ保持手段6の保持プレート62を僅かに上昇させた後、割り出し送り手段50を作動してウエーハ保持手段6の保持プレート62を例えばストリート101の2本分だけY軸方向に移動せしめる。次に、集光点位置調整手段40を作動してウエーハ保持手段6を下降し、保持プレート62の下面を支持テーブル71の上面に装着されたスポンジからなる緩衝部材72上に載置されたウエーハ10の裏面10bに接触させる。このとき、上記レーザー加工溝形成工程において保持プレート62に設けられ吸引孔622aが形成された吸引部622によって覆われることにより複数のスリット621間に位置付けられてレーザー加工溝形成工程が実施されなかったストリート101が複数のスリット621内に位置付けられる。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、保持プレート62の下面に開口する複数の吸引孔622aを通してウエーハ10の裏面10bにおけるデバイス102に対応する領域に負圧が作用し、ウエーハ10の裏面10bが保持プレート62の吸引部622に吸引保持される(ウエーハ再保持工程)。このようにして、ウエーハ再保持工程を実施したならば、上記アライメント工程および保持プレート62に設けられた複数のスリット621内に位置付けられ上記レーザー加工溝形成工程が実施されていないスリット621に沿って上記レーザー加工溝形成工程が実施する。
【0031】
以上のようにして、ウエーハ10の所定方向に延在する全てのストリート101に沿って上記レーザー加工溝形成工程を実行したならば、加工送り手段30および割り出し送り手段50を作動してウエーハ10を吸引保持したウエーハ保持手段6の保持プレート62を仮置きテーブル7の直上に位置付ける。次に、集光点位置調整手段40を作動してウエーハ保持手段6を下降し、保持プレート62の下面に吸引保持されたウエーハ10を支持テーブル71の上面に装着されたスポンジからなる緩衝部材72上に載置させ、保持プレート62によるウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、集光点位置調整手段40を作動してウエーハ保持手段6の保持プレート62を僅かに上昇させた後、仮置きテーブル7のパルスモータ73を作動して支持テーブル71を90度回動する。この結果、支持テーブル71の上面に装着されたスポンジからなる緩衝部材72上に載置されたウエーハ10も90度回動せしめられる。次に、集光点位置調整手段40を作動してウエーハ保持手段6を下降し、保持プレート62の下面を支持テーブル71の上面に装着されたスポンジからなる緩衝部材72上に載置されたウエーハ10の裏面10bに接触させる。このとき、保持プレート62に設けられた複数のスリット621がウエーハ10に上記所定方向と直交する方向に形成されたストリート101と対応する位置に位置付けられる。そして、スリット621内には図示の実施形態においてはストリート101が3本位置付けられる。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、保持プレート62の下面に開口する複数の吸引孔622aを通してウエーハ10の裏面10bにおけるデバイス102に対応する領域に負圧が作用し、ウエーハ10の裏面10bが保持プレート62の吸引部622に吸引保持される(ウエーハ保持工程)。
【0032】
上述したウエーハ保持工程を実施したならば、所定方向と直交する方向に形成された各ストリート101に対して上記アライメント工程、レーザー加工溝形成工程、ウエーハ再保持工程、アライメント工程、レーザー加工溝形成工程を実施する。この結果、ウエーハ10の裏面10bには、図6に示すようにストリート101と対応する領域にレーザー加工溝110が形成される。
【0033】
上述したレーザー加工溝形成工程が実施されたウエーハ10は、外力を付与することにより破断起点となるレーザー加工溝110が形成されたストリート101に沿って破断し、個々のデバイスに分割するウエーハ分割工程に搬送される。
【符号の説明】
【0034】
1:レーザー加工装置
2:静止基台
3:第1の可動基台
30:加工送り手段
4:第2の可動基台
40:集光点位置調整手段
5:第3の可動基台
50:割り出し送り手段
6:ウエーハ保持手段
62:保持プレート
621:スリット
622:吸引部
7:仮置きテーブル
71:支持テーブル
72:緩衝部材
73:パルスモータ
8:レーザー光線照射手段
82:集光器
9:撮像手段
10:ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数のストリートが格子状に形成されているとともに該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハにストリートに沿ってレーザー加工を施すためのレーザー加工装置であって、
ウエーハを仮置きする仮置きテーブルと、該仮置きテーブルに仮置きされたウエーハを吸引保持するウエーハ保持手段と、該ウエーハ保持手段に保持されたウエーハにレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該ウエーハ保持手段と該レーザー光線照射手段とを加工送り方向に相対的に加工送りする加工送り手段と、該ウエーハ保持手段と該レーザー光線照射手段とを加工送り方向と直交する割り出し送り方向に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段と、を具備し、
該ウエーハ保持手段は、加工送り方向に沿って形成された複数のスリットと、該複数のスリット間に設けられた吸引部を有する保持プレートを備えている、
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該仮置きテーブルは、支持テーブルと、該支持テーブルの上面に装着された緩衝部材と、該支持テーブルを回転駆動する回動手段とを具備している、請求項1記載のレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−12581(P2013−12581A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144181(P2011−144181)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】