レーザー定着装置およびそれを備えた画像形成装置
【課題】レーザー光源で発生した排熱を利用し、トナー画像の定着に必要な光エネルギーを少なくできる効率的なレーザー定着装置を提供する。
【解決手段】レーザー光を出射し得るレーザー光源と、トナー画像が転写されたシートを搬送して前記レーザー光源からのレーザー光で照射される照射領域へ導く搬送ベルトと、前記レーザー光源が発する熱を受ける受熱部と前記搬送ベルトへ熱を供給する放熱部とを有するヒートパイプと、前記レーザー光源を制御する定着制御部とを備え、前記定着制御部は、前記照射領域を通過する前記トナー画像にレーザー光を照射するように制御して前記トナー画像を前記シートに定着させ、前記ヒートパイプは、受熱部で受けた熱を放熱部へ移動させ、前記搬送ベルトは放熱部から供給された熱で前記シートおよび前記トナー画像を加熱することを特徴とするレーザー定着装置。
【解決手段】レーザー光を出射し得るレーザー光源と、トナー画像が転写されたシートを搬送して前記レーザー光源からのレーザー光で照射される照射領域へ導く搬送ベルトと、前記レーザー光源が発する熱を受ける受熱部と前記搬送ベルトへ熱を供給する放熱部とを有するヒートパイプと、前記レーザー光源を制御する定着制御部とを備え、前記定着制御部は、前記照射領域を通過する前記トナー画像にレーザー光を照射するように制御して前記トナー画像を前記シートに定着させ、前記ヒートパイプは、受熱部で受けた熱を放熱部へ移動させ、前記搬送ベルトは放熱部から供給された熱で前記シートおよび前記トナー画像を加熱することを特徴とするレーザー定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に係り、より詳細には、シート上に形成された未定着画像を、レーザー光照射手段により定着するレーザー定着装置およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(例えばプリンタ)には、シート状の印刷媒体(以下単にシートという。代表的な態様は記録紙)上に形成されたトナー像を熱溶融することによってシート上に定着させる定着装置が備えられている。この定着装置の一例として、定着ローラと加圧ローラとから構成されるローラ対方式の定着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
定着ローラは、アルミなどの金属製中空芯金の表面に弾性層が形成されたローラ部材であり、この芯金の内部に熱源としてハロゲンランプが配置された構成である。そして、温度制御装置が、定着ローラ表面に設けられた温度センサから出力される信号に基づいてハロゲンランプをオン/オフ制御することによって、定着ローラ表面の温度を制御する。
加圧ローラは、芯金上に被覆層としてシリコンゴムなどの耐熱性弾性層を設けたローラ部材である。この加圧ローラは、定着ローラ周面に対して圧接され、加圧ローラの上記弾性層の弾性変形によって、定着ローラと加圧ローラとの間にニップ領域が形成される。
【0004】
上記の構成において、定着装置では、未定着のトナー像が形成されたシートを定着ローラと加圧ローラとの間のニップ領域に挟み込み、これら両ローラを回転させることによって上記シートを搬送するとともに、定着ローラ周面の熱によりシート上のトナー像を溶融させてシートに定着させる。
【0005】
しかし、従来のローラ対方式は、朝一電源投入直後は、定着ローラ及び加圧ローラが室温状態にあるため、電源ON後、所定温度にまで上昇させる必要があるため、ウォームアップ時間を要する。また、コピー動作が行われていない待機状態では、ローラ表面を所定温度に保持する必要があるため、コピー動作が行われていない時も常に加熱していなければならない。これらコピー動作以外に、無駄なエネルギーを消費する。
そこで、無駄なエネルギーを消費せず効率よくトナーのみを定着させる方法として、レーザーパワーを利用してトナーを定着させる定着装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2によれば、複数のレーザーを用いてトナーを加熱することで、一つの弱いレーザーだけでは不十分な定着性を複数個のレーザーを用いることで定着性を向上させている。これにより、低出力で安価なレーザーを使うことが可能なため、装置全体も簡単なものにできると記載されている。
【0007】
一方、排熱を利用した定着システムとして、定着部で記録媒体に与えられる熱を再利用し定着に使用する熱量の低減を目指したものが示されている(例えば、特許文献3参照)。これは、定着部を通過した記録媒体から熱を奪う冷却手段を有し冷却手段で奪った熱をヒートパイプとベルトにより、定着前にある記録媒体搬送ベルトへ熱を輸送する熱輸送手段を設け、記録媒体搬送ベルトは、トナー像が転写された定着前の記録媒体を予備加熱する構成である。ヒートパイプは、小さい温度差で多量の熱を運ぶために用いられる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−38802号公報
【特許文献2】特開平7−191560号公報
【特許文献3】特開2004−20824号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】田中 高博、野村 浩司、氏家 康成、“自励振動型ヒートパイプの動作特性”、[online]、平成16年10月29日、日本大学生産工学部生産工学研究所「生産工学部学術講演会の開催」第37回、[平成22年8月6日検索]、インターネット<URL:http://www.cit.nihon-u.ac.jp/kenkyu/kouennkai/reference/No#37/1#kikai/ 1-034.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前記特許文献2では、複数のレーザーを用いたとしても、レーザー素子の光エネルギー変換効率、即ち、レーザー素子に投入される電力に対して、レーザー光として光出力できる電力の割合が低い。通常用いられるレーザー素子は、光変換効率が50%以下である。つまり、投入電力に対して50%以上が変換ロスであり、その変換ロスがレーザー光源から発生する熱となる。そして、その発熱を冷却する冷却手段、例えば、光源の発熱部にヒートシンクを設け、ファン等風を送る手段でヒートシンクを冷却したり水冷機構など水循環装置により冷却したりするなどの手段が必要になる。また冷却手段による冷却のために別途電力が必要になるためトータルとしてのエネルギー変換効率、即ち、レーザー素子に投入する電力、冷却に必要な投入電力等を含めたレーザーを動作させるのに必要な全投入電力に対する光照射できる電力の割合が悪くなってしまう。
【0011】
また、前記特許文献3では、定着時に加熱された紙の排熱を利用し、加熱前の記録媒体を予備加熱する手段では、紙搬送時のみ熱の輸送が可能である。特許文献3に示されている定着方式すなわち、2つローラで紙を加熱する方式では、トナーと共に紙全体が加熱される。これに対して、レーザー定着方式では、印字部(トナーの存在する部分)のみレーザーを照射し加熱する。紙を直接加熱しないので、紙に発生する熱は非常に少ない。よって、特許文献3のレーザー定着方式では排熱を有効できる効果が少ない。
【0012】
また、特許文献3に記載の手段は、紙の熱を奪うヒートパイプとそのヒートパイプの熱をベルト等の熱輸送手段を介して、第二のヒートパイプに熱を移動させ、さらに第二のヒートパイプの熱を定着前の記録媒体搬送ベルトに熱を移動させるため装置の複雑化が予想される。また、定着後の記録媒体で発生する排熱から定着前の記録媒体に熱を移動するまでの構成要素が多いためその間に熱が放熱などにより失われるので熱移動効率が悪くなってしまう。
【0013】
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、レーザー光源で発生した排熱を利用し、トナー画像の定着に必要な光エネルギーを少なくできる効率的なレーザー定着装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、レーザー光を出射し得るレーザー光源と、トナー画像が転写されたシートを搬送して前記レーザー光源からのレーザー光で照射される照射領域へ導く搬送ベルトと、前記レーザー光源が発する熱を受ける受熱部と前記搬送ベルトへ熱を供給する放熱部とを有するヒートパイプと、前記レーザー光源を制御する定着制御部とを備え、前記定着制御部は、前記照射領域を通過する前記トナー画像にレーザー光を照射するように制御して前記トナー画像を前記シートに定着させ、前記ヒートパイプは、受熱部で受けた熱を放熱部へ移動させ、前記搬送ベルトは放熱部から供給された熱で前記シートおよび前記トナー画像を加熱することを特徴とするレーザー定着装置を提供する。
さらに、前記レーザー定着装置を備えてなる画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
この発明のレーザー定着装置において、前記レーザー光源が発する熱を受ける受熱部と前記搬送ベルトへ熱を供給する放熱部とを有するヒートパイプを備え、前記ヒートパイプは、受熱部で受けた熱を放熱部へ移動させ、前記搬送ベルトは放熱部から供給された熱で前記シートおよび前記トナー画像を加熱するので、レーザー光源がレーザー光を出射するときに発生する排熱を利用して前記シートおよび前記トナー画像を加熱し、定着に必要な光エネルギーを少なくした効率的なレーザー定着装置が実現できる。また、通紙されるシートが最終的な冷却手段となるので、レーザー光源に別の冷却手段を設ける必要がない。よって、冷却に必要な電力が削減できる。
この発明の画像形成装置は、前記レーザー定着装置を備えることにより効率的な定着が実現できる。ひいては、画像形成装置のウォームアップ時間を短縮することができる。また、待機中の加熱が不要な、低消費電力の画像形成装置を得ることができる。
【0016】
この発明において、レーザー光源は、トナー画像およびシートを照射して加熱し、トナー画像を溶融させるに足るエネルギーを有するレーザー光を照射するものである。その具体的な態様は、例えば、複数のレーザー素子を並べかつそれらのレーザー素子から照射されるレーザー光を所定方向に向けるための光学系を設けたものである。少なくとも一つのレーザー素子とそのレーザー素子から照射されるレーザー光を走査する手段を設ける構成であってもよいが、走査手段を設けずに複数のレーザー素子を並べた単純な構成が極めて好ましい。レーザー素子としては小型で安価な半導体素子が極めて好ましい。実施形態において、レーザー光源は、半導体レーザーを用いている。しかし、この発明はこれに限定されず、ガスレーザーや個体レーザーを光源として用いてもよい。
この発明において、トナー画像は、微小な有色粒子からなるトナーを用いて形成された画像である。その具体的な態様は、例えば、電子写真用の感光体ドラム上に形成されたトナー像がシートに転写されたものである。
【0017】
この発明において、シートは、所定の大きさに切断された印刷媒体である。その具体的な態様は、例えば、定形サイズに切断された印刷シートである。ただし、印刷媒体は紙に限らず、透明あるいは不透明の樹脂などであってもよい。後述する実施形態において、シートは、記録紙に相当する。
【0018】
この発明において、照射領域は、レーザー光源から照射されたレーザー光によりシートおよびトナー画像が照射される領域である。その具体的な態様は、例えば、搬送ベルトに対向してレーザー光源が配置され、そのレーザー光源からのレーザー光が搬送ベルトを照射する領域である。後述する実施形態において、照射領域は、レーザー光源の直下を通過する搬送ベルト上の所定領域に相当する。
この発明において、搬送ベルトは、シートを搬送する無端状のベルトでありかつ放熱部からの熱をシートに伝達するものである。その具体的な態様は、例えば、ポリカーボネート等の樹脂にカーボンなどの導電性部材を分散させて無端ベルト状に成形したものである。
【0019】
この発明において、ヒートパイプは、小さい温度差で多量の熱を運ぶために用いる特別な棒またはパイプである。その具体的な態様は、例えば、純水などの熱媒体を封入した金属製の細いパイプである。後述する実施形態において、ヒートパイプは、細管に相当する。ヒートパイプは受熱部で周囲から熱を奪い、放熱部で周囲に熱を供給する。この発明においては、レーザー光源から熱を奪って冷却し、搬送ベルト、前記搬送ベルトにより搬送されるシートおよびそのシートに転写されたトナーに熱を供給する。後述する実施形態において、受熱部と放熱部には周囲に効率よく熱を移動させるための高熱伝導材が配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の画像形成装置に含まれる画像形成部および定着部の主要な構成要素を模式的に示す説明図である。
【図2】この発明の定着装置の構成例を示す説明図である。
【図3】この発明に係るヒートレーンにおける熱移動の原理を示す説明図である。
【図4】図2に示す定着装置の第1の変形例を示す説明図である。
【図5】図2に示す定着装置の第2の変形例を示す説明図である。
【図6】この発明の定着装置を上から見たときの様子を示す説明図である。
【図7】この発明の画像形成装置を構成する各動作部および定着制御部ならびに各部間の制御信号の流れを示すブロック図である。
【図8】この発明の画像形成装置が備える定着制御部のコピー動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】この発明において、搬送ベルトの予備加熱時間に対するトナー温度の関係を一次元解析した結果を示す第1のグラフである(搬送ベルトの初期温度30℃の場合)。
【図10】この発明において、搬送ベルトの予備加熱時間に対するトナー温度の関係を一次元解析した結果を示す第2のグラフである(搬送ベルトの初期温度40℃の場合)。
【図11】この発明において、搬送ベルトの予備加熱時間に対するトナー温度の関係を一次元解析した結果を示す第2のグラフである(搬送ベルトの初期温度50℃の場合)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の好ましい態様について説明する。
前記ヒートパイプは、自励振動型ヒートパイプであってもよい。このようにすれば、熱輸送効率の高い自励振動型ヒートパイプを用いて、通常のヒートパイプでは熱輸送効率の悪い方向、例えば、上から下への方向であっても、熱移動を効率よく実現できる。
【0022】
また、前記ヒートパイプの放熱部は、前記搬送ベルトの内周面側に配置されてもよい。このようにすれば、放熱部を配置するために余分なスペースを必要としない。また、搬送ベルトの外周側を搬送されるシートの邪魔にならずかつシートに転写されたトナー画像を乱すことなく、搬送ベルトに熱を伝達することができる。
さらにまた、前記ヒートパイプの放熱部は、前記搬送ベルトに当接して配置されてもよい。このようにすれば、放熱部が搬送ベルトに接触するので熱を効率よく搬送ベルトに伝達することができ、ひいてはシートおよびトナーを効率よく加熱することができる。
前記放熱部は、レーザー光が照射される前記照射領域に前記シートが達する手前の位置に配置されてもよい。このようにすれば、シートが照射領域に達するまでの間に放熱部からの熱によって予め加熱することができる。
【0023】
また、前記搬送ベルトの温度を検出する温度センサをさらに備え、前記定着制御部は、前記温度センサにより検出された搬送ベルトの温度に応じて前記レーザー光源の照射量を制御してもよい。このようにすれば、無駄な光エネルギーを照射することなくかつ定着に十分な光エネルギーを供給できるように照射量を制御することができ、低消費電力の定着装置を実現することができる。搬送ベルトの温度によって、シートの温度が左右され、従って定着に必要な光エネルギーが異なるからである。
【0024】
さらにまた、搬送ベルトに前記シートを静電吸着させるための電圧を搬送ベルトに印加する電圧印加部をさらに備えていてもよい。このようにすれば、シートを搬送ベルトに静電吸着させてシートの浮きを抑制し、シート全体を均一かつ効率よく加熱することができる。また、搬送ベルトへのシートの密着性を向上させることによって、レーザー光の光エネルギーを未定着トナー画像に均一に照射することができる。
【0025】
前記レーザー光源は、前記シートが搬送される方向と直行するシート幅方向に複数のレーザー素子が並べられてなるものでもよい。このようにすれば、シートの幅方向に複数のレーザー素子を並べることによって、定着に必要な光エネルギーの密度を確保できる。また、シートの幅方向にレーザー光を走査させるための機構を必要としないため構造が単純化される。これに対し、例えば、一つのレーザー光源でシート全面を光照射しようとすると、シート幅方向にレーザー光を走査させる必要がある。そのため、装置の複雑化、コストアップにつながる。更に、一つのレーザーで高出力するよりも複数のレーザーで高出力化したほうがレーザーの発熱面積が広くなるため放熱面積を広く取ることができ、広い面積で冷却できるという利点もある。
【0026】
また、前記放熱部は、前記シートが搬送される方向の長さをLミリメートル、前記シートの搬送速度をVミリメートル/秒とするとき、次の式、L≧V×0.3を満たす長さLで搬送ベルトに当接するよう配置されてもよい。このようにすれば、放熱部からの熱が搬送ベルトを介してシートおよびトナーに伝わるのに十分な長さ、即ち、加熱時間を確保することができる。
【0027】
さらにまた、前記定着制御部は、前記照射領域を前記シートが通過するときは前記レーザー光源にレーザー光を照射させ、前記シートが前記領域にないときは前記レーザー光源にレーザー光を照射させないように制御してもよい。このようにすれば、トナー画像を定着するのに必要なタイミングにのみレーザー光を照射するので、無駄なレーザー光の照射を無くすことができ、消費電力を抑制することができる。また、シートのない状態で搬送ベルトにレーザー光を照射しないので、搬送ベルトの熱劣化を抑制することができる。
ここで示した種々の好ましい態様は、それら複数を組み合わせることもできる。
【0028】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本発明の一実施形態について図1に基づいて説明すると以下の通りである。
【0029】
図1は、この発明の画像形成装置に含まれる画像形成部および定着部の主要な構成要素を模式的に示す説明図である。図1に示す画像形成装置1は、例えばネットワーク上の各端末装置から送信される画像データ等に基づいて、所定の記録紙に対して多色又は単色の画像を形成する。
上記画像形成装置は、可視像形成ユニット50(50Y・50M・50C・50B)、記録紙搬送手段30、定着装置40、供給トレイ20を備えている。
【0030】
上記画像形成装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色に対応して、4つの可視像形成ユニット50Y・50M・50C・50Bが並設されている。つまり、可視像形成ユニット50Yは、イエロー(Y)のトナーを用いて画像形成を行う。可視像形成ユニット50Mは、マゼンダ(M)のトナーを用いて画像形成を行う。また、可視像形成ユニット50Cは、シアン(C)のトナーを用いて画像形成を行う。可視像形成ユニット50Bは、ブラック(B)のトナーを用いて画像形成を行う。具体的な配置としては、記録紙Pの供給トレイ20と定着装置40とを繋ぐ記録紙の搬送路に沿って4組の可視像形成ユニット50を配設した、所謂タンデム式である。
【0031】
可視像形成ユニット50は、それぞれ実質的に同一の構成を有する。すなわち、それぞれに、感光体ドラム51、帯電器52、レーザー光照射手段53(ここでは、感光体ドラムへ潜像を書き込むためのレーザー光照射手段のこと)、現像器54、転写ローラ55クリーナユニット56、が設けられている。そして、搬送される記録紙Pに各色トナーを多重転写する。
【0032】
ここで、上記感光体ドラム51は、形成される画像を担持するものである。上記帯電器52は、感光体ドラム51表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。レーザー光照射手段53は、画像形成装置に入力された画像データに応じて、帯電器52によって帯電した感光体ドラム51表面を露光して、該感光体ドラム51表面に静電潜像を形成する。上記現像器52は、感光体ドラム51表面に形成された静電潜像を、各色のトナーによって顕像化する。転写ローラ55は、トナーとは逆極性のバイアスが印加されており、後述する記録紙搬送手段30により搬送された記録紙Pに、形成されたトナー像を転写させている。ドラムクリーナユニット56は、現像器54での現像処理、及び、感光体ドラム51に形成された画像の転写後に、感光体ドラム51表面に残留したトナーを、除去・回収する。以上のような、記録紙Pに対するトナー像の転写は、Y、M、C、Bの4色について繰り返される。
【0033】
上記記録紙搬送手段30は、駆動ローラ31、アイドリングローラ32、搬送ベルト33からなり、記録紙Pに可視像形成ユニット50にてトナー像が形成されるように、記録紙Pを搬送するものである。駆動ローラ31およびアイドリングローラ32は、無端状の搬送ベルト33を架張するものであり、駆動ローラ31が所定の周速度に制御されて回転することで、無端状の搬送ベルト33を回転させている。搬送ベルト33は、外側表面に静電気を発生させており、記録紙Pを静電吸着させながら、上記記録紙Pを搬送している。
上記記録紙Pは、このようにして、搬送ベルト33に搬送されながらトナー像を転写されたあと、駆動ローラ31の曲率により搬送ベルト33から剥離され、定着装置40に搬送される。
定着装置40は、記録紙Pに適度な熱を与えて、トナーを溶解して記録紙に固定することで、堅牢な画像を形成する。
ここで、上記定着装置40について、図2を用いて詳細に説明する。
図2は、この発明の定着装置の構成例を示す説明図である。図2に示す定着装置40は、レーザー光源104、冷却手段としての自励振動式ヒートパイプからなるヒートレーン106、及び記録紙Pを搬送する記録紙搬送装置107で構成されている。
【0034】
記録紙搬送装置107は、2本のテンションローラ101、及び102と、帯電ローラ120と、耐熱性の無端ベルトを有する搬送ベルト103から構成されており、未定着トナー画像(トナー110)を有する記録紙Pは、搬送ベルト103上で搬送する。テンションローラ101には図示しない駆動手段が接続されており、駆動手段により回転を行う。
【0035】
ヒートレーン106は、レーザー光源104の発熱部と搬送ベルト103の間に熱媒体を封入した1本の細管113を往復させている。ここでヒートレーンの動作原理のイメージを図3に示す。受熱部と放熱部との間に配置される細管113として、熱媒体(例えば純水)を封入した金属パイプであって、例えば内径1mmの肉厚0.5mmの金属パイプを何回も往復させた構造を有している。細管113の材料としては、例えば、アルミ、銀、胴等、熱伝導率の大きい材料を用いる。
【0036】
細管113内に封入された熱媒体は,気相部と液相部が交互に存在する状態となる.受熱部において,液相の熱媒体は吸収した熱により温度が上昇し,沸騰して断続的に蒸気泡を発生すると同時に圧力が上昇する.一方,放熱部においては,冷却作用により蒸気泡の収縮または凝縮により蒸気圧力の降下と熱媒体の温度降下が生じる.受熱部と放熱部の圧力差により自励的に発生する圧力振動により,細い管内に閉塞された気相と液相の熱媒体が,圧力の高い受熱部から圧力の低い放熱部へ移動する。この熱媒体の移動により潜熱と顕熱の両方の熱の輸送が同時に行われる。振動力で管内の熱媒体を循環させるため,従来のヒートパイプと比べ重力の影響を受けにくいので,取り付け姿勢による熱輸送能力の変化が小さくなる。
またヒートレーン内の液の流れを一定方向に流すため細管113内に逆止弁を設けることが更に望ましい。
【0037】
レーザー光源104は、半導体レーザーである。半導体レーザーは、炭酸ガスレーザー等の他のレーザーに比べ、安価で小型化できるメリットがある。また、半導体素子の配合や材料の組成で400nm〜1000nmの領域で、任意で広範囲の波長のレーザー光を発生させることができる。さらに、近年では単体で数ワット、アレイとして数十ワットの高出力のものが市場で入手できる状況にあり、今後さらに高出力化が進む傾向にある。
【0038】
レーザー光源104は、記録紙搬送装置107の方向(下方向)にレーザー光を照射し、その反対面で高熱伝導材108を介してヒートレーンの受熱部111と接触しており、ヒートレーンの放熱部112は、別の高熱伝導材105を介して搬送ベルト103と当接している。
【0039】
高熱伝導材105、108は、アルミ、銀、胴等、熱伝導率の大きい材料を用いる。今回は、高熱伝導材105、108は、厚み0.5mmのアルミ板を使用した。また、高熱伝導材108とレーザー光源との接触面は、図示しない非導電材料であるPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)で薄く(10μm程度)コーティングされており接触面での絶縁性を維持する役割がある。上記PFA以外でもPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(フッ化エチレンプロピレン)等の材料を使用してもよい。つまり絶縁性を有する材料であれば、これに限らない。
【0040】
また別の高熱伝導材105と搬送ベルト103との接触面は、図示しない摩擦係数の低い材料であるPFAで薄く(10μm程度)コーティングされており接触面での摩擦抵抗を低減する役割がある。上記PFA以外でもPTFE、FEP等の材料を使用してもよい。つまり摩擦抵抗低減する材料であれば、これに限らない。
【0041】
高熱伝導材105の紙搬送ベルト103との接触面は、レーザー光源104で発生した熱を、ヒートレーンを通じて熱移動し、搬送ベルト103に伝熱する。ヒートレーンの放熱部が搬送ベルトと当接している領域は、レーザー光が紙搬送ベルトに照射する位置よりも紙搬送方向上流側に当接しているほうが、未定着画像のトナーがレーザー照射される直前に予備加熱されるので最も効率的である。
【0042】
また、図2では、レーザー光源104から発生する熱を、高熱伝導材108を通じてヒートレーンの受熱部に伝熱させたが、それとは異なりレーザー光源104を直接ヒートレーンの受熱部111に当接して伝熱させてもよい。同様に、ヒートレーンの放熱部112と直接に搬送ベルト103に当接して伝熱させてもよい。ただしレーザー光源104が小型の場合は、ヒートレーンの受熱部111で接触面積が十分確保できないため、レーザー光源104の放熱が不十分になる場合もある。同様にヒートレーンの放熱部112での接触面積が充分確保できない場合もある。従って、高熱伝導材105、108等でヒートレーンとの接触面積を大きくすることが好ましい。また、密着性を上げるため適宜高熱伝導グリース等で密着性を上げてもよい。
【0043】
図4は、定着装置40の変形例を示す説明図である。図4に示すように、搬送ベルト103の外側に配置して、搬送ベルト103の表面(外周面)を加熱する構成でもよい。このような構成にすることでベルト表面を直接加熱することができる。
また、図5は、定着装置40の異なる変形例を示す説明図である。図5に示すように、ヒートレーンの放熱部を、未定着トナー画像を有する記録紙表面に非接触で近接させ、記録紙Pへ伝熱させてもよい。
【0044】
図2〜図5は、本実施形態の一例であり、これ以外にもレーザー光源104から発生した熱で搬送ベルト、記録紙Pを予備加熱できる位置にヒートレーンの放熱部を配置するものであればよい。
上記のような構成にすることで、レーザー光源104は、エネルギー変換ロスによって自己発熱するものの、ヒートレーンの熱移動によって、搬送ベルト103を介して記録紙に放熱(記録紙で冷却)するので、レーザー光源104の温度上昇を抑制できる。
【0045】
図2示すように、搬送ベルト103は、ポリカーボネート、フッ化ビニリデン、ポリアミドイミド、ポリイミド(PI)などの樹脂にカーボンなどの導電性部材を分散させた素材から構成されている。搬送ベルト103の表面には、帯電ローラ120が接触している。搬送ベルト103は、帯電ローラ120によって電圧を印加(帯電ローラは、電源と接続されており、ベルト表面に対して電圧を印加する)することで、搬送ベルト103の表面(外周面)は、記録紙Pを静電吸着させる構成となっている。記録紙Pを搬送ベルト103に静電吸着させることによって、搬送ベルト103と記録紙Pが密着し、搬送ベルト上の熱を効率よく記録紙Pに伝熱することができる。
【0046】
図6は、図2におけるレーザー光照射装置の紙搬送方向に対して真上から見たときの様子を示す説明図である。図6に示すように、レーザー光源104を紙搬送方向に対して垂直方向に複数並べている。例えば、一つのレーザーで、紙全面を光照射する場合、紙の搬送方向以外に、紙搬送方向と垂直方向にレーザーをスキャンさせる必要がある。そのため、定着プロセスに時間がかかるため高速で定着させるのに限界がある。
【0047】
また、レーザーをスキャンさせるには、装置の複雑化、コストアップになる。一方、紙搬送方向と垂直方向にライン上に、並べることで、紙搬送方向と垂直方向にレーザーをスキャンさせる必要がないため、必要最低限の構成で使用することができ、更に、高速で、定着させることが可能である。
【0048】
また、図6は、レーザー光源104の上に高熱伝導材108を介して冷却手段としてのヒートレーン106の受熱部111があり、ヒートレーンの放熱部112は記録紙搬送装置107の内部の紙搬送ベルト103の内側に至っている。図6のヒートレーンは一本の細管を一往復してそれを複数個使用した図であるが、これに限定されるものではなく、図3に示したように、一本の細管113を何回も往復させた構造でもよい。
図2に示すように、搬送ベルト103の内周面側には、搬送ベルト103の温度を検知するための温度検知手段(温度センサ)としてサーミスタ109を設置している。
【0049】
サーミスタ109による検知温度に基づいて、レーザー光源104は、図7に示す定着制御部602によって、その光照射量を制御される。サーミスタ109は、搬送ベルト103の温度もしくは、記録紙Pの温度が適正に温度検知する位置であればこの位置に限定されない。
また、サーミスタ109以外の温度検知手段を使用してもよい。
レーザー光源104から発熱する熱により、未定着トナー画像有する記録紙Pが予備加熱されるとレーザー光を照射する前に記録紙P、及びトナー110が加温される。
したがって、レーザー光で、トナー110を加熱定着する際には、レーザー照射量を抑えることができる。
【0050】
例えば、室温(20℃)において、定着装置のウォームアップ直後に定着動作を行った場合、レーザー光源104による発熱がほとんどないため、記録紙Pの裏面は加熱されない。従って、記録紙Pの表面に存在するトナー110も、ほぼ室温であり、このトナー110を定着させるのに必要なエネルギーは、理論値0.000795J/mm2である。具体的には、例えば、一般的なポリエステルトナーを用いた場合を説明する。トナー110の比熱1.42J/g・℃、比重0.000817g/mm3、トナーの厚み0.016mm、トナー110の充填率0.476(単位体積あたりにトナーの存在する体積)、室温のトナー110を110℃(トナーが溶融するのに必要なトナー温度)で溶融する場合、定着に必要な光照射エネルギーは、0.000795J/mm2(=比熱×比重×充填率×(110℃−20℃)である。
【0051】
一方、記録紙Pを連続通紙し、このときレーザー光源104でエネルギー変換ロスにより生じた熱がヒートレーンを通じて搬送ベルト103に伝熱される。サーミスタ検知温度が40℃、即ち、未定着トナー画像が40℃まで予備加熱されたとき、トナー110を溶融するのに必要な光照射エネルギーは、0.000618J/mm2(=比熱×比重×充填率×(110℃−40℃)である。これは、トナー画像が室温の場合に対して78%(=0.000593/0.000795)の光照射量でよいことになる。
【0052】
ところで、サーミスタ検知温度と未定着トナー画像の温度(ここでは、トナー最下層と紙の界面温度とする。)の関係は、例えば、以下の条件のもとで1次元熱解析を行い、その結果から事前にサーミスタ検知温度とトナー温度の関係を予測することができる。
熱解析の構成および初期条件は、以下の通りである。
【0053】
まず、熱解析に用いる高熱伝導材、搬送ベルトおよび記録紙の構成であるが、高熱伝導材105は、厚さ0.5mmのアルミニウム製であり、その表面に高熱伝導材表層としてPFAを材料とする厚さ0.01mmの層が形成されたものを用いる。搬送ベルト103は、厚さ0.05mmのPI樹脂製である。搬送ベルト103に搬送されるシートは厚さ0.1mmであり、シート上に転写されたトナー層の厚さは0.016mmである。
【0054】
次に、初期条件であるが、トナーおよび記録紙の初期温度は20℃、記録紙の搬送速度は200mm/秒である。そして、高熱伝導材および搬送ベルトの初期温度は、30℃、40℃、50℃の3通りとする。予備加熱時間はいずれも0.4秒である。ここで、予備加熱時間とは、未定着画像を載せた記録紙が、搬送ベルト103に接触してから定着装置40のレーザー光源104によるレーザー照射領域に到達するまでの時間である。
【0055】
図9〜図11は、この発明において、搬送ベルトの予備加熱時間に対するトナー温度の関係を一次元解析した結果を示す第1のグラフである。図9、12、13は、搬送ベルト103の温度検知用サーミスタ109の検知温度、つまり搬送ベルトの初期温度が30℃、40℃、50℃の場合に対応する。搬送ベルト103と記録紙上のトナーの温度との関係については、トナー温度は、少なくとも予備加熱時間0.3秒以上でほぼ搬送ベルトの初期温度と同じになる。よって、予備加熱時間を0.4秒とする前記条件のもとでは、サーミスタ109の検知温度をトナー温度とみなしてよい。すなわち、ヒートレーン106の放熱部112で搬送ベルト103との接触時間を0.3秒以上にすることが望ましく、そうすることでトナーは充分予備加熱されていることになる。つまりプロセス速度S(mm/s)とした時、ヒートレーンの放熱部における最適な紙搬送方向の幅L(図2参照)は、少なくともL=0.3×S以上の幅で接触させておけば、ヒートレーンで発生した熱をトナー部分に充分与えることができる。
【0056】
ただし設計上の理由などで、ヒートレーンの放熱部と搬送ベルト103との接触時間が小さい場合、ヒートレーンの熱が十分に搬送ベルト103に伝熱しないこともある。その場合は、サーミスタ109が検知する温度とトナー110の温度とが異なるため、上記(図9、12、13)の計算結果から温度差を考慮した適正な温度変換テーブルを作成すればよい。
【0057】
上記の理論値を基に、サーミスタ109の検知温度に対するレーザーの光照射量の関係を計算した温度変換テーブルを作成する。そして、サーミスタ109の検知温度に基づいて、前記温度変換テーブルを読み出し、光照射量を決定すれば、必要最低限の光照射量で定着させることができる。なお、上記温度変換テーブルは、後述する図7の記憶部609に記憶される。
以上のようにして計算により温度変換テーブルの値を求める手法は、単なる一例であって、別の方法で前記温度変換テーブルを作成してもよい。
図7は、この発明の画像形成装置を構成する各動作部および制御部ならびに各部間の制御信号の流れを示すブロック図である。
【0058】
図7のブロック図の全体が示す画像形成装置は、たとえば、スキャナとプリンタと周辺機器とを備えた複合機であって、図1の画像形成装置1に対応する。図7の画像形成装置は、画像読取部605、画像処理部606、画像形成部607、定着制御部602、記憶部609、周辺機器制御部608、入力部603および表示部604を備える。
【0059】
画像読取部605は、原稿画像を読み取る。画像処理部606は、読み取った原稿画像を適正な電気信号に変換して画像データを生成する。画像形成部607は、生成された画像データを印刷出力する。定着制御部602は、定着部(図7に図示せず)のレーザー光照射を制御する。記憶部609には、プロセス速度と紙搬送開始信号を検出するアクチュエータの信号を元に印字開始信号を受信してから記録部材が定着装置内のレーザー照射領域までの到達時間が格納される。周辺機器制御部608は、後処理装置であるフィニッシャーやソーターなどの周辺機器を制御する。入力部603および表示部604は、画像形成装置の操作部である。
【0060】
制御部601は、少なくとも以下の制御を行う。まず、画像処理部606から受信した画像情報の印字位置情報をもとに記憶部609に予め記憶されたデータの照合を行う。ここで、印字位置情報は、印刷ジョブに対して、1ページ毎のどの位置に印字すべきかといった指令を指す。そして、印字位置情報と、サーミスタ検知温度情報とを元に温度変換テーブルにて算出したレーザー光出力値を定着制御部602へ送信する。
また、定着制御部602は、受信した印字位置情報と算出したレーザー光の出力値に基づいて、搬送ベルト103を駆動し、さらに、レーザー光を照射する制御を行う。
さらにまた定着制御部602は、記録紙Pの搬送を検出する図示しないアクチュエータの信号を監視する。そして、前記信号に基づいて搬送ベルト103に対して電圧を印加する制御を行う。
【0061】
図8は、この発明の画像形成装置が備える制御部のコピー動作の処理手順を示すフローチャートである。
なお、画像形成装置1の図示しないプリンタドライバの画面からユーザーが印刷指示を行った場合でも、ユーザーの印刷指示信号に基づいて本フローチャートと同様の制御を行う。
【0062】
ユーザーがコピーしたい原稿をスキャナに載置し、若しくは原稿台に載置した後に入力部603の図示しないコピーボタンがユーザーによって押下されると、制御部601は、ユーザーが押下した信号(印刷指示信号)を受信する。そして、前記信号に応答して、例えば、スキャナの画像読取部605に原稿画像を読み取らせるように制御する。そして、画像読取部605が読み取った信号を画像処理部606に画像処理させる。そして、画像処理部606から前述の印字位置情報を受信する。
【0063】
制御部601は、画像処理部606から情報を受信すると、まず受信した情報に印字位置情報が含まれているか否かを判断する(ステップS11)。印字位置情報が含まれていなければ、印刷ジョブの実行でないと判断して何もしない(ステップS11のNo)。一方、受信した情報に印字位置情報が含まれているなら(ステップS11のYes)、制御部601は、記憶部609を参照して印字開始のタイミングを決定する(ステップS13)。また制御部601はサーミスタ109の検知温度を受信する(ステップS15)。
【0064】
そして、受信したサーミスタ109からの検知温度を用いて、あらかじめ作成された温度変換テーブルを参照し(ステップS17)、前記検知温度に対応するレーザー照射量の出力値を決定する(ステップS19)。次に定着制御部602へ決定された出力値及び出力信号を送信し、レーザー光源104を照射する制御を行う(ステップS21)。
【0065】
さらに、定着制御部602は、搬送ベルト103へバイアス電圧を印加する制御を行う(ステップS23)。印刷ジョブの実行中、定着制御部602はレーザー光源104からのレーザー光の照射を制御する(ステップS25)。
印刷ジョブが完了すると(ステップS27)、定着制御部602は、レーザー光源104によるレーザー光の出力を停止させ(ステップS29)、次に、搬送ベルト103へのバイアス電圧の印加をも停止させるように制御する(ステップS31)。
【0066】
なお、定着制御部602は、図示しない記録紙Pの搬送を検出するアクチュエータの信号を監視して、この信号に基づいて紙が搬送されてきたことを認識し、レーザー光源104やバイアス電圧の制御を行ってもよい。例えば、記録紙Pが供給トレイ20から図示しない給紙ローラから給紙されたときから記録紙Pの移動時間を計測し、レーザー照射領域までの到達時間を算出して、レーザー光源104や搬送ベルト103、バイアス電圧印加及び停止を制御してもよい。
【0067】
以上のように、搬送ベルト103(図2)により搬送されてきた未定着トナー画像を有する記録紙Pは、搬送ベルト103と密着し、かつ、印字位置情報に基づいてレーザー光が照射される。通紙動作中には、画像情報から得られた印字位置情報に基づいてレーザー光が照射される。よって、通紙動作中以外、すなわちウォームアップ時、及び待機時は、電力を必要としない。よって、低消費電力の定着装置、及び画像形成装置が実現できる。
【0068】
なお、図8のフローチャートでは、レーザー光源104の照射を停止する為の制御を定着制御部602が制御するものとしたが、特に定着制御部602が制御しなくとも、制御部601からのレーザー光源104を照射する指示信号のみに基づいて、レーザー光源104の照射を制御してもよい。
【0069】
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0070】
1:画像形成装置
20:供給トレイ
30:記録紙搬送手段
31:駆動ローラ
32:アイドリングローラ
33:搬送ベルト
40:定着装置
50:可視像形成ユニット
51:感光体ドラム
52:帯電器
53:レーザー光照射手段
54:現像器
55:転写ローラ
56:クリーナユニット
101、102:テンションローラ
103:搬送ベルト
104:レーザー光源
105、108:高熱伝導材
106:ヒートレーン
107:記録紙搬送装置
109:サーミスタ
110:トナー
111:受熱部
112:放熱部
113:細管
120:帯電ローラ
601:制御部
602:定着制御部
603:入力部
604:表示部
605:画像読取部
606:画像処理部
607:画像形成部
608:周辺機器制御部
609:記憶部
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に係り、より詳細には、シート上に形成された未定着画像を、レーザー光照射手段により定着するレーザー定着装置およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(例えばプリンタ)には、シート状の印刷媒体(以下単にシートという。代表的な態様は記録紙)上に形成されたトナー像を熱溶融することによってシート上に定着させる定着装置が備えられている。この定着装置の一例として、定着ローラと加圧ローラとから構成されるローラ対方式の定着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
定着ローラは、アルミなどの金属製中空芯金の表面に弾性層が形成されたローラ部材であり、この芯金の内部に熱源としてハロゲンランプが配置された構成である。そして、温度制御装置が、定着ローラ表面に設けられた温度センサから出力される信号に基づいてハロゲンランプをオン/オフ制御することによって、定着ローラ表面の温度を制御する。
加圧ローラは、芯金上に被覆層としてシリコンゴムなどの耐熱性弾性層を設けたローラ部材である。この加圧ローラは、定着ローラ周面に対して圧接され、加圧ローラの上記弾性層の弾性変形によって、定着ローラと加圧ローラとの間にニップ領域が形成される。
【0004】
上記の構成において、定着装置では、未定着のトナー像が形成されたシートを定着ローラと加圧ローラとの間のニップ領域に挟み込み、これら両ローラを回転させることによって上記シートを搬送するとともに、定着ローラ周面の熱によりシート上のトナー像を溶融させてシートに定着させる。
【0005】
しかし、従来のローラ対方式は、朝一電源投入直後は、定着ローラ及び加圧ローラが室温状態にあるため、電源ON後、所定温度にまで上昇させる必要があるため、ウォームアップ時間を要する。また、コピー動作が行われていない待機状態では、ローラ表面を所定温度に保持する必要があるため、コピー動作が行われていない時も常に加熱していなければならない。これらコピー動作以外に、無駄なエネルギーを消費する。
そこで、無駄なエネルギーを消費せず効率よくトナーのみを定着させる方法として、レーザーパワーを利用してトナーを定着させる定着装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2によれば、複数のレーザーを用いてトナーを加熱することで、一つの弱いレーザーだけでは不十分な定着性を複数個のレーザーを用いることで定着性を向上させている。これにより、低出力で安価なレーザーを使うことが可能なため、装置全体も簡単なものにできると記載されている。
【0007】
一方、排熱を利用した定着システムとして、定着部で記録媒体に与えられる熱を再利用し定着に使用する熱量の低減を目指したものが示されている(例えば、特許文献3参照)。これは、定着部を通過した記録媒体から熱を奪う冷却手段を有し冷却手段で奪った熱をヒートパイプとベルトにより、定着前にある記録媒体搬送ベルトへ熱を輸送する熱輸送手段を設け、記録媒体搬送ベルトは、トナー像が転写された定着前の記録媒体を予備加熱する構成である。ヒートパイプは、小さい温度差で多量の熱を運ぶために用いられる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−38802号公報
【特許文献2】特開平7−191560号公報
【特許文献3】特開2004−20824号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】田中 高博、野村 浩司、氏家 康成、“自励振動型ヒートパイプの動作特性”、[online]、平成16年10月29日、日本大学生産工学部生産工学研究所「生産工学部学術講演会の開催」第37回、[平成22年8月6日検索]、インターネット<URL:http://www.cit.nihon-u.ac.jp/kenkyu/kouennkai/reference/No#37/1#kikai/ 1-034.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前記特許文献2では、複数のレーザーを用いたとしても、レーザー素子の光エネルギー変換効率、即ち、レーザー素子に投入される電力に対して、レーザー光として光出力できる電力の割合が低い。通常用いられるレーザー素子は、光変換効率が50%以下である。つまり、投入電力に対して50%以上が変換ロスであり、その変換ロスがレーザー光源から発生する熱となる。そして、その発熱を冷却する冷却手段、例えば、光源の発熱部にヒートシンクを設け、ファン等風を送る手段でヒートシンクを冷却したり水冷機構など水循環装置により冷却したりするなどの手段が必要になる。また冷却手段による冷却のために別途電力が必要になるためトータルとしてのエネルギー変換効率、即ち、レーザー素子に投入する電力、冷却に必要な投入電力等を含めたレーザーを動作させるのに必要な全投入電力に対する光照射できる電力の割合が悪くなってしまう。
【0011】
また、前記特許文献3では、定着時に加熱された紙の排熱を利用し、加熱前の記録媒体を予備加熱する手段では、紙搬送時のみ熱の輸送が可能である。特許文献3に示されている定着方式すなわち、2つローラで紙を加熱する方式では、トナーと共に紙全体が加熱される。これに対して、レーザー定着方式では、印字部(トナーの存在する部分)のみレーザーを照射し加熱する。紙を直接加熱しないので、紙に発生する熱は非常に少ない。よって、特許文献3のレーザー定着方式では排熱を有効できる効果が少ない。
【0012】
また、特許文献3に記載の手段は、紙の熱を奪うヒートパイプとそのヒートパイプの熱をベルト等の熱輸送手段を介して、第二のヒートパイプに熱を移動させ、さらに第二のヒートパイプの熱を定着前の記録媒体搬送ベルトに熱を移動させるため装置の複雑化が予想される。また、定着後の記録媒体で発生する排熱から定着前の記録媒体に熱を移動するまでの構成要素が多いためその間に熱が放熱などにより失われるので熱移動効率が悪くなってしまう。
【0013】
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、レーザー光源で発生した排熱を利用し、トナー画像の定着に必要な光エネルギーを少なくできる効率的なレーザー定着装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、レーザー光を出射し得るレーザー光源と、トナー画像が転写されたシートを搬送して前記レーザー光源からのレーザー光で照射される照射領域へ導く搬送ベルトと、前記レーザー光源が発する熱を受ける受熱部と前記搬送ベルトへ熱を供給する放熱部とを有するヒートパイプと、前記レーザー光源を制御する定着制御部とを備え、前記定着制御部は、前記照射領域を通過する前記トナー画像にレーザー光を照射するように制御して前記トナー画像を前記シートに定着させ、前記ヒートパイプは、受熱部で受けた熱を放熱部へ移動させ、前記搬送ベルトは放熱部から供給された熱で前記シートおよび前記トナー画像を加熱することを特徴とするレーザー定着装置を提供する。
さらに、前記レーザー定着装置を備えてなる画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
この発明のレーザー定着装置において、前記レーザー光源が発する熱を受ける受熱部と前記搬送ベルトへ熱を供給する放熱部とを有するヒートパイプを備え、前記ヒートパイプは、受熱部で受けた熱を放熱部へ移動させ、前記搬送ベルトは放熱部から供給された熱で前記シートおよび前記トナー画像を加熱するので、レーザー光源がレーザー光を出射するときに発生する排熱を利用して前記シートおよび前記トナー画像を加熱し、定着に必要な光エネルギーを少なくした効率的なレーザー定着装置が実現できる。また、通紙されるシートが最終的な冷却手段となるので、レーザー光源に別の冷却手段を設ける必要がない。よって、冷却に必要な電力が削減できる。
この発明の画像形成装置は、前記レーザー定着装置を備えることにより効率的な定着が実現できる。ひいては、画像形成装置のウォームアップ時間を短縮することができる。また、待機中の加熱が不要な、低消費電力の画像形成装置を得ることができる。
【0016】
この発明において、レーザー光源は、トナー画像およびシートを照射して加熱し、トナー画像を溶融させるに足るエネルギーを有するレーザー光を照射するものである。その具体的な態様は、例えば、複数のレーザー素子を並べかつそれらのレーザー素子から照射されるレーザー光を所定方向に向けるための光学系を設けたものである。少なくとも一つのレーザー素子とそのレーザー素子から照射されるレーザー光を走査する手段を設ける構成であってもよいが、走査手段を設けずに複数のレーザー素子を並べた単純な構成が極めて好ましい。レーザー素子としては小型で安価な半導体素子が極めて好ましい。実施形態において、レーザー光源は、半導体レーザーを用いている。しかし、この発明はこれに限定されず、ガスレーザーや個体レーザーを光源として用いてもよい。
この発明において、トナー画像は、微小な有色粒子からなるトナーを用いて形成された画像である。その具体的な態様は、例えば、電子写真用の感光体ドラム上に形成されたトナー像がシートに転写されたものである。
【0017】
この発明において、シートは、所定の大きさに切断された印刷媒体である。その具体的な態様は、例えば、定形サイズに切断された印刷シートである。ただし、印刷媒体は紙に限らず、透明あるいは不透明の樹脂などであってもよい。後述する実施形態において、シートは、記録紙に相当する。
【0018】
この発明において、照射領域は、レーザー光源から照射されたレーザー光によりシートおよびトナー画像が照射される領域である。その具体的な態様は、例えば、搬送ベルトに対向してレーザー光源が配置され、そのレーザー光源からのレーザー光が搬送ベルトを照射する領域である。後述する実施形態において、照射領域は、レーザー光源の直下を通過する搬送ベルト上の所定領域に相当する。
この発明において、搬送ベルトは、シートを搬送する無端状のベルトでありかつ放熱部からの熱をシートに伝達するものである。その具体的な態様は、例えば、ポリカーボネート等の樹脂にカーボンなどの導電性部材を分散させて無端ベルト状に成形したものである。
【0019】
この発明において、ヒートパイプは、小さい温度差で多量の熱を運ぶために用いる特別な棒またはパイプである。その具体的な態様は、例えば、純水などの熱媒体を封入した金属製の細いパイプである。後述する実施形態において、ヒートパイプは、細管に相当する。ヒートパイプは受熱部で周囲から熱を奪い、放熱部で周囲に熱を供給する。この発明においては、レーザー光源から熱を奪って冷却し、搬送ベルト、前記搬送ベルトにより搬送されるシートおよびそのシートに転写されたトナーに熱を供給する。後述する実施形態において、受熱部と放熱部には周囲に効率よく熱を移動させるための高熱伝導材が配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の画像形成装置に含まれる画像形成部および定着部の主要な構成要素を模式的に示す説明図である。
【図2】この発明の定着装置の構成例を示す説明図である。
【図3】この発明に係るヒートレーンにおける熱移動の原理を示す説明図である。
【図4】図2に示す定着装置の第1の変形例を示す説明図である。
【図5】図2に示す定着装置の第2の変形例を示す説明図である。
【図6】この発明の定着装置を上から見たときの様子を示す説明図である。
【図7】この発明の画像形成装置を構成する各動作部および定着制御部ならびに各部間の制御信号の流れを示すブロック図である。
【図8】この発明の画像形成装置が備える定着制御部のコピー動作の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】この発明において、搬送ベルトの予備加熱時間に対するトナー温度の関係を一次元解析した結果を示す第1のグラフである(搬送ベルトの初期温度30℃の場合)。
【図10】この発明において、搬送ベルトの予備加熱時間に対するトナー温度の関係を一次元解析した結果を示す第2のグラフである(搬送ベルトの初期温度40℃の場合)。
【図11】この発明において、搬送ベルトの予備加熱時間に対するトナー温度の関係を一次元解析した結果を示す第2のグラフである(搬送ベルトの初期温度50℃の場合)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の好ましい態様について説明する。
前記ヒートパイプは、自励振動型ヒートパイプであってもよい。このようにすれば、熱輸送効率の高い自励振動型ヒートパイプを用いて、通常のヒートパイプでは熱輸送効率の悪い方向、例えば、上から下への方向であっても、熱移動を効率よく実現できる。
【0022】
また、前記ヒートパイプの放熱部は、前記搬送ベルトの内周面側に配置されてもよい。このようにすれば、放熱部を配置するために余分なスペースを必要としない。また、搬送ベルトの外周側を搬送されるシートの邪魔にならずかつシートに転写されたトナー画像を乱すことなく、搬送ベルトに熱を伝達することができる。
さらにまた、前記ヒートパイプの放熱部は、前記搬送ベルトに当接して配置されてもよい。このようにすれば、放熱部が搬送ベルトに接触するので熱を効率よく搬送ベルトに伝達することができ、ひいてはシートおよびトナーを効率よく加熱することができる。
前記放熱部は、レーザー光が照射される前記照射領域に前記シートが達する手前の位置に配置されてもよい。このようにすれば、シートが照射領域に達するまでの間に放熱部からの熱によって予め加熱することができる。
【0023】
また、前記搬送ベルトの温度を検出する温度センサをさらに備え、前記定着制御部は、前記温度センサにより検出された搬送ベルトの温度に応じて前記レーザー光源の照射量を制御してもよい。このようにすれば、無駄な光エネルギーを照射することなくかつ定着に十分な光エネルギーを供給できるように照射量を制御することができ、低消費電力の定着装置を実現することができる。搬送ベルトの温度によって、シートの温度が左右され、従って定着に必要な光エネルギーが異なるからである。
【0024】
さらにまた、搬送ベルトに前記シートを静電吸着させるための電圧を搬送ベルトに印加する電圧印加部をさらに備えていてもよい。このようにすれば、シートを搬送ベルトに静電吸着させてシートの浮きを抑制し、シート全体を均一かつ効率よく加熱することができる。また、搬送ベルトへのシートの密着性を向上させることによって、レーザー光の光エネルギーを未定着トナー画像に均一に照射することができる。
【0025】
前記レーザー光源は、前記シートが搬送される方向と直行するシート幅方向に複数のレーザー素子が並べられてなるものでもよい。このようにすれば、シートの幅方向に複数のレーザー素子を並べることによって、定着に必要な光エネルギーの密度を確保できる。また、シートの幅方向にレーザー光を走査させるための機構を必要としないため構造が単純化される。これに対し、例えば、一つのレーザー光源でシート全面を光照射しようとすると、シート幅方向にレーザー光を走査させる必要がある。そのため、装置の複雑化、コストアップにつながる。更に、一つのレーザーで高出力するよりも複数のレーザーで高出力化したほうがレーザーの発熱面積が広くなるため放熱面積を広く取ることができ、広い面積で冷却できるという利点もある。
【0026】
また、前記放熱部は、前記シートが搬送される方向の長さをLミリメートル、前記シートの搬送速度をVミリメートル/秒とするとき、次の式、L≧V×0.3を満たす長さLで搬送ベルトに当接するよう配置されてもよい。このようにすれば、放熱部からの熱が搬送ベルトを介してシートおよびトナーに伝わるのに十分な長さ、即ち、加熱時間を確保することができる。
【0027】
さらにまた、前記定着制御部は、前記照射領域を前記シートが通過するときは前記レーザー光源にレーザー光を照射させ、前記シートが前記領域にないときは前記レーザー光源にレーザー光を照射させないように制御してもよい。このようにすれば、トナー画像を定着するのに必要なタイミングにのみレーザー光を照射するので、無駄なレーザー光の照射を無くすことができ、消費電力を抑制することができる。また、シートのない状態で搬送ベルトにレーザー光を照射しないので、搬送ベルトの熱劣化を抑制することができる。
ここで示した種々の好ましい態様は、それら複数を組み合わせることもできる。
【0028】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
本発明の一実施形態について図1に基づいて説明すると以下の通りである。
【0029】
図1は、この発明の画像形成装置に含まれる画像形成部および定着部の主要な構成要素を模式的に示す説明図である。図1に示す画像形成装置1は、例えばネットワーク上の各端末装置から送信される画像データ等に基づいて、所定の記録紙に対して多色又は単色の画像を形成する。
上記画像形成装置は、可視像形成ユニット50(50Y・50M・50C・50B)、記録紙搬送手段30、定着装置40、供給トレイ20を備えている。
【0030】
上記画像形成装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色に対応して、4つの可視像形成ユニット50Y・50M・50C・50Bが並設されている。つまり、可視像形成ユニット50Yは、イエロー(Y)のトナーを用いて画像形成を行う。可視像形成ユニット50Mは、マゼンダ(M)のトナーを用いて画像形成を行う。また、可視像形成ユニット50Cは、シアン(C)のトナーを用いて画像形成を行う。可視像形成ユニット50Bは、ブラック(B)のトナーを用いて画像形成を行う。具体的な配置としては、記録紙Pの供給トレイ20と定着装置40とを繋ぐ記録紙の搬送路に沿って4組の可視像形成ユニット50を配設した、所謂タンデム式である。
【0031】
可視像形成ユニット50は、それぞれ実質的に同一の構成を有する。すなわち、それぞれに、感光体ドラム51、帯電器52、レーザー光照射手段53(ここでは、感光体ドラムへ潜像を書き込むためのレーザー光照射手段のこと)、現像器54、転写ローラ55クリーナユニット56、が設けられている。そして、搬送される記録紙Pに各色トナーを多重転写する。
【0032】
ここで、上記感光体ドラム51は、形成される画像を担持するものである。上記帯電器52は、感光体ドラム51表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。レーザー光照射手段53は、画像形成装置に入力された画像データに応じて、帯電器52によって帯電した感光体ドラム51表面を露光して、該感光体ドラム51表面に静電潜像を形成する。上記現像器52は、感光体ドラム51表面に形成された静電潜像を、各色のトナーによって顕像化する。転写ローラ55は、トナーとは逆極性のバイアスが印加されており、後述する記録紙搬送手段30により搬送された記録紙Pに、形成されたトナー像を転写させている。ドラムクリーナユニット56は、現像器54での現像処理、及び、感光体ドラム51に形成された画像の転写後に、感光体ドラム51表面に残留したトナーを、除去・回収する。以上のような、記録紙Pに対するトナー像の転写は、Y、M、C、Bの4色について繰り返される。
【0033】
上記記録紙搬送手段30は、駆動ローラ31、アイドリングローラ32、搬送ベルト33からなり、記録紙Pに可視像形成ユニット50にてトナー像が形成されるように、記録紙Pを搬送するものである。駆動ローラ31およびアイドリングローラ32は、無端状の搬送ベルト33を架張するものであり、駆動ローラ31が所定の周速度に制御されて回転することで、無端状の搬送ベルト33を回転させている。搬送ベルト33は、外側表面に静電気を発生させており、記録紙Pを静電吸着させながら、上記記録紙Pを搬送している。
上記記録紙Pは、このようにして、搬送ベルト33に搬送されながらトナー像を転写されたあと、駆動ローラ31の曲率により搬送ベルト33から剥離され、定着装置40に搬送される。
定着装置40は、記録紙Pに適度な熱を与えて、トナーを溶解して記録紙に固定することで、堅牢な画像を形成する。
ここで、上記定着装置40について、図2を用いて詳細に説明する。
図2は、この発明の定着装置の構成例を示す説明図である。図2に示す定着装置40は、レーザー光源104、冷却手段としての自励振動式ヒートパイプからなるヒートレーン106、及び記録紙Pを搬送する記録紙搬送装置107で構成されている。
【0034】
記録紙搬送装置107は、2本のテンションローラ101、及び102と、帯電ローラ120と、耐熱性の無端ベルトを有する搬送ベルト103から構成されており、未定着トナー画像(トナー110)を有する記録紙Pは、搬送ベルト103上で搬送する。テンションローラ101には図示しない駆動手段が接続されており、駆動手段により回転を行う。
【0035】
ヒートレーン106は、レーザー光源104の発熱部と搬送ベルト103の間に熱媒体を封入した1本の細管113を往復させている。ここでヒートレーンの動作原理のイメージを図3に示す。受熱部と放熱部との間に配置される細管113として、熱媒体(例えば純水)を封入した金属パイプであって、例えば内径1mmの肉厚0.5mmの金属パイプを何回も往復させた構造を有している。細管113の材料としては、例えば、アルミ、銀、胴等、熱伝導率の大きい材料を用いる。
【0036】
細管113内に封入された熱媒体は,気相部と液相部が交互に存在する状態となる.受熱部において,液相の熱媒体は吸収した熱により温度が上昇し,沸騰して断続的に蒸気泡を発生すると同時に圧力が上昇する.一方,放熱部においては,冷却作用により蒸気泡の収縮または凝縮により蒸気圧力の降下と熱媒体の温度降下が生じる.受熱部と放熱部の圧力差により自励的に発生する圧力振動により,細い管内に閉塞された気相と液相の熱媒体が,圧力の高い受熱部から圧力の低い放熱部へ移動する。この熱媒体の移動により潜熱と顕熱の両方の熱の輸送が同時に行われる。振動力で管内の熱媒体を循環させるため,従来のヒートパイプと比べ重力の影響を受けにくいので,取り付け姿勢による熱輸送能力の変化が小さくなる。
またヒートレーン内の液の流れを一定方向に流すため細管113内に逆止弁を設けることが更に望ましい。
【0037】
レーザー光源104は、半導体レーザーである。半導体レーザーは、炭酸ガスレーザー等の他のレーザーに比べ、安価で小型化できるメリットがある。また、半導体素子の配合や材料の組成で400nm〜1000nmの領域で、任意で広範囲の波長のレーザー光を発生させることができる。さらに、近年では単体で数ワット、アレイとして数十ワットの高出力のものが市場で入手できる状況にあり、今後さらに高出力化が進む傾向にある。
【0038】
レーザー光源104は、記録紙搬送装置107の方向(下方向)にレーザー光を照射し、その反対面で高熱伝導材108を介してヒートレーンの受熱部111と接触しており、ヒートレーンの放熱部112は、別の高熱伝導材105を介して搬送ベルト103と当接している。
【0039】
高熱伝導材105、108は、アルミ、銀、胴等、熱伝導率の大きい材料を用いる。今回は、高熱伝導材105、108は、厚み0.5mmのアルミ板を使用した。また、高熱伝導材108とレーザー光源との接触面は、図示しない非導電材料であるPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)で薄く(10μm程度)コーティングされており接触面での絶縁性を維持する役割がある。上記PFA以外でもPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(フッ化エチレンプロピレン)等の材料を使用してもよい。つまり絶縁性を有する材料であれば、これに限らない。
【0040】
また別の高熱伝導材105と搬送ベルト103との接触面は、図示しない摩擦係数の低い材料であるPFAで薄く(10μm程度)コーティングされており接触面での摩擦抵抗を低減する役割がある。上記PFA以外でもPTFE、FEP等の材料を使用してもよい。つまり摩擦抵抗低減する材料であれば、これに限らない。
【0041】
高熱伝導材105の紙搬送ベルト103との接触面は、レーザー光源104で発生した熱を、ヒートレーンを通じて熱移動し、搬送ベルト103に伝熱する。ヒートレーンの放熱部が搬送ベルトと当接している領域は、レーザー光が紙搬送ベルトに照射する位置よりも紙搬送方向上流側に当接しているほうが、未定着画像のトナーがレーザー照射される直前に予備加熱されるので最も効率的である。
【0042】
また、図2では、レーザー光源104から発生する熱を、高熱伝導材108を通じてヒートレーンの受熱部に伝熱させたが、それとは異なりレーザー光源104を直接ヒートレーンの受熱部111に当接して伝熱させてもよい。同様に、ヒートレーンの放熱部112と直接に搬送ベルト103に当接して伝熱させてもよい。ただしレーザー光源104が小型の場合は、ヒートレーンの受熱部111で接触面積が十分確保できないため、レーザー光源104の放熱が不十分になる場合もある。同様にヒートレーンの放熱部112での接触面積が充分確保できない場合もある。従って、高熱伝導材105、108等でヒートレーンとの接触面積を大きくすることが好ましい。また、密着性を上げるため適宜高熱伝導グリース等で密着性を上げてもよい。
【0043】
図4は、定着装置40の変形例を示す説明図である。図4に示すように、搬送ベルト103の外側に配置して、搬送ベルト103の表面(外周面)を加熱する構成でもよい。このような構成にすることでベルト表面を直接加熱することができる。
また、図5は、定着装置40の異なる変形例を示す説明図である。図5に示すように、ヒートレーンの放熱部を、未定着トナー画像を有する記録紙表面に非接触で近接させ、記録紙Pへ伝熱させてもよい。
【0044】
図2〜図5は、本実施形態の一例であり、これ以外にもレーザー光源104から発生した熱で搬送ベルト、記録紙Pを予備加熱できる位置にヒートレーンの放熱部を配置するものであればよい。
上記のような構成にすることで、レーザー光源104は、エネルギー変換ロスによって自己発熱するものの、ヒートレーンの熱移動によって、搬送ベルト103を介して記録紙に放熱(記録紙で冷却)するので、レーザー光源104の温度上昇を抑制できる。
【0045】
図2示すように、搬送ベルト103は、ポリカーボネート、フッ化ビニリデン、ポリアミドイミド、ポリイミド(PI)などの樹脂にカーボンなどの導電性部材を分散させた素材から構成されている。搬送ベルト103の表面には、帯電ローラ120が接触している。搬送ベルト103は、帯電ローラ120によって電圧を印加(帯電ローラは、電源と接続されており、ベルト表面に対して電圧を印加する)することで、搬送ベルト103の表面(外周面)は、記録紙Pを静電吸着させる構成となっている。記録紙Pを搬送ベルト103に静電吸着させることによって、搬送ベルト103と記録紙Pが密着し、搬送ベルト上の熱を効率よく記録紙Pに伝熱することができる。
【0046】
図6は、図2におけるレーザー光照射装置の紙搬送方向に対して真上から見たときの様子を示す説明図である。図6に示すように、レーザー光源104を紙搬送方向に対して垂直方向に複数並べている。例えば、一つのレーザーで、紙全面を光照射する場合、紙の搬送方向以外に、紙搬送方向と垂直方向にレーザーをスキャンさせる必要がある。そのため、定着プロセスに時間がかかるため高速で定着させるのに限界がある。
【0047】
また、レーザーをスキャンさせるには、装置の複雑化、コストアップになる。一方、紙搬送方向と垂直方向にライン上に、並べることで、紙搬送方向と垂直方向にレーザーをスキャンさせる必要がないため、必要最低限の構成で使用することができ、更に、高速で、定着させることが可能である。
【0048】
また、図6は、レーザー光源104の上に高熱伝導材108を介して冷却手段としてのヒートレーン106の受熱部111があり、ヒートレーンの放熱部112は記録紙搬送装置107の内部の紙搬送ベルト103の内側に至っている。図6のヒートレーンは一本の細管を一往復してそれを複数個使用した図であるが、これに限定されるものではなく、図3に示したように、一本の細管113を何回も往復させた構造でもよい。
図2に示すように、搬送ベルト103の内周面側には、搬送ベルト103の温度を検知するための温度検知手段(温度センサ)としてサーミスタ109を設置している。
【0049】
サーミスタ109による検知温度に基づいて、レーザー光源104は、図7に示す定着制御部602によって、その光照射量を制御される。サーミスタ109は、搬送ベルト103の温度もしくは、記録紙Pの温度が適正に温度検知する位置であればこの位置に限定されない。
また、サーミスタ109以外の温度検知手段を使用してもよい。
レーザー光源104から発熱する熱により、未定着トナー画像有する記録紙Pが予備加熱されるとレーザー光を照射する前に記録紙P、及びトナー110が加温される。
したがって、レーザー光で、トナー110を加熱定着する際には、レーザー照射量を抑えることができる。
【0050】
例えば、室温(20℃)において、定着装置のウォームアップ直後に定着動作を行った場合、レーザー光源104による発熱がほとんどないため、記録紙Pの裏面は加熱されない。従って、記録紙Pの表面に存在するトナー110も、ほぼ室温であり、このトナー110を定着させるのに必要なエネルギーは、理論値0.000795J/mm2である。具体的には、例えば、一般的なポリエステルトナーを用いた場合を説明する。トナー110の比熱1.42J/g・℃、比重0.000817g/mm3、トナーの厚み0.016mm、トナー110の充填率0.476(単位体積あたりにトナーの存在する体積)、室温のトナー110を110℃(トナーが溶融するのに必要なトナー温度)で溶融する場合、定着に必要な光照射エネルギーは、0.000795J/mm2(=比熱×比重×充填率×(110℃−20℃)である。
【0051】
一方、記録紙Pを連続通紙し、このときレーザー光源104でエネルギー変換ロスにより生じた熱がヒートレーンを通じて搬送ベルト103に伝熱される。サーミスタ検知温度が40℃、即ち、未定着トナー画像が40℃まで予備加熱されたとき、トナー110を溶融するのに必要な光照射エネルギーは、0.000618J/mm2(=比熱×比重×充填率×(110℃−40℃)である。これは、トナー画像が室温の場合に対して78%(=0.000593/0.000795)の光照射量でよいことになる。
【0052】
ところで、サーミスタ検知温度と未定着トナー画像の温度(ここでは、トナー最下層と紙の界面温度とする。)の関係は、例えば、以下の条件のもとで1次元熱解析を行い、その結果から事前にサーミスタ検知温度とトナー温度の関係を予測することができる。
熱解析の構成および初期条件は、以下の通りである。
【0053】
まず、熱解析に用いる高熱伝導材、搬送ベルトおよび記録紙の構成であるが、高熱伝導材105は、厚さ0.5mmのアルミニウム製であり、その表面に高熱伝導材表層としてPFAを材料とする厚さ0.01mmの層が形成されたものを用いる。搬送ベルト103は、厚さ0.05mmのPI樹脂製である。搬送ベルト103に搬送されるシートは厚さ0.1mmであり、シート上に転写されたトナー層の厚さは0.016mmである。
【0054】
次に、初期条件であるが、トナーおよび記録紙の初期温度は20℃、記録紙の搬送速度は200mm/秒である。そして、高熱伝導材および搬送ベルトの初期温度は、30℃、40℃、50℃の3通りとする。予備加熱時間はいずれも0.4秒である。ここで、予備加熱時間とは、未定着画像を載せた記録紙が、搬送ベルト103に接触してから定着装置40のレーザー光源104によるレーザー照射領域に到達するまでの時間である。
【0055】
図9〜図11は、この発明において、搬送ベルトの予備加熱時間に対するトナー温度の関係を一次元解析した結果を示す第1のグラフである。図9、12、13は、搬送ベルト103の温度検知用サーミスタ109の検知温度、つまり搬送ベルトの初期温度が30℃、40℃、50℃の場合に対応する。搬送ベルト103と記録紙上のトナーの温度との関係については、トナー温度は、少なくとも予備加熱時間0.3秒以上でほぼ搬送ベルトの初期温度と同じになる。よって、予備加熱時間を0.4秒とする前記条件のもとでは、サーミスタ109の検知温度をトナー温度とみなしてよい。すなわち、ヒートレーン106の放熱部112で搬送ベルト103との接触時間を0.3秒以上にすることが望ましく、そうすることでトナーは充分予備加熱されていることになる。つまりプロセス速度S(mm/s)とした時、ヒートレーンの放熱部における最適な紙搬送方向の幅L(図2参照)は、少なくともL=0.3×S以上の幅で接触させておけば、ヒートレーンで発生した熱をトナー部分に充分与えることができる。
【0056】
ただし設計上の理由などで、ヒートレーンの放熱部と搬送ベルト103との接触時間が小さい場合、ヒートレーンの熱が十分に搬送ベルト103に伝熱しないこともある。その場合は、サーミスタ109が検知する温度とトナー110の温度とが異なるため、上記(図9、12、13)の計算結果から温度差を考慮した適正な温度変換テーブルを作成すればよい。
【0057】
上記の理論値を基に、サーミスタ109の検知温度に対するレーザーの光照射量の関係を計算した温度変換テーブルを作成する。そして、サーミスタ109の検知温度に基づいて、前記温度変換テーブルを読み出し、光照射量を決定すれば、必要最低限の光照射量で定着させることができる。なお、上記温度変換テーブルは、後述する図7の記憶部609に記憶される。
以上のようにして計算により温度変換テーブルの値を求める手法は、単なる一例であって、別の方法で前記温度変換テーブルを作成してもよい。
図7は、この発明の画像形成装置を構成する各動作部および制御部ならびに各部間の制御信号の流れを示すブロック図である。
【0058】
図7のブロック図の全体が示す画像形成装置は、たとえば、スキャナとプリンタと周辺機器とを備えた複合機であって、図1の画像形成装置1に対応する。図7の画像形成装置は、画像読取部605、画像処理部606、画像形成部607、定着制御部602、記憶部609、周辺機器制御部608、入力部603および表示部604を備える。
【0059】
画像読取部605は、原稿画像を読み取る。画像処理部606は、読み取った原稿画像を適正な電気信号に変換して画像データを生成する。画像形成部607は、生成された画像データを印刷出力する。定着制御部602は、定着部(図7に図示せず)のレーザー光照射を制御する。記憶部609には、プロセス速度と紙搬送開始信号を検出するアクチュエータの信号を元に印字開始信号を受信してから記録部材が定着装置内のレーザー照射領域までの到達時間が格納される。周辺機器制御部608は、後処理装置であるフィニッシャーやソーターなどの周辺機器を制御する。入力部603および表示部604は、画像形成装置の操作部である。
【0060】
制御部601は、少なくとも以下の制御を行う。まず、画像処理部606から受信した画像情報の印字位置情報をもとに記憶部609に予め記憶されたデータの照合を行う。ここで、印字位置情報は、印刷ジョブに対して、1ページ毎のどの位置に印字すべきかといった指令を指す。そして、印字位置情報と、サーミスタ検知温度情報とを元に温度変換テーブルにて算出したレーザー光出力値を定着制御部602へ送信する。
また、定着制御部602は、受信した印字位置情報と算出したレーザー光の出力値に基づいて、搬送ベルト103を駆動し、さらに、レーザー光を照射する制御を行う。
さらにまた定着制御部602は、記録紙Pの搬送を検出する図示しないアクチュエータの信号を監視する。そして、前記信号に基づいて搬送ベルト103に対して電圧を印加する制御を行う。
【0061】
図8は、この発明の画像形成装置が備える制御部のコピー動作の処理手順を示すフローチャートである。
なお、画像形成装置1の図示しないプリンタドライバの画面からユーザーが印刷指示を行った場合でも、ユーザーの印刷指示信号に基づいて本フローチャートと同様の制御を行う。
【0062】
ユーザーがコピーしたい原稿をスキャナに載置し、若しくは原稿台に載置した後に入力部603の図示しないコピーボタンがユーザーによって押下されると、制御部601は、ユーザーが押下した信号(印刷指示信号)を受信する。そして、前記信号に応答して、例えば、スキャナの画像読取部605に原稿画像を読み取らせるように制御する。そして、画像読取部605が読み取った信号を画像処理部606に画像処理させる。そして、画像処理部606から前述の印字位置情報を受信する。
【0063】
制御部601は、画像処理部606から情報を受信すると、まず受信した情報に印字位置情報が含まれているか否かを判断する(ステップS11)。印字位置情報が含まれていなければ、印刷ジョブの実行でないと判断して何もしない(ステップS11のNo)。一方、受信した情報に印字位置情報が含まれているなら(ステップS11のYes)、制御部601は、記憶部609を参照して印字開始のタイミングを決定する(ステップS13)。また制御部601はサーミスタ109の検知温度を受信する(ステップS15)。
【0064】
そして、受信したサーミスタ109からの検知温度を用いて、あらかじめ作成された温度変換テーブルを参照し(ステップS17)、前記検知温度に対応するレーザー照射量の出力値を決定する(ステップS19)。次に定着制御部602へ決定された出力値及び出力信号を送信し、レーザー光源104を照射する制御を行う(ステップS21)。
【0065】
さらに、定着制御部602は、搬送ベルト103へバイアス電圧を印加する制御を行う(ステップS23)。印刷ジョブの実行中、定着制御部602はレーザー光源104からのレーザー光の照射を制御する(ステップS25)。
印刷ジョブが完了すると(ステップS27)、定着制御部602は、レーザー光源104によるレーザー光の出力を停止させ(ステップS29)、次に、搬送ベルト103へのバイアス電圧の印加をも停止させるように制御する(ステップS31)。
【0066】
なお、定着制御部602は、図示しない記録紙Pの搬送を検出するアクチュエータの信号を監視して、この信号に基づいて紙が搬送されてきたことを認識し、レーザー光源104やバイアス電圧の制御を行ってもよい。例えば、記録紙Pが供給トレイ20から図示しない給紙ローラから給紙されたときから記録紙Pの移動時間を計測し、レーザー照射領域までの到達時間を算出して、レーザー光源104や搬送ベルト103、バイアス電圧印加及び停止を制御してもよい。
【0067】
以上のように、搬送ベルト103(図2)により搬送されてきた未定着トナー画像を有する記録紙Pは、搬送ベルト103と密着し、かつ、印字位置情報に基づいてレーザー光が照射される。通紙動作中には、画像情報から得られた印字位置情報に基づいてレーザー光が照射される。よって、通紙動作中以外、すなわちウォームアップ時、及び待機時は、電力を必要としない。よって、低消費電力の定着装置、及び画像形成装置が実現できる。
【0068】
なお、図8のフローチャートでは、レーザー光源104の照射を停止する為の制御を定着制御部602が制御するものとしたが、特に定着制御部602が制御しなくとも、制御部601からのレーザー光源104を照射する指示信号のみに基づいて、レーザー光源104の照射を制御してもよい。
【0069】
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0070】
1:画像形成装置
20:供給トレイ
30:記録紙搬送手段
31:駆動ローラ
32:アイドリングローラ
33:搬送ベルト
40:定着装置
50:可視像形成ユニット
51:感光体ドラム
52:帯電器
53:レーザー光照射手段
54:現像器
55:転写ローラ
56:クリーナユニット
101、102:テンションローラ
103:搬送ベルト
104:レーザー光源
105、108:高熱伝導材
106:ヒートレーン
107:記録紙搬送装置
109:サーミスタ
110:トナー
111:受熱部
112:放熱部
113:細管
120:帯電ローラ
601:制御部
602:定着制御部
603:入力部
604:表示部
605:画像読取部
606:画像処理部
607:画像形成部
608:周辺機器制御部
609:記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出射し得るレーザー光源と、
トナー画像が転写されたシートを搬送して前記レーザー光源からのレーザー光で照射される照射領域へ導く搬送ベルトと、
前記レーザー光源が発する熱を受ける受熱部と前記搬送ベルトへ熱を供給する放熱部とを有するヒートパイプと、
前記レーザー光源を制御する定着制御部とを備え、
前記定着制御部は、前記照射領域を通過する前記トナー画像にレーザー光を照射するように制御して前記トナー画像を前記シートに定着させ、
前記ヒートパイプは、受熱部で受けた熱を放熱部へ移動させ、
前記搬送ベルトは放熱部から供給された熱で前記シートおよび前記トナー画像を加熱することを特徴とするレーザー定着装置。
【請求項2】
前記ヒートパイプは、自励振動型ヒートパイプである請求項1に記載のレーザー定着装置。
【請求項3】
前記ヒートパイプの放熱部は、前記搬送ベルトの内周面側に配置される請求項1または2に記載のレーザー定着装置。
【請求項4】
前記ヒートパイプの放熱部は、前記搬送ベルトに当接して配置される請求項1〜3の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項5】
前記放熱部は、レーザー光が照射される前記照射領域に前記シートが達する手前の位置に配置される請求項1〜4の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項6】
前記搬送ベルトの温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記定着制御部は、前記温度センサにより検出された搬送ベルトの温度に応じて前記レーザー光源の照射量を制御する請求項1〜5の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項7】
搬送ベルトに前記シートを静電吸着させるための電圧を搬送ベルトに印加する電圧印加部をさらに備える請求項1〜6の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項8】
前記レーザー光源は、前記シートが搬送される方向と直行するシート幅方向に複数のレーザー素子が並べられてなる請求項1〜7の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項9】
前記放熱部は、前記シートが搬送される方向の長さをLミリメートル、前記シートの搬送速度をVミリメートル/秒とするとき、次の式、
L≧V×0.3
を満たす長さLで搬送ベルトに当接するよう配置される請求項1〜8の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項10】
前記定着制御部は、前記照射領域を前記シートが通過するときは前記レーザー光源にレーザー光を照射させ、前記シートが前記領域にないときは前記レーザー光源にレーザー光を照射させないように制御する請求項1〜9の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一つに記載のレーザー定着装置を備えてなる画像形成装置。
【請求項1】
レーザー光を出射し得るレーザー光源と、
トナー画像が転写されたシートを搬送して前記レーザー光源からのレーザー光で照射される照射領域へ導く搬送ベルトと、
前記レーザー光源が発する熱を受ける受熱部と前記搬送ベルトへ熱を供給する放熱部とを有するヒートパイプと、
前記レーザー光源を制御する定着制御部とを備え、
前記定着制御部は、前記照射領域を通過する前記トナー画像にレーザー光を照射するように制御して前記トナー画像を前記シートに定着させ、
前記ヒートパイプは、受熱部で受けた熱を放熱部へ移動させ、
前記搬送ベルトは放熱部から供給された熱で前記シートおよび前記トナー画像を加熱することを特徴とするレーザー定着装置。
【請求項2】
前記ヒートパイプは、自励振動型ヒートパイプである請求項1に記載のレーザー定着装置。
【請求項3】
前記ヒートパイプの放熱部は、前記搬送ベルトの内周面側に配置される請求項1または2に記載のレーザー定着装置。
【請求項4】
前記ヒートパイプの放熱部は、前記搬送ベルトに当接して配置される請求項1〜3の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項5】
前記放熱部は、レーザー光が照射される前記照射領域に前記シートが達する手前の位置に配置される請求項1〜4の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項6】
前記搬送ベルトの温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記定着制御部は、前記温度センサにより検出された搬送ベルトの温度に応じて前記レーザー光源の照射量を制御する請求項1〜5の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項7】
搬送ベルトに前記シートを静電吸着させるための電圧を搬送ベルトに印加する電圧印加部をさらに備える請求項1〜6の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項8】
前記レーザー光源は、前記シートが搬送される方向と直行するシート幅方向に複数のレーザー素子が並べられてなる請求項1〜7の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項9】
前記放熱部は、前記シートが搬送される方向の長さをLミリメートル、前記シートの搬送速度をVミリメートル/秒とするとき、次の式、
L≧V×0.3
を満たす長さLで搬送ベルトに当接するよう配置される請求項1〜8の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項10】
前記定着制御部は、前記照射領域を前記シートが通過するときは前記レーザー光源にレーザー光を照射させ、前記シートが前記領域にないときは前記レーザー光源にレーザー光を照射させないように制御する請求項1〜9の何れか一つに記載のレーザー定着装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一つに記載のレーザー定着装置を備えてなる画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−42747(P2012−42747A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184287(P2010−184287)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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