説明

レーザー彫刻印刷版の製造方法

【課題】レーザー彫刻印刷版を製造するレーザー彫刻工程において発生する分解生成物の除去方法の提供。
【解決手段】シート状あるいは円筒状に成形された少なくとも1層以上の感光性樹脂硬化物層を有するレーザー彫刻印刷原版表面をレーザー彫刻し、該表面に凹凸パターンを有するレーザー彫刻印刷版を製造する方法であって、レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を除去する方法が、該分解生成物をオゾン分子に接触させる工程を含む方法であることを特徴とするレーザー彫刻印刷版の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザー彫刻印刷版を製造するレーザー彫刻工程において発生する分解生成物の除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
段ボール、紙器、紙袋、軟包装用フィルムなどの包装材、壁紙、化粧板などの建装材、ラベル印刷などに用いられるフレキソ印刷は各種の印刷方式の中でその比重を高めている。これに用いる印刷版の製作には、通常、感光性樹脂が用いられることが多く、液状の樹脂、又はシート状に成形された固体樹脂板を用い、フォトマスクを感光性樹脂上に置き、マスクを通して光を照射し架橋反応を起こさせた後、非架橋部分を現像液で洗い落とすという方法が用いられてきた。近年、感光性樹脂表面にブラックレーヤーという薄い光吸収層を設け、これにレーザー光を照射し感光性樹脂板上に直接マスク画像を形成後、そのマスクを通して光を照射し架橋反応を起こさせた後、光の非照射部分の非架橋部分を現像液で洗い落とす、いわゆるフレキソCTP(Computer to Plate)という技術が開発され、印刷版製作の効率改善効果から、採用が進みつつある。しかしながら、この技術も現像工程が残るなど、効率改善効果も限られたものであり、レーザーを使って直接印刷原版上にレリーフ画像を形成し、しかも現像不要である技術の開発が求められている。
【0003】
その方法として直接レーザーで印刷原版を彫刻する方法が挙げられる。この方法で凸版印刷版やスタンプを作製することは既に行なわれており、それに用いられる材料も知られている。レーザー彫刻法で用いられている一般的なレーザーは、出力の強さの観点から炭酸ガスレーザー等の赤外線レーザーが主であり、レーザーの熱により樹脂が溶融あるいは分解しレーザーが照射された部位が除去され凹パターンが形成される。このレーザー彫刻工程において分解生成物が発生する。一般的なレーザー彫刻装置においては、微小に絞り込まれたレーザービームを照射し加工される部分の近傍に真空吸引される排気口が設置され、集塵機および活性炭フィルターあるいはゼオライトを表面に付着させたフィルター類を通して大気に放出される処理方法が採用されている。しかしながら、レーザー彫刻装置に付属する一般的な集塵機と活性炭フィルターの組み合わせのみでは、多種多様な分解生成物を効率的に除去するには不十分な状況である。
【0004】
近年、レーザー彫刻される材料も多様化しつつあり、従来のゴム系材料に加えて、感光性樹脂組成物を光硬化させて得られるレーザー彫刻印刷原版をレーザー彫刻することも試みられている。したがって、レーザー彫刻工程で発生する分解生成物も多種類の化合物が存在するため、活性炭フィルターのみでは吸着除去が難しい場合が発生する。
レーザー彫刻印刷版の製造プロセスだけでなく、印刷プロセス、塗装プロセスをはじめ、極めて多くのプロセスにおいて、揮発性有機化合物(VOC)の問題は大きく取り上げられつつあり、該揮発性有機化合物の除去方法が提案されている。例えば、排気ガスを500℃以上の高温で燃焼させる方法、200〜300℃に加熱した触媒表面と接触させる処理方法、プラズマ中で処理する方法等を挙げることができる。しかしながら、これらの方法はランニングコストが高く、使用する触媒がレーザー彫刻で発生する分解生成物で被毒され処理効率を大幅に低下させる等の問題を有していた。また、文献1(「新しい脱臭技術」、工業調査会)にも最近の脱臭技術が紹介されているが、発生する臭気の種類により効果的な処理方法が大きく異なるため、発生する臭気を限定して対応することが必要となる。
【0005】
近年、レーザー彫刻法に供される材料として感光性樹脂組成物を光硬化させて形成したレーザー彫刻用印刷原版が提案されているが、レーザー彫刻時に発生する分解生成物が、従来用いられてきたゴム系材料とは大きく異なっており、その対処方法の確立が望まれている。
そのため、感光性樹脂硬化物をレーザー彫刻する工程において発生する多種類の、しかも感光性樹脂硬化物に特有の分解生成物を効率良く吸着除去できる処理方法が求められていた。
【非特許文献1】國部 進著、新しい脱臭技術、工業調査会、1981年10月5日、2章脱臭システムの概要
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を効率良く除去できる、レーザー彫刻印刷版の製造方法の提供。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討し、シート状あるいは円筒状に成形された少なくとも1層以上の感光性樹脂硬化物層を有するレーザー彫刻印刷原版表面をレーザー彫刻し、該表面に凹凸パターンを有するレーザー彫刻印刷版を製造する方法であって、レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を除去する方法が、該分解生成物をオゾン分子に接触させる工程、および/又は前記分解生成物を、イオン性官能基を有する高分子化合物に接触させる工程、および/又は前記分解生成物をセラミックス表面に接触させる工程を含む方法が、レーザー彫刻工程において発生する前記分解生成物の除去方法として極めて効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は下記の通りである。
1. シート状あるいは円筒状に成形された少なくとも1層以上の感光性樹脂硬化物層を有するレーザー彫刻印刷原版表面をレーザー彫刻し、該表面に凹凸パターンを有するレーザー彫刻印刷版を製造する方法であって、レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を除去する方法が、該分解生成物をオゾン分子に接触させる工程を含む方法であることを特徴とするレーザー彫刻印刷版の製造方法。
2. レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を除去する方法が、更に、前記分解生成物を、イオン性官能基を有する高分子化合物に接触させる工程を含む方法であることを特徴とする1.に記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
3. レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を除去する方法が、更に、前記分解生成物をセラミックス表面に100℃以下の温度条件で接触させる工程を含む方法であることを特徴とする1.又は2.に記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
【0009】
4. 分解生成物と接触させるオゾン分子の発生方法が、紫外線ランプ式、放電式、電気分解式の中から選択される少なくとも1種類の方式であることを特徴とする1.から3.のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
5. 分解生成物と接触させるオゾン分子の発生量が、1時間あたり0.1g以上50g以下であることを特徴とする1.から4.のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
6. 更に、余剰のオゾン分子を除去するために、該余剰オゾン分子と金属酸化物あるいは金属炭酸塩化合物とを接触させる工程を含み、大気中に放出される排気口におけるオゾン濃度が0.1ppm以下であることを特徴とする1.から5.のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
7. イオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン基、スルホニル基から選ばれる少なくとも1種類のアニオン性官能基と、アミノ基、アンモニウム基、ピリジニウム基から選ばれる少なくとも1種類のカチオン性官能基を有することを特徴とする2.から6.のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
【0010】
8. 少なくとも1層以上の感光性樹脂硬化物層を有するレーザー彫刻印刷原版において、レーザー光を照射し表面に凹凸パターンを形成するための感光性樹脂硬化物層が、20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させて形成されていることを特徴とする1.から7.のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
9. セラミックスが、アルミニウム、珪素、マグネシウム、チタン、タンタル、タングステン、ニッケル、クロム、バリウム、ニオブ、鉛、銀、白金、ロジウム、ルテニウムからなる群より選択される金属元素を含有する粘土鉱物を含むことを特徴とする3.に記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、感光性樹脂硬化物をレーザーで直接加工するレーザー彫刻工程において発生する分解生成物を、効率良く除去できるレーザー彫刻印刷版の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、さらに詳細に本発明の好ましい実施態様を説明する。
本発明においてレーザー彫刻工程で用いる材料は、シート状あるいは円筒状に成形された少なくとも1層以上の感光性樹脂硬化物層を有するレーザー彫刻印刷原版であり、前記感光性樹脂硬化物層は、レーザー光により直接彫刻される。
本発明では、レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を除去する方法が、該分解生成物をオゾン分子に接触させる工程を有することが必要である。分解生成物とオゾン分子を接触させる方法として、前記分解生成物と気体中のオゾン分子と接触させる方法、前記分解生成物と液体中に溶解したオゾン分子と接触させる方法等を挙げることができる。オゾン分子と接触させることにより、分解生成物中の特にスチレン、ベンゼン等の芳香族化合物、1,3−ブタジエン等の低分子不飽和炭化水素化合物等の除去に極めて有効である。
【0013】
本発明における分解生成物とは、レーザー光のエネルギーにより樹脂が分解して発生した化合物、あるいは分解して発生した化合物が更に酸素等の化合物と反応して生成した化合物を言う。
分解生成物と接触させるオゾン分子の発生方法は、紫外線ランプ式、放電式、電気分解式の中から選択される少なくとも1種類の方式であることが好ましい。高濃度のオゾン分子を効率的に発生させる方法としては、放電式あるいは電気分解式が好ましい。
分解生成物と接触させるオゾン分子の発生量が、1時間あたり0.1g以上50g以下であることが好ましい。オゾン分子の発生量がこの範囲であれば、分解生成物中の特にスチレン、ベンゼン等の芳香族化合物、1,3−ブタジエン等の低分子不飽和炭化水素化合物等の除去に極めて有効であり、余剰のオゾン分子を除去し易い。より好ましい範囲は1時間あたり1g以上30g以下、更に好ましくは1時間あたり5g以上20g以下である。
【0014】
本発明のオゾン分子濃度は、高濃度のオゾン分子濃度測定法を用いることが好ましく、紫外線吸収法を用いて測定するものとする。この方法はオゾン分子が紫外線領域の254nm付近に最大吸収帯を持つことを利用して濃度を求める方法である。この方法による濃度計は、光源(紫外線ランプ)、試料セル、検出器、ゼロガス発生器、電磁弁などで構成されており、試料セルにオゾン分子を含む気体と含まない気体を交互に導入し、それぞれの光線透過率を測定することによりオゾン分子の濃度を測定する。また、オゾン分子の発生量は、紫外線吸収法を用いて測定したオゾン分子濃度と気体の流量から求める。
【0015】
また、レーザー彫刻時に発生する分解生成物との接触で余った余剰オゾン分子は、金属酸化物あるいは金属炭酸塩化合物と接触することにより除去することが好ましい。金属酸化物の具体例としては、酸化ニッケル、二酸化マンガン、酸化銅(I)、酸化鉄(III)、アルミナ、シリカゲル、アルミナシリカゲル等の化合物を挙げることができる。また、金属炭酸塩化合物の具体例として、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、炭酸銅等の化合物を挙げることができる。更に、前記金属酸化物、金属炭酸塩化合物を単独あるいは混合して用いることもでき、また、これらの化合物と活性炭を混合したものを用いることも可能である。この処理により、大気中に放出されるオゾン分子の濃度は、0.1ppm以下とすることが可能である。余剰のオゾン分子を除去するために用いる金属酸化物の量は、分解生成物を含有するガスの流量に強く依存するが、流量が0.1から10m/分であれば、10から200kg程度の量が好ましい。
【0016】
更に、本発明ではレーザー彫刻時に発生する分解生成物を、イオン性官能基を有する高分子化合物に接触させることが好ましい。前記分解生成物を、イオン性官能基を有する高分子化合物と接触させる方法として、該イオン性官能基を有する高分子化合物を溶解する液体中あるいは分散させた分散液中を、前記分解生成物を含有するガスを通過させる方法、該イオン性官能基を有する高分子化合物を溶解する液体あるいは分散させた分散液を、前記分解生成物を含有するガスに噴霧する方法などを挙げることができる。効率的にはスクラバーユニット等の装置を用いて、該イオン性官能基を有する高分子化合物を溶解する液体あるいは分散させた分散液を噴霧する方法が好ましい。イオン性官能基を有する高分子化合物を溶解あるいは分散する溶剤としては、水が好ましい。イオン性官能基を有する高分子化合物と接触させることにより、前記分解生成物の中で、特にアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類を除去するのに極めて有効である。
【0017】
本発明で用いるイオン性官能基を有する高分子化合物において、イオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン基、スルホニル基から選ばれる少なくとも1種類のアニオン性官能基と、アミノ基、アンモニウム基、ピリジニウム基から選ばれる少なくとも1種類のカチオン性官能基を有することが好ましい。具体的なアニオン性官能基を有するモノマー単位として、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等を挙げることができる。また、具体的なカチオン性官能基を有するモノマー単位として、N,N‘−ジメチル−3,5−ジメチレンピペリジウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンノニウムクロリド、4−ビニルピリジン、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミド、メタクリルアミド等の化合物を挙げることができる。
【0018】
イオン性官能基を有する高分子化合物の数平均分子量は、特に限定するものではないが、10万以上5000万以下、より好ましくは100万以上2000万以下である。数平均分子量が10万以上5000万以下であれば、該イオン性官能基を有する高分子化合物を溶解した溶液、あるいは分散させた分散液が極度に高粘度にならずに使用できる。
レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を除去する方法が、前記分解生成物とオゾン分子を接触させる工程、および前記分解生成物とイオン性官能基を有する高分子化合物を接触させる工程を含む場合、余剰オゾンの除去工程は、前記分解生成物とイオン性官能基を有する高分子化合物とを接触させる工程の前に設定するか、あるいは前記分解生成物とイオン性官能基を有する高分子化合物とを接触させる方法を、前記分解生成物とオゾン分子とを接触させる工程の前に設定することが好ましい。余剰のオゾンにより前記イオン性官能基を有する高分子化合物が分解、変性等の影響を避けることができる。
【0019】
更に、レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を除去する方法が、前記分解生成物をセラミックス表面に100℃以下の温度条件で接触させる工程を含むことが好ましく、50℃以下がより好ましい。この処理により、分解生成物中の特に脂肪族炭化水素化合物を効果的に除去することができる。使用するセラミックスとして、アルミニウム、珪素、マグネシウム、チタン、タンタル、タングステン、ニッケル、クロム、バリウム、ニオブ、鉛、銀、白金、ロジウム、ルテニウムから選択される金属元素を、前記セラミックスが含有する全金属元素の40wt%以上100wt%以下含む化合物でることが好ましい。分解生成物は、前記セラミックス中に吸着し、化合物によってはセラミックス表面で分解し、更に低分子化合物に変化する場合もある。
【0020】
本発明においてレーザー彫刻する感光性樹脂硬化物層は、感光性樹脂組成物をシート状あるいは円筒状に成形した後、光硬化させて形成する。該感光性樹脂組成物は、樹脂(a)、重合性不飽和基を有する有機化合物(b)を含有することが好ましい。
本発明で用いる樹脂(a)は、数平均分子量が1000以上20万以下であることが好ましい。樹脂(a)の数平均分子量のより好ましい範囲は、2000以上10万以下、更に好ましい範囲は5000以上5万以下である。樹脂(a)の数平均分子量は1000以上であれば、後に架橋して作製する印刷原版が強度を保ち、この原版から作製したレリーフ画像は強く、印刷版などとして用いる場合、繰り返しの使用にも耐えられる。また、樹脂(a)の数平均分子量が20万以下であれば、感光性樹脂組成物の成形加工時の粘度が過度に上昇することもなく、シート状、あるいは円筒状のレーザー彫刻印刷原版を作製することができる。ここで言う数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。また、分子内に重合性不飽和基を有することが好ましい。
【0021】
本発明における「重合性不飽和基」とは、ラジカルまたは付加重合反応に関与する重合性不飽和基である。特に好ましい樹脂(a)として1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有するポリマーを挙げることができる。1分子あたり平均で0.7以上であれば、本発明の樹脂組成物より得られる印刷原版の機械強度に優れ、レーザー彫刻時にレリーフ形状が崩れ難くなる。さらにその耐久性も良好で、繰り返しの使用にも耐えらるのものとなり好ましい。印刷原版の機械強度を考慮すると、樹脂(a)の重合性不飽和基は1分子あたり0.7以上が好ましく、1を越える量が更に好ましい。本発明で用いる樹脂(a)において、重合性不飽和基の位置は、高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や高分子主鎖中や側鎖中に直接結合していることが好ましい。樹脂(a)1分子に含まれる重合性不飽和基の数の平均は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)による分子構造解析法で求めることができる。
【0022】
樹脂(a)を製造する方法としては、例えば直接、重合性の不飽和基をその分子末端に導入したものを用いても良いが、別法として、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、アルコキシカルボニル基などの反応性基を複数有する数千程度の分子量の上記成分の反応性基と結合しうる基を複数有する結合剤(例えば水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネートなど)を反応させ、分子量の調節、及び末端の結合性基への変換を行った後、この末端結合性基と反応する基と重合性不飽和基を有する有機化合物と反応させて末端に重合性不飽和基を導入する方法などが好適にあげられる。
【0023】
用いる樹脂(a)としては、液状化し易い樹脂や分解し易い樹脂が好ましい。分解し易い樹脂としては、分子鎖中に分解し易いモノマー単位としてスチレン、α−メチルスチレン、α−メトキシスチレン、アクリルエステル類、メタクリルエステル類、エステル化合物類、エーテル化合物類、ニトロ化合物類、カーボネート化合物類、カルバモイル化合物類、ヘミアセタールエステル化合物類、オキシエチレン化合物類、脂肪族環状化合物類等が含まれていることが好ましい。特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート類、脂肪族カルバメート類、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ニトロセルロース、ポリオキシエチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロヘキサジエン水添物、あるいは分岐構造の多いデンドリマー等の分子構造を有するポリマーは、分解し易いものの代表例である。
【0024】
また、分子鎖中に酸素原子を多数含有するポリマーが分解性の観点から好ましい。これらの中でも、カーボネート基、カルバメート基、メタクリル基をポリマー主鎖中に有する化合物は、熱分解性が高く好ましい。例えば、(ポリ)カーボネートジオールや(ポリ)カーボネートジカルボン酸を原料として合成したポリエステルやポリウレタン、(ポリ)カーボネートジアミンを原料として合成したポリアミドなどを熱分解性の良好なポリマーの例として挙げることができる。これらのポリマー主鎖、側鎖に重合性不飽和基を含有しているものであっても構わない。特に、末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の反応性官能基を有する場合には、主鎖末端に重合性不飽和基を導入することも容易である。
【0025】
樹脂(a)の例として、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン類等の分子主鎖あるいは側鎖に重合性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。また、重合性不飽和を有しない高分子化合物を出発原料として、置換反応、脱離反応、縮合反応、付加反応等の化学反応により重合性不飽和基を分子内に導入した高分子化合物を挙げることもできる。
【0026】
重合性不飽和基を有しない高分子化合物の例としてポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニルポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルエーテル等のC-C連鎖高分子の他、ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル類、ポリフェニレンチオエーテル等のポリチオエーテル類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド、ポリジアルキルシロキサン等の高分子化合物、或いはこれらの高分子化合物の主鎖にヘテロ原子を有する高分子化合物、複数種のモノマー成分から合成されたランダム共重合体、ブロック共重合体を挙げることができる。更に、分子内に重合性不飽和基を導入した高分子化合物を複数種混合して用いることもできる。
【0027】
特にフレキソ印刷版用途のように柔軟なレリーフ画像が必要な場合には、樹脂(a)として、一部、ガラス転移温度が20℃以下の液状樹脂、さらに好ましくはガラス転移温度0℃以下の液状樹脂を用いることが特に好ましい。このような液状樹脂として、例えばポリエチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポイソプレン等の炭化水素類、アジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン類、(メタ)アクリル酸及び/またはその誘導体の重合体及びこれらの混合物やコポリマー類を用いて合成され、分子内に重合性不飽和基を有する化合物を用いることができる。その含有量は、樹脂(a)全体に対して30wt%以上含有することが好ましい。特に耐候性の観点からポリカーボネート構造を有する不飽和ポリウレタン類が好ましい。
【0028】
ここで言う液状樹脂とは、容易に流動変形し、かつ冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する高分子体を意味し、外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有するエラストマーに対応する言葉である。樹脂(a)が20℃において液状樹脂である場合は、感光性樹脂組成物も20℃において液状である。これから得られるレリーフ画像作成用原版をシート状、もしくは円筒状に成形する際、良好な厚み精度や寸法精度を得ることができる。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくは、20℃における粘度が10Pa・s以上10kPa・s以下である。さらに好ましくは、50Pa・s以上5kPa・s以下である。粘度が10Pa・s以上であれば、作製される印刷原版の機械的強度が十分であり、円筒状印刷原版に成形する際であっても形状を保持し易く、加工し易い。粘度が10kPa・s以下であれば、常温でも変形し易く、加工が容易である。シート状あるいは円筒状の印刷原版に成形し易く、プロセスも簡便である。
【0030】
特に版厚精度の高い円筒状印刷原版を得るためには、円筒状支持体上に液状感光性樹脂層を形成する際に、該感光性樹脂組成物が重力により液ダレ等の現象を起こさないように粘度が100Pa・s以上が好ましく、より好ましくは200Pa・s以上、更に好ましくは500Pa・s以上である。また、本発明で用いる感光性樹脂組成物が特に20℃において液状である場合、チキソトロピー性を有することが好ましい。特に円筒状支持体状に感光性樹脂組成物層を形成する際に、重力により液ダレを起こすことなく、所定の厚さを保持できる。
【0031】
本発明で用いる有機化合物(b)は、数平均分子量が1000未満の重合性不飽和基を有した化合物である。樹脂(a)との希釈のし易さから数平均分子量は1000以下が好ましい。重合性不飽和基の定義は、樹脂(a)の箇所でも記載したように、ラジカルまたは付加重合反応に関与する重合性不飽和基である。
【0032】
有機化合物(b)の具体例としては、ラジカル反応性化合物として、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリールアルコール、アリールイソシアネート等のアリール化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等があげられるが、その種類の豊富さ、価格、レーザー光照射時の分解性等の観点から(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましい例である。
【0033】
前記化合物の誘導体の例としては、シクロアルキル−、ビシクロアルキル−、シクロアルケン−、ビシクロアルケン−などの脂環族、ベンジル−、フェニル−、フェノキシ−、フルオレン−などの芳香族、アルキル−、ハロゲン化アルキル−、アルコキシアルキル−、ヒドロキシアルキル−、アミノアルキル−、テトラヒドロフルフリル−、アリル−、グリシジル−、アルキレングリコール−、ポリオキシアルキレングリコール−、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコール−やトリメチロールプロパン等の多価アルコールのエステル、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン等のポリシロキサン構造を有する化合物などがあげられる。また、窒素、硫黄等の元素を含有した複素芳香族化合物であっても構わない。
【0034】
また、開環付加反応するエポキシ基を有する化合物としては、種々のジオールやトリオールなどのポリオールにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物、分子中のエチレン結合に過酸を反応させて得られるエポキシ化合物などを挙げることができる。
具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドが付加した化合物のジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(カプロラクトン)ジオールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、エポキシ変性シリコーンオイル(信越化学工業社製、商標名「HF−105」)を挙げることができる。
【0035】
これら重合性不飽和基を有する有機化合物(b)はその目的に応じて1種若しくは2種以上のものを選択できる。例えば印刷版として用いる場合、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤に対する膨潤を押さえるために用いる有機化合物として長鎖脂肪族、脂環族または芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましい。
樹脂組成物より得られる印刷原版の機械強度を高めるためには、有機化合物(b)としては脂環族または芳香族の誘導体が少なくとも1種類以上有することが好ましく、この場合、有機化合物(b)の全体量の20wt%以上であることが好ましく、更に好ましくは50wt%以上である。また、前記芳香族の誘導体として、窒素、硫黄等の元素を有する芳香族化合物であっても構わない。
【0036】
印刷版の反撥弾性を高めるため、例えば特開平7−239548号に記載されているようなメタクリルモノマーを使用するとか、公知の印刷用感光性樹脂の技術知見等を利用して選択することができる。
樹脂(a)あるいは有機化合物(b)が、分子鎖中に存在する酸素原子あるいは窒素原子に対しα位に存在する水素原子を有する化合物、チオールのような硫黄原子に直接結合している水素原子を有する化合物を、感光性樹脂組成物全体量の少なくとも20wt%以上含有することが好ましい。より好ましくは40wt%以上である。前記酸素原子の由来原子団としては、アルコール、エーテル、エステル、カーボネート等を挙げることができ、また前記窒素原子の由来原子団としてはウレタン、ウレア、アミド等を挙げることができる。
【0037】
感光性樹脂組成物を光もしくは電子線の照射により架橋して印刷版などとしての物性を発現させるが、その際に重合開始剤を添加することができる。重合開始剤は一般に使用されているものから選択でき、例えば高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」1986年培風館発行、に例示されているラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合の開始剤等が使用できる。また、光重合開始剤を用いて光重合により架橋を行なうことは、感光性樹脂組成物の貯蔵安定性を保ちながら、生産性良く印刷原版を生産出来る方法として有用であり、その際に用いる開始剤も公知のものが使用できる。ラジカル重合反応を誘起させる光重合開始剤としては、水素引き抜き型光重合開始剤(d)と崩壊型光重合開始剤(e)が、特に効果的な光重合開始剤として用いられる。
【0038】
水素引き抜き型光重合開始剤(d)として、特に限定するものではないが、芳香族ケトンを用いることが好ましい。芳香族ケトンは光励起により効率良く励起三重項状態になり、この励起三重項状態は周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が提案されている。生成したラジカルが光架橋反応に関与するものと考えられる。
本発明で用いる水素引き抜き型光重合開始剤(d)として励起三重項状態を経て周囲の媒体から水素を引き抜きてラジカルを生成する化合物であれば何でも構わない。芳香族ケトンとして、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、アントラキノン類を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。
【0039】
ベンゾフェノン類とは、ベンゾフェノンあるいはその誘導体を指し、具体的には3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等である。ミヒラーケトン類とはミヒラーケトンおよびその誘導体をいう。キサンテン類とはキサンテンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をいう。チオキサントン類とは、チオキサントンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をさし、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、クロロチオキサントン等を挙げることができる。アントラキノン類とはアントラキノンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基等で置換された誘導体をいう。
水素引き抜き型光重合開始剤(d)の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.5wt%以上5wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、液状感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物表面の硬化性は充分に確保でき、また、退候性を確保することができる。
【0040】
崩壊型光重合開始剤(e)とは、光吸収後に分子内で開裂反応が発生し活性なラジカルが生成する化合物を指し、特に限定するものではない。
具体的には、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アゾ化合物類、有機イオウ化合物類、ジケトン類等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、「感光性高分子」(講談社、1977年出版、頁228)に記載の化合物を挙げることができる。2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等を挙げることができる。アセトフェノン類としては、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等を挙げることができる。
【0041】
アシルオキシムエステル類としては、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等を挙げることができる。
アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等を挙げることができる。有機イオウ化合物としては、芳香族チオール、モノおよびジスルフィド、チウラムスルフィド、ジチオカルバメート、S−アシルジチオカルバメート、チオスルホネート、スルホキシド、スルフェネート、ジチオカルボネート等を挙げることができる。ジケトン類としては、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート等を挙げることができる。
【0042】
崩壊型光重合開始剤(e)の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物内部の硬化性は充分に確保できる。
【0043】
水素引き抜き型光重合開始剤(d)として機能する部位と崩壊型光重合開始剤(e)として機能する部位を同一分子内に有する化合物を、光重合開始剤として用いることもできる。α−アミノアセトフェノン類を挙げることができる。例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、下記一般式(1)で示される化合物を挙げることができる。
【0044】
【化1】

【0045】
(式中、Rは各々独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。また、Xは炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
水素引き抜き型光重合開始剤(d)として機能する部位と崩壊型光重合開始剤(e)として機能する部位を同一分子内に有する化合物の添加量としては、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。添加量がこの範囲であれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合であっても、硬化物の機械的物性は充分に確保できる。
【0046】
また、光を吸収して酸を発生することにより、付加重合反応を誘起させる光重合開始剤を用いることもできる。例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の光カチオン重合開始剤、あるいは光を吸収して塩基を発生する重合開始剤などが挙げられる。これらの光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下の範囲が好ましい。
【0047】
感光性樹脂組成物には無機多孔質体(c)を添加することが好ましい。無機多孔質体(c)とは、粒子中に微小細孔を有する、あるいは微小な空隙を有する無機粒子であり、レーザー彫刻において多量に発生する粘稠性の液状カスを吸収除去するための添加剤であり、版面のタック防止効果も有する。無機多孔質体(c)は粘稠な液状カスの除去を最大の目的として添加するものであり、数平均粒子径、比表面積、平均細孔径、細孔容積、灼熱減量がその性能に大きく影響する。
【0048】
本発明の無機多孔質体(c)は数平均粒径が0.1〜100μmであることが好ましい。より好ましい平均粒子径の範囲は、0.5〜20μmであり、更に好ましい範囲は3〜10μmである。無機多孔質体(c)の平均粒子径は、レーザー散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した値である。
本発明の無機多孔質体(c)の比表面積の範囲は、10m/g以上1500m/g以下であることが好ましい。より好ましい範囲は、100m/g以上800m/g以下である。本発明の比表面積は、−196℃における窒素の吸着等温線からBET式に基づいて求められる。
【0049】
本発明の無機多孔質体(c)の平均細孔径は、レーザー彫刻時に発生する液状カスの吸収量に極めて大きく影響を及ぼす。平均細孔径の好ましい範囲は、1nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上200nm以下、更に好ましくは2nm以上50nm以下である。平均細孔径が1nm以上であれば、レーザー彫刻時に発生する液状カスの吸収性が確保でき、1000nm以下である場合、粒子の比表面積が大きく液状カスの吸収量を十分に確保できる。平均細孔径が1nm未満の場合、液状カスの吸収量が少ない理由については明確になっていないが、液状カスが粘稠性であるため、ミクロ孔に入り難く吸収量が少ないためではないかと推定している。
【0050】
平均細孔径は、窒素吸着法を用いて測定した値である。平均細孔径が2〜50nmのものは特にメソ孔と呼ばれ、メソ孔を有する多孔質粒子が液状カスを吸収する能力が極めて高い。本発明の細孔径分布は、−196℃における窒素の吸着等温線から求められる。
無機多孔質体(c)の細孔容積は、0.1ml/g以上10ml/g以下、より好ましくは0.2ml/g以上5ml/g以下である。細孔容積が0.1ml/g以上の場合、粘稠性液状カスの吸収量は十分であり、また10ml/g以下の場合、粒子の機械的強度を確保することができる。本発明において細孔容積の測定には、窒素吸着法を用いる。本発明の細孔容積は、−196℃における窒素の吸着等温線から求められる。
【0051】
本発明において液状カス吸着量を評価する指標として、吸油量がある。これは、無機多孔質体(c)100gが吸収する油の量で定義する。本発明で用いる無機多孔質体(c)の吸油量の好ましい範囲は、10ml/100g以上2000ml/100g以下、より好ましい範囲は50ml/100g以上1000ml/100g以下である。吸油量が10ml/100g以上であれば、レーザー彫刻時に発生する液状カスの除去が十分であり、また2000ml/100g以下であれば、無機多孔質体(c)の機械的強度を十分に確保できる。吸油量の測定は、JIS−K5101にて行った。
【0052】
無機多孔質体(c)の粒子形状は特に限定するものではなく、球状、扁平状、針状、無定形、あるいは表面に突起のある粒子などを使用することができる。特に耐磨耗性の観点からは、球状粒子が好ましい。また、粒子の内部が空洞になっている粒子、シリカスポンジ等の均一な細孔径を有する球状顆粒体など使用することも可能である。特に限定するものではないが、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス等を挙げることができる。また、層状粘土化合物などのように、層間に数nm〜100nmの空隙が存在するものについては、細孔径を定義できないため、本発明においては層間に存在する空隙の間隔を細孔径と定義する。
【0053】
本発明において、これらの無機多孔質体(c)は1種類もしくは2種類以上のものを選択でき、無機多孔質体(c)を添加することによりレーザー彫刻時の液状カスの発生抑制、及びレリーフ印刷版のタック防止等の改良が有効に行われる。
本発明の感光性樹脂組成物における樹脂(a)、有機化合物(b)、及び無機多孔質体(c)の割合は、通常、樹脂(a)100重量部に対して、有機化合物(b)は5〜200重量部が好ましく、20〜100重量部の範囲がより好ましい。又、無機多孔質体(c)は1〜100重量部が好ましく、2〜50重量部の範囲がより好ましい。更に好ましい範囲は、2〜20重量部である。
【0054】
有機化合物(b)の割合が、上記の範囲より小さい場合、得られる印刷版などの硬度と引張強伸度のバランスがとりにくいなどの不都合を生じやすく、上記の範囲より大きい場合には架橋硬化の際の収縮が大きくなり、厚み精度が悪化する傾向がある。
その他、本発明に用いられる樹脂組成物には用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを添加することができる。
【0055】
感光性樹脂組成物をシート状、もしくは円筒状に成形する方法は、既存の樹脂の成形方法を用いることができる。例えば、注型法、ポンプや押し出し機等の機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法等が例示できる。その際、樹脂の性能を落とさない範囲で加熱しながら成形を行なうことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などをほどこしても良い。
通常はPETやニッケルなどの素材からなるバックフィルムといわれる下敷きの上に成形される場合が多いが、直接印刷機のシリンダー上に成形する場合などもありうる。また、繊維強化プラスチック(FRP)製、プラスチック製あるいは金属製の円筒状支持体を用いることもできる。円筒状支持体は軽量化のために一定厚みで中空のものを使用することができる。バックフィルムあるいは円筒状支持体の役割は、印刷原版の寸法安定性を確保することである。したがって、寸法安定性の高いものを選択する必要がある。
【0056】
線熱膨張係数を用いて評価すると、好ましい材料の上限値は100ppm/℃以下、更に好ましくは70ppm/℃以下である。材料の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビスマレイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンチオエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂からなる液晶樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0057】
本発明で用いるバックフィルムあるいは円筒状支持体の表面に物理的、化学的処理を行うことにより、感光性樹脂組成物層あるいは接着剤層との接着性を向上させることができる。物理的処理方法としては、サンドブラスト法、微粒子を含有した液体を噴射するウエットブラスト法、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、紫外線あるいは真空紫外線照射法などを挙げることができる。また、化学的処理方法としては、強酸・強アルカリ処理法、酸化剤処理法、カップリング剤処理法などである。
【0058】
成形された感光性樹脂組成物層は光照射により架橋せしめ、印刷原版を形成する。また、成型しながら光照射により架橋させることもできる。硬化に用いられる光源としては高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を挙げることができる。感光性樹脂組成物層に照射される光は、200nmから300nmの波長の光を有することが好ましい。特に水素引き抜き型光重合開始剤(d)は、この波長領域に強い光吸収を有するものが多いため、200nmから300nmの波長の光を有する場合、感光性樹脂硬化物層表面の硬化性を充分に確保することができる。硬化に用いる光源は、1種類でも構わないが、波長の異なる2種類以上の光源を用いて硬化させることにより、樹脂の硬化性が向上することがあるので、2種類以上の光源を用いることも差し支えない。
【0059】
レーザー彫刻に用いる原版の厚みは、その使用目的に応じて任意に設定して構わないが、印刷版として用いる場合には、一般的に0.1〜7mmの範囲である。場合によっては、組成の異なる材料を複数積層していても構わない。
例えば、最表面にYAGレーザー、ファイバーレーザーあるいは半導体レーザー等の近赤外線領域に発振波長を有するレーザーを用いて彫刻することができる層を形成し、その層の下に炭酸ガスレーザー等の赤外線レーザーあるいは可視・紫外線レーザーを用いてレーザー彫刻できる層を形成することも可能である。このような積層構造を形成することにより、極めて出力の高い炭酸ガスレーザーを用いて比較的粗いパターンを深く彫刻し、表面近傍の極めて精細なパターンをYAGレーザー、ファイバーレーザー等の近赤外線レーザーを用いて彫刻することが可能となる。
【0060】
極めて精細なパターンは比較的浅く彫刻できれば良いので、該近赤外線レーザーに感度のある層の厚さは、0.01mm以上0.5mm以下の範囲が好ましい。このように近赤外線レーザーに感度のある層と赤外線レーザーに感度のある層を積層することにより、近赤外線レーザーを用いて彫刻されたパターンの深さを正確に制御できる。これは、赤外線レーザーに感度のある層を、近赤外線レーザーでは彫刻することが困難である現象を利用しているからである。彫刻可能なパターンの精細さの違いは、レーザー装置固有の発振波長の違い、すなわち絞れるレーザービーム径の違いに起因する。このような方法でレーザー彫刻する場合、赤外線レーザーと近赤外線レーザーを搭載した別々のレーザー彫刻装置を用いて彫刻することもでき、また、赤外線レーザーと近赤外線レーザーの両方を搭載したレーザー彫刻装置を用いて行うことも可能である。
【0061】
レーザー彫刻においては、形成したい画像をデジタル型のデータとしてコンピューターを利用してレーザー装置を操作し、原版上にレリーフ画像を作成する。レーザー彫刻に用いるレーザーは、原版が吸収を有する波長を含むものであればどのようなものを用いてもよいが、彫刻を高速度で行なうためには出力の高いものが望ましく、炭酸ガスレーザーやYAGレーザー、半導体レーザー等の赤外線あるいは赤外線放出固体レーザーが好ましいものの一つである。また、可視光線領域に発振波長を有するYAGレーザーの第2高調波、銅蒸気レーザー、紫外線領域に発振波長を有する紫外線レーザー、例えばエキシマレーザー、第3あるいは第4高調波へ波長変換したYAGレーザーは、有機分子の結合を切断するアブレージョン加工が可能であり、微細加工に適する。また、レーザーは連続照射でも、パルス照射でも良い。
【0062】
レーザーによる彫刻は酸素含有ガス下、一般には空気存在下もしくは気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状もしくは液状の物質は適当な方法、例えば溶剤や界面活性剤の入った水等で洗いとる方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、高圧スチームを照射する方法などを用いて除去しても良い。
【0063】
本発明において、レーザー光を照射し凹パターンを形成する彫刻後に、版表面に残存する粉末状あるいは粘性のある液状カスを除去する工程に引き続き、パターンを形成した印刷版表面に波長200nm〜450nmの光を照射する後露光を実施することもできる。表面のタック除去に効果がある方法である。後露光は大気中、不活性ガス雰囲気中、水中のいずれの環境で行っても構わない。用いる感光性樹脂組成物中に水素引き抜き型光重合開始剤(d)が含まれている場合、特に効果的である。更に、後露光工程前に印刷版表面を、水素引き抜き型光重合開始剤(d)を含む処理液で処理し露光しても構わない。また、水素引き抜き型光重合開始剤(d)を含む処理液中に印刷版を浸漬した状態で露光しても構わない。
【0064】
印刷原版は印刷版用レリーフ画像の他、スタンプ・印章、エンボス加工用のデザインロール、電子部品作成に用いられる絶縁体、抵抗体、導電体ペーストのパターニング用レリーフ画像、光学部品の反射防止膜、カラーフィルター、(近)赤外線吸収フィルター等の機能性材料のパターン形成、液晶ディスプレイあるいは有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の表示素子の製造における配向膜、下地層、発光層、電子輸送層、封止剤層の塗膜・パターン形成、窯業製品の型材用レリーフ画像、広告・表示板などのディスプレイ用レリーフ画像、各種成型品の原型・母型など各種の用途に応用し利用できる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
(1)レーザー彫刻
レーザー彫刻は炭酸ガスレーザー彫刻機(商標:ZED−mini−1000、英国、ZED社製、米国、コヒーレント社製、出力250W炭酸ガスレーザーを搭載)を用いて行った。彫刻は、網点(80 lines per inch で面積率10%)、500μm幅の凸線による線画、及び、500μm幅の白抜き線を含むパターンを作成して実施した。彫刻深さは0.55mmとした。レーザービームが照射され彫刻されるレーザー彫刻部には空気が吹き付けられ、レーザー彫刻部で発生する分解生成物は、レーザー彫刻装置の外に吸引により排出される。更に、排出されたガスは集塵機中のフィルターを通過し、活性炭フィルターを通った後、屋外に排気される。また、集塵機と活性炭フィルターの間に、ガス混合用ボックスを設置した。排気ガスの流量は、毎分3mであった。
【0066】
(2)排気ガスのオゾン処理
酸素ボンベから酸素ガスを高周波高圧放電方式のオゾン発生装置に導入し、1時間あたり8gのオゾン分子を発生させた。オゾンの濃度は、6g/mであった。発生したオゾン分子を含むガスを前記ガス混合用ボックスに、毎分5リットルの流量で導入し、レーザー彫刻で発生した分解生成物を含有する排気ガスに混合した。
【0067】
(3)排気ガスの湿式処理
イオン性官能基を有する高分子化合物水溶液(カルモア社製、商標名「マイクロゲル」)を、純水で5倍に希釈した水溶液を200リットルのポリ容器に入れ、管の外径が100mmの塩ビ製パイプを液中に挿入し、このパイプを通して排気ガスを、イオン性官能基を有する高分子化合物水溶液にバブリングした。この湿式処理装置は、オゾン処理のガス混合用ボックスと活性炭フィルターの間に設置した。
【0068】
(4)排気ガスの分析
排気口から放出されるガスの分析は、1、3−ブタジエン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、オゾンに関して実施し、それぞれの物質に対応した北川式ガス検知管を用いて測定を行った。
(5)セラミックス排気ガス処理
レーザー彫刻装置の活性炭フィルターの後に、ハニカム状に貫通孔の開いたブロック(カルモア社製、商標名「マグセライド」)を2段に設置した。
(6)余剰のオゾンの除去処理
レーザー彫刻装置の活性炭フィルターの前に、余剰オゾン処理塔を設置した。該余剰オゾン処理塔の内部には、活性炭を配合したアルミナシリカゲル(品川化成社製、商標名「オゾン分解剤KR」)を充填した。
【0069】
(製造例1)
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールである、商標「PCDL L4672」(数平均分子量1990、OH価56.4)447.24gとトリレンジイソシアナート30.83gを加え80℃に加温下に約3時間反応させた後、2−メタクリロイルオキシイソシアネート14.83gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2個)である数平均分子量約10000の樹脂(ア)を製造した。この樹脂は20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
【0070】
樹脂(a)として、上記のように作製した樹脂(ア)100重量部、有機化合物(b)としてフェノキシエチルメタクリレート25重量部とポリプロピレングリコールモノメタクリレート19重量部、無機多孔質体(c)として富士シリシア化学株式会社製、多孔質性微粉末シリカである、商標「サイロスフェアC−1504」(以下略してC−1504、数平均粒子径4.5μm、比表面積520m/g、平均細孔径12nm、細孔容積1.5ml/g、灼熱減量2.5wt%、吸油量290ml/100g)5重量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6重量部とベンゾフェノン1重量部、その他添加剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン0.5重量部を加えて感光性樹脂組成物を作成した。
【0071】
作製した感光性樹脂組成物をPETフィルム上に厚さ2.8mmのシート状に成形し、メタルハライドランプ(アイ・グラフィックス社製、商標「M056−L21」)をスライドさせながら、開口部(開口部寸法:40mm×310mm)から出てくる光を、大気中で感光性樹脂層が露出している面から照射した。照射したエネルギー量は、4000mJ/cm(UV−35−APRフィルターで測定した照度を時間積分した値)であった。照射面でのランプ照度は、UVメーター(オーク製作所社製、商標「UV−M02」)を用いて測定した。UV−35−APRフィルターを使用して測定したランプ照度は、100mW/cm、UV−25フィルターを使用して測定したランプ照度は、14mW/cmであった。このようにして感光性樹脂硬化物層から成るレーザー彫刻用印刷原版を作製した。
【0072】
(実施例1〜3、比較例1〜2)
実施例1は、集塵機と活性炭フィルターの間にオゾン処理装置を設置したものである。実施例2は、集塵機と活性炭フィルターの間にオゾン処理装置、余剰オゾン処理装置、湿式処理装置の順に設置したものである。実施例3は、集塵機と活性炭フィルターの間にオゾン処理装置、余剰オゾン処理装置、湿式処理装置、セラミックス処理装置を設置したものである。ここで、発生したガスのセラミックス表面への接触は50℃以下で行った。比較例1は、集塵機と活性炭フィルターの間に湿式処理装置のみを設置したものである。
比較例2は、集塵機と活性炭フィルターのみの系である。
【0073】
作製したレーザー彫刻用印刷原版をレーザー彫刻により彫刻した際に発生したガスの分析を行った。その結果を表1にまとめた。
作製したレーザー彫刻用印刷原版をレーザー彫刻により彫刻した際に発生したガスの分析を行った。その結果を表1にまとめた。
集塵機と活性炭フィルターの間にオゾン処理装置のみを設置した実施例1では、排気口から排出されるガスに若干のオゾン臭がしたが、オゾン処理装置と余剰オゾン処理装置を設置した実施例2および3では、排気口から排出されるガスにオゾン臭はしなかった。実施例2および3での排気口でのオゾン濃度は0.1ppm未満であった。
【0074】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明はレーザー彫刻印刷版を製造するレーザー彫刻工程において発生する分解生成物の除去方法として最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状あるいは円筒状に成形された少なくとも1層以上の感光性樹脂硬化物層を有するレーザー彫刻印刷原版表面をレーザー彫刻し、該表面に凹凸パターンを有するレーザー彫刻印刷版を製造する方法であって、レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を除去する方法が、該分解生成物をオゾン分子に接触させる工程を含む方法であることを特徴とするレーザー彫刻印刷版の製造方法。
【請求項2】
レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を除去する方法が、更に、前記分解生成物を、イオン性官能基を有する高分子化合物に接触させる工程を含む方法であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
【請求項3】
レーザー彫刻工程において発生する分解生成物を除去する方法が、更に、前記分解生成物をセラミックス表面に100℃以下の温度条件で接触させる工程を含む方法であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
【請求項4】
分解生成物と接触させるオゾン分子の発生方法が、紫外線ランプ式、放電式、電気分解式の中から選択される少なくとも1種類の方式であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
【請求項5】
分解生成物と接触させるオゾン分子の発生量が、1時間あたり0.1g以上50g以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
【請求項6】
更に、余剰のオゾン分子を除去するために、該余剰オゾン分子と金属酸化物あるいは金属炭酸塩化合物とを接触させる工程を含み、大気中に放出される排気口におけるオゾン濃度が0.1ppm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
【請求項7】
イオン性官能基が、カルボキシル基、スルホン基、スルホニル基から選ばれる少なくとも1種類のアニオン性官能基と、アミノ基、アンモニウム基、ピリジニウム基から選ばれる少なくとも1種類のカチオン性官能基を有することを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
【請求項8】
少なくとも1層以上の感光性樹脂硬化物層を有するレーザー彫刻印刷原版において、レーザー光を照射し表面に凹凸パターンを形成するための感光性樹脂硬化物層が、20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させて形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。
【請求項9】
セラミックスが、アルミニウム、珪素、マグネシウム、チタン、タンタル、タングステン、ニッケル、クロム、バリウム、ニオブ、鉛、銀、白金、ロジウム、ルテニウムからなる群より選択される金属元素を含有する粘土鉱物を含むことを特徴とする請求項3に記載のレーザー彫刻印刷版の製造方法。

【公開番号】特開2007−144910(P2007−144910A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345028(P2005−345028)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】