説明

レーザー溶接可能熱可塑性高分子、その製造方法および物品

組成物の全重量に対して、0超〜99.95質量%の熱可塑性高分子成分と、0.00001〜5質量%の近赤外線吸収剤と、0.0〜0.02質量%のカーボンブラックと、0.05〜20質量%の白色顔料と、を含むレーザー溶接可能組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、レーザー溶接可能熱可塑性組成物、その製造方法および物品に関する。
【0002】
透過溶接による2つの高分子物品の近赤外線(NIR)レーザー溶接では、その高分子物品の一方が少なくとも部分的にレーザー光線に対して透過性であり、他方がレーザー光線のかなりの量を吸収しなければならない。該吸収高分子がレーザー光暴露領域で加熱されて、吸収高分子と透過高分子とが融解して界面で溶接される。
【0003】
一般に、熱可塑性高分子はNIR光(本明細書では放射線波長が800〜1400nm)に対して透過性である。吸収性を増してレーザー光暴露に対してより多くの熱を発生させるために、NIR吸収添加剤が高分子に添加される。該添加剤には、典型的に可視光(本明細書では波長が350〜800nm)も少なくも少量吸収する顔料と染料が含まれる。これは、低濃度ではあっても該NIR吸収顔料によって視覚的に検知できる、好ましくない色の変化が起こるために、白色を含む淡色系高分子基板実現のためには欠点となる。
【0004】
白色および淡色系高分子は典型的に、無機顔料粒子と高分子とを混合して製造される。このために、これらの材料が組み込まれた高分子ブレンドの不透明性が高くなり外観が明るくなる。しかし、こうした顔料は一般に、NIRと可視光に対して高い反射性を有しており、すなわち、光を吸収することなく表面で散乱させる。
【0005】
NIRレーザー光の吸収性または透過性を高めるための既存の高分子の処方改良によって、NIRレーザー溶接可能材料の選択の幅が広がってきた。しかしながら、レーザー溶接プロセスで使用する不透明な淡色系レーザー吸収高分子組成物(白色組成物も含めて)の開発の必要性が依然として残されている。
【発明の開示】
【0006】
不透明な淡色系および白色のレーザー溶接可能熱可塑性高分子を実現するという上記の課題は、本明細書に開示されたいくつかの実施形態によって克服される。
【0007】
ある実施形態では、レーザー溶接可能組成物は、その全重量に対して、0超〜99.95質量%の熱可塑性高分子組成物と、0.00001〜5重量%の近赤外線吸収剤と、0.0〜0.02質量%のカーボンブラックと、0.05〜20質量%の白色顔料と、を含む。
【0008】
別の実施形態では、前記レーザー溶接可能組成物の製造方法は、本明細書で開示する前記成分を溶融混合してレーザー溶接可能組成物を製造するステップを備える。
【0009】
本明細書では、前記レーザー溶接可能組成物を含む物品が開示される。
【0010】
物品の製造方法は、本明細書で開示されたレーザー溶接可能組成物の融液の製造、押出、鋳込、あるいは型成形するステップを備える。
【0011】
レーザー溶接物品は、近赤外線放射波長に対して少なくとも部分的に透過性の第1のレーザー溶接可能熱可塑性成分と、請求項1の組成物を含む第2のレーザー溶接可能成分と、を含み、前記第1のレーザー溶接可能熱可塑性成分の少なくとも一部の表面は、前記第2のレーザー溶接可能成分の少なくとも一部の表面にレーザー溶接されている。
【0012】
別の実施形態では、熱可塑性成分のレーザー溶接方法は、近赤外線放射波長に対して部分的に透過性の第1の熱可塑性成分の少なくとも一部の表面を、本明細書で開示された前記レーザー溶接可能組成物を含む第2のレーザー溶接可能成分の少なくとも一部の表面に接触させるステップと、前記第1の熱可塑性成分を経由して前記第2のレーザー溶接可能成分に対して、前記第1の熱可塑性成分を前記第2のレーザー溶接可能成分に効果的に溶接する放射強度で、近赤外線レーザーで照射するステップと、を備える。
【0013】
上記およびその他の特長と効果は、以下の図面と詳細な説明を参照することにより一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】近赤外透過性組成物を経由した暴露により、近赤外線透過成分の近赤外線吸収成分へのレーザー溶接を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは驚くべきことに、異例の溶接強度を有する不透明な白色および淡色系レーザー溶接可能組成物が、特定の白色顔料を用いて得られることを見出した。この発見は、熱可塑性高分子組成物と、白色顔料と、波長800〜1400nmの放射線を吸収する近赤外線(NIR)吸収剤と、を含むレーザー溶接可能組成物に基づいている。レーザー溶接可能組成物は、白色顔料を含まない高分子組成物で製造されたものと同等で、通常溶接強度が大きく向上した外観を有し得る。これらはユーザからは大いに評価される性能特長である。
【0016】
本明細書では、化合物は標準名称法を用いて記述される。文脈上明記される場合を除き、単数表現には複数が含まれる。すべての引例は参照により本明細書に援用される。用語「その組み合わせ」とは、1つまたは複数の記載された成分が、選択的に1つまたは複数の記載されていない成分と共に存在することを示す。作用例を除き、あるいは別途明示がある場合を除き、明細書および請求項で用いられている成分量や反応条件等を表す数字や表現は、すべての場合について「約」という用語で修飾されるものと理解されたい。本出願では様々な数値範囲が示されている。これらの範囲は連続的であり、最小値と最大値間のすべての数値を含む。別途明示がある場合を除き、本明細書のこうした様々な数値範囲は近似である。同じ特性または成分を表すすべての範囲の終点は、互いに独立に組み合わせ可能であり、記載された終点を含んでいる。
【0017】
本明細書で使用可能な熱可塑性高分子組成物は当業者に既知であり、これに限定されないが、ポリエチレンおよびその共重合体類と三元共重合体類、ポリブチレンおよびその共重合体類と三元共重合体類、ポリプロピレンおよびその共重合体類と三元共重合体類を含むオレフィン系高分子類;エチレンと、少なくとも1つのα−オレフィンおよびアタクチックポリ(α−オレフィン)類と、から成る直鎖または実質的に直鎖の共重合体を含むα−オレフィン系高分子類;ゴムブロック共重合体類;ポリアミド類;ポリイミド類;ポリ(アリレート)類、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(ブチレンテレフタレート)などのポリエステル類;ポリ塩化ビニルなどのビニル系高分子類およびポリ酢酸ビニルなどのポリビニールエステル類;アクリル単独重合体類、共重合体類および三元共重合類;エポキシ類;ポリカーボネート類、ポリエステル−ポリカーボネート類;ポリスチレン;ポリ(フェニレンエーテル)を含むポリ(アリーレンエーテル)類;ポリウレタン類;フェノキシ樹脂類;ポリスルホン類;ポリエーテル類;アセタール樹脂類;ポリオキシエチレン類およびこれらの組み合わせなどが含まれる。より具体的には、前記高分子類は、ポリエチレン、エチレン共重合体類、ポリプロピレン、プロピレン共重合体類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、ポリエステル−ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリ(アリーレンエーテル)類およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される。
【0018】
ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレンなどのオレフィン系高分子類は、エチレン性不飽和モノマーの高分子と典型的に呼ばれる高分子類や、4〜10個の炭素原子を含むα−オレフィン類や酢酸ビニルなどの高エチレンを有するこうした高分子類の共重合体類および三元共重合体類の広範囲の種類から選択される。オレフィン類、すなわちエチレンは、アクリレートなどのビニル単量体類あるいはカルボン酸化合物のビニールエステル類と共重合化されることが多い。具体的なアクリレート単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシエチルなどがある。カルボン酸のビニールエステルとしては、酢酸ビニル、酪酸ビニルなどがある。この種の高分子類で通常用いられるものは、例えば、エチレン酢酸ビニル、エチレンアクリル酸エチル、エチレンアクリル酸n−ブチルおよびエチレンアクリル酸メチルなどである。
【0019】
ある特定の実施形態では、前記熱可塑性高分子組成物は、オレフィン系高分子類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリスチレン、ポリアリーレンエーテル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂類、ポリスルホン類、ポリエーテル類、アセタール樹脂類、ポリエステル類、ビニル系高分子類、アクリル類、エポキシ類、ポリカーボネート類、ポリエステル−ポリカーボネート類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される高分子を含む。より具体的には、前記熱可塑性高分子組成物は、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミドおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択される高分子を含み、さらにより具体的には、ポリカーボネートとポリエステルの組み合わせから選択される高分子を含む。
【0020】
好適なポリエステル類は、式(1)の繰り返し単位を含む。
【0021】
【化1】

式中、Tは、C8−12芳香族ジカルボン酸、C5−7脂環式ジカルボン酸あるいはこれらの化学的等価物から誘導される残基であり、Dは、C6−12芳香族ジオール、C2−12脂肪族ジオールあるいはこれらの化学的等価物から誘導される残基である。
【0022】
前記ポリエステル単位の調製に用いられる芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびこれらのジカルボン酸の少なくとも1つを含む組み合わせなどがある。典型的な脂環式ジカルボン酸としては、ノルボルネンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などがある。前記の任意のジカルボン酸の化学的等価物としては、例えば、ジメチルエステル類、ジアリールエステル類、無水物類、塩類、酸塩化物類および臭化物類などがある。
【0023】
特定のジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(シスまたはトランス)あるいはこれらのジカルボン酸類の少なくとも1つを含む組み合わせである。ある特定のジカルボン酸は、イソフタル酸とテレフタル酸の組み合わせを含んでおり、イソフタル酸とテレフタル酸の重量比は91:9〜2:98である。
【0024】
好適なC6−12芳香族ジオール類としては、これに限定されないが、レゾルシノール、ヒドロキノンおよびピロカテコール、および1,5−ナフタレンジオール、2,6−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、4,4’−ジヒドロキシビフェニール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンおよびこれらの芳香族ジオール類の少なくとも1つを含む組み合わせなどがある。典型的なC2−12脂肪族ジオール類としては、これに限定されないが、エチレングリコールやプロピレングリコールなどの直鎖、分岐鎖あるいは脂環式アルカンジオール類、すなわち、1,2−および1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブタ−2−エンジオール、1,3−および1,5−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン、シスおよびトランス異性体を含む1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、1,10−デカンジオールおよびこれらのジオール類の少なくとも1つを含む組み合わせなどがある。前記の任意のジオールの化学的等価物としては、ジアルキルエステル類、ジアリールエステル類などのエステル類がある。具体的な脂肪族ジオール類は、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコールあるいはシクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールを含む組み合わせである。
【0025】
ある実施形態では、Tは、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、これらのものの化学的等価物あるいはこれらの少なくとも1つを含む組み合わせから誘導され、Dは、1,4−シクロヘキサンジメタノール、C2−4ジオール、これらの化学的等価物あるいはこれらの少なくとも1つを含む組み合わせから誘導される。
【0026】
式(1)の範囲におけるある特定の種類のポリエステル類は、例えば、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)(PCT)などの、式(2)の繰り返し単位を有するポリ(シクロアルキレンフタレート)類である。
【0027】
【化2】

式中、Tは、式(8)に従ってテレフタル酸から誘導され、Dは、式(8)に従って1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導される。
【0028】
式(1)の範囲における別の特定の種類のポリエステル類は、TおよびDが各々シクロアルキル基を含むポリ(シクロアルキレンシクロアルカノエート)類である。ある実施形態では、Tはシクロヘキサンジカルボン酸から誘導され、Dは、1,6−ヘキサンジオール、ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそのシス、トランス異性体、1,10−デカンジオールなどから誘導される二価基である。特に有利なポリ(シクロアルキレンシクロアルカノエート)は、ポリ(1,4−シクロヘキサン−ジメタノール−1,4−ジカルボキシレート)(PCCD)とも呼ばれる、式(3)の繰り返し単位を有するポリ(シクロヘキサン−1,4−ジメチレンシクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート)である。
【0029】
【化3】

式中、Tは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から誘導され、Dは1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導される。
【0030】
他の特定のポリエステル類は、芳香族ジカルボン酸と、直鎖脂肪族ジオール類、特に、エチレングリコール、ブチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)あるいはポリ(ブチレングリコール)と、1,4−ヘキサンジオール、ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそのシス、トランス異性体、1,10−デカンジオールなどの脂環式ジオール類と、の混合物と、から誘導される共重合ポリエステル類である。前記直鎖脂肪エステル単位あるいは脂環式エステル単位を含むエステル単位は、それぞれ独立の単位として、あるいは同種の単位のブロックとして、高分子鎖中に存在し得る。ある実施形態では、この種のポリエステル類は、そのエステル基の50モル%超が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートから誘導されている場合にはPCTGとして知られ、そのエステル基の50モル%未満が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートから誘導されている場合にはPETGとして知られる、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)−co−ポリ(エチレンテレフタレート)である。ある特定の実施形態では、前記ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)−co−ポリ(エチレンテレフタレート)は、C2−4ジオールから誘導された25モル%以下の残基を含む。
【0031】
前記ポリエステル類は、上記の通り、液相濃縮を用いて、あるいは例えば、ジメチルテレフタレートなどのジアルキルエステルを酸性触媒を用いてエチレングリコールとエステル交換させてポリ(エチレンテレフタレート)を生成するエステル交換重合を用いて、界面重合あるいは溶融プロセス濃縮により得られる。例えば、3個以上の水酸基あるいは三官能性または多官能性カルボン酸などを有するグリコールなどの分枝剤が組み込まれた分子鎖ポリエステルが使用できる。さらに、組成物の最終用途に応じて、ポリエステル上に種々の濃度の酸と末端水酸基とを有することが望ましい場合もある。
【0032】
前記ポリエステル類の固有粘度は、温度25℃のクロロホルム中で測定して0.3〜2dL/g、具体的には0.45〜1.2dL/gであり得る。前記ポリエステル類の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィで測定して、10,000〜200,000ドルトン、具体的には20,000〜100,000ドルトンにできる。
【0033】
好適なポリカーボネート類は、式(1)の炭酸塩繰り返し構造単位を含む。
【0034】
【化4】

式中、R基の総数の内少なくとも60%は芳香族有機基を含んでおり、残りは脂肪族基、脂環式基、あるいは芳香族基である。ある実施形態では、RはそれぞれC6−30芳香族基であり、すなわち、少なくとも1つの芳香族部分を含んでいる。Rは、式HO−R−OHのジヒドロキシ化合物、特に、式(5)のジヒドロキシ化合物から誘導され得る。
【0035】
【化5】

式中、AおよびAはそれぞれ単環式二価芳香族基であり、Yは、AとAとを分離する1つまたは複数の原子を有する単結合または架橋基である。典型的な実施形態では、1つの原子がAとAを分離する。具体的には、それぞれのRは式(6)のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導され得る。
【0036】
【化6】

式中、RおよびRはそれぞれハロゲンまたはC1−12アルキル基であり、同じであっても異なっていてもよく、pとqはそれぞれ独立に0〜4の整数である。また、式(6)のXは、架橋基とCアリーレン基それぞれのヒドロキシ置換基がCアリーレン基上で互いにオルト、メタあるいはパラ(特にパラ)の位置に配置されている2つのヒドロキシ置換芳香族基を結合する架橋基を表わす。ある実施形態では、前記架橋基Xは、単結合、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、またはC1−18有機基である。該C1−18有機架橋基は、環式あるいは非環式であっても、芳香族あるいは非芳香族であってもよく、また、ハロゲン類、酸素、窒素、硫黄、シリコン、あるいはリンなどのヘテロ原子を含み得る。該C1−18有機架橋基は、それに結合しているCアリーレン基がそれぞれ共通のアルキリデン炭素またはC1−18有機架橋基の異なる炭素に結合するように配置され得る。ある実施形態では、pとqはそれぞれ1であり、RとRはそれぞれC1−3アルキル基、具体的にはメチルであり、それぞれのアリーレン基のヒドロキシ基に対してメタの位置に配置されている。
【0037】
ある実施形態では、Xは置換または未置換のC3−18シクロアルキリデン、式−C(R)(R)(式中、RとRはそれぞれ独立に、水素、C1−12アルキル、C1−12シクロアルキル、C7−12アリールアルキル、C1−12ヘテロアルキルまたは環式C7−12ヘテロアリールアルキル)のC1−25アルキリデン、あるいは、Rが二価のC1−12炭化水素基である式−C(=R)の基である。この種の典型的な基としては、メチレン、シクロヘキシルメチレン、エチリデン、ネオペンチリデン、イソプロピリデン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン、シクロドデシリデンおよびアダマンチリデンなどがある。
【0038】
式HO−R−OHの他の有用な芳香族ジヒドロキシ化合物としては、式(7)の化合物がある。
【0039】
【化7】

式中、Rはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、C1−10アルキル基などのC1−10ヒドロカルビル、ハロゲン置換C1−10アルキル基、C6−10アリール基あるいはハロゲン置換C6−10アリール基であり、nは0〜4である。該ハロゲンは通常臭素である。
【0040】
具体的な芳香族ジヒドロキシ化合物の例としては、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタンビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンチン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジブロモ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(5−フェノキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオリン、2,7−ジヒドロキシピレン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ダイオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチン、2,7−ジヒドロキシ−9,10−ジメチルフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシベンゾチオフェノン、2,7−ジヒドロキシカルバゾール、レゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、5−フェニルレゾルシノール、5−クミルレゾルシノール、2,4,5,6−テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6−テトラブロモレゾルシノールなどの置換レゾルシノール化合物;カテコール;ヒドロキノン;2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2―ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、2、3、5、6−テトラブロモヒドロキノンなどの置換ヒドロキノン類およびこれらのジヒドロキシ化合物を少なくとも1つ含む組み合わせがある。
【0041】
式(6)のビスフェノール化合物の具体的な例としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニルプロパン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)および1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)などがある。これらのジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組み合わせも使用される。ある特定の実施形態では、前記ポリカーボネートは、式(6)のAおよびAそれぞれがp−フェニレンであり、YがイソプロピリデンであるビスフェノールAから誘導される直鎖単独重合体である。
【0042】
他の典型的なポリカーボネート類としては、式(4)の炭酸塩単位と、式(6)およびまたは式(7)のポリシロキサン単位を含むポリシロキサン−ポリカーボネート共重合体類がある。
【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

式中、Rはそれぞれ独立に、同じかまたは異なる一価のC1−13有機基であり、Arはそれぞれ独立に、直接芳香族部分に結合されている同じかまたは異なるC6−36アリーレン基であり、Rはそれぞれ独立に、同じかまたは異なる二価のC1−30有機基であり、Eは平均値が2〜1,000の範囲にある整数である。
【0045】
は具体的には、C−C13アルキル、C−C13アルコキシ、C−C13アルケニル、C−C13アルケニルオキシ、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルコキシ、C−C14アーリル、C−C10アリールオキシ、C−C13アリールアルキル、C−C13アリールアルコキシ、C−C13アルキルアリールあるいはC−C13アルキルアリールオキシであり得る。これらの群は完全にあるいは部分的に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素あるいはこれらの組み合わせでハロゲン化され得る。透明なポリシロキサン−ポリカーボネートが所望される実施形態では、Rはハロゲン置換されていない。これらのR群の組み合わせは、同じ共重合体に使用できる。
【0046】
式(6)のAr基は、例えば、上記の式(6)または式(7)のジヒドロキシアリーレンなどのC−C30ジヒドロキシアリーレン化合物から誘導される。典型的なジヒドロキシアリーレン化合物としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニルスルフィド)および1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンなどがある。
【0047】
式(7)のR基は、C−C13アルキレン、C−CシクロアルキレンあるいはC−C14アリーレンであり得る。ある実施形態では、Rはそれぞれ式(8)で示される基である。
【0048】
【化10】

式中、RはC−Cアルキレンであり、Mはそれぞれ、同じかまたは異なるハロゲン、シアン、ニトロ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cアルケニル、C−Cアルケニルオキシ基、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルコキシ、C−C10アリール、C−C10アリールオキシ、C−C12アラルキル、C−C12アリールアルコキシ、C−C12アルキルアリールあるいはC−C12アルキルアリールオキシであり、nはそれぞれ独立に、0、1、2、3あるいは4である。
【0049】
式(6)および式(7)のEの値は、熱可塑性組成物中の各成分の種類および相対量、該組成物の所望の特性および同様な考慮すべき事項などに応じて広範囲に変えられる。一般に、Eの平均値は2〜1,000、具体的には2〜500、より具体的には5〜100である。ある実施形態では、Eの平均値は10〜75であり、さらに別の実施形態では、Eの平均値は40〜60である。Eが、例えば40未満などの低い値の場合、比較的多量のポリカーボネート−ポリシロキサン共重合体を使用することが望ましいことであり得る。反対に、Eが、例えば40超などの高い値の場合、比較的少量の該共重合体を使用することが必要であり得る。
【0050】
ある特定の実施形態では、前記ポリシロキサン単位は、Rがそれぞれ独立して、同じかまたは異なる一価のC1−3有機基であり、Rがそれぞれ、同じか異なる二価のC1−10有機基であり、Eが2〜500の整数である式(7)の構造を有する。ある特定の実施形態では、Rはそれぞれ同じかまたは異なるC1−3アルキルあるいはC1−3ハロアルキルであり、RはそれぞれRが同じC1−5アルキレンであり、Mがそれぞれ同じ臭素、塩素、C1−3アルキル、C1−3アルコキシ、フェニル、クロロフェニルあるいはトリルである式(8)の構造を有しており、Eはその平均値が4〜100の整数である。さらに別の実施形態では、Rはそれぞれメチルであり、Rはそれぞれ、Rがトリメチレンであり、Mがメトキシであり、nが1である(8)の構造を有している。こうしたポリカーボネート−シロキサン共重合体類は、Sabic Innovative Plastics社より市販されている。
【0051】
ポリカーボネート類は、当分野で既知の界面重合や溶融重合などのプロセスを用いて製造できる。前記ポリカーボネートの重量平均分子量は、架橋型スチレン−ジビニルベンゼンカラムを用いポリカーボネート標準でキャリブレーションしたゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定して、10,000〜200,000ドルトン、具体的には20,000〜100,000ドルトンにできる。GPCサンプルを濃度1mg/mlで調製し、1.5ml/分で溶離する。
【0052】
前記熱可塑性高分子組成物はさらに、ポリエステル−ポリカーボネート共重合体を含み得る。該ポリエステル−ポリカーボネート共重合体は、その全重量に対して、15〜95質量%のアリレートエステル単位と、5〜85質量%の炭酸塩単位と、を含む。
【0053】
前記アリレートエステル単位は式(9)の構造を有する。
【0054】
【化11】

式中、Rはそれぞれ独立に、ハロゲンまたはC1−4アルキルであり、pは0〜3である。該アリレートエステル単位は、テレフタル酸とイソフタル酸またはこれらの化学的均等物の混合物と、5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、2,4,5−トリフルオロレゾルシノール、2,4,6−トリフルオロレゾルシノール、4,5,6−トリフルオロレゾルシノール、2,4,5−トリブロモレゾルシノール、2,4,6−トリブロモレゾルシノール、4,5,6−トリブロモレゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、2,3,5−トリ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5−トリフルオロヒドロキノン、2,3,5−トリブロモヒドロキノンあるいはこれらの化合物の少なくとも1つを含む組み合わせなどの化合物と、の反応から誘導される。
【0055】
前記ポリエステル−ポリカーボネート共重合体中の芳香族炭酸塩単位は、上記の式(4)の構造を有する。具体的には、該炭酸塩単位は式(6)のジヒドロキシ化合物から誘導され、具体的には、Xは、RとRがそれぞれ独立に、水素、C1−12アルキル、C1−12シクロアルキル、C7−12アリールアルキル、C1−12ヘテロアルキルまたは環式C7−12ヘテロアリールアルキルである式−C(R)(R)−のC1−25アルキリデンである式(6)の化合物、あるいは、Rが二価のC1−12炭化水素基である−C(=R)−の基から誘導され、さらに具体的にはビスフェノールAである。
【0056】
ある特定の実施形態では、前記ポリエステル−ポリカーボネート共重合体は、式(10)の繰り返し構造を含むポリ(イソフタレート−テレフタレート−レゾルシノールエステル)−co−(ビスフェノールAカーボネート)高分子である。
【0057】
【化12】

【0058】
前記ポリエステル−ポリカーボネート共重合体は、分子量の成長速度を制限しポリカーボネート中の分子量を制御する連鎖停止剤(キャッピング剤とも呼ぶ)との反応から誘導される末端基を含む。該連鎖停止剤は式(11)のモノフェノール化合物である。
【0059】
【化13】

式中、Rはそれぞれ独立に、ハロゲン、C1−22アルキル、C1−22アルコキシ、C1−22アルコキシカルボニル、C6−10アリール、C6−10アリールオキシ、C6−10アリールオキシカルボニル、C6−10アリールカルボニル、C7−22アルキルアリール、C7−22アリールアルキル、C6−302−ベンゾトリアゾールあるいはトリアジンであり、qは0〜5である。本明細書で用いるC6−16ベンゾトリアゾールは、未置換および置換ベンゾトリアゾールが含まれ、ベンゾトリアゾールは、3個以下のハロゲン基、シアノ基、C1−8アルキル基、C1−8アルコキシ基、C6−10アリール基あるいはC6−10アリールオキシ基で置換される。
【0060】
式(11)の典型的なモノフェノール連鎖停止剤としては、フェノール、p−クメル−フェノール、p−tert−ブチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、p−メトキシフェノールなどのヒドロキノン類のモノエーテル類、8〜9個の炭素原子を有する分枝鎖アルキル置換基を有するものを含むアルキル−置換フェノール類、4−置換−2−ヒドロキシベンゾフェノンなどのモノフェノールUV吸収剤、アリ−ルサリチル酸塩、レゾルシノールモノベンゾエートなどのジフェノール類のモノエステル類、2−(2−ヒドロキシアリール)−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシアリール)−1,3,5−トリアジンなどがある。具体的なモノフェノール連鎖停止剤には、フェノール、p−クミルフェノールおよびレゾルシノールモノベンゾエートが含まれる。
【0061】
他の典型的な連鎖停止剤としては、例えば、モノカルボン酸ハロゲン化物類、モノハロホルメート類などがある。こうした連鎖停止剤は、式(11)の構造を有することができ、式中、−C(O)X基あるいは−OC(O)Cl基は、フェノール水酸基の代わりに存在し、Xはハロゲン、特に臭素または塩素である。モノカルボンクロリド類およびモノクロロホルメート類については具体的に言及される。典型的なモノカルボン酸クロリド類には、ベンゾイルクロリド、C1−22アルキル置換ベンゾイルクロリド、4−メチルベンゾイルクロリド、ハロゲン置換ベンゾイルクロリド、ブロモベンゾイルクロリド、シンナモイルクロリド、4−ナジミドベンゾイルクロリドおよびこれらの組み合わせなどの単環式モノカルボン酸クロリド類;無水トリメリット酸クロリドおよびナフトイルクロリドなどの多環式モノカルボン酸クロリド類;および単環式および多環式モノカルボン酸クロリド類の組み合わせが含まれる。22個までの炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸のクロリド類が好適である。アクリロイルクロリドやメタクリロイルクロリドなどの脂肪族モノカルボン酸類の官能基化クロリド類も好適である。モノクロロホルメート類には、フェニルクロロホルメート、アルキル置換フェニルクロロホルメート、p−クミルフェニルクロロホルメート、トルエンクロロホルメートおよびこれらの組み合わせなどの単環式モノクロロホルメート類が含まれる。例えば、2つの異なるモノフェノール連鎖停止剤の組み合わせや、モノフェノール連鎖停止剤とモノクロロホルメート連鎖停止剤との組み合わせなどの異なる連鎖停止剤の組み合わせも使用され得る。
【0062】
ポリエステル−ポリカーボネート共重合体類の製造に用いられる連鎖停止剤の種類と量は、該共重合体の分子量が1,500〜100,000ドルトン、具体的には1,700〜50,000ドルトン、より具体的には2,000〜40,000ドルトンとなるように選択される。分子量は、架橋形スチレン−ジビニルベンゼンカラムを用いビスフェノールAポリカーボネート標準でキャリブレーションしたゲル透過クロマトグラフィにより決定される。サンプルを濃度1mg/mLで調製し、1.0mL/分で溶離する。
【0063】
前記レーザー溶接可能組成物の前記熱可塑性高分子成分には選択的に耐衝撃性改良剤が含まれ得る。典型的な衝撃性改良剤としては、天然ゴム、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート−ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフフタレート/イソフタレート−ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、シリコーンゴムあるいはこれらの改良剤を少なくとも1つ含む組み合わせなどが含まれる。ある特定の耐衝撃性改良剤組成物は、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)とスチレン−アクリロニトリル(SAN)の組み合わせである。
【0064】
耐衝撃性改良剤の量は、組成物の全重量に対して、0超〜40質量%とすることができる。特定の実施形態では、該耐衝撃性改良剤の量は、全重量に対して、1〜30質量%、具体的には3〜20質量%である。
【0065】
ある実施形態では、前記レーザー溶接可能組成物中の前記熱可塑性高分子成分の量は、該組成物の全重量に対して、0超〜99.5質量%、より具体的には、30〜99質量%、さらにより具体的には80〜98質量%である。この量は、組成物の所望の溶接特性およびその他の特性を実現できるように変更できる。
【0066】
ある特定の実施形態では、前記熱可塑性高分子組成物はポリカーボネートを含み、別の実施形態では、ポリカーボネートと耐衝撃性改良剤とを含む。例えば、該熱可塑性高分子組成物は、その全重量に対して、50〜100質量%のポリカーボネートと、0〜50質量%の耐衝撃性改良剤、具体的には80〜100質量%のポリカーボネートと、0〜20質量%の耐衝撃性改良剤と、を含む。該熱可塑性高分子組成物には選択的に、ポリカーボネートだけ、あるいはポリカーボネートと耐衝撃性改良剤だけが含まれる。
【0067】
別の実施形態では、前記熱可塑性高分子組成物は、ポリカーボネートとポリエステルの組み合わせ、より具体的には、ポリカーボネート、ポリエステルおよび耐衝撃性改良剤の組み合わせを含む。該ポリカーボネートは、ビスフェノールAから誘導される単位と、ポリ(ブチレンテレフタレート)と、具体的にはMBSまたはMBSとSANとの組み合わせであるコアシェルポリマータイプの耐衝撃性改良剤と、を含み得る。これらの実施形態では、該熱可塑性高分子組成物は、その全重量に対して、10〜90質量%、具体的には40〜60質量%のポリカーボネートと、10〜90質量%、具体的には40〜60質量%のポリエステルと、0〜40質量%、具体的には1〜20質量%の耐衝撃性改良剤と、を含む。ある実施形態では、該熱可塑性高分子組成物は、40〜60重量パーセントのポリカーボネートと、40〜60重量パーセントのポリエステルと、1〜20質量%の耐衝撃性改良剤と、を含み、さらに、前記ポリカーボネートはビスフェノールAから誘導される単位を含み、前記ポリエステルはポリ(ブチレンテレフタレート)であり、前記耐衝撃性改良剤はコアシェルポリマーである。
【0068】
前記レーザー溶接可能高分子組成物はさらに、白色顔料、例えば二酸化チタン(TiO)、硫化亜鉛(ZnS)、酸化スズ、酸化アルミニウム(AlO)、酸化亜鉛(ZnO)、硫酸カルシウム、硫酸バリウム(BaSO)、炭酸カルシウム(例えばチョーク)、炭酸マグネシウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素(SiO、すなわち、シリカ)、雲母、粘土、タルク、これらの材料の金属ドープ版およびこれらの材料の少なくとも1つを含む組み合わせを含む。より具体的には、該無機白色顔料は、ルチルあるいはアナターゼ型二酸化チタン、硫化亜鉛、およびシラン処理二酸化チタンなどのこれらの材料のコーティング版から選択される。違った種類の白色顔料を組み合わせてもよい。該白色顔料の平均粒径は、0.01〜10μm、具体的には0.05〜1μm、より具体的には0.1〜0.6μmである。
【0069】
ある実施形態では、前記白色顔料は、粒径が0.01〜10μmの二酸化チタンである。さらに別の実施形態では、前記白色顔料は、平均粒径が0.1〜0.6μmの二酸化チタンである。
【0070】
別の実施形態では、前記白色顔料は、平均粒径が0.01〜10μmの硫化亜鉛である。別の実施形態では、前記白色顔料は、平均粒径が0.1〜0.6μmの硫化亜鉛である。
【0071】
ある実施形態では、前記レーザー溶接可能組成物は、二酸化チタン、硫化亜鉛あるいはこれらの組み合わせ以外の白色顔料は含まない。別の実施形態では、前記レーザー溶接可能組成物は、硫酸バリウム、雲母、タルクあるいはカーボンブラックは含まない。
【0072】
前記レーザー溶接可能組成物中の前記白色顔料の量は、該組成物の全重量に対して、0.05〜20質量%、より具体的には0.1〜15質量%、さらにより具体的には0.5〜10質量%である。
【0073】
前記レーザー溶接可能組成物は、可視光(波長350nm〜800nm)には高い吸収性を示さないが、近赤外線吸収剤(波長800〜1400nmの放射線吸収剤)をさらに含む。特に、前記近赤外線吸収剤は、ペリレン類などの多環式有機化合物類と、金属酸化物類、混合金属酸化物類、複合酸化物類、金属硫化物類、金属ホウ化物類、金属リン酸塩類、金属炭酸塩類、金属硫酸塩類、金属窒化物類、六ホウ化ランタン、セシウムタングステン酸化物、インジウムスズ酸化物、アンチモンスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物およびこれらの組み合わせを含むナノ金属錯体化合物と、を含む有機染料から選択され得る。ある実施形態では、該近赤外線吸収剤の平均粒径は1〜200nmである。
【0074】
用いる粒子状のNIR吸収剤に応じて、該NIR吸収剤の量は、該組成物の0.00001〜5質量%の範囲で用いられる。好適な量を用いると、効果的なNIR吸収性が得られるため、当業者であれば、余分な実験を行うことなく容易にその量が決定できる。例えば、六ホウ化ランタンとセシウムタングステン酸化物の量は、該レーザー溶接可能組成物の全重量に対して、00001〜1質量%、さらにより具体的には00005〜0.1質量%、最も具体的には0.0001〜0.01質量%である。ある実施形態では、該NIR吸収剤を少量の熱可塑性高分子中に予め分散させると好都合であり、その後分散させた成分を該組成物に添加できる。例えば、該NIR吸収剤を事前にポリカーボネートと混合してNIR吸収剤を0.01〜5%含有する組成物を得、その後この組成物を残りの成分に添加することができる。あるいは、該NIR吸収剤を混合または押出し、できた混合/押出成分を該組成物に添加することも可能である。あるいは、該NIR吸収剤を混合または押出せずに該組成物に添加することも可能である。
【0075】
前記レーザー溶接可能組成物は、添加剤が該組成物の所望の特性に著しく悪影響を及ぼさないように選択されている限り、この種の組成物に通常組み込まれる他の種々の添加剤を含み得る。添加剤の組み合わせも用いられる。
【0076】
好適な添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収添加剤、抑制剤、可塑剤、潤滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材、難燃剤、防滴剤、放射線安定剤、離型剤あるいはこれらの組合せが含まれる。難燃剤を除くこれらの添加剤のそれぞれが使用される場合の量は、熱可塑性ブレンドとして典型的な量、例えば、該ブレンドの全重量に対して、0.001〜15質量%、具体的には0.01〜5質量%の範囲で用いられる。難燃剤の量は、組成物と充填材の全重量に対して、より典型的に1〜10質量%の範囲で用いられる。ガラス繊維などの充填材の量は、組成物の全重量に対して、0超〜50質量%、具体的には15〜30質量%の範囲で用いられる。
【0077】
ある実施形態では、前記レーザー溶接可能組成物は、その全重量に対してそれぞれ、0.1〜5質量%の熱安定剤、酸化防止剤および抑制剤を含む。別の実施形態では、充填材は含まれない。
【0078】
典型的な酸化防止剤としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイトなどの有機ホスファイト類;アルキル化モノフェノール類またはポリフェノール類;テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸エステル)]メタンなどのポリフェノール類とジエン類とのアルキル化反応生成物類;p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物類;アルキル化ヒドロキノン類;ヒドロキシ化チオジフェニルエーテル類;アルキリデン−ビスフェノール類;ベンジル化合物類;一価または多価アルコール類を有するβ−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸のエステル類;一価または多価アルコール類を有するβ−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸のエステル類;ジステアリルチオプロピオン酸塩、ジラウリルチオプロピオン酸塩、ジトリデシルチオジプロピオン酸塩、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸塩、ペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸塩などのチオアルキルまたはチオアーリル化合物のエステル類;β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸などのアミド類、あるいはこれらの酸化防止剤の少なくとも1つを含む組み合わせなどがある。酸化防止剤の量は、組成物の全重量に対して0.0001〜1質量%にできる。
【0079】
典型的な熱安定剤としては、例えば、亜リン酸トリフェニル、トリス−(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス−(混合モノ−およびジ−ノニルフェニル)ホスファイトなどの有機ホスファイト類;ジメチルベンゼンホスホネートなどのホスホン酸塩類、トリメチルホスフェートなどのようなリン酸塩類またはこれらの熱安定剤の少なくとも1つを含む組み合わせなどがある。熱安定剤の量は、組成物の全重量に対して0.0001〜1質量%にできる。
【0080】
典型的な光安定剤およびまたは紫外線(UV)吸収添加剤としては、例えば、(2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾールおよび2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾチアゾール類、およびこれらの光安定剤の少なくとも1つを含む組み合わせなどがある。光安定剤の量は、組成物の全重量に対して0.0001〜1質量%にできる。
【0081】
典型的なUV吸収添加剤としては、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン類;ヒドロキシベンゾトリアゾール類;ヒドロキシベンゾトリアジン類;シアノアクリレート類;オキサニリド類;ベンズオキサジノン類;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール(CYASORB(登録商標)5411);2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB(登録商標)531);2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)−フェノール(CYASORB(登録商標)1164);2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジン−4−オン)(CYASORB(登録商標)UV−3638);1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3、3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL(登録商標)3030);2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン);1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン;粒径が100nm未満の酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化亜鉛などのナノ無機材料;およびこれらのUV吸収剤の少なくとも1つを含む組み合わせなどがある。UV吸収剤の量は、組成物の全重量に対して0.0001〜1質量%にできる。
【0082】
可塑剤、潤滑剤およびまたは離型剤も使用される。これらの材料はかなりの部分重なっており、その中には例えば、ジオクチル−4,5−エポキシ−ヘキサヒドロフタレートなどのフタル酸エステル類;トリス−(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌレート;トリステアリン;レゾルシノールテトラフェニルジフォスフェイト、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)フォスフェイトおよびビスフェノールAのビス(ジフェニル)フォスフェニトなどの二官能性または多官能性芳香族リン酸塩;ポリ−α−オレフィン類;エポキシ化大豆油;シリコーン油を含むシリコーン;例えば、ステアリン酸メチルなどのアルキルステアリルエステル類などの脂肪酸エステル類などのエステル類;ステアリン酸ステアリル、ペンタエリトリトールテトラステアラートなど;ステアリン酸メチルと、ポリエチレングリコール高分子、ポリプロピレングリコール高分子およびこれらの共重合体を含む親水性および撥水性ノニオン界面活性剤と、の組み合わせ、例えば、適切な溶剤中のステアリン酸メチルとポリエチレン−ポリプロピレングリコール共重合体の組み合わせ;密蝋、モンタン蝋、パラフィン蝋などのワックス類などが含まれる。こうした材料の量は、組成物の全重量に対して、0.001〜1質量%、具体的には0.01〜0.75質量%、より具体的には0.1〜0.5質量%にできる。
【0083】
例えば、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(Rimar salt)、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、パーフルオロヘキサンスルホン酸テトラエチルアンモニウムおよびジフェニルスルホンスルホン酸カリウムなどのC2−16アルキルスルホン酸塩類;および、例えば、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびバリウム塩)と、例えば、NaCO、KCO、MgCO、CaCOおよびBaCOなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩、あるいはLiAlF、BaSiF、KBF、KAlF、KAlF、KSiFおよびまたはNaAlFなどのフルオロアニオン錯体などのオキソアニオンなどの無機酸錯塩と、の反応によって形成される塩類などの無機難燃剤も使用される。無機難燃剤塩類を使用する場合の量は、組成物の全重量に対して0.1〜5つの質量%にできる。
【0084】
使用可能な有機難燃剤には種々のリン含有化合物、特に、芳香族リン含有化合物および臭素化または塩素化有機化合物が含まれる。リン−窒素結合を含む有機化合物は、例えば、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜リン酸塩、ホスフィン酸化物およびリン酸エステル類などの化合物、例えば、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリス(ジクロロプロピル);リン酸トリス(2−クロロエチル);リン酸トリス(ブロモクロロプロピル)などが使用されるのと同様に使用され得る。臭素化有機化合物は、例えば、臭素化ビスフェノールA、テトラブロモフタル酸無水物などから誘導される化合物類、およびペンタブロモシクロヘキサン、ペンタブロモクロロシクロヘキサン、ヘキサブロモシクロヘキサン、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)−シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、クロロパラフィン類および類似の臭素−あるいは塩素−含有脂肪族または脂環式化合物類の、芳香族または脂環式環などの有機部分に直接結合した臭素原子を含む。
【0085】
好適な抑制剤としては、モノリン酸亜鉛などの無機酸類あるいは、例えばリン酸などの有機酸が含まれる。
【0086】
前記レーザー溶接可能組成物は、当分野で一般に用いられている方法で製造できる。例えば、レーザー溶接可能組成物のある製造方法は、前記熱可塑性高分子組成物と、白色顔料と、NIR吸収剤と、を溶融混合して該レーザー溶接可能組成物を製造するステップを備える。より具体的には、前記粉末状の熱可塑性高分子組成物と、白色顔料と、NIR吸収剤と、その他の選択的添加剤(例えば、酸化防止剤、γ線安定剤、熱安定剤、紫外線安定剤など)と、を最初にHENSCHEL−Mixer(登録商標)高速ミキサー中で混合する。手練りなどの他の低せん断方法でも混合できる。その後、該混合物をホッパーを経由して押出機入口に供給する。あるいは、1つまたは複数の成分を押出機入口およびまたはサイドスタッファ(sidestuffer)を介して下流に直接供給することによって該組成物に組み込むことができる。あるいは、任意の所望の添加剤、特に白色顔料をマスターバッチ内に混合し、該方法の任意の時点で残余の高分子成分と混合することができる。該押出機は一般に、該組成物の流動に必要な温度より高い温度で運転される。押出品を直ちに水浴中で冷却してペレット化する。こうしたペレットは、次の型成形、形成および造形に使用され得る。特定の実施形態では、レーザー溶接可能組成物の製造方法は、上記の任意の組成物を溶融して前記レーザー溶接可能組成物を製造するステップを備える。
【0087】
前記組成物を含む形成、造形あるいは型成形された物品も提供される。ある実施形態では、前記レーザー溶接可能組成物の溶解液を押出、鋳込、ブロー成形または射出成形して物品が製造される。該物品は、フィルムまたはシート状であってもよい。特定の実施形態では、上記の任意の組成物を含む形成、造形あるいは型成形された物品が開示される。
【0088】
別の特定の実施形態では、レーザー溶接可能組成物およびそれで製造された物品は、該組成物の全重量に対して、ポリカーボネートとポリエステルまたはこれらの組み合わせを含む75〜99.5質量%の熱可塑性高分子組成物と、0.0001〜1質量%の近赤外線吸収剤と、粒子状の二酸化チタン、硫化亜鉛およびこれらの組み合わせから選択された0.5〜5質量%の白色顔料と、を含んでおり、他の白色顔料は含まない。
【0089】
別の特定の実施形態では、レーザー溶接可能組成物およびそれで製造された物品は、組成物の全重量に対して、ビスフェノールAと、ポリ(ブチレンテレフタレート)と、メタクリレート−スチレン−ブタジエン耐衝撃性改良剤と、から誘導された単位を有するポリカーボネートを含む、75〜99.5質量%の前記熱可塑性高分子組成物と、六ホウ化ランタン、セシウムタングステン酸化物およびその組み合わせを含む、0.0001〜0.5質量%の近赤外線吸収剤と、粒子状の二酸化チタン、硫化亜鉛およびこれらの組み合わせから選択された、0.5〜5質量%の白色顔料と、を含んでおり、他の白色顔料は含まない。
【0090】
近赤外放射線波長に対して透過性の第1の熱可塑性成分と、前記レーザー溶接可能組成物を含む第2のレーザー溶接可能成分と、を含むレーザー溶接物品も本明細書で開示され、前記第1の熱可塑性成分の少なくとも一部の表面は、前記第2のレーザー溶接可能成分の少なくとも一部の表面にレーザー溶接されている。該レーザー溶接物品の前記第1の熱可塑性成分と前記第2のレーザー溶接可能成分間の引張せん断強度は、速度5mm/分での引張せん断試験に準じて測定して、10N/mm〜50N/mmであり得る。ある実施形態では、該レーザー溶接物品の第1の熱可塑性成分と第2のレーザー溶接可能成分間の引張せん断強度は、本明細書に記載の引張せん断試験に準じて測定して、15N/mmを上回る。ある実施形態では、該レーザー溶接物品の第1の熱可塑性成分と第2のレーザー溶接可能成分間の引張せん断強度は、本明細書に記載の引張せん断試験に準じて測定して、20N/mmを上回る。
【0091】
ある特定の実施形態では、前記第2のレーザー溶接可能成分は、ビスフェノールAから誘導される単位を有するポリカーボネートと、ポリ(ブチレンテレフタレート)と、メタクリレート−スチレン−ブタジエン耐衝撃性改良剤と、を含む75〜99質量%の熱可塑性高分子組成物と、六ホウ化ランタン、セシウムタングステン酸化物あるいはその組み合わせである、0.0001〜1質量%の近赤外線吸収剤と、二酸チタン顔料である0.5〜5質量%の白色顔料と、を含み、前記第2のレーザー溶接可能成分はそれ以外の白色顔料を含まず、ここで、前記第1の熱可塑性成分と前記第2のレーザー溶接可能成分間の引張せん断強度は、速度5mm/分での引張せん断試験に準じて測定して、15N/mmを上回ることを特徴とするレーザー溶接可能物品が開示される。
【0092】
また、近赤外放射線波長に対して少なくとも部分的に透過性の第1のレーザー溶接可能熱可塑性成分の少なくとも一部の表面を、請求項1に記載のレーザー溶接可能組成物を含む第2のレーザー溶接可能成分の少なくとも一部の表面に接触させるステップと、前記第1の熱可塑性成分を経由して前記2のレーザー溶接可能成分に対して、前記第1の熱可塑性成分を前記第2のレーザー溶接可能成分に対して効果的に溶接する放射強度で、近赤外線レーザで照射するステップと、を備える熱可塑性成分のレーザー溶接方法も開示される。
【0093】
上記のプロセスは、添付図の物品10として概略的に示されている。前記第1の熱可塑性成分12は、近赤外線に対して少なくとも部分的に透過性であれば、当分野で既知の任意の熱可塑性高分子組成物を含む。レーザー暴露14は、前記第1の熱可塑性成分12を経由して第2のレーザー溶接可能成分16に向けて行われ、レーザー暴露14は吸収されて2つの層の界面18で熱が発生する。この熱によって、2つの層間に局部的な融液たまり20が生成し、第1の熱可塑性成分12が第2のレーザー溶接可能成分16に溶接される。レーザー暴露12は通常、スポット暴露を重ねた直線経路をたどって行われ、溶接線22ができる。
【0094】
以下の限定しない実施例によって本発明をさらに説明する。
(実施例)
(材料)
【0095】
表Aに示す材料を下の実施例に用いた。
【0096】

【0097】
(技術と手順)
日立U−3410あるいはPerkin−Elmer Lambda950分光光度計を用いて、近赤外線(NIR)透過データおよび反射データを1064nmで測定した。測定した部分の厚みを表に示す。
【0098】
試験片16の高光沢表面60mm×60mm×1.6mmと対応する高光沢部品12とを、溶接のために図で示すように配置する。表A、BおよびCで示す部品はLEXAN(登録商標)EXL1414T−NA8A005Tであり、表Dの組成はLEXAN(登録商標)103R−111である。オーバーラップした部分をその後、ビーム径が2mmのでダイオードレーザー(960nm)で照射した。照射強度および走査速度を表に示す。
【0099】
該レーザー溶接した試験片を、例えば幅15mmまたは20mmにのこぎりで切断した後、この試験片を固定し、引張試験機(Lloyd draw bench:LR30K)を用いて速度5mm/分で溶接部分全域に荷重を掛けて引張強度を測定した。溶接強度は、溶接部分で分離した最大破断荷重として求められ、溶接幅(レーザービーム幅)×溶接長さ(例えば15mmまたは20mm)として計算される。
【0100】
前記NIR吸収剤、六ホウ化ランタン(LaB)およびセシウムタングステン酸化物(CTO)をそれぞれ、分散負荷0.25質量%でポリカーボネート中に単分散として供給した。LaBとCTOの主要な粒径は(X線で測定して)20nmであった。これらの粒子はPC中で、最大120nmまでの緩やかな集塊を形成した。
【0101】
公称融点を250〜275℃、減圧度を水銀柱25インチ(635mm)、回転数を450rpmとして、Werner & Pfleiderer 25mm二軸押出機上に溶融押出してPC/PBTサンプルを調製した。押出品をペレット化し100℃で3時間乾燥した。
【0102】
公称融点を220〜260℃、減圧度を水銀柱25インチ(635mm)、回転数を450rpmとして、Werner & Pfleiderer 25mm二軸押出機上に溶融押出してABSサンプルを調製した。押出品をペレット化し90℃で3時間乾燥した。
【0103】
公称融点を290〜320℃、減圧度を水銀柱25インチ(635mm)、回転数を450rpmとして、Werner & Pfleiderer 25mm二軸押出機上に溶融押出してPCサンプルを調製した。押出品をペレット化し120℃で3時間乾燥した。
【0104】
PC/PBTサンプルは公称温度250〜290℃で、ABSサンプルは250〜290℃で、PCサンプルは290〜320℃で、前記乾燥ペレットを射出成形して、下記のほとんどの試験用の試験片16を製作した。
【0105】
さらに、試験片16に溶接する6mm×6mm×2.5mm大きさの試験片12(図1)をデータシートに従って、Lexan EXL1414T−NA8A005TおよびLexan103R−111から製作した。
(結果)
【0106】
表1、2、3および4に従って組成物を処方した。量はすべて、組成物の全重量に対する質量%である。
【0107】

【0108】
(考察)
本発明組成物の有益な効果は実施例1〜6により証明される。NIR吸収剤を用いていない比較実施例1から選択された試験片16では、レーザー溶接できなかった。比較実施例2と実施例1〜5との比較および比較実施例3と実施例6との比較から、TiOなどの顔料を添加するとNIRの光学的散乱量が増加することがわかる。しかし、実施例1〜6に基づいたレーザー溶接物品は、白色顔料がない対照試料と比較して高い溶接強度を示す優れた引張強度を有していた。
【0109】

【0110】
(考察)
表1の実施例4と表2の実施例7〜9とを比較すると、二酸化チタンの粒径が溶接の引張強度に影響することは明らかである。実施例10〜12の比較によっても、白色顔料の種類が溶接部の引張強度に影響することがわかる。
【0111】

【0112】
(考察)
表3の結果から、組成物の有益な効果は、異なる熱可塑性組成物で存在することがわかる(比較実施例4と実施例13〜14との比較)。
【0113】

【0114】
(考察)
異なる熱可塑性組成物における組成物の有益な効果は、比較実施例5と実施例15〜16との比較から明らかである。実施例15〜16に基づくレーザー溶接物品から、TiOの添加によってNIRの光学的散乱量が増加するが、それにもかかわらず、溶接部の引張せん断強度が増加することがわかる。
【0115】
典型的な実施形態を例示の目的で記載したが、前述の記載は、本発明の範囲を制限するものではない。従って、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者は様々な修正、適応および代替案を考え得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の全重量に対して、
0超〜99.95質量%の熱可塑性高分子組成物と、
0.00001〜5質量%の近赤外線吸収剤と、
0.0〜0.02質量%のカーボンブラックと、
0.05〜20質量%の白色顔料と、
を含むことを特徴とするレーザー溶接可能組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性高分子組成物は、オレフィン系高分子類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリスチレン、ポリアリーレンエーテル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂類、ポリスルホン類、ポリエーテル類、アセタール樹脂類、ポリエステル類、ビニル系高分子類、アクリル類、エポキシ類、ポリカーボネート類、ポリエステル−ポリカーボネート類、スチレン−アクリロニトリル共重合体類およびこれらの組み合わせから構成される群から選択される高分子を含むことを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性高分子組成物は、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミドおよびこれらの組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性高分子は、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート)およびこれらの組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性高分子組成物は、ポリカーボネートとポリエステルの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性高分子組成物は、その全重量に対して、
10〜90質量%のポリカーボネートと、
10〜90質量%のポリエステルと、
0〜40質量%の耐衝撃性改良剤と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性高分子組成物はさらに、天然ゴム、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート−ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフフタレート/イソフタレート−ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、シリコーンゴムあるいはこれらの耐衝撃性改良剤を少なくとも1つ含む組み合わせである耐衝撃性改良剤を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性高分子組成物は、
40〜60質量%のポリカーボネートと、
40〜60質量%のポリエステルと、
1〜20質量%の耐衝撃性改良剤と、
を含み、さらに、前記ポリカーボネートはビスフェノールAから誘導される単位を含み、前記ポリエステルはポリ(ブチレンテレフタレート)であり、前記耐衝撃性改良剤はコアシェルポリマーであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項9】
前記近赤外線吸収剤は、多環式有機化合物類、ペリレン類、金属酸化物類、混合金属酸化物類、複合酸化物類、金属硫化物類、金属ホウ化物類、金属リン酸塩類、金属炭酸塩類、金属硫酸塩類、金属窒化物類、六ホウ化ランタン、セシウムタングステン酸化物、インジウムスズ酸化物、アンチモンスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物およびこれらの組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項10】
前記近赤外線吸収剤は、六ホウ化ランタン、セシウムタングステン酸化物およびこれらの組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項11】
前記近赤外線吸収剤の平均粒径は1〜200nmであることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項12】
組成物の全重量に対して、0.1〜15質量%の白色顔料を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項13】
前記白色顔料の平均粒径は0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項14】
前記白色顔料は、粒子状の二酸化チタン顔料、粒子状の硫化亜鉛顔料およびこれらの組み合わせから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項15】
前記二酸化チタン、前記硫化亜鉛およびこれらの組み合わせ以外の白色顔料を本質的に含まないことを特徴とする請求項14に記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項16】
硫酸バリウム、雲母、タルクあるいはカーボンブラックを含まないことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項17】
組成物の全重量に対して、
ポリカーボネート、ポリエステルあるいはこれらの組み合わせを含む75〜99.5質量%の前記熱可塑性高分子組成物と、
0.0001〜1質量%の近赤外線吸収剤と、
粒子状の二酸化チタン、硫化亜鉛およびこれらの組み合わせから選択される0.5〜5質量%の白色顔料と、
を含み、それ以外の白色顔料を含まないことを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項18】
組成物の全重量に対して、
ビスフェノールAから誘導される単位を含むポリカーボネートと、ポリ(ブチレンテレフタレート)と、メタクリレート−スチレン−ブタジエン耐衝撃性改良剤と、を含む75〜99.5質量%の前記熱可塑性高分子組成物と、
六ホウ化ランタン、セシウムタングステン酸化物あるいはこれらの組み合わせを含む0.0001〜0.5質量%の近赤外線吸収剤と、
粒子状の二酸化チタン、硫化亜鉛およびこれらの組み合わせから選択される0.5〜5質量%の前記白色顔料と、
を含み、それ以外の白色顔料を含まないことを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶接可能組成物。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれかに記載の前記成分を溶融混合して前記レーザー溶接可能組成物を製造するステップを備えることを特徴とするレーザー溶接可能組成物の製造方法。
【請求項20】
請求項1乃至請求項19のいずれかに記載の前記レーザー溶接可能組成物を含むことを特徴とする物品。
【請求項21】
請求項1乃至請求項19のいずれかに記載の前記レーザー溶接可能組成物を、製造、押出、鋳込あるいは型成形するステップを備えることを特徴とする物品の製造方法。
【請求項22】
近赤外線放射波長に対して少なくとも部分的に透過性の第1のレーザー溶接可能熱可塑性成分と、
請求項1乃至請求項19のいずれかに記載の前記組成物を含む第2のレーザー溶接可能成分と、
を含み、前記第1のレーザー溶接可能熱可塑性成分の少なくとも一部の表面は、前記第2のレーザー溶接可能成分の少なくとも一部の表面にレーザー溶接されていることを特徴とするレーザー溶接可能物品。
【請求項23】
前記第1の熱可塑性成分と前記第2のレーザー溶接可能成分間の引張せん断強度は、速度5mm/分での引張せん断試験に準じて測定して、10N/mm〜50N/mmであることを特徴とする請求項20に記載のレーザー溶接可能物品。
【請求項24】
前記第2のレーザー溶接可能成分は、
ビスフェノールAから誘導される単位を有するポリカーボネートと、ポリ(ブチレンテレフタレート)と、メタクリレート−スチレン−ブタジエン耐衝撃性改良剤と、を含む75〜99.5質量%の前記熱可塑性高分子組成物と、
六ホウ化ランタン、セシウムタングステン酸化物あるいはこれらの組み合わせである0.0001〜0.5質量%の前記近赤外線吸収剤と、
二酸化チタン顔料である0.5〜5質量%の前記白色顔料と、
を含み、前記第2のレーザー溶接可能成分はそれ以外の白色顔料を含まず、前記第1の熱可塑性成分と前記第2のレーザー溶接可能成分間の引張せん断強度は、速度5mm/分での引張せん断試験に準じて測定して、15N/mmを上回ることを特徴とする請求項22に記載のレーザー溶接可能成分。
【請求項25】
近赤外線放射波長に対して透過性の第1のレーザー溶接可能熱可塑性成分の少なくとも一部の表面を、請求項1乃至請求項19のいずれかに記載のレーザー溶接可能組成物の第2のレーザー溶接可能熱可塑性成分の少なくとも一部の表面に接触させるステップと、
前記第1の熱可塑性成分を経由して前記第2のレーザー溶接可能熱可塑性成分に対して、前記第1のレーザー溶接可能熱可塑性成分を前記第2のレーザー溶接可能熱可塑性成分に効果的に溶接する放射強度で、近赤外線レーザーで照射するステップと、
を備えることを特徴とする熱可塑性成分のレーザー溶接方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−503338(P2011−503338A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534579(P2010−534579)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054821
【国際公開番号】WO2009/066232
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】