説明

レーザ加工方法及びその装置

【課題】 本発明は、多層配線基板の同一層内で、複数種の径のビアを効率良く多数形成でき、パッケージデザインの自由度を上げるレーザ加工方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 T1コードの穴H11、H12に、各位置座標を1個ずつ割り当て、T2コードの穴H21、H22には、各位置座標を2個ずつ割り当て、T3コードの穴H31には、当該位置座標を3個割り当て、レーザ光移動のための位置データ列を作成する。基板上でのレーザ光の移動は、端から順に、移動1乃至移動5の矢印のように行われ、複数種の穴径のうち最小の径に集束されたレーザ光が、H11では、1ショット、H21では、2ショット、H31では、3ショット、H12では、1ショット、そして、H22では、2ショット照射される。穴径の大きさに応じた位置データ数だけ、1ショットずつ重ねてレーザ光照射すると、穴径の異なる穴が開けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法及びその装置に関し、特に、所定径に集束されたレーザ光を用いて、多層配線基板などの被加工物に穴径の異なる複数の穴を効率よく開けることができるレーザ加工方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化に伴い、プリント配線基板に実装される実装部品の高密度化、狭リードピッチ化が進んでいる。このような進歩に対応するために、プリント配線基板に形成するビアホールの径も微細化されている。さらには、回路の実装密度を向上する多層配線基板も多く使用されている。
【0003】
従来におけるプリント配線基板に対する穴あけ加工は、数値制御(NC)ドリルによる機械的加工や、露光技術による加工(フォトビア方式)により行われていた。しかし、NCドリルでは、開けられる穴の径には限界があり、また、ドリルの刃が折れるなどの問題も多い。一方、フォトビア方式でも、開けられる穴の径には限界があり、しかも材料費が高くなるという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題点を解消する手段として、最近では、レーザ光によって微細穴開け加工を行うレーザ加工装置が使用されている。このレーザ加工装置では、図7に示されるように、レーザ発振器を含むレーザ光出力装置1からパルス状のレーザ光Lを発生し、このレーザ光Lを、集光光学系2によって、加工テーブル3上に載置された被加工物である基板5に向けて集光するようにしている。
【0005】
このレーザ加工装置において、一つの穴に対するパルス個数やエネルギーの調整は、制御装置4の処理部41によって、格納部42に記憶された制御データに従って行われ、所望の深さの穴あけ加工を実現している。さらに、格納部42に記憶された制御データに従って、加工テーブル3のNC位置制御が行われ、この制御によって、基板5上の穴開け予定されている複数の加工位置に、レーザ光Lの集束点が合わされる。
【0006】
一方、穴の径については、レーザ光の導光路に径を規定するためのマスクを配置し、このマスクでレーザ光を絞り込むことで、被加工物に設ける穴を小さくすることが種々提案されている(例えば、特許文献1乃至3などを参照)。特許文献1に記載されたマスクでは、被加工物であるプリント配線基板に設けるビアホールの径を高速に切り換えられる回転板で形成される。この回転板には、複数のビアホール径を規定し、レーザ光が通過する多種類の穴が備えられ、該基板に向けて照射されるレーザ光の光路途中に配置される。
【0007】
また、レーザ光の集光光学系の構成を工夫して、被加工物に開ける穴の径を変更するようにしたレーザ加工装置が種々提案されている(例えば、特許文献2などを参照)。特許文献2に記載のレーザ加工装置では、レーザ発振器と被加工物との間の光路中に挿入されたマスクの像を加工面に縮小結像するレンズを有した像転写光学系と、集光光学系と、像転写光学系と集光光学系とのいずれかを選択する選択手段とを備えている。NC制御装置が像転写光学系と集光光学系と選択手段とを制御し、加工する穴径と穴の深さに応じて、像転写光学系と集光光学系とのいずれかを選択するようにしている。
【0008】
以上のレーザ加工装置では、被加工物に開ける穴の径に合わせて集束されたレーザ光によって、穴開け加工が行われるものであり、穴径の大きさを変更するために、複数種の穴を有するマスクや、集束径可変の集光光学系が使用されたが、所定径に集束したレーザ光を複数回、位置をずらして照射することにより、穴径の大きさを変更できるレーザ加工装置も提案されている(例えば、特許文献3、5などを参照)。
【0009】
一方、被加工物であるシリコンチップにおいて、そのチップのI/Oパッドの増加に対応して、ピッチ間隔の狭い略格子状に配列した貫通孔をレーザ光の照射によって形成するレーザ加工装置が提案されている(例えば、特許文献4を参照)。このレーザ加工装置では、レーザ光の照射時に、加工熱の熱放散不良に伴うシート材の変形、変質や、貫通孔の変形を防止し、精度の高い貫通孔を形成する穿孔方法が採用されている。
【0010】
この穿孔方法においては、被加工物の所定シートに対して、レーザ光の照射によって、略格子状に配列した貫通孔が形成される。略格子配列のほぼ中心部に位置する穿孔ポイントを始点とし、この始点から外側に向かって略同心円状に穿孔ポイントを移動させながら、所定径に集束されたレーザ光を照射する。特に、略格子状に配列した穿孔ポイントの全てに少なくとも1パルスずつのレーザ光を照射する工程を複数回繰り返し、全ての穿孔ポイントに貫通孔を形成するようにしている。
【0011】
【特許文献1】特開平9−271972号公報
【特許文献2】特開平9−293946号公報
【特許文献3】特開2000−263263号公報
【特許文献4】特開2002−35977号公報
【特許文献5】特開2004−87879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、ビルドアップ型の多層配線基板においては、多数のビアを必要としている。そのビアに対しては、ビアの接続信頼性の確保が重要であり、さらには、電源系のビアでは、配線抵抗を下げることが重要となる。そのために、パッケージデザインにおける配線基板の設計者側からの要望として、積層された同一層上では、そのビアの用途に応じて、ビアの穴径を変えることが求められる。
【0013】
ビアの用途に応じて、その穴径を変えるものとして、例えば、電源系の配線用ビアの場合には、穴径を大きくして、抵抗値を下げるようにする。また、熱応力的にストレスが掛かるような重ね合わせビアや、スルーホールめっき(PTH)されるビアなどの場合には、その穴径を大きくして、接続強度を増加させる。或いは、熱応力的なストレスが掛からないビアの場合には、穴径を小さくして、ビア数の密度を上げられるようにする。この様にして、パッケージの特性向上や、信頼性の向上を図っている。
【0014】
上述した従来のレーザ加工装置を使用して、多層配線基板に設けられる多数のビアをレーザ光穴開けで形成するときには、同一層に穴径の異なる複数のビアを加工する場合、先ず、最初の工程で、ある一種の大きさを有する穴径のビアの全てについて、基板内の全面に穴開け加工が実行され、次いで、異なる大きさを有する穴径のビアの全てについて、レーザ光の集束スポット径を当該穴径に変更した後、再度、基板内の全面に穴開け加工が実行される。この様に、複数種の異なる穴径のビアについて、レーザ光の集束スポット径を変更しながら、基板全面の穴開け加工が繰り返される。
【0015】
以上のような穴開け手順により、穴径の異なる複数のビアについて穴開け加工を行うと、図7に示された従来のレーザ加工装置を使用する場合、基板5の全面に渡った加工位置制御による加工テーブル3の機械的移動が、穴径の異なる数分の回数繰り返されることになる。そのため、一枚の基板に対する穴開け加工時間に、無駄が発生し、同一面に全て同じ穴径のビアを形成する場合に比較して、1.3〜1.5倍程度のコスト上昇が生じ、同一層内での穴径変更を必要とするような多層配線基板のデザインの採用を制限する結果となっていた。
【0016】
そこで、本発明は、プリント配線基板内で、或いは、ビルドアップ型の多層配線基板における同一層内で、必要に応じた複数種のビアを効率良く多数形成することができ、しかも、パッケージデザインの自由度を向上させることができるレーザ加工方法及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上の課題を解決するために、本発明では、所定径に集束されたレーザ光の照射によって被加工物に穴径の異なる複数の穴を開けるレーザ加工方法において、前記所定径を前記複数穴の中の最小径に合わせて集束された前記レーザ光の照射手段が、前記穴の該当加工位置に順次相対移動される移動ステップと、前記照射手段が各々の加工位置に相対移動されたとき、当該加工位置に係る穴径の大きさに応じて前記レーザ光を所定回数照射する照射ステップと、を含めた。
【0018】
そして、前記照射手段が前記加工位置に相対移動されたとき、該加工位置に係る前記穴が最小径である場合には、前記レーザ光は、前記被加工物に向けて1回照射され、該加工位置に係る穴径が最小径より大きい場合には、前記レーザ光は、前記被加工物に向けて該大きさに応じて2回以上照射されることとし、前記照射手段は、前記複数の穴に係る加工位置間の移動距離が最短となる経路を選択されて移動されることとした。
【0019】
さらに、前記複数の穴の各々に係る加工位置データと穴径情報とを入力する入力ステップと、前記複数の穴に係る穴径情報に含まれる穴径の大きさに応じて、前記加工位置データをグループ分けするグループ分けステップと、前記穴径が最小径であるグループに属する加工位置データに、前記レーザ光を1回照射する条件の付与を行い、前記穴径が最小径より大きい順に分けられた各グループに属する加工位置データに、前記レーザ光を該大きさに応じて順に2回以上照射する条件の付与を行う条件付与ステップと、を含み、前記照射手段が各々の加工位置に移動されたとき、当該加工位置データに付与された前記条件に従って、前記レーザ光が所定回数照射されることとした。
【0020】
前記加工位置データは、前記被加工物上の位置座標を有し、該加工位置データは、前記レーザ光を1回照射する条件のとき、当該加工位置に係る位置座標を1個とし、前記レーザ光を穴径の大きさに応じて2回以上照射する条件のとき、当該加工位置に係る位置座標を2個以上とされるデータ変換ステップにより、データ変換されており、前記照射手段が各々の加工位置に移動されたとき、当該加工位置データに含まれる位置座標の個数に従って、前記レーザ光が該個数回照射されることとした。
【0021】
前記照射手段が前記加工位置に移動されたとき、該加工位置に係る前記穴が、電源配線用ビア、熱応力的ストレスの掛かる重ね合わせビア又はスルーホールめっきされたビアである場合には、前記レーザ光を穴径の大きさに応じて2回以上照射することとした。
【0022】
また、本発明のレーザ加工装置においては、被加工物に開けられる穴径の異なる複数の穴の中での最小径に合わせてレーザ光を所定径に集束し、照射部から該被加工物上に該レーザ光を照射する照射装置と、前記被加工物における前記複数の穴の加工位置を前記レーザ光の集束位置に順次相対移動させる移動装置と、前記照射装置によるレーザ光照射と、前記加工位置及び前記集束位置の位置合わせとを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記照射部を前記複数の穴に係る該当加工位置に順次相対移動させたとき、当該加工位置に係る穴径の大きさに応じて前記レーザ光を所定回数照射させることとした。
【0023】
そして、前記制御装置は、前記照射部を前記加工位置に移動したとき、該加工位置に係る前記穴が最小径である場合には、前記照射装置に前記レーザ光を前記被加工物に向けて1回照射させ、該加工位置に係る穴径が最小径より大きい場合には、前記照射装置に前記レーザ光を前記被加工物に向けて該穴径の大きさに応じて2回以上照射させることとし、前記照射部を、前記複数の穴に係る加工位置間の移動距離が最短となる経路を選択して移動させることとした。
【0024】
前記複数の穴の各々に係る加工位置データと穴径情報とを入力する入力装置と、入力された前記複数の穴の各々に係る前記加工位置データと前記穴径情報とを記憶する格納部と、を備え、さらに、前記制御装置は、前記格納部から、前記加工位置データと前記穴径情報を読み出し、前記複数の穴に係る穴径情報に含まれる穴径の大きさに応じて、前記加工位置データをグループ分けするグループ分け手段と、前記穴径が最小径であるグループに属する加工位置データに、前記レーザ光を1回照射する条件の付与を行い、前記穴径が最小径より大きい順に分けられた各グループに属する加工位置データに、前記レーザ光を該大きさに応じて順に2回以上照射する条件の付与を行う条件付与手段と、を有し、前記制御装置は、前記照射部を各々の加工位置に相対移動させたときに、前記条件付与手段が当該加工位置データに付与した前記条件に従って、前記照射装置に前記レーザ光を所定回数照射させることとした。
【0025】
前記入力装置に入力される前記加工位置データは、前記被加工物上の位置座標を有し、前記制御装置は、前記加工位置データの各々に前記レーザ光を1回照射する条件を付与する場合には、該加工位置データの各々を、当該加工位置に係る位置座標を1個ずつとし、前記加工位置データの各々に前記レーザ光を穴径の大きさに応じて2回以上照射する条件を付与する場合には、該加工位置データの各々を、当該加工位置に係る位置座標を2個以上ずつとするデータ変換手段を備え、前記制御手段は、前記照射部を各々の加工位置に移動させたとき、前記データ変換手段によりデータ変換された当該位置座標の個数に従って、前記照射装置に前記レーザ光を当該個数回照射させることとした。
【0026】
前記データ変換手段は、複数の前記加工位置データによるX軸座標データとY軸座標データによる座標データ列を作成するものとし、前記レーザ光を穴径の大きさに応じて2回以上照射する条件が付与されるグループにおいて、前記加工位置データに係るX軸座標データ又はY軸座標データが同じ場合には、当該X軸座標データ又はY軸座標データを1個のみを含めて前記座標データ列を作成することとした。
【0027】
前記レーザ加工装置においても、前記照射部が配線基板の前記加工位置に相対移動されたとき、該加工位置に係る前記穴が、電源配線用ビア、熱応力的ストレスの掛かる重ね合わせビア又はスルーホールめっきされるビアである場合には、前記レーザ光を穴径の大きさに応じて2回以上照射することとした。
【発明の効果】
【0028】
以上の様に、本発明によれば、所定径に集束されたレーザ光の照射によって被加工物に穴径の異なる複数の穴を開けるレーザ加工の際に、被加工物に照射されるレーザ光の所定径が、穴開けされる複数種の穴径のうちで最小径とされ、該レーザ光が、穴開けの該当加工位置に順次移動され、前記レーザ光が各々の加工位置に移動されたとき、当該加工位置に係る穴径の大きさに応じて前記レーザ光を所定回数照射するようにしたので、被加工物の同一面内に、穴径の異なる複数の穴が混在していても、レーザ光の照射回数を変更するだけで、穴開けの穴径の切換えを円滑に行うことができ、レーザ光が、一連の移動によって、交互に存在する複数種類の径の穴を開けることができる。
【0029】
本発明によれば、複数種類の穴径を有する穴を複数穴開けする場合に、1種類の穴開け加工の終了毎の機械原点に戻る移動作業時間が不要となり、穴開け加工時間の短縮を図ることができ、穴開け効率を向上し、コスト低減を図ることができる。
【0030】
さらに、以前においては、被加工物の同一面内に、異なる穴径の穴を複数配置するようにデザインをすると、コストが嵩むことになるため、例えば、多層配線基板のパッケージデザインに影響していたが、本発明のレーザ光による穴開け加工方法を採用することにより、複数種類の穴径を有する複数の穴を開けるデザインを採用し易くなり、デザインの自由度を向上させるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、所定径に集束されたレーザ光の照射によって被加工物に穴径の異なる複数の穴を開けるレーザ加工方法及びその装置について、以下に、本発明の実施形態が説明されるが、この説明の前に、本発明の効果をより明確にするため、本発明の基礎となる穴径の異なる複数の穴を被加工物の同一面に開けるレーザ加工方法について、図8乃至図13を参照しながら説明する。
【0032】
上述した従来のレーザ加工装置では、被加工物に穴開け使用とする穴の径を変更する場合には、レーザ光の経路に径の異なる穴を有するマスクを配置するか、或いは、レーザ光の集光光学系の絞りを変更することによって穴径の変更が行われていた。これらの穴径の変更には、特別の機構を必要とし、この制御が複雑になる。しかも、コスト上昇にもなるばかりでなく、穴開けの加工時間が長くなるという問題があった。
【0033】
そこで、レーザ光による微細な穴開けを行う場合、所定径に集束されたレーザ光を、被加工物の同一位置に複数回(ショット)照射すると、該所定径よりも大きい径の穴が開くという現象を利用して、所定径のレーザ光の同一位置へのショット数を変更すると、穴径の異なる穴開けを実現できる。この穴開けの実験例が、図8に示されている。
【0034】
図8では、横軸にショット数が、そして縦軸に穴径の大きさが表されている。ここでは、レーザ光が、所定径として、50μmに集束されている場合が示されている。白丸は、1ショット照射の場合、二重丸は、2ショット照射の場合、黒丸は、3ショット照射の場合をそれぞれ示している。図8の例では、被加工物に貫通孔を開けた場合が示され、その貫通孔のトップ径とボトム径とでは、差があるが、レーザ光のショット数に応じて、穴径が大きくなることが示されている。これによれば、被加工物の穴明け加工位置に照射される回数を変更すれば、所定径に集束されたレーザ光であっても、所定径以上の大きさの穴を開けることができる。
【0035】
以上のレーザ光による穴明けの原理を利用して、被加工物の例として、配線基板に異なる穴径の複数の穴を開ける場合について、図9(a)及び(b)を参照して説明する。レーザ加工装置は、図7に示されたものが使用され、基板5は、加工テーブル3上に載置される。レーザ光Lは、集光光学系2によって所定径に集束される。そして、集束されたレーザ光の加工位置への移動は、制御装置4が加工テーブル3を格納部42に記憶された位置データに従って位置制御することによって行われる。
【0036】
図9(a)は、所定径の穴H11、H12、H13、・・・を順次に穴開けする移動の仕方が示されている。白丸で表示された穴H11、H12、H13、・・・の加工位置においては、所定径のレーザ光が1ショット照射される。一方、図9(b)では、所定径より大きい穴を開ける場合が示されており、二重丸で表示された穴H21、H22、H23、・・・の加工位置においては、所定径のレーザ光が2ショット照射される。
【0037】
図9(a)及び(b)では、それぞれで穴径が異なる場合のレーザ光の移動手順が示されたが、実際に、配線基板上に異なる穴径の複数の穴を開ける必要性がある場合について、そのレーザ光の移動手順、つまり、加工テーブル3の位置制御の手順について、図10を参照して説明する。図10においては、基板5に3種類の穴径を有する複数の穴を開ける場合の例が示されている。図10では、白丸は、最小径の穴開けの加工位置を、二重丸は、最小径より1段階大きい穴開けの加工位置を、そして、黒丸は、さらに1段階大きい穴開けの加工位置を示している。
【0038】
基板5に3種類の穴径を有する複数の穴を開ける場合、同一種類の穴径を有する穴の加工位置についてグループ分けがされる。図10では、白丸、二重丸、黒丸の3グループに分けられ、それぞれ第1乃至第3のグループに属する加工位置について、第1グループでは、1ショットのレーザ光照射、第2グループでは、2ショット照射、第3グループでは、3ショット照射される。これらのグループに属する加工位置が、基板5の全面に拡がっているものとする。
【0039】
そこで、各グループ内の穴の加工位置に対して、順次加工位置をずらしながら、所定径に集束されたレーザ光が1乃至3ショットずつ照射されるが、それぞれのグループ内において、レーザ光の移動量が最小となるような経路が選択され、加工位置の移動順番が設定されている。図10に示されるように、所定径を有する穴H11、H12、H13、・・・H1mを開ける加工位置(白丸)の移動は、H11を始点として、実線で示されるように、基板5の左上に示されるH1mまでとなる。制御装置4は、レーザ光の照射位置がH11からH1mの加工位置に移動する毎に、レーザ光出力装置1が、レーザ光を1ショット照射するように制御を行う。
【0040】
次に、二重丸で表示される第2グループの穴H21、H22、H23、・・・H1nの穴開けを実行するために、制御装置4は、レーザ光出力装置1が、加工位置毎にレーザ光を2ショット照射するように制御し、図中において破線で示されるように、加工テーブル3をレーザ光の照射位置がH1mからH21に移動した後、図中において太い実線で示されるように、H21を始点として、H22、H23、・・・H2nの順に移動される。制御装置4は、基板5の上に示されるH2nまで、レーザ光の照射位置が加工位置に移動する毎に、レーザ光出力装置1が、レーザ光を2ショット照射するように制御を行う。
【0041】
さらに、第1及び第2グループの場合と同様に、黒丸で表示される第3グループの穴H31、H32、H33、・・・H3kの穴開けを実行するために、制御装置4は、レーザ光出力装置1が、加工位置毎にレーザ光を3ショット照射するように制御し、図中において破線で示されるように、制御装置4は、加工テーブル3をレーザ光の照射位置がH2nからH31に移動した後、図中において二重線で示されるように、H31を始点として、H32、H33、・・・H3kの順に移動させながら、H3kまで、レーザ光の照射位置が加工位置に移動する毎に、レーザ光を3ショット照射する。
【0042】
以上のように、基板5に、3種類の穴径を有する複数の穴を、所定径を有するレーザ光で穴開けする場合のレーザ光の移動手順について例を説明したが、この場合における加工位置と加工条件の関係について、図11を参照して説明する。図11では、図10に示された穴の配置例の一部を利用してその関係が示されている。
【0043】
図11に示されるように、基板5上で、穴径の異なる複数の穴H11、H21、H31、H12、H22が配置されているとする。第1グループに属する穴H11とH12については、基板5上の位置座標を(X11、Y11)、(X12、Y12)とし、所定径の穴を開けることが加工条件となっているので、レーザ光を1ショット照射するというT1コードの加工条件が付与される。
【0044】
第2グループに属する穴H21とH22については、基板5上の位置座標を(X21、Y21)、(X22、Y22)とし、所定径より1段大きい穴を開けることが加工条件となっているので、レーザ光を2ショット照射するというT2コードの加工条件が付与される。さらに、第3グループに属する穴H31については、基板5上の位置座標を(X31、Y31)とし、所定径よりさらに大きい穴を開けることが加工条件となっているので、レーザ光を3ショット照射するというT3コードの加工条件が付与される。
【0045】
図11に示された場合のレーザ光の移動手順は、図10に示された第1乃至第3グループに係る複数の穴を開けるレーザ光の移動手順と同様であり、T1コードが付与されたH11から始まり、移動1の矢印に従って、T1コードのH12に移動し、T1コードに係る穴開け加工を行う。T1コードの穴全てに加工を行った後に、破線で示される移動2の矢印に従って、T2コードの穴開け加工に移行する。
【0046】
T2コードが付与されたH21から始まり、移動3の矢印に従って、T2コードのH22に移動し、T2コードに係る穴開け加工を行う。T2コードの穴全てに加工を行った後に、破線で示される移動4の矢印に従って、T3コードの穴開け加工に移行する。そして、T3コードが付与されたH31において、T3コードに係る穴開け加工を行う。二重線で示されるように、T3コードの穴全てに加工を行った後に、基板5上の3種類の異なる穴径を有する複数の穴開けが終了する。
【0047】
図11に示された穴開けの加工位置と加工条件との関係付けの仕方に従って、図10に示された穴開けの例について、穴開けのグループ分けと、加工位置と加工条件との関係付けを、図12に示した。図12の座標欄には、3つの四角枠で囲まれているように、T1コードグループ、T2コードグループ、T3コードグループに、穴開け加工位置の座標値がグループ分けされている。
【0048】
座標欄に記載された各穴の座標値は、制御装置4に接続された入力装置によって、位置データとして格納部42内に記憶される。ここで記憶された位置データの構成が、図12のデータ欄に示されている。各穴の穴開け位置に対応する座標値が、加工条件としてT1乃至T3コードが付与されてグループ毎に位置データ列として記憶されるが、このデータ欄に記載された位置データの例では、各グループ内において、X軸座標又はY軸座標が共通している場合には、共通している座標については、X軸座標値又はY軸座標値の1個を記憶し、位置データ列を作成するようにして、記憶容量を低減させている。
【0049】
この様に作成された、加工条件に応じて、グループ分けされた位置データ列に基づいて、基板5に穴径の異なる複数の穴開けを行う場合の穴開け手順について、図13のフローチャートを参照して説明する。ここでは、図7に示されたレーザ加工装置が使用されるものとする。
【0050】
先ず、基板がローダにセットされて(ステップS1)、レーザ加工装置の加工テーブル3上に搬入され(ステップS2)、基板が加工テーブル上に載置される。次いで、集光光学系2の焦点出しが行われ(ステップS3)、さらに、基板と加工テーブルとのアライメントが行われる(ステップS4)。そして、加工テーブルが移動制御されて、レーザ光の集束点が機械原点に移動される(ステップS5)。
【0051】
そこで、最初の加工条件として、T1コードが選択され、T1コードが付与された位置データ列の呼び込みが行われる(ステップS6)。この位置データ列に従って、制御装置4が、加工テーブル3の移動を制御する。そして、穴開け加工位置に移動する毎に、レーザ光が1ショット照射されて、所定径の穴開け加工が実行される(ステップS7)。
【0052】
T1コードが付与された位置データ列について穴開け加工が終了すると、再び、加工テーブルが移動制御されて、レーザ光の集束点が機械原点に移動される(ステップS8)。次いで、T2コードが選択され、T2コードが付与された位置データ列の呼び込みが行われる(ステップS9)。この位置データ列に従って、加工テーブル3が移動制御され、穴開け加工位置に移動する毎に、レーザ光が2ショット照射されて、所定径より1段大きい穴開け加工が実行される(ステップS10)。
【0053】
T2コードが付与された位置データ列について穴開け加工が終了すると、再び、加工テーブルが移動制御されて、レーザ光の集束点が機械原点に移動される(ステップS11)。次いで、T3コードが選択され、T3コードが付与された位置データ列の呼び込みが行われる(ステップS12)。この位置データ列に従って、加工テーブル3が移動制御され、穴開け加工位置に移動する毎に、レーザ光が3ショット照射されて、所定径よりさらに大きい穴開け加工が実行される(ステップS13)。
【0054】
ここで、再び、加工テーブルが移動制御されて、レーザ光の集束点が機械原点に移動される(ステップS14)。なお、T1乃至T3コードの加工条件よりさらに異なる穴径の穴を開ける場合には、例えば、レーザ光の集光系光学系による集束を変化させ、T4コード以降の穴開け加工を続行することができる。図10に示された穴開け加工の例では、3種類の穴径を有する複数の穴開けを行うので、ステップS14において、レーザ光の集束点が機械原点に移動された時点で、全ての穴開け加工が終了し、基板5が加工テーブル3から搬出される(ステップS15)。
【0055】
以上に説明したように、制御装置4は、T1乃至T3コードの加工条件に応じてグループ分けされた位置データ列に基づいて、加工テーブルを移動制御し、レーザ光のショット数を制御するプログラムに従って穴開け加工を実行した。しかしながら、このプログラムでは、グループに分けられたT1乃至T3コードによる穴開け終了する毎に、レーザ集束点を、一旦、機械原点に戻して、加工条件を切り換えてから、当該コードのグループの穴開け加工が行われていた。
【0056】
そのため、上述したレーザ加工装置によったのでは、複数種類の穴径を有する穴を複数穴開けする場合に、同一面に同一径の複数の穴開けを行う場合と比較して、1種類の穴開け加工の終了毎の機械原点に戻る移動作業時間を要することになり、また、全部の穴位置を加工する場合の移動距離も長く、穴開け効率が低下し、コストが嵩む原因となった。しかも、同一面内に、異なる穴径の穴を配置するという穴径変更したデザインの採用を躊躇させるものであった。
【0057】
そこで、本発明によるレーザ加工方法及びその装置の実施形態では、上述したレーザ加工装置の構成を基本とし、加工条件に従ってグループ分けされた位置データについて、当該加工位置に対応する加工条件のレーザ光ショット数に応じて、当該数に対応した複数の位置データに変換して位置データ列を作成するようにした。この作成された位置データ列を、上述したレーザ加工装置の制御装置が、この作成された位置データ列を読み取りながら、加工テーブルの位置を制御し、位置データ毎にレーザ光を1ショットすることにより、同じ値を示す位置データが複数繰り返されていれば、当該位置データが示す加工位置においては、レーザ光が位置データ数分照射されるようにする。
【0058】
この様な穴開け手順にすることにより、上述したレーザ加工装置の制御装置が実行するプログラムの一部を変更するだけで済み、基板の同一面内に、複数種の穴径を有する複数の穴を配置するというデザインを容易とし、この複数種の穴径を有する複数の穴開けの際に、穴径が異なる穴開け毎に、機械原点に戻る必要がなくなり、この移動時間を節約することができる。さらに、レーザ光出力装置から出力されるレーザ光は、常に、一つの位置座標に対し、1ショット照射となり、制御装置のレーザ光出力装置に対する制御を簡単にすることができる。
【0059】
ここで、図1を参照して、本実施形態によるレーザ加工方法及びその装置について説明する。図1は、図11と同様に、基板5に、3種類の穴径を有する複数の穴を、所定径を有するレーザ光で穴開けする場合のレーザ光の移動手順についての例を示している。この場合における加工位置と加工条件の関係について、図11と同様、図10に示された穴の配置例の一部を利用してその関係が示されている。
【0060】
図1に示されるように、基板5上で、穴径の異なる複数の穴H11、H21、H31、H12、H22が配置されているとする。第1グループに属する穴H11とH12については、基板5上の位置座標を(X11、Y11)、(X12、Y12)とし、所定径の穴を開けることが加工条件となっている。レーザ光を1ショット照射するというT1コードの加工条件が必要である。
【0061】
また、第2グループに属する穴H21とH22については、基板5上の位置座標を(X21、Y21)、(X22、Y22)とし、所定径より1段大きい穴を開けることが加工条件となっているので、レーザ光を2ショット照射するというT2コードの加工条件が必要である。さらに、第3グループに属する穴H31については、基板5上の位置座標を(X31、Y31)とし、所定径よりさらに大きい穴を開けることが加工条件となっているので、レーザ光を3ショット照射するというT3コードの加工条件が必要である。
【0062】
図1に示された場合のレーザ光の移動手順は、図11に示された第1乃至第3グループに係る複数の穴を開けるレーザ光の移動手順とは異なり、位置データ列を作成するとき、T1コードが付与されるH11とH12には、それぞれの位置座標を1個ずつ割り当て、T2コードが付与されるH21とH22には、それぞれの位置座標を2個ずつ割り当て、そして、T3コードが付与されるH31については、その位置座標を3個割り当てて、位置データ列を作成するようにする。
【0063】
例えば、穴H21の場合であれば、T2コードであるので、穴H21の穴開け位置座標(X21、Y21)を2個割り当てる。制御装置4が位置データ列を呼び込んだとき、位置データ毎に1ショットのレーザ光を照射するようにプログラムされていれば、結果として、同じ穴開け位置において、2ショットのレーザ光が照射され、1ショットのレーザ光の所定径より1段大きい穴径の穴を開けることができる。
【0064】
この様に、複数種の穴径に応じて、加工位置に係る位置データがその複数分割り当てられるので、グループ毎に加工条件を呼び出す必要がなくなり、位置データ列の位置データに従って、常に、レーザ光は1ショットずつ照射される。そのため、図1に示されるように、3種類の穴径を有する穴を開ける場合であっても、図11で示されるように、一グループの穴開けが終了する毎に、破線で示される移動2、4を省略でき、つまり、一々、機械原点に戻る必要がなくなり、移動距離も短くなる。
【0065】
図1に示されるように、穴径の異なる穴開けが交互に存在していても、レーザ光の移動は、端から順に、移動1乃至移動5の矢印で表されるように行われ、レーザ光は、H11では、1ショットが、H21では、2ショットが、H31では、3ショットが、H12では、1ショットが、そして、H22では、2ショットが照射される。この様に、レーザ光が、一連の移動によって、交互に存在する複数種の穴径の穴を開けることができる。
【0066】
そこで、図10に示された、基板5に3種類の穴径を有する複数の穴を開ける場合の例を参照して、本実施形態のレーザ加工方法を適用した例を、図2に示した。図2では、図10と同様に、白丸は、最小径の穴開けの加工位置を、二重丸は、最小径より1段階大きい穴開けの加工位置を、そして、黒丸は、さらに1段階大きい穴開けの加工位置を示している。
【0067】
図1に示されるように、本実施形態のレーザ加工方法によれば、基板の同一面内に、穴径の異なる穴開けが交互に存在していても、穴径が異なれば、レーザ光照射時において、レーザ光のショット数を変えるだけであるので、交互に存在する複数種の穴径の穴を容易に開けることができ、穴開け位置間で最短距離となる経路を演算することにより、レーザ光の最小移動によって、一筆書きの要領で効率よく穴開けを実行できる。なお、図2の例では、基板5の同一面内における穴開けは、H11が始点となっており、H1mが全ての穴開けの終了点になっている。
【0068】
図3に、本実施形態のレーザ加工方法が適用されるレーザ加工装置の概略構成が示されている。図3に示されたレーザ加工装置は、図7のレーザ加工装置を基本としており、同じ部分には同じ符号が付されている。図3のレーザ加工装置が、図7のレーザ加工装置と異なるところは、処理部41内に、条件付与部411、グループ分け部412、そして、データ変換部413を備えていることである。
【0069】
次に、図4に示されるデータ構成を参照して、図3に示されたレーザ加工装置の処理部41の動作を説明する。図4では、図12に示されたものと同様に、3種類の穴径を有する複数の穴開け加工位置の例の場合を表している。
【0070】
各穴の位置座標は、図12の座標欄に記載されたものと同様に、制御装置4に接続された入力装置(図示なし)によって入力される。そこで、条件付与部411によって、入力された位置座標に穴径に関する加工条件、つまりT1乃至T3コードのいずれかが付与される。そして、グループ分け部412が、このT1乃至T3コード毎に、全ての位置座標をグループ分けする。
【0071】
さらに、データ変換部413は、グループ分けされたグループに属する位置座標について、T1コードが付与された位置座標については、T1コードのままとし、穴H11、H12、H13、・・・に対して各々の位置座標を1個割り当てる。また、T2コードのグループに属する各穴H21、H22、H23、・・・に対して、T2コードをT1コードに置き換えるとともに、各々の位置座標を2個割り当てる。そして、T3コードのグループに属する各穴H31、H32、H33、・・・に対しては、T3コードをT1コードに置き換えるとともに、各々の位置座標を3個割り当てる。この状態が、図4の座標欄に模式的に示されている。
【0072】
次いで、データ変換部413により変換されたデータが、T1コードに変換された各穴の穴開けに係る位置データとして格納部42内に記憶される。ここで記憶された位置データの構成が、図4のデータ欄に示されている。各穴の穴開け位置に対応する座標値が、T1乃至T3コード毎にT1コードに変換された位置データ列として記憶される。
【0073】
図12に示されたと同様に、このデータ欄に記載された位置データの例では、各グループ内において、X軸座標又はY軸座標が共通している場合には、共通している座標については、X軸座標値又はY軸座標値の1個を記憶し、位置データ列を作成するようにしている。そのため、X軸座標又はY軸座標が共通している場合には、X軸座標値又はY軸座標値に対応する位置データの1個が記憶され、位置データT2及びT3コードのグループの位置データ列では、同一のものX軸座標値又はY軸座標値に対する位置データが複数ずつ配列されている。
【0074】
例えば、図4に示された穴H21の場合であれば、穴H21がT2コードの加工条件に対応しているため、穴H21の位置データは、X座標について、2個のX22、Y座標については、2個のY22を含むが、位置データ列の作成時には、座標位置が変更されないときには、共通する位置データを除くようにしているため、Y22の1個が除かれ、穴H21に係る位置データ列は、X21、X21、Y21となる。また、穴H22の場合では、そのX座標は、X21であり、穴H21のX座標と同じであるので、X21は、穴H22に係る位置データ列から除かれ、その位置データ列は、Y22、Y22となる。
【0075】
さらには、穴開け位置間で最短距離となる経路を演算されて、レーザ光の移動経路が最小になる一筆書きの要領で穴開けを実行する場合には、図4のデータ欄のように作成された位置データ列は、その最小経路となる順に再配列される。この再配列は、複数種の穴径を有する複数の穴の穴開けであっても、加工条件であるT1乃至T3コードが全てT1コードに変換されているために可能となる。
【0076】
ここで、以上のような位置データ列を作成する手順の例を、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0077】
先ず、制御装置に接続された入力装置により、基板の同一面内に穴開けする必要がある穴に関する位置座標のデータが入力される(ステップS21)。入力された位置座標が穴開けの加工条件がT1コード(1ショット)に対応しているかどうか判断される(ステップS22)。ここで、当該位置座標がT1コードである場合には(ステップS22のY)、当該位置座標に係る位置データをそのまま設定する(ステップS23)。
【0078】
一方、当該位置座標がT1コードではない場合には(ステップS22のN)、当該位置座標がT2又はT3コードの可能性があるので、当該位置座標の穴開け加工条件がT2コードであるかどうかが判断される(ステップS24)。ここで、当該位置座標がT2コードである場合には(ステップS24のY)、当該位置座標に係る位置データを2データ分設定し、さらに、T2コードからT1コードに変更設定する(ステップS25)。
【0079】
また、当該位置座標がT2コードではない場合には(ステップS24のN)、当該位置座標は、T3コードに係る座標データとし(ステップS26)、当該位置座標に係る位置データを3データ分設定し、さらに、T3コードからT1コードに変更設定する(ステップS27)。
【0080】
以上のステップS23、S25及びS27において、入力された穴開け加工のための位置座標の全てについて、加工条件に応じてグループ分けされ、各グループに属する位置座標が、T1乃至T3コードのいずれの場合も、T1コード対応に変換された位置データ列とされた。そこで、これらの位置データが組み合わされて(ステップS28)、T1コードの加工条件が設定された位置データ列が作成される(ステップS29)。
【0081】
この様に作成された、全ての位置座標がT1コードに変換された位置データ列に基づいて、基板5に穴径の異なる複数の穴開けを行う場合の穴開け手順について、図6のフローチャートを参照して説明する。ここでは、図3に示されたレーザ加工装置が使用されるものとする。
【0082】
先ず、基板がローダにセットされて(ステップS31)、レーザ加工装置の加工テーブル3上に搬入され(ステップS32)、基板が加工テーブル上に載置される。次いで、集光光学系2の焦点出しが行われ(ステップS33)、さらに、基板と加工テーブルとのアライメントが行われる(ステップS34)。そして、加工テーブルが移動制御されて、レーザ光の集束点が機械原点に移動される(ステップS35)。
【0083】
そこで、加工条件として、T1コードが選択され、T1コードが付与された位置データ列の呼び込みが行われる(ステップS36)。この位置データ列に従って、制御装置4が、加工テーブル3の移動を制御する。そして、穴開け加工位置に移動する毎に、レーザ光が1ショット照射され、所定径の穴開け加工が実行される(ステップS37)。このとき、当該加工位置に係る同一の位置データが続いて呼び出された場合には、もう一度、レーザ光が1ショット照射され、所定径より1段大きい穴径の穴開け加工が実行される。また、さらに同一の位置データが続いていれば、さらに、レーザ光が1ショット照射され、より穴径の大きい穴が開けられる。
【0084】
この様にして、呼び出された位置データ列の全ての位置データについて、位置データが示す加工位置で、位置データの個数分の1ショットによるレーザ照射が行われ、基板の同一面内における複数種の穴径を有する複数の穴が全て開けられると、再び、レーザ光の集束点は、機械原点に移動し、次の基板に対する穴開け処理に備える(ステップS38)。そして、加工テーブル上の基板が搬出されて取り出され(ステップS39)、当該基板への穴開け処理が終了する。
【0085】
以上に説明したように、本実施形態のレーザ加工方法によれば、基板の同一面内に、穴径の異なる穴開けが交互に存在していても、1ショットされるレーザ光の集束径を、複数種の穴径のうちの最小径に合わせておくと、例えば、図8のグラフに示されるようであれば、集束径を所定径、50μmとすると、2ショットで、所定径より約5μm大きい径の穴開けを実現でき、3ショットで、所定径より約10μm大きい径の穴開けを実現できる。
【0086】
同一面内に穴径が異なる複数の穴開けにおいて、当該加工位置に移動したときのレーザ光照射時に、レーザ光のショット数を変えるだけであるので、交互に存在する複数種の穴径の穴を容易に開けることができ、穴開け位置間で最短距離となる経路を演算することにより、レーザ光の最小移動によって、一筆書きの要領で効率よく穴開けを実行でき、穴開け加工時間を短縮できる。
【0087】
この様に、基板の同一面内に、穴径の異なる穴開けが交互に存在していても、1ショットされるレーザ光の集束径を、複数種の穴径のうちの最小径に合わせておくことによって、複数ショットのレーザ光照射で穴開けされる穴径を最小径より大きい径の穴開けを実現できるので、多層配線基板などにおける同一層内に、複数種の穴径を有する複数のビアを必要に応じて配置することが可能となり、配線基板のデザインの自由度を向上できる。
【0088】
ここで、多層配線基板の一層内に、例えば、100000個のビアを開ける場合について、本実施形態のレーザ加工方法による効果を説明する。これらのビアのうち、1000個のビアについて、所定径より5μmだけ大きくして、100000個全てのビアを形成するものとする。
【0089】
上述した基本となるレーザ加工方法による場合には、先ず、機械原点に近い方から99000個の所定径のビアについて穴開け加工が行われる。次いで、機械原点に近い方から、所定径より穴径の大きい1000個のビアの穴開け加工が行われる。この場合、所定径の99000個の穴開けに要した加工時間は、約117秒であり、穴径の大きい1000個の穴開けに要した加工時間は、約30秒であった。機械原点に戻る時間を含めると、2種類の穴径を有する100000個のビアを形成するには、約150秒を要した。
【0090】
これに対して、本実施形態のレーザ加工方法による場合には、同一層内の100000個のビアの穴開けを行うとき、機械原点の近い方から2種類の穴径の穴開けを、レーザ光ショット数の切り換えによって行われるため、1000個が5μmだけ大きい穴径を有したビアであっても、100000個のビアの形成に要する時間は、約119秒であり、全ての穴開けを終了できた。この様に、本実施形態のレーザ加工方法によると、穴径が異なっていても、全数が同じ穴径のビアを形成するのと同じ程度の速度による穴開け加工が可能である。
【0091】
なお、本実施形態によるレーザ加工方法を多層配線基板のビア形成に適用する場合、多層配線基板の一層内に、複数種類の穴径を有する複数のビアの配置をデザインするときに、複数種類のビア径のうち、最小の径を有するビアができるだけ多くなるようにデザインすると、穴開け加工時間を一層短縮することができる。
【0092】
また、以上に説明した本実施形態によるレーザ加工方法では、穴径の異なる複数の穴開け加工を被加工物に行うとき、被加工物上にレーザ光を照射するレーザ加工装置の照射部は、定位置に固定され、被加工物が載置された加工テーブルを位置データに従って移動制御するようにしたが、これとは逆に、被加工物が載置された加工テーブルを定位置に固定しておき、レーザ加工装置の照射部を位置データに従って移動制御しながら、被加工物上に穴径の異なる複数の穴開け加工を順次実行することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明のレーザ加工方法による穴開け加工の概念を説明する模式図である。
【図2】本発明のレーザ加工方法を穴径の異なる複数の穴開けを基板に対して実行する様子を説明する図である。
【図3】本発明のレーザ加工方法を実行するレーザ加工装置の構成例を説明する図である。
【図4】本発明のレーザ加工方法により3種類の穴径による複数の穴開けを基板に実行する場合における穴径コードに応じてグループ分けされた位置座標と位置データ列を説明する図である。
【図5】本発明のレーザ加工方法において、穴開けのための位置座標と加工条件を設定する手順を説明するフローチャートである。
【図6】本発明のレーザ加工方法を適用した場合における基板に穴径の異なる複数の穴開けを行う手順について説明するフロー図である。
【図7】レーザ光線を用いて基板に穴開けを実行するレーザ加工装置の構成例を説明する図である。
【図8】レーザ光線により穴開け加工する際のレーザショット数と穴径との関係を説明するグラフである。
【図9】レーザ光線で穴径の異なる穴開けを行う場合の穴開け移動手順を模式的に説明する図である。
【図10】3種類の穴径による複数の穴開けを基板に実行する場合における穴開け移動手順を説明する図である。
【図11】3種類の穴径による複数の穴開けを基板に実行する場合における加工手順の詳細を説明する図である。
【図12】3種類の穴径による複数の穴開けを基板に実行する場合における穴径コードに応じてグループ分けされた位置座標と座標データ列を説明する図である。
【図13】3種類の穴径による複数の穴開けを基板に実行する場合における加工手順を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0094】
1 レーザ光出力装置
2 集光光学系
3 加工テーブル
4 制御装置
41 処理部
411 条件付与部
412 グループ分け部
413 データ変換部
42 格納部
5 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定径に集束されたレーザ光の照射によって被加工物に穴径の異なる複数の穴を開けるレーザ加工方法であって、
前記所定径を前記複数穴の中の最小径に合わせて集束された前記レーザ光の照射手段が、前記穴の該当加工位置に順次相対移動される移動ステップと、
前記照射手段が各々の加工位置に相対移動されたとき、当該加工位置に係る穴径の大きさに応じて前記レーザ光を所定回数照射する照射ステップと、を有するレーザ加工方法。
【請求項2】
前記照射手段が前記加工位置に相対移動されたとき、該加工位置に係る前記穴が最小径である場合には、前記レーザ光は、前記被加工物に向けて1回照射され、該加工位置に係る穴径が最小径より大きい場合には、前記レーザ光は、前記被加工物に向けて該大きさに応じて2回以上照射されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記照射手段は、前記複数の穴に係る加工位置間の移動距離が最短となる経路を選択されて移動されることを特徴とする請求項1又は2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記複数の穴の各々に係る加工位置データと穴径情報とを入力する入力ステップと、
前記複数の穴に係る穴径情報に含まれる穴径の大きさに応じて、前記加工位置データをグループ分けするグループ分けステップと、
前記穴径が最小径であるグループに属する加工位置データに、前記レーザ光を1回照射する条件の付与を行い、前記穴径が最小径より大きい順に分けられた各グループに属する加工位置データに、前記レーザ光を該大きさに応じて順に2回以上照射する条件の付与を行う条件付与ステップと、を含み、
前記照射手段が各々の加工位置に移動されたとき、当該加工位置データに付与された前記条件に従って、前記レーザ光が所定回数照射されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記加工位置データは、前記被加工物上の位置座標を有し、
前記加工位置データは、前記レーザ光を1回照射する条件のとき、当該加工位置に係る位置座標を1個とし、前記レーザ光を穴径の大きさに応じて2回以上照射する条件のとき、当該加工位置に係る位置座標を2個以上とされるデータ変換ステップにより、データ変換されており、
前記照射手段が各々の加工位置に移動されたとき、当該加工位置データに含まれる位置座標の個数に従って、前記レーザ光が該個数回照射されることを特徴とする請求項4に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記照射手段が前記加工位置に移動されたとき、該加工位置に係る前記穴が、電源配線用ビア、熱応力的ストレスの掛かる重ね合わせビア又はスルーホールめっきされたビアである場合には、前記レーザ光を穴径の大きさに応じて2回以上照射することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
被加工物に開けられる穴径の異なる複数の穴の中での最小径に合わせてレーザ光を所定径に集束し、照射部から該被加工物上に該レーザ光を照射する照射装置と、
前記被加工物における前記複数の穴の加工位置を前記レーザ光の集束位置に順次相対移動させる移動装置と、
前記照射装置によるレーザ光照射と、前記加工位置及び前記集束位置の位置合わせとを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記照射部を前記複数の穴に係る該当加工位置に順次相対移動させたとき、当該加工位置に係る穴径の大きさに応じて前記レーザ光を所定回数照射させることを特徴するレーザ加工装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記照射部を前記加工位置に移動したとき、該加工位置に係る前記穴が最小径である場合には、前記照射装置に前記レーザ光を前記被加工物に向けて1回照射させ、該加工位置に係る穴径が最小径より大きい場合には、前記照射装置に前記レーザ光を前記被加工物に向けて該穴径の大きさに応じて2回以上照射させることを特徴とする請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記照射部を、前記複数の穴に係る加工位置間の移動距離が最短となる経路を選択して移動させることを特徴とする請求項7又は8に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記複数の穴の各々に係る加工位置データと穴径情報とを入力する入力装置と、
入力された前記複数の穴の各々に係る前記加工位置データと前記穴径情報とを記憶する格納部と、を備え、
前記制御装置は、
前記格納部から、前記加工位置データと前記穴径情報を読み出し、前記複数の穴に係る穴径情報に含まれる穴径の大きさに応じて、前記加工位置データをグループ分けするグループ分け手段と、
前記穴径が最小径であるグループに属する加工位置データに、前記レーザ光を1回照射する条件の付与を行い、前記穴径が最小径より大きい順に分けられた各グループに属する加工位置データに、前記レーザ光を該大きさに応じて順に2回以上照射する条件の付与を行う条件付与手段と、を有し、
前記制御装置は、前記照射部を各々の加工位置に相対移動させたときに、前記条件付与手段が当該加工位置データに付与した前記条件に従って、前記照射装置に前記レーザ光を所定回数照射させることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記入力装置に入力される前記加工位置データは、前記被加工物上の位置座標を有し、
前記制御装置は、前記加工位置データの各々に前記レーザ光を1回照射する条件を付与する場合には、該加工位置データの各々を、当該加工位置に係る位置座標を1個ずつとし、前記加工位置データの各々に前記レーザ光を穴径の大きさに応じて2回以上照射する条件を付与する場合には、該加工位置データの各々を、当該加工位置に係る位置座標を2個以上ずつとするデータ変換手段を備え、
前記制御装置は、前記照射部を各々の加工位置に移動させたとき、前記データ変換手段によりデータ変換された当該位置座標の個数に従って、前記照射装置に前記レーザ光を当該個数回照射させることを特徴とする請求項10に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記データ変換手段は、複数の前記加工位置データによるX軸座標データとY軸座標データによる座標データ列を作成するものとし、前記レーザ光を穴径の大きさに応じて2回以上照射する条件が付与されるグループにおいて、前記加工位置データに係るX軸座標データ又はY軸座標データが同じ場合には、当該X軸座標データ又はY軸座標データを1個のみを含めて前記座標データ列を作成することを特徴とする請求項11に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記照射部が前記加工位置に相対移動されたとき、該加工位置に係る前記穴が、電源配線用ビア、熱応力的ストレスの掛かる重ね合わせビア又はスルーホールめっきされるビアである場合には、前記レーザ光を穴径の大きさに応じて2回以上照射することを特徴とする請求項7乃至12のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−334645(P2006−334645A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163170(P2005−163170)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】