説明

レーザ加工装置およびレーザ加工方法

【課題】被加工体が透明であり、カメラなどの検知装置が検知する場合であっても、確実に検知することができるように、二次元コードなどの情報を形成すること。
【解決手段】レーザ加工装置は、透明な被加工体60を加工するために用いられる。レーザ加工装置は、被加工体60を保持する保持部40と、被加工体60にパルス状のレーザ光Lを照射して、複数の凹部66を形成するレーザ発振器1と、被加工体60を通過する光L,Pを検出する検出部10と、を備えている。光L,Pが、被加工体60の複数の凹部66を通過することによって、回折光が生成される。検出部10は、回折光によって生成される回折縞70を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池や液晶・PDP・有機ELなどの表示パネルに用いられる透明な被加工体を加工するレーザ加工装置およびレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池や液晶・PDP・有機ELなどの表示パネルに用いられる透明な被加工体を加工するときにおいて、パターニングやマーキングなどの様々なレーザ加工が用いられている。そして、レーザ加工の良否を判断することは重要であり、レーザ加工された部分の形状をカメラなどで観察して、レーザ加工の良否を判断することも考えられてきた。
【0003】
特に、生産管理に必要性から個体情報などをマーキングする場合には、一定の視認性が要求される。ここで個体情報としては、文字、バーコード、QRコードなどの二次元コードが利用される。
【0004】
これらの二次元コードをレーザ光によってマーキングする場合、そのバターン形状になるように、ドットを形成したり、直線上に溝を形成したりして(図8参照)生成していた。この場合には、被加工体の表面部分や基板上の膜層の改質による屈折率の変化やキズ(キズをつける)、除去(表面を削る)などの物理的変化、変色などが行われる。
【0005】
被加工体が有色である場合には、容易に背景部分と二次元コードとのコントラストが得られるので、高い視認性が得られ、カメラなどの検知装置によっても十分に検知することができた。しかし、被加工体が透明である場合には、視認性の確保が難しい。
【0006】
透明な被加工体であっても高い視認性を得る方法として、例えば特許文献1がある。この特許文献1は、液晶ガラスに、エキシマレーザを照射し、透明電極膜を構成する酸化インジウムおよび酸化スズに還元反応を生じさせて、透明電極膜にマーキングを施すものである。しかしながら、この従来技術におけるレーザマーキング方法は、エキシマレーザという高価な装置でのみ適用され、また、変色させる条件が厳しく、取り扱いが困難である。
【特許文献1】特開平6−51328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被加工体が透明な場合には視認性が格段に下がり、とりわけ、人間が観察する場合ではなく、カメラなどの検知装置によって検知する場合には、二次元コードに基づく情報を認識することができないことがある。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、被加工体が透明であり、カメラなどの検知装置が加工部分を検知する場合であっても、確実に検知することができるような二次元コードなどの情報を形成するレーザ加工装置およびレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるレーザ加工装置は、
透明な被加工体を加工するレーザ加工装置において、
前記被加工体を保持する保持部と、
前記被加工体にパルス状のレーザ光を照射して、複数の凹部を形成するレーザ発振器と、
前記被加工体を通過する光を検出する検出部と、
を備え、
光が、前記被加工体の複数の凹部を通過することによって、回折光が生成され、
前記検出部は、前記回折光によって生成される回折縞を検出する。
【0010】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記検出部は、前記レーザ発振器から照射されたレーザ光が、前記被加工体の複数の凹部を通過することによって生成された回折光による回折縞を検出することが好ましい。
【0011】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記被加工体に光を照射する光照射部をさらに備え、
前記検出部は、前記光照射部から照射された光が、前記被加工体の複数の凹部を通過することによって生成された回折光による回折縞を検出すること好ましい。
【0012】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記検出部からの情報を判断する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部が検出した回折縞が所定の条件を満たさないと判断した場合には、回折縞が所定の条件を満たさない旨を出力すること好ましい。
【0013】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記検出部からの情報を判断する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部が検出した回折縞が所定の条件を満たさないと判断した場合には、所定の条件を満たさないと判断した被加工基板の箇所を、前記レーザ発振器からのレーザ光によって再度加工させること好ましい。
【0014】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記検出部は、前記レーザ光の波長以外の光を遮断するフィルタを有すること好ましい。
【0015】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記検出部は、前記回折光の輝度、前記回折光によって生成される回折縞の数、または、前記回折光によって生成される回折縞の間隔を検出すること好ましい。
【0016】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記レーザ発振器のレーザ光を調整する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部からの情報に基づいて、前記レーザ発振器から照射されるレーザ光を調整すること好ましい。
【0017】
本発明によるレーザ加工装置において、
前記検出部からの情報は、前記回折光の輝度、前記回折光によって生成される回折縞の数、または、前記回折光によって生成される回折縞の間隔からなること好ましい。
【0018】
本発明によるレーザ加工装置において、
透明な被加工体は、透明な透明基板と、該透明基板上に配置された透明な透明膜とからなること好ましい。
【0019】
本発明によるレーザ加工方法は、
保持部によって、透明な被加工体を保持する保持工程と、
レーザ発振器によって、前記被加工体にパルス状のレーザ光を照射して、複数の凹部を形成するレーザ発振工程と、
検出部によって、前記被加工体を通過する光を検出する検出工程と、を備え、
光が、前記被加工体の複数の凹部を通過することによって、回折光が生成され、
前記検出工程において、前記回折光によって生成される回折縞が検出され、
前記検出部が検出した回折縞が所定の条件を満たさないと判断した場合に、回折縞が所定の条件を満たさない旨を出力するか、所定の条件を満たさないと判断した被加工基板の箇所を前記レーザ発振器からのレーザ光によって再度加工させるか、または、前記検出部からの情報に基づいて前記レーザ発振器から照射されるレーザ光を調整する。
【0020】
本発明によるレーザ加システムは、
透明な被加工体を加工するレーザ加工装置であって、前記被加工体を保持する保持部と、前記被加工体にパルス状のレーザ光を照射して、複数の凹部を形成するレーザ発振器と、を有するレーザ加工装置と、
前記被加工体に光を照射する光照射部と、
前記光照射部から照射された光が、前記被加工体の複数の凹部を通過することによって生成された回折光による回折縞を検出する検出部と、を備え、
前記光照射部から照射された光が、前記被加工体の複数の凹部を通過することによって、回折光が生成され、
前記検出部が、前記回折光によって生成される回折縞を検出する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光が被加工体の複数の凹部を通過することによって回折光が生成され、検出部がこの回折光によって生成される回折縞を検出する。このため、被加工体に複数の凹部を確実に形成することができる。この結果、被加工体が透明でありカメラなどの検知装置が検知する場合であっても、確実に検知することができるように、二次元コードなどの情報を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態
以下、本発明に係るレーザ加工装置、レーザ加工方法、および、レーザ加工システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図5は本発明の実施の形態を示す図である。
【0023】
本実施の形態のレーザ加工装置は、太陽電池や液晶・PDPの表示パネルなどに用いられる透明な被加工基板(被加工体)60を加工するために用いられる。このレーザ加工装置は、図1に示すように、被加工基板60を保持する保持部40と、被加工基板60にパルス状のレーザ光Lを照射して、複数の凹部66(図4参照)を形成するレーザ発振器1と、を備えている。なお、本実施の形態においては、レーザ発振器1は、波長が1.06μmからなるIR光を照射するように構成されている。また、このようなレーザ発振器1としては、ファイバーレーザなどを用いることができる。
【0024】
また、透明な被加工基板60は、図1および図2に示すように、ガラス基板(透明基板)62と、このガラス基板62上に設けられたITOやTCOなどの透明膜61とからなっている。また、図1に示すように、被加工基板60は、透明膜61が下方に位置しガラス基板62が上方に位置するように、保持部40によって保持されている。しかしながら、これに限られることなく、被加工基板60は、透明膜61が上方に位置しガラス基板62が下方に位置するように、保持部40によって保持されてもよい。
【0025】
また、図1に示すように、レーザ発振器1と保持部40によって保持された被加工基板60との間(光路上の間)には、レーザ光Lを反射する反射ミラー21と、反射ミラー21で反射されたレーザ光Lを走査するための走査部25と、走査部25で走査されるレーザ光Lを透明膜61に集光するための集光レンズ31が設けられている。なお、走査部25は、一対の反射ミラー26,27からなっており、各反射ミラー26,27は、回転軸(図示せず)を中心に揺動自在となっている。
【0026】
また、図1に示すように、保持部40に保持された被加工基板60の下方には、被加工基板60を通過するレーザ光Lを検出する検出部10が設けられている。ここで、この検出部10は、被加工基板60を通過したレーザ光Lを結像させる結像レンズ16と、当該結像レンズ16によって結像されたレーザ光Lを読み取るCCDカメラ(撮像素子)11と、CCDカメラによって読み取られた画像データを処理する画像処理部19と、結像レンズ16と撮像素子との間に設けられたフィルタ18とからなっている。なお、このフィルタ18は、レーザ光Lの波長のみを透過するように構成されている。
【0027】
また、図1に示すように、画像処理部19には、制御部55を有する外部コンピュータ50が連結されている。この制御部55は、レーザ発振器1にも接続されており、レーザ光Lの強度やパルス間隔などのパラメータを調整するように構成されている。また、この制御部55は、走査部25にも接続されており、被加工基板60上の任意の位置にレーザ光Lを照射するよう、反射ミラー26,27を制御することができる。
【0028】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0029】
まず、保持部40によって、透明な被加工基板が保持される(保持工程)。次に、レーザ発振器1からパルス状のレーザ光Lが照射される(レーザ発振工程)(図1参照)。このようにしてレーザ発振器1から照射されたレーザ光Lは、反射ミラー21、走査部25、集光レンズ31を経て、被加工基板60の透明膜61に達する(図1参照)。
【0030】
このようにして透明膜61に達したレーザ光Lによって、透明膜61に凹部66が形成される(図2参照)。そして、走査部25によってレーザ光Lが走査されるので、被加工基板60の透明膜61には複数の凹部66が形成されることとなる(図2参照)。より具体的には、例えば被加工基板60の表面にQRコード(登録商標)などの二次元コードをマーキングするときに、透明膜61に達したレーザ光Lによって円形状の凹部66が形成され、レーザ光Lを走査することによって、一つのセル(所定の正方形状の領域)61aの中にマトリックス状に凹部66が形成される(図4参照)。そして、複数のセル61a(または一つのセル61a)によって、QRコード(登録商標)のような二次元コードが生成される(図4参照)。
【0031】
ここで、本実施の形態で形成される凹部66の横断面は、直径が20μm程度からなる円形状のものからなっている。なお、凹部66の直径は、50μm以下からなることが好ましく、20μm以下からなることがさらに好ましい。
【0032】
このように凹部66が形成されると、凹部66を形成することに寄与しないレーザ光Lの一部が既に形成されている凹部66を通過することとなる。このため、被加工基板60を通過したレーザ光Lによって、回折光が生成されて回折縞70(図3参照)を形成することとなる。
【0033】
なお、このように回折光が生成されるのは、凹部66の大きさが小さく、かつ、近接しているため(図2および図4参照)、凹部66を形成することに寄与しないレーザ光Lの一部(強度の弱い周縁領域にあるレーザ光Lb)が、既に形成された凹部66を通過することができるためである(図5参照)。
【0034】
すなわち、レーザ光Lの中心領域にある強度の強い光Laは透明膜61に凹部を形成するのに用いられて吸収されることとなるが、レーザ光Lの周縁領域にあるレーザ光Lbは、凹部を形成するのには寄与せず吸収されない。このため、周縁領域にあるレーザ光Lbは、既に形成された凹部66を通過し、回折光が生成されるのである。
【0035】
上述のように生成された回折光は、結像レンズ16によってCCDカメラ11に結像される(図1参照)。そして、CCDカメラ11によって、回折光が互いに干渉することによって生成された回折縞70に関する情報が読み取られる(図3参照)。次に、CCDカメラ11で読み取られた回折縞の画像データが画像処理部19において画像処理されて、回折縞70の数や回折縞70の間隔などが検出される(検出工程)。
【0036】
なお、CCDカメラ11と結像レンズ16との間に、レーザ光Lの波長以外の光を遮断するフィルタ18が設けられているので(図1参照)、余計な光がCCDカメラ11に入射することを防止することができる。このため、CCDカメラ11によって変換される電気信号を、回折光のみに基づく正確なものにすることができる。また、回折光が、結像レンズ16によってCCDカメラ11に結像されるので、CCDカメラ11において回折光の情報を漏らさず収集することができる。
【0037】
このようにして得られた回折縞情報(回折光の輝度や、回折縞70の数や、回折縞70の間隔など)は、外部コンピュータ50の制御部55に送られる(図1参照)。そして、この制御部55は、画像処理部19から送られてくる回折縞情報に基づいて、レーザ発振器1から照射されるレーザ光Lが調整される(図1参照)。より具体的には、回折縞70の数や回折縞70の間隔などの情報に基づいて(図3参照)、レーザ光Lの強度、パルス間隔、繰り返し周波数、走査速度、1ポジション当たりの照射回数などのパラメータが、被加工基板60を加工している間または加工した後に調整される。
【0038】
このように、本実施の形態によれば、透明膜61に生成された複数の凹部66を通過したレーザ光Lによって生成される回折光に関する情報(回折光の輝度や、回折縞70の数や、回折縞70の間隔など)に基づいて、適切に凹部66が形成されているかを随時検知することができる。このため、加工対象となっている被加工基板60の透明膜61、または、次回以降に加工する被加工基板60の透明膜61に確実に凹部66を形成することができ、ひいては、透明膜61に所定の個数の凹部66を持った被加工基板60を確実に製造することができる。
【0039】
また、上記のようにレーザ光Lの強度、パルス間隔、繰り返し周波数、走査速度、1ポジション当たりの照射回数などのパラメータを調整する代わりに、制御部55は、検出部10が検出した回折縞が所定の条件を満たさないと判断した場合には、回折縞70が所定の条件を満たさない旨を、表示部(図示せず)によって表示したり、排除装置(図示せず)に伝達したりするなどして出力してもよい。そして、回折縞70が所定の条件を満たさないことが表示部に表示された場合には、作業者が加工対象となっている被加工基板60を保持部40から取り除き、他方、回折縞70が所定の条件を満たさないことが排除装置に伝達された場合には、当該排除装置が加工対象となっている被加工基板60を保持部40から取り除く。
【0040】
また、制御部55は、検出部10が検出した回折縞70が所定の条件を満たさないと判断した場合には、所定の条件を満たさないと判断した被加工基板60の箇所を、レーザ発振器1から照射されるレーザ光Lによって再度加工させるようになっていてもよい。このとき、制御部55は、レーザ光Lのパラメータを調整した後に被加工基板60を加工してもよいし、調整せずにそのままのパラメータで被加工基板60を加工してもよい。
【0041】
また、上述のような一連の工程によって生成された二次元コードのドットは、複数の凹部66によって生成されることとなる(図4参照)。このように、二次元コードのドットが、回折光が生成されるくらい近接して形成された複数の小さな凹部66によって生成されると、二次元コードを観察するときに強い散乱光が発生することとなる。また、観察するときであっても、観察に使用する光源がIR光である場合や、自然光中のIR光成分によって、レーザ加工しているときと同様に、干渉縞が生成されることとなり、背景に対して、強いコントラストを実現することができる。
【0042】
このため、形成された二次元コードの情報は、広い視認角および視野角を有し、カメラなどの検知装置が情報を取得する際に、二次元コードに対する角度に依存することがなくなる。また、散乱光が発生することによって、ガラス基板62のような透明な基板の上に配置された透明膜61に二次元コードを生成したとしても、コントラストを強くすることができる。
【0043】
これらのことより、本実施の形態のレーザ加工装置およびレーザ加工方法によれば、被加工体60が透明であり、(人間ではなく)カメラなどの検知装置が検知する場合であっても、確実に検知することができるように二次元コードなどの情報を形成することができる。また、このようにして形成された二次元コードは、角度依存性がなく広い視認角および視野角を有し、強いコントラストを有している。
【0044】
実施例
被加工基板として、表面に透明導電膜が形成されたガラス基板を用いて実験を行った。比較例として用いる被加工基板には、直線上に約30μmの幅からなる溝を形成した(図8参照)。他方、実施例として用いる被加工基板には、直径が約20μmからなるドットを形成した(図4参照)。具体的な加工条件は以下の表に示すようなものとなっている。
【表1】

【0045】
上述のような加工条件のもと加工された二次元マークを、実体顕微鏡で撮影し、撮影された画像データをInspector8.0(MATROX社)で読み込み、読み込み可否を判定したところ、比較例では、読み込み成功率が90%であったのに対して、実施例では、読み込み成功率が100%であった。なお、比較例による被加工基板に形成された二次元マークと、実施例による被加工基板に形成された二次元マークとでは、目視では同じように見えた。なお、比較例のラスタ走査では、セル内スキャン本数が3本であるため、検出部で干渉縞を検出することができなかった。これに対して、セル内スキャン本数を多くすることによって、検出部で干渉縞を観察することができるようになるまでにしてやると、(ドット照射方式と比較して散乱効果が劣るものの)実施例と同様の効果を奏することができると考えられる。
【0046】
ところで、上記では、レーザ発振器1から照射されるレーザ光Lによって回折縞70が生成される態様を用いて説明したが、これに限られることはない。
【0047】
例えば、図6Aに示すように、被加工基板60に光を照射する光照射部80を別途設け、検出部10が、光照射部80から照射された光Pが、被加工基板60の複数の凹部66を通過することによって生成された回折光による回折縞70を検出するようにしてもよい。
【0048】
なお、図6Aに示すように、レーザ光Lによって加工されている際に、光照射部80から照射された光Pを用いて検出部10によって回折縞70を検出するのではなく、図6Bに示すように、レーザ光Lによって加工された後に、光照射部80から照射された光Pを用いて検出部10によって回折縞70を検出するようにしてもよい。ところで、図6Bではフィルタ18を用いていない態様を示している。
【0049】
また、図7(a)(b)に示すように、被加工基板60を保持する保持部40と、被加工基板60にパルス状のレーザ光Lを照射して、複数の凹部66を形成するレーザ発振器1とを有するレーザ加工装置とは別に、被加工基板60を保持する保持部41と、被加工基板60に光を照射する光照射部80と、光照射部80から照射された光Pが、被加工基板60の複数の凹部66を通過することによって生成された回折光による回折縞70を検出する検出部10とを設けてもよい(レーザ加工装置と、保持部41と、光照射部80と、出部10とによってレーザ加工システムを構成している)。なお、このようなレーザ加工システムでは、光照射部80から照射された光Pが、被加工基板60の複数の凹部66を通過することによって、回折光が生成され、検出部10が、回折光によって生成される回折縞70を検出するようになっている。
【0050】
ところで、上記では二次元コードをマーキングする態様を用いて説明した。しかしながら、これに限られることなく、本実施の形態に示したレーザ加工方法は、パターニングやトリミングなどにも用いることができ、レーザ加工の良否を的確に検出し、判断することができる。
【0051】
また、上記では、透過光を用いて回折縞70を検出する態様を用いて説明した。しかしながら、これに限られることなく、反射光を用いて回折縞70を検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態によるレーザ加工装置を示す概略構成図。
【図2】本発明の実施の形態によるレーザ加工装置によって加工された被加工基板を示す概略断面図。
【図3】本発明の実施の形態によるレーザ加工装置で検出される回折縞を示す概略図。
【図4】本発明の実施の形態によるレーザ加工装置によって加工された被加工基板を示す平面図。
【図5】本発明の実施の形態による被加工基板の凹部を通過するレーザ光の強度分布を示したグラフ図。
【図6A】本発明の実施の形態の変形例によるレーザ加工装置を示す概略構成図。
【図6B】本発明の実施の形態の別の変形例によるレーザ加工装置を示す概略構成図。
【図7】本発明の実施の形態のさらに別の変形例によるレーザ加工装置を示す概略構成図。
【図8】従来のレーザ加工装置によって加工された被加工基板を示す平面図。
【符号の説明】
【0053】
1 レーザ発振器
10 検出部
11 CCDカメラ(撮像素子)
16 結像レンズ
18 フィルタ
21 反射ミラー
25 走査部
31 集光レンズ
40 保持部
50 外部コンピュータ
55 制御部
60 被加工基板(被加工体)
61 透明膜
62 ガラス基板
66 凹部
70 回折縞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な被加工体を加工するレーザ加工装置において、
前記被加工体を保持する保持部と、
前記被加工体にパルス状のレーザ光を照射して、複数の凹部を形成するレーザ発振器と、
前記被加工体を通過する光を検出する検出部と、
を備え、
光が、前記被加工体の複数の凹部を通過することによって、回折光が生成され、
前記検出部は、前記回折光によって生成される回折縞を検出することを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記レーザ発振器から照射されたレーザ光が、前記被加工体の複数の凹部を通過することによって生成された回折光による回折縞を検出することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記被加工体に光を照射する光照射部をさらに備え、
前記検出部は、前記光照射部から照射された光が、前記被加工体の複数の凹部を通過することによって生成された回折光による回折縞を検出することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記検出部からの情報を判断する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部が検出した回折縞が所定の条件を満たさないと判断した場合には、回折縞が所定の条件を満たさない旨を出力することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記検出部からの情報を判断する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部が検出した回折縞が所定の条件を満たさないと判断した場合には、所定の条件を満たさないと判断した被加工基板の箇所を、前記レーザ発振器からのレーザ光によって再度加工させることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記レーザ光の波長以外の光を遮断するフィルタを有することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記回折光の輝度、前記回折光によって生成される回折縞の数、または、前記回折光によって生成される回折縞の間隔を検出することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記レーザ発振器のレーザ光を調整する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部からの情報に基づいて、前記レーザ発振器から照射されるレーザ光を調整することを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
透明な被加工体は、透明な透明基板と、該透明基板上に配置された透明な透明膜とからなることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
保持部によって、透明な被加工体を保持する保持工程と、
レーザ発振器によって、前記被加工体にパルス状のレーザ光を照射して、複数の凹部を形成するレーザ発振工程と、
検出部によって、前記被加工体を通過する光を検出する検出工程と、を備え、
光が、前記被加工体の複数の凹部を通過することによって、回折光が生成され、
前記検出工程において、前記回折光によって生成される回折縞が検出され、
前記検出部が検出した回折縞が所定の条件を満たさないと判断した場合に、回折縞が所定の条件を満たさない旨を出力するか、所定の条件を満たさないと判断した被加工基板の箇所を前記レーザ発振器からのレーザ光によって再度加工させるか、または、前記検出部からの情報に基づいて前記レーザ発振器から照射されるレーザ光を調整することを特徴とするレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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