説明

レーザ加工装置

【課題】ワークで反射されたレーザの反射光が再びワークに照射されて照射痕を残すことを防止して、品質の高いプリント基板を加工可能なレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】ガルバノスキャナ2及びfθレンズ5を有する加工ヘッド25に、レーザの吸収率の高い遮蔽板26を設けて、該遮蔽板26がワークWで反射したレーザの反射光9を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ発振器から出力されたレーザをガルバノスキャナ及びfθレンズを有する加工ヘッドを通して、所定の範囲で走査、位置決めしつつ集光してワークを加工するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーザ発振器から発振されたレーザを、ガルバノスキャナによって所定範囲で走査、位置決めしつつfθレンズで集光して、プリント基板等のワークに穴又は外形を加工するレーザ加工装置が知られている。
【0003】
近年、プリント基板加工用レーザ加工装置は、搭載するレーザ発振器の高出力化が進んでおり、加工点のエネルギも増加している。また、加工する対象基板も多様化しており、基板の表面状態も様々である。そのため、プリント基板の材質のレーザの吸収性が低く、加工エネルギの一部を反射してしまう場合、加工面で反射したレーザはfθレンズを通り、ガルバノスキャナやその周りの構造物に照射される。
【0004】
従来、ガルバノスキャナやその周りの構造物表面は、アルミ又はメッキ面になっており、加工点からの反射光が照射された場合レーザを反射するため、反射したレーザが再びfθレンズを通り加工点に照射され、本来加工する位置とは異なる位置にレーザの照射痕が発生する場合がある。
【0005】
すなわち、該レーザ加工装置は、例えば図4のように、ベースプレート1の一側(上面)にガルバノスキャナ2を一部収容するガルバノボックス3が固定され、他側(下面)にfθレンズ5が固定されており、該fθレンズ5に対向するようにワークWが載置されている。ガルバノボックス3に進入してきたレーザ7は、ガルバノスキャナ2で走査、位置決めされてfθレンズ5へと進み、集光されてワークWに穴を加工するが、該加工点でのレーザの吸収性が低いためにレーザの一部が反射して、該反射光9が更にガルバノボックス3の内壁等で反射する。反射光9は再びfθレンズ5に入射してワークWに照射されて照射痕を残す場合がある。
【0006】
レーザ発振器から出力されるレーザのうち、不要なレーザがワーク(被加工物)に照射されることを防止するために、レーザを吸収する遮蔽板をレーザの光路上に設けてレーザを遮断するレーザマーキング装置が案出されている(特許文献1)。該特許文献1記載のレーザマーキング装置は、レーザロッドの熱膨張によるレーザの広がりに関するデータを採集する際に、レーザを吸収する回動自在の遮蔽板を設けて、該遮蔽板の回動によってレーザの光路を遮蔽又は開放するものであって、レーザマーキング装置は、データ採集に不要な所定回数目までのショットは遮蔽板によってレーザ光路を遮断して、データ採集に必要な所定回数目のショットの際に遮蔽板を回動させてレーザの光路を開放し、レーザスポット径の広がりのデータを採集する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−99979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載のものは、レーザ発振器とワークの間のレーザ光路上に遮蔽板を配置するものであり、レーザスポット径のデータ採集を行う装置には適用可能であるが、加工ヘッドでワークを加工するレーザ加工装置に対しては、遮蔽板がワークの加工を行うためのレーザも遮断することになり、適用することができない。たとえ、まずレーザの光路を開放して加工に必要なワークへの入射光は通過させて、すぐに高速で遮蔽板を回動してワークでの反射光のみを遮蔽できるとしても、特に図4のようにガルバノミラー、fθレンズによってレーザを高速で走査、位置決めするレーザ加工装置にあっては、加工効率が著しく低下してしまい、実質上適用困難である。
【0009】
また、ガルバノボックス自体を反射しにくい材質にして、レーザの再反射を防ぐことも考えられるが、ガルバノボックスがレーザを吸収して熱を持ってしまうため、熱膨張によりガルバノボックスが変形し、それによってガルバノスキャナの位置がずれ加工精度に影響を与えてしまう虞がある。また、ガルバノボックスの材質の変更により、ガルバノボックスの振動特性が変わるため、振動により加工精度が低下する可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は、レーザ加工装置の加工効率、加工精度を落とすことなく、ワークで反射されたレーザの反射光が再びワークに照射されることを防止して、もって上述した課題を解決したレーザ加工装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、レーザ発振器(16)から出力されたレーザ(7)をガルバノスキャナ(2)及びfθレンズ(5)を有する加工ヘッド(25),(25)を通して、ワーク(W)上の所定の位置に位置決めしてレーザ加工するレーザ加工装置(10)において、
前記加工ヘッド(25),(25)に、前記ワーク(W)で反射されたレーザの反射光(9)を吸収する遮蔽板(26),(26)を配置してなる。
【0012】
例えば図2を参照して、前記加工ヘッド(25)は、ベースプレート(1)と、
該ベースプレート(1)の一側に固定され、前記ガルバノスキャナ(2)を収容するガルバノボックス(3)と、
前記ベースプレート(1)の他側に固定されるfθレンズ(5)と、を備え、
前記遮蔽板(26)が、前記ガルバノボックス(3)内に配置される。
【0013】
例えば図3を参照して、前記加工ヘッド(25)は、ベースプレート(1)と、
該ベースプレート(1)の一側に固定され、前記ガルバノスキャナ(2)を一部収容するガルバノボックス(3)と、
前記ベースプレート(1)の他側に固定されるfθレンズ(5)と、を備え、
前記遮蔽板(26)が、前記ガルバノスキャナ(2)から前記fθレンズ(5)へ照射されるレーザの通過領域(a)と重ならないように、前記ベースプレート(1)に配置される。
【0014】
例えば図2又は図3を参照して、前記遮蔽板(26),(26)と該遮蔽板が固定される固定部(3),(1)との間に、断熱材を配置してなる。
【0015】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る本発明によると、加工ヘッドに、ワークで反射されたレーザの反射光を吸収する遮蔽板を設けたので、該遮蔽板によって反射光が吸収されて反射光が再びワークに照射されて照射痕を残すことを防止し、加工効率を落とさないで、加工品質を向上させることができる。
【0017】
請求項2に係る本発明によると、ガルバノボックス内に遮蔽板を配置したので、ワークで反射した反射光がガルバノボックス内で遮蔽板に吸収されて反射光が再びワークに照射されて照射痕を残すことを防止し、加工効率を落とさないで、加工品質を向上させることができる。
【0018】
請求項3に係る本発明によると、ガルバノスキャナからfθレンズへ照射されるレーザの通過領域と重ならないように、前記ベースプレートに遮蔽板が配置されるので、ワークで反射し、ガルバノボックス内で乱反射するレーザの反射光が遮蔽板によって吸収され、反射光が再びワークに照射されて照射痕を残すことを防止して、加工効率を落とさないで、加工品質を向上することができる。また、ベースプレートに遮蔽板を配置したためにガルバノボックスにはほとんど熱が伝わらず、ガルバノボックスの熱変形でガルバノスキャナが位置ずれする虞がなく、加工精度の低下を防ぐことができる。
【0019】
請求項4に係る本発明によると、遮蔽板が固定される側の一側に、断熱材を配置したので、遮蔽板を固定した固定部位(例えばガルバノボックスやベースプレート)に反射光の吸収熱が伝わり難く、それら固定部位の変形を防ぎ、加工精度の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係るレーザ加工装置の構成を示す全体図。
【図2】本発明の実施の形態に係る加工ヘッドを示す側面図。
【図3】他の実施の形態に係る加工ヘッドを示す側面図。
【図4】従来の加工ヘッドを示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。レーザ加工装置10は、図1に示すように、ベッド11上にX方向に移動自在に支持されたXテーブル12が配置され、上記Xテーブル12上にY方向に移動自在に支持されたYテーブル13が配置されている。上記Xテーブル12及びYテーブル13は、不図示のサーボモータ等によりそれぞれX方向、Y方向に位置決め可能である。上記Yテーブル13上には複数(本実施の形態では2個)のワーク載置台14が所定距離隔てて固定されている。該ワーク載置台14にはワークWが載置されている。図1において、XYZ軸はそれぞれ直角方向にあり、Z軸方向は、XY軸がなす平面に垂直な方向である。
【0022】
ベッド11には、更に、上記Xテーブル12、Yテーブル13、及びワーク載置台14を囲うようにして門形のコラム15が固定されており、該コラム15にはレーザ発振器16が載置されている。該レーザ発振器16の光軸上には、レーザ発振器16から出力されるレーザ7の光路を第1の光路17a又は第2の光路17bに切り換える音響光学素子19が配置されている。第1の光路17a上にはミラー20,21が、第2の光路17b上にはミラー22,23がそれぞれ配置されて、上記レーザ発振器16から出力されたレーザ7は、レーザを上記ワークWに照射する加工ヘッド25,25に案内される。
【0023】
上記第1の光路17a又は第2の光路17bを通ってレーザが案内される加工ヘッド25,25は、構成が同一であり、一方の加工ヘッド25のみを説明し、他方の説明を省略する。上記加工ヘッド25は、図2に示すように、ベースプレート1と、一側面及び底面が開放されたガルバノボックス3と、レーザを集光するfθレンズ5を有しており、上記ベースプレート1は、レーザの光路を遮断しないように不図示の孔を備えている。上記ベースプレート1の一側(上面)には、上記ガルバノボックス3がその底面が塞がれるように固定され、他側(下面)であって上記ワークWに対向する面には上記fθレンズ5が固定されている(図4参照)。すなわち、上記ガルバノボックス3は、ベースプレート1によって底面が蓋されて、レーザが入射される一側面のみが開放され、内部に空間Sを備えている。
【0024】
上記ガルバノボックス3には、レーザを走査、位置決めする一対のガルバノスキャナ2が一部収容されており、該ガルバノスキャナ2は、先端にガルバノミラー2aを有し、該ガルバノミラー2aは回転軸に固定されて回転自在となっている。上記ガルバノボックス3内の空間Sには、少なくとも上記一対のガルバノスキャナ2のガルバノミラー2aが互いの回転軸が直交するように収容されて、ガルバノボックス3に入射してきたレーザを所定範囲で走査しつつ位置決めして、ワークWに穴開け、溝、又は外形加工が可能となっている。上記ベースプレート1、ガルバノスキャナ2、及びガルバノボックス3の表面は、アルミ又はメッキ面になっており、レーザの吸収率が低く反射しやすい材質からなっている。
【0025】
また、ガルバノボックス3内壁の上記ベースプレート1に対向する面(以下、内壁面という)3aには、レーザを吸収する板状の遮蔽板26が固定されており、該遮蔽板26の、上記ガルバノスキャナ2と干渉する部分には切欠きを有している。上記遮蔽板26と上記ガルバノボックス(固定部)3との間には不図示の断熱材が配置されている。なお、遮蔽板に使用する材質はレーザの吸収率の高いものであり、例えばCOレーザの場合、カーボンやモリブデンコーティング等のものが好適である。
【0026】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、レーザ加工装置10のレーザ発振器16から出力されたレーザ7は、音響光学素子19により光路を交互に変更されてミラー20,21またはミラー22,23を介して加工ヘッド25のガルバノボックス3内(空間S)に入射する。ガルバノボックス3内に入射してきたレーザ7は、一対のガルバノスキャナ2によって光路を走査、位置決めされ、fθレンズ5を透過してワークWの加工面に垂直(図1のZ軸方向)に入射し、該ワークWを穴開け又は外形加工する。
【0027】
ワークWを加工するレーザの一部は、特にワークWの材質のレーザの吸収性が低く加工エネルギの一部を反射してしまう場合、ワークWで反射されて、その反射光9は再びガルバノボックス3内に入射されて、遮蔽板26で吸収される。これにより、上記反射光9がガルバノボックス3の内壁面3aで反射して、再びfθレンズ5を透過してワークWに照射痕を残すことが防止され、加工品質を向上することができる。上記遮蔽板26は、ガルバノボックス3の内壁面3aに配置され、レーザ光路上に配置されるものではないので、加工に必要なレーザ7は遮断せず、また上記ガルバノミラー2a、fθレンズ5によって高速で走査、位置決めするショット回数が制限され、加工効率が低下するということもない。また、遮蔽板26とガルバノボックス3との間に断熱材を配置したので、遮蔽板26が反射光9から吸収した熱がガルバノボックス3には伝達し難く、ガルバノボックスの熱変形を抑えて加工精度の低下を防止することができる。
【0028】
なお、遮蔽板の形状は、ガルバノスキャナ及びレーザ(の入射光)と干渉しない形状であればどのような形状でもよく、例えば平面でも球面でもよく、制限されない。
【0029】
また、遮蔽板の配置は、ガルバノボックスの内壁面であって、ガルバノスキャナ及びレーザ(の入射光)と干渉しない配置であれば、ベースプレートに対向する面だけではなく、例えばガルバノボックス内壁側面に配置しても良い。
【0030】
次いで、図3に沿って、他の実施の形態について説明するが、本実施の形態は、先の実施の形態と遮蔽板の配置のみが異なるので、先の実施の形態と重複する部分については、図に同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
本実施の形態を適用し得る加工ヘッド25は、図3に示すように、ガルバノボックス3内の空間Sにおけるベースプレート1上に、レーザを吸収する遮蔽板26が固定されている。該遮蔽板26は、入射光であるレーザ7のガルバノスキャナ2からfθレンズ5へ照射される通過領域aと干渉しないように形成されており、上記通過領域a部分については孔又は切欠きが設けられている。該遮蔽板26とベースプレート(固定部)1との間には、不図示の断熱材が配置されている。
【0032】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、ワークWで反射されたレーザの反射光9は、再びガルバノボックス3内に入射されて、該ガルバノボックス3内での乱反射の過程で遮蔽板26に吸収される。これにより、上記反射光9がガルバノボックス3の内壁面で反射して、再びfθレンズ5を透過してワークWに照射痕を残すことが防止され、加工品質を向上することができる。また、ベースプレートに遮蔽板を配置したため、ガルバノボックスにはほとんど熱が伝わらず、ガルバノボックスの熱変形でガルバノスキャナが位置ずれする虞がなく、加工精度の低下を防ぐことができる。
【0033】
なお、遮蔽板は、ガルバノボックス内におけるベースプレート上だけではなく、ベースプレート上であってレーザの通過領域と干渉しない領域であれば、例えばベースプレートのfθレンズが固定されている面(下面)など、どこに配置しても良い。
【0034】
また、遮蔽板は、上述した実施の形態に限らず、例えばfθレンズ等、ワークで反射されたレーザの反射光を照射しうる位置であれば、加工ヘッドのどの部分に配置してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 ベースプレート
2 ガルバノスキャナ
2a ガルバノミラー
3 ガルバノボックス
5 fθレンズ
7 レーザ(入射光)
9 反射光
16 レーザ発振器
25,25 加工ヘッド
26,26 遮蔽板
a 通過領域
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器から出力されたレーザをガルバノスキャナ及びfθレンズを有する加工ヘッドを通して、ワーク上の所定の位置に位置決めしてレーザ加工するレーザ加工装置において、
前記加工ヘッドに、前記ワークで反射されたレーザの反射光を吸収する遮蔽板を配置してなる、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
前記加工ヘッドは、ベースプレートと、
該ベースプレートの一側に固定され、前記ガルバノスキャナを収容するガルバノボックスと、
前記ベースプレートの他側に固定されるfθレンズと、を備え、
前記遮蔽板が、前記ガルバノボックス内に配置される、
ことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記加工ヘッドは、ベースプレートと、
該ベースプレートの一側に固定され、前記ガルバノスキャナを一部収容するガルバノボックスと、
前記ベースプレートの他側に固定されるfθレンズと、を備え、
前記遮蔽板が、前記ガルバノスキャナから前記fθレンズへ照射されるレーザの通過領域と重ならないように、前記ベースプレートに配置される、
ことを特徴とする請求項1記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記遮蔽板と該遮蔽板が固定される固定部との間に、断熱材を配置してなる、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載のレーザ加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−71136(P2013−71136A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210494(P2011−210494)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000233332)日立ビアメカニクス株式会社 (237)
【Fターム(参考)】