説明

レーザ加工装置

【課題】簡単な処理によって、基板上におけるレーザビームの強度をビームの長さ方向あるいはビームの幅方向において一様にする。
【解決手段】このレーザ加工装置は、レーザ発振器11と、ガラス基板が載置されるテーブル1と、スクライブ予定ラインと直交する方向のビーム幅を制御する第1非球面シリンドリカルレンズ14と、ビーム長さを制御する第2非球面シリンドリカルレンズ15と、冷却ノズル3と、レーザビーム及び冷却ノズル3を走査するためのテーブル駆動機構4と、を備えている。第1及び第2非球面シリンドリカルレンズ14,15は、入射されたガウス型の強度分布を有するレーザビームの強度分布を、ガラス基板上においてビーム幅方向及びビーム長さ方向で一様にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置、特に、レーザビームをスクライブ予定ラインに沿って照射し、脆性材料基板の表面にスクライブ溝を形成するレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等の脆性材料基板を分断するための技術として、亀裂進展を利用した分断方法が提案されている。この方法では、まず、カッターホイール等によってガラス基板の表面に初期亀裂が形成される。その後、レーザビームがスクライブ予定ラインに沿って走査されて基板が加熱され、さらにレーザビームの照射直後に加熱された領域が冷却される。これにより、スクライブ予定ラインに沿って亀裂が進展し、スクライブ溝が形成される。
【0003】
スクライブ予定ラインに沿って走査されるレーザビームは、走査方向に沿って所定の長さを有している。このようなレーザビームを形成するために、球面レンズ及びシリンドリカルレンズを含む光学系、あるいは母線が延びる方向を互いに直交させて配置された2枚のシリンドリカルレンズを含む光学系が用いられている。
【0004】
以上のような従来の光学系によって形成されるレーザビームは、ビーム走査方向に沿った強度分布がガウス型である。すなわち、レーザビームの強度は、ビームの長手方向の中央部が最も強く、両端に行くにしたがって弱くなっている。このような従来の光学系によるレーザビームは、スクライブ溝を形成する上で最適な強度分布のレーザビームとは言えない。
【0005】
そこで、特許文献1には、レーザビームの強度分布をスクライブ予定ラインに沿った方向で均一にできる加工システムが提案されている。この加工システムは、レーザ発振器と、レーザ発振器から出射されたレーザビームを反射する反射ミラーと、反射ミラーで反射されたレーザビームを基板上で走査するポリゴンミラーと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−212364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたシステムでは、レーザ発振器から出射されたレーザビームは、反射ミラーを経てポリゴンミラーで反射され、基板上のスクライブ予定ラインに沿って所定の長さにわたって繰り返し走査される。この繰り返し走査によって、所定長さのレーザビームは、スクライブ予定ラインに沿った方向の強度分布が均一になる。
【0008】
しかし、特許文献1に記載されたシステムでは、ポリゴンミラーで反射されたレーザビームの基板表面に対する照射角度が変化するため、実際にはレーザビームの強度分布は均一ではなく、繰り返し走査によるレーザビーム照射範囲の端部ほど強度が低下してしまう。また、基板上におけるレーザビームの強度を、一様な強度分布にしかできず、多様な基板仕様、加工条件等に適切に対応することが困難である。
【0009】
本発明の課題は、簡単な構成及び処理によって、基板上におけるレーザビームの強度をビームの長さ方向あるいはビームの幅方向において一様にすることにある。
【0010】
本発明の別の課題は、種々の加工条件に最適な強度分布のレーザビームを容易に得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係るレーザ加工装置は、レーザビームをスクライブ予定ラインに沿って照射し、脆性材料基板の表面にスクライブ溝を形成する装置であって、ガウス型の強度分布を有するレーザビームを出射するレーザビーム出射装置と、加工される脆性材料基板が載置されるテーブルと、スクライブ予定ラインと直交する方向のビーム幅を制御する第1レンズと、スクライブ予定ラインに沿った方向のビーム長さを制御する第2レンズと、脆性材料基板におけるレーザビームによって加熱された領域を冷却する冷却装置と、レーザビーム及び冷却装置をテーブルに載置された脆性材料基板に対して相対的に走査するための走査機構と、を備えている。そして、第1レンズ及び第2レンズの少なくとも一方は、入射されたガウス型の強度分布を有するレーザビームの強度分布を、脆性材料基板上においてビーム幅方向あるいはビーム長さ方向で一様にする非球面シリンドルカルレンズである。
【0012】
この加工装置では、レーザビーム出射装置から出射されたレーザビームは、第1レンズ及び第2レンズを通過して脆性材料基板上に照射される。また、レーザビームは、走査機構によって脆性材料基板のスクライブ予定ラインに沿って走査される。レーザビームによって加熱された基板は、レーザビームとともに走査される冷却装置によって冷却され、基板のスクライブ予定ラインに沿ってスクライブ溝が形成される。ここで、第1レンズ及び第2レンズの少なくとも一方は非球面レンズであるので、レーザビームの幅方向及び/又は長さ方向の強度分布が一様になる。
【0013】
ここでは、従来のポリゴンミラーを用いたシステムに比較して、ほぼ矩形の強度分布を有するレーザビームを容易に得ることができる。そして、特にレーザビームの長さ方向の強度分布を一様にした場合は、スクライブ溝形成時のプロセスを最適化することが容易になる。
【0014】
第2発明に係るレーザ加工装置は、第1発明の装置において、第2レンズがビームの強度分布を変換する非球面シリンドリカルレンズである。
【0015】
ここでは、脆性材料基板上に照射されるレーザビームの、スクライブ予定ラインに沿ったレーザビームの長さ方向の強度分布を一様にできる。このため、冷却装置による冷却の直前まで基板の温度を上昇させておくことができる。したがって、冷却時の引張応力を大きくでき、スクライブ溝の加工可能条件をより広くすることができる。すなわち、スクライブマージンが大きくなる。
【0016】
第3発明に係るレーザ加工装置は、第1発明の装置において、第1レンズ及び第2レンズはともにビームの強度分布を変換する非球面レンズである。
【0017】
ここでは、レーザビームの幅方向及びスクライブ予定ラインに沿った長さ方向において、レーザビームの強度分布を一様にできる。したがって、スクライブマージンをより拡大することができる。
【0018】
第4発明に係るレーザ加工装置は、第1から第3発明のいずれかの装置において、第1レンズ及び第2レンズのそれぞれを、光軸に沿った方向に独立して移動させる移動機構をさらに備えている。
【0019】
各レンズを光軸に沿った方向で移動させることにより、ビームの幅方向及び長さ方向の長さを変えることができ、プロセスの最適化を図ることができる。
【0020】
第5発明に係るレーザ加工装置は、第1から第4発明のいずれかの装置において、非球面シリンドリカルレンズを光軸と直交する方向にシフトするシフト機構をさらに備えている。
【0021】
非球面シリンドリカルレンズをオフセットすることによって、レーザビームの強度分布の形状を変えることができる。これにより、基板の温度上昇の仕方を変えることができ、プロセスの最適化を図ることができる。
【0022】
第6発明に係るレーザ加工装置は、第1から第5発明のいずれかの装置において、非球面シリンドリカルレンズに入射するレーザビームの直径を制御するビーム径制御機構をさらに備えている。
【0023】
非球面シリンドリカルレンズに入射するレーザビームの径を変えることによって、レーザビームの強度分布の形状を変えることができる。したがって、第5発明と同様にプロセスの最適化を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のような本発明では、光学系を構成するレンズを非球面シリンドリカルレンズにすることによって、基板上におけるレーザビームの強度を、ビームの長さ方向あるいはビームの幅方向において、簡単に一様にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態によるレーザ加工装置の概略構成図。
【図2】矩形ビームとガウスビームの表面温度分布を示す図。
【図3】矩形ビームとガウスビームの表面応力分布を示す図。
【図4】矩形ビームのスクライブマージンを示す図。
【図5】ガウスビームのスクライブマージンを示す図。
【図6】非球面シリンドリカルレンズをZ軸方向で移動させた場合の強度分布を示す図。
【図7】非球面シリンドリカルレンズに入射するレーザビームのビーム径を変えた場合の強度分布を示す図。
【図8】非球面シリンドリカルレンズを光軸からシフトした場合の強度分布を示す図。
【図9】非球面シリンドリカルレンズを光軸からシフトした場合の強度分布を示す図。
【図10】非球面シリンドリカルレンズを光軸からシフトした場合の強度分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[レーザ加工装置]
本発明の一実施形態によるレーザ加工装置を図1に示す。このレーザ加工装置は、加工対象としてのガラス基板Gが載置されるテーブル1と、テーブル1上のガラス基板Gを加熱する加熱機構2と、加熱機構2によって加熱されたガラス基板Gを冷却する冷却装置(図1では、冷却装置を構成する冷却ノズル3のみを示している)と、テーブル1をX,Y平面内で移動するためのテーブル駆動機構(走査機構)4と、を備えている。なお、図1(b)は図1(a)を90°異なる方向から見た図である。
【0027】
加熱機構2は、レーザ出射装置としてのレーザ発振器11と、ビームエキスパンダ12と、反射ミラー13と、第1非球面シリンドリカルレンズ14と、第2非球面シリンドリカルレンズ15と、を備えている。また、加熱機構2は、ビーム径制御機構18と、第1及び第2移動機構21,22と、第1及び第2シフト機構23,24と、を備えている。
【0028】
レーザ発振器11は例えばCOレーザを出射する装置である。このレーザ発振器11から出射されるレーザビームの強度は、ガウス分布を示す。ビームエキスパンダ12は、3つのレンズからなり、各レンズの光軸方向の隙間を変更可能である。反射ミラー13は、ビームエキスパンダ12からのレーザビームをテーブル1側に反射するように配置されている。
【0029】
第1非球面シリンドリカルレンズ14は、入射されたレーザビームをガラス基板G上に集光するとともに、レーザビームの幅方向(スクライブ予定ラインと直交する方向)の強度を、ガラス基板G上において矩形状の分布に変換するためのレンズである。また、第2非球面シリンドリカルレンズ15は、入射されたレーザビームをガラス基板G上に集光するとともに、レーザビームのスクライブ予定ラインに沿った方向の強度を、ガラス基板G上において矩形状の分布に変換するためのレンズである。
【0030】
ビーム径制御機構18は、ビームエキスパンダ12を構成する3つのレンズのうちの2つのレンズ間の距離を変えて、レーザビームのビーム径を制御するための機構である。
【0031】
第1移動機構21は、第1非球面シリンドリカルレンズ14をZ軸方向(高さ方向)に移動させて、ガラス基板G上でのビーム幅を変えるための機構である。また、第2移動機構22は、第2非球面シリンドリカルレンズ15をZ軸方向に移動させて、ガラス基板G上でのビーム長さ(スクライブ予定ラインに沿った方向の長さ)を変えるための機構である。
【0032】
第1シフト機構23は、第1非球面シリンドリカルレンズ14を光軸と直交するY軸方向(スクライブ予定ラインと直交するビーム幅方向)にシフトさせて、ガラス基板G上におけるビーム幅方向の強度分布を変えるための機構である。また、第2シフト機構24は、第2非球面シリンドリカルレンズ15を水平面内でY軸と直交するX軸方向(スクライブ予定ラインに沿った方向)にシフトさせて、ガラス基板G上におけるビーム長さ方向の強度分布を変えるための機構である。
【0033】
冷却装置は、図示しない冷媒源から供給される冷媒を、冷却ノズル3を介して噴射して冷却スポットを形成する。この冷却スポットは、ガラス基板G上に照射されたレーザビームの走査方向の後端部に形成される。
【0034】
[スクライブ方法]
以上の加工装置を用いてガラス基板Gにスクライブ溝を形成する場合は、まず、カッターホイール等を用いて、ガラス基板Gの端部にスクライブの起点となる初期亀裂を形成する。なお、この初期亀裂はレーザによって形成してもよい。
【0035】
次に、レーザ発振器11からレーザビームが出射され、このレーザビームはビームエキスパンダ12、反射ミラー13、第1及び第2非球面シリンドリカルレンズ14,15を介してガラス基板G上に照射される。このとき、レーザビームの強度分布は、第1及び第2非球面シリンドリカルレンズ14,15によって、ビーム幅方向及びビーム長さ方向の両方において、ガウス分布から矩形状の分布に変換される。このレーザビームは、テーブル駆動機構4によりテーブル1を移動することにより、スクライブ予定ラインに沿ってガラス基板G上を走査される。ガラス基板Gはレーザビームによってガラス基板Gの軟化点よりも低い温度に加熱される。また、冷却スポットをレーザビームの走査方向後端において追従させる。
【0036】
以上のようにして、レーザビームの照射によって加熱された領域の近傍には圧縮応力が生じるが、その直後に冷媒の噴射によって冷却スポットが形成されるので、垂直クラックの形成に有効な引張応力が生じる。この引張応力により、スクライブ予定ラインに沿って垂直クラックが形成され、所望のスクライブ溝が形成される。
【0037】
[レーザビームの強度分布]
ここで、強度分布が、ガウス分布であるレーザビーム(以下、「ガウスビーム」と記す)と、本実施形態のように矩形状の分布であるレーザビーム(以下、「矩形ビーム」と記す)との相違について詳細に説明する。
【0038】
図2は、矩形ビームとガウスビームをガラス基板上で走査した場合の、基板のある位置における表面温度の経時変化を示している。図2において、実線が矩形ビームを用いた場合の表面温度の経時変化であり、一点鎖線がガウスビームを用いた場合の表面温度の経時変化である。また、図2の横軸は時間[秒]、縦軸は温度[℃]である。なお、レーザビームは、長さが60mm、幅が1.5mm、走査速度は120mm/sである。また、冷却はレーザビームの走査方向後端で行った。
【0039】
図2から明らかなように、ガウスビームによる加熱の場合は、基板表面温度は、緩やかに上昇し、レーザビームが約2/3通過した時点で最大になり、その後低下している。一方、矩形ビームによる加熱の場合は、急激に温度上昇し、冷却直前まで温度上昇が続いている。したがって、冷却時の温度差は、この例では、矩形ビームの場合はガウスビームの場合に比較して約150℃大きい。
【0040】
図3は、矩形ビームとガウスビームをガラス基板上で走査した場合の、基板のある位置における表面応力の経時変化を示している。図3において、実線が矩形ビームを用いた場合の表面応力の経時変化であり、一点鎖線がガウスビームを用いた場合の表面応力の経時変化である。また、図3の横軸は時間[秒]、縦軸は応力[MPa]である。なお、レーザビームの寸法、走査速度は図2と同様である。
【0041】
図3から明らかなように、ガウスビームによる加熱の場合は、ビーム中心で圧縮応力が最も大きく、この例では−83MPaとなる。その後、圧縮応力は低下し、冷却直前では−17MPaとなる。一方、矩形ビームによる加熱の場合は、ビーム先端で約−60MPaまで急激に圧縮応力が大きくなった後、徐々にビーム後端に向かって圧縮応力が大きくなる。冷却直前での圧縮応力は−74MPaである。また、冷却時の引張応力はガウスビームの場合で150MPa、矩形ビームの場合で177Mpaであり、矩形ビームの方が約18%大きい。
【0042】
以上のことから、次のことがわかる。
【0043】
矩形ビームによる加熱では、冷却時の引張応力が大きくなることから、ガウスビームによる加熱より、スクライブ溝を形成可能な条件範囲が広くなる、すなわちスクライブマージンが拡大することが予測できる。このため、スクライブ溝形成時のプロセスの安定性を向上することができる。また、加工可能条件を容易に見つけることができる。
【0044】
以上の予測に基づいて行った実験結果を図4及び図5に示す。図4は矩形ビームにより加熱してスクライブ溝加工を行った場合のスクライブ可否の結果を示している。また、図5はガウスビームにより加熱してスクライブ溝加工を行った場合のスクライブ可否の結果を示している。
【0045】
これらの図から明らかなように、矩形ビームによって加熱を行い、スクライブ溝加工を行った方が、ガウスビームによって加熱を行った場合に比較して、スクライブ可能範囲がより広くなっている。
【0046】
[矩形ビームの制御]
ここで、非球面シリンドリカルレンズ14,15の位置を変えることによって、矩形ビームの強度分布の形状を制御することができる。以下に、具体的な制御について説明する。
【0047】
<Z軸方向位置>
第1移動機構21又は第2移動機構22によって、各非球面シリンドリカルレンズ14,15のガラス基板Gからの位置、すなわちZ軸方向の位置を変えることによって、ビーム幅の長さ、スクライブ予定ラインに沿った方向のビーム長さを変えることができる。この様子を図6に示している。なお、図6はビーム長さ方向の強度分布を示すものである。
【0048】
図6から明らかなように、非球面シリンドリカルレンズと基板表面との間の距離を大きくすれば、ビーム長さは長くなる。ただし、ビーム長さが変わるとともに、強度分布の形状も変わる。
【0049】
<入射ビーム径>
ビームエキスパンダ12の各レンズの位置を制御することによって、非球面シリンドリカルレンズに入射するレーザビームのビーム径を変えることができる。そして、図7に示すように、ビーム径を変えることによって、矩形ビームの強度分布を変えることができる。なお、図7はビーム長さ方向の強度分布を示すものである。
【0050】
具体的には、ビーム径を小さくすれば、図7の下段左側に示すように、強度分布の矩形がくずれ、ビーム中央部の強度が両端部に比較して強くなり、ガウス分布に近づく。これからビーム径を大きくすれば、図7の下段中央に示すように、ほぼ矩形状の強度分布が得られる。そして、さらにビーム径を大きくすれば、下段右側に示すように、中央部が両端に比較して弱くなる。
【0051】
<シフト>
第1シフト機構23又は第2シフト機構24によって、各非球面シリンドリカルレンズ14,15を、光軸と直交する方向にシフトさせることによって、ビーム幅方向の強度分布、ビーム長さ方向の強度分布を変えることができる。
【0052】
具体例を図8〜図10に示している。図8〜図10は、それぞれ、図7の下段中央の状態、下段左側の状態、下段右側の状態の第2非球面シリンドリカルレンズ15を、光軸と直交する方向に−0.3〜+0.3mmだけシフトした様子を示している。
【0053】
これらの図から明らかなように非球面シリンドリカルレンズを光軸と直交する方向にシフトすることによって、ビームの両端の一方の強度を他方より強くすることができる。また、シフトの程度によって、両端の強度の差異の程度を制御することができる。
【0054】
以上のように、矩形ビームの強度分布の形状を変えることで、種々の加工条件に最適な温度分布で加熱することができ、プロセスを最適化することが可能となる。
【0055】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0056】
(a)前記実施形態では、非球面シリンドリカルレンズ14,15を用いて、レーザビームの幅方向及び長さ方向の強度分布を矩形状に変換するようにしたが、いずれか一方のみを非球面シリンドリカルレンズとし、一方側の強度分布のみを矩形状にするようにしてもよい。
【0057】
(b)前記実施形態では、レーザビームのビーム径を1つのビームエキスパンダによって変えるようにしたが、ビーム幅方向及びビーム長さ方向のそれぞれにおけるビーム径を変えるためのビームエキスパンダを独立して設けてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 テーブル
3 冷却ノズル
4 テーブル駆動機構
11 レーザ発振器
12 ビームエキスパンダ
14,15 非球面シリンドリカルレンズ
21,22 第1,第2移動機構
23,24 第1,第2シフト機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームをスクライブ予定ラインに沿って照射し、脆性材料基板の表面にスクライブ溝を形成するレーザ加工装置であって、
加工される脆性材料基板が載置されるテーブルと、
ガウス型の強度分布を有するレーザビームを出射するレーザビーム出射装置と、
前記スクライブ予定ラインと直交する方向のビーム幅を制御する第1レンズと、
前記スクライブ予定ラインに沿った方向のビーム長さを制御する第2レンズと、
脆性材料基板における前記レーザビームによって加熱された領域を冷却する冷却装置と、
レーザビーム及び前記冷却装置を、前記テーブルに載置された脆性材料基板に対して相対的に走査するための走査機構と、
を備え、
前記第1レンズ及び前記第2レンズの少なくとも一方は、入射されたガウス型の強度分布を有するレーザビームの強度分布を、脆性材料基板上においてビーム幅方向あるいはビーム長さ方向で一様にする非球面シリンドルカルレンズである、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記第2レンズがビームの強度分布を変換する前記非球面シリンドリカルレンズである、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第1レンズ及び前記第2レンズはともにビームの強度分布を変換する前記非球面シリンドルカルレンズである、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1レンズ及び前記第2レンズのそれぞれを、光軸に沿った方向に独立して移動させる移動機構をさらに備えた、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記非球面シリンドリカルレンズを光軸と直交する方向に移動するシフト機構をさらに備えた、請求項1から4のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記非球面シリンドリカルレンズに入射するレーザビームの直径を制御するビーム径制御機構をさらに備えた、請求項1から5のいずれかに記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78780(P2013−78780A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219810(P2011−219810)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】