説明

レーザ地形観測システム

【課題】地形変化の観測精度を維持する。
【解決手段】反射率監視部4が反射部2の反射率を測定する。このような構成によれば、反射率監視部4によって反射部2の経時劣化や落下・消失を検出することができるので、地形変化の観測精度を維持することができる。また、反射率監視部4は反射部2の性能を直接測定するので、少ない誤差で反射部2の性能を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を利用して地形変化を観測するレーザ地形観測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地面や岩壁等の測定対象に反射板を設置し、反射板にレーザ光を照射し、反射板からの反射光を監視することにより地形変化を観測するレーザ地形観測システムが知られており(特許文献1を参照)、このようなレーザ地形観測システムによれば、観測結果に基づいて地滑りや崖崩れ等の危険予測を行うことが可能になる。
【特許文献1】特開2000−131063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のレーザ地形観測システムによれば、反射板は一旦設置されると観測期間の間はそのまま放置されるために、反射板の経時変化や落下,消失のために、地形変化の観測精度を維持できないことがある。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、地形変化の観測精度を維持することが可能なレーザ地形観測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係るレーザ地形観測システムは、地表面上に設けられた、レーザ光を反射する反射部と、反射部にレーザ光を照射し、反射部からの反射光を受光することにより、反射部までの距離を測定するレーザ距離計測部と、反射部の反射率を測定する監視部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るレーザ地形観測システムによれば、監視部によって反射部の経時劣化や落下・消失を検出することができるので、地形変化の観測精度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態となるレーザ地形観測システムの構成について説明する。
【0008】
本発明の実施形態となるレーザ地形観測システムは、図1に示すように、地面や岩壁等の測定対象1表面上に反射塗料を塗布することにより形成された反射部2と、反射部2にレーザ光を照射すると共に反射部2からの反射光を受光することにより反射部2までの距離を測定,記録するレーザ距離計測装置3と、レーザ距離計測装置3による距離の計測前後又は計測中における反射部2の反射率の変化を監視する反射率監視部4とを主な構成要素として備え、レーザ距離計測装置3により測定された距離に基づいて地形の変化を観測する。
【0009】
上記反射率監視部4は、図2に示すように、反射部2からの反射光を受光する反射光受光部11と、反射光受光部11が受光した反射光の光量を計測する光量値計測部12と、光量値計測部12により計測された反射光の光量が所定範囲内にあるか否かを判別し、判別結果をレーザ距離計測装置3に転送する判断部13を備え、レーザ距離計測装置3は、判断部13から転送された判別結果を反射部2までの距離の計測結果と関連付けさせて記録する。これにより、オペレータは、反射部2の反射率の変化を考慮して測定結果を解析し、地形変化の観測精度を維持することができる。
【0010】
ここで、判断部13は、反射部2の反射率Rが最大の時(R=Rmax)の反射光の光量Qmaxと、反射率Rが低下して観測精度の維持に必要な最低の反射率の時(R=Rmin)の反射光の光量Qminとを予め実験により計測することにより作成される、図3に示すような反射部2の反射率Rに対する反射光の光量Qの関係を示すマップを記憶している。そして、判断部13は、このマップを参照して反射光の光量Qが指定範囲内にあるか否かを判別することにより、反射部2の反射率が観測精度の維持に必要な範囲内にあるか否かを判別する。
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態となるレーザ地形観測システムでは、反射率監視部4が反射部2の反射率を測定する。このような構成によれば、反射率監視部4によって反射部2の経時劣化や落下・消失を検出することができるので、地形変化の観測精度を維持することができる。また、反射率監視部4は反射部2の性能を直接測定するので、少ない誤差で反射部2の性能を測定することができる。
【0012】
なお、本実施形態では、反射率監視部4が反射光受光部11を備えることとしたが、図4に示すように、反射率監視部4はレーザ距離計測装置3側に設けられている受光部3を利用して反射光を受光するようにしてもよい。このような構成によれば、従来までのレーザ地形観測システムを流用し、少ない部品点数でレーザ地形観測システムを構成することができる。
【0013】
また、本実施形態では、反射光を直接受光することにより反射部2からの反射光の光量を測定することとしたが、図5に示すように、反射部2の画像を撮像する撮像素子31を反射率監視部4側に設け、撮像素子31により撮像された画像を利用して反射部2からの反射光の光量を測定するようにしてもよい。このような構成によれば、レーザ距離計測装置3の不良や故障に関係なく、反射部2の反射率の変化を監視することができる。
【0014】
また、本実施形態では、反射光の光量が所定範囲内にあるか否かを判別することにより観測精度の維持を図ったが、図6に示すように、反射部2の画像を撮像する撮像素子31と、撮像素子31により撮像された画像に基づいて反射部2の形状を計測する反射部形状計測部41とを設け、判断部13は、反射部2の面積が所定範囲内にあるか否かを判別することにより観測精度の維持を図るようにしてもよい。このような構成によれば、反射光の光量が規定値以下になる前に光量の低下の兆候を検出することができる。
【0015】
なお、この場合、判断部13は、反射率Rが最大の時(R=Rmax)の反射部2の面積Smaxと、反射率Rが低下して観測精度の維持に必要な最低の反射率の時(R=Rmin)の反射部2の面積Sminとを予め実験により計測することにより作成される、図7に示すような反射部2の反射率Rに対する反射部2の面積Sの関係を示すマップを記憶している。そして、判断部13は、このマップを参照して反射部2の面積Sが指定範囲内にあるか否かを判別することにより、反射部2の反射率が観測精度の維持に必要な範囲内にあるか否かを判別する。
【0016】
また、本実施形態において、図8に示すように、反射塗料塗布装置5を設け、反射部2の反射率や面積が指定範囲内でないと判別することにより、反射率監視部4が観測精度を維持できないと判断した場合、反射塗料塗布装置5を利用して反射部2に反射塗料を塗布するようにしてもよい。なお、この場合、反射塗料塗布装置5は、図9に示すように、所定値以上の衝撃を受けると破壊するボール形状の容器51に反射塗料を充填し、この容器51を反射部2に衝突させることにより、反射部2に反射塗料を塗布することができる。
【0017】
また、本実施形態において、反射部2を構成する反射塗料としては、測定対象となる地面や岩壁の表面サンプルを採取し、表面サンプルに基づいて地面や岩壁の表面粗度を測定し、測定された表面粗度の2倍以上の直径を有する透明なビーズを再帰反射素材として反射塗料に混ぜたものを利用するとよい。このような構成によれば、地面や岩壁の凹凸に反射塗料が入り込むことにより反射部2の反射率が低下することを防止できる。
【0018】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態となるレーザ地形観測システムの構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す反射率監視部の内部構成を示すブロック図である。
【図3】反射部の反射率に対する反射部からの反射光の光量の関係を示す図である。
【図4】図1に示す反射率監視部の応用例の内部構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す反射率監視部の応用例の内部構成を示すブロック図である。
【図6】図1に示す反射率監視部の応用例の内部構成を示すブロック図である。
【図7】反射部の反射率に対する反射部の面積の関係を示す図である。
【図8】図1に示すレーザ地形観測システムの応用例の構成を示すブロック図である。
【図9】図8に示す反射塗料塗布装置の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1:測定対象
2:反射部
3:レーザ距離計測装置
4:反射率監視部
5:反射塗料塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を利用して地形の変化を観測するレーザ地形観測システムであって、
地表面上に設けられた、レーザ光を反射する反射部と、
前記反射部にレーザ光を照射し、当該反射部からの反射光を受光することにより、反射部までの距離を測定するレーザ距離計測部と、
前記反射部の反射率を測定する監視部と
を備えることを特徴とするレーザ地形観測システム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ地形観測システムであって、
前記監視部は、前記反射部からの反射光の光量を利用して前記反射部の反射率を測定することを特徴とするレーザ地形観測システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のレーザ地形観測システムであって、
前記監視部により測定された反射率が所定の規定値以下になった場合、前記反射部に反射塗料を塗布する反射塗料塗布部を備えることを特徴とするレーザ地形観測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−57498(P2007−57498A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246456(P2005−246456)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】