説明

レーザ定着装置、該レーザ定着装置を備える画像形成装置、および該画像形成装置を用いる画像形成方法

【課題】 光吸収特性が異なる2種類の光定着トナーに対応できるレーザ定着装置、該レーザ定着装置を備える画像形成装置、および該画像形成装置を用いる画像形成方法を提供する。
【解決手段】 レーザ定着装置100に、レーザ光を発射するレーザ光発射部110と、前記レーザ光が入射すると該レーザ光とは波長が異なる出射光が出射する波長変換部130とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ定着装置、該レーザ定着装置を備える画像形成装置、および該画像形成装置を用いる画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置(たとえばプリンタなど)は、記録用紙上に画像を定着するための定着装置を備える。定着装置は、記録用紙上に形成されたトナー像を構成するトナーを溶融させることによって該記録用紙上にトナー像を定着させる。
【0003】
定着装置としては、たとえば、特許文献1に記載のような、定着ローラと加圧部とを含む熱ローラ方式の定着装置が知られている。熱ローラ方式の定着装置は、内部に加熱部を有する定着ローラと、該定着ローラに圧接する加圧部とによって、未定着のトナー像を担持した記録用紙を挟み込むことで、記録用紙上のトナーを溶融させ、該記録用紙に定着させる。
【0004】
このような熱ローラ方式の定着装置は、トナーを加熱して溶融させるために、加熱部によって定着ローラ表面を所定の温度まで上昇させる必要がある。したがって、画像形成を直ちに行うことはできず、画像形成が可能になるまでにある程度の時間を要してしまう。また、直ちに画像形成できるように定着ローラ表面を所定の温度に保持しようとすると、定着ローラ表面を加熱し続ける必要があるので、消費エネルギーが増大してしまう。
【0005】
そこで、消費エネルギーの増大を抑え、かつ、時間を要さずにトナー像を定着させることができる定着装置として、光エネルギーを利用してトナーを溶融、定着させる光定着装置が提案されている。
【0006】
光定着装置として、特許文献2には、レーザ光をトナーに照射するレーザ光照射装置が複数配列されたレーザ定着装置が記載されている。特許文献2に記載のレーザ定着装置によれば、1つのレーザ光照射装置のみを備えるレーザ定着装置とは異なり、多面体ミラーなどでレーザ光を反射させる必要が無いので、レーザ定着装置を小型化できるとされている。
【0007】
また、光定着装置として、特許文献3には、800nm〜1000nmの波長のフラッシュ光によってトナーを溶融させるフラッシュ定着装置が記載されている。特許文献3には、光定着トナーとして、光吸収特性において、800nm〜1000nmの波長領域にピークを有する赤外線吸収剤を含む赤外線定着トナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−38802号公報
【特許文献2】特開平7−191560号公報
【特許文献3】特開2005−115194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光定着トナーとしては、上記の赤外線定着トナー以外にも、可視光線によって溶融、定着する可視光線定着トナーや、紫外線によって溶融、定着する紫外線定着トナーがある。これらの光定着トナーは、光吸収特性が異なるだけではなく、得られる画像の性質も異なる。たとえば、赤外線定着トナーを利用して画像を形成すると、赤外線吸収剤が赤外領域付近の可視光線も吸収するので、形成画像は赤色部分において色再現性が低下する。したがって、目的に応じて光定着トナーを使い分けることが好ましい。
【0010】
光定着トナーを使い分けるためには、光吸収特性の異なる複数種類の光定着トナーに対応できるような、光定着装置や画像形成装置が必要である。しかしながら、特許文献2,3に記載の光定着装置は、1種類の光定着トナーにしか対応することができないという課題がある。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、光吸収特性が異なる2種類の光定着トナーに対応できるレーザ定着装置、該レーザ定着装置を備える画像形成装置、および該画像形成装置を用いる画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、光吸収特性が異なる2種類の光定着トナーに対応するレーザ定着装置であって、
レーザ光を発射するレーザ光発射部と、
前記レーザ光が入射すると、該レーザ光とは波長が異なる出射光が出射する波長変換部とを備え、
前記2種類の光定着トナーのうちの一方のトナーに対して前記レーザ光を照射し、他方のトナーに対して前記波長変換部から出射する出射光を照射するように構成されることを特徴とするレーザ定着装置である。
【0013】
また本発明は、前記レーザ光発射部が、前記レーザ光として赤外線を発射するように構成されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記波長変換部が、該波長変換部から出射する出射光として紫外線が出射するように構成されることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記波長変換部が、擬似位相整合法を用いるSHG素子であることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記レーザ光および前記波長変換部から出射する出射光が照射される位置に記録媒体を搬送する搬送部をさらに備え、
前記搬送部が、少なくとも前記レーザ光および前記波長変換部から出射する出射光が照射される部分において、赤外線の透過率が70%以上であり、かつ、紫外線の透過率が80%以上であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、電子写真方式の画像形成装置であって、
前記レーザ定着装置によって光定着トナーを記録媒体に定着させるように構成されることを特徴とする画像形成装置である。
【0018】
また本発明は、前記画像形成装置と、前記レーザ定着装置によって照射される光を吸収する光吸収材料を含有した光定着トナーとを用いて画像を形成する画像形成方法であって、
前記画像形成装置が備える現像装置によって、該画像形成装置が備える像担持体上に、光定着トナー像を形成する現像工程と、
前記画像形成装置が備える転写部によって、前記現像工程で形成された光定着トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、
前記レーザ定着装置によって、記録媒体上の光定着トナー像に対して、前記レーザ光および前記波長変換部から出射する出射光の少なくとも一方を照射することで、該光定着トナー像を構成する光定着トナーを溶融させて記録媒体に定着させる定着工程とを含むことを特徴とする画像形成方法である。
【0019】
また本発明は、前記光吸収材料が、ポリイミド、ポリエチレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、およびポリカーボネートからなる群の中から選択される1種または2種以上であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記光吸収材料が、紫外線吸収基を有する樹脂材料であることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、黒色の光定着トナーと黒色以外の光定着トナーとを積層して画像を形成する場合、前記転写工程では、前記定着工程における光の照射方向において黒色の光定着トナーよりも上流側に、黒色以外の光定着トナーが積層されるように、転写を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、レーザ光発射部および波長変換部によって、波長が異なる2種類の光を、対応する光定着トナーに対して、それぞれ照射することができる。これによって、光吸収特性が異なる2種類の光定着トナーを溶融、定着させることができるレーザ定着装置を提供できる。
【0023】
また本発明によれば、レーザ光発射部による赤外線の照射によって、少なくとも赤外線定着トナーを溶融、定着させることができる。
【0024】
また本発明によれば、波長変換部から出射した紫外線の照射によって、少なくとも紫外線定着トナーを溶融、定着させることができる。
【0025】
また本発明によれば、擬似位相整合法を用いるSHG素子によって、紫外線を出射することができる。
【0026】
また本発明によれば、搬送部の光が照射される部分は、赤外線の透過率が70%以上であり、かつ、紫外線の透過率が80%以上である。したがって、搬送部は、赤外線が照射されても紫外線が照射されても、光劣化し難いので、長期間使用することができる。
【0027】
また本発明によれば、前記レーザ定着装置によって光吸収特性が異なる2種類の光定着トナーに対応できる画像形成装置を提供できる。
【0028】
また本発明によれば、前記レーザ光定着装置を用いて光定着トナーを定着させる定着工程によって、光吸収特性が異なる2種類の光定着トナーに対応できる画像形成方法を提供できる。
【0029】
また本発明によれば、光吸収材料は、ポリイミド、ポリエチレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、およびポリカーボネートからなる群の中から選択される1種または2種以上である。したがって、前記レーザ光および前記出射光の少なくとも一方が近紫外線である場合に、定着強度の高い画像を得ることができる。
【0030】
また本発明によれば、光吸収材料は、紫外線吸収基を有する樹脂材料である。したがって、前記レーザ光および前記出射光の少なくとも一方が近紫外線である場合に、定着強度の高い画像を得ることができる。
【0031】
また本発明によれば、転写工程では、光の照射方向において黒色の光定着トナーよりも上流側に、黒色以外の光定着トナーが積層されるように、転写が行われる。これによって、光吸収効率が比較的低い、黒色以外の光定着トナーに、比較的高強度の光を照射することができるので、黒色以外の光定着トナーを定着させることができる。黒色の光定着トナーは光吸収効率が比較的高いので、光の強度が比較的低くても、定着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】画像形成装置1000の構成を示す模式図である。
【図2】画像形成装置1000が備える現像装置24の構成を示す模式図である。
【図3】レーザ定着装置100の一部を切り欠いて示す模式図である。
【図4】図3に示す切断面線A−Aで切断したときのレーザ定着装置100の断面図である。
【図5】レーザ定着装置200を示す模式図である。
【図6】ポリイミドの光透過率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
はじめに、本発明の第1実施形態であるレーザ定着装置100を備える画像形成装置1000について説明する。図1は、画像形成装置1000の構成を示す模式図である。図2は、画像形成装置1000が備える現像装置24の構成を示す模式図である。画像形成装置1000は、複写機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。画像形成装置1000は、コピアモード(複写モード)、プリンタモード、およびファクシミリモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体、メモリ装置を用いた外部機器などからの印刷ジョブの受信に応じて、図示しない制御ユニット部によって、印刷モードが選択される。
【0034】
画像形成装置1000は、トナー像形成部20と、転写部30と、レーザ定着装置100と、記録媒体供給部50と、排出部60と、図示しない制御ユニット部とを含む。トナー像形成部20は、感光体ドラム21k,21c,21m,21yと、帯電部22k,22c,22m,22yと、露光ユニット23と、現像装置24k,24c,24m,24yと、クリーニングユニット25k,25c,25m,25yとを含む。転写部30は、中間転写ベルト31と、駆動ローラ32と、従動ローラ33と、中間転写ローラ34k,34c,34m,34yと、転写ベルトクリーニングユニット35と、転写ローラ36とを含む。
【0035】
感光体ドラム21、帯電部22、現像装置24、クリーニングユニット25、および中間転写ローラ34は、カラー画像情報に含まれる黒(k)、シアン(c)、マゼンタ(m)、およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。本明細書中において、各色に応じて4つずつ設けられる各部材を区別する場合は、各部材を表す数字の末尾に各色を表すアルファベットを付して参照符号とし、各部材を総称する場合は、各部材を表す数字のみを参照符号とする。
【0036】
感光体ドラム21は、導電性基体と、該導電性基体の表面に形成される図示しない感光層とを含む像担持体である。導電性基体は、たとえば、円筒状や円柱状の部材であり、図示しない駆動部によって軸線回りに回転可能に支持される。感光層は、光が照射されることによって導電性を示す部材である。感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することによって形成される。感光層の表面には、帯電部22による帯電、および露光ユニット23による露光により、静電潜像とよばれる電気的な画像が形成される。感光層表面の静電潜像が現像装置24によって現像されることで、感光層表面にトナー像が形成される。
【0037】
帯電部22は、感光体ドラム21表面を所定の極性および電位に帯電させる帯電装置である。帯電部22は、感光体ドラム21に臨む位置に、感光体ドラム21の長手方向に沿って設置される。帯電部22は、接触帯電方式である場合は、感光体ドラム21表面に接するように設置され、非接触帯電方式である場合は、感光体ドラム21表面から離隔するように設置される。
【0038】
帯電部22は、現像装置24およびクリーニングユニット25とともに、感光体ドラム21の周囲に設置される。帯電部22、現像装置24、およびクリーニングユニット25は、感光体ドラム21の回転方向周りに、この順序で配置される。帯電部22は、現像装置24およびクリーニングユニット25よりも鉛直方向下方に配置される。帯電部22は、現像装置24およびクリーニングユニット25よりも、感光体ドラム21に近い位置に設置されることが好ましい。これによって、感光体ドラム21の帯電不良の発生を確実に防止することができる。
【0039】
帯電部22としては、ブラシ型帯電装置、ローラ型帯電装置、コロナ放電装置、イオン発生装置などを使用できる。ブラシ型帯電装置およびローラ型帯電装置は、接触帯電方式の帯電装置である。ブラシ型帯電装置には、帯電ブラシを用いるものや、磁気ブラシを用いるものなどがある。コロナ放電装置およびイオン発生装置は、非接触帯電方式の帯電装置である。コロナ放電装置には、ワイヤ状の放電電極を用いるものや、鋸歯状の放電電極を用いるもの、針状の放電電極を用いるものなどがある。
【0040】
露光ユニット23は、帯電状態にある感光体ドラム21k,21c,21m,21y表面に、各色の画像情報に対応する光をそれぞれ照射することによって、感光体ドラム21k,21c,21m,21yそれぞれの表面に、各色の画像情報に対応する静電潜像を形成する装置である。露光ユニット23は、露光ユニット23から出射される光が、帯電部22と現像装置24との間を通過して感光体ドラム21の表面に照射されるように配置される。露光ユニット23としては、たとえば、レーザ光発射装置および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニット(LSU)を使用できる。露光ユニット23としては、LED(Light Emitting Diode)アレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットなどを用いてもよい。
【0041】
現像装置24は、現像槽241とトナーホッパ242とを含む。現像槽241は、その内部空間に、光が照射されることによって記録媒体に定着可能なトナー(光定着トナー)を含む現像剤を収容する。光定着トナーについては後述する。現像槽241内には、現像ローラ243、第1搬送スクリュー244、および第2搬送スクリュー245が回転自在に支持される。現像槽241の感光体ドラム21に臨む側面には開口部が形成され、該開口部を介して感光体ドラム21に対向する位置に現像ローラ243が設けられる。
【0042】
現像ローラ243は、感光体ドラム21との最近接部において感光体ドラム21表面にトナーを供給する部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ243表面に、トナーの帯電極性とは逆極性の電圧(現像バイアス)が印加される。これによって、現像ローラ243表面のトナーが感光体ドラム21に円滑に供給される。なお、現像バイアスの値を変更することによって、感光体ドラム21に供給されるトナー量(トナー付着量)を制御することができる。
【0043】
第1搬送スクリュー244は、現像ローラ243に臨み、現像ローラ243周辺にトナーを供給する部材である。第2搬送スクリュー245は、第1搬送スクリュー244に臨み、トナーホッパ242から現像槽241内に新たに供給されるトナーを第1搬送スクリュー244周辺に供給する部材である。トナーホッパ242は、その鉛直方向下部に設けられる図示しないトナー補給口と、現像槽241の鉛直方向上部に設けられる図示しないトナー受入口とが連通するように設けられる。トナーホッパ242は、画像形成装置1000内部に設けられる図示しないトナーカートリッジから供給されたトナーを、現像槽241のトナー消費状況に応じて、現像槽241へ供給する。
【0044】
クリーニングユニット25は、感光体ドラム21から中間転写ベルト31にトナー像が転写された後に、感光体ドラム21の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム21の表面を清浄化する。クリーニングユニット25は、たとえば、感光体ドラム21に当接する板状部材と、除去したトナーを回収する容器状部材とを含む。
【0045】
トナー像形成部20によれば、帯電部22によって均一な帯電状態にある感光体ドラム21の表面に、露光ユニット23から画像情報に応じたレーザ光が照射されて静電潜像が形成される。静電潜像に現像装置24からトナーが供給されてトナー像が形成され、該トナー像は後述する中間転写ベルト31に転写される。トナー像が中間転写ベルト31に転写された後に、感光体ドラム21表面に残留するトナーは、クリーニングユニット25によって除去される。
【0046】
中間転写ベルト31は、感光体ドラム21の鉛直方向上方に配置される無端ベルト状部材である。中間転写ベルト31は、駆動ローラ32と従動ローラ33とによって張架され、回転移動可能に設けられる。
【0047】
駆動ローラ32は、図示しない駆動部によってその軸線回りに回転可能に設けられる。駆動ローラ32が回転することによって、中間転写ベルト31が回転する。従動ローラ33は、駆動ローラ32の回転に従動して回転可能に設けられ、中間転写ベルト31が弛まないように、中間転写ベルト31に一定の張力を発生させる。
【0048】
中間転写ローラ34は、中間転写ベルト31を介して感光体ドラム21に圧接し、かつ図示しない駆動部によってその軸線回りに回転可能に設けられる。中間転写ローラ34は、転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム21表面のトナー像を中間転写ベルト31に転写する機能を有する。
【0049】
転写ローラ36は、中間転写ベルト31を介して駆動ローラ32に圧接し、図示しない駆動部によって軸線回りに回転可能に設けられる。転写ローラ36と駆動ローラ32との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト31に担持されて搬送されるトナー像が、後述する記録媒体供給部50から送給される記録媒体に転写される。
【0050】
転写ベルトクリーニングユニット35は、中間転写ベルト31を介して従動ローラ33に対向し、中間転写ベルト31のトナー像担持面に接触するように設けられる。記録媒体へのトナー像の転写後に、中間転写ベルト31にトナーが付着したまま残っていると、中間転写ベルト31の回転によって、残留トナーが転写ローラ36に付着するおそれがある。転写ローラ36に付着したトナーは、次に転写する記録媒体の裏面を汚染する原因となる。したがって、転写ベルトクリーニングユニット35は、記録媒体へのトナー像の転写後に、中間転写ベルト31表面のトナーを除去し回収するように設けられる。
【0051】
転写部30によれば、中間転写ベルト31が感光体ドラム21に接しながら回転移動する際、中間転写ローラ34に、感光体ドラム21表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム21の表面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト31上へ転写される。フルカラー画像の場合、感光体ドラム21y、感光体ドラム21m、感光体ドラム21c、感光体ドラム21kでそれぞれ形成される各色のトナー像が、中間転写ベルト31上に、この順番で積層されることによって、フルカラートナー像が形成される。中間転写ベルト31に転写されたトナー像は、中間転写ベルト31の回転移動によって転写ニップ部に搬送され、転写ニップ部において、記録媒体に転写される。記録媒体に転写されたフルカラートナー像は、記録媒体上に、黒、シアン、マゼンタ、イエローの順番で積層される。トナー像が転写された記録媒体は、レーザ定着装置100に搬送される。
【0052】
記録媒体供給部50は、給紙ボックス51と、ピックアップローラ52a,52bと、搬送ローラ53a,53bと、レジストローラ54と、給紙トレイ55とを含む。給紙ボックス51は、画像形成装置1000の鉛直方向下部に設けられ、画像形成装置1000内部において記録媒体を貯留する容器状部材である。給紙トレイ55は、画像形成装置1000外壁面に設けられ、画像形成装置1000外部において記録媒体を貯留するトレイ状部材である。記録媒体としては、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。
【0053】
ピックアップローラ52aは、給紙ボックス51に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路A1に送給する部材である。搬送ローラ53aは互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材であり、用紙搬送路A1において記録媒体をレジストローラ54に向けて搬送する。ピックアップローラ52bは、給紙トレイ55に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路A2に送給する部材である。搬送ローラ53bは互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材であり、用紙搬送路A2において記録媒体をレジストローラ54に向けて搬送する。
【0054】
レジストローラ54は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材であり、搬送ローラ53a,53bから送給される記録媒体を、中間転写ベルト31に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
【0055】
記録媒体供給部50によれば、中間転写ベルト31に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、給紙ボックス51または給紙トレイ55から記録媒体が転写ニップ部に送給され、該記録媒体にトナー像が転写される。
【0056】
レーザ定着装置100は、未定着トナー像を担持した記録媒体が転写ニップ部から搬送されてくると、所定の強度の光を該未定着トナー像に照射し、該未定着トナー像を構成するトナーを溶融させて、記録媒体に定着させる。トナーが定着した記録媒体は、レーザ定着装置100から排出部60へ搬送される。レーザ定着装置100については後に詳述する。
【0057】
排出部60は、搬送ローラ61と、排出ローラ62と、排出トレイ63とを含む。搬送ローラ61は、レーザ定着装置100よりも鉛直方向上方において、互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材である。搬送ローラ61は、トナー像が定着した記録媒体を排出ローラ62に向けて搬送する。
【0058】
排出ローラ62は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材である。排出ローラ62は、片面印刷の場合、片面の印刷が完了した記録媒体を排出トレイ63に排出する。排出ローラ62は、両面印刷の場合は、片面の印刷が完了した記録媒体を、用紙搬送路A3を介してレジストローラ54へ搬送し、両面の印刷が完了した記録媒体を排出トレイ63に排出する。排出トレイ63は、画像形成装置1000の鉛直方向上面に設けられ、画像が定着した記録媒体を貯留する。
【0059】
画像形成装置1000は、図示しない制御ユニット部を含む。制御ユニット部は、たとえば、画像形成装置1000の内部空間における鉛直方向上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。記憶部には、画像形成装置1000の鉛直方向上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値や、画像形成装置1000内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、記憶部には、各種処理を実行するプログラムが書き込まれる。各種処理とは、たとえば、記録媒体判定処理、付着量制御処理、定着条件制御処理などである。
【0060】
記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置1000に電気的に接続可能な電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビジョン受像機器、ビデオレコーダ、DVD(Digital Versatile Disc)レコーダ、HDDVD(High-Definition Digital Versatile Disc)レコーダ、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。
【0061】
演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種処理のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。
【0062】
制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御ユニット部は、処理回路とともに主電源を含み、電源は制御ユニット部だけでなく、画像形成装置1000内部の各装置にも電力を供給する。
【0063】
次に、レーザ定着装置100について詳細に説明する。図3は、レーザ定着装置100の一部を切り欠いて示す模式図である。図4は、図3に示す切断面線A−Aで切断したときのレーザ定着装置100の断面図である。レーザ定着装置100は、レーザ光発射部110と搬送部120と波長変換部130とを備える。
【0064】
レーザ光発射部110はレーザ光を発射する装置であり、本実施形態では、複数の半導体レーザ素子113が一列に配列された半導体レーザ素子アレイである。半導体レーザ素子113から発射されるレーザ光は、該レーザ光の進む方向である発射方向に対して垂直な断面が、略真円形状である。各半導体レーザ素子113は、それぞれの発射するレーザ光の発射方向がすべて同一方向となり、かつ、半導体レーザ素子113の配列する方向に垂直な方向となるように設けられる。以下では、半導体レーザ素子113の配列する方向を配列方向Dと称し、半導体レーザ素子113が発射するレーザ光の発射方向を照射方向Dと称し、配列方向Dおよび照射方向Dのいずれにも垂直な方向のうちの一方の方向を走査方向Dと称する。
【0065】
本実施形態では、半導体レーザ素子113として、発射するレーザ光の波長が780nmで、定格出力が150mWの半導体レーザ素子が用いられ、該半導体レーザ素子が1000個配列されている。各半導体レーザ素子113の配列ピッチPは0.3mmである。
【0066】
各半導体レーザ素子113は、シリコンから形成される各シリコン基板112上にそれぞれ設けられる。シリコン基板112上には図示しない制御回路と受光素子114とがモノリシックに形成される。受光素子114はモニタ用のフォトダイオードである。制御回路は、受光素子114から入力される信号に基づいて、半導体レーザ素子113に印加する電圧を制御して、レーザ光の出力を変化させたり一定に保ったりする。制御回路と半導体レーザ素子113とは、図示しない電極およびボンディングワイヤを介して電気的に接続される。
【0067】
また、シリコン基板112上には、各半導体レーザ素子113の温度を測定するために、サーミスタなどの温度センサ115が設けられる。前記制御回路は、温度センサ115によって検出された温度データに基づいて、半導体レーザ素子113に印加する電圧を制御する。
【0068】
シリコン基板112は、半導体レーザ素子113が設けられる面とは反対側の面において、セラミック基板111上に設けられる。セラミック基板111上の図示しない電極とシリコン基板112上の図示しない電極とは、ワイヤーボンディングなどによって電気的に接続される。
【0069】
セラミック基板111において、シリコン基板112が設けられる面とは反対側の面には、ヒートシンク118が設けられる。本実施形態では、ヒートシンク118として、アルミニウム合金製でベースサイズが縦30mm×横30mm、高さが20mm、熱抵抗が1.6℃/Wのヒートシンク(株式会社アルファ製 UB30−20B)を、配列方向Dに、計10個一列に並べたものを用いている。本実施形態では、ヒートシンク118のトータルの熱抵抗は、0.16℃/Wである。
【0070】
半導体レーザ素子113の照射方向Dにおける下流側には、レンズアレイ116が設けられる。レンズアレイ116は、半導体レーザ素子113の総数と同じ数の凸レンズ117aと、該凸レンズ117aを保持するレンズホルダ117bとを含む。レンズアレイ116は、各半導体レーザ素子113から発射されたレーザ光が、各凸レンズ117aにそれぞれ入射するように構成される。各凸レンズ117aは、各凸レンズ117aから出射した光の、後述する搬送部120に担持される記録媒体Mに当たるときの形状が、細長い楕円になるように設計される。この楕円の長径は、配列方向Dに沿い、0.3mmである。
【0071】
レンズアレイ116としては、各凸レンズ117aを樹脂からなるレンズホルダ117bに組み込んだもの、凸レンズ117aおよびレンズホルダ117bを同一の樹脂によって一体成形したもの、平板ガラスにイオン交換によってレンズ部を形成することで製造される平板マイクロレンズアレイなどが挙げられる。この中でも、一体成形したもの、および平板マイクロレンズアレイは、製造コストおよび製造工程を減らすことができ、かつ精度良く製造できる点で好ましい。なお、レンズアレイ116を設ける代わりに、レーザ光発射部110と搬送部120とを近接させてもよい。
【0072】
本発明に係るレーザ定着装置は、レーザ光が入射すると該レーザ光とは波長が異なる出射光が出射する波長変換部を含む。本実施形態では、半導体レーザ素子113とレンズアレイ116との間に、波長変換部130が着脱自在に設けられる。波長変換部130は、波長変換素子131aと保持部131bとを含む。保持部131bは、セラミック基板111に着脱自在に設けられ、波長変換素子131aを固定保持する。
【0073】
波長変換素子131aは、第2次高調波発生(Second Harmonic Generation、SHG)素子や、第3次高調波発生素子などの、入射光とは異なる波長の出射光が出射する部材である。これらの高調波発生素子は、複屈折性を有する結晶を用いる複屈折位相整合法(
Birefringence Phase Matching、BPM)、または周期分極反転構造を用いる擬似位相整合法(Quasi Phase Matching、QPM)によって所望の強度の高調波を発生させる。
【0074】
本実施形態では、波長変換素子131aとして、QPMを用いるSHG素子のうち、導波路型のSHG素子が用いられる。このSHG素子において、各導波路は、各半導体レーザ素子113と各凸レンズ117aとを結ぶ直線上に設けられる。なお、導波路型のSHG素子の代わりに、バルク型のSHG素子を用いてもよい。
【0075】
上述したように、半導体レーザ素子113は、波長780nmのレーザ光を発射する。したがって、このレーザ光がSHG素子に入射すると、凸レンズ117aに向かって、該SHG素子から波長390nmの出射光が出射する。すなわち、本実施形態では、半導体レーザ素子113から発射された赤外線がSHG素子に入射し、該SHG素子から紫外線が出射する。ここで、400nm以上760nm以下の波長領域が可視領域であり、400nm未満の波長領域が紫外領域であり、760nmを超える波長領域が赤外領域である。また、可視領域の波長を有する光が可視光線であり、紫外領域の波長を有する光が紫外線であり、赤外領域の波長を有する光が赤外線である。
【0076】
本実施形態では、波長変換部130が着脱自在に設けられており、波長変換部130が取り外された状態では、半導体レーザ素子113から発射された赤外線が直接凸レンズ117aに入射し、凸レンズ117aによって集光され、記録媒体M上のトナーTに照射される。また、波長変換部130が取り付けられた状態では、半導体レーザ素子113から発射された赤外線が波長変換素子131a(SHG素子)に入射することにより該SHG素子から出射した紫外線が、凸レンズ117aに入射し、凸レンズ117aによって集光され、記録媒体M上のトナーTに照射される。したがって、本実施形態では、光定着トナーとして赤外線定着トナーを用いる場合には、波長変換部130を取り外すことで該赤外線定着トナーを溶融、定着させることができ、光定着トナーとして紫外線定着トナーを用いる場合には、波長変換部130を取り付けることで該紫外線定着トナーを溶融、定着させることができる。
【0077】
なお、他の実施形態として、半導体レーザ素子113の発射するレーザ光の波長を、800nmに設定したときは、SHG素子から出射する出射光の波長は400nmとなる。したがって、この実施形態では、赤外線および可視光線の2種類の光をトナーに照射でき、赤外線定着トナーと可視光線定着トナーとに対応できる。
【0078】
搬送部120は、搬送ベルト121、駆動ローラ122、従動ローラ123、吸着チャージャー124、分離チャージャー125、除電チャージャー126、および剥離爪127を備えている。搬送部120は、照射方向Dにおいて、レンズアレイ116よりも50mm下流側に離隔した位置に設けられる。なお、用いる凸レンズ117aに合わせて搬送部120とレンズアレイ116との間隔は変更することが好ましい。
【0079】
搬送ベルト121は、無端ベルト状部材であり、駆動ローラ122と従動ローラ123とによって張架されてループ状の経路を形成する。搬送ベルト121は、記録媒体Mを担持して、走査方向Dに移動させる。搬送ベルト121上において記録媒体Mに光が照射され、未定着トナーが溶融定着する。本実施形態では、搬送ベルト121は、厚さが75μmであり、体積抵抗率が1016Ω・cmである。
【0080】
本実施形態において、搬送ベルト121は、赤外線の透過率が70%以上であり、かつ、紫外線の透過率が80%以上である材料から形成されることが好ましい。このような材料から搬送ベルト121が形成されることで、搬送ベルト121は光劣化し難くなり、長期に亘って使用することができる。このような材料としては、たとえば、透明ポリオレフィン、ポリアミド、テフロン(登録商標)などが挙げられる。
【0081】
駆動ローラ122は、図示しない駆動部によってその軸線回りに回転可能に設けられる。駆動ローラ122は、その回転によって、搬送ベルト121を回転移動させる。駆動ローラ122は導電性材料で構成され、接地されている。
【0082】
従動ローラ123は、駆動ローラ122よりも走査方向D上流側に設けられ、駆動ローラ122の回転に従動して回転可能に設けられ、搬送ベルト121が弛まないように、搬送ベルト121に一定の張力を発生させる。従動ローラ123は、導電性材料で構成され、接地されている。
【0083】
吸着チャージャー124は、従動ローラ123に対向する位置に設けられるコロナ放電装置である。未定着トナー像を担持した記録媒体Mは、従動ローラ123上の搬送ベルト121と吸着チャージャー124との間に搬送される。吸着チャージャー124は、コロナ放電によって、記録媒体Mと搬送ベルト121とにそれぞれ誘電分極を起こさせ、記録媒体Mを搬送ベルト121上に静電吸着させる。
【0084】
分離チャージャー125は、駆動ローラ122に対向する位置に設けられるコロナ放電装置である。トナーが定着した記録媒体Mは、駆動ローラ122上の搬送ベルト121と分離チャージャー125との間に搬送される。分離チャージャー125は、吸着チャージャー124とは逆極性のコロナ放電によって、記録媒体Mを除電することで、記録媒体Mと搬送ベルト121との間の静電吸着力を弱める。
【0085】
剥離爪127は、駆動ローラ122よりも走査方向D下流側に設けられ、搬送ベルト121から記録媒体Mを剥離する。除電チャージャー126は、記録媒体Mが剥離した搬送ベルト121に対して、吸着チャージャー124とは逆極性のコロナ放電を行うことによって、搬送ベルト121を除電するコロナ放電装置である。
【0086】
なお、上記レーザ定着装置100では、記録媒体M上の未定着トナーに光を照射するときに、トナーを充分に溶融でき、かつ、トナーを構成する結着樹脂の分子間の結合が直接断ち切られる分解現象(アブレーション)が生じないように、出力調整およびパルス幅調整を行う。出力調整およびパルス幅調整は、レーザ光を照射する場合と出射光を照射する場合とで、それぞれ行うことが好ましい。
【0087】
次に、本発明の第2実施形態であるレーザ定着装置200について説明する。図5は、レーザ定着装置200を示す模式図である。レーザ定着装置200は、レーザ光発射部110と搬送部120と波長変換部230とを備える。レーザ光発射部110および搬送部120については説明を省略する。
【0088】
波長変換部230は、波長変換素子131aと可動部231aと固定部231bとを含む。波長変換素子131aについては説明を省略する。固定部231bは、セラミック基板111に固定され、可動部231aを支持する。
【0089】
可動部231aは、波長変換素子131aを固定保持する。可動部231aは、図示しない駆動部と接続され、制御ユニット部が該駆動部を制御することで、走査方向Dおよび走査方向Dの反対方向に、移動可能に設けられる。図5(a)は可動部231aが走査方向Dの反対方向に移動したときの状態を示し、図5(b)は可動部231aが走査方向Dに移動したときの状態を示している。
【0090】
図5(a)に示すように、可動部231aは、走査方向Dの反対方向に移動した状態において、半導体レーザ素子113から発射されたレーザ光が波長変換素子131aに入射するように構成されている。したがって、可動部231aが走査方向Dの反対方向に移動した状態のとき、記録媒体M上のトナーには、波長変換素子131aからの出射光が照射される。以下では、可動部231aが走査方向Dの反対方向に移動した状態を、出射光照射状態と称する。
【0091】
また、図5(b)に示すように、可動部231aは、走査方向Dに移動した状態において、半導体レーザ素子113から発射されたレーザ光が波長変換素子131aに入射せずに凸レンズ117aに入射するように構成されている。したがって、可動部231aが走査方向Dに移動した状態のとき、記録媒体M上のトナーには、半導体レーザ素子113からのレーザ光が照射される。以下では、可動部231aが走査方向Dに移動した状態を、レーザ光照射状態と称する。
【0092】
このように、本実施形態では、波長変換部230は、着脱自在に設けられる代わりに、レーザ光照射状態と出射光照射状態とを機械的に切換え可能に構成されている。したがって、波長変換部230の取り付けおよび取り外しという手間を要さずに、光吸収特性が異なる2種類の光定着トナーに対応することができる。
【0093】
以下に、本発明に用いるトナーについて説明する。本発明に係るトナーは、照射された光を吸収することによって、溶融、定着する光定着トナーである。本発明に係るトナーは、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有する。
【0094】
結着樹脂としては、電子写真トナー用の結着樹脂として常用されるものであれば特に限定されず、たとえば、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂が好ましい。これらの結着樹脂は、1種を単独で使用でき、また2種以上を併用できる。1種の結着樹脂を使用する場合において、分子量、単量体組成などのうちのいずれか1つまたは複数が異なる結着樹脂を、複数併用してもよい。
【0095】
ポリエステルは透明性に優れ、また、トナー粒子に良好な粉体流動性、低温定着性、二次色再現性などを付与できるので、トナーに用いる結着樹脂として好適である。ポリエステルとしては公知のものを使用でき、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応によって得ることができる。
【0096】
多塩基酸としては、ポリエステル用のモノマーとして公知のものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物などが挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用でき、また2種以上を併用できる。
【0097】
多価アルコールとしては、ポリエステル用のモノマーとして公知のものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用でき、また2種以上を併用できる。
【0098】
多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応の実施方法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、有機溶媒の存在下、または有機溶媒の非存在下かつ重縮合触媒の存在下で、多塩基酸と多価アルコールとを接触させ、生成されるポリエステルの酸価、軟化点などが所定の値になったところで反応を終了させることによって、所望のポリエステルが得られる。また、多塩基酸の代わりに多塩基酸のメチルエステル化物を用いて、多価アルコールとの脱メタノール重縮合反応を起こさせることによっても、ポリエステルを得ることができる。
【0099】
重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率などを適宜変更することによって、たとえば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、ひいては変性ポリエステルを得ることができる。また、多塩基酸として無水トリメリット酸を用いると、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することができ、これによって、変性ポリエステルを得ることができる。ポリエステルの主鎖および側鎖の少なくとも一方に、カルボキシル基、スルホン酸基などの親水性基を結合させれば、水中で自己分散可能なポリエステルを得ることができる。ポリエステルは、グラフト化によってアクリル樹脂と結合されてもよい。
【0100】
スチレン−アクリル樹脂としては、たとえば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。
【0101】
着色剤としては、電子写真トナーの分野で常用される有機系染料、有機系顔料、無機系染料、無機系顔料などを使用できる。
【0102】
黒色の着色剤としては、たとえば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
【0103】
黄色の着色剤としては、たとえば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
【0104】
橙色の着色剤としては、たとえば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
【0105】
赤色の着色剤としては、たとえば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0106】
紫色の着色剤としては、たとえば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
【0107】
青色の着色剤としては、たとえば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
【0108】
緑色の着色剤としては、たとえば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0109】
白色の着色剤としては、たとえば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などの化合物が挙げられる。
【0110】
着色剤は1種を単独で使用でき、また2種以上の異なる色のものを併用できる。同色の着色剤を2種以上併用してもよい。着色剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部であり、さらに好ましくは0.2重量部〜10重量部である。
【0111】
上述したように、本発明に用いられるトナーは光定着トナーである。光定着トナーは、光を吸収することで結着樹脂を溶融させる光吸収材料を含む。黒色のトナーは、着色剤が光吸収材料として機能するので、結着樹脂および着色剤の他の材料として光吸収材料が添加される必要は無い。これに対して、黒色のトナー以外のトナーであるカラートナーは、着色剤による光の吸収のみでは溶融、定着することが難しいので、結着樹脂および着色剤の他の材料として光吸収材料が添加される。
【0112】
トナーに添加される光吸収材料は、本発明に係るレーザ定着装置によって照射される光の波長によって異なる。上述したように、本発明に係るレーザ定着装置は2種類の波長の光をトナーに対して照射することができる。光吸収材料は、この2種類の波長の光のうちの少なくともいずれか一方の光の波長付近に、最大吸収ピークを有する材料である。たとえば、レーザ光の波長をλ[nm]とし、出射光の波長をλ[nm]とするとき、λ±20[nm]の波長領域、およびλ±30[nm]の波長領域の少なくとも一方に、最大吸収ピークを有する材料である。
【0113】
上記レーザ定着装置100,200は、レーザ光として赤外線を照射し、出射光として紫外線を照射するように構成されている。したがって、レーザ定着装置100,200を備える画像形成装置1000において使用されるカラートナーは、光吸収材料として、赤外領域に最大吸収ピークを有する赤外線吸収材料、および紫外領域に最大吸収ピークを有する紫外線吸収材料の少なくとも一方を含む。
【0114】
赤外線吸収材料としては、750nm〜850nmの波長領域に最大吸収ピークを有する、シアニン系材料、フタロシアニン系材料、ナフタロシアニン系材料、ジチオ−ニッケル錯体系材料、ナフトキノン系材料、アントラキノン系材料、インドフェノール系材料、アゾ系材料などを挙げることができる。
【0115】
赤外線吸収材料の添加量は、たとえば、カラートナーの結着樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上5.0重量部以下である。添加量が0.1重量部よりも少ない場合、光吸収効率が低いので定着性が低下してしまう。添加量が5.0重量部よりも多い場合、光吸収効率が高過ぎることによって、アブレーションが急激に生じ、画質が劣化してしまう。
【0116】
紫外線吸収材料としては、ポリイミド(PI)、ポリエチレンサルファイド(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、およびポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる群の中から選択される1種または2種以上が挙げられる。これらの樹脂は、近紫外領域(300nm〜400nmの波長領域)に最大吸収ピークを有し、可視領域における光透過率が比較的高い。したがって、レーザ定着装置100,200によるレーザ光および出射光の少なくとも一方が近紫外線である場合に、定着強度が高く、色再現性が高い画像を得ることができる。
【0117】
図6に、ポリイミドの光透過率を示す。図6は、ポリイミドに照射する光の波長(nm)と、ポリイミドの光透過率(%)との関係を示している。図6に示すように、ポリイミドは、近紫外領域に最大吸収ピークを有し、可視領域における光透過率が比較的高い。
【0118】
紫外線吸収材料として、紫外線吸収基を有する樹脂材料を用いてもよい。紫外線吸収基を有する樹脂材料としては、たとえば、ベンゾトリアゾール骨格に紫外線吸収基であるメタクロイル基を導入した化合物とメタクリレート(MMA)とが共重合した構造を有するアクリル系樹脂などが挙げられる。このような樹脂は、トナーの結着樹脂との相溶性が高いので、紫外線吸収材料のブリードアウトを抑えることができる。また、可視領域における光透過率が比較的高い。
【0119】
紫外線吸収材料の添加量は、たとえば、カラートナーの結着樹脂100重量部に対して、0.05重量部以上5.0重量部以下である。添加量が0.05重量部よりも少ない場合、光吸収効率が低いので定着性が低下してしまう。添加量が5.0重量部よりも多い場合、光吸収効率が高過ぎることによって、アブレーションが急激に生じ、画質が劣化してしまう。また、添加量が5.0重量部よりも多い場合、トナーの流動性が低下してしまう。
【0120】
本発明に係るトナーは、ワックスを含有してもよい。一般的に、熱ローラ方式の定着装置を備える画像形成装置において使用されるトナーは、離型剤としてワックスが添加される。これに対して、光定着装置を備える画像形成装置において使用される光定着トナーは、離型性を考慮する必要が無い。しかしながら、ワックス、特にアミド基を有するアミド系ワックスは、着色剤への濡れ性が高く、着色剤を吸着して結着樹脂中に分散し易くする効果があるので、光定着トナーにおいても添加されることが好ましい。アミド系ワックスは着色剤を分散させる効果だけではなく、定着の際に記録媒体への濡れ性を高める効果を有し、これによって、定着性を高めることができる。
【0121】
ワックスとしては、トナー保存中のブロッキングを抑えるために、融点が50℃〜160℃のワックス、好ましくは融点が60℃〜120℃のワックスを使用する。ワックスの融点が50℃よりも低い場合、ブロッキングが発生し易くなり、また、融点が160℃を超える場合、溶融し難くなって定着性が低下する。ワックスの添加量は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2重量部〜20重量部、より好ましくは0.5重量部〜10重量部である。ワックスの添加量が0.2重量部よりも少ない場合、分散性および濡れ性の効果が得られ難く、また、添加量が20重量部を超える場合、トナー保存中にブロッキングが生じ易くなる。
【0122】
本発明に係るトナーは、帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては、電子写真トナーの分野で常用される正電荷制御用帯電制御剤または負電荷制御用帯電制御剤を使用できる。正電荷制御用帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用帯電制御剤としては、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用でき、また2種以上を併用できる。帯電制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できる。
【0123】
本発明に係るトナーは、表面調整剤を含有してもよい。表面調整剤は、トナーを構成する結着樹脂に対して相溶性の高い相溶性部と、相溶性の低い非相溶部とを有する構造である。表面調整剤は、トナーが溶融するとトナー表面に配向するので、トナーの表面張力が低減する。これによって、トナーは、記録媒体への濡れ性が向上するので、記録媒体表面および内部に拡張し易くなり、定着性が向上する。
【0124】
表面調整剤としては、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、高分子エーテル系レベリング剤、フッ素化合物を含有するノニオン系レベリング剤などを使用できる。表面調整剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは0.05重量部〜5.0重量部であり、より好ましくは0.1重量部〜3.0重量部である。添加量が0.05重量部未満であると表面張力を低減する効果が得られ難くなり、また、添加量が5.0重量部を超えると、トナーの保存中にブロッキングが生じ易くなる。
【0125】
本発明に係るトナーには、粉体流動性、摩擦帯電性、耐熱性、および保存安定性の向上、クリーニング特性の改善、ならびに感光体表面磨耗特性の制御などのために、外添剤が外添されてもよい。外添剤としては公知のものを使用でき、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。これらの外添剤は、シリコーン樹脂、シランカップリング剤などによって表面処理されていることが好ましい。外添剤は1種を単独で使用でき、また2種以上を併用できる。外添剤の添加量は、トナーの帯電特性および環境特性、感光体の摩耗に対する影響などを考慮すれば、トナー100重量部に対して0.1重量部〜10重量部であることが好ましい。
【0126】
トナーの製造方法としては、たとえば、粉砕法などの乾式法、または、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法、溶融乳化法などの湿式法を用いることができる。以下では粉砕法について説明する。
【0127】
粉砕法では、結着樹脂、着色剤、およびその他のトナー添加成分を含むトナー組成物を、混合機で乾式混合した後、混練機によって溶融混練する。そして、溶融混練によって得られる混練物を冷却固化し、冷却固化物を粉砕機によって粉砕する。その後、粉砕物について分級などの粒度調整を行い、必要に応じて外添剤を外添して、トナーを得る。
【0128】
上記乾式混合に用いる混合機としては公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
【0129】
上記溶融混練に用いる混練機としても公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。具体的には、たとえば、TEM100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。
【0130】
結着樹脂中に着色剤が均一に分散するように、着色剤としてマスターバッチを用いてもよい。また、結着樹脂中に結着樹脂および着色剤以外のトナー添加成分が均一に分散するように、トナー添加成分として、2種以上のトナー添加成分を含有する複合粒子を用いてもよい。複合粒子は、たとえば、2種以上のトナー添加成分に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって得られる。マスターバッチおよび複合粒子は、乾式混合の際に結着樹脂と混合される。また、光吸収材料は、予めニーダーなどの混合機でワックスと混合した後に、結着樹脂と乾式混合してもよい。これによって、溶融混練において、光吸収材料を結着樹脂中に均一に分散させることができる。
【0131】
上記のようにして製造されるトナーは、1成分現像剤としても2成分現像剤としても使用することができる。1成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いることなくトナーのみで使用する。2成分現像剤として使用する場合、上記トナーをキャリアとともに用いる。
【0132】
なお、本発明に係るトナーは、上記のような粉砕法で得られるトナーに限定されず、たとえば、コアシェル構造を有するトナーであってもよい。コアシェル構造を有するトナーである場合、コアおよびシェルの少なくとも一方にレベリング剤が添加されることが好ましい。
【0133】
本発明では、レーザ定着装置100,200を備える画像形成装置1000と、上記トナーとを用いて画像形成を行う。より具体的には、現像装置24によって上記トナーからなる光定着トナー像を感光体ドラム21上に形成する現像工程と、前記現像工程で形成された光定着トナー像を転写部30によって記録媒体上に転写する転写工程と、記録媒体上の光定着トナー像に対して、レーザ定着装置100,200によって前記レーザ光および前記出射光の少なくとも一方を照射することで、該光定着トナー像を構成する光定着トナーを溶融させて記録媒体に定着させる定着工程とを行うことで画像を形成する。
【0134】
黒色の光定着トナーと黒色以外の光定着トナーとを積層して画像を形成する場合、前記転写工程では、照射方向Dにおいて黒色の光定着トナーよりも上流側に、黒色以外の光定着トナーが積層されるように、転写を行うことが好ましい。たとえば、画像形成装置1000において中間転写ベルト31上に各色のトナー像を順次重ねるときに、黒色のトナー像を最後に重ねれば、転写ローラ36によって記録媒体にトナー像を転写したときに、記録媒体上において、黒色のトナー像が最下層となる。これによって、カラートナーを、照射方向Dにおいて黒色のトナーよりも上流側に積層できる。このように、光吸収効率が比較的低いカラートナーを上流側に積層することで、該カラートナーに比較的高強度の光を照射することができるので、カラートナーを充分に定着させることができる。なお、黒色のトナーは光吸収効率が比較的高いので、光の強度が比較的低くても、充分に定着することができる。
【0135】
上記転写工程では、黒色のトナーが記録媒体上において最下層となるように転写を行うのではなく、照射される光の吸収効率が最も高いトナーを予め確認した後、該トナーが記録媒体上において最下層となるように転写を行ってもよい。たとえば、赤外線吸収材料を含まない黒色のトナーと、赤外線吸収材料を大量に含むカラートナーとでは、該カラートナーの方が赤外線の吸収効率が高い場合がある。このような場合には、このカラートナーが記録媒体上において最下層となるように転写を行うことが好ましい。
【0136】
画像形成装置1000による画像形成方法において、上記現像工程以前に、各色のカラートナーの光吸収特性を確認する確認工程が含まれてもよい。確認工程は、たとえば、発光部と受光部とを画像形成装置1000内部に設けることで行うことができる。より具体的には、現像工程以前(たとえば、トナーカートリッジの交換直後や、画像形成装置1000の電源投入直後など)に、中間転写ベルト31上に、各色のカラートナーのトナーパッチを形成し、該トナーパッチに対して、発光部によって所定の光を照射する。受光部は、トナーパッチにおける反射光または透過光を受光する。そして、受光部による検出結果に基づいて、制御ユニット部が各色のカラートナーの光吸収特性を算出する。
【0137】
このように、画像形成装置1000によって各色のカラートナーの光吸収特性を確認する確認工程を行うことで、ユーザ自らが各色のカラートナーの光吸収効率を確認して設定しなくても、上述したような、トナーの光吸収特性に応じた転写工程の制御を、制御ユニット部が行うことができる。
【0138】
さらに、画像形成装置1000は、上記確認工程によって、各色のカラートナーのうち、光吸収特性が大幅に異なるカラートナーを確認したときは、ユーザに対して警告を行うように構成されてもよい。光吸収特性が大幅に異なるカラートナー、たとえば、最大吸収ピークの波長が、200nm以上異なる2種類のカラートナーは、互いに異なる種類の光定着トナー(たとえば、赤外線定着トナーと紫外線定着トナー)である可能性が高い。このような2種類のカラートナーが記録媒体に担持されている場合には、レーザ光または出射光を照射しても、2種類のうちの片方のカラートナーが溶融し難い。そこで、画像形成装置1000は、アラーム音やメッセージなどで警告を行い、ユーザにトナーの交換を促すように構成されることが好ましい。
【0139】
レーザ定着装置200を備える画像形成装置1000の場合、画像形成装置1000は、上記のような警告を行う代わりに、または警告を行うとともに、定着工程において、レーザ光および出射光の両方を照射するように構成されてもよい。たとえば、黒トナー、シアントナー、イエロートナーが紫外線定着トナーで、マゼンタトナーのみが赤外線定着トナーである場合、波長変換素子131aからの出射光(紫外線)の照射だけではこのマゼンタトナーが充分に溶融定着しない。このような場合、出射光を記録媒体に向けて照射した後に、レーザ光を記録媒体に向けて照射すれば、このマゼンタトナーを溶融させることができる。上述したように、レーザ定着装置200は制御ユニット部によって出射光照射状態とレーザ光照射状態とを切換えることができるので、画像形成装置1000において、上記確認工程で互いに異なる種類の光定着トナーが確認された場合、照射状態を切換えてレーザ光および出射光の両方を照射するように制御することで、トナーを交換することなく画像形成を行うことができる。
【0140】
なお、レーザ光および出射光にそれぞれ対応する光吸収材料をトナーに含有させた上で、上記のようなレーザ光および出射光の両方の照射を行ってもよい。たとえば、光定着トナーが、赤外線吸収材料および紫外線吸収材料のいずれもを含んでいるとき、レーザ光および出射光の両方の照射によって該光定着トナーを確実に定着でき、かつ、赤外線吸収材料および紫外線吸収材料それぞれの含有量を、各材料を単独で含有するときよりも低減でき、色再現性を向上できる。
【実施例】
【0141】
以下に、本発明の実施例を説明するけれども、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、以下では、「部」は重量部、「%」は重量%を意味する。
【0142】
(1)評価方法
光沢、画像濃度、定着性の評価は、以下の方法により評価した。なお、画像サンプルは、シャープ社製フルカラー専用紙(PP106A4C)上に、シャープ社製MX−5001FNを用いて、所定のトナー付着量になるように調整して未定着画像を形成させた後、下記の定着装置を用いて定着させた。
【0143】
(光沢の評価)
GlossMeterGM−26D(村上色彩技術研究所製)を用い、入射角75度にて画像サンプルの光沢値を測定した。光沢値は大きいほど表面の平滑性が高いことを示しており、50以上を良好とし、50未満を不良とした。
【0144】
(画像濃度の評価)
上記フルカラー専用紙上のトナー付着量を1.0mg/cmとした画像サンプルの濃度(画像濃度ID)を、測色計X−rite938(X−rite社製)を用いて測定した。画像濃度IDは、1.6以上を良好とし、1.6未満を不良とした。
【0145】
(定着性の評価)
定着したべた画像を荷重1kgの錘を用いて折り曲げ、折り曲げた画像上で、上に上記錘を載せた未印字のフルカラー専用紙を引き擦ることで、トナー画像の折り目でトナーが剥離する。その剥離状態から定着性を評価した。定着性は、折り目で剥離した線(白抜け)幅が0.5mm以下であれば良好とし、0.5mmを超えるときを不良とした。
【0146】
(2)実施例
(定着装置)
定着装置は、発振波長が780nmの基本レーザ光を照射する定格電力が150mWの半導体レーザ素子を1000個配列したレーザアレイ、集光レンズ、基本レーザ光を変換するための波長変換素子(波長変換結晶としてタンタル酸リチウム結晶を備える)、ポリフッ化ビニリデンに導電剤を配合した搬送ベルト(780nmでの光透過率90%、390nmでの光透過率84%)、および、搬送ベルトの裏側にバイアス電圧を印加し、記録用紙を静電吸着させるバイアス電源、により構成した。この定着装置は、本発明に係るレーザ定着装置の実施例である。
【0147】
(紫外線定着トナーを含む現像剤(現像剤1)の作製)
ガラス転移温度Tgが63℃、1/2フロー軟化温度Tmが109℃、屈折率が1.57のポリエステル樹脂に対して、40重量%のシアン顔料(ピグメントブルー15:3、ホスタパームブルーB2G、クラリアントジャパン社製)を加えて加圧ニーダーおよび2本ロールにより溶融混練分散させ、マスターバッチを作製した。
【0148】
次に、ポリエステル樹脂(ガラス転移温度Tgが63℃、1/2フロー軟化温度Tmが109℃、屈折率が1.57、重量平均分子量が11000)80.6部、上記マスターバッチ12.5部、光吸収剤(ベンゾトリアゾール骨格にメタクリロイル基を導入した化合物とメタクリレートとの共重合樹脂(最大吸収波長365nm))2.5部、および電荷制御剤4部からなる成分を、スーパーミキサーにて均一混合し、次いで2本ロール(ニーデックスMOS140−800、三井鉱山株式会社製)により溶融混錬し、冷却したのちジェットミルによる微粉砕と風力分級機による分級とを行った。
【0149】
そして、上記分級後の粒子100重量部と、疎水性シリカ微粒子(粒子径100nm)1.0重量部と、チタン化合物(粒子径10nm)1.5重量部とを混合して、負摩擦帯電性のトナーを調製した。なお、疎水性シリカ微粒子は、シランカップリング剤とジメチルシリコーンオイルとで表面処理されたものである。
【0150】
最後に、このトナーとキャリアとを混合し、紫外線定着トナーを含む現像剤(現像剤1)を作製した。キャリアにはフェライト粒子を使用し、現像剤のトナー濃度は4.0%に設定した。
【0151】
(画像形成および評価)
現像剤1を用いて未定着画像を形成した後、上記定着装置によって定着させた。定着の際は、基本レーザ光が波長変換素子に入射し、第2次高調波が出射するようにした。光沢、画像濃度、および定着性の評価を行ったところ、光沢は良好であり、画像濃度は良好であり、定着性は良好であった。
【0152】
(赤外線定着トナーを含む現像剤(現像剤2)の作製)
現像剤1の作製工程において、ポリエステル樹脂の添加量を81.1部、マスターバッチの添加量を12.5部に変更し、光吸収剤をシニン色素(最大吸収波長800nm)2.0部に変更したこと以外は同様にして、赤外線定着トナーを含む現像剤(現像剤2)を作製した。
【0153】
(画像形成および評価)
現像剤2を用いて未定着画像を形成した後、上記定着装置によって定着させた。定着の際は、基本レーザ光が波長変換素子に入射しないようにした。光沢、画像濃度、および定着性の評価を行ったところ、光沢は良好であり、画像濃度は良好であり、定着性は良好であった。
【0154】
以上のように、本発明に係る上記定着装置は、紫外線定着トナーにも、赤外線定着トナーにも、対応することができた。
【符号の説明】
【0155】
20 トナー像形成部
21,21c,21k,21m,21y 感光体ドラム
22,22c,22k,22m,22y 帯電部
23 露光ユニット
24,24c,24k,24m,24y 現像装置
25,25c,25k,25m,25y クリーニングユニット
30 転写部
50 記録媒体供給部
60 排出部
100,200 レーザ定着装置
110 レーザ光発射部
111 セラミック基板
112 シリコン基板
113 半導体レーザ素子
114 受光素子
115 温度センサ
116 レンズアレイ
117a 凸レンズ
117b レンズホルダ
120 搬送部
121 搬送ベルト
130,230 波長変換部
131a 波長変換素子
131b 保持部
231a 可動部
231b 固定部
1000 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収特性が異なる2種類の光定着トナーに対応するレーザ定着装置であって、
レーザ光を発射するレーザ光発射部と、
前記レーザ光が入射すると、該レーザ光とは波長が異なる出射光が出射する波長変換部とを備え、
前記2種類の光定着トナーのうちの一方のトナーに対して前記レーザ光を照射し、他方のトナーに対して前記波長変換部から出射する出射光を照射するように構成されることを特徴とするレーザ定着装置。
【請求項2】
前記レーザ光発射部は、前記レーザ光として赤外線を発射するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のレーザ定着装置。
【請求項3】
前記波長変換部は、該波長変換部から出射する出射光として紫外線が出射するように構成されることを特徴とする請求項2に記載のレーザ定着装置。
【請求項4】
前記波長変換部は、擬似位相整合法を用いるSHG素子であることを特徴とする請求項3に記載のレーザ定着装置。
【請求項5】
前記レーザ光および前記波長変換部から出射する出射光が照射される位置に記録媒体を搬送する搬送部をさらに備え、
前記搬送部は、少なくとも前記レーザ光および前記波長変換部から出射する出射光が照射される部分において、赤外線の透過率が70%以上であり、かつ、紫外線の透過率が80%以上であることを特徴とする請求項3または4に記載のレーザ定着装置。
【請求項6】
電子写真方式の画像形成装置であって、
請求項1〜5のいずれか1つに記載のレーザ定着装置によって光定着トナーを記録媒体に定着させるように構成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置と、前記レーザ定着装置によって照射される光を吸収する光吸収材料を含有した光定着トナーとを用いて画像を形成する画像形成方法であって、
前記画像形成装置が備える現像装置によって、該画像形成装置が備える像担持体上に、光定着トナー像を形成する現像工程と、
前記画像形成装置が備える転写部によって、前記現像工程で形成された光定着トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、
前記レーザ定着装置によって、記録媒体上の光定着トナー像に対して、前記レーザ光および前記波長変換部から出射する出射光の少なくとも一方を照射することで、該光定着トナー像を構成する光定着トナーを溶融させて記録媒体に定着させる定着工程とを含むことを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
前記光吸収材料は、ポリイミド、ポリエチレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、およびポリカーボネートからなる群の中から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記光吸収材料は、紫外線吸収基を有する樹脂材料であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成方法。
【請求項10】
黒色の光定着トナーと黒色以外の光定着トナーとを積層して画像を形成する場合、前記転写工程では、前記定着工程における光の照射方向において黒色の光定着トナーよりも上流側に、黒色以外の光定着トナーが積層されるように、転写を行うことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−209318(P2011−209318A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73846(P2010−73846)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】