説明

レーザ治療装置

【課題】 患部に照射されるスペックルパターンの均一化を図り、より適切な治療を可能にするレーザ治療装置を提供すること。
【解決手段】 レーザ光源からの治療レーザ光を患部に照射するレーザ治療装置において、レーザ光を導光する光ファイバと、該光ファイバの入射端側又は出射端側に配置され、光ファイバに入射するレーザ光又は光ファイバから出射するレーザ光を回転する回転手段と、該回転手段を駆動する駆動手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、患者の患部にレーザ光を照射することにより治療を行うレーザ治療装置に関する。
【0002】
【従来技術】レーザ光源からの治療レーザ光を光ファイバを用いて患部に導光すると、レーザのスペックルパターンが発生する。スペックルパターンは、レーザ光源から出射されるレーザ光のモードによる他、光ファイバ光路内及び光ファイバ出射面でのレーザ光の干渉によって発生する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】スペックルパターンが発生すると、スペックルパターンがそのまま患部に投影され治療部に焼きムラを生じるという問題があった。
【0004】本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、患部に照射されるスペックルパターンの均一化を図り、より適切な治療を可能にするレーザ治療装置を提供することを技術課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) レーザ光源からの治療レーザ光を患部に照射するレーザ治療装置において、レーザ光を導光する光ファイバと、該光ファイバの入射端側又は出射端側に配置され、光ファイバに入射するレーザ光又は光ファイバから出射するレーザ光を回転する回転手段と、該回転手段を駆動する駆動手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)のレーザ治療装置において、患部にレーザ光を照射する時間を可変設定する設定手段を備え、前記駆動手段は設定可能な最短の時間内に患部に照射するレーザ光を少なくとも1回転させる速度で前記回転手段を駆動することを特徴とする。
(3) (1)のレーザ治療装置は、眼底にレーザ光を照射する眼科用の光凝固レーザ装置であることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1はレーザ光凝固装置の外観構成の概略図である。1は装置本体であり、レーザ光源やレーザ光を光ファイバ2に入射させる光学系が収納されている。3はレーザ出力や照射時間、波長の切替え等の光凝固条件の設定及び表示、装置の状態等の表示を行うためのコントロールボックスである。4は患者眼を観察しながらレーザ光を患者眼の患部に照射するスリットランプデリバリであり、光ファイバ2に導光されたレーザ光を照射するレーザ照射部5、患者眼を照明する照明部6、患者眼を観察する双眼の顕微鏡部4aを備える。7はレーザ照射のトリガ信号を送出するフットスイッチである。
【0007】図2は装置の光学系を説明する図であり、図3は装置の制御系ブロック図である。9は治療用レーザ光源であり、イオンレーザのレーザ管10、第1全反射ミラー10a、第2全反射ミラー10b、出力ミラー11を備え、異なる波長の治療レーザ光を生成する。本実施例ではレーザ管10として、赤色光(647.1 nm)と黄色光(568.2 nm)、及び緑色光(530.9 nm、520.8 nm)の発振光を持つクリプトンレーザ(Kr)を使用している。レーザ光源9からはマルチモードのレーザ光が出射する。第1全反射ミラー10aは黄色光(568.2 nm)及び緑色光(530.9 nm、520.8 nm)の光を反射する特性を有し、レーザ光軸上に固定的に配置されている。第2全反射ミラー10bは、赤色光(647.1 nm)を反射する特性を有し、光路上に挿脱可能に配置される。出力ミラー11は、赤色光、黄色光、緑色光の全ての波長域の光に対して1〜3%の透過率を有する。したがって、第2全反射ミラー10bを光路上に配置したときは、これと出力ミラー11により共振器が構成されて赤色のレーザ光が発振する。一方、第2全反射ミラー10bを光路上から退避させると、第1全反射ミラー10aと出力ミラー11により共振器が構成されて黄色光(568.2 nm)及び緑色光(530.9 nm、520.8 nm)のレーザ光が発振されるようになる。第2全反射ミラー10bの光路への挿脱はミラー駆動装置66によって行われる。なお、この異なる波長のレーザ発振に関する事項は、詳しくは特開平10-209529号を参照されたい。
【0008】14はレーザ光源9からのレーザ光の大部分を透過し一部を反射するビームスプリッタで、ビームスプリッタ14を反射したレーザ光は拡散板15を通過し、出力センサ16に入射される。出力センサ16はレーザ光源9から出射したレーザ出力を検出する。12は緑色(520.8nm・530.9nm)のレーザ光を選択的に透過する波長選択フィルタ、13は黄色( 568.2nm)のレーザ光を選択的に透過する波長選択フィルタであり、フィルタ12又は13の何れかを光路に挿入することにより、黄色又は緑色のレーザ光を選択的に得ることができる。また、フィルタ12及び13の両方を光路外に置くことにより、黄色と緑色のレーザ光を同時に得ることができる。フィルタ12,13はそれぞれフイルタ駆動装置62,63の作動により光路への挿脱が行われ、その挿入状態はフィルタセンサ12a、13aによってチェックされる。
【0009】17は第1安全シャッタであり、フットスイッチ7が踏まれ、治療用レーザ光の照射を行う指令がなされたときは、駆動装置64の駆動により光路から離脱してレーザ光の通過を可能にし、また、異常発生時等の所定の場合に光路に挿入されてレーザ光を遮断する。この第1安全シャッター17の開閉はシャッタセンサ17aによって検知される。
【0010】18はダイクロイックミラーで、可視の半導体レーザ19からのエイミング用レーザ光(波長670nm)はコリメータレンズ20を介して治療用レーザ光と同軸にされる。21は第2安全シャッタであり、半導体レーザ19からのエイミング用レーザ光が出ていないときに駆動装置65によって光路に挿入される。第2安全シャッター21の開閉はシャッタセンサ21aによって検知される。23はイメージローテータであり、イメージローテータ23内にはミラー23a、23b、23cが配置されており、これらは一体となってモータ30によってプーリ32、33、ベルト31を介して回転される。イメージローテータ23は、光ファイバ2にレーザ光を入射させる前に、レーザ光をその光軸回りに回転させる役目をしている。22は集光レンズであり、レーザ光を光ファイバ2の入射端面に集光、入射させる。
【0011】光ファイバ2によってレーザ照射部5に導光されたレーザ光は、リレーレンズ24、レーザ光のスポットサイズを変更するために光軸方向に移動可能なズームレンズ25、対物レンズ26を介した後、ミラー27で反射し、コンタクトレンズ28を経て患者眼の患部に照射される。照明部6は患者眼の照明、顕微鏡部4aは患者眼の観察のために設けられている。図3において、60は制御部であり、レーザ光源9、フットペダル7、コントロールボックス3、各センサ、各駆動装置、モータ30等が接続されている。
【0012】以上のような構成を持つ装置の動作を説明する。レーザ照射に際して、術者はコントロールボックス3の各スイッチを操作して、レーザ光の波長選択、レーザ出力、凝固時間(照射時間)等の凝固条件等を設定する。レーザ光の波長選択は、黄色のレーザ光に設定したものとして説明する。レーザ光の波長を黄色に設定すると、制御部60により駆動装置66が駆動され、治療用レーザ光源9内の第2全反射ミラー10bが光路外に置かれる。また、フイルタ駆動装置63の駆動により黄色を透過する波長選択フィルタ13が光路に挿入される(緑色を透過する波長選択フィルタ12は光路外に置かれる)。
【0013】術者は患者を所定位置に座らせ動かないようにした後、スリットランプデリバリ4からの照明光が患者眼上にくるようにジョイスティックを操作する。スリット光の光量、ピントを図示無き調節部にて調節した後、患者眼にコンタクトレンズ28をセットして顕微鏡部4aを覗き込みながら患者眼の患部を観察し、半導体レーザ19からのエイミング光の照準を観察光軸付近(視野中心付近)に合わせる。エイミング光の照準位置はミラー27を揺動するマイクロマニュピレータ29で調整する。
【0014】術者は、エイミング光の照準合わせができたら、コントロールボックス3の図示なきスイッチを押して装置の動作モードをSTANDBY 状態からレーザ照射が可能なREADY 状態にする。READY 状態になると、制御部60はローテータ駆動モータ30を駆動し、イメージローテータ23を回転速度300rpmで回転させる。その後、フットペダル7を踏み込み操作すると、第1安全シャッター17が光路から外される。レーザ光源9からのレーザ光は、フィルタ13によって黄色に波長選択された後、光ファイバ2、レーザ照射部5の光学系に導光されて眼底に照射される。
【0015】眼底光凝固の場合、治療用レーザ光を一回の照射で0.1秒以上照射する。凝固時間は、コントロールボックス3により0.1〜2.0秒の間で所定のステップ時間毎に設定可能である。マルチモードのレーザ光がマルチモードの光ファイバを透過した場合、図4に示す様に、光ファイバの出射端面では強度分布がまばらなスペックルパターンのレーザ光が生じてしまう。光ファイバの出射端面像がレーザ照射部5の光学系により眼底にそのまま投影されるので、レーザ光のスペックルパターンが凝固斑の不均一性として現われる。特に、図5のように偏ったスペックルパターンでは、凝固斑の不均一性として現われやすい。スペックルパターンは光ファイバに入射するレーザ光のモードにも起因する。
【0016】イメージローテータ23を回転させると、光ファイバ2に入射する前のレーザ光のモードが時間的に変化し、光ファイバ2の出射端でのスペックルパターンも時間的に変化する。イメージローテータ23の回転速度が300rpmであれば、眼底での照射像はその倍の回転速度の600rpmで回転する。照射像が600rpmで回転するということは、照射像が0.1秒間に一回転している。設定可能な凝固時間の最短である0.1秒の照射時間内に照射像が一回転すれば、スペックルパターンの均一化が図られ、凝固班にスペックルパターンが現われ難くなる。0.1秒以上のレーザ照射であれば、照射像は照射時間の長さに比例して回転する。レーザ光の強度分布の均一化により、部分的な過剰凝固が低減され、凝固斑の均一化が図られる。
【0017】上記ではイメージローテータ23を光ファイバ2の入射端側に配置したが、光ファイバ2の出射端側であるレーザ照射部5の光学系内に配置しても良い。この配置方法は、スペックルパターンの不均一性が光ファイバ2のモードに大きく依存する場合に特に有効である。また、上記では眼科用の光凝固装置を例にとって説明したが、皮膚にレーザ照射するあざ治療や脱毛治療のレーザ装置においても適用可能である。
【0018】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、レーザスペックルの時間的な均一化を図ることができ、部分的に偏った過剰照射が低減される。このため、より適切な治療が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】装置本体の外観を示す図である。
【図2】装置内部の光学系を示す図である。
【図3】制御系を示すブロック図である。
【図4】スペックルパターンを示す図である。
【図5】スペックルパターンの強度分布を示す図である。
【符号の説明】
1 装置本体
2 光ファイバ
3 コントロールボックス
9 治療用レーザ光源
23 イメージローテータ
23a ミラー
23b ミラー
23c ミラー
30 モータ
31 ベルト
32 プーリ
33 プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 レーザ光源からの治療レーザ光を患部に照射するレーザ治療装置において、レーザ光を導光する光ファイバと、該光ファイバの入射端側又は出射端側に配置され、光ファイバに入射するレーザ光又は光ファイバから出射するレーザ光を回転する回転手段と、該回転手段を駆動する駆動手段と、を備えることを特徴とするレーザ治療装置。
【請求項2】 請求項1のレーザ治療装置において、患部にレーザ光を照射する時間を可変設定する設定手段を備え、前記駆動手段は設定可能な最短の時間内に患部に照射するレーザ光を少なくとも1回転させる速度で前記回転手段を駆動することを特徴とするレーザ治療装置。
【請求項3】 請求項1のレーザ治療装置は、眼底にレーザ光を照射する眼科用の光凝固レーザ装置であることを特徴とするレーザ治療装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2003−310653(P2003−310653A)
【公開日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−120798(P2002−120798)
【出願日】平成14年4月23日(2002.4.23)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】