説明

レーザ焼入れ装置

【課題】半導体レーザ発振器を備えた焼入れ装置を提供する。
【解決手段】レーザ焼入れ装置1は、ベッド10上にC軸まわりに回転するテーブル20を備える。C軸に直交するY軸に沿って移動するコラム30にはZ軸に沿って移動する焼入れヘッド40が装備される。焼入れヘッド40は半導体レーザ発振器を備える。焼入れヘッドの主軸50はB軸まわりに回転し、トーチTからレーザビームを照射して、テーブル20のチャック22に把持されたワーク表面に焼入れ処理を行う。トーチ自動交換装置100は、回転するマガジンの外周部に複数のトーチTが格納され、主軸50に対してトーチを自動交換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザトーチ交換装置を備えたレーザ焼入れ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、本出願人の提案に係るもので、工作機械の主軸にレーザ焼入れ工具を装着して工作機械内で焼入れを行う技術を開示している。
また、特許文献2は、半導体レーザ装置を開示する。
【特許文献1】特開2005−334951号公報
【特許文献2】特開2004−130335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体レーザは、スポットが極めて小さなビームを出射することが可能である。このビームを金属部品の表面に照射すると、照射された部分は焼入れ温度まで上昇するが、部品全体の温度は上昇せず、自己冷却効果により、照射部分に焼入れ層が形成される。
本発明の目的は、上述した半導体レーザに着目し、ワークの形状に適した複数のレーザトーチの自動交換装置を備えたレーザ焼入れ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明のレーザ焼入れ装置は、ベッドと、ベッド上に配設されてC軸まわりに回転するテーブルと、ベッド上に配設されてC軸に直交するY軸に沿って移動するコラムと、コラムに支持されてY軸に直交するZ軸に沿って移動する半導体レーザ発振器を有するヘッドと、ヘッドに支持されてB軸まわりに旋回動する主軸と、主軸に着脱自在に装着される焼入れトーチと、ベッド上に配設されるトーチ自動交換装置を備えるものである。
そして、トーチ自動交換装置は、回転するマガジンと、マガジンの外周に設けられるトーチホルダと、トーチ交換位置に割り出されたトーチホルダをヘッドの主軸に向けて昇降させる機構を備える。
【発明の効果】
【0005】
本発明のレーザ焼入れ装置は、半導体レーザ発振器のレーザビームをワーク表面に照射して、ワークの自己冷却作用により、焼入れを達成するものである。焼入れヘッドの主軸に装着するトーチ自動交換装置を本機内に装備することにより、焼入れに最適なトーチを選択して、焼入れ工程を自動化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、本発明のレーザ焼入れ装置の概要を示す斜視図である。
全体を符号1で示すレーザ焼入れ装置は、ベッド10上に装備されるテーブル20を有し、テーブル20にはチャック22が装備される。テーブル20はC軸まわりに回転制御される。ベッド10上にはY軸方向に駆動されるコラム30が装備され、コラム30の前面には焼入れヘッド40がZ軸方向に摺動自在に設けられる。
【0007】
焼入れヘッド40は、主軸50を有し、主軸50には焼入れトーチTが交換自在に装着される。主軸50はB軸まわりに回転制御される。このレーザ焼入れ装置1は、水平面内でY軸に直交するX軸方向の摺動軸は有しない。X軸は、主軸50のB軸とテーブル20の合成軸で構成される。レーザ焼入れ装置1は、強電盤60やNC装置70を備える。
【0008】
焼入れヘッド40内には半導体レーザユニットが収容され、半導体レーザユニットから出射されたレーザビームは、トーチTに導かれ、レンズを含む光学系により集光され、チャック22に把持されたワークの表面にスポットを形成し、焼入れ加工を行う。
ベッド10上には、テーブル20に隣接してトーチ自動交換装置100が装備される。このトーチ自動交換装置100は、回転マガジンを有し、マガジンの外周部に複数の交換用のトーチTが格納される。
【0009】
図2は、主軸50の概要を示し、主軸50は、ウォーム機構51によりB軸まわりに旋回動する。主軸50には焼入れトーチTが交換可能に装置される。この焼入れトーチTは折返しミラーMを有し、レーザビームLBをノズルNからB軸に直交する方向に照射する。焼入れトーチの構造は、レーザビームをB軸方向に照射するもの、B軸に対して45度の角度で照射するもの等、ワークの形状に対応して種々のものが用意される。
【0010】
図3,図4は、トーチ自動交換装置100の構造を示す説明図である。
ベッド10側には、ベース110が固定され、ベース110上にマガジン120が旋回動自在に装備される。
マガジン120の外周部には、複数のトーチホルダ130が配設され、トーチTを格納する。トーチホルダ130の上部には、旋回動するカバー134が設けられ、格納されたトーチTの上部の開口部を保護する。
シリンダ150は、後端部をベッド10側に支持され、ロッド152の先端はリンクアーム154に連結される。リンクアーム154の先端の継手部156は、ロッド160を昇降動させる。ロッド160は、トーチ交換位置に割り出されたトーチホルダ130を昇降させる。トーチホルダ130は、上昇動と同期してカバー134をばねに抗して旋回動させて開く機構を備える。
【0011】
図5乃至図8は、トーチの自動交換操作を示す。
トーチの交換指令が入ると、図5の(a)に示すように、使用済みのトーチTが装着された加工ヘッドの主軸50は、トーチ自動交換装置100の上方のATC位置へ移動する。図の(b)では、シリンダ150が作動して、ロッド160が上昇し、ATC位置に予め割り出されている使用済みのトーチTを受けとる空のトーチホルダ130が上昇する。この上昇により制限ボルト132にクランプベースがぶつかる。
更にトーチホルダ130が上昇すると回り止めのキー136が開放される(c)。
【0012】
図6の(d)では、カバー134が旋回動して、トーチホルダ130を開放する。図の(e)では、主軸50がZ軸方向に下降して、主軸のトーチTをトーチホルダ130に戻し、図の(f)では主軸を上昇、退避させる。
【0013】
図7の(g)では、シリンダ150が戻りストロークを開始し、ロッド160を介してトーチホルダ130が下降を開始する。この上昇によりカバー134が閉じられ、図の(h)では、シリンダ150のストロークエンドに達し、トーチホルダ130は、定位置に戻る。
図7の(i)では、トーチ自動交換装置100のマガジン120が旋回動して、今回使用されるトーチTを格納したトーチホルダ130がATC位置に割り出される。
【0014】
図8の(j)では、シリンダ150を作動させ、ロッド160を介してトーチホルダ130を上昇させ、カバー134を開く。
図の(k)では、主軸50が降下して、トーチTを受け取る。
図の(l)では、今回使用するトーチTが装着された主軸50と加工ヘッドが上昇し、トーチホルダ130を定位置まで下降させ、トーチの自動交換サイクルが完了する。
【0015】
図9は、上述したトーチの自動交換の手順を示すフロー図である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のレーザ焼入れ装置の概要を示す斜視図。
【図2】主軸の概要を示す説明図。
【図3】トーチ自動交換装置の構造を示す説明図。
【図4】トーチ自動交換装置の構造を示す説明図。
【図5】トーチの自動交換操作を示す説明図。
【図6】トーチの自動交換操作を示す説明図。
【図7】トーチの自動交換操作を示す説明図。
【図8】トーチの自動交換操作を示す説明図。
【図9】トーチの自動交換の手順を示すフロー図。
【符号の説明】
【0017】
1 レーザ焼入れ装置
10 ベッド
20 テーブル
22 チャック
30 コラム
40 焼入れヘッド
50 主軸
100 トーチ自動交換装置
120 マガジン
130 トーチホルダ
150 シリンダ
160 ロッド
T トーチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、ベッド上に配設されてC軸まわりに回転するテーブルと、ベッド上に配設されてC軸に直交するY軸に沿って移動するコラムと、コラムに支持されてY軸に直交するZ軸に沿って移動する半導体レーザ発振器を有するヘッドと、ヘッドに支持されてB軸まわりに旋回動する主軸と、主軸に着脱自在に装着される焼入れトーチと、ベッド上に配設されるトーチ自動交換装置を備えるレーザ焼入れ装置。
【請求項2】
トーチ自動交換装置は、回転するマガジンと、マガジンの外周に設けられるトーチホルダと、トーチ交換位置に割り出されたトーチホルダをヘッドの主軸に向けて昇降させる機構を備える請求項1記載のレーザ焼入れ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−55441(P2008−55441A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232342(P2006−232342)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000114787)ヤマザキマザック株式会社 (80)
【Fターム(参考)】