説明

レーザ装置

【課題】光出力の変動を抑制して長期的に安定した運用を実現することが可能な構成のレーザ装置を提供する。
【解決手段】レーザ装置は、レーザ光源11からの複数の基本波レーザ光をそれぞれ増幅する複数の光増幅器と、増幅された複数の基本波レーザ光を波長変換光学素子を用いて所定の高調波レーザ光に波長変換する波長変換部20と、高調波レーザ光の一部をモニタ光として分離して、このモニタ光の強度を検出するパワーコントロールユニット50と、パワーコントロールユニット50の検出結果に基づいて、基本波レーザ光の強度を操作して高調波レーザ光の出力制御を行う制御部60とを備え、複数の光増幅器は、励起光源部70からの励起光を光増幅用ファイバEDFに供給して基本波レーザ光を増幅するようにそれぞれ構成され、制御部60は、複数の光増幅器のうちで、波長変換部20での波長変換回数が最も多く設定された基本波レーザ光を増幅するための該光増幅器に供給される励起光出力のみを制御して、基本波レーザ光の強度を操作するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光出力をモニタするとともに当該モニタ結果に応じて光出力を一定に制御する機能を備えたレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなレーザ装置は、例えば、半導体デバイスに微細構造を形成する露光装置や、微細構造を観察する各種光学式検査装置、眼科治療等に用いるレーザ治療装置などの光源として用いられており、例えば、半導体レーザにより生成され光増幅器により増幅された赤外波長領域のレーザ光を、複数の波長変換素子を備える波長変換装置において順次波長変換し、最終的にArFエキシマレーザの発振波長と同じ波長λ=193nmの紫外光として出力する構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
レーザ装置においては、レーザ光の光出力の安定化を図るために、レーザ光の光出力を光出力モニタ装置(一般的にフォトダイオード等の受光素子)により検出し、光出力をモニタしながら所望の光出力が得られるように半導体レーザへの駆動電流をフィードバック制御する手段(APC:Automatic Power Control)が種々提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−47332号公報
【特許文献2】特開2002−42362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような波長変換素子を用いて波長変換を行うレーザ装置においては、波長変換された出力光の安定化が重要であり、基本波から所望の波長の出力光を得るために波長変換を多段で行う場合、その途中段階での波長変換の不安定要素がそのまま最終段での出力光の安定性に影響を及ぼすものと考えられる。より具体的には、上記特許文献1記載のレーザ装置のように、1つの半導体レーザ(レーザ光源)から放出された基本波を複数に分岐し、それぞれを光増幅して複数段の波長変換を経た上で最終段の和周波の入射光として波長変換する構成においては、各入射光が最終段に至るまでの波長変換の過程によって出力光(紫外光)の安定性に及ぼす影響が大きく異なってくるため、それに応じて入射光の光強度を適切に制御しないと最終的な光出力が不安定になるという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、光出力の変動を抑制して長期的に安定した運用を実現することが可能な構成のレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のレーザ装置は、基本波レーザ光を出力するレーザ光源と、レーザ光源からの複数の基本波レーザ光をそれぞれ増幅する複数の光増幅器と、複数の光増幅器により増幅された複数の基本波レーザ光を波長変換光学素子を用いて所定の高調波レーザ光に波長変換する波長変換部と、波長変換部から出力された高調波レーザ光の一部をモニタ光として分離するための光分離部と、光分離部により分離されたモニタ光の強度を検出する光出力モニタ部と、光出力モニタ部の検出値に基づいて基本波レーザ光の強度を操作して高調波レーザ光の出力制御を行う制御部とを備え、複数の光増幅器は、励起光源から出力される励起光を光増幅媒体に供給して、レーザ光源から入力される基本波レーザ光を増幅するようにそれぞれ構成され、制御部は、複数の光増幅器のうちで、波長変換部での波長変換回数が最も多く設定された基本波レーザ光を増幅するための該光増幅器に供給される励起光出力のみを光出力モニタ部の検出値に基づいて制御して、基本波レーザ光の強度を操作するようになっている。
【0008】
なお、上記所定の高調波レーザ光が、波長200nm以下の紫外光であることは本発明の好ましい態様である。さらに、波長変換光学素子が、波長変換部において温度調整部により所定温度に加熱された昇温状態で使用されることも好ましい態様である。また、光増幅器が複数の光増幅媒体を直列に接続した複数段で構成され、制御部が光出力モニタ部の検出値に基づいて複数の光増幅媒体のうちで最終段の光増幅媒体へ供給する励起光出力のみを制御することも好ましい態様である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、波長変換回数の多い不安定な基本波成分のみの強度を操作するため、レーザ光出力の制御性を向上させることが可能となる。従って、光出力の変動を確実に抑制して長期的に安定した運用を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の適用例として示すレーザ装置の概要構成図である。
【図2】上記レーザ装置におけるレーザヘッドの概要構成図である。
【図3】上記レーザ装置における波長変換部およびパワーコントロールユニットの概要構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。本発明を適用したレーザ装置の代表例として、レクチルのパターンを基板に転写する露光装置の光源装置として用いられるレーザ装置1の概要構成を図1に示すとともに、このレーザ装置1におけるレーザヘッド2の概要構成を図2に示しており、まず始めに、これらの図面を参照しながらレーザ装置1について概要説明する。
【0012】
レーザ装置1は、この装置を光源装置として利用するレーザシステムへの適用上の便宜から、紫外光を出力する出力機能を有しレーザシステムへの組み込みを容易化した小型箱状のレーザヘッド2と、レーザヘッド2の制御機能を備えレーザヘッド2と別置される筐体状の制御ラック3とからなり、レーザヘッド2と制御ラック3とが、種々の電気ケーブルや、励起光伝送用の光ファイバ、パージガス供給用ガスチューブ、冷却水配管等のインターフェース4により相互接続されて構成される。
【0013】
レーザヘッド2は、赤外〜可視領域の基本波レーザ光を射出するレーザ光発生部10と、レーザ光発生部10から射出された基本波レーザ光を紫外光に波長変換する波長変換部20とを備え、その出力端から紫外光が出力されるように構成されている。
【0014】
レーザ光発生部10は、種光となるレーザ光(シード光)Lsを発生するレーザ光源11と、レーザ光源11から発生されたシード光Lsを増幅する光増幅部12とを備えて構成される。レーザ光源11および光増幅部12は、このレーザ装置1を用いるレーザシステムの用途および機能に応じ、適宜な発振波長、増幅率のものが用いられる。このようなレーザ光源11として、波長λ1=1.547[μm]の単一波長のレーザ光を発生する分布帰還半導体レーザ(DFB半導体レーザ)を用い、レーザ光源11から出力されるシード光Lsを、ファイバカプラ等(図示せず)によって3つに分岐して、光増幅部12においてエルビウム・ドープ・ファイバ光増幅器(Erbium Doped Fiber Amplifier:EDFA)として適用される第1の光増幅用ファイバEDF1、第2の光増幅用ファイバEDF2、第3の光増幅用ファイバEDF3でそれぞれ増幅する構成が例示される。
【0015】
光増幅部12は、励起光のエネルギをシード光に移動させて増幅させる光増幅媒体としての上記光増幅用ファイバEDF1,EDF2,EDF3の他に、レーザ光源11からのシード光と制御ラック3内の励起光源部70からの励起光(ポンプ光)とを合波するための光カプラWDM1,WDM2,WDM3を備えている。各光増幅用ファイバEDFは、コア領域にEr元素(希土類元素)が添加された光ファイバである。励起光源部70は、例えばラマンレーザ等により構成される2台のポンプレーザP1,P2からなり、光増幅用ファイバEDFに添加されたEr元素を励起し得る波長(例えばλ2=1.480[μm])の励起光を、詳細は後述する制御ラック3内の制御部60から指示される制御信号に応じた強度で出力する。ポンプレーザP1からの励起光は、光カプラWDM1を介して第1の光増幅用ファイバEDF1に入射される。ポンプレーザP2からの励起光は、ファイバカプラ71によって所定の分配比率で2つに分岐され、一方が光カプラWDM2を介して第2の光増幅用ファイバEDF2へ入射され、他方が光カプラWDM3を介して第3の光増幅用ファイバEDF3へ入射される。
【0016】
このような光増幅部12において、励起光源部70から出力された波長λ2の励起光が光増幅用ファイバEDFに入射すると、コア領域に添加されたエルビウム(Er)イオンが励起されるようになっており、この励起状態にあるErイオンに蓄えられたエネルギは、レーザ光源11から波長λ1のシード光が入射されると、誘導放出によって同じ波長(λ1)の光に転化され光増幅作用を生じる。光増幅用ファイバEDFにおいて誘導放出により光増幅された基本波レーザ光はコリメータ等(図示せず)を介してそれぞれ平行光であるレーザ光Lr1,Lr2,Lr3として波長変換部20へ出力される。なお、レーザ光発生部10からの基本波レーザ光Lr1,Lr2,Lr3の出力は、励起光源部70から光増幅部12へ供給される励起光出力(励起強度)によって制御されるようになっている。
【0017】
波長変換部20は、レーザ光発生部10から射出されたレーザ光(光増幅部12により増幅された基本波レーザ光)Lrを、所定波長の紫外光に波長変換する。レーザ装置1においては、レーザ光発生部10から射出された波長λ=1.547[μm]の基本波レーザ光を、複数の波長変換光学素子によって順次波長変換し、最終的に基本波の8倍波(第8次高調波)でArFエキシマレーザと同一波長である波長λ=193[nm]の紫外光を出力する。
【0018】
このように、赤外領域(あるいは可視領域)の基本波レーザ光Lrを紫外光に波長変換する波長変換部の構成(波長変換光学素子の種別や組み合わせ)には、種々の公知の形態がある。本実施形態では、波長変換部の一例として、レーザ光発生部10において、1つのレーザ光源から射出された基本波レーザ光を3つに分岐して光増幅部12により増幅し、増幅された3つの基本波レーザ光Lr(Lr1,Lr2,Lr3)を波長変換部20に入射させて、基本波、2倍波(λ=774[nm])および5倍波(λ=309[nm])を生成し、これらの和周波発生により7倍波(λ=221[nm])、8倍波(λ=193[nm])を発生させる構成例を図3に示しており、この波長変換部20の構成について図3を追加参照して概要説明する。
【0019】
まず、P偏光で入射される第1の基本波レーザ光Lr1は、レンズ31により波長変換光学素子21に集光入射され、第2高調波発生(SHG)により周波数が基本波(ω)の2倍(2ω)、波長λが半分の2倍波を発生させる。波長変換光学素子21により発生されたP偏光の2倍波、および波長変換光学素子21を透過したP偏光の基本波は、レンズ32により波長変換光学素子22に集光入射され、和周波発生(ω+2ω)により周波数が基本波の3倍(3ω)の倍波を発生させる。これらの波長変換光学素子21,22は、例えば、2倍波発生用の波長変換光学素子21としてPPLN結晶、3倍波発生用の波長変換光学素子22としてLBO結晶が用いられる。なお、波長変換光学素子21として、PPKTP結晶、PPSLT結晶、LBO結晶等を用いることもできる。
【0020】
波長変換光学素子22により発生されたS偏光の3倍波と、波長変換光学素子22を透過したP偏光の基本波および2倍波は、2波長波長板41を透過させて2倍波だけをS偏光に変換する。2波長波長板として、例えば、結晶の光学軸と平行にカットした一軸性の結晶の平板からなる波長板が用いられる。この波長板は、一方の波長の光(2倍波)に対して偏光を回転させ、他方の波長の光に対しては、偏光が回転しないように、波長板(結晶)の厚さを一方の波長の光に対してλ/2の整数倍で、他方の波長の光に対しては、λの整数倍になるようにカットすることにより構成される。
【0021】
ともにS偏光になった2倍波および3倍波は、レンズ33により波長変換光学素子23に集光入射され、和周波発生(2ω+3ω)により5倍波(5ω)を発生させる。波長変換光学素子23からは、この波長変換光学素子23により発生されたP偏光の5倍波と、波長変換光学素子23を透過したS偏光の2倍波および3倍波、並びにP偏光の基本波が射出される。なお、5倍波を発生させる波長変換光学素子23として、例えばLBO結晶が用いられるが、BBO結晶、CBO結晶を用いることも可能である。ここで、波長変換光学素子23から射出される5倍波は、ウォークオフのため断面が楕円形になっている。そこで、2枚のシリンドリカルレンズ34v,34hにより、楕円形の断面形状を円形に整形し、ダイクロイックミラー44に入射させる。
【0022】
一方、P偏光で入射される第2の基本波レーザ光Lr2は、レンズ35により波長変換光学素子24に集光入射され、第2高調波発生により2倍波を発生させる。波長変換光学素子24からは、この波長変換光学素子24により発生されたP偏光の2倍波と基本波が射出され、レンズ36,37を介してダイクロイックミラー45に入射される。なお、波長変換光学素子24として、PPLN結晶を用いることができるほか、PPKTP結晶、PPSLT結晶、LBO結晶等を用いてもよい。
【0023】
また、S偏光で入射される第3の基本波レーザ光Lr3は、レンズ38を介してダイクロイックミラー45に入射される。ダイクロイックミラー45は、基本波の波長帯域の光を透過し、2倍波の波長帯域の光を反射するように構成されており、このダイクロイックミラー45に入射するS偏光の基本波と、波長変換光学素子24により発生されたP偏光の2倍波とが同軸上に合成される。
【0024】
上記合成されたS偏光の基本波およびP偏光の2倍波は、ダイクロイックミラー44に入射される。ダイクロイックミラー44は、基本波および2倍波の波長帯域の光を透過し、5倍波の波長帯域の光を反射するように構成されており、このダイクロイックミラー44に入射したS偏光の基本波およびP偏光の2倍波と、波長変換光学素子23により発生されたP偏光の5倍波とが同軸上に合成される。
【0025】
このように同軸上に合成されたS偏光の基本波、P偏光の2倍波、P偏光の5倍波は、波長変換光学素子25に入射される。ここで、基本波、2倍波、5倍波の各光路には各々レンズ(34v,34h,36,37,38)が設けられており、同軸上に合成された各波長の光が波長変換光学素子25に集光入射するようになっている。波長変換光学素子25では、P偏光の2倍波とP偏光の5倍波による和周波発生(2ω+5ω)が行われて7倍波(7ω)が発生される。波長変換光学素子25からは、この波長変換光学素子25により発生されたS偏光の7倍波とともに、波長変換光学素子25を透過した上記各波長の光が射出される。7倍波を発生させる波長変換光学素子25としては、例えばCLBO結晶が用いられる。
【0026】
これらの光は、波長変換光学素子26に入射し、ここでS偏光の基本波とS偏光の7倍波が和周波発生(ω+7ω)により合成され、P偏光の8倍波(8ω)が発生される。8倍波を発生させる波長変換光学素子26として、例えばCLBO結晶が用いられる。なお、波長変換光学素子26からは、この波長変換光学素子26により発生された8倍波以外に、波長変換光学素子26を透過した基本波、2倍波等の他の波長成分の光が射出されるが、波長変換部20(レーザ装置1)から8倍波のみを出力させる場合には、分散プリズムやダイクロイックミラー、偏光ビームスプリッタ等を使用することにより、これらを分離すればよい。波長変換光学素子26から射出された8倍波は、その光路上に配置されたパワーコントロールユニット50に入射する。
【0027】
このように基本波から所望の波長(本実施形態ではλ=193[nm])の倍波を得るために波長変換光学素子21〜26によって多段の波長変換が行われる場合、その途中段階での波長変換の不安定要素が最終段での出力光の出力安定性に影響を及ぼすものと考えられる。ここで、上記波長変換の不安定要素としては、例えば、波長変換光学素子21〜26の温度制御(特に、昇温状態で使用される潮解性を持つ光学結晶を温度制御する場合や、結晶種別および整合条件に応じて温度位相整合をとるための温度制御をする場合等)のゆらぎによる変換効率の変動や、波長変換光学素子21〜26の損傷・劣化による変換効率の低下などが挙げられる。波長変換を和周波発生によって行う場合、その最終段の波長変換光学素子26への入射光成分のうち、より波長変換回数の多い高周波成分が最終段の出力安定性に支配的であると考えられる。すなわち、本実施形態においては、最終段(8倍波を発生させる段階)の波長変換光学素子26への入射光成分のうち、出力安定性に支配的となる基本波成分は、その段階までの波長変換回数が他に比して最も多い高周波成分となる5倍波系(第1の基本波レーザ光Lr1)である。そこで、本実施形態では、次述するパワーコントロールユニット50の検出結果に基づいて、レーザ装置1の出力が一定となるように、5倍波発生用の第1の基本波レーザ光Lr1を所望の強度に光増幅するためのポンプレーザP1の出力をフィードバック制御する機能を有している。それでは、パワーコントロールユニット50等の構成について詳述する。
【0028】
パワーコントロールユニット50は、ビームスプリッタ51と光出力モニタ装置52とを備えており、これらが波長変換光学素子26から射出されたレーザ光を内部へ導入するための入射口および8倍波たる深紫外レーザ光Lvを外部へ導出するための出射口が形成された矩形箱形状のユニットケース(図示せず)内に収容されて構成されている。なお、このユニットケース内に、波長変換光学素子26から射出された8倍波とその他の波長成分の光とを分離するための上記の分散プリズムなどを収容して構成してもよい。
【0029】
ビームスプリッタ51は、波長変換光学素子26から入射される8倍波の一部(例えば、全体の1%の光量)を反射してモニタ光として光出力モニタ装置52へ導き、8倍波の残る光量を透過させ、そのまま光軸に沿って直進させてレーザ装置1の出力光(紫外レーザ光Lv)として外部へ出力する。
【0030】
光出力モニタ装置52は、例えばフォトダイオード(Photo Diode)等の受光素子を有して構成されており、ビームスプリッタ51によって送られてきたモニタ光(8倍波の一部)を受光して、このモニタ光の強度(パワー)に応じた電流信号を生成する。光出力モニタ装置52に内蔵された不図示の増幅回路によって、この電流信号は所定のゲインで増幅された電圧信号に変換されて制御ラック3内の制御部60へ出力される。
【0031】
制御ラック3には、レーザ装置1を構成する各部の作動を統括的に制御してレーザヘッド2による紫外光Lvの出力を制御する制御部60、光増幅部12を励起する上記の励起光源部70、所定温度(例えば150℃程度)に加熱された昇温状態で使用する波長変換光学素子(例えば、潮解性を持つ光学素子や、温度位相整合で使用する光学素子等)の温度を調整する温度調整部80、パワーコントロールユニット50等のレーザ装置1の各部にインターフェース4を通るガスチューブを介してN2ガス等の不活性ガスを供給するガス供給部(図示せず)、などが設けられている。
【0032】
制御部60は、例えば、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オン・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなる所謂マイクロコンピュータを有して構成されており、光出力モニタ装置52の検出値に基づいて5倍波系の基本波レーザ光Lr1の強度を操作して、8倍波発生用の波長変換光学素子26へ入射する7倍波の強度を調節する。すなわち、制御部60は、光出力モニタ装置52の検出値に基づいて、レーザ装置1の出力が一定となるように(モニタ結果が予め設定された規定値となるように)、励起光源部70のポンプレーザP1の励起光の出力をフィードバック制御し、基本波レーザ光Lr1、5倍波、7倍波、8倍波といったその出力光の強度を制御していく。したがって、レーザ装置1の出力が低下(モニタ光の強度が規定値よりも低下)したときにはポンプレーザP1の出力を増大させ、反対に、レーザ装置1の出力が増大(モニタ光の強度が規定値よりも増大)したときにはポンプレーザP1の出力を低下させて、最終的に出力される紫外レーザ光Lv(8倍波)の強度が一定となる制御が行われる。なお、このとき光出力モニタ装置52の検出値に関わらず、制御部60によってポンプレーザP2の出力は一定に制御されている。
【0033】
このように構成されるレーザ装置1において、基本波から所望の波長193[nm]の倍波を得るために多段の波長変換が行われる場合、光出力モニタ装置52の検出値に基づいてレーザ装置1の出力が一定となるように、最終段の波長変換光学素子26への入射光成分(Lr1,Lr2,Lr3)のうち、安定的な基本波成分(Lr2,Lr3)の光強度を操作することなく、不安定な基本波成分(Lr1)のみの光強度を操作するため、レーザ光出力の制御性を向上させることが可能となる。従って、以上説明したレーザ装置1によれば、光出力の変動を確実に抑制して長期的に安定した運用を実現することが可能である。
【0034】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態において、1つのレーザ光源11から出力される基本波を3つに分岐して第1〜第3の光増幅用ファイバEDFでそれぞれ増幅する構成を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、3つのレーザ光源から各々出力される基本波をそれぞれ光増幅用ファイバEDFで増幅する構成としてもよい。
【0035】
また、上述の実施形態では、レーザ光発生部10において、レーザ光源11により発生されたシード光を、光増幅部12としてそれぞれ1段構成の光増幅用ファイバEDFによって増幅し、増幅されたレーザ光Lrを波長変換部20に入射させる構成を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、レーザ光源11の出力強度や増幅率に応じて光増幅用ファイバを直列2段以上の複数段構成としてもよい。なお、光増幅用ファイバを複数段構成とした場合には、プリアンプ(1段目…)用の励起光の強度はモニタ結果によらず常に一定に保持しつつ、パワーアンプ(最終段目)用の励起光の強度を操作量として制御するのが好ましい。
【0036】
また、上述の実施形態では、ポンプレーザP2からの励起光をファイバカプラ71で2つに分岐して、それぞれを光カプラWDM2,WDM3を介して光増幅用ファイバEDF2,EDF3へ入射する構成(すなわち、励起光源部70が2台のポンプレーザからなる構成)を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、励起光源部にポンプレーザを3台設けて、これら3台のポンプレーザから各々出力される励起光をそれぞれ光増幅用ファイバEDF1,EDF2,EDF3へ入射する構成としてもよい。
【0037】
また、上述の実施形態において、光増幅部12の光増幅媒体として、エルビウムをコア領域に添加して構成されたエルビウム・ドープ・光ファイバ(EDF)を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、エルビウム以外の他の希土類元素をコア領域に添加した光増幅用ファイバを光増幅媒体として構成してもよい。
【0038】
また、上述の実施形態では説明簡略化のため記載を省略したが、レーザ光源11と光増幅部12との間、光増幅部12と波長変換部20との間に、光パルスを切り出すEOM等の光変調器や、単色光を高める狭帯域フィルタ等が適宜設けられる。
【0039】
なお、レーザ装置1からの出力光の波長は193[nm]に限定されるものではなく、KrFエキシマレーザやF2レーザ等と同様の波長帯域であってもよい。さらに、本発明によるレーザ装置の適用例としては露光装置に限らず、各種の光学式検査装置や、レーザ治療装置など、他の種々の装置においても用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 レーザ装置
2 レーザヘッド
3 制御ラック
10 レーザ光発生部
11 レーザ光源
12 光増幅部
20 波長変換部
21〜26 波長変換光学素子
50 パワーコントロールユニット
51 ビームスプリッタ
52 光出力モニタ装置
60 制御部
70 励起光源部
80 温度調整部
EDF 光増幅用ファイバ
P ポンプレーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波レーザ光を出力するレーザ光源と、
前記レーザ光源からの複数の基本波レーザ光をそれぞれ増幅する複数の光増幅器と、
前記複数の光増幅器により増幅された複数の基本波レーザ光を波長変換光学素子を用いて所定の高調波レーザ光に波長変換する波長変換部と、
前記波長変換部から出力された高調波レーザ光の一部をモニタ光として分離するための光分離部と、
前記光分離部により分離されたモニタ光の強度を検出する光出力モニタ部と、
前記光出力モニタ部の検出値に基づいて、基本波レーザ光の強度を操作して高調波レーザ光の出力制御を行う制御部とを備え、
前記複数の光増幅器は、励起光源から出力される励起光を光増幅媒体に供給して、前記レーザ光源から入力される基本波レーザ光を増幅するようにそれぞれ構成され、
前記制御部は、前記複数の光増幅器のうちで、前記波長変換部での波長変換回数が最も多く設定された基本波レーザ光を増幅するための該光増幅器に供給される励起光出力のみを前記光出力モニタ部の検出値に基づいて制御して、基本波レーザ光の強度を操作することを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記所定の高調波レーザ光が、波長200nm以下の紫外光であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記波長変換光学素子が、前記波長変換部において温度調整部により所定温度に加熱された昇温状態で使用されることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記光増幅器が、複数の前記光増幅媒体を直列に接続した複数段で構成され、
前記制御部が、前記光出力モニタ部の検出値に基づいて、前記複数の光増幅媒体のうちで最終段の光増幅媒体へ供給する励起光出力のみを制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−151288(P2011−151288A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12917(P2010−12917)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】