レーダを用いた自動ドアセンサおよびその物体検出方法
【課題】自動ドアの監視領域に自動ドアに近づく方向に移動する接近者と、自動ドアから離れる方向に移動する離脱者とが居る場合、接近者のみを確実に識別する。
【解決手段】自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、受信部内に第1,第2の検波器121,122がマイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4離間して配置されているレーダ11が用いられ、前方の検波器121から出力されるIch信号と後方の検波器12から出力されるQch信号とにより、監視領域内の物体を検出して自動ドアに開閉制御信号を出力するにあたって、移相器21によりIch信号とQch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらしたのち、Ich信号とQch信号とを加算もしくは減算することにより、接近者のみを確実に識別する。
【解決手段】自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、受信部内に第1,第2の検波器121,122がマイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4離間して配置されているレーダ11が用いられ、前方の検波器121から出力されるIch信号と後方の検波器12から出力されるQch信号とにより、監視領域内の物体を検出して自動ドアに開閉制御信号を出力するにあたって、移相器21によりIch信号とQch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらしたのち、Ich信号とQch信号とを加算もしくは減算することにより、接近者のみを確実に識別する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダを用いた自動ドアセンサおよびその物体検出方法に関し、さらに詳しく言えば、自動ドアの監視領域に自動ドアに近づく方向に移動する接近者と、自動ドアから離れる方向に移動する離脱者とが存在する場合、好ましくはその接近者側を識別可能とする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、自動ドアセンサには赤外線方式が採用されているが、赤外線方式では人(被検出物体)の動き、すなわちドアの方に進んでいるのか、ドアから離れる方向に動いているのかの動体パターンまでは識別することができない。
【0003】
そこで、近年においては、動体パターンを識別し得るレーダを用いた自動ドアセンサが実用化されている。その構成の一例を図9ないし図11により説明する。
【0004】
まず、図9に示すように、この種の自動ドアセンサ10は、基本的な構成として、レーダ(マイクロ波送受信機)11,ローパスフィルタ12,A/D変換器13およびマイクロコンピュータなどからなる制御部14を備えている。
【0005】
レーダ11は、例えば数GHz〜数10GHz帯のマイクロ波を送出するとともに、物体からの反射波(ドップラ周波数)を受信する。そのため、図10に示すように、例えばガンダイオード111を発振源とする誘電体発振器110と、導波管内に設けられる受信部120とを備えている。
【0006】
この場合、受信部120として、第1および第2の2つの例えばショットキーダイオードからなる検波器121,122が用いられる。この2つの検波器121,122は、誘電体発振器110から送出されるマイクロ波の波長をλとして、導波管内において前後方向にλ/4もしくはλ/4+λ/2n(nは任意の正の整数;0,1,2,…)離間して配置されている。
【0007】
したがって、後方の第2検波器122からは前方の第1検波器121に対して90゜位相がずれた信号が出される。ここでは、前方の第1検波器121の出力信号をIch(Iチャンネル)信号、後方の第2検波器122の出力信号はQch(Qチャンネル)信号とする。ちなみに、Ich信号のIはIn−phase(同相)の略で、QchのQはQuadrature−phase(直交相)の略である。
【0008】
このIch信号とQch信号の2つのチャンネル信号により、人(被検出物体)の動体パターンを識別することができる。図11(a)に自動ドアに近づく方向に移動する接近者HAによるIch信号とQch信号の各波形図を示し、図11(b)に自動ドアから離れる方向に移動する離脱者HBによるIch信号とQch信号の各波形図を示す。
【0009】
これによると、Ich信号がゼロクロス点で正の向きに転じた時を基準として、Qch信号が同様にゼロクロス点で正の向きに転ずる時の時間差(位相差)を測定し、その時間差が180゜よりも小さい場合は接近者HAで、180゜よりも大きい場合には離脱者HBであると判別することができる。
【0010】
別の方法として、接近者HAの場合、Ich信号がゼロクロス点で正の向きに転じたのちの最初に現れるQch信号のゼロクロス点での向きが正の方向であるのに対して、離脱者HBの場合、Ich信号がゼロクロス点で正の向きに転じたのちの最初に現れるQch信号のゼロクロス点での向きは負の方向であり、これによっても接近者HAと離脱者HBとを判別することができる。
【0011】
いずれにしても、制御部14は接近者HAを検知したときに、自動ドア1(図12参照)の駆動系にドア開信号を出力し、離脱者HBの場合にはドア開信号を出力しない。なお、レーダを用いた自動ドアセンサにおいては、通常、ドア閉め制御は別途のタイマや安全ビームなどによる存在センサの出力を加味して制御される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記したように、レーダを用いた自動ドアセンサによれば、動体パターンにより接近者HAと離脱者HBとを識別することができる。
【0013】
しかしながら、図12に示すように、自動ドア1の監視領域内に接近者HAと離脱者HBとが存在し、特に離脱者HBが自動ドア1の近くにおり、接近者HAが遠くにいる場合には、反射波の信号レベルは近くの離脱者HBの方が大きいため、遠くにいる接近者HAには反応しない、という問題がある。
【0014】
したがって、本発明の課題は、自動ドアの監視領域に自動ドアに近づく方向に移動する接近者と、自動ドアから離れる方向に移動する離脱者とが居る場合、接近者のみを確実に識別できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明のレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法は、請求項1に記載されているように、自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法において、移相器により上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらしたのち、上記Ich信号と上記Qch信号とを加算もしくは減算することを特徴としている。
【0016】
上記請求項1に記載のレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法において、請求項2に記載されているように、上記Ich信号の位相を上記Qch信号に対して+90゜ずらせたときには、移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを減算し、上記Ich信号の位相を上記Qch信号に対して−90゜ずらせたときには、移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを加算する。
【0017】
また、本発明のレーダを用いた自動ドアセンサは、請求項3に記載されているように、自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらす移相手段と、上記移相手段による移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを加算もしくは減算する演算手段と、上記演算手段の演算値に基づいて上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を検出する判定手段とを備えていることを特徴としている。
【0018】
上記請求項3に記載のレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、請求項4に記載されているように、上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器を備え、上記移相手段にヒルベルト変換器を用いたデジタル信号処理ソフトウェアでも、上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体の識別を実現することができる。
【0019】
また、本発明のレーダを用いた自動ドアセンサは、請求項5に記載されているように、自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらす移相手段と、上記反射波(ドップラ周波数)のほぼ最大周波数もしくはそれ以下の周波数を発振する局部発振器と、上記移相手段による移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを上記局部発振器の出力周波数にて直交変調する周波数変換手段と、上記周波数変換手段により周数変換された上記Ich信号と上記Qch信号の中から上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を検出するフィルタとを備えていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明のレーダを用いた自動ドアセンサは、請求項6に記載されているように、自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器と、上記A/D変換後に上記Ich信号,上記Qch信号をそれぞれ実部,虚部の複素信号にするとともに上記虚部の正負を反転させる複素信号化手段と、上記反射波(ドップラ周波数)のほぼ最大周波数もしくはそれ以下に相当する周波数を生成する複素局部発振器と、上記複素信号を上記複素局部発振器の出力周波数にて直交変換する周波数変換手段と、上記周波数変換手段により変換された上記複素信号の中から上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を分離して検出するデジタルフィルタとを備えていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明のレーダを用いた自動ドアセンサは、請求項7に記載されているように、自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器と、上記A/D変換後に上記Ich信号,上記Qch信号を実部,虚部の複素信号とし、これをフーリエ変換もしくはDCT変換(離散コサイン変換)して上記複素信号の周波数スペクトラムを得る変換手段と、上記周波数スペクトラムの中から正または負の周波数を抽出,分離して上記自動ドアに対して近づく方向もしくは遠ざかる方向に移動する物体を識別する識別手段とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
自動ドアの監視領域内に接近者と離脱者がともに存在する場合、レーダにて受信される反射波(ドップラ周波数)には、接近者による反射波と離脱者による反射波とが含まれる。さらに、各反射波には位相が90゜異なるIch信号とQch信号とが含まれる。そこで、Ich信号を実部,Qch信号を虚部として複素信号化すると、レーダにて受信される反射波には、接近者の実部Iaと虚部Qa,離脱者の実部Ibと虚部Qbとが含まれる。接近者の実部Iaと離脱者の実部Ibは同相であるが、接近者の虚部Qaと離脱者の虚部Qbは位相が180゜相違する反転波形である(先の図11(a)(b)参照)。
【0023】
例えば、接近者の実部Iaと離脱者の実部Ibの位相を、接近者の虚部Qaと離脱者の虚部Qbに対して、それぞれ+90゜進む方向にずらすと、接近者の実部Iaと接近者の虚部Qaは位相が180゜相違する反転波形となり、離脱者の実部Ibと離脱者の虚部Qbは同相となる。
【0024】
したがって、接近者の実部Iaと接近者の虚部Qaとを減算,また、離脱者の実部Ibと離脱者の虚部Qbとを減算することにより、離脱者の反射波のレベルはほぼ0となり、接近者の反射波のみが残されることになる。逆に加算すれば、接近者の反射波レベルはほぼ0となり、離脱者側の反射波のみが検出されることになる。
【0025】
なお、接近者の実部Iaと離脱者の実部Ibの位相を、接近者の虚部Qaと離脱者の虚部Qbに対して、それぞれ−90゜遅れる方向にずらすと、接近者の実部Iaと接近者の虚部Qaは同相で、離脱者の実部Ibと離脱者の虚部Qbは位相が180゜相違する反転波形となるため、接近者の実部Iaと接近者の虚部Qaとを加算,また、離脱者の実部Ibと離脱者の虚部Qbとを加算すればよい。逆に、減算すれば離脱者側の反射波のみが検出されることになる。
【0026】
このようなことから、請求項1ないし4に記載の発明によれば、自動ドアの監視領域内に接近者と離脱者がともに存在し、しかも離脱者が自動ドアの近くにおり、接近者が遠くにいる場合においても、ドア開が必要とされる接近者による反射波を確実に検出することができる。
【0027】
また、請求項5,6に記載の発明によれば、Ich信号とQch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらして、そのIch信号とQch信号とを局部発振器にて直交変調するようにしたことにより、その後の処理を簡単にすることができる。すなわち、通常のフィルタで接近者もしくは離脱者のいずれかの反射波のみを確実に取り出すことができる。
【0028】
また、請求項7に記載の発明によれば、Ich信号とQch信号とをそれぞれA/D変換したのち、複素信号化手段にてIch信号を実部,Qch信号を虚部とする複素信号とし、フーリエ変換もしくはDCT変換して複素信号の周波数スペクトラムを得て、その周波数スペクトラムの中から正の周波数を抽出するようにしたことにより、主要部をフーリエ変換手段とする簡単な構成でありながら、自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体のみを確実に識別することができる。同様に、負の周波数成分を抽出すれば、離脱者側のみを分離識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、図1ないし図8により、本発明のいくつかの実施形態について説明する。この実施形態は、もっぱら自動ドアに接近する物体を検出することを想定しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
まず、図1ないし図3により、本発明の第1実施形態について説明する。図1に示すように、この第1実施形態による自動ドアセンサ10Aにおいても、先の図10で説明したように、誘電体発振器110から送出されるマイクロ波の波長をλとして、導波管内において前後方向にλ/4相当(λ/4+λ/2n(nは任意の正の整数;0,1,2,…))離間して配置される前方の第1検波器121と後方の第2検波器122とを備えるレーダ(マイクロは送受信機)11が用いられる。
【0031】
したがって、レーダ11から受信信号として、Ich信号と、Ich信号よりも90゜位相が遅れ方向にずれたQch信号とが出力されるが、この第1実施形態による自動ドアセンサ10Aは、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して90゜ずらす移相器21と、移相器21による移相後のIch信号とQch信号とを加算もしくは減算する加減算器22と、加減算器22の出力レベルを検出するレベル検出器23と、レベル検出器23の出力に基づいてドア開がどうかを判定する判定器24とを備える。レベル検出器23にはコンパレータなどが用いられ、判定器24にはマイクロコンピュータなどが用いられてよい。
【0032】
先の図12で説明したように、自動ドア1の監視領域内に、自動ドア1に近づく方向に移動する接近者HAと、自動ドア1から離れる方向に移動する離脱者HBとがいる場合、レーダ11にて受信される反射波(ドップラ周波数)には、接近者HAによる反射波と離脱者HBによる反射波とが含まれる。
【0033】
さらに、受信機内で各反射波から位相が90゜異なるIch信号とQch信号とが得られる。そこで、Ich信号を実部,Qch信号を虚部として複素信号化すると、レーダ11にて受信される反射波には、図2(a)に示す接近者HAの実部Iaと図2(b)に示す接近者HAの虚部Qa、図3(a)に示す離脱者HBの実部Ibと図3(b)に示す離脱者HBの虚部Qbとが含まれる。
【0034】
接近者HAの実部Iaと離脱者HBの実部Ibは同相であるが、接近者HAの虚部Qaと離脱者HBの虚部Qbは位相が180゜相違する反転波形である。この現象を利用して、第1実施形態では接近者HAのみを検出する。そのため、この例においては、移相器21にてIch信号の位相をQch信号に対して+90゜進む方向にずらすとともに、加減算器22を減算器として用いる。
【0035】
接近者HAについて説明すると、図2(a)に示す接近者HAの実部Iaは、移相器21により図2(c)に示すように位相が+90゜進む方向にずらされ、一方でQch信号に対する移相度は0゜であるから、接近者HAの虚部Qaは図2(b)に示す波形のまま移相器21を通過する。
【0036】
したがって、図2(b)と図2(c)とを対比すると分かるように、移相後の接近者HAの実部Iaと接近者HAの虚部Qaは、位相が180゜異なる反転波形となるため、この実部Iaと虚部Qaとを加減算器22にて減算することにより、図2(d)に示すように、レベルが実部Iaと虚部Qaの各レベルのほぼ2倍となる合成波形が得られる。
【0037】
同様に、図3(a)に示す離脱者HBの実部Ibは、移相器21により図3(c)に示すように位相が+90゜進む方向にずらされ、一方でQch信号に対する移相度は0゜であるから、離脱者HBの虚部Qbは図3(b)に示す波形のまま移相器21を通過する。
【0038】
したがって、図3(b)と図3(c)とを対比すると分かるように、移相後の離脱者HBの実部Ibと離脱者HBの虚部Qbは、同相となるため、この実部Ibと虚部Qbとを加減算器22にて減算することにより、図3(d)に示すようにレベルがほぼ0となる。
【0039】
このように、Qch信号の移相度を0とし、Ich信号の位相を+90゜進む方向にずらしたのち、Ich信号とQch信号とを減算することにより、離脱者HBによる反射波は打ち消され、接近者HAによる反射波のみが取り出され、そのレベルが所定の閾値以上の場合、レベル検出器23の出力が例えばLoからHiになる。
【0040】
このレベル検出器23のHi出力を受けて判定器24は接近者HAが自動ドア1の近傍にいると判断してドア開信号を出力する。なお、接近者HAによる反射波のレベルが上記閾値未満の場合には、接近者HAの位置が自動ドアから遠すぎると判定し、ドア開信号は出力されない。
【0041】
上記の例では、Ich信号の位相を+90゜進む方向にずらしているが、−90゜遅れる方向にずらしてもよく、その場合には、移相後の接近者HAの実部Iaと接近者HAの虚部Qaは同相となり、これに対して、移相後の離脱者HBの実部Ibと離脱者HBの虚部Qbは位相が180゜異なる反転波形となるため、加減算器22を加算器として動作させればよい。
【0042】
また、Ich信号の移相度を0とし、Qch信号の位相を+90゜もしくは−90゜ずらすようにしてもよい。なお、接近者HA側ではなく、離脱者HB側を識別したい場合には、上記の加減算を逆にすればよい。
【0043】
次に、図4および図5により、本発明の第2実施形態について説明する。先の図12に示したように、自動ドア1の監視領域内に、自動ドア1に近づく方向に移動する接近者HAと、自動ドア1から離れる方向に移動する離脱者HBとがいる場合、レーダ11にて受信される反射波(ドップラ周波数)には、接近者HAによる反射波と離脱者HBによる反射波とが含まれ、それらの反射波のドップラ周波数は、よく知られているように、接近者HA,離脱者HBの移動速度に依存する。
【0044】
ここで、レーダ11に対する人の移動速度とドップラ周波数の関係について説明すれば、レーダ11から送出されるマイクロ波の波長をλ,人の移動速度をV,レーダ11に対する反射波の入射角をθとすると、ドップラ周波数fDは次式により求められる。
fD=(2×V×cosθ)/λ
【0045】
したがって、例えばレーダ11から送出されるマイクロ波の周波数が24GHz(λ=0.0125m),入射角θ=0,人の歩く速度を0.06〜3m/sとすると、ドップラ周波数fDは約10〜100Hzとなる。
【0046】
ところで、接近者HAと離脱者HBの移動速度が同じであれば、それらの反射波は同一周波数となるが、複素信号として見れば、その周波数は図4(a)のベクトル図,図4(b)のスペクトラムに示すように、正負の極性が異なるものとなる。なお、図4(a)において、+ωが接近方向,−ωが離脱方向である。
【0047】
接近者HAと離脱者HBとによるドップラ周波数の正負を識別するため、この第2実施形態では、接近者HAと離脱者HBの各受信信号を単側波帯変調して周波数変換を行う。すなわち、図5に示す第2実施形態による自動ドアセンサ10Bにおいては、接近者HAと離脱者HBとによるドップラ周波数を、図5の(ア)〜(エ)に示すように、スペクトラム全体を動かし、フィルタで目的とする接近者HAの移動速度を分離する。
【0048】
具体的には、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号のドップラ周波数成分を上記したように約10〜500Hzとすると、Ich信号とQch信号の複素信号は、図5(ア)のスペクトラムに示すように、接近者HA側が正の周波数(+10〜+500Hz)で,離脱者HB側が負の周波数(−500〜−10Hz)となる。
【0049】
これを接近者HA側が負の周波数,離脱者HB側が正の周波数となるように、Qch信号の位相を−180゜移相器31にて−180゜遅れ方向に移相する。これにより、図5(イ)のスペクトラムに示すように、接近者HA側が−500〜−10Hz,離脱者HB側が+10〜+500Hzとなる。
【0050】
これとは別に、局部発振器32にてドップラ周波数の最高信号周波数に相当する周波数(この場合、500Hz)を作成し、Ich信号については、ミキサ33にてIch信号を上記局部発振周波数にて周波数変換する。
【0051】
一方、Qch信号については、局部発振器32の局部発振周波数を−90゜移相器にて−90゜遅れ方向に位相をずらした複素的な−90゜成分を作成し、ミキサ35で上記複素的な90゜成分によりQch信号を直交変調する。
【0052】
そして、ミキサ33にて周波数変換されたIch信号と、ミキサ35で直交変調されたQch信号とを加算器36で加算して、図5b(ウ)のスペクトラムに示すように、接近者HA側が0〜490Hz,離脱者HB側が510Hz〜1kHzとなるように周波数変換する。
【0053】
そして、ローパスフィルタ37にて例えば490Hz以下の周波数を選択することにより、接近者HAによるドップラ周波数のみを得ることができ、そのレベルが所定の閾値以上の場合、レベル検出器(コンパレータ)38の出力が例えばLoからHiになり、これを受けて判定器39は接近者HAが自動ドア1の近傍にいると判断してドア開信号を出力する。
【0054】
なお、上記の例においては、Qch信号側の位相を−180゜移相器31にて−180゜移相したのち、局部発振器32の出力を−90゜移相器にて−90゜移相後、直交変調するようにしているが、Qch信号側の位相をそのままとし、局部発振器32の出力を−90゜もしくは+90゜移相した信号でIch信号側を直交変調し、スペクトラム全体を正側もしくは負側に動かし、その中からフィルタにて接近者HAのスペクトラムのみを選択するようにしてもよい。また、局部発振器32の周波数を250Hzとして、図5(エ)に示す接近者周波数を−250〜+250Hzにすることもできる。
【0055】
次に、図6aにより、本発明の第3実施形態について説明する。接近者HAと離脱者HBの各ドップラ周波数を複素的に周波数変換して、スペクトラム全体を正側もしくは負側に動かし、フィルタで接近者HAのドップラ周波数のみを抽出する点は上記第2実施形態と同じであるが、この第3実施形態では、その処理をデジタル的に行う。
【0056】
そのため、図6aに示す第3実施形態による自動ドアセンサ10Cにおいては、まず、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号の各々をA/D変換器41にてデジタル信号に変換する。
【0057】
なお、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号のドップラ周波数を上記第2実施形態と同じく約10〜500Hzとすると、Ich信号とQch信号の複素信号は、図6a(ア)に示すように、接近者HA側が正の周波数で、離脱者HB側の周波数が負の周波数となる。
【0058】
この例では、後述する周波数変換後の最高周波数が、図6a(ウ)のスペクトラムに示すように、Ich信号とQch信号のドップラ周波数の2倍の1kHzとなるようにしているため、A/D変換は、シャノンのサンプリング定理(信号帯域の2倍の周波数でサンプリングする)のさらに2倍とし、信号帯域の4倍である2kHzでサンプリングしている。
【0059】
次に、A/D変換後のIch信号とQch信号の正負の周波数を入れ替えるため、複素信号化手段42により、Qch信号側を正負反転させてSn=I−jQとして複素信号化するとともに、接近者HA側のドップラ周波数を負の周波数帯に入れ替える。これにより、図6a(イ)のスペクトラムに示すように、接近側が−500〜−10Hz,離脱側が10〜500Hzとなる。
【0060】
次に、周波数変換手段43にて図6a(イ)のスペクトラムの全体を正側の周波数帯に動かす。そのため、周波数変換手段43は、ソフトウェアにより構築される複素局部発振器431とミキサ(乗算器)432の各機能を備える。
【0061】
複素局部発振器431は、最高信号周波数に相当する周波数(この例では、+500Hz)を作成する。この場合、サンプリング周波数2kHzで周波数+500Hzの複素OSC信号(cosωt+jsinωt)を作成することになるが、これらの値は(1+j0)→(0+j)→(−1+j0)→(0−j)の繰り返しであるため、容易に複素OSC信号を作成できる。
【0062】
直交変換のため、ミキサ(乗算器)432により、上記複素信号化手段42にて作成された複素信号と上記複素OSC信号との複素積をとることにより、図6a(ウ)のスペクトラムに示すように、接近側が0〜490Hz,離脱側が510〜1kHzに周波数変換された信号を得ることができる。
【0063】
以後は、上記第1,第2実施形態と同じく、フィルタ機能44にて例えば490Hz以下の周波数を選択することにより、接近者HAによるドップラ周波数のみを得ることができ、そのレベルが所定の閾値以上の場合、レベル検出器(コンパレータ)45の出力が例えばLoからHiになり、これを受けて判定器46は接近者HAが自動ドア1の近傍にいると判断してドア開信号を出力する。
【0064】
なお、上記の例においては、Qch信号側を正負反転させてSn=I−jQとして複素信号化したうえで周波数変換するようにしているが、上記第3実施形態の第1変形例として、図6b(ア)に示すスペクトラム(図6a(ア)のスペクトラムと同じ)のまま、すなわち接近側と離脱側の周波数を入れ替えることなく、Sn=I+jQと複素信号化して、図6b(イ)に示す複素信号化後のスペクトラム得、その代わりに複素OSC信号の周波数を−500Hzとして直交変換してもよい。
【0065】
これによれば、図6b(ウ)に示すように、スペクトラム全体が負の周波数帯にシフトされ、離脱側が−1kHz〜510Hz,接近側が−490〜0Hzとなるため、図6c(エ)に示すように、フィルタ44にて−490〜0Hzの周波数帯を抽出することにより、接近者HAのみを検出することができる。
【0066】
上記第1変形例で複素OSC信号の周波数を−500Hzとして直交変換しているが、上記第3実施形態の第2変形例として、複素OSC信号の周波数を+500Hzとして直交変換してもよい。
【0067】
すなわち、図6c(ア)に示すスペクトラム(図6a(ア)のスペクトラムと同じ)のまま、すなわち接近側と離脱側の周波数を入れ替えることなく、Sn=I+jQと複素信号化して、図6c(イ)に示す複素信号化後のスペクトラムを得たのち、この第2変形例においては、複素OSC信号の周波数を+500Hzとして直交変換する。
【0068】
これによれば、図6c(ウ)に示すように、スペクトラム全体が図6c(イ)の状態から正の周波数帯にシフトされ、離脱側が0〜490Hz,接近側が510Hz〜1kHzとなるため、図6c(エ)に示すように、フィルタ44にて510Hz〜1kHzの周波数帯を抽出することにより、接近者HAのみを検出することができる。
【0069】
また、上記第3実施形態の第3変形例として、図6d(イ)に示すように、複素OSC信号の周波数を接近側周波数帯のほぼ中間に位置する−250Hzとして直交変換してもよい。
【0070】
すなわち、図6d(ア)に示すスペクトラム(図6a(ア)のスペクトラムと同じ)のまま、接近側と離脱側の周波数を入れ替えることなく、Sn=I+jQと複素信号化して、図6d(イ)に示す複素信号化後のスペクトラムを得たのち、この第3変形例においては、複素OSC信号の周波数を−250Hzとして直交変換する。
【0071】
これによれば、図6d(ウ)に示すように、離脱側が−750〜−260Hz,接近側が−240Hz〜+250Hzとなるため、図6d(エ)に示すように、フィルタ機能44にて0〜250Hzの周波数帯を抽出することにより、接近者HAのみを検出することができる。
【0072】
次に、図7により、本発明の第4実施形態について説明する。この第4実施形態は、複素信号を周波数分析すると、正の周波数と負の周波数とに分離できることに基づくものである。
【0073】
そのため、図7に示す第4実施形態による自動ドアセンサ10Dは、基本的な構成として、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器51と、A/D変換後のIch信号を実部I,Qch信号を虚部jQとする複素信号をフーリエ変換する複素フーリエ変換手段52と、フーリエ変換により得られた周波数スペクトラムから接近側信号を検出して自動ドアを制御する制御手段53とを備えている。
【0074】
図7(ア)にA/D変換後のIch信号を実部I,Qch信号を虚部jQとする複素信号のスペクトラムを示す。この複素信号のスペクトラムにおいて、離脱側が−500〜−10Hz,接近側が10〜500Hzであるが、これを複素フーリエ変換手段52にてフーリエ変換すると、図7(イ)の周波数スペクトラムに示されているように、接近側が正の周波数,離脱側が負の周波数に並ぶため、制御手段53は、その周波数スペクトラムの中から、正の周波数部分のみを取り出して、そのレベルが所定値以上の場合、ドア開信号を出力する。なお、フーリエ変換に代えてDCT変換(離散コサイン変換)を行ってもよい。
【0075】
次に、図8により本発明の第5実施形態について説明する。この第5実施形態は、上記第1実施形態におけるアナログ処理をデジタル処理に代えたものである。
【0076】
すなわち、この第5実施形態による自動ドアセンサ10Dは、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器61と、Ich信号とQch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらす位相差器としての移相手段62とを備えるが、移相手段62としてヒルベルト変換器が用いられる。
【0077】
なお、移相手段62の後段に接続される加減算器63,レベル検出器64および判定器65は、上記第1実施形態における加減算器22,レベル検出器23および判定器24と同じ構成であってよい。
【0078】
ヒルベルト変換器の構成は公知であるため、ここではその説明を省略するが、ヒルベルト変換器を用いることにより、ソフトウェアの演算のみで周波数が変化しても90゜一定に位相が変化する信号を得ることが可能で、それを加算することにより接近側のドップラ周波数のみを分離することができる。この方法に加減乗算のみでよく、複素数の乗算を使用しないため必要とする演算パワーが少なくて済むという利点がある。
【0079】
なお上記したように、本発明のレーダセンサによれば、接近者のみならず離脱者も識別可能であるため、例えば空調負荷の軽減などの要請から、開かれた自動ドアを早期に閉にしたい場合にも、本発明のレーダセンサを適用することができる。その場合、他のセンサを併用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態による自動ドアセンサの構成を示す模式図。
【図2】(a)〜(d)上記第1実施形態で接近者側の信号処理手順を示す波形図。
【図3】(a)〜(d)上記第1実施形態で離脱者側の信号処理手順を示す波形図。
【図4】(a)接近者と離脱者の各反射波を示すベクトル図,(b)接近者と離脱者の各反射波の周波数スペクトラムを示す模式図。
【図5】本発明の第2実施形態による自動ドアセンサの構成と、その信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図6a】本発明の第3実施形態による自動ドアセンサの構成と、その信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図6b】上記第3実施形態の第1変形例の信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図6c】上記第3実施形態の第2変形例の信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図6d】上記第3実施形態の第3変形例の信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図7】本発明の第4実施形態による自動ドアセンサの構成と、その信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図8】本発明の第5実施形態による自動ドアセンサの構成を示す模式図。
【図9】従来例としての自動ドアセンサの構成を示す模式図。
【図10】自動ドアセンサに適用されるレーダの構成を示す模式図。
【図11】上記レーダの受信部から出力される接近者と離脱者の各Ich信号とQch信号の位相関係を示す波形図。
【図12】自動ドア近傍に設定される監視領域を示す模式図。
【符号の説明】
【0081】
10A〜10E 自動ドアセンサ
11 レーダ
121 Ich信号を出力する前方の第1検波器
122 Qch信号を出力する後方の第2検波器
21 移相器
22 加減算器
23,38,45 レベル検出器
24,39,46 判定器
31 −180゜移相器
32 局部発振器
33,35,432 ミキサ(乗算器)
34 −90゜移相器
37 ローパスフィルタ
41,51 A/D変換器
42 複素信号化手段
43 周波数変換手段
431 複素局部発振器
44 フィルタ
52 複素フーリエ変換手段
62 移相器(ヒルベルト変換器)
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダを用いた自動ドアセンサおよびその物体検出方法に関し、さらに詳しく言えば、自動ドアの監視領域に自動ドアに近づく方向に移動する接近者と、自動ドアから離れる方向に移動する離脱者とが存在する場合、好ましくはその接近者側を識別可能とする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、自動ドアセンサには赤外線方式が採用されているが、赤外線方式では人(被検出物体)の動き、すなわちドアの方に進んでいるのか、ドアから離れる方向に動いているのかの動体パターンまでは識別することができない。
【0003】
そこで、近年においては、動体パターンを識別し得るレーダを用いた自動ドアセンサが実用化されている。その構成の一例を図9ないし図11により説明する。
【0004】
まず、図9に示すように、この種の自動ドアセンサ10は、基本的な構成として、レーダ(マイクロ波送受信機)11,ローパスフィルタ12,A/D変換器13およびマイクロコンピュータなどからなる制御部14を備えている。
【0005】
レーダ11は、例えば数GHz〜数10GHz帯のマイクロ波を送出するとともに、物体からの反射波(ドップラ周波数)を受信する。そのため、図10に示すように、例えばガンダイオード111を発振源とする誘電体発振器110と、導波管内に設けられる受信部120とを備えている。
【0006】
この場合、受信部120として、第1および第2の2つの例えばショットキーダイオードからなる検波器121,122が用いられる。この2つの検波器121,122は、誘電体発振器110から送出されるマイクロ波の波長をλとして、導波管内において前後方向にλ/4もしくはλ/4+λ/2n(nは任意の正の整数;0,1,2,…)離間して配置されている。
【0007】
したがって、後方の第2検波器122からは前方の第1検波器121に対して90゜位相がずれた信号が出される。ここでは、前方の第1検波器121の出力信号をIch(Iチャンネル)信号、後方の第2検波器122の出力信号はQch(Qチャンネル)信号とする。ちなみに、Ich信号のIはIn−phase(同相)の略で、QchのQはQuadrature−phase(直交相)の略である。
【0008】
このIch信号とQch信号の2つのチャンネル信号により、人(被検出物体)の動体パターンを識別することができる。図11(a)に自動ドアに近づく方向に移動する接近者HAによるIch信号とQch信号の各波形図を示し、図11(b)に自動ドアから離れる方向に移動する離脱者HBによるIch信号とQch信号の各波形図を示す。
【0009】
これによると、Ich信号がゼロクロス点で正の向きに転じた時を基準として、Qch信号が同様にゼロクロス点で正の向きに転ずる時の時間差(位相差)を測定し、その時間差が180゜よりも小さい場合は接近者HAで、180゜よりも大きい場合には離脱者HBであると判別することができる。
【0010】
別の方法として、接近者HAの場合、Ich信号がゼロクロス点で正の向きに転じたのちの最初に現れるQch信号のゼロクロス点での向きが正の方向であるのに対して、離脱者HBの場合、Ich信号がゼロクロス点で正の向きに転じたのちの最初に現れるQch信号のゼロクロス点での向きは負の方向であり、これによっても接近者HAと離脱者HBとを判別することができる。
【0011】
いずれにしても、制御部14は接近者HAを検知したときに、自動ドア1(図12参照)の駆動系にドア開信号を出力し、離脱者HBの場合にはドア開信号を出力しない。なお、レーダを用いた自動ドアセンサにおいては、通常、ドア閉め制御は別途のタイマや安全ビームなどによる存在センサの出力を加味して制御される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記したように、レーダを用いた自動ドアセンサによれば、動体パターンにより接近者HAと離脱者HBとを識別することができる。
【0013】
しかしながら、図12に示すように、自動ドア1の監視領域内に接近者HAと離脱者HBとが存在し、特に離脱者HBが自動ドア1の近くにおり、接近者HAが遠くにいる場合には、反射波の信号レベルは近くの離脱者HBの方が大きいため、遠くにいる接近者HAには反応しない、という問題がある。
【0014】
したがって、本発明の課題は、自動ドアの監視領域に自動ドアに近づく方向に移動する接近者と、自動ドアから離れる方向に移動する離脱者とが居る場合、接近者のみを確実に識別できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明のレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法は、請求項1に記載されているように、自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法において、移相器により上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらしたのち、上記Ich信号と上記Qch信号とを加算もしくは減算することを特徴としている。
【0016】
上記請求項1に記載のレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法において、請求項2に記載されているように、上記Ich信号の位相を上記Qch信号に対して+90゜ずらせたときには、移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを減算し、上記Ich信号の位相を上記Qch信号に対して−90゜ずらせたときには、移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを加算する。
【0017】
また、本発明のレーダを用いた自動ドアセンサは、請求項3に記載されているように、自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらす移相手段と、上記移相手段による移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを加算もしくは減算する演算手段と、上記演算手段の演算値に基づいて上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を検出する判定手段とを備えていることを特徴としている。
【0018】
上記請求項3に記載のレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、請求項4に記載されているように、上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器を備え、上記移相手段にヒルベルト変換器を用いたデジタル信号処理ソフトウェアでも、上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体の識別を実現することができる。
【0019】
また、本発明のレーダを用いた自動ドアセンサは、請求項5に記載されているように、自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらす移相手段と、上記反射波(ドップラ周波数)のほぼ最大周波数もしくはそれ以下の周波数を発振する局部発振器と、上記移相手段による移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを上記局部発振器の出力周波数にて直交変調する周波数変換手段と、上記周波数変換手段により周数変換された上記Ich信号と上記Qch信号の中から上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を検出するフィルタとを備えていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明のレーダを用いた自動ドアセンサは、請求項6に記載されているように、自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器と、上記A/D変換後に上記Ich信号,上記Qch信号をそれぞれ実部,虚部の複素信号にするとともに上記虚部の正負を反転させる複素信号化手段と、上記反射波(ドップラ周波数)のほぼ最大周波数もしくはそれ以下に相当する周波数を生成する複素局部発振器と、上記複素信号を上記複素局部発振器の出力周波数にて直交変換する周波数変換手段と、上記周波数変換手段により変換された上記複素信号の中から上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を分離して検出するデジタルフィルタとを備えていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明のレーダを用いた自動ドアセンサは、請求項7に記載されているように、自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器と、上記A/D変換後に上記Ich信号,上記Qch信号を実部,虚部の複素信号とし、これをフーリエ変換もしくはDCT変換(離散コサイン変換)して上記複素信号の周波数スペクトラムを得る変換手段と、上記周波数スペクトラムの中から正または負の周波数を抽出,分離して上記自動ドアに対して近づく方向もしくは遠ざかる方向に移動する物体を識別する識別手段とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
自動ドアの監視領域内に接近者と離脱者がともに存在する場合、レーダにて受信される反射波(ドップラ周波数)には、接近者による反射波と離脱者による反射波とが含まれる。さらに、各反射波には位相が90゜異なるIch信号とQch信号とが含まれる。そこで、Ich信号を実部,Qch信号を虚部として複素信号化すると、レーダにて受信される反射波には、接近者の実部Iaと虚部Qa,離脱者の実部Ibと虚部Qbとが含まれる。接近者の実部Iaと離脱者の実部Ibは同相であるが、接近者の虚部Qaと離脱者の虚部Qbは位相が180゜相違する反転波形である(先の図11(a)(b)参照)。
【0023】
例えば、接近者の実部Iaと離脱者の実部Ibの位相を、接近者の虚部Qaと離脱者の虚部Qbに対して、それぞれ+90゜進む方向にずらすと、接近者の実部Iaと接近者の虚部Qaは位相が180゜相違する反転波形となり、離脱者の実部Ibと離脱者の虚部Qbは同相となる。
【0024】
したがって、接近者の実部Iaと接近者の虚部Qaとを減算,また、離脱者の実部Ibと離脱者の虚部Qbとを減算することにより、離脱者の反射波のレベルはほぼ0となり、接近者の反射波のみが残されることになる。逆に加算すれば、接近者の反射波レベルはほぼ0となり、離脱者側の反射波のみが検出されることになる。
【0025】
なお、接近者の実部Iaと離脱者の実部Ibの位相を、接近者の虚部Qaと離脱者の虚部Qbに対して、それぞれ−90゜遅れる方向にずらすと、接近者の実部Iaと接近者の虚部Qaは同相で、離脱者の実部Ibと離脱者の虚部Qbは位相が180゜相違する反転波形となるため、接近者の実部Iaと接近者の虚部Qaとを加算,また、離脱者の実部Ibと離脱者の虚部Qbとを加算すればよい。逆に、減算すれば離脱者側の反射波のみが検出されることになる。
【0026】
このようなことから、請求項1ないし4に記載の発明によれば、自動ドアの監視領域内に接近者と離脱者がともに存在し、しかも離脱者が自動ドアの近くにおり、接近者が遠くにいる場合においても、ドア開が必要とされる接近者による反射波を確実に検出することができる。
【0027】
また、請求項5,6に記載の発明によれば、Ich信号とQch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらして、そのIch信号とQch信号とを局部発振器にて直交変調するようにしたことにより、その後の処理を簡単にすることができる。すなわち、通常のフィルタで接近者もしくは離脱者のいずれかの反射波のみを確実に取り出すことができる。
【0028】
また、請求項7に記載の発明によれば、Ich信号とQch信号とをそれぞれA/D変換したのち、複素信号化手段にてIch信号を実部,Qch信号を虚部とする複素信号とし、フーリエ変換もしくはDCT変換して複素信号の周波数スペクトラムを得て、その周波数スペクトラムの中から正の周波数を抽出するようにしたことにより、主要部をフーリエ変換手段とする簡単な構成でありながら、自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体のみを確実に識別することができる。同様に、負の周波数成分を抽出すれば、離脱者側のみを分離識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、図1ないし図8により、本発明のいくつかの実施形態について説明する。この実施形態は、もっぱら自動ドアに接近する物体を検出することを想定しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
まず、図1ないし図3により、本発明の第1実施形態について説明する。図1に示すように、この第1実施形態による自動ドアセンサ10Aにおいても、先の図10で説明したように、誘電体発振器110から送出されるマイクロ波の波長をλとして、導波管内において前後方向にλ/4相当(λ/4+λ/2n(nは任意の正の整数;0,1,2,…))離間して配置される前方の第1検波器121と後方の第2検波器122とを備えるレーダ(マイクロは送受信機)11が用いられる。
【0031】
したがって、レーダ11から受信信号として、Ich信号と、Ich信号よりも90゜位相が遅れ方向にずれたQch信号とが出力されるが、この第1実施形態による自動ドアセンサ10Aは、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して90゜ずらす移相器21と、移相器21による移相後のIch信号とQch信号とを加算もしくは減算する加減算器22と、加減算器22の出力レベルを検出するレベル検出器23と、レベル検出器23の出力に基づいてドア開がどうかを判定する判定器24とを備える。レベル検出器23にはコンパレータなどが用いられ、判定器24にはマイクロコンピュータなどが用いられてよい。
【0032】
先の図12で説明したように、自動ドア1の監視領域内に、自動ドア1に近づく方向に移動する接近者HAと、自動ドア1から離れる方向に移動する離脱者HBとがいる場合、レーダ11にて受信される反射波(ドップラ周波数)には、接近者HAによる反射波と離脱者HBによる反射波とが含まれる。
【0033】
さらに、受信機内で各反射波から位相が90゜異なるIch信号とQch信号とが得られる。そこで、Ich信号を実部,Qch信号を虚部として複素信号化すると、レーダ11にて受信される反射波には、図2(a)に示す接近者HAの実部Iaと図2(b)に示す接近者HAの虚部Qa、図3(a)に示す離脱者HBの実部Ibと図3(b)に示す離脱者HBの虚部Qbとが含まれる。
【0034】
接近者HAの実部Iaと離脱者HBの実部Ibは同相であるが、接近者HAの虚部Qaと離脱者HBの虚部Qbは位相が180゜相違する反転波形である。この現象を利用して、第1実施形態では接近者HAのみを検出する。そのため、この例においては、移相器21にてIch信号の位相をQch信号に対して+90゜進む方向にずらすとともに、加減算器22を減算器として用いる。
【0035】
接近者HAについて説明すると、図2(a)に示す接近者HAの実部Iaは、移相器21により図2(c)に示すように位相が+90゜進む方向にずらされ、一方でQch信号に対する移相度は0゜であるから、接近者HAの虚部Qaは図2(b)に示す波形のまま移相器21を通過する。
【0036】
したがって、図2(b)と図2(c)とを対比すると分かるように、移相後の接近者HAの実部Iaと接近者HAの虚部Qaは、位相が180゜異なる反転波形となるため、この実部Iaと虚部Qaとを加減算器22にて減算することにより、図2(d)に示すように、レベルが実部Iaと虚部Qaの各レベルのほぼ2倍となる合成波形が得られる。
【0037】
同様に、図3(a)に示す離脱者HBの実部Ibは、移相器21により図3(c)に示すように位相が+90゜進む方向にずらされ、一方でQch信号に対する移相度は0゜であるから、離脱者HBの虚部Qbは図3(b)に示す波形のまま移相器21を通過する。
【0038】
したがって、図3(b)と図3(c)とを対比すると分かるように、移相後の離脱者HBの実部Ibと離脱者HBの虚部Qbは、同相となるため、この実部Ibと虚部Qbとを加減算器22にて減算することにより、図3(d)に示すようにレベルがほぼ0となる。
【0039】
このように、Qch信号の移相度を0とし、Ich信号の位相を+90゜進む方向にずらしたのち、Ich信号とQch信号とを減算することにより、離脱者HBによる反射波は打ち消され、接近者HAによる反射波のみが取り出され、そのレベルが所定の閾値以上の場合、レベル検出器23の出力が例えばLoからHiになる。
【0040】
このレベル検出器23のHi出力を受けて判定器24は接近者HAが自動ドア1の近傍にいると判断してドア開信号を出力する。なお、接近者HAによる反射波のレベルが上記閾値未満の場合には、接近者HAの位置が自動ドアから遠すぎると判定し、ドア開信号は出力されない。
【0041】
上記の例では、Ich信号の位相を+90゜進む方向にずらしているが、−90゜遅れる方向にずらしてもよく、その場合には、移相後の接近者HAの実部Iaと接近者HAの虚部Qaは同相となり、これに対して、移相後の離脱者HBの実部Ibと離脱者HBの虚部Qbは位相が180゜異なる反転波形となるため、加減算器22を加算器として動作させればよい。
【0042】
また、Ich信号の移相度を0とし、Qch信号の位相を+90゜もしくは−90゜ずらすようにしてもよい。なお、接近者HA側ではなく、離脱者HB側を識別したい場合には、上記の加減算を逆にすればよい。
【0043】
次に、図4および図5により、本発明の第2実施形態について説明する。先の図12に示したように、自動ドア1の監視領域内に、自動ドア1に近づく方向に移動する接近者HAと、自動ドア1から離れる方向に移動する離脱者HBとがいる場合、レーダ11にて受信される反射波(ドップラ周波数)には、接近者HAによる反射波と離脱者HBによる反射波とが含まれ、それらの反射波のドップラ周波数は、よく知られているように、接近者HA,離脱者HBの移動速度に依存する。
【0044】
ここで、レーダ11に対する人の移動速度とドップラ周波数の関係について説明すれば、レーダ11から送出されるマイクロ波の波長をλ,人の移動速度をV,レーダ11に対する反射波の入射角をθとすると、ドップラ周波数fDは次式により求められる。
fD=(2×V×cosθ)/λ
【0045】
したがって、例えばレーダ11から送出されるマイクロ波の周波数が24GHz(λ=0.0125m),入射角θ=0,人の歩く速度を0.06〜3m/sとすると、ドップラ周波数fDは約10〜100Hzとなる。
【0046】
ところで、接近者HAと離脱者HBの移動速度が同じであれば、それらの反射波は同一周波数となるが、複素信号として見れば、その周波数は図4(a)のベクトル図,図4(b)のスペクトラムに示すように、正負の極性が異なるものとなる。なお、図4(a)において、+ωが接近方向,−ωが離脱方向である。
【0047】
接近者HAと離脱者HBとによるドップラ周波数の正負を識別するため、この第2実施形態では、接近者HAと離脱者HBの各受信信号を単側波帯変調して周波数変換を行う。すなわち、図5に示す第2実施形態による自動ドアセンサ10Bにおいては、接近者HAと離脱者HBとによるドップラ周波数を、図5の(ア)〜(エ)に示すように、スペクトラム全体を動かし、フィルタで目的とする接近者HAの移動速度を分離する。
【0048】
具体的には、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号のドップラ周波数成分を上記したように約10〜500Hzとすると、Ich信号とQch信号の複素信号は、図5(ア)のスペクトラムに示すように、接近者HA側が正の周波数(+10〜+500Hz)で,離脱者HB側が負の周波数(−500〜−10Hz)となる。
【0049】
これを接近者HA側が負の周波数,離脱者HB側が正の周波数となるように、Qch信号の位相を−180゜移相器31にて−180゜遅れ方向に移相する。これにより、図5(イ)のスペクトラムに示すように、接近者HA側が−500〜−10Hz,離脱者HB側が+10〜+500Hzとなる。
【0050】
これとは別に、局部発振器32にてドップラ周波数の最高信号周波数に相当する周波数(この場合、500Hz)を作成し、Ich信号については、ミキサ33にてIch信号を上記局部発振周波数にて周波数変換する。
【0051】
一方、Qch信号については、局部発振器32の局部発振周波数を−90゜移相器にて−90゜遅れ方向に位相をずらした複素的な−90゜成分を作成し、ミキサ35で上記複素的な90゜成分によりQch信号を直交変調する。
【0052】
そして、ミキサ33にて周波数変換されたIch信号と、ミキサ35で直交変調されたQch信号とを加算器36で加算して、図5b(ウ)のスペクトラムに示すように、接近者HA側が0〜490Hz,離脱者HB側が510Hz〜1kHzとなるように周波数変換する。
【0053】
そして、ローパスフィルタ37にて例えば490Hz以下の周波数を選択することにより、接近者HAによるドップラ周波数のみを得ることができ、そのレベルが所定の閾値以上の場合、レベル検出器(コンパレータ)38の出力が例えばLoからHiになり、これを受けて判定器39は接近者HAが自動ドア1の近傍にいると判断してドア開信号を出力する。
【0054】
なお、上記の例においては、Qch信号側の位相を−180゜移相器31にて−180゜移相したのち、局部発振器32の出力を−90゜移相器にて−90゜移相後、直交変調するようにしているが、Qch信号側の位相をそのままとし、局部発振器32の出力を−90゜もしくは+90゜移相した信号でIch信号側を直交変調し、スペクトラム全体を正側もしくは負側に動かし、その中からフィルタにて接近者HAのスペクトラムのみを選択するようにしてもよい。また、局部発振器32の周波数を250Hzとして、図5(エ)に示す接近者周波数を−250〜+250Hzにすることもできる。
【0055】
次に、図6aにより、本発明の第3実施形態について説明する。接近者HAと離脱者HBの各ドップラ周波数を複素的に周波数変換して、スペクトラム全体を正側もしくは負側に動かし、フィルタで接近者HAのドップラ周波数のみを抽出する点は上記第2実施形態と同じであるが、この第3実施形態では、その処理をデジタル的に行う。
【0056】
そのため、図6aに示す第3実施形態による自動ドアセンサ10Cにおいては、まず、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号の各々をA/D変換器41にてデジタル信号に変換する。
【0057】
なお、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号のドップラ周波数を上記第2実施形態と同じく約10〜500Hzとすると、Ich信号とQch信号の複素信号は、図6a(ア)に示すように、接近者HA側が正の周波数で、離脱者HB側の周波数が負の周波数となる。
【0058】
この例では、後述する周波数変換後の最高周波数が、図6a(ウ)のスペクトラムに示すように、Ich信号とQch信号のドップラ周波数の2倍の1kHzとなるようにしているため、A/D変換は、シャノンのサンプリング定理(信号帯域の2倍の周波数でサンプリングする)のさらに2倍とし、信号帯域の4倍である2kHzでサンプリングしている。
【0059】
次に、A/D変換後のIch信号とQch信号の正負の周波数を入れ替えるため、複素信号化手段42により、Qch信号側を正負反転させてSn=I−jQとして複素信号化するとともに、接近者HA側のドップラ周波数を負の周波数帯に入れ替える。これにより、図6a(イ)のスペクトラムに示すように、接近側が−500〜−10Hz,離脱側が10〜500Hzとなる。
【0060】
次に、周波数変換手段43にて図6a(イ)のスペクトラムの全体を正側の周波数帯に動かす。そのため、周波数変換手段43は、ソフトウェアにより構築される複素局部発振器431とミキサ(乗算器)432の各機能を備える。
【0061】
複素局部発振器431は、最高信号周波数に相当する周波数(この例では、+500Hz)を作成する。この場合、サンプリング周波数2kHzで周波数+500Hzの複素OSC信号(cosωt+jsinωt)を作成することになるが、これらの値は(1+j0)→(0+j)→(−1+j0)→(0−j)の繰り返しであるため、容易に複素OSC信号を作成できる。
【0062】
直交変換のため、ミキサ(乗算器)432により、上記複素信号化手段42にて作成された複素信号と上記複素OSC信号との複素積をとることにより、図6a(ウ)のスペクトラムに示すように、接近側が0〜490Hz,離脱側が510〜1kHzに周波数変換された信号を得ることができる。
【0063】
以後は、上記第1,第2実施形態と同じく、フィルタ機能44にて例えば490Hz以下の周波数を選択することにより、接近者HAによるドップラ周波数のみを得ることができ、そのレベルが所定の閾値以上の場合、レベル検出器(コンパレータ)45の出力が例えばLoからHiになり、これを受けて判定器46は接近者HAが自動ドア1の近傍にいると判断してドア開信号を出力する。
【0064】
なお、上記の例においては、Qch信号側を正負反転させてSn=I−jQとして複素信号化したうえで周波数変換するようにしているが、上記第3実施形態の第1変形例として、図6b(ア)に示すスペクトラム(図6a(ア)のスペクトラムと同じ)のまま、すなわち接近側と離脱側の周波数を入れ替えることなく、Sn=I+jQと複素信号化して、図6b(イ)に示す複素信号化後のスペクトラム得、その代わりに複素OSC信号の周波数を−500Hzとして直交変換してもよい。
【0065】
これによれば、図6b(ウ)に示すように、スペクトラム全体が負の周波数帯にシフトされ、離脱側が−1kHz〜510Hz,接近側が−490〜0Hzとなるため、図6c(エ)に示すように、フィルタ44にて−490〜0Hzの周波数帯を抽出することにより、接近者HAのみを検出することができる。
【0066】
上記第1変形例で複素OSC信号の周波数を−500Hzとして直交変換しているが、上記第3実施形態の第2変形例として、複素OSC信号の周波数を+500Hzとして直交変換してもよい。
【0067】
すなわち、図6c(ア)に示すスペクトラム(図6a(ア)のスペクトラムと同じ)のまま、すなわち接近側と離脱側の周波数を入れ替えることなく、Sn=I+jQと複素信号化して、図6c(イ)に示す複素信号化後のスペクトラムを得たのち、この第2変形例においては、複素OSC信号の周波数を+500Hzとして直交変換する。
【0068】
これによれば、図6c(ウ)に示すように、スペクトラム全体が図6c(イ)の状態から正の周波数帯にシフトされ、離脱側が0〜490Hz,接近側が510Hz〜1kHzとなるため、図6c(エ)に示すように、フィルタ44にて510Hz〜1kHzの周波数帯を抽出することにより、接近者HAのみを検出することができる。
【0069】
また、上記第3実施形態の第3変形例として、図6d(イ)に示すように、複素OSC信号の周波数を接近側周波数帯のほぼ中間に位置する−250Hzとして直交変換してもよい。
【0070】
すなわち、図6d(ア)に示すスペクトラム(図6a(ア)のスペクトラムと同じ)のまま、接近側と離脱側の周波数を入れ替えることなく、Sn=I+jQと複素信号化して、図6d(イ)に示す複素信号化後のスペクトラムを得たのち、この第3変形例においては、複素OSC信号の周波数を−250Hzとして直交変換する。
【0071】
これによれば、図6d(ウ)に示すように、離脱側が−750〜−260Hz,接近側が−240Hz〜+250Hzとなるため、図6d(エ)に示すように、フィルタ機能44にて0〜250Hzの周波数帯を抽出することにより、接近者HAのみを検出することができる。
【0072】
次に、図7により、本発明の第4実施形態について説明する。この第4実施形態は、複素信号を周波数分析すると、正の周波数と負の周波数とに分離できることに基づくものである。
【0073】
そのため、図7に示す第4実施形態による自動ドアセンサ10Dは、基本的な構成として、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器51と、A/D変換後のIch信号を実部I,Qch信号を虚部jQとする複素信号をフーリエ変換する複素フーリエ変換手段52と、フーリエ変換により得られた周波数スペクトラムから接近側信号を検出して自動ドアを制御する制御手段53とを備えている。
【0074】
図7(ア)にA/D変換後のIch信号を実部I,Qch信号を虚部jQとする複素信号のスペクトラムを示す。この複素信号のスペクトラムにおいて、離脱側が−500〜−10Hz,接近側が10〜500Hzであるが、これを複素フーリエ変換手段52にてフーリエ変換すると、図7(イ)の周波数スペクトラムに示されているように、接近側が正の周波数,離脱側が負の周波数に並ぶため、制御手段53は、その周波数スペクトラムの中から、正の周波数部分のみを取り出して、そのレベルが所定値以上の場合、ドア開信号を出力する。なお、フーリエ変換に代えてDCT変換(離散コサイン変換)を行ってもよい。
【0075】
次に、図8により本発明の第5実施形態について説明する。この第5実施形態は、上記第1実施形態におけるアナログ処理をデジタル処理に代えたものである。
【0076】
すなわち、この第5実施形態による自動ドアセンサ10Dは、レーダ11の受信部から出力されるIch信号とQch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器61と、Ich信号とQch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらす位相差器としての移相手段62とを備えるが、移相手段62としてヒルベルト変換器が用いられる。
【0077】
なお、移相手段62の後段に接続される加減算器63,レベル検出器64および判定器65は、上記第1実施形態における加減算器22,レベル検出器23および判定器24と同じ構成であってよい。
【0078】
ヒルベルト変換器の構成は公知であるため、ここではその説明を省略するが、ヒルベルト変換器を用いることにより、ソフトウェアの演算のみで周波数が変化しても90゜一定に位相が変化する信号を得ることが可能で、それを加算することにより接近側のドップラ周波数のみを分離することができる。この方法に加減乗算のみでよく、複素数の乗算を使用しないため必要とする演算パワーが少なくて済むという利点がある。
【0079】
なお上記したように、本発明のレーダセンサによれば、接近者のみならず離脱者も識別可能であるため、例えば空調負荷の軽減などの要請から、開かれた自動ドアを早期に閉にしたい場合にも、本発明のレーダセンサを適用することができる。その場合、他のセンサを併用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1実施形態による自動ドアセンサの構成を示す模式図。
【図2】(a)〜(d)上記第1実施形態で接近者側の信号処理手順を示す波形図。
【図3】(a)〜(d)上記第1実施形態で離脱者側の信号処理手順を示す波形図。
【図4】(a)接近者と離脱者の各反射波を示すベクトル図,(b)接近者と離脱者の各反射波の周波数スペクトラムを示す模式図。
【図5】本発明の第2実施形態による自動ドアセンサの構成と、その信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図6a】本発明の第3実施形態による自動ドアセンサの構成と、その信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図6b】上記第3実施形態の第1変形例の信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図6c】上記第3実施形態の第2変形例の信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図6d】上記第3実施形態の第3変形例の信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図7】本発明の第4実施形態による自動ドアセンサの構成と、その信号処理に伴う周波数スペクトラムの遷移を示す模式図。
【図8】本発明の第5実施形態による自動ドアセンサの構成を示す模式図。
【図9】従来例としての自動ドアセンサの構成を示す模式図。
【図10】自動ドアセンサに適用されるレーダの構成を示す模式図。
【図11】上記レーダの受信部から出力される接近者と離脱者の各Ich信号とQch信号の位相関係を示す波形図。
【図12】自動ドア近傍に設定される監視領域を示す模式図。
【符号の説明】
【0081】
10A〜10E 自動ドアセンサ
11 レーダ
121 Ich信号を出力する前方の第1検波器
122 Qch信号を出力する後方の第2検波器
21 移相器
22 加減算器
23,38,45 レベル検出器
24,39,46 判定器
31 −180゜移相器
32 局部発振器
33,35,432 ミキサ(乗算器)
34 −90゜移相器
37 ローパスフィルタ
41,51 A/D変換器
42 複素信号化手段
43 周波数変換手段
431 複素局部発振器
44 フィルタ
52 複素フーリエ変換手段
62 移相器(ヒルベルト変換器)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法において、
移相器により上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらしたのち、上記Ich信号と上記Qch信号とを加算もしくは減算することを特徴とするレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法。
【請求項2】
上記Ich信号の位相を上記Qch信号に対して+90゜ずらせたときには、移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを減算し、上記Ich信号の位相を上記Qch信号に対して−90゜ずらせたときには、移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを加算することを特徴とする請求項1に記載のレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法。
【請求項3】
自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、
上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらす移相手段と、上記移相手段による移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを加算もしくは減算する演算手段と、上記演算手段の演算値に基づいて上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を分離して検出する判定手段とを備えていることを特徴とするレーダを用いた自動ドアセンサ。
【請求項4】
上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器を備えるとともに、上記移相手段にヒルベルト変換器を用いて、ソフトウェアによりデジタル処理を行うことを特徴とする請求項3に記載のレーダを用いた自動ドアセンサ。
【請求項5】
自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、
上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらす移相手段と、上記反射波(ドップラ周波数)のほぼ最大周波数もしくはそれ以下に相当する周波数を発振する局部発振器と、上記移相手段による移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを上記局部発振器の出力周波数にて直交変調する周波数変換手段と、上記周波数変換手段により変換された上記Ich信号と上記Qch信号の中から上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を分離して検出するフィルタとを備えていることを特徴とするレーダを用いた自動ドアセンサ。
【請求項6】
自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、
上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器と、上記A/D変換後に上記Ich信号,上記Qch信号をそれぞれ実部,虚部の複素信号にするとともに上記虚部の正負を反転させる複素信号化手段と、上記反射波(ドップラ周波数)のほぼ最大周波数もしくはそれ以下に相当する周波数を生成する複素局部発振器と、上記複素信号を上記複素局部発振器の出力周波数にて直交変換する周波数変換手段と、上記周波数変換手段により変換された上記複素信号の中から上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を分離して検出するデジタルフィルタとを備えていることを特徴とするレーダを用いた自動ドアセンサ。
【請求項7】
自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、
上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器と、上記A/D変換後に上記Ich信号,上記Qch信号を実部,虚部の複素信号とし、これをフーリエ変換もしくはDCT変換(離散コサイン変換)して上記複素信号の周波数スペクトラムを得る変換手段と、上記周波数スペクトラムの中から正または負の周波数を抽出,分離して上記自動ドアに対して近づく方向もしくは遠ざかる方向に移動する物体を識別する識別手段とを備えていることを特徴とするレーダを用いた自動ドアセンサ。
【請求項1】
自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法において、
移相器により上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらしたのち、上記Ich信号と上記Qch信号とを加算もしくは減算することを特徴とするレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法。
【請求項2】
上記Ich信号の位相を上記Qch信号に対して+90゜ずらせたときには、移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを減算し、上記Ich信号の位相を上記Qch信号に対して−90゜ずらせたときには、移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを加算することを特徴とする請求項1に記載のレーダを用いた自動ドアセンサの物体検出方法。
【請求項3】
自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、
上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらす移相手段と、上記移相手段による移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを加算もしくは減算する演算手段と、上記演算手段の演算値に基づいて上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を分離して検出する判定手段とを備えていることを特徴とするレーダを用いた自動ドアセンサ。
【請求項4】
上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器を備えるとともに、上記移相手段にヒルベルト変換器を用いて、ソフトウェアによりデジタル処理を行うことを特徴とする請求項3に記載のレーダを用いた自動ドアセンサ。
【請求項5】
自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、
上記Ich信号と上記Qch信号のいずれか一方の位相をいずれか他方に対して+90゜もしくは−90゜ずらす移相手段と、上記反射波(ドップラ周波数)のほぼ最大周波数もしくはそれ以下に相当する周波数を発振する局部発振器と、上記移相手段による移相後の上記Ich信号と上記Qch信号とを上記局部発振器の出力周波数にて直交変調する周波数変換手段と、上記周波数変換手段により変換された上記Ich信号と上記Qch信号の中から上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を分離して検出するフィルタとを備えていることを特徴とするレーダを用いた自動ドアセンサ。
【請求項6】
自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、
上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器と、上記A/D変換後に上記Ich信号,上記Qch信号をそれぞれ実部,虚部の複素信号にするとともに上記虚部の正負を反転させる複素信号化手段と、上記反射波(ドップラ周波数)のほぼ最大周波数もしくはそれ以下に相当する周波数を生成する複素局部発振器と、上記複素信号を上記複素局部発振器の出力周波数にて直交変換する周波数変換手段と、上記周波数変換手段により変換された上記複素信号の中から上記自動ドアに対して近づく方向に移動する接近物体もしくは遠ざかる方向に移動する離脱物体による反射波を分離して検出するデジタルフィルタとを備えていることを特徴とするレーダを用いた自動ドアセンサ。
【請求項7】
自動ドアの近傍に設定された監視領域に対する送受信機として、所定周波数のマイクロ波を送出する発振部と、上記監視領域内に存在する物体からの反射波を受信する受信部とを含み、上記受信部内に第1,第2の検波器が上記マイクロ波の波長をλとして前後方向にλ/4相当離間して配置されているレーダが用いられ、前方の上記第1検波器から出力されるIch信号と後方の上記第2検波器から出力されるQch信号とにより、上記監視領域内の物体を検出して上記自動ドアに開閉制御信号を出力するレーダを用いた自動ドアセンサにおいて、
上記Ich信号と上記Qch信号とをそれぞれデジタル信号に変換するA/D変換器と、上記A/D変換後に上記Ich信号,上記Qch信号を実部,虚部の複素信号とし、これをフーリエ変換もしくはDCT変換(離散コサイン変換)して上記複素信号の周波数スペクトラムを得る変換手段と、上記周波数スペクトラムの中から正または負の周波数を抽出,分離して上記自動ドアに対して近づく方向もしくは遠ざかる方向に移動する物体を識別する識別手段とを備えていることを特徴とするレーダを用いた自動ドアセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−133585(P2008−133585A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318170(P2006−318170)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(390002668)株式会社本田電子技研 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(390002668)株式会社本田電子技研 (13)
【Fターム(参考)】
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