説明

レーダシステム

【課題】監視目標に異常が発生した場合に、空港監視レーダ、二次監視レーダそれぞれで取得される目標情報の妥当性を容易に解析できるようにする。
【解決手段】レーダシステムにおいて、空港監視レーダ10では、デジタル変換直後のデジタル信号にタイムスタンプを付与し、タイムスタンプを付与したデジタル信号から検出情報Aを生成し、二次監視レーダ20では、デジタル変換直後のデジタル信号にタイムスタンプを付与し、タイムスタンプを付与したデジタル信号から検出情報Bを生成するものとし、表示装置40において、生成された検出情報A,Bに基づいて目標情報を表示し、この目標情報と同時にタイムスタンプを表示すると共に、表示される目標情報及びタイムスタンプを保存部50に保存する。このように保存されたタイムスタンプを参照することで、各レーダが受信した目標情報のうち、監視目標の目標情報のタイムスタンプと一致するタイムスタンプを付与された目標情報を検索することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港監視レーダ及び二次監視レーダを備えるレーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、航空管制において航空機等の監視をするレーダシステムにあっては、空港監視レーダ及び二次監視レーダが使用されている(例えば、非特許文献1参照。)。空港監視レーダは、レーダパルスの反射信号から目標信号を抽出することで目標の位置情報を取得する。二次監視レーダは、質問信号を送出し、目標からの質問信号に対する応答信号を受信して解読することで目標の位置情報を取得する。
【0003】
ところで、上記レーダシステムでは、空港監視レーダで得られた目標位置情報と二次監視レーダで得られた目標位置情報について相関をとり、相関処理後にタイムスタンプを付加している。但し、目標情報として表示装置に表示する際にその目標情報に付加されたタイムスタンプは同じ画面に表示されない。
【0004】
従来、例えば監視している航空機検出内容等に異常が発生した場合、目標情報に付加されたタイムスタンプを参照して、空港監視レーダと二次監視レーダで取得される目標情報の妥当性を個別に解析することは困難であった。これは、従来のシステムでは、相関処理後にタイムスタンプを付与しているため、そのタイムスタンプが空港監視レーダ及び二次監視レーダが信号を実際に取得した時間と必ずしも一致しないことに起因する。
【非特許文献1】吉田 孝監修、「改訂 レーダ技術」、電子情報通信学会、平成8年10月1日 初版第1刷発行、P.219−231
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来の航空管制に用いられるレーダシステムでは、監視目標に異常が発生した場合に、タイムスタンプを参照して空港監視レーダ、二次監視レーダそれぞれで取得される目標情報の妥当性を解析することは困難であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、監視目標に異常が発生した場合でも、空港監視レーダ、二次監視レーダそれぞれで取得される目標情報の妥当性を容易に解析することのできるレーダシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るレーダシステムは、送出した無線信号に対する目標物からの反射信号を受信して受信処理し、当該受信処理を施した信号にタイムスタンプを付与し、タイムスタンプを付与した信号を保存すると共に、当該タイムスタンプを付与した信号から目標信号を抽出して第1の検出情報を生成する空港監視レーダと、送出した質問信号に対する応答信号を受信して受信処理し、当該受信処理を施した信号にタイムスタンプを付与し、タイムスタンプを付与した信号を保存すると共に、当該タイムスタンプを付与した信号を解読処理し、解読処理した信号から目標信号を抽出して第2の検出情報を生成する二次監視レーダと、前記第1の検出情報と前記第2の検出情報とを相関処理する相関処理部と、前記相関処理後の第1及び第2の検出情報に基づいて目標情報を表示すると共に、前記タイムスタンプを表示する表示装置と、前記表示装置に出力された相関処理後の前記第1及び第2の検出情報を保存する第1の保存部とを備える。
【0008】
このような手段を講じることにより、表示装置で表示される目標情報及びタイムスタンプを第1の保存部で保存し、保存されるタイムスタンプを参照することで、各レーダが受信した信号のうちこのタイムスタンプと一致するタイムスタンプを付与された信号を検索することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、監視目標に異常が発生した場合でも、空港監視レーダ、二次監視レーダそれぞれで取得される目標情報の妥当性を容易に解析することのできるレーダシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明に係るレーダシステムの第1の実施形態の機能構成を示すブロック図である。図1に示すレーダシステムにおいて、空港監視レーダ10は、レーダパルスを放射してその反射信号を受信しその受信信号から目標成分を抽出してタイムスタンプ付きの目標検出情報Aを生成する。また、二次監視レーダ20は、目標に向けて送信した質問信号に対する応答信号を受信し、この応答信号にタイムスタンプを付加した後、解析処理を行って目標検出情報Bを生成する。上記空港監視レーダ10及び二次監視レーダ20でそれぞれ得られた目標検出情報A,Bは相関処理部30に送られる。
【0012】
この相関処理部30は、受け取ったタイムスタンプ付きの目標検出情報A,B(以下、目標情報A,B)を相関処理し、表示装置40に出力する。表示装置40は、相関処理後の目標情報A,Bに基づいて目標の位置を表示し、同時にタイムスタンプを同一画面に表示する。保存部50は、表示装置40で表示された目標情報A,B及びタイムスタンプの表示画像を画面更新毎に保存する。なお、保存部50では、表示画像に限らず、表示装置40に入力される情報データを保存しても良い。
【0013】
上記空港監視レーダ10において、空中線装置11で受信されたRF(Radio Frequency)帯の反射信号は、周波数変換部12でIF(Intermediate Frequency)帯に変換され、アナログ−デジタル変換部13でデジタル信号に変換されて、タイムスタンプ付与部15に出力される。一方、タイムスタンプ生成部14は、空中線装置11における反射信号の受信タイミングに合わせてタイムスタンプを生成するもので、このタイムスタンプは上記タイムスタンプ付与部15に出力される。このタイムスタンプ付与部15は、アナログ−デジタル変換部13からのデジタル信号に、タイムスタンプ生成部14からのタイムスタンプを付与する。タイムスタンプが付与されたデジタル信号は、2分岐されて、一方は保存部16に出力されて保存され、他方は信号処理部17に出力される。信号処理部17は、タイムスタンプが付与されたデジタル信号から目標成分を抽出して目標情報Aを取得する。出力部18は、生成された目標情報Aのデータフォーマットを相関処理部30の相関処理に応じたフォーマットに変換し、相関処理部30へ出力する。
【0014】
上記二次監視レーダ20において、空中線装置21で受信されたRF帯の応答信号は、周波数変換部22でIF帯に変換され、アナログ−デジタル変換部23でデジタル信号に変換されて、タイムスタンプ付与部25に出力される。一方、タイムスタンプ生成部24は、空中線装置21における応答信号の受信タイミングに合わせてタイムスタンプを生成するもので、このタイムスタンプは上記タイムスタンプ付与部25に出力される。上記タイムスタンプ付与部25は、アナログ−デジタル変換部23からのデジタル信号に、タイムスタンプ生成部24からのタイムスタンプを付与する。タイムスタンプが付与されたデジタル信号は、2分岐されて、一方は保存部26に出力されて保存され、他方は信号処理部27に出力される。この信号処理部27は、タイムスタンプが付与されたデジタル信号を解読処理して目標情報Bを取得する。出力部28は、生成された目標情報Bのデータフォーマットを相関処理に応じたフォーマットに変換し、相関処理部30へ出力する。
【0015】
すなわち、上記構成によるレーダシステムにおいて、空港監視レーダ10では、デジタル変換直後のデジタル信号にタイムスタンプを付与し、タイムスタンプを付与したデジタル信号から目標情報Aを取得する。一方、二次監視レーダ20では、デジタル変換直後のデジタル信号にタイムスタンプを付与し、タイムスタンプを付与したデジタル信号から目標情報Bを取得する。そして、各レーダ装置で得られた目標情報A,Bを相関処理して互いのマッチングをとった後、表示装置40に例えば図2に示すような形式で目標情報と共にタイムスタンプを表示する。図2における四角印は空港監視レーダ10と二次監視レーダ20によって取得された目標情報を示し、アスタリスク印は二次監視レーダ20のみによって取得された目標情報である。ここでは、目標情報を3行の数字で表し、1行目が目標の識別番号、2行目が目標の飛行高度、3行目がタイムスタンプである。図2におけるタイムスタンプは、スラッシュ以前が空港監視レーダ10で付加されたタイムスタンプを示し、スラッシュ以降が二次監視レーダ20で付加されたタイムスタンプを示す。これにより、表示装置40において目標情報と共に表示されるタイムスタンプと、その目標情報を空港監視レーダ10及び二次監視レーダ20が実際に取得する時間とが一致するようになる。したがって、表示装置40に表示されるタイムスタンプを参照して、そのときに各レーダ10,20が取得した目標情報を検索することが可能となる。
【0016】
また、空港監視レーダ10及び二次監視レーダ20において、タイムスタンプが付与されたデジタル信号を保存部16,26にそれぞれ保存するようにしている。また、表示装置40で表示される目標情報及びタイムスタンプを保存部50で保存するようにしている。このため、レーダシステムにて監視している航空機等に異常が発生した場合に、保存部50で保存される異常発生前後の情報を用いて異常の発生原因等を解析することができる。さらに、保存部50に保存されるタイムスタンプから、保存部16,26に保存される各レーダの実際の目標情報を検索することが可能であるため、各レーダから送出される目標情報の妥当性を解析することができる。
【0017】
以上のように、上記構成によるレーダシステムによれば、表示装置40で表示される目標情報及びタイムスタンプを保存しておくようにしているので、監視目標に異常が生じた場合でも、タイムスタンプを参照することで各レーダからの目標情報A,Bの妥当性を解析することができる。
【0018】
なお、図2で示される目標情報のタイムスタンプは、実時間で表示されているが、空港監視レーダ及び二次監視レーダがその目標情報を実際に取得したタイミングを認識可能であるならば、実時間以外の表示であってもかまわない。例えば、タイムスタンプとして32ビットの認識番号を表示する場合であっても同様に実施可能である。
【0019】
(第2の実施形態)
図3は、本発明に係るレーダシステムの第2の実施形態の機能構成を示すブロック図である。なお、図3において、図1と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。
【0020】
図3において、信号処理部19は、目標成分の抽出処理を複数段階行い、初回の抽出処理で抽出された目標成分を有するデジタル信号に変換してタイムスタンプ付与部110に出力する。このタイムスタンプ付与部110は、目標成分を有するデジタル信号にタイムスタンプを付与し、信号処理部19及び保存部16へそれぞれ出力する。
【0021】
上記信号処理部19は、タイムスタンプを付与されたデジタル信号をタイムスタンプ付与部110から受け取って目標成分の抽出処理を再開する。そして、最終的に抽出された信号成分から目標情報Aを取得する。
【0022】
一方、信号処理部29は、入力されたデジタル信号の解読処理を行い、解読処理後の信号に対して目標成分の抽出処理を複数段階行い、初回の抽出処理で抽出された目標成分を有するデジタル信号をタイムスタンプ付与部210に出力する。このタイムスタンプ付与部210は、目標成分を有するデジタル信号にタイムスタンプを付与し、信号処理部29及び保存部26へそれぞれ出力する。
【0023】
上記信号処理部29は、タイムスタンプを付与されたデジタル信号をタイムスタンプ付与部210から受け取り、このデジタル信号も含めて目標成分の抽出処理を再開する。そして、最終的に抽出された信号成分から目標情報Bを取得する。
【0024】
以上のように、上記第2の実施形態では、信号処理部19,29における初回の抽出処理の後にタイムスタンプを付与するようにしている。これにより、表示装置40に表示されるタイムスタンプと、空港監視レーダ及び二次監視レーダがそのときの信号を実際に取得する時間とがほぼ一致する。また、保存部16,26で保存されるデジタル信号の量は、図1に示すレーダシステムのものと比較して少なくてすむ。
【0025】
したがって、上記構成によるレーダシステムは、表示装置40で表示される目標情報及びタイムスタンプを保存するようにしているので、監視目標に異常が発生した場合にタイムスタンプを参照することができ、各レーダからの目標情報の妥当性を容易に解析することができる。
【0026】
なお、この発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0027】
また、表示形式についても例示した表示形式そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲でシンボルや配置、表示形態を変形して具体化できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るレーダシステムの第1の実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】上記第1の実施形態の表示装置の表示画面の一例を示す模式図。
【図3】本発明に係るレーダシステムの第2の実施形態の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0029】
10…航空監視レーダ、11,21…空中線装置、12,22…周波数変換部、13,23…A/D変換部、14,24…タイムスタンプ生成部、15,110,25,210…タイムスタンプ付与部、16,26,50…保存部、17,19,27,29…信号処理部、18,28…出力部、20…二次監視レーダ、30…相関処理部、40…表示装置、A,B…目標検出情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送出した無線信号に対する目標物からの反射信号を受信して受信処理し、当該受信処理を施した信号にタイムスタンプを付与し、タイムスタンプを付与した信号を保存すると共に、当該タイムスタンプを付与した信号から目標信号を抽出して第1の検出情報を生成する空港監視レーダと、
送出した質問信号に対する応答信号を受信して受信処理し、当該受信処理を施した信号にタイムスタンプを付与し、タイムスタンプを付与した信号を保存すると共に、当該タイムスタンプを付与した信号を解読処理し、解読処理した信号から目標信号を抽出して第2の検出情報を生成する二次監視レーダと、
前記第1の検出情報と前記第2の検出情報とを相関処理する相関処理部と、
前記相関処理後の第1及び第2の検出情報に基づいて目標情報を表示すると共に、前記タイムスタンプを表示する表示装置と、
前記表示装置に出力された相関処理後の前記第1及び第2の検出情報を保存する第1の保存部と
を備えることを特徴とするレーダシステム。
【請求項2】
前記空港監視レーダは、
送出した無線信号に対する目標物からの反射信号を中間周波数帯の第1の信号に周波数変換する第1の周波数変換部と、
前記第1の信号を第1のデジタル信号に変換する第1のアナログ−デジタル変換部と、
前記第1のデジタル信号にタイムスタンプを付与する第1のタイムスタンプ付与部と、
前記タイムスタンプを生成する第1のタイムスタンプ生成部と、
前記タイムスタンプが付与された信号を保存する第2の保存部と、
前記タイムスタンプを付与された第1のデジタル信号から目標信号を抽出して第1の検出情報を生成する第1の信号処理部と
を備え、
前記二次監視レーダは、
送出した質問信号に対する応答信号を中間周波数帯の第2の信号に周波数変換する第2の周波数変換部と、
前記第2の信号を第2のデジタル信号に変換する第2のアナログ−デジタル変換部と、
前記第2のデジタル信号にタイムスタンプを付与する第2のタイムスタンプ付与部と、
前記タイムスタンプを生成する第2のタイムスタンプ生成部と、
前記タイムスタンプが付与された第2のデジタル信号を保存する第3の保存部と、
前記タイムスタンプが付与された信号を解読処理し、解読処理した信号から目標信号を抽出して第2の検出情報を生成する第2の信号処理部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項3】
前記空港監視レーダは、
送出した無線信号に対する目標物からの反射信号を中間周波数帯の第1の信号に周波数変換する第1の周波数変換部と、
前記第1の信号を第1のデジタル信号に変換する第1のアナログ−デジタル変換部と、
前記第1のデジタル信号から目標信号を抽出して第1の検出情報を生成する第1の信号処理部と、
前記抽出した目標信号を有する第1のデジタル信号にタイムスタンプを付与する第1のタイムスタンプ付与部と、
前記タイムスタンプを生成する第1のタイムスタンプ生成部と、
前記タイムスタンプが付与された目標信号を保存する第2の保存部と
を備え、
前記二次監視レーダは、
送出した質問信号に対する応答信号を中間周波数帯の第2の信号に周波数変換する第2の周波数変換部と、
前記第2の信号を第2のデジタル信号に変換する第2のアナログ−デジタル変換部と、
前記第2のデジタル信号を解読処理し、解読処理した信号から目標信号を抽出して第2の検出情報を生成する信号処理部と、
前記抽出した目標信号を有する第2のデジタル信号にタイムスタンプを付与する第2のタイムスタンプ付与部と、
前記タイムスタンプを生成する第2のタイムスタンプ生成部と、
前記タイムスタンプが付与された信号を保存する第3の保存部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のレーダシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−168460(P2009−168460A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3456(P2008−3456)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】