説明

レーダ装置及びカーブ判定プログラム

【課題】前方がカーブしている道路であるか否かを判定する。
【解決手段】電波を送信する送信アンテナ3と、送信された電波が対象物により反射された電波を受信する複数の受信アンテナ1〜1と、受信された電波の方位毎に対象物と受信アンテナ1〜1との相対距離に対する受信された電波の強度の関数を算出するDBF処理部23と、受信された電波の方位毎にDBF処理部23により算出された関数から代表点を抽出する代表点抽出部と、代表点抽出部により抽出された前記受信された電波の方位毎の代表点の距離を比較することにより、前方がカーブしている道路であるか否かを判定するカーブ判定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置及びカーブ判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミリ波レーダ(以下、レーダと称する)は、通常、自動車の車体前方に搭載され、車間警報または車速制御などに用いられている。車載レーダとしては、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダ、多周波CW(Continuous Wave)レーダ、及びパルスレーダ等の方式を利用した電子走査型のレーダが用いられている。
【0003】
レーダを搭載した自車の周囲に障害物が存在する場合、車間距離警報システムまたは車速制御システム(以降、総称して追突軽減システムと称する)は自車と障害物との相対的な距離、方位、速度などの情報を有した物標データを算出する。追突軽減システムは、その物標の位置情報に応じて、自車と障害物との距離を維持させたり、衝突が予想される場合には警報を発したり、自車を減速させたりするといった自車の制御を行う。
【0004】
その際、追突軽減システムは、車速、舵角またはヨーレートといった情報を用いて、自車両の推定軌跡を算出し、算出した推定軌跡と障害物の位置から障害物と衝突するか否かを推定する。また、自車両が直線部分を走行していて前方がカーブしている道路の場合、先行車選択装置が、その前方での道路の曲率を推定し、その推定した道路曲率に基づいて、先行車両を選択することが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−319299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図13(a)は、カーブ中にある障害物の模式図である。図13(b)は、カーブ中にある障害物の模式図である。図13(a)に示すように、レーダから出力される物標データが、自車両の推定軌跡上に存在する場合、追突軽減システムは、その物標の位置情報(距離、物標が進行方向に垂直な方向にどれほど離れているかを示す横位置、相対速度)に応じて、警報を発したり、障害物との距離を保持させたり、衝突が予想される場合には減速させたりといった制御を行う。
【0007】
しかし、図13(b)に示すように、車両がカーブに進入する直前では、舵角やヨーレートといったセンサの信号は、直線路を走行している時の値と変わらない。そのため、追突軽減システムは、前方に道路のカーブがあると判定することができないという問題がある。これにより、追突軽減システムは、カーブ道路外に存在する壁やガードレールといった構造物を、自車両の推定軌跡上に存在すると誤認識してしまい、不要に警報を発するかまたは減速制御する場合がある。
【0008】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、前方がカーブしている道路であるか否かを判定することを可能とするレーダ装置及びカーブ道路外判定プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]上記の課題を解決するために、本発明の一態様であるレーダ装置は、電波を送信する送信アンテナと、前記送信された電波が対象物により反射された電波を受信する複数の受信アンテナと、前記受信された電波の方位毎に前記対象物と受信アンテナとの相対距離に対する前記受信された電波の強度の関数を算出するDBF処理部と、前記受信された電波の方位毎に前記DBF処理部により算出された関数から代表点を抽出する代表点抽出部と、前記代表点抽出部により抽出された前記受信された電波の方位毎の代表点の距離を比較することにより、前方がカーブしている道路であるか否かを判定するカーブ判定部と、を備えることを特徴とする。
上記レーダ装置によれば、前方がカーブしている道路であるか否かを判定することができるので、レーダ装置がカーブ道路外に存在する対象物を自レーダ装置が取り付けられた車両の走行軌跡上に存在すると誤認識することを防ぐことができる。
【0010】
[2]上記[1]に記載のレーダ装置において、前記カーブ判定部は、前記受信された電波の方位毎の代表点の距離が前記対象物を正面にして左側の受信アンテナから右側の受信アンテナの順に遠くなっていれば、前方が右カーブしている道路であると判定し、前記受信された電波の方位毎の代表点の距離が前記対象物を正面にして左側の受信アンテナから右側の受信アンテナの順に近くなっていれば、前方が左カーブしている道路であると判定することを特徴とする。
これによれば、カーブ判定部は前方が右カーブしている道路か左カーブしている道路かを判定することができるので、レーダ装置は、対象物がカーブ道路外にあるか否かを判定することができる。これにより、レーダ装置がカーブ道路外にある対象物を走行上にある障害物と誤認識することを防ぐことができる。
【0011】
[3]上記[1]または[2]に記載のレーダ装置において、自レーダ装置を基準とした前記対象物の相対速度を検出する速度検出部と、前記検出された相対速度と、自レーダ装置が取り付けられた車両の速度とに基づいて、前記対象物が移動物であるか否か判定する移動物判定部と、前記対象物が移動物と判定された場合、前記DBF処理部により算出された関数から、移動物成分を除去する移動物成分除去部と、を備えることを特徴とする。
これによれば、DBF処理部により算出された関数から、移動物成分を除去することができるので、静止物のみを対象物として、その静止物がカーブの道路外にあるか否か判定することができる。これにより、静止物のみに対しカーブ道路外判定すれはよいので、演算量を減らすことができる。
【0012】
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載のレーダ装置において、前記DBF処理部により算出された関数に基づいて、前記対象物が前記カーブの道路外にあるか否か判定するカーブ道路外判定部を更に備えることを特徴とする。
これによれば、前方がカーブしている道路である場合において、対象物がカーブの道路外にあるか否か判定することができるので、レーダ装置がカーブ道路外に存在する対象物を自レーダ装置が取り付けられた車両の走行軌跡上に存在すると誤認識することを防ぐことができる。
【0013】
[5]上記[1]から[4]のいずれかに記載のレーダ装置において、前記受信された電波の強度に基づいて、前記対象物と前記受信アンテナとの前記相対距離を検出する距離検出部と、前記DBF処理部により算出された関数に基づいて、前記対象物の方位を検出する方位検出部と、を備え、前記カーブ道路外判定部は、前記DBF処理部により算出された方位毎の関数のうち前記対象物の方位の関数を抽出し、抽出された関数における代表点の距離と、前記検出された相対距離とに基づいて、前記対象物が前記カーブの道路外にあるか否か判定することを特徴とする。
これによれば、レーダ装置は、対象物がカーブの道路外にあるか否かを判定することができるので、カーブ道路外に存在する対象物を自レーダ装置が取り付けられた車両の走行軌跡上に存在すると誤認識することを防ぐことができる。
【0014】
[6]上記[5]に記載のレーダ装置において、前記カーブ道路外判定部は、前記検出された相対距離が、前記抽出された関数における代表点に対応する距離に基づく距離に基づいて、前記対象物をカーブ道路外にあるか否か判定することを特徴とする。
これによれば、レーダ装置は、カーブ道路外に存在する対象物をカーブ道路外と判定することができる。これにより、レーダ装置は、カーブ道路外に存在する対象物を自レーダ装置が取り付けられた車両の走行に障害となる物標からはずすことができるので、レーダ装置がその対象物を自レーダ装置が取り付けられた車両の走行軌跡上に存在すると誤認識することを防ぐことができる。
【0015】
[7]上記[1]から[6]のいずれかに記載のレーダ装置において、前記代表点は、前記DBF処理部により算出された関数の重心であることを特徴とする。
これによれば、代表点としてDBF処理部により算出された関数の重心を算出する際には、閾値を設定する必要がないので、必ず代表点として重心を抽出できるという利点がある。また、受信強度にノイズ成分が重畳しており、受信強度がピークをとる距離を正しく算出できないときであっても、代表点抽出部33は代表点を抽出することができる。これにより、前方がカーブしている道路であるか否かを、測定条件やノイズに対してロバストに判定することができる。
【0016】
[8]上記の課題を解決するために、本発明の一態様であるカーブ判定プログラムは、受信された電波の方位毎に対象物と受信アンテナとの相対距離に対する受信された電波の強度の関数を算出する第1のステップと、前記受信された電波の方位毎に前記第1のステップにより算出された関数から代表点を抽出する第2のステップと、前記代表点抽出部により抽出された前記受信された電波の方位毎の代表点の距離を比較することにより、前方がカーブしている道路であるか否かを判定する第3のステップと、をコンピュータに実行させるためのカーブ判定プログラムである。
上記カーブ判定プログラムによれば、前方がカーブしている道路であるか否かを判定することができるので、レーダ装置がカーブ道路外に存在する対象物を自レーダ装置が取り付けられた車両の走行軌跡上に存在すると誤認識することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、前方がカーブしている道路であるか否かを判定することができる。これにより、レーダ装置がカーブ道路外に存在する対象物を自レーダ装置が取り付けられた車両の走行軌跡上に存在すると誤認識することを防ぐことができるので、車間距離警報システムまたは車速制御システムにおけるカーブ進入直前の不要警報または不要ブレーキの作動を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態におけるレーダ装置の構成例を示すブロック図である
【図2】送信波及び受信波により、三角波の上昇領域及び下降領域におけるビート信号の生成を説明する概念図である。
【図3】複数本のアンテナが配列している面に対して垂直方向の軸に対する反射波の到来角度を算出する方法を示した図である。
【図4】DBF処理部による処理を説明するための図である。
【図5】カーブ進入直前の相対距離と受信強度との関係を示した図である。
【図6】先行カーブ判別処理部のブロック構成図である。
【図7】移動物成分除去部の処理を説明するための図である。
【図8】レーダのビーム方向例である。
【図9】右カーブ進入直前の相対距離と受信強度の関係の一例である。
【図10】図10(a)は、カーブ道路外対象物検出イメージである。図10(b)は、DBF処理後の第3チャンネルの受信強度と相対距離との関係を示した図である。
【図11】レーダ装置の処理の流れを示したフローチャートである。
【図12】先行カーブ判別処理部の処理の流れを示したフローチャートである。
【図13】カーブ中にある障害物と、カーブ進入直前のカーブ外構造物との模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態におけるレーダ装置の構成例を示すブロック図である。
同図において、本発明の実施形態におけるレーダ装置は、受信アンテナ1〜1(nは正の整数)と、ミキサ2〜2(nは正の整数)と、送信アンテナ3と、分配器4と、フィルタ5〜5(nは正の整数)、SW(スイッチ)6と、ADC(A/Dコンバータ、受信波取得部)7と、制御部8と、三角波生成部9と、VCO(Voltage Controlled Oscillator)10と、信号処理部20とを備える。
【0020】
上記信号処理部20は、記憶部21と、受信強度算出部22と、DBF検知部23と、距離検出部24と、速度検出部25と、方位確定部26と、物標引継ぎ処理部27と、先行カーブ判別処理部28と、物標出力処理部29とを備える。
【0021】
次に、図1を参照して、本発明のレーダ装置の動作を説明する。
受信アンテナ1〜1は、送信波が対象物にて反射し、この対象物から到来する反射波、すなわち受信波を受信する。
ミキサ2〜2各々は、送信アンテナ3から送信される送信波と、各受信アンテナ1〜1それぞれにおいて受信された受信波が増幅器により増幅された信号とを混合して、それぞれの周波数差に対応したビート信号を生成する。
【0022】
上記送信アンテナ3は、三角波生成部9において生成された三角波信号を、VCO10において周波数変調した送信信号を対象物に対して送信波として送信する。
分配器4は、VCO10からの周波数変調された送信信号を、上記ミキサ2〜2および送信アンテナ3に分配する。
【0023】
フィルタ5〜5各々は、それぞれミキサ2〜2において生成された各受信アンテナ1〜1に対応したCh1〜Chnのビート信号に対して帯域制限を行い、SW(スイッチ)6へ帯域制限されたビート信号を供給する。
SW6は、制御部8から入力されるサンプリング信号に対応して、フィルタ5〜5各々を通過した各受信アンテナ1〜1に対応したCh1〜Chnのビート信号を、順次切り替えて、ADC(受信波取得部)7に供給する。
【0024】
ADC(受信波取得部)7は、上記SW6から上記サンプリング信号に同期して入力される各受信アンテナ1〜1各々に対応したCh1〜Chnのビート信号を、上記サンプリング信号に同期して所定のサンプリング周波数でA/D変換してデジタル信号に変換し、信号処理部20における記憶部21の波形記憶領域に順次記憶させる。換言すれば、ADC(受信波取得部)7は、ビート信号を所定の時間間隔で取得する。
【0025】
制御部8は、マイクロコンピュータなどにより構成されており、図示しないROMなどに格納された制御プログラムに基づき、図1に示すレーダ装置全体の制御を行う。
信号処理部20内の記憶部21は、A/Dコンバータ7においてデジタル変換されたデジタル信号を各受信アンテナ1〜1に対応したチャンネルごとに格納する。
【0026】
受信強度算出部22は、記憶部21に格納された各受信アンテナ1〜1に対応したチャンネルごとのビート信号(図2(a)の下図)に対して、フーリエ変換を行う。ここで、フーリエ変換後の複素数データの振幅を信号レベルと呼ぶこととする。
【0027】
受信強度算出部22は、何れかのアンテナにおける複素数データまたは、全アンテナの複素数データの加算値を周波数スペクトル化することにより、スペクトルの各ピーク値に対応するビート周波数(すなわち距離)に依存した対象物の存在として検出することができる。ここで、受信強度算出部22が全アンテナの複素数データの加算値を用いた場合、全アンテナの複素数データの加算により、ノイズ成分が平均化されてS/N比が向上する。
【0028】
そして、受信強度算出部22は、図2(b)に示すビート周波数毎の信号レベルから、予め設定された数値(閾値)を超える信号レベルを検出することによって、対象物が存在していることを判定する。ここで、信号レベルのピーク値を受信波の強度と称す。
【0029】
受信強度算出部22は、信号レベルのピークを検出した場合、ピーク値のビート周波数(ビート信号の上り部分及び下り部分の双方)を対象物周波数として距離検出部24、速度検出部25へ供給する。受信強度算出部22は、周波数変調幅Δfを距離検出部24へ供給し、中心周波数fを速度検出部25へ供給する。
【0030】
受信強度算出部22は、信号レベルのピークを検出できなかった場合、対象物がないという情報を物標出力処理部29に供給する。
なお、ビート信号の上り部分のピーク値、またはビート信号の上り部分のピーク値とビート信号の下り部分のピーク値の平均を信号レベルとして使用してもよい。
【0031】
次に、距離検出部24は、受信強度算出部22から入力される上昇部分の対象物周波数fと、下降部分の対象物周波数fとから、下記式により距離Rを算出する。
【0032】
R={c・T/(2・Δf)}・{(f+f)/2} (1)
【0033】
ここで、cは光速度、Tは変調時間(上昇部分/下降部分)である。
距離検出部24は、算出された対象物との距離Rを示す情報を物標引継ぎ処理部27と先行カーブ判別処理部28と不図示の外部装置とへ供給する。また、距離検出部24は、その対象物との距離を示す情報を記憶部21に保存する。
【0034】
また、速度検出部25は、受信電力算出部22から入力される上昇部分の対象物周波数fと、下降部分の対象物周波数fとから、下記式により相対速度Vを算出し、算出した相対速度Vを示す情報を物標引継ぎ処理部27と先行カーブ判別処理部28と不図示の外部装置とへ供給する。
【0035】
V={c/(2・f)}・{(f−f)/2} (2)
【0036】
DBF(デジタルビームフォーミング)処理部23は、各受信アンテナが受信する受信波の位相差を利用して、入力される各アンテナに対応した時間軸でフーリエ変換された複素データを、アンテナの配列方向にさらにフーリエ変換し、すなわち空間軸フーリエ変換を行う。そして、DBF処理部23は、角度分解能に対応した角度チャンネル毎のスペクトルの強度を示す受信された電波の強度(受信強度)の関数を算出し、算出した受信強度の関数を示す情報を方位検出部26に供給する。また、DBF処理部23は、算出した受信強度の関数を示す情報を先行カーブ判別処理部28へ供給する。
【0037】
方位検出部26は、算出された角度チャンネル毎の受信強度の関数の値の大きさのうち、一番大きな値を取る角度φを対象物の方位とし、対象物の方位を示す情報を物標引継ぎ処理部27と先行カーブ判別処理部28と不図示の外部装置とへ供給する。また、方位検出部26は、その対象物の方位を示す情報を記憶部21に保存する。
【0038】
物標引継ぎ処理部27は、現在のサイクルで算出した対象物の距離、相対速度、方位の値と、記憶部21から読み出した1サイクル前に算出された対象物の距離、相対速度、方位の値とのそれぞれの差分の絶対値が、それぞれの値毎に決められた閾値よりも小さい場合、1サイクル前に検知した対象物と今回検知した対象物を同じものと判定する。
【0039】
その場合、物標引継ぎ処理部27は、記憶部21から読み出したその対象物の物標引継ぎ処理回数を1増やす。そうでない場合には、物標引継ぎ処理部27は、新しい対象物を検知したとみなす。また、物標引継ぎ処理部27は今回の対象物の距離を示す情報、相対速度を示す情報、方位を示す情報およびその対象物の物標引継ぎ処理回数を示す情報を記憶部21に保存する。また、物標引継ぎ処理部27は、先行カーブ判別処理部28へ対象物の識別番号を示す情報を供給する。
【0040】
続いて、先行カーブ判別処理部28の概要について説明する。先行カーブ判別処理部28は、不図示の速度計測装置から供給された車速を示す情報を受け取る。先行カーブ判別処理部28の後述する代表点抽出部33は、方位毎にDBF処理部12により算出された関数から代表点を抽出する。先行カーブ判別処理部28の後述するカーブ判定部34は、代表点抽出部33により抽出された方位毎の代表点の距離を比較することにより、前方がカーブしている道路であるか否かを判定する。
【0041】
前方がカーブしている道路である場合、先行カーブ判別処理部28は、DBF処理部23により算出された方位毎の関数のうち対象物の方位の関数を抽出し、抽出された関数における代表点の距離と、前記検出された相対距離とに基づいて、対象物がカーブの道路外にあるか否か判定し、その判定結果の情報を物標出力処理部29に供給する。
【0042】
物標出力処理部29は、対象物がカーブ道路内にある場合に、その対象物の識別番号を物標として不図示の外部装置に供給する。物標出力処理部29は、先行カーブ判別処理部28から供給された複数の対象物の判別結果の情報を受け取り、そのどちらの対象物がカーブ道路内にある場合、記憶部21からそれぞれの対象物の方位を読み出す。物標出力処理部29は、それぞれの対象物の方位から、自車の車線上にある対象物を抽出し、自車の車線上にある対象物の識別番号を示す情報を物標として不図示の外部装置へ供給する。
【0043】
これによって、その外部装置は、対象物が衝突の危険性を伴う通常検知対象物である場合に、衝突を回避するために減速するか、または運転手に注意を促すために警報を発することができる。
【0044】
また、物標出力処理部29は、複数の対象物の判定結果の情報を受け取り、そのどちらの対象物もカーブ道路内にある場合であって、2つ以上の対象物が自車の車線上にある場合、記憶部21から読み出した物標引継ぎ処理回数が多い対象物の識別番号を物標として不図示の外部装置へ供給する。なお、物標出力処理29は、対象物がカーブ道路外にある場合、または受信強度算出部22から対象物がないという情報が入力された場合には、物標がないことを示す情報を不図示の外部装置へ供給する。
【0045】
<距離、相対速度、水平角度(方位)を検出する原理>
次に、図2を用いて、信号処理部20において用いられる、レーダ装置と対象物との距離、相対速度、角度(方位)を検出する原理について簡単に説明する。
【0046】
図2は、送信波及び受信波により、三角波の上昇領域及び下降領域におけるビート信号の生成を説明する概念図である。図2(a)には、図1の三角波生成部9において生成された信号がVCO10において、中心周波数f、変調幅Δfで周波数変調された送信信号と、その送信信号が対象物に反射された受信信号とが示されている。ここで、図2の例は、対象物が1つの場合である。
【0047】
図2(a)に示すように、送信信号に対し、対象物からの反射波である受信信号が、レーダと対象物との距離に応じて右方向(時間遅れ方向)に遅延されて受信される。さらに、ドップラー効果によって対象物との相対速度に応じて、送信信号に対して上下方向(周波数方向)に変動する。
【0048】
複数の対象物が存在する場合、フーリエ変換後には、ビート信号の上り部分とビート信号の下り部分のそれぞれに対象物の数と同じ数のピークが表れる。レーダと対象物の距離に比例して、受信信号が遅延し、図2(a)の上段における受信信号は右方向にシフトするので、レーダと対象物との距離が離れるほど、図2(a)の下段におけるビート信号の周波数は大きくなる。
【0049】
複数の対象物に対応する信号レベルのピークが複数検出された場合には、上りの部分および下りの部分のピーク値ごとに、周波数が小さいものから順番に番号をつけて、物標出力処理部29へ供給する。ここで、上りおよび下りの部分において、同じ番号のピークは、同じ対象物に対応しており、それぞれの識別番号を対象物の番号とする。
【0050】
受信強度算出部22によるフーリエ変換の結果、図2(b)に示されるように、対象物が1つの場合、上昇領域及び下降領域にそれぞれに1つのピーク値を有することなる。ここで、図2(b)は横軸が周波数、縦軸が信号強度となっている。
【0051】
図3は、複数本のアンテナが配列している面に対して垂直方向の軸に対する反射波の到来角度を算出する方法を示した図である。受信アンテナ1〜1は、図3に示すように、間隔dにより配置されたアレー状のアンテナである。上記受信アンテナ1〜1には、アンテナの配列している面に対する垂直方向の軸との角度φ方向から入射される、対象物からの到来波(入射波、すなわち送信アンテナ3から送信した送信波に対する対象物からの反射波)が入力する。
【0052】
このとき、上記到来波は、上記受信アンテナ1〜1において同一角度φにて受信される。端ともう1端の受信アンテナ間にて発生する受信信号の位相差は、受信信号の周波数f、端ともう1端の受信アンテナ間の間隔dn−1および角度φから、位相差は、2πf・(dn−1・sinφ/C)で算出される。
【0053】
図4は、DBF処理部23による処理を説明するための図である。図4(a)は、受信アンテナが3つの場合における受信強度のテーブルが示されている。インデックスは、0からn−1までの整数であり、周波数すなわち対象物と受信アンテナとの相対距離を反映している。
【0054】
図4(b)の各々の受信強度について、5チャンネルでDBF処理した後の受信強度が示されている。縦軸はインデックスであり、横軸は受信強度である。DBF処理部23は図4(a)における受信強度を、インデックス毎に、5チャンネルでフーリエ変換することにより、インデックス毎の受信強度を算出する。さらに、DBF処理部23は、上記の処理を全インデックスに渡ってすることにより、図4(b)に示されるDBF処理後の受信強度を算出する。
【0055】
続いて、先行カーブ判別処理部28が、前方が右カーブしている道路であるか左カーブしている道路であるか判定する原理について説明する。図5は、カーブ進入直前の相対距離と受信強度との関係を示した図である。図5(a)は、DBF処理後の各チャンネルにおいて、右カーブ進入直前の相対距離と受信強度との関係を示した図である。ここで、対象物に向かって左側のチャンネル(例えば、CH1、CH2)を左チャネルと呼び、対象物に向かって右側のチャンネル(例えば、CH4、CH5)を右チャネルと呼ぶ。
【0056】
図5(a)において、左側のチャンネルから右側のチャンネルになるに連れて、受信強度がピークを取る距離が遠方になっていることが示されている。これは、右カーブでは、右方向ほど壁やガードレール等の反射点が遠方になり、右側のチャンネルになるほど、遠方の反射点から反射された電波を検知するからである。
【0057】
図5(b)は、DBF処理後の各チャンネルにおいて、左カーブ進入直前の相対距離と受信強度との関係を示した図である。左カーブ進入直前の場合、右カーブ進入直前とは逆に、左側のチャンネルから右側のチャンネルになるに連れて、受信強度がピークを取る距離が近傍になっていることが示されている。上記と同様に理由により、左カーブでは、左方向ほど壁やガードレール等の反射点が遠方になり、左側のチャンネルになるほど、遠方の反射点から反射された電波を検知するからである。
【0058】
従って、先行カーブ判別処理部28は、受信強度がピークを取る距離が左側のチャンネルから右側のチャンネルの順に遠くなっていれば右カーブと判別する。逆に、先行カーブ判別処理部28は、受信強度がピークを取る距離が左側のチャンネルから右側のチャンネルの順に近くなっていれば左カーブと判別する。
【0059】
図6は、先行カーブ判別処理部28のブロック構成図である。先行カーブ判別処理部28は、移動物判定部31と、移動物成分除去部32と、代表点抽出部33と、カーブ判定部34と、カーブ道路外判定部35とを備える。
移動物判定部31は、相対速度を示す情報と本実施形態のレーダ装置が取り付けられた車両(以後、自車と称する)の車速を示す情報とに基づいて、対象物が移動物であるか否か判定する。具体的には、例えば、移動物判定部31は、自車の車速をVxとすると、静止物の相対速度は−Vxとなるから、相対速度が−Vxとなるものを静止物と判定する。一方、移動物判定部31は、相対速度が−Vx以外の対象物を移動物と判定する。
【0060】
続いて、移動物成分除去部32の処理の概要について説明する。移動物成分除去部32は、移動物判定部31により対象物に移動物が含まれる場合、DBF処理後の空間複素数データから移動物成分を除去し、移動物成分が除去された空間複素数データを代表点抽出部33へ出力する。移動物成分除去部32の処理の詳細は後述する。
【0061】
代表点抽出部33は、空間複素数データまたは移動物成分が除去された空間複素数データからチャンネル毎に代表点を抽出し、抽出したチャンネル毎の代表点における相対距離を示す情報をカーブ判定部34へ出力する。具体的には、例えば、代表点抽出部33は、チャンネル毎に下記式により相対距離に対する受信強度の分布の重心を算出し、その重心における相対距離を示す情報をカーブ判定部34へ出力する。
【0062】
【数1】

【0063】
ここで、lvはi番目(iは0からn−1までの整数)の相対距離における受信強度であり、Rはi番目の相対距離である。
なお、代表点抽出部33は、代表点として受信強度のピークを抽出してもよい。
【0064】
続いて、カーブ判定部34の処理の概要について説明する。カーブ判定部34は、入力されたチャンネル毎の代表点における相対距離を示す情報を比較することにより、前方が右カーブしている道路であるか、左カーブしている道路であるか、あるいはカーブしていない道路であるか判定する。カーブ判定部34は、判定結果を示す情報をカーブ道路外判定部35に出力する。
【0065】
カーブ道路外判定部35は、判定結果が前方がカーブしている道路であることを示す場合、DBF処理部23により算出された方位毎の関数のうち対象物の方位の関数を抽出し、抽出された関数における代表点の距離と、対象物の相対距離とに基づいて、対象物がカーブの道路外にあるか否か判定する。カーブ道路外判定部35は、判定結果を示す情報を物標出力処理部29に出力する。
【0066】
その際、カーブ道路外判定部35は、検出された相対距離が、抽出された関数における代表点に対応する距離に基づく距離よりも短い場合、対象物をカーブ道路内と判定する。一方、カーブ道路外判定部35は、検出された相対距離が、抽出された関数における代表点に対応する距離に基づく距離以上に長い場合、対象物をカーブ道路外と判定する。
【0067】
続いて、移動物成分除去部32の処理の詳細について説明する。図7は、移動物成分除去部32の処理を説明するための図である。図7(a)は、上り変調時の受信強度と周波数の関係が示された図である。図7(b)は、下り変調時の受信強度と周波数の関係が示された図である。 図7(c)は、上り変調時における受信強度分布から移動物成分が除去された図である。図7(d)は、下り変調時における受信強度分布から移動物成分が除去された図である。
【0068】
自車の車速をVxとした時に、静止物は−Vxの相対速度を持つため、−Vx分のドップラーシフトが生じる。従って、図7(b)の静止物成分の取る周波数帯域は、図7(a)の静止物成分の取る周波数帯域よりも、高い周波数帯域にシフトする。
【0069】
一方、移動物成分が、自車が追従している先行車である場合、相対速度は小さく、ドップラーシフトも小さい。従って、図7(b)の移動物成分の取る周波数帯域は、図7(a)の移動物成分の取る周波数帯域と近い周波数帯域となる。
レーダ検知範囲内に先行車や反対車線を走行する対向車などの移動物が検出された場合には、チャンネル間における受信強度分布の重心における相対距離の関係が崩れることがある。
本実施形態では、カーブ判定部34が、前方がカーブしている道路であるか否か判定する際に、静止物成分のみにするため、移動物成分除去部32は移動物成分を除去する。
【0070】
移動物成分除去部32は、上り変調周波数fを上式(1)と上式(2)とから導かれる以下の式で算出する。
【0071】
【数2】

【0072】
移動物成分除去部32は、下り変調周波数fを上式(1)と上式(2)とから導かれる以下の式で算出する。
【0073】
【数3】

【0074】
移動物成分除去部32は、上式(4)と(5)で算出した上り変調周波数fの周辺と、下り変調周波数fの周辺の受信強度のピーク成分を除去する。その際、移動物成分除去部32は、上り変調周波数f、下り変調周波数fからピークの形状に合わせて、ピークの裾までを除去する。
なお、移動物成分除去部32は、処理負荷を軽減する場合には、上り変調周波数f、下り変調周波数fのそれぞれから前後所定の周波数範囲を除去してもよい。
【0075】
なお、移動物成分除去部32が移動物成分を除去する場合には、DBF処理後の受信強度がピークを取る距離、相対距離、速度の中間データを記憶しておき、その組み合わせた上り変調と下り変調のそれぞれのピークを辿ることで、移動物成分を除去してもよい。
【0076】
続いて、代表点抽出部33の処理の詳細について説明する。図8は、レーダのビーム方向例である。同図において、DBF処理後のレーダのビーム方向に、左から順に1CH、2CH、3CH、4CH、5CHと付けられている。
【0077】
図9は、右カーブ進入直前の相対距離と受信強度の関係の一例である。同図において、チャンネル毎に、受信強度分布の重心の相対距離(例えば、1CHではa、2CHではb、3CHではc、4CHではd、5CHではe)が示されている。
代表点抽出部33は、図9に示すようなチャンネル毎に受信強度分布の重心を代表点として抽出する。そして、代表点抽出部33は、抽出したチャンネル毎の重心の相対距離の大小関係を比較し、a<b<c<d<eであれば右カーブ、逆に、a>b>c>d>eであれば左カーブと判定する。
【0078】
代表点抽出部33が、所定の閾値を超える受信強度のピークを代表点として検出しようとする際には、ピークが閾値を越えない場合に、受信強度のピークを検出できず代表点を抽出できない場合がある。それに対し、代表点抽出部33が、代表点として相対距離に対する受信強度の分布の重心を算出する際には、閾値を設定する必要がないので、必ず代表点として重心を抽出できるという利点がある。
また、受信強度にノイズ成分が重畳しており、受信強度がピークをとる距離を正しく算出できないときであっても、代表点抽出部33は代表点を抽出することができる。これにより、前方がカーブしている道路であるか否かを、測定条件やノイズに対してロバストに判定することができる。
【0079】
なお、この関係は上り変調と下り変調共に同様なので、代表点抽出部33はどちらか一方の周波数解析結果で判別してもよい。また、代表点抽出部33は、相対距離に対する受信強度の分布のピークを代表点として抽出してもよい。
【0080】
続いて、カーブ道路外判定部35の処理の詳細について説明する。図10(a)は、カーブ道路外対象物検出イメージである。同図において、各チャンネルの受信強度分布の重心を示す相対距離(a、b、c、d、e)と検出された物標(TAG1、TAG2)が示されている。
【0081】
図10(b)は、DBF処理後の第3チャンネルの受信強度と相対距離との関係を示した図である。縦軸は受信強度であり、横軸は相対距離である。同図において、受信強度分布の重心の相対距離cと、物標TAG1によるピークと、物標TAG2によるピークとが示されている。ここで、相対距離cは、カーブと判断される一番近傍の距離とは限らない。
【0082】
よって、カーブ道路外判定部35は、相対距離c周辺の盛り上がりの裾のうち相対距離が短いほうの距離R以上の長い距離をカーブ道路外として扱う。カーブ道路外判定部35は、物標TAG1の距離は距離Rより長いので、物標TAG1の対象物をカーブ道路外と判定する。一方、カーブ道路外判定部35は、物標TAG2の距離は距離Rより短いので、物標TAG2の対象物をカーブ道路内と判定する。
なお、カーブ道路外判定部35は、相対距離cを中心にして前後所定の範囲をカーブ道路外と判定してもよい。
【0083】
図11は、レーダ装置の処理の流れを示したフローチャートである。まず、ADC7は、ビート信号がAD変換されたAD変換データを記憶部21に格納する(ステップS101)。次に、受信強度算出部22は、記憶部21からAD変換データを読み出し、そのAD変換データをフーリエ変換することにより、周波数毎の受信強度を算出する(ステップS102)。次に、DBF処理部23は、受信強度算出部22により周波数毎の受信強度に対して、DBF処理することにより、チャネル毎の受信強度と相対距離の関係を算出する(ステップS103)。
【0084】
次に、受信強度算出部22は、上り変調と下り変調の信号レベルのピークを検出する(ステップS104)。次に、上り変調と下り変調の組み合わせにより、距離検出部24は、対象物の相対距離を算出し、速度検出部25は、対象物の相対速度を算出する(ステップS105)。次に、方位検出部26は、対象物の方位を算出する(ステップS106)。
【0085】
次に、物標出力処理部29は、前回までの物標と今回抽出した対象物を関連づける(ステップS107)。次に、先行カーブ判別処理部28は、前方がカーブしている道路であるか否かを判定し、前方がカーブしている道路である場合、対象物がカーブの道路外か否か判定する(ステップS108)。物標出力処理部29は、対象物の中から優先順位の高い物標を抽出し、抽出した物標を外部に出力する(ステップS109)。以上で、本フローチャートを終了する。
【0086】
図12は、先行カーブ判別処理部28の処理の流れを示したフローチャートである。ここでは、DBF処理部23が5チャンネルでDBF処理した場合について、説明する。
まず、移動物判定部31は、物標が静止物のみか否か判定する(ステップS201)。物標が静止物のみの場合(ステップS201 YES)、ステップS203の処理に進む。物標が移動物を含む場合(ステップS201 NO)、DBF処理後の各チャンネルの受信強度と相対距離の関係から移動物成分を除去する(ステップS202)。
【0087】
次に、代表点抽出部33は、チャンネル毎の重心における相対距離(a、b、c、d、e)を算出する(ステップS203)。次に、カーブ判定部34は、a>b>c>d>eであるか否か判定する(ステップS204)。a>b>c>d>eである場合(ステップS204 YES)、カーブ判定部34は、前方が左カーブしている道路であると判定し(ステップS205)、ステップS209の処理に進む。
【0088】
一方、a>b>c>d>eでない場合(ステップS204 NO)、カーブ判定部34は、a<b<c<d<eであるか否か判定する(ステップS206)。a<b<c<d<eである場合(ステップS206 YES)、カーブ判定部34は、前方が右カーブしている道路であると判定し(ステップS207)、ステップS209の処理に進む。
ステップS209において、カーブ道路外判定部35は、各対象物がカーブ道路外に存在するか否か判定する(ステップS209)。
【0089】
一方、a<b<c<d<eでない場合(ステップS206 NO)、カーブ判定部34は、前方がカーブしていない道路であると判定する(ステップS208)。以上で、本フローチャートの処理を終了する。
【0090】
以上により、本実施形態におけるレーダ装置は、前方がカーブしている道路であるか否か判定し、前方がカーブしている道路である場合には、対象物がカーブ道路外に存在するか否か判定することができる。これにより、レーダ装置がカーブ道路外に存在する壁やガードレールなどの構造物を車両の走行軌跡上に存在すると誤認識することを防ぐことができる。
【0091】
さらに、カーブ道路外に存在する壁やガードレールなどの構造物を車両の走行軌跡上に存在すると誤認識することを防ぐことができるので、車間距離警報システムまたは車速制御システムにおけるカーブ進入直前の不要警報または不要ブレーキの作動を防ぐことができる。
【0092】
なお、DBF処理部23は、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)のような高分解能アルゴリズムを用いて、チャネル毎に受信強度と相対距離の関係を算出してもよい。
【0093】
また、受信強度算出部22は、受信された電波の強度(受信強度)を相対距離の関数として算出する際に、レーダ方程式に基づき、受信強度の減衰量を補正してもよい。具体的には、例えば、受信強度算出部22は、実際の受信強度を、レーダ方程式に基づいて算出された理論上の受信強度に置き換えても良い。これにより、対象物との距離が離れるほど距離が減衰してしまうことにより、代表点抽出部33により算出される重心の相対距離が近づくということを防ぐことができる。
【0094】
また、本発明の実施形態では、レーダ装置として電子走査型レーダ装置について説明したが、これに限らず、機械操作式レーダ装置であってもよい。また、本実施形態におけるレーダ装置は、DBF処理後のチャンネル数を5チャンネルにしたがこれに限らず、チャンネル数は複数あればよい。
【0095】
また、本発明の実施形態である信号処理部20の機能またはその機能の一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、その機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバーやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定期間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記のコンピュータプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0096】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0097】
、1 受信アンテナ
、2 ミキサ
3 送信アンテナ
4 分配器
、5 フィルタ
6 SW
7 ADC(受信波取得部)
8 制御部
9 三角波生成部
10 VOC
20 信号処理部
21 記憶部
22 受信強度算出部
23 DBF処理部
24 距離検出部
25 速度検出部
26 方位検出部
27 物標引継ぎ処理部
28 先行カーブ判別処理部
29 物標出力処理部
31 移動物判定部
32 移動物成分除去部
33 代表点抽出部
34 カーブ判定部
35 カーブ道路外判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信する送信アンテナと、
前記送信された電波が対象物により反射された電波を受信する複数の受信アンテナと、
前記受信された電波の方位毎に前記対象物と受信アンテナとの相対距離に対する前記受信された電波の強度の関数を算出するDBF処理部と、
前記受信された電波の方位毎に前記DBF処理部により算出された関数から代表点を抽出する代表点抽出部と、
前記代表点抽出部により抽出された前記受信された電波の方位毎の代表点の距離を比較することにより、前方がカーブしている道路であるか否かを判定するカーブ判定部と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記カーブ判定部は、前記受信された電波の方位毎の代表点の距離が前記対象物を正面にして左側の受信アンテナから右側の受信アンテナの順に遠くなっていれば、前方が右カーブしている道路であると判定し、前記受信された電波の方位毎の代表点の距離が前記対象物を正面にして左側の受信アンテナから右側の受信アンテナの順に近くなっていれば、前方が左カーブしている道路であると判定することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
自レーダ装置を基準とした前記対象物の相対速度を検出する速度検出部と、
前記検出された相対速度と、自レーダ装置が取り付けられた車両の速度とに基づいて、前記対象物が移動物であるか否か判定する移動物判定部と、
前記対象物が移動物と判定された場合、前記DBF処理部により算出された関数から、移動物成分を除去する移動物成分除去部と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記DBF処理部により算出された関数に基づいて、前記対象物が前記カーブの道路外にあるか否か判定するカーブ道路外判定部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記受信された電波の強度に基づいて、前記対象物と前記受信アンテナとの前記相対距離を検出する距離検出部と、
前記DBF処理部により算出された関数に基づいて、前記対象物の方位を検出する方位検出部と、
を備え、
前記カーブ道路外判定部は、前記DBF処理部により算出された方位毎の関数のうち前記対象物の方位の関数を抽出し、抽出された関数における代表点の距離と、前記検出された相対距離とに基づいて、前記対象物が前記カーブの道路外にあるか否か判定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記カーブ道路外判定部は、前記検出された相対距離が、前記抽出された関数における代表点に対応する距離に基づく距離に基づいて、前記対象物をカーブ道路外にあるか否か判定することを特徴とする請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記代表点は、前記DBF処理部により算出された関数の重心であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項8】
受信された電波の方位毎に対象物と受信アンテナとの相対距離に対する受信された電波の強度の関数を算出する第1のステップと、
前記受信された電波の方位毎に前記第1のステップにより算出された関数から代表点を抽出する第2のステップと、
前記代表点抽出部により抽出された前記受信された電波の方位毎の代表点の距離を比較することにより、前方がカーブしている道路であるか否かを判定する第3のステップと、
をコンピュータに実行させるためのカーブ判定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−173152(P2012−173152A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35784(P2011−35784)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(300052246)株式会社ホンダエレシス (105)
【Fターム(参考)】