説明

レーダ装置

【課題】同一ビーム内に複数目標が存在する状況において、角度検出誤差を少なくかつ効率的に目標方向の角度を得る。
【解決手段】目標13からの反射信号はアレーアンテナ14を介し受信部15で受信され、FFT16−1〜16−nで周波数解析される。そして、目標信号は、マルチビーム検出手段18および高分解能処理器19に供給される。マルチビーム検出手段18で形成されたビームにおけるピークをピーク検出手段20が検出し、その信号を高分解能処理器19に供給する。高分解能処理器19は、ピークの周辺について、高分解能処理を行うので、計算量を少なくして、高分解能処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の素子アンテナで受信した信号を用いて、少なくとも目標物体の存在する方向を測定するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、目標を検出するレーダ装置として各種のものが知られている。この中で、複数の受信アンテナを有するホログラフィックレーダ装置が知られており、このホログラフィックレーダ装置では、通常隣接する2つのビームを用いたモノパルス測角により、目標の方向を求める。
【0003】
図7は、特許文献1のホログラフィックレーダ装置を示す。送信部1は、発振器1aと送信機1bを有しており、発振器1aにおいて得られた送信信号が送信機1bを介し、送信アンテナ2に供給され、送信アンテナ2から所定周波数の電波が車両前方に放射される。目標3により反射された反射波は、n個の素子アンテナA#1〜A#nから構成されるアレーアンテナ4によって受信される。このアレーアンテナ4には、n個の個別受信部RM#1〜RM#nから構成される受信部5に接続されており、各素子アンテナA#1〜A#nからの受信波が対応する個別受信部RM#1〜RM#nにより信号処理される。なお、個別受信部RM#1〜RM#nは、それぞれ受信波を電力増幅する低雑音増幅器5a、増幅信号を発振器1bからの送信信号と混合して送信信号と反射信号との差信号を得る合成器5bと、合成器5bからのアナログの差信号をデジタル信号に変換するA/D変換器5cからなっている。
【0004】
各個別受信部RM#1〜RM#nにおいて、復調されたデジタル信号は、高速フーリエ変換による周波数分析を行うFFT6−1〜6−nに供給され、その処理結果は、すべてデジタルマルチビーム形成手段7に供給される。マルチビーム形成手段7は、目標3へのマルチビームを形成し、各マルチビームについてマルチビーム測角手段8において目標3の角度を検出する。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−186176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、図7のマルチビーム測角手段とはモノパルス測角を複数の方位に対して連続的に行うもので基本原理はモノパルス測角法である。
【0007】
このモノパルス測角は、単一目標の角度を検出するレーダ装置には、演算速度及び精度面において有効な方式である。しかし、同一ビーム内に複数目標が存在する場合、目標の検出角度誤差が大きく、検出精度の劣化が生じていた。
【0008】
モノパルス測角には、位相モノパルス方式と、振幅モノパルス方式がある。位相モノパルス測角では、ビーム方向が等しい2つのビームを使用してその位相差から電波の到来方向を検出する。一方、振幅モノパルスでは、ビーム方向の異なる2つのビームを使用して、その振幅和および差の比から電波到来方向を推定する。
【0009】
従って、同一ビーム内に2つの目標が存在する場合には、受信波が2つの目標からの反射波の合成されたものになっており、これらを分離して2つの目標についてそれぞれ正しい方向を検出することは難しかった。
【0010】
例えば、車載レーダでは、複数車線の道路を走行中などに、先行車両が2つ以上あり、それぞれからの反射波が到来する場合も多い。このような場合に、モノパルス測角では、正しい目標検出が行えないという問題があった。
【0011】
この発明は、上記課題を解決し、同一ビーム内に複数目標が存在する状況において、角度検出誤差を少なくかつ効率的に目標方向の角度を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数の素子アンテナで受信した信号を用いて、少なくとも目標物体の存在する方向を測定するレーダ装置に関し、マルチビーム形成後に受信レベルのピーク検出を行うピーク検出手段と、このピーク検出手段の検出結果を用いて受信信号について高分解能処理演算を実施し目標存在角度を検出する高分解能処理手段とを備える。
【0013】
このように、マルチビーム形成後のピーク検出結果を用いて受信信号について高分解能処理演算を実施するため、高分解能処理演算をピークの周辺に限定することができる。従って、高分解能処理演算の演算量を減少して、高分解能ながら効率的な目標検出を行うことができる。なお、高分解能処理演算としては、最尤推定法、MUSIC法等が好適である。
【0014】
さらに、受信信号に対しモノパルス演算を実施しΣ信号とΔ信号を形成し、得られたΣ信号及びΔ信号から目標存在方向を検出するモノパルス測角手段と、このモノパルス測角手段により算出した角度誤差結果から目標存在数を判定し、この判定結果に基づいて上記高分解能測角手段を用いるか否かを選定する選定手段と、をさらに備えることが好適である。これによって、高分解能処理演算が必要ない場合には、モノパルス測角を用いることができる。すなわち、目標存在数が複数のときに高分解能処理手段を選定することで演算量を減少して効率的な目標物の角度検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、ピーク検出手段の検出結果を用いて受信信号について高分解能処理演算を実施する。従って、高分解能処理を効率的に実施することができ、1つのビーム内の複数の目標を効率的に分離することができる。
【0016】
また、高分解能処理手段は、ピーク検出手段により検出されたピークの周辺に限定して高分解能処理を行うことで、高分解能処理をより効率的に行うことができる。
【0017】
また、処理範囲を限定して最尤推定法により高分解能処理を行うことにより、計算負荷を抑制しつつ、高精度の測角を行うことができる。
【0018】
また、受信信号に対しモノパルス演算を実施しΣ信号とΔ信号を形成し、得られたΣ信号及びΔ信号から目標存在方向を検出するモノパルス測角手段と、このモノパルス測角手段により算出した角度誤差結果から目標存在数を判定し、この判定結果に基づいて上記高分解能測角手段を用いるか否かを選定する選定手段と、をさらに備えることで、目標数に応じていずれかの測角手段を利用することができ、効率的な目標の方向検出が行える。
【0019】
また、前記選定手段は、モノパルス測角手段により判定した目標存在数が1つのときにモノパルス測角手段の測角結果を選定し、目標存在数が複数のときに高分解能処理手段を選定することで、目標が1つの時に、簡単な演算で目標の方向を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0021】
実施の形態1.
図1に本発明の実施の形態1の構成を示す。送信部11は、発振器11aと送信機11bを有しており、発振器11aにおいて得られた送信信号(所定の繰り返し周波数で周波数が上下するFMCW波)が送信機11bを介し、出力される。この実施の形態では、FMCW方式を用いており、発振器11aは、一定の繰り返し周期で周波数変調された送信周波数fRFの送信信号を発生する。この送信信号は、送信機11bで電力増幅された後送信アンテナ12され、ここから目標に向けられて放射される。この実施形態のレーダ装置は、車載されたもので、車両前方に向けて放射される。
【0022】
送信アンテナ12の前方に目標13(この例では、目標1と目標2の2つ)が存在すると、この目標13で反射された反射波がn個の素子アンテナA#1〜A#nから構成されるアレーアンテナ14によって受信される。このアレーアンテナ14には、n個の個別受信部RM#1〜RM#nから構成される受信部15に接続されており、各素子アンテナA#1〜A#nからの受信波が対応する個別受信部RM#1〜RM#nにより信号処理される。個別受信部RM#1〜RM#nは、それぞれ受信波を電力増幅する低雑音増幅器15a、増幅信号を発振器11bからの送信信号と混合して送信信号と反射信号との差信号であるビート信号を得る合成器15b、合成器15bからのビート信号をデジタル受信信号に変換するA/D変換器15cからなっている。
【0023】
各個別受信部RM#1〜RM#nにおいて、得られたビート信号は、A/D変換器15cでデジタル信号X1〜Xnに変換される。A/D変換器15cからのデジタル信号X1〜Xnは、FFT16−1〜16−nにそれぞれ供給され、ここで高速フーリエ変換による周波数分析が行われる。
【0024】
ここで、この実施の形態は、FMCWレーダ装置であり、目標13が移動している場合には反射信号にドップラー周波数が現れる。また、FM−CWレーダで一般的に行われているリニアチャープの周波数変調が掛けられている場合にはドップラー周波数に加えて距離遅延分の周波数が含まれている。すなわち、送信信号は、図2(a)に実線で示されるように、周波数が直線的に上昇する期間(upチャープ)と、下降する期間(downチャープ)を繰り返す。そして、反射信号は、図2(a)に破線で示すように、送信信号に比べ、その周波数が相対速度によりドップラー周波数だけシフトするとともに、相対距離に応じて遅延する。
【0025】
従って、送信信号と反射信号の周波数の差(ビート信号)の周波数は、upチャープ期間はfb1、downチャープ期間はfb2となる。すなわち、遅延時間に基づく周波数差にドップラー周波数が重畳された信号が得られる。なお、図2(a)の場合には、反射信号の方が送信信号より周波数が高くなっており、相対距離が小さくなる方向(接近方向)の相対速度を示している。
【0026】
そして、FFT16−1〜16−nにおいて、図2(b)に示すようなビート信号が得られる。そこで、この信号が距離・速度算出手段30に供給され、ここでFM−CWレーダの原理により目標の距離と速度が求められる。
【0027】
ここで、この実施の形態では、FFT16−1〜16−nからのビート信号の周波数成分についてのデジタル信号X1,X2,・・・Xnは、目標信号抽出手段17に供給される。目標信号抽出手段17では、ビート信号におけるピークである周波数fb1、fb2の信号の複素データの抽出を素子アンテナA#1〜A#n毎に行う。そして、得られた周波数fb1またはfb2の複素データ(X1〜Xn)を素子アンテナ数分集めてマルチビーム形成手段18および高分解能処理器19に供給する。
【0028】
マルチビーム形成手段18は全方位について複数のアンテナビームを指向させる。すなわち、アンテナを2つで1つの電波のみが到来すると仮定し、両アンテナ間の間隔をd、両アンテナを結ぶ線に垂直な方向対する受信波の到来方向をθ、受信波の波長をλとした場合に、図3に示すように、両アンテナにおいて得られる受信信号の位相差φは、φ=(2π/λ)dsin(θ)となる。従って第1のアンテナにおけるある時点の受信波の振幅がA(t)であるとすると、同時点における第2のアンテナにおける振幅は、A(t)exp[j(2π/λ)dsin(θ)]となる。
【0029】
従って、各素子アンテナA#1を基準として、これに対する各素子アンテナA#2〜A#nの距離をid(素子間距離はすべてd)とすれば、各素子アンテナA#2〜A#nでの振幅は、A(t)exp[j(2π/λ)(1−i)dsin(θ)]となる。
【0030】
また、到来方向θ1,θ2の2つの方向から電波が到来し、アンテナA#1における振幅がA(t)、B(t)であれば、同時点における素子アンテナA#2における振幅は、A(t)exp[j(2π/λ)dsin(θ)],B(t)exp[j(2π/λ)dsin(θ)]となり、素子アンテナA#nにおける振幅は、A(t)exp[j(2π/λ)ndsin(θ)],B(t)exp[j(2π/λ)ndsin(θ)]となる。
【0031】
実際の各素子アンテナA#1〜A#nの受信信号X1〜Xnは、これらの反射波にノイズが加算されたものである。
【0032】
そこで、マルチビーム形成手段は、受信信号X1〜Xnに、ビーム方向ψとして、このψを順次変更しながら、exp[−j(2π/λ)(i−1)dsinψ]を乗算して、順次出力する。
【0033】
このマルチビーム形成手段18の出力は、ピーク検出手段20に供給される。ピーク検出手段20は、マルチビーム形成手段18の出力を角度方向に並べ極大点を検出する。すなわち、ビーム方向ψと受信波到来方向θ1,θ2が一致したときに計算上はexpの指数項が0になり振幅がそのまま出力されるからである。
【0034】
ピーク検出手段20は、極大点が見つかるとその方位を高分解能処理器19に供給する。
【0035】
高分解能処理器19は、極大点の左右数点について目標の到来方位を仮定し、最尤推定法やMUSIC(Multiple Signal Classification)法などを用いて、高分解能で複数の目標からの反射波を分離する処理を行う。
【0036】
最尤推定法を用いた場合には、次のように演算を行う。例えば、受信波がm個、各素子アンテナ間の距離がd、各素子アンテナの受信信号がX1〜Xnであったとする。この場合に、FFTで得られるそれぞれの素子アンテナからの複素振幅情報をS1〜Smとすると各受信信号は以下のように表現される。
【数1】

【0037】
これらを行列表現すると、以下の通りになる。
【数2】

【0038】
従って、考え得るすべてのθ1〜θmの組合せにおいて、実測値と理論値の誤差εが最小になるθ1〜θmの組合せを求めれば、その結果により、複数の到来波について分離して検出することができる。すなわち、
【数3】

となるようなθ1〜θmの組合せを求めればよい。
【0039】
なお、式を展開すると、
【数4】

となる。従って、楕円で囲ったA(AHA)−1Hの部分は、考え得るθ1〜θmの組合せにおいて、予め計算しテーブルに持っておくことができ、これによって高分解能処理器19における演算を効率的に行える。
【0040】
そして、この実施の形態では、高分解能処理器19にピーク検出手段20からピークについての信号が供給されている。そこで、θ1〜θmについて、ピーク周辺に限定して処理が行える。これによって、目標物の検出範囲すべてについて、θ1〜θmを変更する場合に比べ、その計算量を減少することができ、効率的な検出が行える。
【0041】
なお、MUSIC法を利用した場合にも、ピーク周辺の検出に限定することで、効率的な高分解能処理を行うことができる。
【0042】
このように、この実施形態によれば、各素子アンテナで受信した受信信号をもとに全方位について複数のアンテナビームを指向させ、目標信号がもっとも強く受けるアンテナビームを検索し、そのアンテナビーム周辺について最尤推定法を応用した測角方式を適用する。これによって計算負荷を抑制しつつ、高精度の測角を行うことができる。すなわち、この方式ではアンテナビーム幅内にある2つ以上の目標についてそれぞれ角度を求めることができる。
【0043】
実施の形態2.
図4に本発明の実施の形態2の構成を示す。上述の実施の形態1ではすべてのピークのアンテナビーム方向に対して最尤推定法を適用しているが、実施の形態2では、最尤推定法を適用する前にモノパルス演算により1目標か否かを判定し、1目標であればモノパルス測角、2目標以上であれば最尤推定法を適用する。最尤推定法はモノパルス測角に比べて格段に時間がかかるため、2つの方法を併用することにより演算時間を短くすることができる。なお、図1の実施の形態1と同一の部材については、同一の名称を付し説明を省略する。
【0044】
このマルチビーム形成手段18の出力は、モノパルス演算器21に供給される。このモノパルス演算器21ではマルチビーム形成手段18の出力X1〜Xnをもとに、全素子アンテナA#1〜A#nからの信号の和であるΣ信号と素子アンテナを真ん中より2グループに分けて片方のグループの和からもう片方のグループの和を引き算したΔ信号を算出する。
【0045】
すなわち、素子アンテナA#1〜A#nを2つのグループ(アンテナ1、アンテナ2)に分け、それぞれ別個にΣ信号、A、Bを得る。例えば、A、Bは、次のように表される。
【数5】

【0046】
このようにして、積算して2つの信号にまとめることによって、得られた2つの信号A,Bは2つのアンテナから得られた2つの受信信号と実質的に同一である。従って、1つの受信波の到来方向がθであれば、上述のように2つの信号の位相差φ=(2π/λ)dsinθとなる。
【0047】
そこで、アンテナ1の出力A(t)とすれば、アンテナ2の出力は、A(t)exp[jφ]となり、従って、両者の和Σ=A(t)exp[jφ]+A(t)、両者の差Δ=A(t)exp[jφ]−A(t)となる。
【0048】
そして、このΣとΔを角度検出器22に供給する。角度検出器22は、ΣとΔの比Δ/Σを求めその値から到来角度を求める。
【0049】
すなわち、アンテナボアサイトからの到来波の場合には、Σ信号はボアサイトが大きくなるアンテナ1、アンテナ2の振幅値は、それぞれのボアサイトからずれた方向が最大となる。そして、この関係から、Δ/Σ(誤差電圧)は、図5(b)のようになり、Δ/Σの値から、目標のアンテナ4全体のボアサイトからのずれ(目標の角度Δεm)を検出することができる。すなわち、出力Σ信号とΔ信号の比を算出し誤差電圧を求め、アンテナボアサイトからのずれを計算し、測角値として算出する。
【0050】
このとき、図5(a)のΣ信号の曲線内に目標が1つしかない場合には目標の方位は一意に決るが、2目標以上の場合にはそれぞれの目標からの反射信号が合成された形になるため、角度を特定することができない。そこでΣ信号とΔ信号で計算する誤差信号Δ/Σの特性に着目し、1目標であるか、2目標以上であるかの判別を行う。
【0051】
ここで、図6に示すように同一ビーム内に2目標存在した場合について考える。2つの電波がθa、θbの角度から到来し、これを素子間距離dの2つのアンテナで受信した場合、ある時点における1つのアンテナにおける振幅がA(t)、B(t)であるとすると、同時点におけるもう1つのアンテナにおける振幅は、A(t)exp[j(2π/λ)dsin(θ)],B(t)exp[j(2π/λ)dsin(θ)]となる。ここで、φ1=(2π/λ)dsin(θ),φ2=(2π/λ)dsin(θ)とすると、誤差電圧Δ/Σは、次のように表される。
【数6】

【0052】
従って、cos(φ1−φ2)=1、すなわちφ1−φ2=2πn(n=0、1、2、・・・)が成り立つときにのみ実部がなくなるが、これは2つの電波が同一方向から到来する電波であることを意味する。
【0053】
そこで、位相モノパルスにおいて、2ビームのΔ/Σを求め、その結果から実部を持つか否かを調べることで、到来電波が1波か2波以上かを判別することができる。
【0054】
そこで、角度検出器22は、この中間データを目標数判定器23に供給する。目標数判定器23は角度検出器で算出された誤差電圧Δ/Σの虚数部の値によりゼロ付近であれば1目標、値が大きければ2目標以上であると判定する。
【0055】
2目標以上と判定した場合には目標信号抽出手段17で目標の周波数fb1またはfb2の複素データを素子アンテナ数分集めて高分解能処理器に送る。高分解能処理器19では、実施の形態1の場合と同様に目標の方位を求める。
【0056】
さらに、セレクタ回路24では、目標数判定器23からの信号により目標数が1の場合には角度検出器22からの測角データを選択し、目標数が2以上の場合には高分解能処理器19からの測角データを選択して出力する。
【0057】
この実施の形態では、単一目標が存在する場合には従来のモノパルス測角方式に、複数目標が存在する場合には角度分解能を向上させる高分解能測角方式に切り換えることができるため、同一ビーム内に存在する複数目標に対し、角度検出誤差が少なく検出可能となる。更に、上記2種類の測角方式を切り換えて運用するため、処理負荷のかかる高分解能測角方式を常時使用する必要がなく、レーダ装置として効率的な運用が可能となる。
【0058】
なお、上述の実施の形態では、FMCW方式を採用したが、スペクトル拡散方式など別の方式でも同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】FMCW方式の送受信波の時間変化およびビート信号の周波数を示す図である。
【図3】位相モノパルスの原理を示す図である。
【図4】実施の形態2に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図5】角度に対する振幅値および角度に対する誤差電圧Δ/Σの関係を示す図である。
【図6】1つのビーム内に複数目標が入った場合の振幅値を示す図である。
【図7】従来例に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
11 送信部、12 送信アンテナ、13 目標、14 アレーアンテナ、15 受信部、16−1〜16ーn FFT、17 目標信号抽出手段、18 マルチビーム形成手段、19 高分解能処理器、20 ピーク検出手段、21 モノパルス演算器、22 角度検出器、23 目標数判定器、24 セレクタ回路、30 距離・速度算出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素子アンテナで受信した信号を用いて、マルチビームを形成するマルチビーム形成手段と、
前記マルチビーム形成手段によるマルチビーム形成後に、受信レベルのピーク検出を行うピーク検出手段と、
前記受信した信号について前記ピーク検出手段により検出された受信レベルのピークとなる方位周辺に限定し、最尤推定法を応用して高分解能で測角処理を行う高分解能測角処理手段とを備え、
前記複数の素子アンテナの受信信号X1〜Xn(nは自然数)と、前記複数の素子アンテナからの複素振幅情報S1〜Sm(mは自然数)との関係から行列表現されるX=ASを用いた、実測値と理論値との誤差が最小となる受信波の到来方向θ1〜θmの組み合わせmax[tr[A(AHA)-1HXXH]]のうち、
A(AHA)-1Hを予めテーブル化して前記テーブルを用いて高分解能で測角処理を行うこと
を特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記マルチビーム形成手段によるマルチビーム形成後にモノパルス測角を行うモノパルス測角手段と、
前記モノパルス測角手段により算出した角度誤差結果から目標存在数を判定し、この判定結果に基づいて受信信号について高分解能測角処理を行うか否かを選定する選定手段とを更に備え、
前記選定手段は、モノパルス測角手段により判定した目標存在数が1つのときにモノパルス測角手段の測角結果を選定し、目標存在数が複数のときに高分解能処理手段を選定することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
複数の素子アンテナで受信した信号を用いて、マルチビームを形成するマルチビーム形成手段と、
前記マルチビーム形成手段によるマルチビーム形成後に、受信レベルのピーク検出を行うピーク検出手段と、
前記受信した信号について前記ピーク検出手段により検出された受信レベルのピークとなる方位周辺に限定して高分解能で測角処理を行う高分解能測角処理手段とを備え、
前記マルチビーム形成手段により形成されたマルチビームに対しモノパルス演算を実施してΣ信号とΔ信号を形成し、得られたΣ信号及びΔ信号の比から目標存在数を判定し、この判定結果に基づいて上記高分解能処理手段を用いて高分解能で測角処理をさせるか否かを選定する選定手段と、
を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項4】
FMCW波を送信する送信アンテナを備え、
前記送信アンテナから送信され、目標で反射されて複数の素子アンテナで受信された信号を用いて、少なくとも目標物体の存在する方向を測定する請求項1から請求項3のいずれかに記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−91029(P2006−91029A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370922(P2005−370922)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【分割の表示】特願2001−332244(P2001−332244)の分割
【原出願日】平成13年10月30日(2001.10.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】