説明

レーダ装置

【課題】複数の対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定することのできるレーダ装置を提供する。
【解決手段】ステップチャープ法で測定した相対距離に基づき、それぞれの対象物との相対距離を最尤推定するための推定範囲を決定する。そして、測定するときに受信した反射信号と送信信号とを混合した混合信号を示す信号関数を生成する。推定範囲内で生成した仮定距離に基づき信号関数を示す関数の候補となる信号関数候補を生成し、生成した信号関数候補の中で信号関数を示す信号関数候補を特定する。特定した信号関数候補に代入した略同一の仮定距離を対象物との相対距離として最尤推定する。さらに、推定した相対距離に基づき対象物との相対速度も推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置に関し、より特定的には、自動車などの移動体に搭載されるレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの移動体には、対象物を検出したときに衝突の危険性を運転者に知らせる、或いは衝突を回避するように自動車を自動制御するためにレーダ装置が搭載されている。このようなレーダ装置の一例として、例えば、特許文献1に記載のレーダ装置(以下、従来技術と称する)が挙げられる。
【0003】
従来技術では、従来周知のFM−CW方式で対象物との相対距離、及び相対速度を測定している。さらに、従来技術では、送信信号と反射信号とを混合したビート信号に基づいた最尤推定法を用いることにより測定範囲内に存在する複数の対象物の存在する相対距離をそれぞれ精度よく測定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−139849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、複数の対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定することができない。それ故に、本発明は、複数の対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定することのできるレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下に示すような特徴を有する。
第1の発明は、予め定められた周期で周波数が間欠的に変化するステップチャープ信号を送信し、送信したステップチャープ信号が対象物で反射した反射信号を受信する送受信手段と、ステップチャープ信号と反射信号とを混合信号として混合する混合手段と、混合信号に基づき最尤推定法を用いて1以上の対象物との相対距離をそれぞれ推定する距離推定手段と、距離推定手段が最尤推定法を用いて相対距離を推定するときに推定した混合信号の振幅に基づき、距離推定手段によって推定された相対距離に存在する1以上の対象物との相対速度をそれぞれ推定する速度推定手段とを備える。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、距離推定手段は、混合信号を解析することによって、当該混合信号を近似して示す関数を信号関数として導出する解析手段と、対象物との相対距離を予め定められた手法で仮定した仮定距離を用いることにより、信号関数の候補を信号関数候補として生成する信号候補生成手段と、信号関数を示す信号関数候補を生成するのに用いた仮定距離に基づき対象物毎の相対距離を最尤推定する距離最尤推定手段とを含む。
【0008】
第3の発明は、上記第2の発明に従属する発明であって、信号候補生成手段は、それぞれの対象物が反射した反射信号を個別にステップチャープ信号と混合した当該対象物毎に対応する個別混合信号を示す個別信号関数の総和で示される信号関数候補を仮定距離を用いることによって生成する。
【0009】
第4の発明は、上記第3の発明に従属する発明であって、信号候補生成手段は、予め想定した想定数の対象物との仮定距離を生成する仮定距離生成手段と、仮定距離に基づき個別信号関数の振幅を当該仮定距離にそれぞれ対応させて決定する振幅決定手段と、仮定距離と当該仮定距離にそれぞれ対応する振幅とを含む個別信号関数の総和を信号関数候補として生成する総和生成手段とを含む。
【0010】
第5の発明は、上記第4の発明に従属する発明であって、仮定距離生成手段は、想定数の仮定距離をグループに纏め、当該グループ同士で互いに異なる仮定距離を含むように仮定距離を生成し、総和生成手段は、グループ毎に纏められた仮定距離と当該仮定距離にそれぞれ対応する振幅とをそれぞれ含む個別信号関数の総和を信号関数候補として当該グループ毎に対応させて生成する。
【0011】
第6の発明は、上記第5の発明に従属する発明であって、距離最尤推定手段は、総和生成手段によって生成された信号関数候補の中で信号関数を示す信号関数候補に対応するグループを特定し、特定したグループに含まれる仮定距離に基づき対象物のそれぞれとの相対距離を最尤推定する。
【0012】
第7の発明は、上記第6の発明に従属する発明であって、混合信号に基づき対象物との相対距離を測定する距離測定手段をさらに備え、距離推定手段は、距離測定手段によって測定された相対距離を基準とし、分解能を基準とした広さの相対距離の範囲内に存在する対象物との相対距離を最尤推定する。
【0013】
第8の発明は、上記第6の発明に従属する発明であって、速度推定手段は、距離最尤推定手段が相対距離を最尤推定するのに用いた仮定距離と対応付けられた振幅に基づき、対象物との相対速度を推定する。
【0014】
第9の発明は、上記第8の発明に従属する発明であって、速度推定手段は、距離最尤推定手段によって信号関数を示す信号関数候補を生成するために用いられた仮定距離をそれぞれとの相対距離として推定した対象物と当該仮定距離とを対応付ける距離対応付け手段と、距離対応付け手段によって対象物に対応付けられた仮定距離に対応付けられた振幅を示す振幅関数と、当該対象物とをそれぞれ対応付ける振幅対応付け手段と、振幅対応付け手段によって対象物に対応付けられた振幅関数と、以前に対応付けられた振幅関数とを比較することにより当該対象物との相対速度を推定する。
【0015】
第10の発明は、上記第5の発明に従属する発明であって、混合信号に基づき対象物との相対距離を測定する距離測定手段と、予め定められた数の周波数でステップチャープ信号を送信したときのそれぞれの混合信号の強度差が略ゼロであるか否かを判断する第1の判断手段と、第1の判断手段によって強度差が略ゼロでないと判断されたとき、強度差の中で予め定められたしきい値を超える強度差が存在するか否かを判断する第2の判断手段と、距離測定手段によって測定された相対距離に対応する予め定められたしきい値を第1の判断手段で判断した混合信号の強度が超えているか否かを判断する第3の判断手段と、第1の判断手段、第2の判断手段、及び第3の判断手段の少なくともいずれか1つの判断結果に基づき想定数を予め想定する想定手段とをさらに備え、仮定距離生成手段は、想定手段によって想定された数の対象物との仮定距離を生成する。
【0016】
第11の発明は、上記第10の発明に従属する発明であって、想定手段は、第1の判断手段によって強度差が略ゼロであると判断されたとき、及び第1の判断手段で判断した混合信号の強度が、距離測定手段によって測定された相対距離に対応するしきい値を超えていないと第3の判断手段によって判断されたとき、想定数を1として予め想定する。
【0017】
第12の発明は、上記第10の発明に従属する発明であって、想定手段は、第2の判断手段によってしきい値を超える強度差が存在すると判断されたとき、及び第1の判断手段で判断した混合信号の強度が、距離測定手段によって測定された相対距離に対応するしきい値を超えていると第3の判断手段によって判断されたとき、想定数を2として予め想定する。
【0018】
第13の発明は、上記第11の発明に従属する発明であって、想定手段によって想定数が1であると想定されたとき、周期を通じてそれぞれ混合された混合信号の振幅と、距離推定手段が最尤推定法を用いて相対距離を推定するときに推定した混合信号の振幅とをそれぞれ比較する比較手段と、比較手段によって比較された振幅がそれぞれ略一致したとき距離最尤推定手段によって推定された相対距離が誤推定でないと判断する第4の判断手段とをさらに備える。
【0019】
第14の発明は、上記第12の発明に従属する発明であって、想定手段によって想定数が2であると想定されたとき、周期を通じてそれぞれ混合された混合信号の振幅の最大値と最小値とに基づき、当該対象物のそれぞれに対応する個別信号関数に含まれる振幅を予め推定する事前振幅推定手段と、距離推定手段が最尤推定法を用いて相対距離を推定するときに推定した混合信号の振幅と、事前振幅推定手段によって推定された振幅とをそれぞれ比較する比較手段と、比較手段によって比較された振幅がそれぞれ略一致したとき距離最尤推定手段によって推定された相対距離が誤推定でないと判断する第4の判断手段とをさらに備える。
【0020】
第15の発明は、上記第5の発明に従属する発明であって、距離最尤推定手段は、信号候補生成手段によって生成された信号関数候補の中で信号関数に最も近い信号関数候補に対応するグループを特定するとき、当該信号交換数候補と信号関数との差の自乗が最も小さい信号関数候補に対応するグループを特定する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定することのできるレーダ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るレーダ装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明で生成するステップチャープ信号の一例を示す図
【図3】本発明における測定範囲の一例を示す図
【図4】第1の実施形態に係る信号処理部の処理を示すフローチャート
【図5】本発明で測定する相対距離、及び推定範囲をそれぞれ説明する図
【図6】第2の実施形態に係る信号処理部の処理を示すフローチャート
【図7A】決定する仮定距離の範囲の一例を示す図
【図7B】決定する仮定距離の範囲の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置1の概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係るレーダ装置1は、制御電圧発生器101と、VCO(Voltage Controlled Oscillator :電圧制御発振器)102と、第1の増幅器103と、送信アンテナ104と、受信アンテナ105と、第2の増幅器106と、混合器107と、LPF(Low Pass Filter:ローパスフィルタ)108と、ADC(Analog Digital Converter)109と、信号処理部110とを備える。
【0024】
制御電圧発生器101は、後述するVCO102に必要な周波数の信号を生成させる。制御電圧発生器101は、VCO102によって生成される信号の周波数に比例する電圧を生成する。VCO102は、制御電圧発生器101によって生成される電圧に応じた周波数の信号を送信信号として生成する。
【0025】
図2は、本実施形態に係るVCO102が制御電圧発生器101によって生成される電圧に応じて生成する送信信号の周波数の遷移の一例を示す図である。本実施形態に係るVCO102は、予め定められた下限の周波数f1(以下、下限周波数f1と称する)から、予め定められた上限の周波数fl(以下、上限周波数flと称する)までのk種類の周波数を予め定められた周期Tで間欠的に繰り返し変化させながら信号を生成する。VCO102は、信号を送信信号として生成する。
【0026】
より詳細には、本実施形態に係るVCO102は、前述の周期Tの開始タイミングが到来したとき、周波数を下限周波数f1から上限周波数flまで間欠的に周波数間隔Δfsずつ増加させながら送信信号を生成する。上限周波数flまで周波数を増加させると、VCO102は、前述の周期Tの終了タイミングが到来したときに、周波数が下限周波数f1になるように周波数間隔Δfsずつ間欠的に減少させながら送信信号を生成する。本実施形態に係るVCO102は、制御電圧発生器101によって生成される電圧に応じて、上述したように周波数の変化する所謂ステップチャープ信号を送信信号として生成する。尚、下限周波数f1から上限周波数flまでの周波数範囲ΔFは任意の範囲であってよい。また、周波数間隔Δfsは任意の間隔であってよい。
【0027】
第1の増幅器103は、予め定められた増幅率でVCO102によって生成される送信信号を増幅する。送信アンテナ104は、第1の増幅器103で増幅された送信信号を空間に放射して送信する。受信アンテナ105は、送信アンテナ104から送信された送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する。第2の増幅器106は、受信アンテナ105で受信した反射信号を予め定められた増幅率で増幅する。混合器107は、第2の増幅器106で増幅された反射信号とVCO102で生成された送信信号とを混合して、互いの信号の周波数差の周波数を有する混合信号を生成する。LPF108は、混合器107で生成された混合信号の中で予め定められた周波数帯域の混合信号のみを濾波して通過させる。ADC109は、LPF108を通過した混合信号を予め定められたサンプリングレートで量子化してデジタル信号に変換する。信号処理部110は、ADC109でデジタル信号に変換された混合信号を取得して処理することによって、対象物との相対距離、及び相対速度を測定、或いは推定する。信号処理部110の詳細な説明は後述する。
【0028】
尚、以下では、本実施形態に係るレーダ装置1が自動車などの移動体(以下、自車両と称する)に搭載されている場合を一例として説明する。そして、本実施形態では、図3に一例として示すように、送信アンテナ104が送信信号を自車両の正面に向かって放射状に送信できるように自車両の前方のバンパーの周辺に搭載されており、受信アンテナ105は送信アンテナ104から送信された送信信号が対象物で反射した反射信号を受信できるように自車両に搭載されているものとする。また、図3に示す測定範囲Shは、上述したように自車両に搭載された送信アンテナ104から送信される送信信号の送信範囲の内、対象物で反射した当該送信信号を前述の反射信号として受信できる範囲の一例を示す。
【0029】
ただし、上述した送信アンテナ104、及び受信アンテナ105の自車両における搭載箇所は一例であって、必要とする測定範囲に存在する対象物に送信信号を送信アンテナ104から送信でき、当該対象物で反射した反射信号を受信アンテナ105で受信できるのであれば、自車両におけるそれぞれの搭載箇所は任意であってよい。
【0030】
以上が、本実施形態に係るレーダ装置1の概略構成の説明である。次に、本実施形態に係る信号処理部110についてより詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る信号処理部110の処理を示すフローチャートである。本実施形態に係るレーダ装置1では、当該レーダ装置1への給電が開始されると信号処理部110が図4のフローチャートに示す処理を開始すると共に、他の構成も上述した動作を開始する。そして、レーダ装置1への給電が停止されると信号処理部110は図4のフローチャートに示す処理を停止すると共に、他の構成も動作を停止する。尚、レーダ装置1への給電が開始されるタイミングは、当該レーダ装置1が上述したように自車両に搭載される場合には、イグニッションスイッチ、或いはアクセサリースイッチがオンになったときが一例として挙げられる。一方、レーダ装置1への給電が停止されるタイミングは、当該レーダ装置1が上述したように自車両に搭載される場合には、イグニッションスイッチ、或いはアクセサリースイッチがオフになったときが一例として挙げられる。以下、図4に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る信号処理部110について詳細に説明する。
【0031】
ステップS101において、信号処理部110は、前述の周期Tの開始タイミングから終了タイミングまでの期間を通じて混合器107によって生成された送信信号に基づき、ステップチャープ信号を用いた従来周知の手法(以下、ステップチャープ法と称する)を用いて対象物との相対距離を測定する。信号処理部110は、ステップS101の処理を完了すると、ステップS102へ処理を進める。
【0032】
ステップS102において、信号処理部110は、後述するように対象物との相対距離を推定するための推定範囲をステップS101で測定した相対距離に基づいて決定する。より詳細には、信号処理部110がステップS101において相対距離の測定に用いるステップチャープ法では、測定できる相対距離の精度に限界がある。すなわち、ステップチャープ法では、前述の周波数範囲ΔFに応じた分解能で相対距離を測定できるが、図5に示すように分解能に等しい距離範囲ΔDよりも細かく相対距離を測定することができない。したがって、ステップチャープ法では、ある距離範囲ΔDの中に複数の対象物が存在していたとしても、これらの対象物毎の相対距離を測定することができず、同一の相対距離がこれらの対象物との相対距離として測定されてしまう。図5に示す例において、ステップチャープ法を用いて相対距離を測定すると、真の相対距離D1と真の相対距離D2とに対象物(他車両)がそれぞれ存在するにも拘わらず、測定結果は相対距離D3となる。
【0033】
そこで、本実施形態に係る信号処理部110は、ステップS101で測定した相対距離を含む予め定められた広さの推定範囲の中に存在する複数の対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ最尤推定法を用いて推定する。本実施形態に係る信号処理部110は、最尤推定法を用いて相対距離、及び相対速度をそれぞれ推定するために、まず、最尤推定法を用いて推定する相対距離の範囲を前述の推定範囲としてステップS102の処理で決定する。信号処理部110は、ステップS102において、ステップS101で測定した相対距離に基づいて推定範囲を決定する。信号処理部110の推定範囲の決定手法の一例としては、ステップS101で測定した相対距離(図5に示す例では相対距離D3)を中心とする任意の広さ(図5に示す例では、距離範囲ΔDの2倍の広さ)を推定範囲として決定する手法が挙げられる。信号処理部110は、ステップS102の処理を完了すると、ステップS103へ処理を進める。
【0034】
ステップS103において、信号処理部110は、信号関数Rxを導出する。ここで、信号関数Rxとは、前述の周期を通じて取得した混合信号を示す関数のことである。より詳細には、周期Tで信号処理部110がデジタル信号として取得する混合信号は、それぞれの周波数f1〜flで生成される送信信号と、それぞれの周波数f1〜flで送信信号を生成しているときに受信した反射信号とをそれぞれ混合した混合信号である。そして、信号処理部110は、周期Tで取得した混合信号の中から予め定められた数(以下、解析数と称する)の種類の周波数で送信信号を生成しているときに取得したそれぞれの混合信号を解析する。例えば、信号処理部110は、3の解析数が予め定められている場合、周波数f1〜f3、或いは、周波数f2〜f4などの3つの種類の周波数で送信信号を生成しているときに取得した混合信号を解析する。また、例えば、周波数f1〜f3に対応する混合信号を解析する場合、信号処理部110は、周波数f1で送信信号を生成しているときに取得した混合信号、周波数f2で送信信号を生成しているときに取得した混合信号、及び周波数f3で送信信号を生成しているときに取得した混合信号をそれぞれ示す信号関数Rx1〜信号関数Rx3の3つの信号関数Rxを導出する。
【0035】
信号処理部110は、混合信号を解析するとき、一例として、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)の手法を用いて解析してもよい。信号処理部110は、IFFTの手法を用いて混合信号を解析する場合、混合信号の周波数、すなわち、送信信号の周波数と反射信号の周波数との差の周波数を互いの信号の位相差に比例する値として解釈し、周波数領域で示される当該値の情報をIFFTの手法を用いて解析することによって時間領域で示される情報に変換する。したがって、信号処理部110が混合信号を解析して導出する信号関数Rxは時間の関数として導出される。信号処理部110は、ステップS103の処理において信号関数Rxをそれぞれ導出すると、ステップS103の処理を完了して、ステップS104へ処理を進める。
【0036】
ステップS104において、信号処理部110は、対象物との相対距離を最尤推定法で推定するための仮定距離を決定する。本実施形態では、信号処理部110が、ステップS104で決定した仮定距離に基づき信号関数Rxを推定した信号関数候補rを生成する。ここで、本実施形態における信号関数候補rについて説明する。
【0037】
まず、本実施形態では、ある種類kの周波数の送信信号Skは以下の式(1)で示す関数で表すことができるものとする。
【0038】
【数1】

【0039】
上記数式(1)において、Aは送信信号の振幅を示す。また、fkは上述した通り、種類kの周波数を示す。また、tは時間を示す。そして、本実施形態では、以下の式(2)で示す関数で、種類kの周波数に対応する信号関数候補rkを表すことができるものとする。信号関数候補rkとは、信号関数Rxを示す関数の候補となる関数である。
【0040】
【数2】

【0041】
また、式(2)における総和の要素、すなわち、以下の式(3)で示す要素Iiは、前述の推定範囲内に存在すると予め想定した数(以下、想定数と称する)の対象物の内、i番目の対象物で反射した反射信号と送信信号(種類kの周波数の送信信号)とを混合した混合信号(以下、個別混合信号と称する)を示す関数(以下、個別信号関数と称する)である。
【0042】
【数3】

【0043】
ここで、式(3)のkは、式(1)の説明で述べたように、周波数の種類を示す。また、式(2)のNは前述の想定数を示す。また、Fiは、前述の個別混合信号Iiの振幅を示す。また、Di(t)は、前述のi番目の対象物との相対距離である。そして、cは光速である。
【0044】
式(2)から明らかなように、本実施形態における信号関数候補rkとは、推定範囲内に存在すると想定した想定数Nの対象物にそれぞれ対応する個別信号関数Iiの総和で示される。そして、式(3)に示す個別信号関数Iiは、振幅と位相とを明確に示すことのできるように以下の式(4)に示すように変形できる。
【0045】
【数4】

【0046】
式(4)の指数関数部の虚部はそれぞれの個別混合信号の送信信号に対する位相を示す。また、式(4)のFi/Aは、指数関数部を例えばオイラーの公式に基づき三角関数を用いて波として示したときの振幅に相当する。より詳細には、上述したようにAが送信信号の振幅であり、Fiが個別混合信号の振幅である。このため、Fi/Aは、振幅Aで送信した送信信号がi番目の対象物で反射した反射信号を混合した個別混合信号の振幅Fiの当該送信信号の振幅Aに対する変化率(減衰率)となる。
【0047】
式(3)に示す個別信号関数Iiを式(4)に示すように変形できるため、式(2)で示す信号関数候補rkは、以下の式(5)に示すように書き直すことができる。
【0048】
【数5】

【0049】
次に、i番目の対象物との相対速度がViであるとすると、式(4)におけるDi(t)は、以下の式(6)で示される。
【0050】
【数6】

【0051】
そして、式(6)を式(4)に代入して整理すると個別信号関数Iiは、式(7)に示すように書き直すことができる。
【0052】
【数7】

【0053】
そして、νi、及びai(Di)をそれぞれ以下の式(8)、及び式(9)で示すように定義すると、式(7)に示す個別信号関数Iiは、式(10)で示すように書き直すことができる。
【0054】
【数8】

【0055】
【数9】

【0056】
【数10】

【0057】
ここで、式(10)におけるai(Di)は、式(9)から明らかなように、相対距離Diの関数である。また、式(10)におけるai(Di)は、式(9)から明らかなように指数関数であるため、オイラーの公式に基づいて三角関数を用いた関数に変換することができる。そして、式(10)のGiは、Fi/Aであって周波数fkで放射した送信信号の振幅Aに対する個別混合信号Iiの振幅Fiの比である。さらに、ai(Di)に含まれる周波数fkと相対距離Diとはそれぞれ定数である。したがって、ai(Di)は、周波数fkと相対距離Diとで定まる位相を有する一定の波を示す関数である。そして、νiは、式(8)から明らかなようにi番目の対象物との相対速度Viの関数である。つまり、式(10)は、i番目の対象物との相対速度Vi、相対距離Di、及び当該対象物で反射した反射信号を混合した個別混合信号の振幅に基づく比Giとから個別信号関数Iiを定められることを示している。
【0058】
個別信号関数Iiを式(10)で示せるため、式(5)に示す信号関数候補rkは、以下の式(11)で示すように書き直すことができる。
【0059】
【数11】

【0060】
以上が、本実施形態における信号関数候補rkの説明である。上述の説明から明らかなように、信号関数Rxは、混合信号を解析することによって導出される。そして、混合信号は、種類kの周波数で送信信号を送信したとき、測定範囲内に存在する全ての対象物で反射した反射信号を合成した反射信号と当該送信信号とを混合した信号となる。したがって、信号関数Rxは、測定範囲内に存在する対象物で反射した全ての反射信号を混合した混合信号を示す関数となる。これに対して、信号関数候補rkは、種類kの周波数で送信信号を送信したときに、i番目の対象物で反射した反射信号と、当該送信信号とを混合した混合信号を示す個別混合信号を前述の想定数だけ加算(総和)して得られる信号として信号関数Rxを推定した関数である。
【0061】
個別混合信号を示す個別信号関数Iiは、上述したように、i番目の対象物に対応する相対距離Di、相対速度Vi、及び振幅Giに基づいて生成することができる。したがって、1〜N番目までの対象物にそれぞれ対応する相対距離Di、相対速度Vi、及び振幅Giをそれぞれ適切に定めてそれぞれの対象物に対応する個別信号関数Iiを生成すれば、信号関数Rxを示す信号関数候補rkを生成することができる。そして、信号関数Rxを示す信号関数候補rkを生成できれば、当該信号関数候補rkを生成するために用いた相対距離Di、及び相対速度Viがそれぞれi番目の対象物との相対距離Di、及び相対速度Viであると推定できる。
【0062】
そこで、本実施形態に係る信号処理部110は、信号関数Rxを示す信号関数候補rkを生成するために、それぞれの対象物に対応する相対距離Diを予め定められた手法で決定して、複数の信号関数候補rkを生成する。そして、本実施形態に係る信号処理部110は、生成した複数の信号関数候補rkの中から信号関数Rxを示す信号関数候補rkを特定する。
【0063】
本実施形態に係る信号処理部110は、1つの信号関数Rxを示す信号関数候補rkを特定するために、予め定められた任意の数(以下、候補数と称する)の信号関数候補rkを1つの信号関数Rxに対応させて生成する。また、本実施形態では、1つの信号関数候補rkを生成するために予め想定する対象物の数(前述の想定数)を予め定められた任意の数Nとする。すなわち、本実施形態では、1つの信号関数候補rkを生成するためにN個の個別信号関数Iiを1つの信号関数候補rkに対応させて生成する。また、本実施形態では、1つの個別信号関数Iiを生成するために、相対距離Diを1つの個別信号関数Iiに対応させて決定する。
【0064】
本実施形態に係る信号処理部110は、信号関数Rxに対応する信号関数候補rkを候補数だけ生成するために、ステップS104において、まず、信号関数候補rkを生成するのに必要な個別信号関数Iiを生成するための相対距離Diを仮定距離として生成して決定する。信号処理部110は、仮定距離を決定するとき、1つの信号関数候補rkを生成するのに必要なN個の個別信号関数Iiを生成するためのN個の相対距離Diを仮定距離として1つのグループに纏めて、1つの信号関数Rxに対応させて決定する。本実施形態では、上述したように、前述の解析数だけ信号関数Rxを導出し、解析数の信号関数Rx毎に信号関数候補rkを候補数ずつ対応させて生成するので、仮定距離を纏めたグループの数は、解析数×候補数の数となる。
【0065】
本実施形態に係る信号処理部110は、上述したように、予め定められた手法で、1つのグループに纏める仮定距離を決定する。本実施形態では、推定範囲内にN個の対象物が存在すると想定するので、仮定距離を決定するときには、一例として、推定範囲内で生成したN個の乱数値を仮定距離として決定して1つのグループに纏める手法を用いてもよい。信号処理部110は、仮定距離を生成すると、ステップS104の処理を完了し、ステップS105へ処理を進める。
【0066】
ステップS105において、信号処理部110は、ステップS104で生成した仮定距離と共に個別信号関数Iiに代入するための関数を仮定振幅関数として決定する。ここで、解析数の信号関数Rxをそれぞれ示す信号関数候補rkを特定するための条件は、以下の式(12)で示される。
【0067】
【数12】

【0068】
式(12)に示す矢印を添えた記号Rx、及び記号rは、それぞれベクトルである。式(12)は、解析数の信号関数Rxの内、ある信号関数Rxを示す信号関数候補rkを特定するには、当該信号関数Rxに対応させて生成した候補数の信号関数候補rkの中で、当該信号関数Rxとの差の自乗がε以下となる信号関数候補rkを特定すればよいことを示している。ここで、式(12)におけるεは、ある信号関数Rxを示す信号関数候補rkを特定できる程度の任意の値であるものとする。そして、式(12)の左辺を最小にするための条件は、振幅Giを含む仮定振幅関数を以下の式(13)で定義されるξとすると、以下の式(14)で示されることが従来周知である。
【0069】
【数13】

【0070】
【数14】

【0071】
式(14)の左辺のξi(ベクトル)は、1つの信号関数候補rkに個別信号関数Iiの1つの項として含まれるξiをi=1〜Nまで並べたベクトルである。また、式(14)のa(D)は、式(11)で示される1つの信号関数候補rkに個別信号関数Iiの1つの項として含まれるai(Di)をi=1〜Nまで並べたベクトルである。また、式(14)の右辺のRx(ベクトル)は、信号関数Rxを並べたベクトルである。
【0072】
尚、前述の仮定振幅関数ξを式(13)で定義すると、式(10)に示す個別信号関数Ii、及び式(11)に示す信号関数候補rkのそれぞれは、以下に示す式(15)、及び式(16)に書き直すことができる。
【0073】
【数15】

【0074】
【数16】

【0075】
式(14)は、1つの個別信号関数Iiに含まれる仮定振幅関数ξiが、対応するi番目のDiと、対応する信号関数Rxとから算出できることを示している。つまり、1つの個別信号関数Iiに含まれる仮定振幅関数ξiは、ステップS104で当該個別信号関数Iiに対応させて決定した仮定距離と、当該個別信号関数Iiを含む信号関数候補rkに対応する信号関数Rxとから算出して決定できる。
【0076】
そこで、本実施形態に係る信号処理部110は、ステップS104で決定した個別信号関数Iiに対応させた仮定距離と、当該個別信号関数Iiを含む信号関数候補rkに対応する信号関数Rxとを用いて式(14)に基づいて算出した仮定振幅関数ξiを当該仮定距離に対応させて決定する。信号処理部110は、全ての仮定距離に対して仮定振幅関数ξiを決定すると、ステップS105の処理を完了して、ステップS106へ処理を進める。
【0077】
ステップS106において、信号処理部110は、信号関数候補rkを生成する。信号関数候補rkを生成するとき、信号処理部110は、まず、ステップS104で1つの信号関数Rxに対応させた仮定距離のグループを1つだけ認識する。信号処理部110は、グループを1つだけ認識すると、認識したグループに含まれるそれぞれの仮定距離と、当該仮定距離にステップS105でそれぞれ対応させた仮定振幅関数ξiとをさらに認識する。信号処理部110は、認識した1つの仮定距離と、当該仮定距離に対応する1つの仮定振幅関数ξiとを式(15)に示す個別信号関数Ii代入して1つの個別信号関数Iiを生成する。信号処理部110は、1つのグループに纏められた仮定距離毎に個別信号関数Iiを生成し、生成した個別信号関数Iiを全て加算することにより、式(16)で示す演算をして信号関数候補rkを生成する。信号処理部110は、信号関数候補rkを生成すると、生成するために用いた仮定距離のグループに対応する信号関数Rxに、生成した信号関数候補rkを対応させる。信号処理部110は、1つの信号関数Rxに対応する全てのグループにそれぞれ纏められた仮定距離に基づいて信号関数候補rkを候補数だけ生成する。さらに、信号処理部110は、解析数の信号関数Rx毎に候補数だけ信号関数候補rkを生成する。信号処理部110は、全ての信号関数候補rkを生成すると、ステップS106の処理を完了して、ステップS107へ処理を進める。
【0078】
ステップS107において、信号処理部110は、ステップS106で生成した信号関数候補rkの中から信号関数Rxを示す信号関数候補rkを特定する。より詳細には、信号処理部110は、ステップS107において、解析数の信号関数Rxの中の1つの信号関数Rxと、当該信号関数Rxに対応させた候補数の信号関数候補rkのそれぞれとの差の自乗を算出する。そして、信号関数Rxとの差の自乗が前述のε未満となる(式(12)の条件を満たす)信号関数候補rkを当該信号関数Rxを示す信号関数候補rkとして特定する。信号処理部110が、ステップS107において、1つの信号関数Rxについて特定する信号関数候補rkは1以上であってよい。信号処理部110は、全ての信号関数Rxについて信号関数候補rkを特定すると、ステップS107の処理を完了して、ステップS108へ処理を進める。
【0079】
ステップS108において、信号処理部110は、ステップS107で特定した全ての信号関数候補rkにそれぞれ含まれる同一のi番目の個別信号関数Iiに代入した仮定距離の中から略同じ長さの仮定距離を、個別信号関数Ii毎に特定する。信号処理部110は、それぞれの信号関数候補rkの間で個別信号関数Ii毎に略同じ長さの仮定距離を特定すると、特定した仮定距離をそれぞれの個別信号関数Iiに対応するi番目の対象物との相対距離として推定する。信号処理部110は、ステップS108の処理を完了すると、ステップS109へ処理を進める。
【0080】
ステップS109において、信号処理部110は、ステップS108で相対距離を推定した対象物との相対速度を推定する。相対速度を推定するとき、信号処理部110は、ある種類の周波数の送信信号を送信したときの混合信号を解析した信号関数Rxを示す信号関数候補rkに基づいて相対距離を推定するときに算出した仮定振幅関数ξ、及び他の種類の周波数の送信信号を送信したときの混合信号を解析した信号関数Rxを示す信号関数候補rkに基づいて相対距離を推定するときに算出した仮定振幅関数ξなどに基づいて相対速度を推定する。以下では、具体的な一例として、信号処理部110が、周波数f1〜f3の送信信号を送信したときの混合信号を解析して相対距離を推定するときに算出した仮定振幅関数ξ(以下、第1の仮定振幅関数ξ1と称する)と、周波数f2〜f4の送信信号を送信したときの混合信号を解析して相対距離を推定するときに算出した仮定振幅関数ξ(以下、第2の仮定振幅関数ξ2と称する)などに基づいてi=1番目の対象物との相対速度を測定する場合について説明する。
【0081】
信号処理部110は、第1の相対距離と第2の相対距離とをそれぞれ推定すると、以下の式(17)で示す演算をして対象物との相対速度を推定する。
【0082】
【数17】

【0083】
ここで、式(17)におけるfav1は、周波数f1〜f3の平均周波数、fav2は、周波数f2〜f4の平均周波数、tav1は周波数f1〜f3の送信信号をそれぞれ送信した時間の平均時間、tav2は周波数f2〜f4の送信信号をそれぞれ送信した時間の平均時間、cは光速、ξ1は前述の第1の仮定振幅関数、ξ2は前述の第2の仮定振幅関数である。
信号処理部110は、N個の対象物の全ての相対速度Viを算出すると、ステップS109の処理を完了して、ステップS101へ処理を戻す。
【0084】
尚、上述の第1の仮定振幅関数ξ1の一例としては、信号処理部110が図4のフローチャートに示す処理を繰り返して処理しているときにおいて、ステップS105で算出した最新の仮定振幅関数が挙げられる。また、上述の第2の仮定振幅関数ξ2の一例としては、図4のフローチャートに示す処理を繰り返しているときにおいて、前回以前に繰り返して処理したステップS108で算出した仮定振幅関数が挙げられる。
【0085】
以上が、本発明の第1の実施形態に係るレーダ装置1の説明である。本実施形態に係るレーダ装置1によれば、信号関数Rxを示す信号関数候補rkを上述したように特定する、すなわち、生成した信号関数候補rkの中から最も尤もらしく信号関数Rxを示す信号関数候補rkを特定する。そして、特定した信号関数候補rkに基づいて、対象物との相対距離、及び相対速度を推定する最尤推定法を用いることにより、ステップチャープ法による相対距離の分解能に拘わらずに、対象物との相対距離、及び相対速度を推定することができる。
【0086】
また、本実施形態に係るレーダ装置1によれば、信号候補関数rkを生成するときに用いる相対速度Viを含む仮定振幅関数ξを、対応する相対距離Diと信号関数Rxとに基づいて決定できるため、相対速度Viを決定する演算をせずとも、より精度の高い信号候補関数rkを生成することができる。
【0087】
また、本実施形態に係るレーダ装置1によれば、上述したように推定した相対距離Diに基づいて対象物との相対速度Viを算出して推定できる。つまり、本実施形態に係るレーダ装置1によれば、複数の対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ精度よく測定することができる。
【0088】
尚、第1の実施形態の説明では、推定範囲が1つであるものとして説明した。すなわち、第1の実施形態の説明では、ステップチャープ法で測定できた相対距離が1つである場合を説明した。これに対して、例えば、ステップチャープ法で測定できた相対距離が2以上である場合には、それぞれの相対距離を基準として上述したように推定範囲を決定し、それぞれの推定範囲で第1の実施形態で説明したように対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ推定してもよい。
【0089】
また、第1の実施形態の説明では、ステップチャープ法を用いた相対距離の測定結果に基づいて推定範囲を決定するものとした。しかしながら、他の一実施形態に係るレーダ装置では、測定範囲全てを推定範囲として測定範囲内に存在する全ての対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ推定してもよい。
【0090】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、予め定めた想定数で信号関数候補rkを生成して、対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ測定していた。しかしながら、例えば、推定範囲内に存在する対象物の数が、予め定めた想定数に対して過度に少ない場合などには、信号処理部110の処理の負荷が過度に高くなってしまうことになる。このため、本発明の第2の実施形態では、混合信号の振幅に基づいて想定数を推定し、推定した想定数で第1の実施形態で説明したように相対距離、及び相対速度をそれぞれ推定する。尚、本実施形態に係るレーダ装置の概略構成は、第1の実施形態に係るレーダ装置1の概略構成と同一であるため説明を省略し、信号処理部110の処理の相違点についてのみ説明する。
【0091】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る信号処理部110の処理を示すフローチャートである。以下、図6に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る信号処理部110の処理について説明する。
【0092】
ステップS201において、信号処理部110は、周期Tで送信するそれぞれの種類の周波数毎の送信信号を混合した混合信号を解析して信号関数Rxを導出し、導出した信号関数Rxを図示しない記憶部に記憶する。また、信号処理部110は、ステップS201において、信号関数Rxを記憶すると共に、第1の実施形態で説明したステップチャープ法を用いて対象物との相対距離を測定する。信号処理部110は、ステップS201の処理を完了すると、ステップS202へ処理を進める。
【0093】
ステップS202において、信号処理部110は、ステップS201で記憶した周波数毎の信号関数Rxの互いの振幅の差をそれぞれ算出し、算出した振幅の差が全て略ゼロであるか否かを判断する。信号処理部110は、ステップS202において、算出した振幅の差が全て略ゼロであると判断したとき、ステップS205へ処理を進める。一方、信号処理部110は、ステップS202において、算出した振幅の差の中で略ゼロでない差があると判断したとき、ステップS203へ処理を進める。
【0094】
ステップS203において、信号処理部110は、ステップS202で算出した振幅の差の中で予め定められたしきい値th1を超える差があるか否かを判断する。信号処理部110は、ステップS203において、しきい値th1を超える差があると判断したとき、ステップS206へ処理を進める。一方、信号処理部110は、しきい値th1を超える差がないと判断したとき、ステップS204へ処理を進める。
【0095】
ステップS204において、信号処理部110は、ステップS201で測定した相対距離に応じて予め定められたしきい値th2とステップS201で記憶したそれぞれの信号関数Rxの振幅とを比較する。信号処理部110が、ステップS204で比較するしきい値th2は、普遍的であると考えられる大きさの対象物(例えば、本実施形態に係るレーダ装置が自動車に搭載される場合は、一般的な普通乗用自動車の大きさ)で反射した反射信号と送信信号とを混合した混合信号の信号関数Rxの振幅を、レーダ装置1と当該対象物との相対距離に応じて予め定めたしきい値である。信号処理部110は、ステップS204において、ステップS201で測定した相対距離に応じてしきい値th2を選択し、ステップS201で記憶したそれぞれの信号関数Rxの振幅と比較する。信号処理部110は、ステップS204において、選択したしきい値th2を超える振幅が存在すると判断したとき、ステップS206へ処理を進める。一方、信号処理部110は、ステップS204において、選択したしきい値th2を超える振幅が存在しないと判断したとき、ステップS205へ処理を進める。
【0096】
ステップS205において、信号処理部110は、後述するステップS208で最尤推定をするときの想定数を1であると予め想定して設定する。ここで、信号処理部110が、ステップS205において、想定数を1と設定する理由について説明する。信号処理部110が、ステップS205の処理をするのは、ステップS202において、算出した振幅の差が全て略ゼロである場合である。算出した振幅の差が全て略ゼロである場合には、全ての信号関数Rxが同一の対象物で反射した反射信号を混合した混合信号を解析して導出されたものであると考えられる。これは、同一の対象物から反射した全ての反射信号のそれぞれは、同一の相対距離を伝搬した信号であり互いの減衰率が略同一であると考えられるからである。
【0097】
また、信号処理部110は、ステップS204において、しきい値th2を超える振幅が存在しないと判断したときにもステップS205へ処理を進める。これは、ステップS201で測定した相対距離に普遍的な大きさの対象物が存在している場合よりも大きな振幅の反射信号を受信していないときだからである。つまり、前述のしきい値th2を超える振幅が存在しないと判断したときには、測定した相対距離に普遍的な大きさよりも大きな対象物が存在することがなく、当該相対距離の近傍に存在する小さい対象物で反射した反射信号が、当該大きな対象物で反射した反射信号に埋もれてしまうことがないと考えられるからである。このため、信号処理部110は、ステップS204において、しきい値th2を超える振幅が存在しないと判断したときにもステップS205へ処理を進めて想定数を1として想定して設定する。
【0098】
一方、信号処理部110は、ステップS206において、後述するステップS208で最尤推定をするときの想定数を2であるとして予め想定して設定する。ここで、信号処理部110が、ステップS206において、想定数を2と設定する理由について説明する。信号処理部110が、ステップS206の処理をするのは、ステップS203において、前述のしきい値th1を超える振幅の差があると判断されたときである。しきい値th1を超える振幅の差がある場合とは、少なくとも2つの対象物で反射した振幅の大きく異なる反射信号を受信したときと考えられる。このため、信号処理部110は、ステップS203において、前述のしきい値th1を超える振幅の差があると判断したときに、ステップS206へ処理を進めて想定数を2として想定して設定する。
【0099】
また、信号処理部110は、ステップS204において、選択したしきい値th2を超える振幅が存在すると判断したときにもステップS206へ処理を進める。これは、ステップS201で測定した相対距離に普遍的な大きさの対象物が存在している場合よりも大きな振幅の反射信号を受信していると考えられる場合だからである。つまり、前述のしきい値th2を超える振幅が存在しないと判断したときには、測定した相対距離に普遍的な大きさよりも大きな対象物が存在すると考えられ、さらに、当該相対距離の近傍に存在する小さい対象物で反射した反射信号が、当該大きな対象物で反射した反射信号に埋もれてしまい、当該小さな対象物を測定できない可能性があるからである。このため、信号処理部110は、ステップS204において、しきい値th2を超える振幅が存在すると判断したときにもステップS206へ処理を進めて想定数を2として設定し、小さい対象物を見逃すことのないようにする。
【0100】
また、信号処理部110は、後述するステップS210において、想定数が2でないと判断したときにも、ステップS206へ処理を進める。これは、後述する説明から明らかなように、1として想定した想定数が不正確であり、不正確な想定数を修正して再びステップS208で最尤推定するためである。
【0101】
信号処理部110は、ステップS205、或いはステップS206の処理を完了すると、ステップS207へ処理を進める。
【0102】
ステップS207において、信号処理部110は、設定した想定数に基づき、第1の実施形態で説明した個別信号関数Iiの振幅を推定する。信号処理部110が、ステップS205の処理で想定数を1であると想定するのは、想定する対象物の数が1であり、単一の反射信号を混合した混合信号を受信したと想定することとなる。つまり、想定数が1であれば1つの信号関数候補rkには個別信号関数Iiが1つだけ含まれることになる。したがって、信号処理部110は、ステップS205の処理をしてからステップS207の処理をするときは、ステップS201において、周期Tで送信するそれぞれの種類の周波数毎の送信信号を混合した混合信号を解析して記憶した信号関数Rxの振幅のいずれか1つの振幅を個別信号関数Iiの振幅として推定する。
【0103】
一方、信号処理部110が、ステップS206の処理で想定数を2であると想定するのは、想定する対象物の数が2であり、2つの反射信号を混合した混合信号を受信したと想定することとなる。つまり、想定数が2であれば1つの信号関数候補rkには個別信号関数が2つだけ含まれることになる。したがって、信号処理部110は、ステップS206の処理をしてからステップS207の処理をするときは、ステップS201において、周期Tで送信するそれぞれの種類の周波数毎の送信信号をそれぞれ混合した混合信号を解析して記憶した信号関数Rxの振幅の最大値Maxと最小値Minとを用いて以下の式(14)に示す演算をして2つの個別信号関数Iiの振幅Ge1、及び振幅Ge2をそれぞれを推定する。前述の最大値Maxと前述の最小値Minとを用いて式(18)に示す演算をすることにより、2つの個別信号関数Iiの振幅Ge1、及び振幅Ge2をそれぞれを推定できるのは従来周知である。
【0104】
【数18】

【0105】
信号処理部110は、ステップS207の処理を完了すると、ステップS208へ処理を進める。
【0106】
ステップS208において、信号処理部110は、第1の実施形態で説明したように対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ推定する。より具体的には、信号処理部110は、ステップS208において、第1の実施形態で説明した図4のフローチャートに示す処理を1度だけ処理して、ステップS209へ処理を進める。尚、この場合、ステップS101における相対距離の測定は、ステップS201の測定結果を用いるとして、省略してもよい。
【0107】
ステップS209において、信号処理部110は、ステップS207において推定した個別信号関数Iiの振幅と、ステップS208の処理の過程で生成した個別信号関数Iiの振幅とを比較して略一致するか否かを判断する。信号処理部110は、ステップS208の処理の過程で生成した個別信号関数Iiの中で相対距離とした仮定距離を含む個別信号関数Iiの振幅を比較する。
【0108】
信号処理部110は、ステップS209において、ステップS208の処理の過程で生成した個別信号関数Iiの中で相対距離とした仮定距離を含む個別信号関数Iiの振幅が、ステップS207において推定した個別信号関数Iiの振幅と略一致すると判断したとき、ステップS201へ処理を戻す。これは、ステップS205、或いはステップS206で予め推定した想定数が正確であり、正確な想定数に基づいてステップS208の処理で推定した相対距離、及び相対速度もそれぞれ正確な推定結果であると考えられるからである。
【0109】
一方、信号処理部110は、ステップS209において、ステップS208の処理の過程で生成した個別信号関数Iiの中で相対距離とした仮定距離を含む個別信号関数Iiの振幅が、ステップS207において推定した個別信号関数Iiの振幅と略一致しないと判断したとき、ステップS210へ処理を進める。これは、ステップS205、或いはステップS206で予め推定した想定数が不正確であり、不正確な想定数に基づいてステップS208の処理で推定した相対距離、及び相対速度もそれぞれ不正確な推定結果であると考えられるからである。
【0110】
ステップS210において、信号処理部110は、ステップS208の処理をするときの想定数が2であるか否かを判断する。信号処理部110は、ステップS210の処理をするときの想定数が2でないと判断したとき、ステップS206へ処理を戻して、想定数を2に設定し、ステップS207を経て、ステップS208で相対距離、及び相対速度をそれぞれ推定する。一方、信号処理部110は、ステップS210において、ステップS208の処理をするときの想定数が2であると判断したとき、ステップS211へ処理を進める。
【0111】
ステップS211において、信号処理部110は、想定数が2を超えると考えられるときの予め定められた想定数で、第1の実施形態で説明したように対象物との相対距離、及び相対速度をそれぞれ推定する。より具体的には、信号処理部110は、ステップS208において、第1の実施形態で説明した図4のフローチャートに示す処理を1度だけ処理して、ステップS209へ処理を進める。尚、この場合、ステップS101における相対距離の測定は、ステップS201の測定結果を用いるとして、省略してもよい。信号処理部110は、ステップS211の処理を完了すると、ステップS201へ処理を戻す。
【0112】
以上が、本発明の第2の実施形態に係るレーダ装置の説明である。本実施形態に係るレーダ装置によれば、始めに相対距離を測定するとき(例えば、ステップチャープ法を用いて相対距離を測定するときなど)の混合信号の振幅に基づいて対象物の数を想定してから最尤推定をする。このため、本実施形態に係るレーダ装置によれば、予め想定した想定数に対して過度に少ない対象物が存在するときに信号処理部110にかかる過度な負荷をなくすことができる。
【0113】
尚、第2の実施形態に係る信号処理部110がステップS208で最尤推定するときの推定範囲は、レーダ装置の測定範囲をそのまま推定範囲とする。これは、信号処理部110が、ステップS201〜ステップS206で想定する想定数は、周期Tで送信するそれぞれの種類の周波数毎の送信信号を混合した混合信号を解析して導出した信号関数Rxの振幅に基づいて想定する数であり、第1の実施形態で説明したように対象物との相対距離に基づいて推定範囲を決定しないからである。
【0114】
また、第2の実施形態に係る信号処理部110がステップS208で最尤推定するときの仮定距離は、ステップS205、或いはステップS206で想定した想定数に基づいて生成する範囲を限定することができる。例えば、第2の実施形態に係る信号処理部110が、ステップS206において想定数を2として想定したときには、ステップS208の処理の過程で生成する個別信号関数Iiの数は、1つの信号関数候補rkについて2つとなる。つまり、第1の実施形態で説明したグループに纏める仮定距離の数が2となる。したがって、図7Aに示すように、グループに纏めて2つの仮定距離を決定するときに、それぞれの仮定距離を決定するときの範囲を、2つに分割した推定範囲である範囲KD1、及びKD2にすることにより、信号処理部110にかかる処理の負荷を低減することができる。これは、2つの仮定距離を決定するときに、それぞれの仮定距離を推定範囲内で決定すると、図7Bに示すように、2つの仮定距離をそれぞれ推定範囲内で乱数として生成するため、信号関数Rxにより近い信号関数候補rkを生成するためには、より多くの信号関数候補rkを生成しなければならなくなるからである。
【0115】
また、第2の実施形態に係る信号処理部110が、ステップS211の処理で最尤推定するときは、想定数を2としてステップS208で最尤推定したのにも拘わらず、ステップS209において略一致しないと判断されたときである。このため、第2の実施形態に係る信号処理部110がステップS211の処理で最尤推定するときには、想定数を3とし、図7Aを参照して説明した考え方と同様の考え方で推定範囲を3つに分割して仮定距離をそれぞれ決定することにより、信号処理部110にかかる処理の負荷を同様に低減できる。
【0116】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の一例にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明によれば、複数の対象物との相対距離、及び相対速度を精度よく推定でき、例えば、自動車などの移動体に搭載されるレーダ装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0118】
1 レーダ装置
101 制御電圧発生器
102 VCO
103 第1の増幅器
104 送信アンテナ
105 受信アンテナ
106 第2の増幅器
107 混合器
108 LPF
109 ADC
110 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた周期で周波数が間欠的に変化するステップチャープ信号を送信し、送信したステップチャープ信号が対象物で反射した反射信号を受信する送受信手段と、
前記ステップチャープ信号と前記反射信号とを混合信号として混合する混合手段と、
前記混合信号に基づき最尤推定法を用いて1以上の前記対象物との相対距離をそれぞれ推定する距離推定手段と、
前記距離推定手段が最尤推定法を用いて前記相対距離を推定するときに推定した前記混合信号の振幅に基づき、前記距離推定手段によって推定された前記相対距離に存在する1以上の前記対象物との相対速度をそれぞれ推定する速度推定手段とを備える、レーダ装置。
【請求項2】
前記距離推定手段は、
前記混合信号を解析することによって、当該混合信号を近似して示す関数を信号関数として導出する解析手段と、
前記対象物との前記相対距離を予め定められた手法で仮定した仮定距離を用いることにより、前記信号関数の候補を信号関数候補として生成する信号候補生成手段と、
前記信号関数を示す前記信号関数候補を生成するのに用いた前記仮定距離に基づき前記対象物毎の前記相対距離を最尤推定する距離最尤推定手段とを含む、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記信号候補生成手段は、それぞれの前記対象物が反射した前記反射信号を個別に前記ステップチャープ信号と混合した当該対象物毎に対応する個別混合信号を示す個別信号関数の総和で示される前記信号関数候補を前記仮定距離を用いることによって生成する、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記信号候補生成手段は、
予め想定した想定数の前記対象物との前記仮定距離を生成する仮定距離生成手段と、
前記仮定距離に基づき前記個別信号関数の前記振幅を当該仮定距離にそれぞれ対応させて決定する振幅決定手段と、
前記仮定距離と当該仮定距離にそれぞれ対応する前記振幅とを含む前記個別信号関数の総和を前記信号関数候補として生成する総和生成手段とを含む、請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記仮定距離生成手段は、前記想定数の前記仮定距離をグループに纏め、当該グループ同士で互いに異なる前記仮定距離を含むように前記仮定距離を生成し、
前記総和生成手段は、前記グループ毎に纏められた前記仮定距離と当該仮定距離にそれぞれ対応する前記振幅とをそれぞれ含む前記個別信号関数の総和を前記信号関数候補として当該グループ毎に対応させて生成する、請求項4に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記距離最尤推定手段は、前記総和生成手段によって生成された前記信号関数候補の中で前記信号関数を示す前記信号関数候補に対応する前記グループを特定し、特定した前記グループに含まれる前記仮定距離に基づき前記対象物のそれぞれとの前記相対距離を最尤推定する、請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記混合信号に基づき前記対象物との前記相対距離を測定する距離測定手段をさらに備え、
前記距離推定手段は、前記距離測定手段によって測定された前記相対距離を基準とし、分解能を基準とした広さの前記相対距離の範囲内に存在する前記対象物との前記相対距離を最尤推定する、請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記速度推定手段は、前記距離最尤推定手段が前記相対距離を最尤推定するのに用いた前記仮定距離と対応付けられた前記振幅に基づき、前記対象物との前記相対速度を推定する、請求項6に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記速度推定手段は、
前記距離最尤推定手段によって前記信号関数を示す前記信号関数候補を生成するために用いられた前記仮定距離をそれぞれとの前記相対距離として推定した前記対象物と当該仮定距離とを対応付ける距離対応付け手段と、
前記距離対応付け手段によって前記対象物に対応付けられた前記仮定距離に対応付けられた前記振幅を示す振幅関数と、当該対象物とをそれぞれ対応付ける振幅対応付け手段と、
前記振幅対応付け手段によって前記対象物に対応付けられた前記振幅関数と、以前に対応付けられた前記振幅関数とを比較することにより当該対象物との前記相対速度を推定する、請求項8に記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記混合信号に基づき前記対象物との前記相対距離を測定する距離測定手段と、
予め定められた数の周波数で前記ステップチャープ信号を送信したときのそれぞれの前記混合信号の強度差が略ゼロであるか否かを判断する第1の判断手段と、
前記第1の判断手段によって前記強度差が略ゼロでないと判断されたとき、前記強度差の中で予め定められたしきい値を超える前記強度差が存在するか否かを判断する第2の判断手段と、
前記距離測定手段によって測定された前記相対距離に対応する予め定められたしきい値を前記第1の判断手段で判断した前記混合信号の強度が超えているか否かを判断する第3の判断手段と、
前記第1の判断手段、前記第2の判断手段、及び前記第3の判断手段の少なくともいずれか1つの判断結果に基づき前記想定数を予め想定する想定手段とをさらに備え、
前記仮定距離生成手段は、前記想定手段によって想定された数の前記対象物との前記仮定距離を生成する、請求項5に記載のレーダ装置。
【請求項11】
前記想定手段は、前記第1の判断手段によって前記強度差が略ゼロであると判断されたとき、及び前記第1の判断手段で判断した前記混合信号の強度が、前記距離測定手段によって測定された前記相対距離に対応する前記しきい値を超えていないと前記第3の判断手段によって判断されたとき、前記想定数を1として予め想定する、請求項10に記載のレーダ装置。
【請求項12】
前記想定手段は、前記第2の判断手段によって前記しきい値を超える前記強度差が存在すると判断されたとき、及び前記第1の判断手段で判断した前記混合信号の強度が、前記距離測定手段によって測定された前記相対距離に対応する前記しきい値を超えていると前記第3の判断手段によって判断されたとき、前記想定数を2として予め想定する、請求項10に記載のレーダ装置。
【請求項13】
前記想定手段によって前記想定数が1であると想定されたとき、前記周期を通じてそれぞれ混合された前記混合信号の振幅と、前記距離推定手段が最尤推定法を用いて前記相対距離を推定するときに推定した前記混合信号の振幅とをそれぞれ比較する比較手段と、
前記比較手段によって比較された前記振幅がそれぞれ略一致したとき前記距離最尤推定手段によって推定された前記相対距離が誤推定でないと判断する第4の判断手段とをさらに備える、請求項11に記載のレーダ装置。
【請求項14】
前記想定手段によって前記想定数が2であると想定されたとき、前記周期を通じてそれぞれ混合された前記混合信号の振幅の最大値と最小値とに基づき、当該対象物のそれぞれに対応する前記個別信号関数に含まれる前記振幅を予め推定する事前振幅推定手段と、
前記距離推定手段が最尤推定法を用いて前記相対距離を推定するときに推定した前記混合信号の振幅と、前記事前振幅推定手段によって推定された前記振幅とをそれぞれ比較する比較手段と、
前記比較手段によって比較された前記振幅がそれぞれ略一致したとき前記距離最尤推定手段によって推定された前記相対距離が誤推定でないと判断する第4の判断手段とをさらに備える、請求項12に記載のレーダ装置。
【請求項15】
前記距離最尤推定手段は、前記信号候補生成手段によって生成された前記信号関数候補の中で前記信号関数に最も近い前記信号関数候補に対応する前記グループを特定するとき、当該信号交換数候補と前記信号関数との差の自乗が最も小さい前記信号関数候補に対応する前記グループを特定する、請求項5に記載のレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2011−69638(P2011−69638A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218959(P2009−218959)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】