説明

レーダ装置

【課題】高速移動するターゲットのコヒーレント積分利得を維持し、低速移動するターゲットのコヒーレント積分利得を高め、到来方向推定精度を向上する。
【解決手段】レーダ送信部は、パルス圧縮符号を高周波送信信号に変換して送信アンテナから送信する。レーダ受信部は、受信信号と送信信号との相関値をコヒーレント積分する複数のアンテナ系統処理部と、複数のアンテナ系統処理部の各出力に基づいて相関行列を生成するp(整数)個の相関行列生成部と、p個の相関行列生成部のうち1つ又は複数の相関行列生成部の出力を加算するp(整数)個の加算部と、生成された各相関行列のうち、コヒーレント積分利得が最大の相関行列を生成した相関行列生成部を選択する出力選択制御部と、出力選択制御部により選択された相関行列生成部に応じて、p個の加算部の各出力のうちいずれかの出力を選択する出力選択部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットに反射された反射波のパルス信号をアンテナにより受信してターゲットを検出する、パルス信号を用いたレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、測定地点から電波を空間に放射し、ターゲットに反射された反射波のパルス信号を受信して、測定地点とターゲットとの距離、方向の少なくとも1つ以上を測定する。特に近年、マイクロ波又はミリ波を含む波長の短い電波を用いた高分解能な測定によって、自動車及び歩行者を含めてターゲットとして検出可能なレーダ装置の開発が進められている。
【0003】
また、レーダ装置は、近距離に存在するターゲットと遠距離に存在するターゲットとからの反射波が混合された信号を受信する。特に、近距離に存在するターゲットからの反射波の信号によって、レンジサイドローブが生じる。レンジサイドローブと遠距離に存在するターゲットからの反射波の信号のメインローブとが混在し、レーダ装置は、遠距離に存在するターゲットを検出する精度が劣化する。
【0004】
従って、複数のターゲットに対して高分解能な測定が要求されるパルス信号を用いたレーダ装置には、低いレンジサイドローブレベルとなる自己相関特性(以下、「低レンジサイドローブ特性」という)を有するパルス波又はパルス変調波の送信が要求される。
【0005】
また、レーダ装置は、測定地点から同じ距離に自動車と歩行者とが存在すると、レーダ反射断面積(RCS: Radar cross section)の異なる自動車と歩行者とからの各反射波の信号が混合された信号を受信する。一般に、歩行者のレーダ反射断面積は自動車のレーダ反射断面積に比べると低い。
【0006】
このため、レーダ装置は、たとえ測定地点から同じ距離に、自動車と歩行者とが存在していても、自動車及び歩行者からの反射波の信号を適正に受信することが要求される。ターゲットの距離又は種別により、受信信号レベルとなる反射波の信号は変化する。レーダ装置は、様々な受信信号レベルとなる反射波の信号が受信可能な受信ダイナミックレンジが要求される。
【0007】
従来のパルス圧縮を用いたレーダ装置は、送信周期Trにおいてパルス圧縮符号を繰り返して送信する場合、パルス圧縮処理により演算された相関値を加算平均して、ターゲットからの反射波の受信におけるSNR(signal to noise ratio)を改善する。なお、加算平均には、コヒーレント積分とノンコヒーレント積分(あるいはインコヒーレント積分とも呼ばれる)とがある。
【0008】
例えば、パルス圧縮処理により演算された相関値のうち、時間相関が高い期間(Nc×Tp)では、コヒーレント積分が可能である。パラメータTpはパルス幅[秒]である。コヒーレント積分により、数式(1)に示す様に、SNRの改善が可能である。パラメータGcは、コヒーレント積分による利得であり、数式(2)に従って演算される。
【0009】
【数1】

【0010】
【数2】

【0011】
パラメータNcは、コヒーレント積分数であり、ターゲットの想定最大移動速度に依存して設定される。従って、ターゲットの想定最大移動速度が大きいほど、ターゲットからの反射波の信号に含まれるドップラ周波数変動が大きくなり、時間相関の高い期間が短くなる。このため、コヒーレント積分数Ncは小さくなり、数式(2)によってコヒーレント積分による利得Gcが小さくなる。即ち、数式(1)において、コヒーレント積分によるSNRの向上効果が小さくなる。
【0012】
一方、ノンコヒーレント積分を用いた場合にも、パルス圧縮処理により演算された相関値の振幅或いは受信電力成分を加算することによって、数式(3)に示す様に、SNRの改善が可能である。パラメータGdは、ノンコヒーレント積分による利得であり、数式(4)に従って演算される。
【0013】
【数3】

【0014】
【数4】

【0015】
パラメータNdは、ノンコヒーレント積分数である。コヒーレント積分数Ncとノンコヒーレント積分数Ndとが同じ場合、コヒーレント積分がノンコヒーレント積分よりも利得向上の寄与度が大きい。但し、理想的なコヒーレント積分による利得を得るためには、コヒーレント積分される区間(時間)において、受信信号の位相成分が所定範囲内で一致する必要があり、コヒーレント積分の可能範囲が限定される。
【0016】
また、従来のパルス圧縮レーダが、低速移動するターゲットから高速移動するターゲットを測位する場合、コヒーレント積分数Ncはターゲットの想定最大移動速度に依存して固定的に設定されるため、コヒーレント積分数Ncが小さい。このため、低速移動するターゲットの測位に関しては、時間相関の高い区間のうち、一部の区間におけるコヒーレント積分による利得以外が得られないという課題があった。
【0017】
この課題に関連して、例えば特許文献1に示すレーダ装置が知られている。このレーダ装置は、パルス幅によってレンジゲート幅が決定される複数個のレンジゲートを備え、各レンジゲートに対し、複数個のコヒーレント積分器、複数個の検波器、複数個のノンコヒーレント積分器、及び複数個のスレッショルド検出器をそれぞれ含む構成である。
【0018】
更に、レーダ装置は、複数個のコヒーレント積分器と複数個のノンコヒーレント積分器により、コヒーレント積分数とノンコヒーレント積分数との比が異なる複数の積分処理をし、そして、積分処理された複数の信号を複数個のスレッショルド検出器により、所定のしきい値との比較によって、レンジ毎に測定ターゲットを検出する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平5−45449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許文献1のレーダ装置において、複数のアンテナ素子を用いて構成可能なアレーアンテナを用いて、受信したターゲットからの反射波の信号の位相差に応じて到来方向を推定すると、次に示す様な構成となる。
【0021】
レンジゲート毎の複数のコヒーレント積分器の出力は、ターゲットからの反射波の信号の位相情報が含まれるが、検波部において位相情報が除かれるため、レンジゲート毎の複数のコヒーレント積分器の出力にそれぞれ到来方向推定部を追加する構成が一例として考えられる。ただし、複数のコヒーレント積分器及びノンコヒーレント積分器の全ての組合せに対して到来方向を推定するため、レーダ装置の回路規模が増大する。
【0022】
また、レンジゲート毎の複数のスレッショルド検出器の後段に、それぞれ到来方向推定部を追加する構成が別の一例として考えられる。各スレッショルド検出器はスレッショルドに満たない信号に対する到来方向を推定する必要はない。しかし、受信信号が、複数の検出器のうち、どの検出器のスレッショルドを満たすかどうかは事前に判別困難である。このため、複数の各コヒーレント積分器の出力データをメモリに保存し、スレッショルド検出器の検出結果に基づいて到来方向を推定する。従って、所要のメモリ量が増大し、更に、到来方向の推定処理結果が得られるまでの遅延も増大する。
【0023】
更に上記の構成において、特許文献1のレーダ装置において開示されているように、コヒーレント積分数とノンコヒーレント積分数の積を一定とする関係において、組合せを複数設定する場合、1)コヒーレント積分数が多くなると、ノンコヒーレント積分数は少なくなる組合せ、あるいは2)コヒーレント積分数が少なくなると、ノンコヒーレント積分数が多くなる組合せがある。
【0024】
このような関係の下では、高速移動するターゲットからの反射波の信号が、あるレンジゲートに含まれる場合、以下のような現象が発生するため、ターゲットの到来方向の推定精度が大きく劣化するという課題があった。
【0025】
1)コヒーレント積分数が多く、ノンコヒーレント積分数は少ない組合せ:
【0026】
高速移動するターゲットからの反射波は、時間相関の低い期間までのコヒーレント積分がなされ、理想的に得られるコヒーレント積分利得よりも小さくなる。
【0027】
コヒーレント積分期間中に例えば180度以上の位相回転が含まれる場合には、コヒーレント積分利得が負になる。一方、ノンコヒーレント積分数が少ないため、雑音の抑圧効果が小さく、雑音成分が重畳された値を積分処理結果として出力する。
【0028】
2)コヒーレント積分数が少なく、ノンコヒーレント積分数が多い組合せ:
【0029】
コヒーレント積分数が少ないため、利得改善効果が小さいが、ノンコヒーレント積分数が多いため、十分に雑音成分が抑圧される。
【0030】
本来は、2)の積分処理結果を最適な積分数の組合せとして選択するべきであるが、ターゲットからの反射波の信号のSNRが低い場合には、雑音成分が多く重畳された方が、見かけ上の積分処理出力レベルが高くなるため、1)の積分処理結果を最適な積分数の組合せとして誤って選択する。
【0031】
選択されたコヒーレント積分数とノンコヒーレント積分数との組合せに基づいて到来方向を推定するには、雑音成分の影響を大きく受け、ターゲットの到来方向の推定精度が大きく劣化するという課題があった。
【0032】
図15は、レーダ装置が合計480回のパルス圧縮符号を繰り返し送信した信号に対し、4つの異なる移動速度のターゲットからの反射波を含む信号をレーダ装置の受信部が受信し、パルス圧縮処理後に、各レンジゲートに、それぞれ異なるコヒーレント積分数及びノンコヒーレント積分数の組合せを用いて積分処理した結果の一例である。
【0033】
同図において、4つの異なる移動速度のターゲットは、高速移動(時速80km/h相当)しているターゲット#1、中速移動(時速40km/h相当)しているターゲット#2、低速移動しているターゲット#3(時速20km/h相当)、及び歩行速度移動しているターゲット#4(時速5km/h相当)であり、図15(a)中の矢印位置のレンジゲートに各ターゲットから反射波を受信している。
【0034】
また、同図(a)は、検出結果であって、コヒーレント積分数が30回であり、ノンコヒーレント積分数が16回である。
【0035】
同図(b)は、検出結果であって、コヒーレント積分数が60回であり、ノンコヒーレント積分数が8回である。
【0036】
同図(c)は、検出結果であって、コヒーレント積分数が120回であり、ノンコヒーレント積分数が4回である。
【0037】
同図(d)は、検出結果であって、コヒーレント積分数が240回であり、ノンコヒーレント積分数が2回である。
【0038】
同図(e)は、検出結果であって、コヒーレント積分数が480回であり、ノンコヒーレント積分数が1回である。
【0039】
図15において、横軸は受信信号の到来タイミングを示し、送信パルス幅によって規定されるレンジゲートの番号を用いて表示している。縦軸はパルス圧縮処理後にコヒーレント積分及びノンコヒーレント積分処理して得られる出力レベル[dB]である。
【0040】
図15において、コヒーレント積分数が多くなるにつれて、低速移動するターゲットからの反射波の信号は、大きなコヒーレント積分利得を得る。一方、高速移動するターゲットからの反射波の信号は、コヒーレント積分利得が減少し、更には、負のコヒーレント積分利得となって減衰する。
【0041】
また、コヒーレント積分数が多くなるにつれて、ノンコヒーレント積分数が減少するため、雑音成分の分散が大きくなる。上述したような現象(高速移動するターゲットからの反射波の信号に対する、最適な積分数の組合せ選択を誤りによるターゲットの到来方向の推定精度が大きく劣化する現象)の発生確率が高まる。
【0042】
本発明は、上述従来の事情に鑑みてなされたもので、高速移動するターゲットのコヒーレント積分利得を維持し、低速移動するターゲットのコヒーレント積分利得を高めることで、簡易な構成を用いて到来方向推定精度を向上するレーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0043】
本発明は、上述したレーダ装置であって、送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波の信号を用いてターゲットからの反射波の到来方向を推定する複数の受信アンテナからのレーダ受信部と、を含み、前記レーダ受信部は、受信信号と前記送信信号との相関値を異なるコヒーレント積分数を用いて複数のコヒーレント積分する複数のアンテナ系統処理部と、前記複数のアンテナ系統処理部の前記複数のコヒーレント積分の各出力に基づいて受信アンテナ配置に起因する位相差情報である相関行列を生成する複数の相関行列生成部と、コヒーレント積分数Nのコヒーレント積分出力から得られる前記相関行列生成部の出力に対し、Nより小さいコヒーレント積分数のコヒーレント積分出力から得られる1つ又は複数の前記相関行列生成部の出力を加算する複数の加算部と、前記加算部の出力を基に、前記ターゲットからの反射波の到来方向を推定する到来方向推定部と、を有する。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、高速移動するターゲットの到来方向の推定精度を維持し、低速移動するターゲットのコヒーレント積分利得を、簡易な構成を用いて向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施形態のレーダ装置の内部構成を簡略に示すブロック図
【図2】第1の実施形態のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図3】高周波送信信号の送信区間と送信周期との関係を示す説明図
【図4】送信信号生成部の他の内部構成を詳細に示すブロック図
【図5】高周波送信信号の送信区間と送信周期と測定範囲との関係を示す説明図
【図6】信号処理部の他の内部構成を詳細に示すブロック図
【図7】或る相関行列生成部の出力に基づいてターゲットの到来方向を推定したシミュレーション結果を示す説明図、(a)コヒーレント積分数が30回であり、ノンコヒーレント積分数が120回であるシミュレーション結果、(b)コヒーレント積分数が60回であり、ノンコヒーレント積分数が60回であるシミュレーション結果、(c)コヒーレント積分数が120回であり、ノンコヒーレント積分数が30回であり、コヒーレント積分数とノンコヒーレント積分数の積がそれぞれ一定となる条件でのシミュレーション結果
【図8】或る相関行列生成部の出力に基づいてターゲットの到来方向を推定したシミュレーション結果を示す説明図、(a)コヒーレント積分数が240回であり、ノンコヒーレント積分数が15回であるシミュレーション結果、(b)コヒーレント積分数が480回であり、ノンコヒーレント積分数が7回であり、コヒーレント積分数とノンコヒーレント積分数の積がそれぞれ一定となる条件でのシミュレーション結果
【図9】出力選択部により選択された加算部の出力に基づいてターゲットの到来方向を推定したシミュレーション結果を示す説明図
【図10】各ターゲットの存在位置に対する到来方向の推定精度の誤差を示す累積確立分布を示すシミュレーション結果を示す説明図、(a)ターゲット#1に対する到来方向の推定精度の誤差を示す累積確立分布、(b)ターゲット#2に対する到来方向の推定精度の誤差を示す累積確立分布
【図11】各ターゲットの存在位置に対する到来方向の推定精度の誤差を示す累積確立分布を示すシミュレーション結果を示す説明図、(a)ターゲット#3に対する到来方向の推定精度の誤差を示す累積確立分布、(b)ターゲット#4に対する到来方向の推定精度の誤差を示す累積確立分布
【図12】第1の実施形態の変形例1のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図13】第1の実施形態の変形例2のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図14】第1の実施形態の変形例3のレーダ装置の内部構成を詳細に示すブロック図
【図15】レーダ装置が合計480回のパルス圧縮符号を繰り返し送信した信号に対し、4つの異なる移動速度のターゲットからの反射波を含む信号をレーダ装置の受信部が受信し、パルス圧縮処理後に、各レンジゲートに、それぞれ異なるコヒーレント積分数及びノンコヒーレント積分数の組合せを用いて積分処理した結果の一例、(a)コヒーレント積分数が30回であり、ノンコヒーレント積分数が16回である検出結果、(b)コヒーレント積分数が60回であり、ノンコヒーレント積分数が8回である検出結果、(c)コヒーレント積分数が120回であり、ノンコヒーレント積分数が4回である検出結果、(d)コヒーレント積分数が240回であり、ノンコヒーレント積分数が2回である検出結果、(e)コヒーレント積分数が480回であり、ノンコヒーレント積分数が1回である検出結果
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明に係るレーダ装置の各実施形態を説明する前に、以下、後述の各実施形態の前提となる技術内容として、パルス圧縮処理、及び相補符号に関してそれぞれ簡単に説明する。
【0047】
(パルス圧縮処理)
先ず、パルス圧縮処理に関して説明する。例えば、上述した低レンジサイドローブ特性を有するパルス波又はパルス変調波として、Barker符号、M系列符号、相補符号の少なくとも1つを含むパルス圧縮符号を用いて高周波のレーダ送信信号を送信するパルス圧縮レーダが知られている。
【0048】
パルス圧縮とは、レーダ装置が上記のパルス圧縮符号を用いた複数のパルス信号をパルス変調又は位相変調して、等価的にパルス幅の広い信号を用いて送信し、反射波の受信後の信号処理において受信信号を復調して、送信に用いたパルス圧縮符号との相関を求めることによって、元のパルス幅の狭い信号に変換(圧縮)して相関値を演算することである。パルス圧縮によれば、受信電力を等価的に高め、ターゲットの探知距離を増大し、更に、探知距離に対する距離推定精度が向上する。
【0049】
(相補符号)
次に、相補符号に関して説明する。相補符号は、複数例えば2つのペアとなる相補符号系列(a、b)を用いた符号である。相補符号は、一方の相補符号系列aと他方の相補符号系列bの各自己相関演算結果において、遅延時間τ[秒]を一致させた各自己相関演算結果の加算によって、レンジサイドローブがゼロとなる性質を有する。なお、パラメータnはn=1,2,…,Lである。パラメータLは、符号系列長又は単に符号長を示す。
【0050】
相補符号の生成方法は、例えば下記参考非特許文献1に開示されている。
(参考非特許文献1)BUDISIN, S. Z,「NEW COMPLEMENTARY PAIRS OF SEQUENCES」,Electron. Lett., 26,(13), pp.881−883(1990)
【0051】
相補符号系列(a,b)のうち、一方の相補符号系列aの自己相関値演算結果は、数式(5)に従って演算される。他方の相補符号系列bの自己相関値演算結果は、数式(6)に従って演算される。なお、パラメータRは自己相関値演算結果を示す。但し、n>L又はn<1では、相補符号系列a,bはゼロとする(すなわち、n>L又はn<1において、a=0、b=0)。なお、アスタリスク*は複素共役演算子を示す。
【0052】
【数5】

【0053】
【数6】

【0054】
数式(5)に従って演算された相補符号系列aの自己相関値演算結果Raa(τ)は、遅延時間(あるいはシフト時間)τがゼロであるとピークが発生し、遅延時間τがゼロ以外では、レンジサイドローブが存在する。同様に、数式(6)に従って演算された相補符号系列bの自己相関値演算結果Rbb(τ)は、遅延時間τがゼロであるとピークが発生し、遅延時間τがゼロ以外では、レンジサイドローブが存在する。
【0055】
これらの自己相関値演算結果(Raa(τ),Rbb(τ))の加算値は、遅延時間τがゼロであるとピークが発生し、遅延時間τがゼロ以外ではレンジサイドローブが存在せずにゼロになる。以下、遅延時間τがゼロであると発生するピークを「メインローブ」という。この関係を数式(7)に示す。
【0056】
【数7】

【0057】
相補符号では、上述した自己相関特性から、より短い符号長によってピークサイドローブレベルを低減できる。このため、短い符号長を用いる相補符号では、近距離に存在するターゲットと遠距離に存在するターゲットとからの反射波が混合された信号を受信しても、受信ダイナミックレンジを低減できる。
【0058】
また、相補符号は、符号長LのBarker符号、M系列符号を用いることによって、ピークサイドローブ比は20log10(1/L)[dB]によって与えられる。このため、相補符号は、符号長Lを長くすることによって、優れた低レンジサイドローブ特性が得られる。
【0059】
(本発明の各実施形態)
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0060】
以下の説明において、本発明に係るレーダ装置は、ターゲットからの反射波の信号を受信する複数の受信アンテナを有する。例えば4つの受信アンテナ(アレーアンテナ)を有する構成を例に示すがこれに限定されない。なお、4つの受信アンテナは4つの受信アンテナ素子であってもよい。
【0061】
(第1の実施形態)
第1の実施形態のレーダ装置1の構成及び動作について、図1〜図6を参照して説明する。図1は、第1の実施形態のレーダ装置1の内部構成を簡略に示すブロック図である。図2は、第1の実施形態のレーダ装置1の内部構成を詳細に示すブロック図である。図3は、高周波送信信号の送信区間Twと送信周期Trとの関係を示す説明図である。図4は、送信信号生成部4の他の内部構成を詳細に示すブロック図である。
【0062】
図5は、高周波送信信号の送信区間Twと送信周期Trと測定範囲との関係を示す説明図である。図6は、信号処理部の他の内部構成を詳細に示すブロック図である。
【0063】
レーダ装置1は、レーダ送信部2により生成された高周波送信信号を送信アンテナAN1から送信(発射)する。レーダ装置1は、ターゲットにより反射された高周波送信信号である反射波の信号を、例えば図2に示す様な4つの受信アンテナAN2〜AN2−4(不図示、以下同様)において受信する。レーダ装置1は、各受信アンテナAN2〜AN2−4において受信された信号の信号処理によって、ターゲットの有無を検出する。
【0064】
なお、ターゲットはレーダ装置1が検出する対象の物体であり、例えば自動車又は人を含み、以下の各実施形態においても同様である。
【0065】
先ず、レーダ装置1の各部の構成について簡略に説明する。
【0066】
レーダ装置1は、図2に示す様に、レーダ送信部2及びレーダ受信部3を含む構成である。レーダ送信部2は、送信信号生成部4、及び、送信アンテナAN1と接続される送信RF部5を有する。レーダ送信部2及びレーダ受信部3は、基準信号発振器Loに接続され、基準信号発振器Loから信号が供給され、レーダ送信部2及びレーダ受信部3の処理の同期が揃うようになっている。
【0067】
レーダ受信部3は、D個のアンテナ系統処理部11−1〜11−D、p個の相関行列生成部21−1〜21−p、p個の加算部22−1〜22−p、出力選択制御部23、及び出力選択部24を有する。パラメータD、パラメータpは、2以上の整数である。各アンテナ系統処理部は同様の構成を有し、以下の説明では、アンテナ系統処理部11−1を例示して説明する。
【0068】
アンテナ系統処理部11−1は、受信アンテナAN2と接続される受信RF部12、相関値演算部19、及びp個のコヒーレント積分部20−1−1〜20−1−pを少なくとも有する。
【0069】
(レーダ送信部)
次に、レーダ送信部2の各部の構成について詳細に説明する。以下、レーダ送信部2の各部の構成について図3を参照して説明する。
【0070】
レーダ送信部2は、図3に示す様に、送信信号生成部4、及び、送信アンテナAN1が接続された送信RF部5を含む構成である。
【0071】
送信信号生成部4は、符号生成部6、変調部7、及びLPF(Low Pass Filter)8を含む構成である。なお、図3では、送信信号生成部4はLPF8を含む様に構成されているが、LPF8は、送信信号生成部4と独立してレーダ送信部2の中に構成されても良い。
【0072】
送信RF部5は、周波数変換部9、及び増幅器10を含む構成である。
【0073】
次に、レーダ送信部2の各部の動作について詳細に説明する。
【0074】
送信信号生成部4は、基準信号発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。送信信号生成部4の各部は、生成された信号に基づいて動作する。
【0075】
送信信号生成部4は、符号長Lの符号系列aの変調によって、数式(8)に示すベースバンドの送信信号r(k、M)(パルス圧縮符号とも言う)を周期的に生成する。ここで、パラメータn=1,・・・,Lであり、パラメータLは、符号系列aの符号長を表す。パラメータjは、j=−1を満たす虚数単位である。
【0076】
数式(8)に示されたベースバンドの送信信号r(k、M)は、第M番目の送信周期Trの離散時刻kにおける送信信号を示し、同相信号成分Ir(k、M)と、虚数単位jが乗算された直交信号成分Qr(k、M)との加算結果で示される。
【0077】
【数8】

【0078】
また、送信信号生成部4により生成される送信信号は、図3に示す様に、例えば各送信周期Trの送信区間Tw[秒]では、符号長Lの符号系列aに対して、1つのパルス符号あたりNo[個]のサンプルが存在する。従って、送信区間Twにおいては、Nr(=No×L)のサンプルが含まれる。また、各送信周期Trの非送信区間(Tr−Tw)[秒]では、ベースバンドの送信信号としてNu[個]のサンプルが存在する。パラメータkは、離散時刻である。
【0079】
符号生成部6は、送信周期Tr毎に、符号長Lの符号系列aのパルス圧縮用の送信符号を生成する。この送信符号は、例えば、上述した相補符号のペアを構成する符号系列の他に、Barker符号系列又はM系列符号のいずれか1つを含む符号であることが好ましい。
【0080】
符号生成部6は、生成された符号系列aの送信符号を変調部7に出力する。以下、符号系列aの送信符号を、便宜的に送信符号aと記載する。
【0081】
なお、符号生成部6は、送信周期Trにおいて、送信符号aとして相補符号のペアを生成する場合、2つの送信周期(2Tr)を用いて、送信周期毎に交互にペアとなる符号Pn,Qnをそれぞれ生成する。
【0082】
すなわち、第M番目の送信周期(Tr)において、パルス圧縮符号a(M)として符号Pnを送信し、続く第(M+1)番目の送信周期(Tr)ではパルス圧縮符号a(M+1)として、符号Qnを送信する。これ以後、第(M+2)番目以降の送信周期では、第M番目の送信周期及び第(M+1)の2つの送信周期を一つの単位として、同様に、繰り返し符号Pn,Qnを生成する。
【0083】
変調部7は、符号生成部6により出力された送信符号aを入力する。変調部7は、入力された送信符号aのパルス変調によって、数式(8)に示されるベースバンドの送信信号r(k,M)を生成する。なお、パルス変調とは、振幅変調、ASK(Amplitude Shift Keying))又は位相変調(PSK(Phase Shift Keying)である。また、変調部7は、LPF8を介して、生成された送信信号r(k,M)のうち、予め設定された制限帯域以下の送信信号r(k,M)を送信RF部5に出力する。
【0084】
送信RF部5は、基準信号発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、リファレンス信号を所定倍数に逓倍した信号を生成する。送信RF部5は、生成された信号に基づいて動作する。
【0085】
周波数変換部9は、送信信号生成部4により生成された送信信号r(k,M)を入力し、入力されたベースバンドの送信信号r(k,M)をアップコンバートすることによって、キャリア周波数帯域の高周波送信信号を生成する。周波数変換部9は、生成された高周波送信信号を増幅器10に出力する。
【0086】
増幅器10は、出力された高周波送信信号を入力し、入力された高周波送信信号のレベルを所定のレベルに増幅することによって、送信アンテナAN1に出力する。この増幅された高周波送信信号は、送信アンテナAN1を介した空間への放射によって送信される。
【0087】
送信アンテナAN1は、送信RF部5により出力された高周波送信信号を空間に放射することによって送信する。図4に示す様に、高周波送信信号は、送信周期Trのうち送信区間Twの間に送信され、非送信区間(Tr−Tw)の間には送信されない。
【0088】
なお、送信RF部5、及び各アンテナ系統処理部11−1〜11−4の受信RF部12〜12−4(不図示、以下同様)には、基準信号発振器Loにより生成されたリファレンス信号が所定倍に逓倍された信号が共通に供給されている。これにより、各送信RF部5及び受信RF部12〜12−4間が同期した動作ができる。
【0089】
なお、上述した符号生成部6を送信信号生成部4に設けず、図4に示す様に、送信信号生成部4により生成された送信符号aを予め記憶する送信符号記憶部CMを設けても良い。更に、送信信号生成部4により相補符号が生成されるには、相補符号のペア、例えば、送信周期毎に交互にペアとなる符号Pn,Qnを送信符号記憶部CMに記憶されることが好ましい。
【0090】
なお、図4に示した送信符号記憶部CMは、第1の実施形態に限らず、後述の各実施形態にも同様に適用できる。図4に示す様に、送信信号生成部4は、送信符号記憶部CM、送信符号制御部CT、変調部7及びLPF8を含む構成である。
【0091】
図4において、送信符号制御部CTは、基準信号発振器Loにより出力されたリファレンス信号を所定倍に逓倍した信号に基づいて、送信周期Tr毎に、送信符号a(又は相補符号を構成する送信符号Pn,送信符号Qn)を、送信符号記憶部CMから巡回的に読み出して変調部7に出力する。変調部7に出力された以降の動作は上述した変調部7及びLPF8と同様のため、動作の説明は省略する。
【0092】
(レーダ受信部)
次に、レーダ受信部3の各部の構成について詳細に説明する。
【0093】
レーダ受信部3は、複数の例えば4つのアンテナ系統処理部を有し、アンテナ系統処理部毎に1つの受信アンテナが接続されており、4つの受信アンテナを含むアレーアンテナを構成している。以下、レーダ受信部3の各部の構成について図2を参照して説明する。
【0094】
図2に示すレーダ受信部3は、アンテナ系統処理部の個数を示すパラメータDが4であり、コヒーレント積分部、相関行列生成部及び加算部の各個数を示すパラメータPが3である。なお、第1の実施形態を含む以下の各実施形態において、コヒーレント積分部、相関行列生成部及び加算部の個数は同一である。
【0095】
レーダ受信部3は、図2に示す様に、アレーアンテナを構成する受信アンテナの本数に対応して設けられた4つのアンテナ系統処理部11−1〜11−4、第1〜第3相関行列生成部21−1〜21−3、第1〜第3加算部22−1〜22−3、出力選択制御部23、出力選択部24及び到来方向推定部25を含む構成である。
【0096】
以下の説明においては、4つのアンテナ系統処理部11−1〜11−4の各部の構成及び動作は同様であるため、アンテナ系統処理部11−1を例示して説明し、後述の各実施形態においても同様である。更に、図2に示すアンテナ系統処理部11−1の各部の符号に関して、例えば受信RF部12−1と記載せずに、単に受信RF部12と記載する。
【0097】
なお、図12〜図14に示す各アンテナ系統処理部の各部の符号の説明においても同様である。なお、必要に応じて第1アンテナ系統処理部以外の他のアンテナ系統処理部の各部の説明において、例えば受信RF部12−2と記載する。
【0098】
アンテナ系統処理部11−1は、受信アンテナAN2が接続された受信RF部12、及び信号処理部13を含む構成である。受信RF部12は、増幅器14、周波数変換部15及び直交検波部16を含む構成である。信号処理部13は、A/D変換部17,18、相関値演算部19、及び第1〜第3コヒーレント積分部20−1〜20−3を含む構成である。信号処理部13は、各送信周期Trを信号処理区間として周期的に演算する。
【0099】
次に、レーダ受信部3の各部の動作について詳細に説明する。
【0100】
受信アンテナAN2は、レーダ送信部2により送信された高周波送信信号がターゲットにより反射された反射波の信号を受信する。受信アンテナAN2により受信された受信信号は、受信RF部12に出力される。
【0101】
受信RF部12は、送信RF部5と同様に、基準信号発振器Loにより生成されたリファレンス信号に基づいて、リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。受信RF部12は、生成された信号に基づいて動作する。
【0102】
増幅器14は、受信アンテナAN2により受信された高周波帯域の受信信号を入力し、入力された受信信号のレベルを増幅して周波数変換部15に出力する。
【0103】
周波数変換部15は、増幅器14により出力された高周波帯域の受信信号を入力し、入力された高周波帯域の受信信号をベースバンドにダウンコンバートし、ダウンコンバートされた受信信号を直交検波部16に出力する。
【0104】
直交検波部16は、周波数変換部15により出力されたベースバンドの受信信号を直交検波することによって、同相信号(In-phase signal)及び直交信号(Quadrate signal)を用いて構成されるベースバンドの受信信号を生成する。直交検波部16は、生成された受信信号のうち、同相信号をA/D変換部17に出力し、直交信号をA/D変換部18に出力する。
【0105】
A/D変換部17は、直交検波部16により出力されたベースバンドの同相信号を離散時刻k毎にサンプリングすることによって、アナログデータの同相信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部17は、離散時刻k毎に変換されたデジタルデータの同相信号成分を、離散サンプル値として相関値演算部19に出力する。
【0106】
A/D変換部17は、直交検波部16により出力されたベースバンドの同相信号を、送信信号生成部4により生成される送信信号の1つのパルス幅(パルス時間)Tp(=Tw/L)あたりNs[個]の割合によってサンプリングする。従って、A/D変換部17のサンプリングレートは、Ns/Tpとなり、1パルス当たりのオーバーサンプル数はNs[個]である。
【0107】
同様に、A/D変換部18は、直交検波部16により出力されたベースバンドの直交信号を離散時刻k毎にサンプリングすることによって、アナログデータの直交信号をデジタルデータに変換する。A/D変換部18は、離散時刻k毎に変換されたデジタルデータの直交信号成分を、離散サンプル値として相関値演算部19に出力する。
【0108】
A/D変換部18は、直交検波部16により出力されたベースバンドの直交信号を、送信信号生成部4により生成される送信信号の1つのパルス幅(パルス時間)Tp(=Tw/L)あたりNs[個]の割合によってサンプリングする。従って、A/D変換部18のサンプリングレートは、Ns/Tpとなり、1パルス当たりのオーバーサンプル数はNs[個]である。
【0109】
なお、A/D変換部17,18により変換された第M番目の送信周期Trの離散時刻kにおける受信信号は、受信信号の同相信号成分I(k、M)及び直交信号成分Q(k、M)を用いて、数式(9)の複素信号x(k、M)として表す。以下の各実施形態においても同様である。ここで、jは虚数単位である。
【0110】
パラメータkは、A/D変換部17,18によりサンプリングされる場合のタイミングを示し、離散時刻k=1は、各送信周期Trの開始時点を示す。離散時刻k=Ns×(Nr/No)は、各送信周期Trにおける送信区間Twの終了時点を示す。
【0111】
更に、離散時刻k=(Nr+Nu)×(Ns/No)は、各送信周期Trの終了直前時点を示す。すなわち、離散時刻kは、レーダ送信周期(Tr)の開始するタイミングを基準(k=1)とする。A/D変換部17,18は、レーダ送信周期Trが終了する前までのサンプル点である離散時刻k(=(Nr+Nu)×Ns/No)まで、周期的に計測する。すなわち、k=1〜Ns(Nr+Nu)/Noを満たす離散時刻である。離散時刻kの範囲は、後述の各実施形態においても同様である。
【0112】
【数9】

【0113】
相関値演算部19は、A/D変換部17,18により出力された各離散サンプル値x(k,M)を入力する。相関値演算部19は、送信信号生成部4の動作と同期を確立するために、送信信号生成部4と同様に、基準信号発振器Loにおいて生成されたリファレンス信号に基づいて、リファレンス信号を所定倍に逓倍した信号を生成する。なお、図2では、相関値演算部19へのリファレンス信号の入力は省略している。
【0114】
相関値演算部19は、リファレンス信号を所定倍に逓倍された信号に基づいて、離散時刻kに応じて、第M番目の送信周期Trにおいて送信する符号長Lのパルス圧縮符号a(M)を周期的に生成する。ここで、パラメータn=1,…,Lである。パラメータLは符号長である。
【0115】
相関値演算部19は、入力された離散サンプル値x(k,M)と、パルス圧縮符号a(M)との相関値AC(k,M)を演算する。この相関値AC(k,M)は、第M番目の送信周期Trにおける離散時刻kにおける相関値を示す。
【0116】
具体的には、相関値演算部19は、図5に示す各送信周期Tr、即ち離散時刻k=1〜(Nr+Nu)/Noにおいては、数式(10)に従って相関値AC(k,M)を演算する。相関値演算部19は、数式(10)に従って演算された相関値AC(k,M)を第1〜第3コヒーレント積分部20−1〜20−3にそれぞれ出力する。
【0117】
図5の第1段は高周波送信信号の送信タイミングを示し、同図の第2段は反射波の信号の受信タイミングを示す。反射波の信号は、送信区間Twの間に送信された高周波送信信号が、ターゲットにより反射された波である。
【0118】
【数10】

【0119】
相関値演算部19は、離散時刻k=1〜Ns(Nr+Nu)/Noにおいて演算する。なお、レーダ装置1の測定対象となるターゲットの存在範囲によって、測定レンジ(kの範囲)を、例えばk=Ns(L+1)〜{(Ns(Nr+Nu)/No)−NsL}の様に更に狭めた限定をしてもよい。
【0120】
図5の第2段に示す様に、離散時刻k=Ns(L+1)は、送信区間Twの終了時刻の次の離散時刻を示す。更に、離散時刻k=Ns(L+1)は、反射波の信号が、離散時刻k=0より遅延時間τ1ほど遅れて開始される受信の開始時刻である。この遅延時間τ1は、数式(11)により示される。
【0121】
【数11】

【0122】
図5の第2段に示す様に、離散時刻k={(Ns(Nr+Nu)/No)−NsL}は、送信周期Trの終了時刻から送信区間Tw(=Tp×L)前の時刻に相当する。更に、離散時刻k={(Ns(Nr+Nu)/No)−NsL}は、反射波の信号が、離散時刻k=0より遅延時間τ2ほど遅れて開始される受信の開始時刻である。この遅延時間τ2は、数式(12)により示される。
【0123】
【数12】

【0124】
従って、相関値演算部19は、少なくとも離散時刻k=Ns(L+1)〜{(Ns(Nr+Nu)/No)−NsL}の範囲において上述した数式(10)に示す相関値AC(k,M)を演算しても良い。これにより、レーダ装置1は、相関値演算部19の演算量を低減できる。即ち、レーダ装置1は、信号処理部13による演算量の削減に基づく消費電力量を低減できる。なお、他のアンテナ系統処理部11−2〜11−4に関しても同様である。
【0125】
更に、レーダ装置1は、高周波送信信号の送信区間Twにおいて測定せず、高周波送信信号がレーダ受信部3に直接的に回り込んだとしても、回り込みによる影響を排除して測定できる。測定レンジ(離散時刻kの範囲)の限定によって、後述する第1〜第3コヒーレント積分部20−1〜20−3、第1〜第3相関行列生成部21−1〜21−3、第1〜第3加算部22−1〜22−3、出力選択制御部23、出力選択部24及び到来方向推定部25の動作も同様の測定レンジに限定した範囲となる。
【0126】
第1コヒーレント積分部20−1は、相関値演算部19により出力された相関値AC(k,M)を入力する。第1コヒーレント積分部20−1は、第M番目の送信周期Trにおいて離散時刻k毎に演算された相関値AC(k,M)を基に、複数回(N回)の送信周期Trの期間(N×Tr)にわたって、積分数Nのコヒーレント積分をする。
【0127】
パラメータNは、第1コヒーレント積分部20−1によるコヒーレント積分の積分回数である。第1コヒーレント積分部20−1は、数式(13)においてパラメータp=1としてコヒーレント積分する。パラメータmは自然数である。パラメータqは、遅延時間である。
【0128】
【数13】

【0129】
即ち、第1コヒーレント積分部20−1は、第{N(m−1)+1}番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N(m−1)+1)から第(N×m)番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N×m)を単位として、離散時刻kのタイミングを揃えて相関値CI(k,m)を演算する。第1コヒーレント積分部20−1は、演算された相関値CI(k,m)を第1相関行列生成部21−1に出力する。ここで、mは自然数である。
【0130】
第2コヒーレント積分部20−2は、相関値演算部19により出力された相関値AC(k,M)を入力する。第2コヒーレント積分部20−2は、第M番目の送信周期Trにおいて離散時刻k毎に演算された相関値AC(k,M)を基に、複数回(N回)の送信周期Trの期間(N×Tr)にわたって、積分数Nのコヒーレント積分をする。
【0131】
パラメータNは、第2コヒーレント積分部20−2によるコヒーレント積分の積分回数である。第2コヒーレント積分部20−2は、数式(13)においてパラメータp=2としてコヒーレント積分する。
【0132】
即ち、第2コヒーレント積分部20−2は、第{N(m−1)+1}番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N(m−1)+1)から第(N×m)番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N×m)を単位として、離散時刻kのタイミングを揃えて相関値CI(k,m)を演算する。第2コヒーレント積分部20−2は、演算された相関値CI(k,m)を第2相関行列生成部21−2に出力する。ここで、mは自然数である。
【0133】
第3コヒーレント積分部20−3は、相関値演算部19により出力された相関値AC(k,M)を入力する。第3コヒーレント積分部20−3は、第M番目の送信周期Trにおいて離散時刻k毎に演算された相関値AC(k,M)を基に、複数回(N回)の送信周期Trの期間(N×Tr)にわたって、積分数Nのコヒーレント積分をする。
【0134】
パラメータNは、第3コヒーレント積分部20−3によるコヒーレント積分の積分回数である。第3コヒーレント積分部20−3は、数式(13)においてパラメータp=3としてコヒーレント積分する。パラメータmは自然数である。
【0135】
即ち、第3コヒーレント積分部20−3は、第{N(m−1)+1}番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N(m−1)+1)から第(N×m)番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N×m)を単位として、離散時刻kのタイミングを揃えて相関値CI(k,m)を演算する。第3コヒーレント積分部20−3は、演算された相関値CI(k,m)を第3相関行列生成部21−3に出力する。ここで、mは自然数である。
【0136】
なお、第1〜第3コヒーレント積分部20−1〜20−3における各積分回数N〜Nは、数式(14)を満たす。更に、各積分回数N〜Nは、それぞれ高速移動、中速移動、低速移動している各ターゲットからの各反射波の信号に対応している。また、各積分回数N〜Nは、各ターゲットからの各反射波の信号を受信する場合のSNRを向上するため、各時間相関の高い区間に応じたコヒーレント積分利得が得られる様に設定されている。
【0137】
【数14】

【0138】
これにより、レーダ装置1は、高速、中速、低速のうちいずれかの速度によって移動しているターゲットからの反射波の信号を、時間相関の高い区間においてP個の異なるコヒーレント積分数(N回(p=1〜P。ここではP=3)を有するコヒーレント積分部を用いてコヒーレント積分する。
【0139】
レーダ装置1は、上記のコヒーレント積分によって、移動しているターゲットの速度に応じて各反射波の信号の受信におけるSNRを向上する。
【0140】
更に、レーダ装置1は、ターゲットの到来距離の推定に関する距離性能を向上する。
【0141】
なお、各コヒーレント積分部20−1〜20−3は、個別にコヒーレント積分しても良いが、積分数が多いコヒーレント積分の演算過程において積分数の少ないコヒーレント積分の結果が用いられても良い。これにより、レーダ装置1は、信号処理部13におけるコヒーレント積分数を削減でき、信号処理部13の回路規模を低減できる。
【0142】
例えば、図6に示す様に、信号処理部13において、第1コヒーレント積分部20−1の積分結果は第2コヒーレント積分部20−2に入力され、第2コヒーレント積分部20−2の積分結果は第3コヒーレント積分部20−3に入力される。
【0143】
各コヒーレント積分部20−1〜20−3の積分数が数式(15)を満たす場合、第pコヒーレント積分部は、第(p−1)コヒーレント積分部の出力を用いてコヒーレント積分する。パラメータα,βは2以上の自然数である。
【0144】
【数15】

【0145】
第(p−1)コヒーレント積分部の積分数Np−1に対する第pコヒーレント積分部の積分数Nの比(N/Np−1)が自然数でない場合、第pコヒーレント積分部は、NとNp−1との最大公約数を単位とし、第(p−1)コヒーレント積分部の出力を用いてコヒーレント積分する。但し、パラメータNとパラメータNp−1との間には、数式(16)が成立している。これにより、レーダ装置1は、信号処理部13の回路規模を低減できる。
【0146】
【数16】

【0147】
第1相関行列生成部21−1は、各アンテナ系統処理部11〜11−4の各第1コヒーレント積分部により出力された各相関値CI(k,m),…,CI(k,m)を入力する。第1相関行列生成部21−1は、入力された各相関値CI(k,m),…,CI(k,m)を基に、ターゲットからの反射波の信号の受信アンテナ間の位相差を検出するために、離散時刻k毎に相関行列H(k,m)を生成する。
【0148】
相関行列H(k,m)は、パラメータp=1である数式(17)に従って生成される。数式(17)において、上付き添え字Hは、複素共役転置を表す演算子である。各実施形態において、相関行列は、複数のアンテナ系統処理部の複数のコヒーレント積分部の各出力に基づいて生成され、各受信アンテナの配置に起因する位相差情報である。
【0149】
【数17】

【0150】
更に、第1相関行列生成部21−1は、N回の送信周期Trの期間(N×Tr)にわたって、N回の送信周期Trの期間(N×Tr)毎に得られた各相関行列を、パラメータp=1である数式(18)に従って加算平均する。
【0151】
【数18】

【0152】
パラメータDは、第1相関行列生成部21−1により加算平均される相関行列の個数を表し、パラメータp=1である数式(19)を満たす。第1相関行列生成部21−1は、加算平均された相関行列を、第1〜第3加算部22−1〜22−3及び出力選択制御部23に出力する。
【0153】
【数19】

【0154】
第2相関行列生成部21−2は、各アンテナ系統処理部11〜11−4の各第2コヒーレント積分部により出力された各相関値CI(k,m),…,CI(k,m)を入力する。第2相関行列生成部21−2は、入力された各相関値CI(k,m),…,CI(k,m)を基に、ターゲットからの反射波の信号の受信アンテナ間の位相差を検出するために、離散時刻k毎に相関行列H(k,m)を生成する。
【0155】
相関行列H(k,m)は、パラメータp=2である数式(17)に従って生成される。
【0156】
更に、第2相関行列生成部21−2は、N回の送信周期Trの期間(N×Tr)にわたって、N回の送信周期Trの期間(N×Tr)毎に得られた各相関行列を、パラメータp=2である数式(18)に従って加算平均する。
【0157】
パラメータDは、第2相関行列生成部21−2により加算平均される相関行列の個数を表し、パラメータp=2である数式(19)を満たす。第2相関行列生成部21−2は、加算平均された相関行列を、第2,第3加算部22−2,22−3及び出力選択制御部23に出力する。
【0158】
第3相関行列生成部21−3は、各アンテナ系統処理部11〜11−4の各第3コヒーレント積分部により出力された各相関値CI(k,m),…,CI(k,m)を入力する。第3相関行列生成部21−3は、入力された各相関値CI(k,m),…,CI(k,m)を基に、ターゲットからの反射波の信号の受信アンテナ間の位相差を検出するために、離散時刻k毎に相関行列H(k,m)を生成する。
【0159】
相関行列H(k,m)は、パラメータp=3である数式(17)に従って生成される。
【0160】
更に、第3相関行列生成部21−3は、N回の送信周期Trの期間(N×Tr)にわたって、N回の送信周期Trの期間(N×Tr)毎に得られた各相関行列を、パラメータp=3である数式(18)に従って加算平均する。
【0161】
パラメータDは、第3相関行列生成部21−3により加算平均される相関行列の個数を表し、パラメータp=3である数式(18)を満たす。第3相関行列生成部21−3は、加算平均された相関行列を、第3加算部22−3及び出力選択制御部23に出力する。
【0162】
なお、パラメータNは、パラメータN,N,Nの最小公倍数又はその整数倍である場合、D、D、Dが整数値となり好ましいが、数式(19)が整数値でない場合は、例えば、小数点値切り捨て処理を加え、整数値にまとめることによって同様に適用が可能である。
【0163】
なお、各相関行列生成部は、数式(17)の代わりに数式(20)を用い、複数のアンテナ系統処理部11〜11−4のうちいずれかのアンテナ系統処理部の受信アンテナによって受信された信号の位相を基準位相として、相関ベクトルを生成しても良い。
【0164】
【数20】

【0165】
数式(20)において、上付き添え字のアスタリスク(*)は、複素共役演算子を表す。これにより、レーダ装置1は、各相関行列生成部の演算量を低減し、ターゲットからの反射波の信号の受信アンテナ間の位相差を簡易に検出できる。
【0166】
第1加算部22−1は、パラメータp=1である数式(18)に従って生成された相関行列B(k)を入力する。第1加算部22−1は、入力された相関行列B(k)を、パラメータp=1である数式(21)に従って加算する。なお、第1加算部22−1は、相関行列を加算するために、相関出力の大きさに比例した重み付け係数を乗じて加算しても良い。第1加算部22−1は、加算された相関行列A(k)を出力選択部24に出力する。
【0167】
【数21】

【0168】
第2加算部22−2は、パラメータp=1及びp=2である数式(18)に従って生成された相関行列B(k)及びB(k)を入力する。第2加算部22−2は、入力された相関行列B(k)及びB(k)を、パラメータp=2である数式(21)に従って加算する。なお、第2加算部22−2は、相関行列を加算するために、相関出力の大きさに比例した重み付け係数を乗じて加算しても良い。第2加算部22−2は、加算された相関行列A(k)を出力選択部24に出力する。
【0169】
第3加算部22−3は、パラメータp=1、p=2及びp=3である数式(18)に従って生成された相関行列B(k),B(k)及びB(k)を入力する。第3加算部22−3は、入力された相関行列B(k),B(k)及びB(k)を、パラメータp=3である数式(21)に従って加算する。なお、第3加算部22−3は、相関行列を加算するために、相関出力の大きさに比例した重み付け係数を乗じて加算しても良い。第3加算部22−3は、加算された相関行列A(k)を出力選択部24に出力する。
【0170】
出力選択制御部23は、パラメータp=1、p=2及びp=3である数式(18)に従って生成された相関行列B(k),B(k)及びB(k)を入力する。出力選択制御部23は、入力された各相関行列を基に、各相関行列のうち、離散時刻k毎にコヒーレント積分利得が最大の相関行列を生成した相関行列生成部を選択する。
【0171】
具体的には、出力選択制御部23は、入力された各相関行列を基に、コヒーレント積分後の平均受信電力成分に相当する相関行列の対角成分の和が最大となる相関行列を生成した相関行列生成部のインデックスを、離散時刻k毎に選択する。即ち、出力選択制御部23は、数式(22)に従って、相関行列生成部のインデックスselect_index(k)を選択する。
【0172】
【数22】

【0173】
数式(22)において、diag[B(k)]は、相関行列B(k)の対角成分の和を演算する演算子である。出力選択制御部23は、離散時刻k毎に、選択されたインデックスselect_index(k)を出力選択部24に出力する。
【0174】
なお、出力選択制御部23は、D個の全てのアンテナ系統処理部の各コヒーレント積分部の出力を用いて数式(22)に従って、離散時刻k毎にコヒーレント積分利得が最大の相関行列を生成した相関行列生成部を選択した。なお、出力選択制御部23は、D個ではなく、1個又は一部のアンテナ系統処理部の各コヒーレント積分部の出力を用いて数式(22)に従って、離散時刻k毎にコヒーレント積分利得が最大の相関行列を生成した相関行列生成部を選択しても良い。
【0175】
なお、出力選択制御部23は、相関行列の対角成分の和に、数式(23)に示す比の値を基にした関数coeff(x)を係数としてdiag[B(k)]に乗じたもの(coeff(x)×diag[B(k)])のうち、最大となる相関行列生成部のインデックスselect_index(k)を、数式(24)に従って選択しても良い。なお、関数coeff(x)は、例えば数式(25)又は数式(26)を満たすことが、必要である。
【0176】
出力選択制御部23において、関数coeff(x)を係数として乗じた処理により、コヒーレント積分によるコヒーレント積分利得が雑音成分の分散値の増加を上回る状況となる。
【0177】
このため、レーダ装置1は、理想的にコヒーレント積分されている場合に、コヒーレント積分数がより多いインデックスselect_index(k)に対応する加算部出力を選択する。
【0178】
これにより、レーダ装置1は、高速移動しているターゲットを低速移動しているターゲットとして検出する様な、ターゲットの選択誤りを低減できる。
【0179】
【数23】

【0180】
【数24】

【0181】
【数25】

【0182】
【数26】

【0183】
なお、出力選択制御部23は、離散時刻kにおけるdiag[B(k)]が所定レベルを満たさない場合には、離散時刻kにおけるターゲットの到来方向を推定しない様に、到来方向推定部25を制御しても良い。これにより、レーダ装置1は、ターゲットが検出されない離散時刻kにおいて、冗長な演算が不要となり、レーダ受信部3における処理遅延を少なくできる。
【0184】
出力選択部24は、離散時刻k毎に、出力選択制御部23により出力されたインデックスselect_index(k)、及び第1〜第3加算部22−1〜22−3により出力された相関行列A(k)〜A(k)を入力する。
【0185】
出力選択部24は、入力されたインデックスselect_index(k)を基に、離散時刻k毎に、インデックスselect_index(k)の相関行列生成部に対応する加算部の出力Aselect_index(k)(k)を選択する。出力選択部24は、離散時刻k毎に選択された加算部の出力Aselect_index(k)(k)を到来方向推定部25に出力する。
【0186】
例えば、出力選択制御部23により選択されたインデックスselect_index(k)が1のため、出力選択部24は、第1相関行列生成部21−1と1対1に対応する第1加算部22−1の出力である相関行列A(k)を選択する。
【0187】
例えば、出力選択制御部23により選択されたインデックスselect_index(k)が2のため、出力選択部24は、第2相関行列生成部21−2と1対1に対応する第2加算部22−2の出力である相関行列A(k)を選択する。
【0188】
例えば、出力選択制御部23により選択されたインデックスselect_index(k)が3のため、出力選択部24は、第3相関行列生成部21−3と1対1に対応する第3加算部22−3の出力である相関行列A(k)を選択する。
【0189】
到来方向推定部25は、離散時刻k毎に出力選択部24により出力された相関行列Aselect_index(k)(k)を入力する。到来方向推定部25は、離散時刻k毎に入力された相関行列Aselect_index(k)(k)を基に、ターゲットの到来方向を推定する。
【0190】
なお、到来方向推定部25によるターゲットまでの到来方向の推定演算は、既に公知の技術であり、例えば下述参考非特許文献2において開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いて実現可能である。
【0191】
(参考非特許文献2)JAMES A. Cadzow、「Direction of Arrival Estimation Using Signal Subspace Modeling」、IEEE、Vol.28、pp.64−79(1992)
【0192】
(本発明に係るレーダ装置のシミュレーション結果)
図7は、或る相関行列生成部の出力に基づいてターゲットの到来方向を推定したシミュレーション結果を示す説明図である。同図(a)は、コヒーレント積分数が30回であり、ノンコヒーレント積分数が120回であるシミュレーション結果である。同図(b)は、コヒーレント積分数が60回であり、ノンコヒーレント積分数が60回であるシミュレーション結果である。同図(c)は、コヒーレント積分数が120回であり、ノンコヒーレント積分数が30回であり、コヒーレント積分数とノンコヒーレント積分数の積がそれぞれ一定となる条件でのシミュレーション結果である。
【0193】
図8は、或る相関行列生成部の出力に基づいてターゲットの到来方向を推定したシミュレーション結果を示す説明図である。同図(a)は、コヒーレント積分数が240回であり、ノンコヒーレント積分数が15回であるシミュレーション結果である。同図(b)は、コヒーレント積分数が480回であり、ノンコヒーレント積分数が7回であり、コヒーレント積分数とノンコヒーレント積分数の積がそれぞれ一定となる条件でのシミュレーション結果である。
【0194】
図9は、出力選択部24により選択された加算部の出力に基づいてターゲットの到来方向を推定したシミュレーション結果を示す説明図である。
【0195】
図7〜図9において、横軸は離散時刻kを基に数式(27)に従って換算したレーダ装置1からターゲットまでの距離rを示し、縦軸は到来方向推定部25により得られた最大受信電力レベル方向の相対受信電力値[dB]を示す。常数値Cは光速度≒3×10[m/s]、パラメータLは符号長、パラメータNsは1つのパルス幅に対するオーバーサンプル数を表す。
【0196】
【数27】

【0197】
図7〜図9に示したシミュレーション結果において、ターゲットは、高速移動しているターゲット#1、中速移動しているターゲット#2、低速移動しているターゲット#3、及び歩行移動しているターゲット#4を想定している。各ターゲットに関するパラメータは次のとおりである。
【0198】
ターゲット#1の移動速度は80[km/h]、ターゲット#1の位置はレーダ装置1から37[m]の場所、ターゲット#1の到来方向推定値は20[degree]である。
【0199】
ターゲット#2の移動速度は40[km/h]、ターゲット#2の位置はレーダ装置1から38[m]の場所、ターゲット#2の到来方向推定値は10[degree]である。
【0200】
ターゲット#3の移動速度は20[km/h]、ターゲット#3の位置はレーダ装置1から39[m]の場所、ターゲット#3の到来方向推定値は0[degree]である。
【0201】
ターゲット#4の移動速度は5[km/h]、ターゲット#4の位置はレーダ装置1から40[m]の場所、ターゲット#4の到来方向推定値は−10[degree]である。
【0202】
図7及び図8の各シミュレーション結果をみると、例えばノンコヒーレント積分数が多い図7(a)及び(b)ではターゲットが存在しない離散時刻の雑音成分が比較的抑圧されている。
【0203】
しかしながら、図7(a)及び(b)ではコヒーレント積分数が少ないため、ターゲットからの反射波の受信信号の受信SNRが低い場合、コヒーレント積分利得を得ても十分な信号レベルとならないことがある。
【0204】
一方、図7(c)及び図8ではノンコヒーレント積分数が少ないため、ターゲットが存在しない離散時刻の雑音成分が十分に抑圧されていない。更に、コヒーレント積分数が多いため、例えば高速移動しているターゲット#1の時間相関の高い期間に加えて、時間相関の短い期間までコヒーレント積分する。
【0205】
これにより、高速移動しているターゲット#1等の相対受信電力値が雑音成分に埋もれてしまうが、雑音成分が十分に抑圧されていないため、ターゲットからの反射波の受信信号の受信SNRが低く、コヒーレント積分数が多い場合に、受信レベルが高くなることがあり、最適なコヒーレント積分数の選択を誤ることがある。
【0206】
図9のシミュレーション結果では、離散時刻k毎に出力選択部24が出力選択制御部23の出力に応じて、各加算部22−1〜22−3の出力のうちいずれかの出力を選択する。
【0207】
図9に示す様に、雑音成分は十分に抑圧されており、更に、ターゲットが存在しない離散時刻における雑音成分の受信レベルから、各ターゲットの受信電力値までの相対的なピークレベルは、図7、図8での各ターゲットの移動速度に応じて最適なコヒーレント積分数のピークレベルとほぼ同程度の結果が得られている。
【0208】
例えばターゲット#4の移動速度は5[km/h]であり、図8(b)が最もコヒーレント利得が高くなっているが、ターゲットが存在しない離散時刻における最大雑音電力成分からのピーク値は14dB程度であり、一方、図9のターゲット#4でのピークレベルもほぼ同様な13dB程度が得られている。
【0209】
図10は、各ターゲットの存在位置に対する到来方向の推定誤差の累積確立分布を示すシミュレーション結果を示す説明図である。同図(a)は、ターゲット#1に対する到来方向の推定誤差の累積確立分布である。同図(b)は、ターゲット#2に対する到来方向の推定誤差の累積確立分布である。
【0210】
図11は、各ターゲットの存在位置に対する到来方向の推定誤差の累積確立分布を示すシミュレーション結果を示す説明図である。同図(a)は、ターゲット#3に対する到来方向の推定誤差の累積確立分布である。同図(b)は、ターゲット#4に対する到来方向の推定誤差の累積確立分布である。
【0211】
図10及び図11には、各ターゲット#1〜#4の存在位置(37[m],38[m],39[m],40[m])に対応する離散時刻kでの相関値演算部19の出力を基に、到来方向を推定した結果の推定精度を示す。
【0212】
図10及び図11の実線は、本発明に係るレーダ装置1の試行回数500回における推定誤差を示す累積確率分布である。横軸は各ターゲット#1〜#4からの各反射波の信号の到来方向真値に対する方向推定誤差を示し、縦軸は累積確率を示し、試行回数500回のうち横軸の到来方向推定誤差を下回る確率をプロットしている。但し、到来方向推定時の分解能は0.1度とした。
【0213】
図10及び図11の点線は、特許文献1に示した従来のレーダ装置において、4つの移動速度が異なるターゲットに対し、最適なコヒーレント積分数とノンコヒーレント積分数との関係を、次に示す様に設定した理想的な組合せにおける方向推定結果である。
【0214】
ターゲット#1に対するコヒーレント積分数は30回であり、ターゲット#1に対するノンコヒーレント積分数は120回である。これらの回数は、ターゲット#1の移動速度に対して最適な組合せとして設定した。
【0215】
ターゲット#2に対するコヒーレント積分数は60回であり、ターゲット#2に対するノンコヒーレント積分数は60回である。これらの回数は、ターゲット#2の移動速度に対して最適な組合せとして設定した。
【0216】
ターゲット#3に対するコヒーレント積分数は120回であり、ターゲット#3に対するノンコヒーレント積分数は30回である。これらの回数は、ターゲット#3の移動速度に対して最適な組合せとして設定した。
【0217】
ターゲット#4に対するコヒーレント積分数は480回であり、ターゲット#4に対するノンコヒーレント積分数は7回である。これらの回数は、ターゲット#4の移動速度に対して最適な組合せとして設定した。
【0218】
異なる移動速度のターゲットに対する推定精度について、次のことが言える。
【0219】
具体的には、移動速度の高いターゲット(#1,#2)では、本発明に係るレーダ装置1は、従来のレーダ装置においてコヒーレント積分数をターゲットの移動速度に対して最もコヒーレント積分利得が高い設定の特性と同程度の特性が得られる。例えば、誤差累積確率90%値は、ターゲット#1では推定誤差1°、ターゲット#2では1.2°が得られている。
【0220】
移動速度の低いターゲット(#3,#4)では、本発明に係るレーダ装置1は、従来のレーダ装置においてコヒーレント積分数をターゲットの移動速度に対して、最もコヒーレント積分利得が高い設定の特性よりも0.1°程度の向上した良好な特性が得られる。
【0221】
この改善要因は、加算部において、異なるコヒーレント積分数によって得られた相関行列を加算することによって、到来方向推定部において用いる相関行列に含まれる到来角度情報のSNRが改善され、方向推定精度が向上したためである。
【0222】
従って、図10及び図11により、本発明に係るレーダ装置1によれば、ターゲットの移動速度によらず、高いコヒーレント利得及びノンコヒーレント利得が得られことがわかる。
【0223】
以上により、レーダ装置1は、相関行列生成部及び加算部における相関行列の合計加算数がノンコヒーレント積分として機能する。すなわち、第p相関行列生成部及び第p加算部の相関行列の合計加算数Nnon−coherentは、数式(28)によって示される。
【0224】
【数28】

【0225】
このため、コヒーレント積分部におけるコヒーレント積分数が多い程、その出力を用いる相関行列生成部及び加算部での、ノンコヒーレント積分数を増加、すなわち、相関行列の加算回数を多くすることによって、出力選択部における選択誤りの確率を抑圧できる。
【0226】
また、出力選択部における選択誤りがあっても、高速ターゲットのコヒーレント積分数の小さい相関行例生成部からの出力が含まれるため、相関行列の対角成分の大きさに比例した重み付けによって、到来角情報が合成され方向推定性能の顕著な劣化を防ぐ。
【0227】
また、低速ターゲットからの反射波は、相関行列を複数回加算する重み付け効果により、従来の低速ターゲット用に最適化したコヒーレント積分数における特性と同程度以上の到来方向推定精度が得られる。
【0228】
これにより、レーダ装置1は、ターゲットの移動速度によらずコヒーレント積分利得を高めることができ、ターゲットからの反射波の信号を受信する場合に、コヒーレント積分数あるいはノンコヒーレント積分数に応じたSNRを向上できる。また、レーダ装置1は雑音レベル(雑音分散)の抑圧によって、最終的なターゲット識別性能を向上させる効果も有する。
【0229】
更に、レーダ装置1は、ターゲットからの反射波の信号における雑音電力成分を抑圧し、高速移動しているターゲットを、低速移動しているターゲットと誤って選択する確率を低減させ、ターゲットの検出精度を向上させる。
【0230】
たとえターゲットの検出誤りがあっても、レーダ装置1は、加算部において、相関行列生成部の出力レベルに比例した重み付けによって、到来方向推定値を合成する。これにより、レーダ装置1は、相関行列の対角成分の大きさに比例した重み付けによって、到来角情報が合成され方向推定性能の顕著な劣化を防ぐ。
【0231】
また、低速移動しているターゲットからの反射波の信号に対する相関行列は、加算部において、コヒーレント積分数の少ないコヒーレント積分部からの出力を基にした相関行列から、コヒーレント積分数の多いコヒーレント積分部からの出力を基にした相関行列までを、複数回加算されることによって重み付けられる。レーダ装置1は、従来の低速ターゲット用に最適化したコヒーレント積分数での特性と同程度以上の到来方向の推定精度を得ることができる。
【0232】
これにより、レーダ装置1は、高速移動するターゲットの到来方向の推定精度を維持し、低速移動するターゲットのコヒーレント積分利得を、簡易な構成によって、向上できる。
【0233】
(第1の実施形態の変形例1)
第1の実施形態の変形例1では、出力選択制御部は、ターゲットの移動速度の変動に起因する所定値以下の位相回転量を基に、出力選択を制御する。
【0234】
図12は、第1の実施形態の変形例1のレーダ装置1xの内部構成を詳細に示すブロック図である。レーダ装置1xと第1の実施形態のレーダ装置1との各部の構成及び動作が同一のブロックには、同一の符号が付されている。以下、レーダ装置1xの構成及び動作の説明において、同一の構成及び動作の内容に関しては省略し、レーダ装置1の構成及び動作と異なる内容に関して説明する。
【0235】
図12において、レーダ装置1xは、送信アンテナAN1と接続されるレーダ送信部2、及び、各受信アンテナAN2〜AN2−4と接続される各アンテナ系統処理部11−1〜11−4を有するレーダ受信部3xを含む構成である。なお、レーダ送信部2及びレーダ受信部3xは、基準信号発振器Loに接続され、基準信号発振器Loから信号が供給され、レーダ送信部2及びレーダ受信部3xの処理の同期が揃うようになっている。
【0236】
(レーダ受信部)
次に、レーダ受信部3xの各部の構成について説明する。レーダ受信部3xには、第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、複数の例えば4つのアレーアンテナが構成されている。更に、第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、アレーアンテナを構成する各受信アンテナはアンテナ系統処理部毎に設けられている。
【0237】
レーダ受信部3xは、複数の例えば4つのアンテナ系統処理部を有し、各アンテナ系統処理部に1つの受信アンテナが接続されており、4つの受信アンテナを含むアレーアンテナを構成している。以下、レーダ受信部3xの各部の構成について図12を参照して説明する。図12に示すレーダ受信部3xは、図2に示すレーダ受信部3と同様に、アンテナ系統処理部の個数を示すパラメータDが4であり、コヒーレント積分部、相関行列生成部及び加算部の各個数を示すパラメータPが3である。
【0238】
レーダ受信部3xは、図12に示す様に、アレーアンテナを構成する受信アンテナの本数に対応して設けられた4つのアンテナ系統処理部11−1〜11−4、第1〜第3相関行列生成部21−1〜21−3、第1〜第3加算部22−1〜22−3、出力選択制御部23x、出力選択部24、到来方向推定部25及びドップラ周波数検出部26を含む構成である。
【0239】
ドップラ周波数検出部26は、各アンテナ系統処理部11−1〜11−4の各第1コヒーレント積分部20−1〜20−3の出力を基に、離散時刻k毎のターゲットの移動速度の変動に起因する位相回転量θ(k)を、パラメータp=1である数式(28)に従って演算する。ドップラ周波数検出部26は、演算された位相回転量θ(k)を出力選択制御部23xに出力する。
【0240】
ドップラ周波数検出部26は、数式(29)に従って演算された位相回転量θ(k)を基に、ドップラ周波数を、数式(30)に従って演算する。なお、angle{y}は、yの角度(位相)成分を演算する演算子である。
【0241】
【数29】

【0242】
ドップラ周波数検出部26は、数式(29)に従って演算された位相回転量θ(k)を基に、ターゲットの相対移動速度v(k)を、パラメータp=1である数式(30)に従って演算する。数式(30)において、パラメータλはレーダ送信部2が高周波送信信号を送信するためのキャリア周波数の波長である。
【0243】
【数30】

【0244】
ドップラ周波数検出部26は、更に数式(30)に従って演算された相対移動速度v(k)を基に、ドップラ周波数f(k)を、数式(31)に従って演算しても良い。
【0245】
なお、図12において、ドップラ周波数検出部26は、D個の全てのアンテナ系統処理部の各コヒーレント積分部の出力を用いて数式(29)に従って、離散時刻k毎に位相回転量θ(k)を演算した。なお、ドップラ周波数検出部26は、D個ではなく、1個又は一部のアンテナ系統処理部の各コヒーレント積分部の出力を用いて数式(28)に従って、離散時刻k毎に位相回転量θ(k)を演算しても良い。
【0246】
【数31】

【0247】
出力選択制御部23xは、離散時刻k毎に、ドップラ周波数検出部26により出力された位相回転量θ(k)を入力する。
【0248】
出力選択制御部23xは、入力された位相回転量θ(k)、を基に、複数P個の加算部の出力を選択する。
【0249】
具体的には、出力選択制御部23xは、コヒーレント積分する期間(Tr×N)における位相回転量θ(k)が所定値TH以下において、最大となる相関行列を生成した相関行列生成部のインデックスpを、離散時刻k毎に選択する。この所定値THは、45°〜90°の範囲であることが好ましい。
【0250】
出力選択制御部23xは、選択した相関行列生成部のインデックスpをインデックスselect_index(k)として、出力選択部24に出力する。以降の動作は、第1の実施形態と同様である。
【0251】
以上により、第1の実施形態の変形例1のレーダ装置1xは、ターゲットの移動速度の変動に起因する位相回転量を離散時刻k毎に演算し、この位相回転量が所定値以下において最大となる相関行列生成部を選択する。従って、レーダ装置1xによれば、第1の実施形態と比べて、高速移動しているターゲットを、低速移動しているターゲットと誤って選択する確率を低減させ、ターゲットの検出精度を向上できる。
【0252】
(第1の実施形態の変形例2)
第1の実施形態の変形例2では、出力選択制御部は、異なるコヒーレント積分数の各コヒーレント積分結果を基に生成された各相関行列の加算結果の対角成分が最大となる相関行列を生成した相関行列生成部を選択する。
【0253】
図13は、第1の実施形態の変形例2のレーダ装置1yの内部構成を詳細に示すブロック図である。レーダ装置1yと第1の実施形態のレーダ装置1との各部の構成及び動作が同一のブロックには、同一の符号が付されている。以下、レーダ装置1yの構成及び動作の説明において、同一の構成及び動作の内容に関しては省略し、レーダ装置1の構成及び動作と異なる内容に関して説明する。
【0254】
図13において、レーダ装置1yは、送信アンテナAN1と接続されるレーダ送信部2、及び、各受信アンテナAN2〜AN2−4と接続される各アンテナ系統処理部11−1〜11−4を有するレーダ受信部3yを含む構成である。なお、レーダ送信部2及びレーダ受信部3yは、基準信号発振器Loに接続され、基準信号発振器Loから信号が供給され、レーダ送信部2及びレーダ受信部3yの処理の同期が揃うようになっている。
【0255】
(レーダ受信部)
次に、レーダ受信部3yの各部の構成について説明する。レーダ受信部3yには、第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、複数の例えば4つのアレーアンテナが構成されている。更に、第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、アレーアンテナを構成する各受信アンテナはアンテナ系統処理部毎に設けられている。
【0256】
レーダ受信部3yは、複数の例えば4つのアンテナ系統処理部を有し、各アンテナ系統処理部に1つの受信アンテナが接続されており、4つの受信アンテナを含むアレーアンテナを構成している。以下、レーダ受信部3yの各部の構成について図13を参照して説明する。図13に示すレーダ受信部3yは、図2に示すレーダ受信部3と同様に、アンテナ系統処理部の個数を示すパラメータDが4あり、コヒーレント積分部、相関行列生成部及び加算部の各個数を示すパラメータPが3である。
【0257】
レーダ受信部3yは、図13に示す様に、アレーアンテナを構成する受信アンテナの本数に対応して設けられた4つのアンテナ系統処理部11−1〜11−4、第1〜第3相関行列生成部21−1〜21−3、第1〜第3加算部22y−1〜22y−3、出力選択制御部23y、出力選択部24、及び到来方向推定部25を含む構成である。
【0258】
第1加算部22y−1は、パラメータp=1である数式(18)に従って生成された相関行列B(k)を入力する。第1加算部22y−1は、入力された相関行列B(k)を、パラメータp=1である数式(21)に従って加算する。なお、第1加算部22y−1は、相関行列を加算するために、相関出力の大きさに比例した重み付け係数を乗じて加算しても良い。第1加算部22y−1は、加算された相関行列A(k)を、出力選択制御部23y及び出力選択部24に出力する。
【0259】
第2加算部22y−2は、パラメータp=1及びp=2である数式(18)に従って生成された相関行列B(k)及びB(k)を入力する。第2加算部22y−2は、入力された相関行列B(k)及びB(k)を、パラメータp=2である数式(21)に従って加算する。なお、第2加算部22y−2は、相関行列を加算するために、相関出力の大きさに比例した重み付け係数を乗じて加算しても良い。第2加算部22y−2は、加算された相関行列A(k)を、出力選択制御部23y及び出力選択部24に出力する。
【0260】
第3加算部22y−3は、パラメータp=1、p=2及びp=3である数式(18)に従って生成された相関行列B(k),B(k)及びB(k)を入力する。第3加算部22y−3は、入力された相関行列B(k),B(k)及びB(k)を、パラメータp=3である数式(21)に従って加算する。なお、第3加算部22y−3は、相関行列を加算するために、相関出力の大きさに比例した重み付け係数を乗じて加算しても良い。第3加算部22y−3は、加算された相関行列A(k)を、出力選択制御部3y及び出力選択部24に出力する。
【0261】
出力選択制御部23yは、第1〜第3加算部22y−1〜22y−3により出力された各相関行列A(k),A(k)及びA(k)を入力する。出力選択制御部23yは、入力された各相関行列を基に、各相関行列のうち、離散時刻k毎にコヒーレント積分利得が最大の相関行列を生成した相関行列生成部を選択する。
【0262】
具体的には、出力選択制御部23yは、入力された各相関行列を基に、コヒーレント積分後の平均受信電力成分に相当する相関行列の対角成分の和が最大となる相関行列を生成した相関行列生成部のインデックスを、離散時刻k毎に選択する。即ち、出力選択制御部23は、数式(32)に従って、相関行列生成部のインデックスselect_index(k)を選択する。
【0263】
【数32】

【0264】
数式(32)において、diag[A(k)]は、相関行列A(k)の対角成分の和を演算する演算子である。出力選択制御部23yは、離散時刻k毎に、選択されたインデックスを出力選択部24に出力する。以降の動作は、第1の実施形態と同様である。
【0265】
なお、出力選択制御部23yは、相関行列の対角成分の和に、数式(23)に示す比の値を基にした関数coeff(x)を係数としてdiag[A(k)]に乗じたcoeff(x)×diag[A(k)]のうち、最大となる相関行列生成部のインデックスselect_index(k)を、数式(33)に従って選択しても良い。なお、関数coeff(x)は、例えば数式(25)又は数式(26)を満たすことが、必要である。
【0266】
出力選択制御部23において、関数coeff(x)を係数として乗じた処理により、コヒーレント積分によるコヒーレント積分利得が雑音成分の分散値の増加を上回る状況となる。
【0267】
このため、レーダ装置1yは、理想的にコヒーレント積分されている場合に、コヒーレント積分数がより多いインデックスselect_index(k)に対応する加算部出力を選択する。
【0268】
これにより、レーダ装置1は、高速移動しているターゲットを低速移動しているターゲットとして検出する様な、ターゲットの選択誤りを低減できる。
【0269】
【数33】

【0270】
(第1の実施形態の変形例3)
第1の実施形態の変形例3では、出力選択制御部は、相関行列生成部において相関行列を生成する前に、コヒーレント積分部の出力を基に、コヒーレント積分利得が最大となるコヒーレント積分結果を演算したコヒーレント積分部を選択する。
【0271】
図14は、第1の実施形態の変形例3のレーダ装置1zの内部構成を詳細に示すブロック図である。レーダ装置1zと第1の実施形態のレーダ装置1との各部の構成及び動作が同一のブロックには、同一の符号が付されている。以下、レーダ装置1zの構成及び動作の説明において、同一の構成及び動作の内容に関しては省略し、レーダ装置1の構成及び動作と異なる内容に関して説明する。
【0272】
図14において、レーダ装置1zは、送信アンテナAN1と接続されるレーダ送信部2、及び、各受信アンテナAN2〜AN2−4と接続される各アンテナ系統処理部11z−1〜11z−4を有するレーダ受信部3zを含む構成である。なお、レーダ送信部2及びレーダ受信部3zは、基準信号発振器Loに接続され、基準信号発振器Loから信号が供給され、レーダ送信部2及びレーダ受信部3zの処理の同期が揃うようになっている。
【0273】
(レーダ受信部)
次に、レーダ受信部3zの各部の構成について説明する。レーダ受信部3zには、第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、複数の例えば4つのアレーアンテナが構成されている。更に、第1の実施形態のレーダ装置1と同様に、アレーアンテナを構成する各受信アンテナはアンテナ系統処理部毎に設けられている。
【0274】
レーダ受信部3zは、複数の例えば4つのアンテナ系統処理部を有し、アンテナ系統処理部毎に1つの受信アンテナが接続されており、4つの受信アンテナを含むアレーアンテナを構成している。以下、レーダ受信部3zの各部の構成について図14を参照して説明する。図14に示すレーダ受信部3zは、図2に示すレーダ受信部3と同様に、アンテナ系統処理部の個数を示すパラメータDが4であり、コヒーレント積分部、相関行列生成部及び加算部の各個数を示すパラメータPが3である。
【0275】
レーダ受信部3zは、図14に示す様に、アレーアンテナを構成する受信アンテナの本数に対応して設けられた4つのアンテナ系統処理部11z−1〜11z−4、第1〜第3相関行列生成部21−1〜21−3、第1〜第3加算部22−1〜22−3、出力選択制御部23z、出力選択部24、及び到来方向推定部25を含む構成である。
【0276】
アンテナ系統処理部11z−1は、受信アンテナAN2が接続された受信RF部12、及び信号処理部13zを含む構成である。信号処理部13zは、A/D変換部17,18、相関値演算部19、及び第1〜第3コヒーレント積分部20z−1〜20z−3を含む構成である。信号処理部13zは、各送信周期Trを信号処理区間として周期的に演算する。
【0277】
第1コヒーレント積分部20z−1は、相関値演算部19により出力された相関値AC(k,M)を入力する。第1コヒーレント積分部20z−1は、第M番目の送信周期Trにおいて離散時刻k毎に演算された相関値AC(k,M)を基に、複数回(N回)の送信周期Trの期間(N×Tr)にわたって、積分数Nのコヒーレント積分をする。
【0278】
パラメータNは、第1コヒーレント積分部20z−1によるコヒーレント積分の積分回数である。第1コヒーレント積分部20z−1は、数式(13)においてパラメータp=1としてコヒーレント積分する。パラメータmは自然数である。
【0279】
即ち、第1コヒーレント積分部20z−1は、第{N(m−1)+1}番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N(m−1)+1)から第(N×m)番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N×m)を単位として、離散時刻kのタイミングを揃えて相関値CI(k,M)を演算する。第1コヒーレント積分部20z−1は、演算された相関値CI(k,M)を、第1相関行列生成部21−1及び出力選択制御部23zに出力する。
【0280】
第2コヒーレント積分部20z−2は、相関値演算部19により出力された相関値AC(k,M)を入力する。第2コヒーレント積分部20−2は、第M番目の送信周期Trにおいて離散時刻k毎に演算された相関値AC(k,M)を基に、複数回(N回)の送信周期Trの期間(N×Tr)にわたって、積分数Nのコヒーレント積分をする。
【0281】
パラメータNは、第2コヒーレント積分部20z−2によるコヒーレント積分の積分回数である。第2コヒーレント積分部20z−2は、数式(13)においてパラメータp=2としてコヒーレント積分する。パラメータmは自然数である。
【0282】
即ち、第2コヒーレント積分部20z−2は、第{N(m−1)+1}番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N(m−1)+1)から第(N×m)番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N×m)を単位として、離散時刻kのタイミングを揃えて相関値CI(k,M)を演算する。第2コヒーレント積分部20z−2は、演算された相関値CI(k,M)を、第2相関行列生成部21−2及び出力選択制御部23zに出力する。
【0283】
第3コヒーレント積分部20z−3は、相関値演算部19により出力された相関値AC(k,M)を入力する。第3コヒーレント積分部20z−3は、第M番目の送信周期Trにおいて離散時刻k毎に演算された相関値AC(k,M)を基に、複数回(N回)の送信周期Trの期間(N×Tr)にわたって、積分数Nのコヒーレント積分をする。
【0284】
パラメータNは、第3コヒーレント積分部20z−3によるコヒーレント積分の積分回数である。第3コヒーレント積分部20z−3は、数式(13)においてパラメータp=3としてコヒーレント積分する。パラメータmは自然数である。
【0285】
即ち、第3コヒーレント積分部20z−3は、第{N(m−1)+1}番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N(m−1)+1)から第(N×m)番目の送信周期Trにおける相関値AC(k,N×m)を単位として、離散時刻kのタイミングを揃えて相関値CI(k,M)を演算する。第3コヒーレント積分部20z−3は、演算された相関値CI(k,M)を、第3相関行列生成部20z−3及び出力選択制御部23zに出力する。
【0286】
出力選択制御部23zは、全てのアンテナ系統処理部11z−1〜11z−4の全てのコヒーレント積分部の出力であるコヒーレント積分結果を入力する。出力選択制御部23zは、全てのアンテナ系統処理部11z−1〜11z−4の全てのコヒーレント積分部の出力を基に、各相関行列のうち、離散時刻k毎にコヒーレント積分利得が最大のコヒーレント積分結果を演算したコヒーレント積分部を選択する。
【0287】
具体的には、出力選択制御部23zは、入力された各コヒーレント積分結果を基に、コヒーレント積分後の平均受信電力成分に相当する値が最大となるコヒーレント積分結果を演算したコヒーレント積分部のインデックスを、離散時刻k毎に選択する。即ち、出力選択制御部23zは、数式(34)に従って、コヒーレント積分部のインデックスselect_index(k)を選択する。
【0288】
【数34】

【0289】
出力選択制御部23zは、離散時刻k毎に、選択されたインデックスを出力選択部24zに出力する。
【0290】
出力選択部24zは、離散時刻k毎に、出力選択制御部23zにより出力されたインデックスselect_index(k)、及び第1〜第3加算部22−1〜22−3により出力された相関行列A(k)〜A(k)を入力する。出力選択部24zは、入力されたインデックスselect_index(k)を基に、離散時刻k毎に、インデックスのコヒーレント積分部に対応する加算部の出力A(k)を選択する。出力選択部24は、離散時刻k毎に選択された加算部の出力A(k)を到来方向推定部25に出力する。
【0291】
例えば、出力選択制御部23zにより選択されたインデックスが1のため、出力選択部24zは、第1コヒーレント積分部20z−1と1対1に対応する第1加算部22−1の出力である相関行列A(k)を選択する。
【0292】
例えば、出力選択制御部23zにより選択されたインデックスが2のため、出力選択部24zは、第2コヒーレント積分部20z−2と1対1に対応する第2加算部22−2の出力である相関行列A(k)を選択する。
【0293】
例えば、出力選択制御部23zにより選択されたインデックスが3のため、出力選択部24zは、第3コヒーレント積分部20z−3と1対1に対応する第3加算部22−3の出力である相関行列A(k)を選択する。
【0294】
以降の動作は、第1の実施形態と同様である。
【0295】
従って、第1の実施形態の変形例3のレーダ装置1zは、コヒーレント積分結果のうち、コヒーレント積分利得が最大となるコヒーレント積分結果を演算するコヒーレント積分部を選択する。これにより、レーダ装置1zは、第1の実施形態のレーダ装置1の効果に加え、レーダ装置1のレーダ受信部3の処理量よりもレーダ受信部3zの処理量を低減できる。
【0296】
なお、出力選択制御部23zは、全てのD個のアンテナ系統処理部11z−1〜11z−4の全てのコヒーレント積分部の出力であるコヒーレント積分結果を入力する場合を説明したが、D個ではなく、1個又は一部のアンテナ系統処理部の各コヒーレント積分部の出力を用いて数式(34)に従って、選択してもよい。
【0297】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明のレーダ装置はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0298】
本発明は、高速移動するターゲットの到来方向の推定精度を維持し、低速移動するターゲットのコヒーレント積分利得を、簡易な構成によって向上するレーダ装置として有用である。
【符号の説明】
【0299】
1、1x、1y、1z レーダ装置
2 レーダ送信部
3、3x、3y、3z レーダ受信部
4 送信信号生成部
5 送信RF部
6 符号生成部
7 変調部
8 LPF
9、15 周波数変換部
10、14 増幅器
11−1、11−2、11−3、11−4、11−D、11z−1、11z−2、11z−3、11z−4 アンテナ系統処理部
12 受信RF部
13、13z 信号処理部
16 直交検波部
17、18 A/D変換部
19 相関値演算部
20−1、20−1−1、20z−1 第1コヒーレント積分部
20−2、20z−2 第2コヒーレント積分部
20−3、20z−3 第3コヒーレント積分部
20−1−p 第pコヒーレント積分部
21−1 第1相関行列生成部
21−2 第2相関行列生成部
21−3 第3相関行列生成部
21−p 第p相関行列生成部
22−1、22y−1 第1加算部
22−2、22y−2 第2加算部
22−3、22y−3 第3加算部
22−p 第p加算部
23、23x、23y、23z 出力選択制御部
24、24x、24y、24z 出力選択部
25 到来方向推定部
26 ドップラ周波数検出部
AN1 送信アンテナ
AN2 受信アンテナ
CM 送信符号記憶部
CT 送信符号制御部
Lo 基準信号発振器
Tp パルス幅
Tr 送信周期
Tw 送信区間
τ1、τ2 遅延時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を高周波送信信号に変換し、前記高周波送信信号を送信アンテナから送信するレーダ送信部と、
ターゲットにより反射された前記高周波送信信号である反射波の信号を用いてターゲットからの反射波の到来方向を推定する複数の受信アンテナからのレーダ受信部と、を含み、
前記レーダ受信部は、
受信信号と前記送信信号との相関値を異なるコヒーレント積分数を用いて複数のコヒーレント積分する、複数のアンテナ系統処理部と、
前記複数のアンテナ系統処理部の前記複数のコヒーレント積分の各出力に基づいて受信アンテナ配置に起因する位相差情報である相関行列を生成する複数の相関行列生成部と、
コヒーレント積分数Nのコヒーレント積分出力から得られる前記相関行列生成部の出力に対し、Nより小さいコヒーレント積分数のコヒーレント積分出力から得られる1つ又は複数の前記相関行列生成部の出力を加算する複数の加算部と、
前記加算部の出力を基に、前記ターゲットからの反射波の前記到来方向を推定する到来方向推定部と、を有するレーダ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ装置であって、
前記生成された各相関行列のうち、出力信号レベルが最大となる相関行列を生成した相関行列生成部を選択する出力選択制御部と、
前記出力選択制御部により選択された相関行列生成部の出力に対して得られた加算部の出力を用いて前記到来方向を推定するレーダ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーダ装置であって、
前記複数のアンテナ系統処理部は、それぞれ、
前記反射波の信号を受信する受信アンテナと、
前記受信された信号をベースバンドの受信信号に変換する受信RF部と、
前記変換された受信信号をデジタルデータに変換するA/D変換部と、
前記変換された受信信号のデジタルデータと、前記パルス圧縮符号との相関値を演算する相関値演算部と、
前記演算された相関値を、それぞれ異なる所定回数のコヒーレント積分する個のコヒーレント積分部と、を有するレーダ装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のレーダ装置であって、
前記複数の各コヒーレント積分部の積分回数は、前記ターゲットの移動速度に応じて定められているレーダ装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のレーダ装置であって、
前記複数のコヒーレント積分部のうち一部の前記コヒーレント積分部は、他の前記コヒーレント積分部の出力を用いてコヒーレント積分するレーダ装置。
【請求項6】
請求項2〜4のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記出力選択制御部は、前記複数の相関行列生成部により生成された各相関行列のうち、各相関行列の対角成分の和が最大となる相関行列を生成した相関行列生成部を選択するレーダ装置。
【請求項7】
請求項2〜4のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記出力選択制御部は、前記複数の相関行列生成部により生成された各相関行列のうち、各相関行列の対角成分の和に所定の係数を乗じた値の中において最大となる相関行列を生成した相関行列生成部を選択するレーダ装置。
【請求項8】
請求項2〜4のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記出力選択制御部は、前記各相関行列の出力信号レベルが所定レベルを満たさない場合、前記複数の加算部の各出力のうちいずれの出力も選択しない様に前記出力選択部を制御するレーダ装置。
【請求項9】
請求項2〜8のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記レーダ受信部は、更に、
前記コヒーレント積分部のうちいずれかのコヒーレント積分部の出力に基づいて、前記ターゲットの移動に起因する位相回転量を演算するドップラ周波数検出部と、を有し、
前記出力選択制御部は、前記演算された位相回転量を基に、前記相関行列を生成した相関行列生成部を選択するレーダ装置。
【請求項10】
請求項2〜9のうちいずれか一項に記載のレーダ装置であって、
前記レーダ受信部は、更に、
前記コヒーレント積分部のうちいずれかのコヒーレント積分部の出力に基づいて、前記ターゲットの移動に起因する位相回転量を演算するドップラ周波数検出部と、を有し、
前記出力選択制御部は、前記演算された位相回転量が所定値以下において最大となる前記相関行列を生成した相関行列生成部を選択するレーダ装置。
【請求項11】
請求項9に記載のレーダ装置であって、
前記出力選択制御部は、前記複数の加算部の各出力のうち、出力信号レベルが最大となる相関行列の加算出力値を出力した前記加算部に対応する前記相関行列生成部を選択するレーダ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のレーダ装置であって、
前記出力選択制御部は、前記相関行列生成部の選択に代えて、複数のコヒーレント積分部の各出力のうち、出力信号レベルが最大のコヒーレント積分出力を演算した前記コヒーレント積分部を選択するレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−181109(P2012−181109A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44304(P2011−44304)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】